説明

アンテナ用コネクタ

【課題】アンテナ用コネクタに関し、従来のアンテナ用コネクタにおいて、インピーダンスの不整合幅が大きくなってしまうことによる、ギガヘルツ以上の高周波数における反射が大きくなることを解決する。
【解決手段】ケーブル用コネクタと嵌合されるアンテナ用コネクタ1で、アンテナに接続される給電用端子3と、アース用に使用される接地用端子4と、基板面に固定される絶縁ハウジング2とで構成され、給電用端子3と接地用端子4とのそれぞれの一部が絶縁ハウジング2の基板取付面側に配設されるとともに、接地用端子4がケーブル用コネクタの接地用端子と協働してケーブルの接続端子を嵌合状態で電気的に囲繞するアンテナ用コネクタ1において、接地用端子4の一部が、給電用端子3に対して絶縁用ハウジング2の基板取付面2aの範囲内で対向面部4bが配設されるように、形成されているアンテナ用コネクタ1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両の窓ガラスに装備されるガラスアンテナとテレビ等の受信機に配線される同軸ケーブルとを接続するアンテナ用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用アンテナとして窓ガラスに設置したガラスアンテナが知られており、図6乃至図7に示すように、窓ガラスのような誘電体の基板面15に導体16を配置して構成され、その電波信号はアンテナ用コネクタ17を介して同軸ケーブル18に伝達され、該同軸ケーブル18によりデジタルテレビ,デジタルラジオ,GPS等の受信機19に電波信号が伝達されるものである。
【0003】
前記アンテナ用コネクタ17は、図8(A)〜(C)に示すように、レセプタクル側のコネクタ17aが、絶縁ハウジング20と、給電用端子21と、接地用端子22とから構成されている。そして、端子装着部21aと端子装着部22aをそれぞれ半田付けにて、図9に示すように、ガラスの基板面15に固定している。
【0004】
また、図9に示すように、ケーブル側のプラグコネクタ17bは、絶縁ハウジング23に、同軸ケーブル18の心線18aに接続する信号端子24と、同軸ケーブル18のシールド用編組網線18bに接続する接地用端子25とから構成されている。
【0005】
前記レセプタクル側のコネクタ17aに前記ケーブル側のプラグコネクタ17bが嵌合されて、図9に示すように、基板面15のアンテナパターンの導体16で受信される電波信号が給電用端子21から、そのコンタクト21b,信号端子24,心線18aへと伝達され、受信機19に至る。一方、グランドは、レセプタクル側の接地用端子22の接続端子22bとケーブル側の接地用端子25が当接して電気的に接地される。このようなコネクタ17が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−146959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記受信機19は、例えば、デジタルテレビやGPSであるが、その使用する周波数が数百メガ〜ギガヘルツと高周波化されていて、電波を正確に送受信するにはアンテナからアンプやチューナー等の送受信機までの間で、反射によるロスを少なくする必要がある。一般にコネクタのインピーダンスは、給電用端子と接地用端子との間の対向距離ならびに対向面積で決まり、両者の距離が離れるほど、また、対向面積が小さくなるほど、インピーダンスが高くなる。
【0008】
かかる状況に置いて、従来のアンテナ用コネクタ17(17a,17b)においては、コネクタ底面で給電用端子21と接地用端子22とが、それぞれ装着部に向かって分岐している(図8(A)のA部)。その分岐点から給電用端子21の装着部までの間で、給電用端子21と接地用端子22とが対向しておらず、インピーダンスが高くなり整合されていない形状となっている(図8(C)のB部の範囲)。従って、特にギガヘルツ以上の高周波での使用に際し、反射が大きくなり、使用が難しくなっている。
本発明に係るアンテナ用コネクタは、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアンテナ用コネクタの上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、
ケーブル用コネクタと嵌合されるアンテナ用コネクタで、アンテナに接続される給電用端子と、アース用に使用される接地用端子と、これらの両端子を装着するとともにこれらの両端子の装着部を介して基板面に固定される絶縁ハウジングとで構成され、前記給電用端子と前記接地用端子とのそれぞれの一部が前記絶縁ハウジングの基板取付面側に配設されるとともに、前記接地用端子が前記ケーブル用コネクタの接地用端子と協働してケーブルの接続端子を嵌合状態で電気的に囲繞するアンテナ用コネクタにおいて、
前記アンテナ用コネクタの接地用端子の一部が、前記給電用端子に対して前記絶縁用ハウジングの基板取付面の範囲内で対向面部が配設されるように、形成されていることである。
【0010】
前記アンテナ用コネクタの接地用端子に形成された対向面部は、その先端部が絶縁ハウジングの一部と係合部で係合して、当該対向面部が給電用端子の対向面に接近しないように維持されていること、;
また、前記アンテナ用コネクタに形成された対向面部には、給電用端子と接地用端子との少なくともどちらか一方にインピーダンスを調整する孔部、若しくは、スリット部が設けられていること、;
更に、接地用端子に形成された対向面部に設けられインピーダンスを調整する孔部、若しくは、スリット部が、対向面部の先端部に設けた係合部の一部を形成していること、を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアンテナ用コネクタによれば、給電用端子と接地用端子とが絶縁ハウジングの基板取付面側において、対向させて配設されるようになって、インピーダンス整合をする事が可能となり、高周波帯域における伝送特性においてリターンロスが図5に示すように減り、高周波帯域の特性が向上する。
また、給電用端子および接地用端子におけるそれぞれの端子装着部は従来技術と同一なので、従来からのアンテナ用コネクタの実装性を損なわず、実装工数も増やすことなく高周波特性を改善できるものである。更に、給電用端子または接地用端子の一方若しくは互いが、穴などを開けたりして対向する面積を変えることで、インピーダンスを調整し容易に高周波特性の改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るアンテナ用コネクタ1の平面図(A)と、X−X線に沿った断面図(B)とである。
【図2】同本発明のアンテナ用コネクタ1の分解組立図(A)と、底面側を見る斜視図(B)と、長手方向に沿って半断面にした斜視図(C)である。
【図3】アンテナ用コネクタ1の正面図(A)と、側面図(B)と、背面図(C)とである。
【図4−A】アンテナ用コネクタ1とケーブル用コネクタ10とを嵌合させた状態の平面図(A)と、側面図(B)とである。
【図4−B】他の実施例に係るアンテナ用コネクタ1aの側方断面図である。
【図5】アンテナ用コネクタ1の高周波領域におけるリターンロスに関する特性を示す比較図である。
【図6】従来例に係るアンテナ用コネクタ17の使用状態を示す説明用斜視図である。
【図7】従来例に係るアンテナ用コネクタ17の使用時における全体概略構成図(A)と、組み付け時の説明用斜視図(B)とである。
【図8】従来例に係るレセプタクル側のコネクタ17aの斜視図(A)と、平面図(B)と、縦断面図(C)とである。
【図9】従来例に係るアンテナ用コネクタ17の嵌合の様子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るアンテナ用コネクタ1は、図1(A),(B)に示すように、絶縁ハウジング2の取付面(下面とする)で対向配置にされている給電用端子3と接地用端子4とにおいて、給電用端子3に、接地用端子4の一部を延設することで、対向する面(対向面部4b)を設けて、インピーダンスを整合するようにしたことである。
【実施例1】
【0014】
本発明に係るアンテナ用コネクタ1は、図1(A),(B)に示すように、ケーブル用コネクタ10(図4−A参照)と嵌合されるアンテナ用コネクタであって、アンテナ16(図6参照)に接続される平板状の給電用端子3と、アース用に使用される平板状の接地用端子4と、これらの両端子を装着するとともにこれらの両端子の装着部3a,4aを介して基板面15(図7,図9参照)に固定される絶縁ハウジング2とで構成される。
【0015】
前記給電用端子3と前記接地用端子4とのそれぞれの一部が前記絶縁ハウジング2の基板取付面2a側に配設されるとともに、前記接地用端子4が前記ケーブル用コネクタ10の接地用端子25(図9参照)と協働して同軸ケーブル18の接続端子(心線部分18a、図9参照))を嵌合状態で電気的に囲繞する。
【0016】
そして、前記アンテナ用コネクタ1の接地用端子4の一部が、前記給電用端子3に対して、前記絶縁用ハウジング2の基板取付面2aの範囲内で、対向面部4bが平行に、若しくは略平行に、配設されるように形成されている。なお、前記対向面部4bが、給電用端子3に対して離間しているが平行でない状態も含むものである。
【0017】
前記絶縁ハウジング2は、図2(A)に示すように、合成樹脂製で全体が箱形で、内部が大きく空洞になっていて、そこにプラグコネクタ(ケーブル側のコネクタ10、図4−A参照)を嵌合させる。この絶縁ハウジング2の両側面には、前記給電用端子3及び接地用端子4を位置固定する係合部2b,2cがそれぞれ設けられている。また、前方側面2dはケーブル18が入り込むので大きく開口されている。
【0018】
前記給電用端子3は、図2(A)に示すように、絶縁ハウジング2の空洞部に挿通されるコンタクト部3bが針状に立設され、平坦な本体部3eの側方に係合孔を穿設した係止部3c,3dが屈曲され立設されている。図2(B)に示すように、前記係止部3c,3dは、組立時に絶縁ハウジング2の係合部2cに係合孔が係合して、ロックされる。
【0019】
前記接地用端子4は、図2(A)に示すように、平坦な本体部4jから装着部4aが延設され、側方に係合孔を穿設した係止部4c,4dが屈曲されて立設され、絶縁ハウジング2の空洞部に挿通されケーブル側のコネクタ10の接地用端子25に摺接するコンタクト部4eが立設されている。
【0020】
前記係止部4c,4dは、図2(B)に示すように、絶縁ハウジング2の係合部2bに係合孔が係合してロックされる。図2(A)及び図3(A)に示すように、前記アンテナ用コネクタ1の接地用端子4に延設された対向面部4bは、その先端部4fが更に延設して前記コンタクト部4eと同じ方向に屈曲されて、絶縁ハウジング2の一部、即ち後方側面2eに突設した係合部2fと、前記先端部4fに設けた孔状の係合部4hで係合するようにされている。
【0021】
こうして、当該対向面部4bが給電用端子3の対向面に接触しないように維持されている。また、絶縁ハウジング2における符号2gは、図2(C)及び図3(C)に示すように、ケーブル用コネクタ10の絶縁ハウジング23(図9参照)をロックする係止突起を示している。
【0022】
前記アンテナ用コネクタ1の接地用端子4に延設された対向面部4bには、図2(A),図3(A)に示すように、インピーダンスを調整する細長い孔部4g、若しくは、スリット部が設けられている。このインピーダンスを調整する孔部4gは、一例として、対向面部4bの先端部4fに設けた係合部4hの一部を形成している。なお、前記インピーダンスを調整する細長い孔部は、給電用端子3の側に設けるようにしても良い。
【0023】
以上のようにして形成されるアンテナ用コネクタ1を窓ガラスなどの基板面15に半田付けして固定し、図4−Aに示すように、アンテナ用コネクタ1の空洞部にケーブル用コネクタ10を嵌合させる。図1(B)中のA部に示すように、アンテナ用コネクタ1において、給電用端子3の本体部3eと、接地用端子4の対向面部4bとが、ある距離を置いて対向配置にされて維持される。これにより、図5に示すように、従来に比べて大幅にリターンロスが減少して、高周波特性が向上するものである。
【実施例2】
【0024】
なお、本発明に係る他の実施例として、図4−Bに示すように、給電用端子3と接地用端子4との関係において、アンテナ用端子1aの基板取付面2aの範囲内で、ある距離をおいて離間してあれば良く、例えば、給電用端子3の方が屈曲されていて、接地用端子4が平坦であっても良い。要は、インピーダンスを整合させてリターンロスを低減できるようにすることである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係るアンテナ用コネクタ1は、高周波帯域に使用される同軸コネクタ等を連結するコネクタに広く使用できるものである。
【符号の説明】
【0026】
1 アンテナ用コネクタ、 1a 他の実施例に係るアンテナ用コネクタ、
2 絶縁ハウジング、 2a 基板取付面、
2b 係合部、 2c 係合部、
2d 前方側面、 2e 後方側面、
2f 係合部、 2g 係止突起、
3 給電用端子、 3a 装着部、
3b コンタクト部、 3c 係止部、
3d 係止部、 3e 本体部、
4 接地用端子、 4a 装着部、
4b 対向面部、 4c,4d 係合部、
4e コンタクト部、 4f 先端部、
4g 孔部、 4h 係合部、
4j 本体部、
10 ケーブル用コネクタ、
15 基板面、
16 アンテナパターン、
17 コネクタ、 17a レセプタクル側のコネクタ、
17b プラグ側のコネクタ、
18 同軸ケーブル、
19 受信機、
20 絶縁ハウジング、
21 給電用端子、 21a 端子装着部、
22 接地用端子、 22a 端子装着部、
23 絶縁ハウジング、
24 信号端子、
25 接地用端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル用コネクタと嵌合されるアンテナ用コネクタで、アンテナに接続される給電用端子と、アース用に使用される接地用端子と、これらの両端子を装着するとともにこれらの両端子の装着部を介して基板面に固定される絶縁ハウジングとで構成され、前記給電用端子と前記接地用端子とのそれぞれの一部が前記絶縁ハウジングの基板取付面側に配設されるとともに、前記接地用端子が前記ケーブル用コネクタの接地用端子と協働してケーブルの接続端子を嵌合状態で電気的に囲繞するアンテナ用コネクタにおいて、
前記アンテナ用コネクタの接地用端子の一部が、前記給電用端子に対して前記絶縁用ハウジングの基板取付面の範囲内で対向面部が配設されるように、形成されていること、
を特徴とするアンテナ用コネクタ。
【請求項2】
アンテナ用コネクタの接地用端子に形成された対向面部は、その先端部が絶縁ハウジングの一部と係合部で係合して、当該対向面部が給電用端子の対向面に接近しないよう平行状態を維持されていること、
を特徴とする請求項1に記載のアンテナ用コネクタ。
【請求項3】
アンテナ用コネクタに形成された対向面部には、給電用端子と接地用端子との少なくともどちらか一方にインピーダンスを調整する孔部、若しくは、スリット部が設けられていること、
を特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のアンテナ用コネクタ。
【請求項4】
接地用端子に形成された対向面部に設けられインピーダンスを調整する孔部、若しくは、スリット部が、対向面部の先端部に設けた係合部の一部を形成していること、
を特徴とする請求項2に記載のアンテナ用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−142220(P2012−142220A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526(P2011−526)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000243342)本多通信工業株式会社 (92)
【Fターム(参考)】