アンテナ装置およびセクタアンテナ装置
【課題】機械的強度および素子アンテナ間の相互結合を考慮しつつ、十分なバックローブ特性を満たしたアンテナ装置およびセクタアンテナ装置を提供する。
【解決手段】ダイポールアンテナ1を素子アンテナとするアンテナ装置11aにおいて、2つのダイポールアンテナ1が、その軸10方向に直交する方向に互いに間隔d1をあけて軸10方向に対する位置をあわせて平行に配設されると共に、励振条件が励振振幅比を1未満の正数とする。
【解決手段】ダイポールアンテナ1を素子アンテナとするアンテナ装置11aにおいて、2つのダイポールアンテナ1が、その軸10方向に直交する方向に互いに間隔d1をあけて軸10方向に対する位置をあわせて平行に配設されると共に、励振条件が励振振幅比を1未満の正数とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分な機械的強度と十分なバックローブ特性と有するアンテナ装置およびセクタアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型指向性アンテナを実現するための従来の技術の例として、非特許文献1に示す位相差給電2素子ダイポールアレイアンテナがある。本例では、図11および図12に示すように、2素子アレーアンテナに90度の位相差もって給電を行うもので、図中の21はダイポールアンテナ、22は給電点、23はモノポールアンテナ、24は地板、25はハイブリット移相器であり、26は給電線路を示している。
【0003】
ダイポールアンテナ21もしくはモノポールアンテナ23を0.25波長間隔で配置し(図11参照)、給電位相差として90度を与えて給電することを提案したものである。ここで、給電点22の電圧が「+1[V]」と「−j[V]」(jは虚数単位)と記載されていることから明らかなように、従来技術では、励振条件は、励振振幅比を1(1:1)、励振位相差を90度(Arctan((−j)/(+1))の絶対値)としているのは明らかである。
また、非特許文献1の実験では、図12に示すように地板24の上にモノポールアンテナ23を配置し、かつ励振条件位相差90度を等電力で分配できるハイブリット回路25を用いて給電線路26を用いて給電している。ここでも、ハイブリット移相器25から2本のアンテナに対する出力が「−90°」と「−180°」と記載されていることから明らかなように、従来技術では、励振条件は、励振位相差を90度(−90°と−180°の差)としているのは明らかである。
さらに、非特許文献1では、周波数をf=2.45GHzと規定していることから、自由空間における波長λは、λ=c/f=122.4mmであることから、素子アンテナの間隔は、自由空間波長の0.25倍であることがわかる(cは自由空間における光速で、299,792,458m/s)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】江良孝太朗、「位相差給電2素子ダイポールアレイアンテナ」、電子情報通信学会ソサイエティ大会、2005年、B−1 P130
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非特許文献1では、まず、バックローブ特性が十分なものとはいえない。さらに、素子アンテナの直径が2mmでありこれでは、実際の屋外に設置することを想定した機械的強度を有したものとはいえない。さらに、素子アンテナの機械的強度を持たせるために太いパイプ状金属を用いる場合、素子アンテナ間の相互結合による設計からのずれについては想定していないことから、バックローブ特性が劣化する可能性がある。
そして、素子アンテナ間の相互結合が存在することから、非特許文献1による構成では、高利得化するためにコリニアアレー構成に発展させることや、方向推定用に複数のアンテナを近接させて配置することにより発生する特性劣化を抑えることは困難である。
【0006】
また、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、スロットアンテナは、低コストで軽量かつ受風面積の少ないアンテナである。これらのアンテナを用い指向性のあるアンテナ装置を作成する場合、これらのアンテナを素子アンテナとし、位相差を持たせた給電を行う方法が存在する。しかし、素子アンテナは、その直径が大きいほど機械的強度を得ることができ、また、直径が大きいほど相互結合が大きく従来法ではバックローブ特性が悪くなるという二律背反の関係があった。
【0007】
本発明は、上述する事情に鑑みてなされたもので、機械的強度および素子アンテナ間の相互結合を考慮しつつ、十分なバックローブ特性を満たしたアンテナ装置およびセクタアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るアンテナ装置は、2つのモノポールアンテナ、もしくは、ダイポールアンテナ、もしくは、スロットアンテナのいずれか1つを素子アンテナとするアンテナ装置において、2つの前記素子アンテナが、その軸方向に直交する方向に互いに間隔をあけて軸方向に対する位置をあわせて平行に配設されると共に、励振条件が励振振幅比を1未満の正数とすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るアンテナ装置は、2つのモノポールアンテナ、もしくは、ダイポールアンテナ、もしくは、スロットアンテナのいずれか1つを素子アンテナとするアンテナ装置において、複数の前記素子アンテナが同一直線上に配設されてコリニアアンテナを構成し、2つの前記コリニアアンテナが、その軸方向に直交する方向に互いに間隔をあけて軸方向に対する位置をあわせて平行に配設されると共に、励振条件が励振振幅比を1未満の正数とすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るアンテナ装置は、前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.125倍以上0.25倍以下とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が10分の1以上1.9分の1以下とし、励振位相差が20度以上100度以下としてもよい。
【0011】
また、本発明に係るアンテナ装置は、前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.125倍とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が6分の1以上2.7分の1以下とし、励振位相差が35度以上80度以下としてもよい。
【0012】
また、本発明に係るアンテナ装置は、前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.25倍とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が4.3分の1以上2.1分の1以下とし、励振位相差が32度以上70度以下としてもよい。
【0013】
また、本発明に係るセクタアンテナ装置は、上記のアンテナ装置を前記素子アンテナが同一平面上に配列されたセクタアンテナとし、複数の前記セクタアンテナが配列されたセクタアンテナ装置であって、複数の前記セクタアンテナは前記平面に直交する方向に互いに間隔をあけて配列され、前記素子アンテナの軸方向の位置が互いにずれていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るセクタアンテナ装置は、配列された前記セクタアンテナは、前記平面に直交する方向の間隔が自由空間波長の0.5倍であり、かつ前記素子アンテナの軸方向の位置のずれが自由空間波長の0.2倍以上1.0倍以下、もしくは0.38倍以上0.7倍以下であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るセクタアンテナ装置は、セクタアンテナは2つとし、かつ、一方のセクタアンテナの励振振幅は0であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願発明では、素子アンテナ間の相互結合を考慮しつつ、十分なバックローブ特性を満たしたアンテナ装置およびセクタアンテナ装置の実現技術を提供することができる。従って、十分な機械的強度(直径)を有するモノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、スロットアンテナを素子アンテナとした指向性のあるアンテナ装置において、十分なバックローブ特性を満たした平面指向性を有するアンテナ装置およびセクタアンテナ装置を提供することが可能となる。これにより、低コストで軽量かつ受風面積の少ない上に、十分な機械的強度と十分なバックローブ特性と有する指向性アンテナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施例の一例を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施例の一例を示す図である。
【図3】本発明の第3、4、5の実施例の一例を示す図である。
【図4】本発明の第3、4、5の実施例を説明する図で、メインローブのビーム幅とバックローブ特性の励振振幅比依存性を表わした図である。
【図5】本発明の第3、4、5の実施例を説明する図で、メインローブのビーム幅とバックローブ特性の励振位相差依存性を表わした図である。
【図6】本発明の第4の実施例による水平面指向特性のシミュレーション結果である。
【図7】本発明の第5の実施例による水平面指向特性のシミュレーション結果である。
【図8】本発明の第6の実施例を示す図である。
【図9】本発明の第6の実施例を説明するための図である。
【図10】本発明の第6の実施例を説明するための図である。
【図11】従来の位相差給電アンテナ構成を説明するための図である。
【図12】従来の位相差給電アンテナ構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施例)
以下、本願発明の第1の実施例を図1に基づいて説明する。
図1において、1はダイポールアンテナであり、第一の実施例のアンテナ装置11aはダイポールアンテナ1が素子アンテナとして構成されている。
アンテナ装置11aでは、2つのダイポールアンテナ1がその軸10方向を同じくし、軸10方向に直交する方向に所定の間隔d1をあけて平行に設置されている。2つのダイポールアンテナ1は、軸10方向に対する位置が同じである。
ダイポールアンテナ1の励振条件であるが、励振振幅比は1未満の正数である。
なお、本実施例では、素子アンテナとしてダイポールアンテナ1を用いているが、ダイポールアンテナ1に代わってモノポールアンテナ、もしくは、スロットアンテナを用いることも可能である。これは本実施例に限らず、以降のすべての実施例に適応できるが、以降はダイポールアンテナ1の例で説明を行う。
【0019】
(第2の実施例)
次に、第2の実施例を図2に基づいて説明する。
図2において、7は2つのダイポールアンテナ1を同一直線上に配設し、それらの軸10方向を合わせてつなぎ合わせてアレー化したコリニアアンテナを示している。
第2の実施例のアンテナ装置11bでは、2つのコリニアアンテナ7がその軸10方向に直交する方向に所定の間隔d1をあけて平行に設置されている。2つのコリニアアンテナ7は、軸10方向に対する位置が同じである。アンテナ装置11bを構成する複数のダイポールアンテナ1は、同一平面9上に配列されている。
ここで、軸10方向に直交する方向に隣り合う2本のダイポールアンテナ1の間に励振振幅・位相差を与えて給電することにより、水平面(平面9に直交する面)指向の指向性を実現することができ、かつ、軸10方向に隣り合う2本のダイポールアンテナ1間に同一の励振振幅と同一の励振位相を印加することにより、高利得化できる。
【0020】
(第3の実施例)
次に、第3の実施例を図3乃至5に基づいて説明する。図3に示すように、第3の実施例によるアンテナ装置11cは、図2に示す第2の実施例のアンテナ装置11bと同じ構成であり、軸10方向に直交する方向に離間しているダイポールアンテナ1間の間隔(中心軸10間)d1は、0.125波長または0.25波長のいずれかの長さである。
また、ダイポールアンテナ1の直径Rは0.067波長とした。
【0021】
励振振幅・位相差については、図4及び図5にそれぞれ示しており、これらの図はモーメント法の解析により求めたものである。
図4は、メインローブのビーム幅とバックローブ特性の励振振幅比依存性を表わした図で、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が0.125波長の場合と0.25波長の場合のシミュレーション結果である。
また、図5は、メインローブのビーム幅とバックローブ特性の励振位相差依存性を表わした図で、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が0.125波長の場合と0.25波長の場合のシミュレーション結果ある。ここで、信号波長は短波あるいはVUHF帯を想定している。
【0022】
図4において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.125倍の場合、励振振幅比が10分の1以上2.7分の1以下であれば、−15dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。あるいは、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.25倍の場合、励振振幅比が6分の1以上1.9分の1以下であれば、15dB以上のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。
【0023】
そして、図5において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.125倍の場合、励振位相差が20度以上100度以下であれば、−15dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。あるいは、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.25倍の場合、励振位相差が20度以上83度以下であれば、−15dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。
【0024】
なお、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が0.125波長以上0.25波長以下の場合の特性は、図4および図5から補間することが可能である。
ここで、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1を0.125波長から0.25波長とした場合、励振条件として、励振振幅比を10分の1以上1.9分の1以下とし、励振位相差を20度以上100度以下とすると、バックローブ特性の最悪値は−15dB以下に抑えることができる。これにより、後方からの干渉抑圧が必要となる無線システムの基地局でも使用することができる。
【0025】
従って、−15dB以下のバックローブ特性を確保するためには、ダイポールアンテナ1の平行間隔d1を適用しようとする周波数における自由空間波長の0.125倍以上0.25倍以下の間隔とし、かつ2つのダイポールアンテナ1の励振条件として、励振振幅比を10分の1以上1.9分の1以下とし、励振位相差を20度以上100度以下とすればよいことが分かる。
本実施例では、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が0.125波長以上0.25波長以下に対し、ダイポールアンテナ1の直径Rは0.067波長であることから、R/d1は1/2強から1/4強となっており、素子アンテナ間の相互結合の影響が生じうる状況にある。然るに、本実施例構成では、素子アンテナ間の相互結合を考慮しつつ、十分なバックローブ特性が確保されていることが各図より示されている。
なお、例えば285MHzの周波数を用いる場合、0.067波長は70mmに相当することから、285MHzではダイポールアンテナ1の直径R=70mmのアンテナを、ダイポールアンテナ1間の間隔d1が130mm以上260mm以下で配置することに相当する。なお、ダイポールアンテナ1の直径Rが70mmあれば、機械的強度は十分である。
【0026】
(第4の実施例)
更に、バックローブ特性を向上させる場合は、以下に記載の第4の実施例の手法を用いればよい。第4の実施例では、図3に示す第3の実施例のアンテナ装置11cを用いており、励振振幅・位相差も図4及び図5に示す第3の実施例の励振振幅・位相差と同じである。
【0027】
図4において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.125倍の場合、励振振幅比が6分の1以上2.7分の1以下であれば、−20dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。そして、図5において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.125倍の場合、励振位相差が35度以上80度以下であれば、−20dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。
従って、−20dB以下のバックローブ特性を確保するためには、隣り合うダイポールアンテナ1の平行間隔d1を適用しようとする周波数における自由空間波長の0.125の間隔とし、かつ2つのダイポールアンテナ1の励振条件として、励振振幅比を6分の1以上2.7分の1以下とし、励振位相差を35度以上80度以下とすればよいことが分かる。
【0028】
ここで、本実施例における、水平面指向特性のシミュレーション結果を図6に示す。
コリニアアンテナ7においては、同一直線上に同一のダイポールアンテナ1を0.5波長間隔で配置したものとしている。励振振幅4分の1、励振位相差60度とした場合の水平面指向特性を図6に示す。図6からもバックローブ特性が−30dBとなっていることがわかる。
【0029】
(第5の実施例)
また、第4の実施例と別の方法でバックローブ特性を向上させる場合は、以下に記載の第5の実施例の手法を用いればよい。第5の実施例では、図3に示す第3の実施例のアンテナ装置11cを用いており、励振振幅・位相差も図4及び図5に示す第3の実施例の励振振幅・位相差と同じである。
図4において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.25倍の場合、励振振幅比が4.3分の1以上2.1分の1以下であれば、20dB以上のバックローブ特性を確保できることがわかる。そして、図5において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.25倍の場合、励振位相差が32度以上70度以下であれば、−20dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。
従って、−20dB以下のバックローブ特性を確保するためには、ダイポールアンテナ1の平行間隔d1を適用しようとする周波数における自由空間波長の0.25の間隔とし、かつ2つの素子アンテナの励振条件として、励振振幅比を4.3分の1以上2.1分の1以下とし、励振位相差を32度以上70度以下とすればよいことが分かる。
【0030】
ここで、本実施例における水平面指向特性のシミュレーション結果を図7に示す。
コリニアアンテナ7においては、同一直線上に同一のアンテナを0.5波長間隔で配置したものとしている。励振振幅4分の1、励振位相差60度とした場合の水平面指向特性を図7に示す。同図からもバックローブ特性が−20dB以下となっていることがわかる。
【0031】
(第6の実施例)
次に、第6の実施例を図8〜図10に基づいて説明する。
図8に示すように、1はダイポールアンテナ、7は同一直線上に2つの同一のダイポールアンテナ1が配列されたコリニアアンテナ、8はセクタアンテナを示している。
第6の実施例では、2つのコリニアアンテナ7がその軸10方向に直交する方向(図中のy軸方向)に所定の間隔d1をあけて平行に設置されていて、4つのダイポールアンテナ1が同一平面9上に配設されセクタアンテナ8を構成している。2つのコリニアアンテナ7は、軸10方向(図中のz軸方向)の位置が同じである。
そして、2つのセクタアンテナ8が平面9に直交する方向に0.5波長分互いに間隔をあけて平行に配設されて第6の実施例によるセクタアンテナ装置11dを構成している。
2つのセクタアンテナ8はz軸方向に0.5波長分(図中のd3)ずらして配設されている。
【0032】
上述したように、複数のダイポールアンテナ1をx軸方向およびz軸方向に位置整合させて同一平面上に配置することにより、指向性アンテナを実現し、かつz軸方向の指向性を絞ることで高利得化を実現するコリニアアンテナ7構成とすることができる。さらに、それらのコリニアアンテナ7をセクタアンテナ8とし、y軸方向に0.5波長分、互いに間隔d2をあけて配置することで方向推定用に使用することを想定したものである。
【0033】
なお、通常、方向推定用にy軸方向に同一のアンテナをそのまま配置すると相互結合により指向特性の劣化が生じる。そこで、y軸方向に配置するだけでなく、z軸方向にセクタアンテナ8を互いにずらして設置することで相互結合を抑える方法を用いている。
【0034】
なお、図9に0.5波長間隔でセクタアンテナ8をz軸方向にずらして設置した場合にどの程度特性劣化を抑えられるかを、モーメント法を用いて解析した結果を示している。同図から一方のセクタアンテナ8同士のz軸方向のずれを0.2波長から1.0波長として配置した場合にはバックローブ特性は−15dB以下に改善でき、さらに、0.38波長から0.7波長分ずらして配置した場合にはバックローブ特性は−20dB以下に改善することが可能となる。
一例として0.5波長ずらした場合の水平面指向特性を図10に示す。同図からメインローブの劣化が小さく、またバックローブ特性は−20dB以下(180°方向)に抑えられることがわかる。
【0035】
次に、上述したアンテナ装置およびセクタアンテナ装置の効果について図面を用いて説明する。
モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ1、スロットアンテナは、低コストで軽量かつ受風面積の少ないアンテナである。これらのアンテナを用い指向性のあるアンテナ装置を作成する場合、これらのアンテナを素子アンテナとし、位相差を持たせた給電を行う方法が存在する。しかし、素子アンテナは、素子アンテナの直径が大きいほど機械的強度を得ることが出来、また、素子アンテナの直径が大きいほど相互結合が大きく従来法ではバックローブ特性が悪くなる、という二律背反の関係があった。
本願発明では、素子アンテナ間の相互結合を考慮しつつ、十分なバックローブ特性を満たしたアンテナ装置の実現技術を提供するものである。従って、十分な機械的強度(直径)を有するモノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、スロットアンテナを素子アンテナとした指向性のあるアンテナ装置において、十分なバックローブ特性を満たした平面指向性を有するアンテナ装置を提供することが可能となる。これにより、低コストで軽量かつ受風面積の少ない上に、十分な機械的強度と十分なバックローブ特性と有する指向性アンテナを提供できる。
【0036】
以上、本発明によるアンテナ装置およびセクタアンテナ装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した第2乃至第6実施例では、コリニアアンテナ7は、ダイポールアンテナ1を軸10方向に2つ配設しているが、2つ以上のダイポールアンテナ1を配設したコリニアアンテナ7としてもよい。
また、上記の第6の実施例では、セクタアンテナ装置11dは2つのセクタアンテナ8によって構成されているが、セクタアンテナ装置11dに2つ以上のセクタアンテナ8を配設してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 ダイポールアンテナ
7 コリニアアンテナ
8 セクタアンテナ
9 平面
10 軸
11a、11b、11c アンテナ装置
11d セクタアンテナ装置
d1、d2 間隔
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分な機械的強度と十分なバックローブ特性と有するアンテナ装置およびセクタアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型指向性アンテナを実現するための従来の技術の例として、非特許文献1に示す位相差給電2素子ダイポールアレイアンテナがある。本例では、図11および図12に示すように、2素子アレーアンテナに90度の位相差もって給電を行うもので、図中の21はダイポールアンテナ、22は給電点、23はモノポールアンテナ、24は地板、25はハイブリット移相器であり、26は給電線路を示している。
【0003】
ダイポールアンテナ21もしくはモノポールアンテナ23を0.25波長間隔で配置し(図11参照)、給電位相差として90度を与えて給電することを提案したものである。ここで、給電点22の電圧が「+1[V]」と「−j[V]」(jは虚数単位)と記載されていることから明らかなように、従来技術では、励振条件は、励振振幅比を1(1:1)、励振位相差を90度(Arctan((−j)/(+1))の絶対値)としているのは明らかである。
また、非特許文献1の実験では、図12に示すように地板24の上にモノポールアンテナ23を配置し、かつ励振条件位相差90度を等電力で分配できるハイブリット回路25を用いて給電線路26を用いて給電している。ここでも、ハイブリット移相器25から2本のアンテナに対する出力が「−90°」と「−180°」と記載されていることから明らかなように、従来技術では、励振条件は、励振位相差を90度(−90°と−180°の差)としているのは明らかである。
さらに、非特許文献1では、周波数をf=2.45GHzと規定していることから、自由空間における波長λは、λ=c/f=122.4mmであることから、素子アンテナの間隔は、自由空間波長の0.25倍であることがわかる(cは自由空間における光速で、299,792,458m/s)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】江良孝太朗、「位相差給電2素子ダイポールアレイアンテナ」、電子情報通信学会ソサイエティ大会、2005年、B−1 P130
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非特許文献1では、まず、バックローブ特性が十分なものとはいえない。さらに、素子アンテナの直径が2mmでありこれでは、実際の屋外に設置することを想定した機械的強度を有したものとはいえない。さらに、素子アンテナの機械的強度を持たせるために太いパイプ状金属を用いる場合、素子アンテナ間の相互結合による設計からのずれについては想定していないことから、バックローブ特性が劣化する可能性がある。
そして、素子アンテナ間の相互結合が存在することから、非特許文献1による構成では、高利得化するためにコリニアアレー構成に発展させることや、方向推定用に複数のアンテナを近接させて配置することにより発生する特性劣化を抑えることは困難である。
【0006】
また、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、スロットアンテナは、低コストで軽量かつ受風面積の少ないアンテナである。これらのアンテナを用い指向性のあるアンテナ装置を作成する場合、これらのアンテナを素子アンテナとし、位相差を持たせた給電を行う方法が存在する。しかし、素子アンテナは、その直径が大きいほど機械的強度を得ることができ、また、直径が大きいほど相互結合が大きく従来法ではバックローブ特性が悪くなるという二律背反の関係があった。
【0007】
本発明は、上述する事情に鑑みてなされたもので、機械的強度および素子アンテナ間の相互結合を考慮しつつ、十分なバックローブ特性を満たしたアンテナ装置およびセクタアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るアンテナ装置は、2つのモノポールアンテナ、もしくは、ダイポールアンテナ、もしくは、スロットアンテナのいずれか1つを素子アンテナとするアンテナ装置において、2つの前記素子アンテナが、その軸方向に直交する方向に互いに間隔をあけて軸方向に対する位置をあわせて平行に配設されると共に、励振条件が励振振幅比を1未満の正数とすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るアンテナ装置は、2つのモノポールアンテナ、もしくは、ダイポールアンテナ、もしくは、スロットアンテナのいずれか1つを素子アンテナとするアンテナ装置において、複数の前記素子アンテナが同一直線上に配設されてコリニアアンテナを構成し、2つの前記コリニアアンテナが、その軸方向に直交する方向に互いに間隔をあけて軸方向に対する位置をあわせて平行に配設されると共に、励振条件が励振振幅比を1未満の正数とすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るアンテナ装置は、前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.125倍以上0.25倍以下とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が10分の1以上1.9分の1以下とし、励振位相差が20度以上100度以下としてもよい。
【0011】
また、本発明に係るアンテナ装置は、前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.125倍とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が6分の1以上2.7分の1以下とし、励振位相差が35度以上80度以下としてもよい。
【0012】
また、本発明に係るアンテナ装置は、前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.25倍とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が4.3分の1以上2.1分の1以下とし、励振位相差が32度以上70度以下としてもよい。
【0013】
また、本発明に係るセクタアンテナ装置は、上記のアンテナ装置を前記素子アンテナが同一平面上に配列されたセクタアンテナとし、複数の前記セクタアンテナが配列されたセクタアンテナ装置であって、複数の前記セクタアンテナは前記平面に直交する方向に互いに間隔をあけて配列され、前記素子アンテナの軸方向の位置が互いにずれていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るセクタアンテナ装置は、配列された前記セクタアンテナは、前記平面に直交する方向の間隔が自由空間波長の0.5倍であり、かつ前記素子アンテナの軸方向の位置のずれが自由空間波長の0.2倍以上1.0倍以下、もしくは0.38倍以上0.7倍以下であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るセクタアンテナ装置は、セクタアンテナは2つとし、かつ、一方のセクタアンテナの励振振幅は0であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願発明では、素子アンテナ間の相互結合を考慮しつつ、十分なバックローブ特性を満たしたアンテナ装置およびセクタアンテナ装置の実現技術を提供することができる。従って、十分な機械的強度(直径)を有するモノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、スロットアンテナを素子アンテナとした指向性のあるアンテナ装置において、十分なバックローブ特性を満たした平面指向性を有するアンテナ装置およびセクタアンテナ装置を提供することが可能となる。これにより、低コストで軽量かつ受風面積の少ない上に、十分な機械的強度と十分なバックローブ特性と有する指向性アンテナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施例の一例を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施例の一例を示す図である。
【図3】本発明の第3、4、5の実施例の一例を示す図である。
【図4】本発明の第3、4、5の実施例を説明する図で、メインローブのビーム幅とバックローブ特性の励振振幅比依存性を表わした図である。
【図5】本発明の第3、4、5の実施例を説明する図で、メインローブのビーム幅とバックローブ特性の励振位相差依存性を表わした図である。
【図6】本発明の第4の実施例による水平面指向特性のシミュレーション結果である。
【図7】本発明の第5の実施例による水平面指向特性のシミュレーション結果である。
【図8】本発明の第6の実施例を示す図である。
【図9】本発明の第6の実施例を説明するための図である。
【図10】本発明の第6の実施例を説明するための図である。
【図11】従来の位相差給電アンテナ構成を説明するための図である。
【図12】従来の位相差給電アンテナ構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施例)
以下、本願発明の第1の実施例を図1に基づいて説明する。
図1において、1はダイポールアンテナであり、第一の実施例のアンテナ装置11aはダイポールアンテナ1が素子アンテナとして構成されている。
アンテナ装置11aでは、2つのダイポールアンテナ1がその軸10方向を同じくし、軸10方向に直交する方向に所定の間隔d1をあけて平行に設置されている。2つのダイポールアンテナ1は、軸10方向に対する位置が同じである。
ダイポールアンテナ1の励振条件であるが、励振振幅比は1未満の正数である。
なお、本実施例では、素子アンテナとしてダイポールアンテナ1を用いているが、ダイポールアンテナ1に代わってモノポールアンテナ、もしくは、スロットアンテナを用いることも可能である。これは本実施例に限らず、以降のすべての実施例に適応できるが、以降はダイポールアンテナ1の例で説明を行う。
【0019】
(第2の実施例)
次に、第2の実施例を図2に基づいて説明する。
図2において、7は2つのダイポールアンテナ1を同一直線上に配設し、それらの軸10方向を合わせてつなぎ合わせてアレー化したコリニアアンテナを示している。
第2の実施例のアンテナ装置11bでは、2つのコリニアアンテナ7がその軸10方向に直交する方向に所定の間隔d1をあけて平行に設置されている。2つのコリニアアンテナ7は、軸10方向に対する位置が同じである。アンテナ装置11bを構成する複数のダイポールアンテナ1は、同一平面9上に配列されている。
ここで、軸10方向に直交する方向に隣り合う2本のダイポールアンテナ1の間に励振振幅・位相差を与えて給電することにより、水平面(平面9に直交する面)指向の指向性を実現することができ、かつ、軸10方向に隣り合う2本のダイポールアンテナ1間に同一の励振振幅と同一の励振位相を印加することにより、高利得化できる。
【0020】
(第3の実施例)
次に、第3の実施例を図3乃至5に基づいて説明する。図3に示すように、第3の実施例によるアンテナ装置11cは、図2に示す第2の実施例のアンテナ装置11bと同じ構成であり、軸10方向に直交する方向に離間しているダイポールアンテナ1間の間隔(中心軸10間)d1は、0.125波長または0.25波長のいずれかの長さである。
また、ダイポールアンテナ1の直径Rは0.067波長とした。
【0021】
励振振幅・位相差については、図4及び図5にそれぞれ示しており、これらの図はモーメント法の解析により求めたものである。
図4は、メインローブのビーム幅とバックローブ特性の励振振幅比依存性を表わした図で、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が0.125波長の場合と0.25波長の場合のシミュレーション結果である。
また、図5は、メインローブのビーム幅とバックローブ特性の励振位相差依存性を表わした図で、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が0.125波長の場合と0.25波長の場合のシミュレーション結果ある。ここで、信号波長は短波あるいはVUHF帯を想定している。
【0022】
図4において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.125倍の場合、励振振幅比が10分の1以上2.7分の1以下であれば、−15dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。あるいは、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.25倍の場合、励振振幅比が6分の1以上1.9分の1以下であれば、15dB以上のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。
【0023】
そして、図5において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.125倍の場合、励振位相差が20度以上100度以下であれば、−15dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。あるいは、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.25倍の場合、励振位相差が20度以上83度以下であれば、−15dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。
【0024】
なお、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が0.125波長以上0.25波長以下の場合の特性は、図4および図5から補間することが可能である。
ここで、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1を0.125波長から0.25波長とした場合、励振条件として、励振振幅比を10分の1以上1.9分の1以下とし、励振位相差を20度以上100度以下とすると、バックローブ特性の最悪値は−15dB以下に抑えることができる。これにより、後方からの干渉抑圧が必要となる無線システムの基地局でも使用することができる。
【0025】
従って、−15dB以下のバックローブ特性を確保するためには、ダイポールアンテナ1の平行間隔d1を適用しようとする周波数における自由空間波長の0.125倍以上0.25倍以下の間隔とし、かつ2つのダイポールアンテナ1の励振条件として、励振振幅比を10分の1以上1.9分の1以下とし、励振位相差を20度以上100度以下とすればよいことが分かる。
本実施例では、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が0.125波長以上0.25波長以下に対し、ダイポールアンテナ1の直径Rは0.067波長であることから、R/d1は1/2強から1/4強となっており、素子アンテナ間の相互結合の影響が生じうる状況にある。然るに、本実施例構成では、素子アンテナ間の相互結合を考慮しつつ、十分なバックローブ特性が確保されていることが各図より示されている。
なお、例えば285MHzの周波数を用いる場合、0.067波長は70mmに相当することから、285MHzではダイポールアンテナ1の直径R=70mmのアンテナを、ダイポールアンテナ1間の間隔d1が130mm以上260mm以下で配置することに相当する。なお、ダイポールアンテナ1の直径Rが70mmあれば、機械的強度は十分である。
【0026】
(第4の実施例)
更に、バックローブ特性を向上させる場合は、以下に記載の第4の実施例の手法を用いればよい。第4の実施例では、図3に示す第3の実施例のアンテナ装置11cを用いており、励振振幅・位相差も図4及び図5に示す第3の実施例の励振振幅・位相差と同じである。
【0027】
図4において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.125倍の場合、励振振幅比が6分の1以上2.7分の1以下であれば、−20dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。そして、図5において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.125倍の場合、励振位相差が35度以上80度以下であれば、−20dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。
従って、−20dB以下のバックローブ特性を確保するためには、隣り合うダイポールアンテナ1の平行間隔d1を適用しようとする周波数における自由空間波長の0.125の間隔とし、かつ2つのダイポールアンテナ1の励振条件として、励振振幅比を6分の1以上2.7分の1以下とし、励振位相差を35度以上80度以下とすればよいことが分かる。
【0028】
ここで、本実施例における、水平面指向特性のシミュレーション結果を図6に示す。
コリニアアンテナ7においては、同一直線上に同一のダイポールアンテナ1を0.5波長間隔で配置したものとしている。励振振幅4分の1、励振位相差60度とした場合の水平面指向特性を図6に示す。図6からもバックローブ特性が−30dBとなっていることがわかる。
【0029】
(第5の実施例)
また、第4の実施例と別の方法でバックローブ特性を向上させる場合は、以下に記載の第5の実施例の手法を用いればよい。第5の実施例では、図3に示す第3の実施例のアンテナ装置11cを用いており、励振振幅・位相差も図4及び図5に示す第3の実施例の励振振幅・位相差と同じである。
図4において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.25倍の場合、励振振幅比が4.3分の1以上2.1分の1以下であれば、20dB以上のバックローブ特性を確保できることがわかる。そして、図5において、隣り合うダイポールアンテナ1間の間隔d1が自由空間波長の0.25倍の場合、励振位相差が32度以上70度以下であれば、−20dB以下のバックローブ特性を確保することが出来ることがわかる。
従って、−20dB以下のバックローブ特性を確保するためには、ダイポールアンテナ1の平行間隔d1を適用しようとする周波数における自由空間波長の0.25の間隔とし、かつ2つの素子アンテナの励振条件として、励振振幅比を4.3分の1以上2.1分の1以下とし、励振位相差を32度以上70度以下とすればよいことが分かる。
【0030】
ここで、本実施例における水平面指向特性のシミュレーション結果を図7に示す。
コリニアアンテナ7においては、同一直線上に同一のアンテナを0.5波長間隔で配置したものとしている。励振振幅4分の1、励振位相差60度とした場合の水平面指向特性を図7に示す。同図からもバックローブ特性が−20dB以下となっていることがわかる。
【0031】
(第6の実施例)
次に、第6の実施例を図8〜図10に基づいて説明する。
図8に示すように、1はダイポールアンテナ、7は同一直線上に2つの同一のダイポールアンテナ1が配列されたコリニアアンテナ、8はセクタアンテナを示している。
第6の実施例では、2つのコリニアアンテナ7がその軸10方向に直交する方向(図中のy軸方向)に所定の間隔d1をあけて平行に設置されていて、4つのダイポールアンテナ1が同一平面9上に配設されセクタアンテナ8を構成している。2つのコリニアアンテナ7は、軸10方向(図中のz軸方向)の位置が同じである。
そして、2つのセクタアンテナ8が平面9に直交する方向に0.5波長分互いに間隔をあけて平行に配設されて第6の実施例によるセクタアンテナ装置11dを構成している。
2つのセクタアンテナ8はz軸方向に0.5波長分(図中のd3)ずらして配設されている。
【0032】
上述したように、複数のダイポールアンテナ1をx軸方向およびz軸方向に位置整合させて同一平面上に配置することにより、指向性アンテナを実現し、かつz軸方向の指向性を絞ることで高利得化を実現するコリニアアンテナ7構成とすることができる。さらに、それらのコリニアアンテナ7をセクタアンテナ8とし、y軸方向に0.5波長分、互いに間隔d2をあけて配置することで方向推定用に使用することを想定したものである。
【0033】
なお、通常、方向推定用にy軸方向に同一のアンテナをそのまま配置すると相互結合により指向特性の劣化が生じる。そこで、y軸方向に配置するだけでなく、z軸方向にセクタアンテナ8を互いにずらして設置することで相互結合を抑える方法を用いている。
【0034】
なお、図9に0.5波長間隔でセクタアンテナ8をz軸方向にずらして設置した場合にどの程度特性劣化を抑えられるかを、モーメント法を用いて解析した結果を示している。同図から一方のセクタアンテナ8同士のz軸方向のずれを0.2波長から1.0波長として配置した場合にはバックローブ特性は−15dB以下に改善でき、さらに、0.38波長から0.7波長分ずらして配置した場合にはバックローブ特性は−20dB以下に改善することが可能となる。
一例として0.5波長ずらした場合の水平面指向特性を図10に示す。同図からメインローブの劣化が小さく、またバックローブ特性は−20dB以下(180°方向)に抑えられることがわかる。
【0035】
次に、上述したアンテナ装置およびセクタアンテナ装置の効果について図面を用いて説明する。
モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ1、スロットアンテナは、低コストで軽量かつ受風面積の少ないアンテナである。これらのアンテナを用い指向性のあるアンテナ装置を作成する場合、これらのアンテナを素子アンテナとし、位相差を持たせた給電を行う方法が存在する。しかし、素子アンテナは、素子アンテナの直径が大きいほど機械的強度を得ることが出来、また、素子アンテナの直径が大きいほど相互結合が大きく従来法ではバックローブ特性が悪くなる、という二律背反の関係があった。
本願発明では、素子アンテナ間の相互結合を考慮しつつ、十分なバックローブ特性を満たしたアンテナ装置の実現技術を提供するものである。従って、十分な機械的強度(直径)を有するモノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、スロットアンテナを素子アンテナとした指向性のあるアンテナ装置において、十分なバックローブ特性を満たした平面指向性を有するアンテナ装置を提供することが可能となる。これにより、低コストで軽量かつ受風面積の少ない上に、十分な機械的強度と十分なバックローブ特性と有する指向性アンテナを提供できる。
【0036】
以上、本発明によるアンテナ装置およびセクタアンテナ装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した第2乃至第6実施例では、コリニアアンテナ7は、ダイポールアンテナ1を軸10方向に2つ配設しているが、2つ以上のダイポールアンテナ1を配設したコリニアアンテナ7としてもよい。
また、上記の第6の実施例では、セクタアンテナ装置11dは2つのセクタアンテナ8によって構成されているが、セクタアンテナ装置11dに2つ以上のセクタアンテナ8を配設してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 ダイポールアンテナ
7 コリニアアンテナ
8 セクタアンテナ
9 平面
10 軸
11a、11b、11c アンテナ装置
11d セクタアンテナ装置
d1、d2 間隔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのモノポールアンテナ、もしくは、ダイポールアンテナ、もしくは、スロットアンテナのいずれか1つを素子アンテナとするアンテナ装置において、
2つの前記素子アンテナが、その軸方向に直交する方向に互いに間隔をあけて軸方向に対する位置をあわせて平行に配設されると共に、励振条件が励振振幅比を1未満の正数とすることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
2つのモノポールアンテナ、もしくは、ダイポールアンテナ、もしくは、スロットアンテナのいずれか1つを素子アンテナとするアンテナ装置において、
複数の前記素子アンテナが同一直線上に配設されてコリニアアンテナを構成し、2つの前記コリニアアンテナが、その軸方向に直交する方向に互いに間隔をあけて軸方向に対する位置をあわせて平行に配設されると共に、励振条件が励振振幅比を1未満の正数とすることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアンテナ装置において、
前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.125倍以上0.25倍以下とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が10分の1以上1.9分の1以下とし、励振位相差が20度以上100度以下とすることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のアンテナ装置において、
前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.125倍とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が6分の1以上2.7分の1以下とし、励振位相差が35度以上80度以下とすることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のアンテナ装置において、
前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.25倍とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が4.3分の1以上2.1分の1以下とし、励振位相差が32度以上70度以下とすることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のアンテナ装置を前記素子アンテナが同一平面上に配列されたセクタアンテナとし、複数の前記セクタアンテナが配列されたセクタアンテナ装置であって、
複数の前記セクタアンテナは前記平面に直交する方向に互いに間隔をあけて配列され、前記素子アンテナの軸方向に対する位置が互いにずれていることを特徴とするセクタアンテナ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のセクタアンテナ装置において、
配列された前記セクタアンテナは、前記平面に直交する方向の間隔が自由空間波長の0.5倍であり、かつ前記素子アンテナの軸方向に対する位置のずれが自由空間波長の0.2倍以上1.0倍以下、もしくは0.38倍以上0.7倍以下であることを特徴とするセクタアンテナ装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のセクタアンテナ装置において、セクタアンテナは2つとし、かつ、一方のセクタアンテナの励振振幅は0であることを特徴とするセクタアンテナ装置。
【請求項1】
2つのモノポールアンテナ、もしくは、ダイポールアンテナ、もしくは、スロットアンテナのいずれか1つを素子アンテナとするアンテナ装置において、
2つの前記素子アンテナが、その軸方向に直交する方向に互いに間隔をあけて軸方向に対する位置をあわせて平行に配設されると共に、励振条件が励振振幅比を1未満の正数とすることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
2つのモノポールアンテナ、もしくは、ダイポールアンテナ、もしくは、スロットアンテナのいずれか1つを素子アンテナとするアンテナ装置において、
複数の前記素子アンテナが同一直線上に配設されてコリニアアンテナを構成し、2つの前記コリニアアンテナが、その軸方向に直交する方向に互いに間隔をあけて軸方向に対する位置をあわせて平行に配設されると共に、励振条件が励振振幅比を1未満の正数とすることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアンテナ装置において、
前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.125倍以上0.25倍以下とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が10分の1以上1.9分の1以下とし、励振位相差が20度以上100度以下とすることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のアンテナ装置において、
前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.125倍とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が6分の1以上2.7分の1以下とし、励振位相差が35度以上80度以下とすることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のアンテナ装置において、
前記素子アンテナの平行間隔は適用する周波数における自由空間波長の0.25倍とし、かつ2つの前記素子アンテナの励振条件は、励振振幅比が4.3分の1以上2.1分の1以下とし、励振位相差が32度以上70度以下とすることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のアンテナ装置を前記素子アンテナが同一平面上に配列されたセクタアンテナとし、複数の前記セクタアンテナが配列されたセクタアンテナ装置であって、
複数の前記セクタアンテナは前記平面に直交する方向に互いに間隔をあけて配列され、前記素子アンテナの軸方向に対する位置が互いにずれていることを特徴とするセクタアンテナ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のセクタアンテナ装置において、
配列された前記セクタアンテナは、前記平面に直交する方向の間隔が自由空間波長の0.5倍であり、かつ前記素子アンテナの軸方向に対する位置のずれが自由空間波長の0.2倍以上1.0倍以下、もしくは0.38倍以上0.7倍以下であることを特徴とするセクタアンテナ装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のセクタアンテナ装置において、セクタアンテナは2つとし、かつ、一方のセクタアンテナの励振振幅は0であることを特徴とするセクタアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−66697(P2011−66697A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215777(P2009−215777)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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