説明

アンテナ結合手段を備えたRFIDトランスポンダチップモジュール、RFIDトランスポンダチップモジュールを備えた繊維ラベル、およびRFIDトランスポンダチップモジュールの使用

トランスポンダチップの他に導電性、好ましくは金属性または金属化接続基部(12)を有するRFIDトランスポンダチップモジュール(2)を極力簡単に特に汚れる虞なしにラベル帯(16)の、繊維材料の内部または表面に取付けられたアンテナワイヤ(14)と結合できるようにするために、トランスポンダチップモジュール(2)の金属化接続基部(12)を、アンテナワイヤ(14)と電気的かつ機械的に結合するための活性化可能な結合手段(10)を備えて形成することが提案される。接続基部(12)は、RFIDトランスポンダチップ(6)の両側に帯状延出部(4、12)として形成され、かつ、RFIDトランスポンダチップ(6)から離れた延出部(4、12)の両端部にそれぞれ配置されている。金属化接続基部(12)は、電気導体(14)と電気的かつ機械的に結合するための活性化可能な結合手段(10)を備えて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップを備えたRFIDトランスポンダチップモジュール、RFIDトランスポンダチップモジュールを備えた繊維ラベル、およびRFIDトランスポンダチップモジュールの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品に組み込まれたアンテナにチップを結合してトランスポンダを製造することは知られている。接続板がアンテナ部と結合されている。アンテナへのチップのこの配置とその結合が諸困難をもたらす。
【0003】
編織布と結合されたアンテナ用糸にRFIDトランスポンダチップを電気的に結合するための方法が特許文献1に開示されている。この方法に関して前記問題の解決が詳細には述べられていない。接着、溶接、半田付等のさまざまな結合方式に言及されているだけであり、それらは明らかにその場で実行されねばならない。これらの結合法は複雑なだけでなく、特に繊維材料の汚れと結び付いている。
【0004】
特許文献2により繊維支持体を備えたラベルが公知であり、このラベルは電子部品用接続部を備えたフレキシブル電気導体を有する。特許文献2では、好ましくはトランスポンダICの接触面に低融点半田ペーストを刷り込むことによってトランスポンダICをワイヤ末端に接触させることが提案されている。つまり特許文献2の構想では、ラベル製造時にICの接触面がインタフェースと見做されている。特許文献2に開示された構想は、アンテナ用糸を織り込みまたは編み込んだ繊維ラベルにトランスポンダチップモジュールが取付けられなければならないとき、織り込まれまたは編み込まれたアンテナ用糸がトランスポンダICの取付寸法を有していないので不利であると判明した。
【0005】
特許文献3から公知の繊維材料はトランスポンダチップを有し、このトランスポンダチップは、その接触面で、アンテナワイヤに固着されかつこれと電気的に結合されている。特許文献3の解決では、アンテナワイヤが蛇行状に形成されており、アンテナワイヤの縦脚部は末端がトランスポンダICの接触面に位置決めされかつこれに接続できるように分割されている。その限りでは、特許文献3の解決は特許文献2の解決と同一であり、同じ欠点を伴っている。
【0006】
特許文献4に開示された非繊維のチップカードモジュールでは、金属支持層がボンディングワイヤによってトランスポンダチップと結合されている。チップカードモジュール用に適しているようなものは繊維モジュールの場合きわめて不利である。というのも、相応する加工が可能でなく、アンテナも金属層として利用できないからである。
【0007】
特許文献5から公知のモジュールは、チップカード(但しチップカードの応用時に意味がないと思われる非導電性チップカード)に被着されねばならないICをリードフレーム内で利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2005/071605号パンフレット
【特許文献2】独国特許出願公開第10155935号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/011605号パンフレット
【特許文献4】独国特許出願公開第19618103号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第19708617号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、繊維製品内に配置されるアンテナと簡単に結合することのできるRFIDトランスポンダチップモジュールを明示することである。その際、トランスポンダチップモジュールはRFIDトランスポンダチップを備えていなければならず、電気導体、特にアンテナワイヤを有する繊維材料と結合するための導電性、好ましくは金属性または金属化された接続基部を有していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題が本発明によれば請求項1記載のRFIDトランスポンダチップモジュールによって解決される。このため、トランスポンダチップモジュールがもはやIC自体と同一でないことによって、その限りで先行技術は克服される。本発明によれば前記接続基部が前記RFIDトランスポンダチップの両側に帯状(ストリップ状)延出部として形成されており、そのことから例えば蛇行状アンテナの横脚部の間に配置することが可能となり、アンテナワイヤの一方の縦脚部を、先行技術におけるように、トランスポンダチップの接続箇所に正確に合せて分割する必要がなく、端部はトランスポンダICの接触面で位置決めしてこれに接続することができる。前記接続基部は、前記RFIDトランスポンダチップから離れた前記延出部の端部にそれぞれ配置され、それにより、モジュールの配置と、蛇行状に織り込まれまたは編み込まれたアンテナ用糸の例えば横脚部とモジュールとの結合が可能となる。前記接続基部は前記電気導体と電気的かつ機械的に結合するための活性化可能な結合手段を備えて形成されている。
【0011】
前記トランスポンダチップモジュールの前記金属化接続基部が前記電気導体と電気的機械的に結合するための活性化可能な結合手段を備えて形成されていることによって、繊維ラベルの製造プロセスは特別単純である。というのも、前記結合手段は結合過程に左右されることなく簡単に予め成形してごく正確に調整した量および形状で前記トランスポンダチップモジュールの前記接続基部に被着できるからである。結合個所で前記結合手段は簡単な工具によって、結合手段および/またはフラックスを再供給することなく活性化させることができる。例えば結合手段の加熱および正確な調量による簡単な活性化過程が簡単な結合を保証し、過剰な結合手段および/またはフラックスで汚れる虞を防止する。
【0012】
有利な実施例は従属請求項2〜8に述べられている。
【0013】
結合手段として請求項2により半田または請求項3により導電性プラスチックが使用され、正確に正しい量で前記金属化接続基部に既に設けられていると特別有利である。前記トランスポンダチップモジュールにおいて前記帯状延出部は有利にはプラスチック製とすることができる(請求項4)。前記RFIDトランスポンダチップに向き合う前記帯状延出部は有利には前記RFIDトランスポンダチップ用リードフレームとして形成されており、こうしてチップに機械的保護を提供する(請求項5)。
【0014】
このようなRFIDトランスポンダチップと導体ワイヤ、特にアンテナワイヤを有する繊維材料とを備えた繊維ラベルを形成できるようにするために、前記電気導体が酸化物の形成を防止する手段(請求項6)もしくは導電被覆面(請求項7)を有すると有利である。その際、銀、金、またはビスマススズ合金等の被覆材料が有利である。
【0015】
電気導体がその表面にプラスチック層を備えて形成されており、プラスチック層が結合手段に適応して結合を促進するとき、繊維ラベルの形成は特別有利である(請求項8)。
【0016】
前記RFIDトランスポンダチップモジュールを繊維ラベルの製造に使用することが基本的に提案される(請求項9)。しかし、概して面積の大きい、繊維プリント基板の使用も有利である(請求項10)。
【0017】
前記諸要素、そして請求され以下の実施例に述べられ本発明により使用される諸要素は、その寸法、形状、材料使用およびそれらの技術的構想の点で特別な例外条件に服しておらず、その都度の応用分野において知られている選択基準は無制限に応用することができる。
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施例が詳しく述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好ましい実施例によるトランスポンダチップモジュールを平面図で示す。
【図2】図1のトランスポンダチップモジュールを側面図で示す。
【図3】図1のトランスポンダチップモジュールを正面図で示す。
【図4】ラベル帯上に配置される図1のトランスポンダチップモジュールを側面図で示す。
【図5】図4の配置の平面図である。
【図6】トランスポンダチップモジュールを備えた代表的トランスポンダラベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図3が示すトランスポンダチップモジュール2は、後プロセスにおいて、アンテナと結合可能であり、アンテナは繊維製品と結合される。好ましい実施例においてトランスポンダチップモジュール2が、リードフレーム4(lead frame)を含み、このリードフレーム上にトランスポンダチップ6(ICチップ)が配置されている。この実施例においてトランスポンダチップ6はその保護のため外側被覆(オーバーモールド)されている。この外側被覆は、図1〜図3で符号8とされている。さらに、トランスポンダチップモジュール2は相反する2つの側に電気接続基部12を有し、この接続基部に、本発明に係る、活性化可能な結合手段10が予め成形して被着されている。本実施例においてこの結合手段10は半田からなり、好ましくはスズ合金半田からなる。しかし、選択的にこの結合手段を、おそらく異なるであろう融解温度に至るまで、半田と類似の性質を有する導電性プラスチックで形成することもできる。さらに、非導電性プラスチックを使用する選択案も可能である。但し、その場合、被着すべき接続基部は、プラスチックによってもはや絶縁されてはならない直接的接触が実現されるようにアンテナに被着されねばならない。半田または導電性プラスチックから成る結合手段ではその必要はない。
【0021】
図4および図5には、ラベル帯16を備えた本発明の好ましい実施例によるトランスポンダチップモジュール2の結合部30が示してあり、アンテナワイヤ14は専門特有の従来の結合部26によって例えば緯糸および/または経糸でラベル帯に取付けられている。アンテナワイヤ14が接続基部12と直接接触しているので、半田も導電性プラスチックも、または非導電性プラスチックでさえ、結合手段10として可能であるように結合部30は幾何学的に形成されている。
【0022】
ここに示す結合部の主要な利点は、結合手段10が簡単かつ精確に適切な量で塗布できることにある。結合手段10が金属化接続基部12と既に結合されていることによって、接続基部が相応するアンテナ用糸に半田付けされるとき、必要となるフラックスはごく僅かであるかまたは全く必要でない。これによりラベルの汚染は防止される。さらに、結合プロセスは片側でのみ実行しなければならないので迅速に経過することができる。結合プロセスは本発明によって全体としてかなり簡素化される。
【0023】
図6に示す代表的トランスポンダラベル20が繊維帯21を有し、この繊維帯はバーコード28を備えた上半部22と電気トランスポンダチップ6およびアンテナ14を備えた下半部24とを形成する。
【0024】
本実施例は、RFIDトランスポンダチップモジュール2を繊維ラベル30の製造に使用するものとして述べられた。しかし選択的使用は、代表的には面積の大きい、繊維プリント基板の使用である。
【符号の説明】
【0025】
2 トランスポンダチップモジュール
4 リードフレーム(接続フレーム)
6 トランスポンダチップ
8 外側被覆(モールディング)
10 結合手段
12 接続基部
14 アンテナワイヤ
16 ラベル帯
20 トランスポンダラベル
21 繊維帯
22 上半部
24 下半部
26 アンテナワイヤ/布結合部
28 バーコード
30 トランスポンダチップモジュールとアンテナとの結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDトランスポンダチップ(6)を有するトランスポンダチップモジュールであって、電気導体、特にアンテナワイヤ(14)を有する繊維材料、好ましくはラベル帯(16)と結合するための導電性の、好ましくは金属製または金属化された接続基部(12)を備えるものにおいて、
前記接続基部(12)が、前記RFIDトランスポンダチップ(6)の両側に帯状延出部(4、12)として形成され、かつ、前記RFIDトランスポンダチップ(6)から離れた前記延出部(4、12)の両端部にそれぞれ配置されており、前記接続基部(12)が、前記電気導体(14)と電気的かつ機械的に結合するための活性化可能な結合手段(10)を備えて形成されていることを特徴とするトランスポンダチップモジュール。
【請求項2】
前記結合手段(10)が半田を有し、前記半田が低融点であり、かつスズビスマス合金から成ることを特徴とする、請求項1記載のRFIDトランスポンダチップモジュール。
【請求項3】
前記結合手段(10)が導電性接着剤であることを特徴とする、請求項1記載のRFIDトランスポンダチップモジュール。
【請求項4】
前記帯状延出部がプラスチックから形成されていることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のRFIDトランスポンダチップモジュール。
【請求項5】
前記RFIDトランスポンダチップ(6)に向き合う前記帯状延出部が、前記RFIDトランスポンダチップ(6)のための帯状接続フレーム(4)として形成されていることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項記載のRFIDトランスポンダチップモジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のRFIDトランスポンダチップモジュール(2)と電気導体、特にアンテナワイヤ(14)を有する繊維材料(16)とを備え、前記電気導体(14)が、酸化物の形成を防止する手段を有することを特徴とする繊維ラベル。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載のRFIDトランスポンダチップモジュール(2)と電気導体、特にアンテナワイヤ(14)を有する繊維材料(16)とを備え、前記電気導体(14)が導電被覆表面を有し、その被覆材料が好ましくは銀、金、またはビスマススズ合金を含むことを特徴とする繊維ラベル。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項記載のRFIDトランスポンダチップモジュール(2)と電気導体、特にアンテナワイヤ(14)を有する繊維材料(16)とを備え、前記電気導体(14)がその表面にプラスチック層を備えて形成されており、前記プラスチック層が前記結合手段(10)に適応して結合を促進することを特徴とする繊維ラベル。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項記載のRFIDトランスポンダチップモジュール(2)の、繊維トランスポンダラベル(20)およびトランスポンダ布製造への使用。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項記載のRFIDトランスポンダチップモジュール(2)の、繊維プリント基板製造への使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−532028(P2010−532028A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513602(P2010−513602)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000286
【国際公開番号】WO2009/003299
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(500031009)テクスティルマ・アクチェンゲゼルシャフト (22)
【Fターム(参考)】