説明

アンテナ装置及びこれを搭載した携帯無線端末

【課題】携帯無線端末内に、同一周波数帯だけでなく異なる周波数帯も含めて動作する複数のアンテナ素子を近接して配置する構成において、広帯域に高いアイソレーションを実現し、低結合で高利得な性能を実現する。
【解決手段】第一接続回路108は、第一の周波数帯域における第一アンテナ素子106と第二アンテナ素子107との間の相互結合インピーダンスをキャンセルするように調節され、アンテナ素子間の結合劣化を軽減する。また、第二の周波数帯に対応した第二周波数帯用遮断回路111を第一アンテナ素子106と第一給電部104の間に配置する。この構成により、携帯無線端末において、同一周波数帯では低結合化して高いアイソレーションを確保するとともに、異なる周波数帯では遮断回路を用いることでアンテナの動作体積を拡大し、高利得な性能を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯無線端末用アンテナに関する技術であって、2つの素子間で広帯域に高いアイソレーションを実現するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの携帯無線端末は、電話機能や電子メール機能、インターネット等へのアクセス機能だけに留まらず、近距離無線通信機能、無線LAN機能、GPS機能、TV視聴機能、ICカード決済機能など、ますます多機能化が進んでいる。このような多機能化に伴って、携帯無線端末に搭載されるアンテナの数は増加傾向にあり、複数のアンテナ素子間の結合に伴うアンテナ性能の劣化が、深刻な課題となっている。
【0003】
一方、携帯無線端末では、デザイン性及び携帯性の観点からさらなる小型化、高集積化が望まれる中、装置の小型化を図りつつ、良好なアンテナ特性を維持するためには、アンテナ素子の配置及びアンテナ素子同士の結合に対して種々の工夫が必要となる。また、給電経路やアンテナ素子数をできる限り少なくし、結合劣化対策を施した高性能なアンテナシステムが求められる。
【0004】
このようなアンテナ素子間の結合の問題に対応する従来の携帯無線機としては、例えば特許文献1及び非特許文献1に開示されているように、アレーアンテナ素子の給電部間を接続するように接続回路を挿入し、アンテナ間の相互結合インピーダンスをキャンセルすることで、アンテナ間の低相関を実現する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0258991号明細書(例えば第6A図)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】” Decoupling and descattering networks for antennas”, IEEE Transactions on Antennas and Propagation, vol.24 Issue6 Nov. 1976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1記載の従来構成は、同一周波数帯で動作することが前提であり、異なる周波数帯で動作する場合に関しては言及されていない。このため、同一周波数帯だけでなく、異なる周波数帯も含めて動作する複数のアンテナ素子を近接して配置する場合、異なる周波数帯は結合劣化が生じるという課題があった。
【0008】
本発明は、同一周波数を含む、複数の周波数帯で動作する2素子以上のアンテナが搭載される携帯無線端末において、上記課題を解決するために、同一周波数帯では低結合化して高いアイソレーションを確保するとともに、異なる周波数帯では遮断回路を用いることでアンテナの動作体積を拡大し、高利得な性能を実現できるアンテナ装置及びこれを搭載した携帯無線端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアンテナ装置は、筐体と、前記筐体に設けられたグランドパターンを有する回路基板と、導電性の金属で構成された第一の周波数帯域で動作する第一アンテナ素子と、導電性の金属で構成された第一及び第二の周波数帯域で動作する第二アンテナ素子と、前記第一アンテナ素子と前記第二アンテナ素子の一部を電気的に接続する第一接続回路と、前記回路基板に配置された第一無線回路部と、前記第一無線回路に電気的に接続された第一給電部と、前記回路基板に配置された第二無線回路部と、前記第二無線回路に電気的に接続された第二給電部と、前期第二の周波数帯域を電気的に遮断する第二周波数帯用遮断回路とを具備し、前記第一アンテナ素子及び前記第二アンテナ素子は、前記回路基板上のグランドパターンと、所定の間隔を隔てて互いに近接して配置されるとともに、前記第一アンテナ素子は、前記第二周波数帯用遮断回路を介して前記第一給電部に電気的に接続され、前記第二アンテナ素子は、前記第二給電部に電気的に接続され、前記第一接続回路は、前記第一の周波数帯域における前記第一アンテナ素子と前記第二アンテナ素子との間の相互結合インピーダンスをキャンセルする。
【0010】
この構成により、第一の周波数帯域は低結合回路により前記第一アンテナ素子と前記第二アンテナ素子との間に発生する逆位相の電流を低下させることで高効率のアンテナを得ることができる。また、第二の周波数帯域では第二周波数帯用遮断回路により第一給電部で消費される電力を抑えることができるとともに、アンテナの動作体積の拡大により高効率のアンテナを得ることができる。
【0011】
また、本発明のアンテナ装置は、前記第一アンテナ素子が、第一インピーダンス整合回路を介して前記第一給電部と電気的に接続される、もしくは、前記第二アンテナ素子が、第二インピーダンス整合回路を介して前記第二給電部と電気的に接続される。
この構成により、所望の周波数帯域において、より低結合なアンテナ特性を実現できる。
【0012】
また、本発明のアンテナ装置は、前記第1アンテナ素子又は前記第二アンテナ素子のいずれか、または両方の、一部もしくは全てが、プリント基板上の銅箔パターンで構成される。
【0013】
この構成により、高精度にアンテナ素子を配置することができ、量産性の良いアンテナを実現できる。
【0014】
また、本発明のアンテナ装置は、前記第一のアンテナ素子は前記第一の周波数帯域よりも高い第三の周波数帯域及び前記第一の周波数帯域で動作し、前記第二のアンテナ素子は前記第一の周波数帯域よりも低い第二の周波数帯域及び前記第一の周波数帯域で動作し、前期第三の周波数帯域を電気的に遮断する第三周波数帯用遮断回路が、前記第二アンテナ素子と前記第二給電部の間で電気的に接続される。
【0015】
この構成により、第一の周波数帯域は低結合回路により前記第一アンテナ素子と前記第二アンテナ素子との間に発生する逆位相の電流を低下させることで高効率のアンテナを得ることができる。また、第二の周波数帯域では第二周波数帯用遮断回路により第一給電部で消費される電力を抑えることができるとともに、アンテナの動作体積の拡大により高効率のアンテナを得ることができる。また、第三の周波数帯域では第三周波数帯用遮断回路により第二給電部で消費される電力を抑えることができるとともに、アンテナの動作体積の拡大により高効率のアンテナを得ることができる。
【0016】
また、本発明のアンテナ装置を携帯無線端末に搭載する。
【0017】
この構成により、携帯無線端末のアンテナ特性を向上させることができ、小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアンテナ装置及びこれを搭載した携帯無線端末によれば、同一周波数帯では低結合化して高いアイソレーションを確保するとともに、異なる周波数帯では遮断回路を用いることでアンテナの動作体積を拡大し、高利得な性能を実現するアンテナ装置及びこれを搭載した携帯無線端末を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における携帯無線端末の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における接続回路の具体構成を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における解析条件(1〜4)を示す図
【図4A】本発明の実施の形態1における携帯無線端末の条件1の特性解析モデルを示す図
【図4B】本発明の実施の形態1における携帯無線端末の条件2、3の特性解析モデルを示す図
【図4C】本発明の実施の形態1における携帯無線端末の条件4の特性解析モデルを示す図
【図5A】本発明の実施の形態1の解析条件(1〜4)における携帯無線端末の周波数特性を示す特性図
【図5B】本発明の実施の形態1の解析条件(1〜4)における携帯無線端末の自由空間効率を示す特性図
【図6】本発明の実施の形態2における携帯無線端末の構成図
【図7】本発明の実施の形態3における携帯無線端末の構成図
【図8】本発明の実施の形態3における解析条件(1〜3)を示す図
【図9A】本発明の実施の形態3における携帯無線端末の条件1の特性解析モデルを示す図
【図9B】本発明の実施の形態3における携帯無線端末の条件2、3の特性解析モデルを示す図
【図10A】本発明の実施の形態3の解析条件(1〜3)における携帯無線端末の周波数特性を示す特性図
【図10B】本発明の実施の形態3の解析条件(1〜3)における携帯無線端末の自由空間効率を示す特性図
【図11】本発明の実施の形態3における携帯無線端末の各周波数帯での動作概略図
【図12】本発明の実施の形態4における携帯無線端末の構成図
【図13】本発明の実施の形態5における携帯無線端末の構成図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における携帯無線端末の構成図である。図1に示すように、携帯無線端末100の内部に配置された回路基板101には第一無線回路部102が構成されており、第一給電部104を通じて、導電性の金属で構成された第一アンテナ素子106に高周波信号が供給されている。ここで、第一アンテナ素子106は第一の周波数帯域で動作するような電気的な長さ、例えば第一の周波数帯域の中心周波数にて4分の1波長の長さとする。さらに、回路基板101には第二無線回路部103が構成されており、第二給電部105を通じて、導電性の金属で構成された第二アンテナ素子107に高周波信号が供給されている。ここで、第二アンテナ素子107は第一の周波数帯域及び第二の周波数帯域の両方で動作するような電気的な長さ、例えば第一の周波数帯域と第二の周波数帯域の間の中心周波数で4分の1波長の長さとする。
【0022】
第一アンテナ素子106及び第二アンテナ素子107は、各々単体で配置した状態では、対応した周波数帯で所望の性能を得ることができる。しかしながら、第一アンテナ素子106及び第二アンテナ素子107を、携帯無線端末100の幅方向中央部で第一の周波数帯域の中心周波数に対して0.02波長以下の距離で略平行に配置すると、アンテナ素子間に相互結合インピーダンスが生じ、片方のアンテナ素子に流れた高周波電流が、もう片方のアンテナ素子に誘導電流として流れてしまうことで、結果として共に動作する第一の周波数帯域においてはアンテナの放射性能に劣化が生じてしまう。
【0023】
そこで、第一接続回路108を第一アンテナ素子106及び第二アンテナ素子107の素子間を接続し、アンテナ間の第一の周波数帯域の相互結合インピーダンスをキャンセルすることで、第一の周波数帯域におけるアンテナ素子間の結合劣化を軽減している。
【0024】
なお、このままでは第二給電部から供給された第二の周波数帯域における高周波電流は、第一接続回路108を通じて第一給電部に流れ込んで、第一無線回路の抵抗成分によって損失されてしまうという課題がある。そこで、本発明では、第一アンテナ素子106と第一給電部104の間に、第二の周波数帯域に対応した第二周波数帯用遮断回路111を接続している。これにより、第二給電部から供給された第二の周波数帯域における高周波電流は、第一接続回路108を通じて第一給電部に流れ込むことなく、結合劣化を軽減することができる。
【0025】
また、本構成では、第二給電部から供給された第二の周波数帯域における高周波電流は、第二周波数帯用遮断回路111を配置することで、第二アンテナ素子107のみならず、第一アンテナ素子106にも効果的に流れることになる。このことにより、アンテナの動作体積を拡大でき、第二の周波数帯域における放射効率を向上することができる。
【0026】
さらに、第一アンテナ素子106は第二周波数帯用遮断回路111と第一給電部104の間に接続された第一インピーダンス整合回路109を介すとともに、第二アンテナ素子107は第二インピーダンス整合回路110を介して第二給電部105に接続される。第一インピーダンス整合回路109及び第二インピーダンス整合回路110を配置することで、第一アンテナ素子106のインピーダンス整合と第二アンテナ素子107のインピーダンス整合と、アンテナ素子間の相互結合インピーダンスをキャンセルするための調整をより細かく行うことができ、より結合劣化を軽減する効果が高まる。
【0027】
なお、図1の構成では第一アンテナ素子106、第二アンテナ素子107を導電性の金属部品として説明しているが、一部もしくは全てをプリント基板上に構成した銅箔のパターンで構成しても同様な効果が得られる。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態1における第一接続回路の具体構成を示す図である。図2に示すように、第一接続回路108には(a)コンデンサ、(b)インダクタ、(c)並列共振回路、(d)直列共振回路、(e)メアンダパターンでの構成が可能である。さらにこれ以外の構成でも、フィルタや、パターンで構成したコンデンサなど、等価回路がコンデンサやインダクタの組合せで表現できる構成であって、相互結合インピーダンスを調整できるものであればいずれの構成でも良い。さらにこれらを複数組み合わせた構成であっても良い。
【0029】
なお、図1の構成では、2つのアンテナ素子の間に相互結合が生じるが、インピーダンス整合回路を配置することで、これらの相互結合インピーダンスを総合的に調整することが可能となる。結果的に、第一の周波数帯域及び第二の周波数帯域において、第一給電部104と第二給電部105の間の通過特性であるS12及びS21を低く抑えることができ、結合劣化を軽減できる。
【0030】
続いて、図1の具体的な構成について、性能を解析した事例を示す。以降では、第一の周波数帯域を1.5GHz帯、第二の周波数帯域を800MHz帯、第三の周波数帯域を2.4GHz帯とする。
【0031】
図3は、本発明の実施の形態1における携帯無線端末の特性解析条件を示した表である。1.5GHz帯用接続回路108aは1.5GHz帯に対応することとし、800MHz帯用遮断回路111aおよび2.4GHz帯用遮断回路111bで構成する。条件1から条件4は、1.5GHz帯用接続回路108a及び800MHz帯用遮断回路111a、2.4GHz帯用遮断回路111bの有無により条件が異なる。
【0032】
図4は、本発明の実施の形態1における携帯無線端末の特性解析モデルを示す図である。図4(a)に示すように、回路基板101は、ガラスエポキシ樹脂製のプリント基板で構成されるが、ここでは長さ130mm、幅57mmの銅箔にて構成されていることとしてモデル化し、解析を行う。回路基板101では、第一給電部104及び第二給電部105を通じて、導電性の銅板で構成された第一アンテナ素子106及び第二アンテナ素子107に高周波信号が供給されている。
【0033】
第一給電部104からは、1.5GHz帯および2.4GHz帯用遮断回路111bに対応した2.4GHz帯を含む0.6GHzから3GHzの高周波信号が供給され、第二給電部105においても、1.5GHz帯および800MHz帯用遮断回路111aに対応した800MHz帯を含む0.6GHzから3GHzの高周波信号が供給される。前記解析周波数において、Sパラメータである通過特性S21、及び反射特性S11、S22、及び放射効率の解析を行う。
【0034】
第一アンテナ素子106は、長さ23mm、幅2mmの導体板で構成される。一方、第二アンテナ素子107は、長さ28mm、幅2mmの導体板で構成される。
【0035】
第一アンテナ素子106及び第二アンテナ素子107は、回路基板101の端部に配置されている。第一アンテナ素子106と第二アンテナ素子107が最も近接する略平行部分の間隔は2mmであり、1.5GHzに対して0.01波長と極めて近接した間隔で配置されている。第一アンテナ素子106と第二アンテナ素子107が電気的に近接した距離で略平行に配置されるため、アンテナ素子間の相互結合が生じ、各アンテナ素子に流れた高周波電流が、もう片方のアンテナ素子に誘導電流として流れてしまうことで、結果として共に動作する第一の周波数帯域においてはアンテナの放射性能に劣化が生じてしまう。そこで、第一アンテナ素子106及び第二アンテナ素子107の端部にそれぞれを接続する1.5GHz帯用接続回路108aを挿入し、1.5GHz帯におけるアンテナ間の相互結合インピーダンスをキャンセルすることで、1.5GHz帯におけるアンテナ素子間の結合劣化を軽減する。
【0036】
また、800MHz帯用遮断回路111aを、第一アンテナ素子106と第一給電部104の間に配置することで、800MHz帯における高周波電流は、1.5GHz帯用接続回路108aを通じて第一給電部104に流れ込むことを抑制され、第一給電部104と第二給電部105の間における結合劣化を軽減できる。また、第二アンテナ素子107のみならず、第一アンテナ素子106にも効果的に800MHz帯における高周波電流を流すことで、アンテナの動作体積を拡大でき、800MHz帯における放射効率の向上を実現できる。一方、2.4GHz帯用遮断回路111bを、第二アンテナ素子107と第二給電部105の間に配置することで、2.4GHz帯における高周波電流は、1.5GHz帯用接続回路108aを通じて第二給電部105に流れ込むことを抑制され、第一給電部104と第二給電部105の間における結合劣化を軽減できる。また、第一アンテナ素子106のみならず、第二アンテナ素子107にも効果的に2.4GHz帯における高周波電流を流すことで、アンテナの動作体積を拡大でき、2.4GHz帯における放射効率の向上を実現できる。
【0037】
さらに、第一インピーダンス整合回路109を第一給電部104と800MHz帯用遮断回路111aの間に配置し、第二インピーダンス整合回路110を第二給電部105と2.4GHz帯用遮断回路111bの間に配置することで、第一アンテナ素子106のインピーダンス整合と第二アンテナ素子107のインピーダンス整合と、アンテナ素子間の相互結合インピーダンスをキャンセルするための調整をより細かく行うことができ、より結合劣化を軽減する効果を高めている。
【0038】
図4(b)は、図4(a)に示す領域X及び領域Yに配置される、図3の条件1に対応した回路構成を示している。図3の条件1より、図4(b)に示す領域Yには1.5GHz帯用接続回路108aは配置しない。一方、領域Xに示すように、第一インピーダンス整合回路109は第一給電部104側から第一アンテナ素子106に対して1.2nHを直列接続となるように配置するとともに、第一給電部104と1.2nHの間に回路基板のグランドパターンに対して6.2nHを、第一アンテナ素子106と1.2nHの間に回路基板のグランドパターンに対して0.7pFを配置し、接地されている。
【0039】
第二インピーダンス整合回路110は、第二給電部105側から第二アンテナ素子107に対して1.5pF、3.3nHの順に直列接続となるように配置するとともに、第二アンテナ素子107と3.3nHの間に回路基板のグランドパターンに対して12nHを配置し、接地されている。以上が、条件1における回路構成である。
【0040】
図4(c)は、図4(a)に示す領域X及び領域Yに配置される、図3の条件2に対応した回路構成を示している。図3の条件2より、図4(c)に示す領域Yには1.5GHz帯用接続回路108aとして、15nHのインダクタが配置されている。一方、領域Xに示すように、第一インピーダンス整合回路109は第一給電部104側から第一アンテナ素子106に対して0.8pF、5.6nHの順に直列接続となるように配置するとともに、0.8pFと5.6nHの間に回路基板のグランドパターンに対して0.8pFと4.3nHを配置し、それぞれ接地されている。
【0041】
第二インピーダンス整合回路110は、第二給電部105側から第二アンテナ素子107に対して1.6pF、8.2nHの順に直列接続となるように配置するとともに、1.6pFと8.2nHの間に回路基板のグランドパターンに対して22nHを配置し、接地されている。以上が、条件2における回路構成である。
【0042】
図4(d)は、図4(a)に示す領域X及び領域Yに配置される、図3の条件3に対応した回路構成を示している。図3の条件3より、図4(d)に示す領域Yには1.5GHz帯用接続回路108aとして、15nHのインダクタが配置されている。一方、領域Xに示すように、第一インピーダンス整合回路109は第一給電部104側から第一アンテナ素子106に対して0.8pF、5.6nHの順に直列接続となるように配置されるとともに、5.6nHと第一アンテナ素子106の間には800MHz帯用遮断回路111aに対応した4.0pFと5.8nHで構成される並列共振回路が配置される。
【0043】
さらに、0.8pFと5.6nHの間に回路基板のグランドパターンに対して0.8pFと4.3nHを配置し、それぞれ接地されている。第二インピーダンス整合回路110は、第二給電部105側から第二アンテナ素子107に対して2.0pF、6.2nHの順に直列接続となるように配置するとともに、2.0pFと6.2nHの間に回路基板のグランドパターンに対して15nHを配置し、接地されている。以上が、条件3における回路構成である。
【0044】
図4(e)は、図4(a)に示す領域X及び領域Yに配置される、図3の条件4に対応した回路構成を示している。図3の条件4より、図4(e)に示す領域Yには1.5GHz帯用接続回路108aとして、15nHのインダクタが配置されている。一方、領域Xに示すように、第一インピーダンス整合回路109は第一給電部104側から第一アンテナ素子106に対して0.8pF、5.6nHの順に直列接続となるように配置するとともに、0.8pFと5.6nHの間に回路基板のグランドパターンに対して0.8pFと4.3nHを配置し、それぞれ接地されている。
【0045】
第二インピーダンス整合回路110は、第二給電部105側から第二アンテナ素子107に対して2.0pFが直列接続となるように配置されるとともに、2.0pFと第二アンテナ素子107の間には2.4GHz帯用遮断回路111bに対応した1.2pFと2.4nHで構成される並列共振回路が配置される。第二給電部105と2.0pFの間に3.9nHと1.8pFを、2.0pFと2.4GHz帯用遮断回路111bの間に12nHを回路基板のグランドパターンに対して配置し、それぞれ接地されている。以上が、条件4における回路構成である。
【0046】
図5は、図4の解析モデルを用いて解析した、本発明の実施の形態1における特性図である。図5(a)は第二給電部105から見たS11波形、図5(b)は第一給電部104から見たS22波形、図5(c)は、第二給電部105から第一給電部104へ向かう通過特性であるS21波形を示したものであり、いずれも横軸は0.6GHzから3GHzまでの周波数特性を示している。図5(d)は、第二アンテナ素子107の自由空間効率を、図5(e)は第一アンテナ素子106の自由空間効率を示している。
【0047】
図5(a)に示すように、条件1から条件4において800MHz帯及び1.7GHzから2.1GHzにおけるS11はほぼ−5dB以下の低い値となっており、この周波数帯域でインピーダンス整合がとれている様子が分かる。
【0048】
一方、図5(b)に示すように、条件1から条件4において1.5GHz帯及び2.4GHz帯におけるS22はほぼ−5dB以下の低い値となっており、この周波数帯域でインピーダンス整合がとれている様子がわかる。また、図5(c)に示すように、条件1を除く全ての条件で、ほぼ全帯域にわたって通過特性であるS21が−10dB以下の低い値となっており、高いアイソレーションが確保され、結合劣化が軽減されている様子が分かる。
【0049】
また、図5(d)に示すように、第二アンテナ素子107の自由空間効率は、条件2から条件4で条件1よりも高いアンテナ効率が得られていることが分かる。1.5GHz帯は、S21が−10dB程度であるため、結合劣化を大きく軽減できていることが分かる。また、800MHz帯用遮断回路111aを配置した条件3では800MHz帯の自由空間効率が改善していることが分かる。
【0050】
同様に、図5(e)に示すように、第一アンテナ素子106の自由空間効率は、条件2から条件4で条件1よりも高いアンテナ効率が得られていることが分かる。1.5GHz帯は、S21が−10dB程度であるため、結合劣化を大きく軽減できていることが分かる。また、2.4GHz帯用遮断回路111bを配置した条件4では2.4GHz帯の自由空間効率が改善していることが分かる。
【0051】
このように、本実施の形態1によれば、第一の周波数帯域で動作する第一アンテナ素子106と、第一の周波数帯域及び第二の周波数帯域で動作する第二アンテナ素子107において、第一の周波数帯域では低結合化して高いアイソレーションを確保するとともに、第二の周波数帯域では遮断回路を用いることでアンテナの動作体積を拡大し、高利得な性能を実現することができる内蔵型アンテナを構成できる。
【0052】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における携帯無線端末の構成図である。図6において、図1と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0053】
図6では、第一給電部104と第二給電部105の距離を、携帯無線端末100の長手方向に対して離して配置するとともに、第二アンテナ素子107を幅方向で第一アンテナ素子106とは反対方向に略直角に折り曲げて構成し、第一接続回路108を第一アンテナ素子106と第二アンテナ素子107の略平行部分のいずれかに配置することを示す。
【0054】
このように構成することで、設計自由度が向上し、第一の周波数帯域では低結合化して高いアイソレーションを確保するとともに、第二の周波数帯域では遮断回路を用いることでアンテナの動作体積を拡大し、高利得な性能を実現することができる。なお、接続回路は複数であってもよく、配置位置についても図示した位置に限るものではない。
【0055】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3における携帯無線端末の構成図である。図7において、図1と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0056】
図7では、第一アンテナ素子106の動作周波数を第一の周波数帯域と第一の周波数帯域よりも高い第三の周波数帯域とする。また、第二アンテナ素子107の動作周波数を第一の周波数帯域と第一の周波数帯域よりも低い第二の周波数帯域とし、第二アンテナ素子107と第二インピーダンス整合回路110の間に第三周波数帯用遮断回路112を配置する。
【0057】
このように構成することで、第一の周波数帯域では低結合化して高いアイソレーションを確保するとともに、第二の周波数帯域及び第三の周波数帯域では遮断回路を用いることでアンテナの動作体積を拡大し、高利得な性能を実現することができる。なお、第一アンテナ素子106は帯域を広げる目的で素子の幅を太く構成しているが、この形状に限るものではない。
【0058】
続いて、図7の具体的な構成について、性能を解析した事例を示す。
以降では、第一の周波数帯域を1.5GHz帯、第二の周波数帯域を800MHz帯、第三の周波数帯域を2.4GHz帯とする。
【0059】
図8は、本発明の実施の形態3における携帯無線端末の特性解析条件を示した表である。1.5GHz帯用接続回路108bは1.5GHz帯に対応することとし、800MHz帯用遮断回路111aおよび2.4GHz帯用遮断回路112aで構成する。条件1から条件3は、1.5GHz帯用接続回路108b及び800MHz帯用遮断回路111a、2.4GHz帯用遮断回路112aの有無により条件が異なる。
【0060】
図9は、本発明の実施の形態3における携帯無線端末の特性解析モデルを示す図である。図9(a)に示すように、回路基板101は、ガラスエポキシ樹脂製のプリント基板で構成されるが、ここでは長さ121mm、幅57mmの銅箔にて構成されていることとしてモデル化し、解析を行う。回路基板101では、第一給電部104及び第二給電部105を通じて、導電性の銅板で構成された第一アンテナ素子106及び第二アンテナ素子107に高周波信号が供給されている。
【0061】
第一給電部104からは、1.5GHz帯および2.4GHz帯用遮断回路112aに対応した2.4GHz帯を含む0.6GHzから3GHzの高周波信号が供給され、第二給電部105においても、1.5GHz帯および800MHz帯用遮断回路111aに対応した800MHz帯を含む0.6GHzから3GHzの高周波信号が供給される。前記解析周波数において、Sパラメータである通過特性S21及び反射特性S11、S22、及び放射効率の解析を行う。
【0062】
第一アンテナ素子106は、第一給電部104側から長さ10mmまでは幅1.4mmとし、長さ10mm以上21mm以下は幅4mmの導体板で構成される。一方、第二アンテナ素子107は、第一アンテナ素子106と略平行に構成された長さ13mm、幅2mmの導体板と、第一アンテナ素子106の長手方向先端部分から幅方向で第一アンテナ素子106と反対方向に略直角に長さ14mm、幅2mmの導体板で構成される。
【0063】
第一アンテナ素子106及び第二アンテナ素子107は、回路基板101の端部に配置されており、第一アンテナ素子106と第二アンテナ素子107が最も近接する略平行部分の間隔は1mmであり、2.4GHzに対して0.01波長以下と極めて近接した間隔で配置されている。第一アンテナ素子106と第二アンテナ素子107が電気的に近接した距離で略平行に配置されるため、アンテナ素子間の相互結合が生じ、各アンテナ素子に流れた高周波電流が、もう片方のアンテナ素子に誘導電流として流れてしまうことで、結果として共に動作する第一の周波数帯域においてはアンテナの放射性能に劣化が生じてしまう。
【0064】
そこで、第一アンテナ素子106及び第二アンテナ素子107の端部にそれぞれを接続する1.5GHz帯用接続回路108bを挿入し、1.5GHz帯におけるアンテナ間の相互結合インピーダンスをキャンセルすることで、1.5GHz帯におけるアンテナ素子間の結合劣化を軽減する。
【0065】
また、800MHz帯用遮断回路111aを、第一アンテナ素子106と第一給電部104の間に配置することで、800MHz帯における高周波電流は、1.5GHz帯用接続回路108bを通じて第一給電部104に流れ込むことを抑制され、第一給電部104と第二給電部105の間における結合劣化を軽減できる。また、第二アンテナ素子107のみならず、第一アンテナ素子106にも効果的に800MHz帯における高周波電流を流すことで、アンテナの動作体積を拡大でき、800MHz帯における放射効率の向上を実現できる。
【0066】
一方、2.4GHz帯用遮断回路112aを、第二アンテナ素子107と第二給電部105の間に配置することで、2.4GHz帯における高周波電流は、1.5GHz帯用接続回路108bを通じて第二給電部105に流れ込むことを抑制され、第一給電部104と第二給電部105の間における結合劣化を軽減できる。また、第一アンテナ素子106のみならず、第二アンテナ素子107にも効果的に2.4GHz帯における高周波電流を流すことで、アンテナの動作体積を拡大でき、2.4GHz帯における放射効率の向上を実現できる。
【0067】
さらに、第一インピーダンス整合回路109を第一給電部104と800MHz帯用遮断回路111aの間に配置し、第二インピーダンス整合回路110を第二給電部105と2.4GHz帯用遮断回路112aの間に配置することで、第一アンテナ素子106のインピーダンス整合と第二アンテナ素子107のインピーダンス整合と、アンテナ素子間の相互結合インピーダンスをキャンセルするための調整をより細かく行うことができ、より結合劣化を軽減する効果を高めている。
【0068】
図9(b)は、図9(a)に示す領域X及び領域Y、領域Zに配置される、図8の条件1に対応した回路構成を示している。図8の条件1より、図9(b)に示す領域Zには、1.5GHz帯用接続回路108bは配置しない。領域Xは第一インピーダンス整合回路109を示し、第一給電部104側から第一アンテナ素子106に対して1.2nHを直列接続となるように配置するとともに、第一給電部104と1.2nHの間に回路基板のグランドパターンに対して6.2nHを、第一アンテナ素子106と1.2nHの間に回路基板のグランドパターンに対して1.0pFを配置し、接地されている。
【0069】
領域Yは第二インピーダンス整合回路110を示し、第二給電部105側から第二アンテナ素子107に対して1.5pF、3.3nHの順に直列接続となるように配置するとともに、第二アンテナ素子107と3.3nHの間に回路基板のグランドパターンに対して12nHを配置し、接地されている。以上が、条件1における回路構成である。
【0070】
図9(c)は、図9(a)に示す領域X及び領域Y、領域Zに配置される、図8の条件2に対応した回路構成を示している。図8の条件2より、図9(c)に示す領域Zには1.5GHz帯用接続回路108bとして、20nHのインダクタが配置されている。領域Xは第一インピーダンス整合回路109を示し、第一給電部104側から第一アンテナ素子106に対して4.7nH、6.8nHの順に直列接続となるように配置するとともに、4.7nHと6.8nHの間に回路基板のグランドパターンに対して1.6pFと3.3nHを配置し、それぞれ接地されている。
【0071】
領域Yは第二インピーダンス整合回路110を示し、第二給電部105側から第二アンテナ素子107に対して1.6pF、10nHの順に直列接続となるように配置するとともに、1.6pFと10nHの間に回路基板のグランドパターンに対して22nHを配置し、接地されている。以上が、条件2における回路構成である。
【0072】
図9(d)は、図9(a)に示す領域X及び領域Y、領域Zに配置される、図8の条件3に対応した回路構成を示している。図8の条件3より、図9(d)に示す領域Zには1.5GHz帯用接続回路108bとして、20nHのインダクタが配置されている。領域Xは第一インピーダンス整合回路109及び800MHz帯用遮断回路111aを示し、第一給電部104側から第一アンテナ素子106に対して1.0pF、7.5nHの順に直列接続となるように配置されるとともに、7.5nHと第一アンテナ素子106の間には800MHz帯用遮断回路111aに対応した4.0pFと5.8nHで構成される並列共振回路が配置される。
【0073】
さらに、1.0pFと7.5nHの間に回路基板のグランドパターンに対して0.9pFと3.0nHを配置し、それぞれ接地されている。領域Yは第二インピーダンス整合回路110及び2.4GHz帯用遮断回路112aを示し、第二給電部105側から第二アンテナ素子107に対して1.8pF、1.6nHの順に直列接続となるように配置するとともに、1.6nHと第二アンテナ素子107の間には2.4GHz帯用遮断回路112aに対応した1.2pFと2.4nHで構成される並列共振回路が配置される。
【0074】
さらに、1.8pFと1.6nHの間に回路基板のグランドパターンに対して15nHを配置し、それぞれ接地されている。以上が条件3における回路構成である。
【0075】
図10は、図9の解析モデルを用いて解析した、本発明の実施の形態3における特性図である。図10(a)は第二給電部105から見たS11波形、図10(b)は第一給電部104から見たS22波形、図10(c)は、第二給電部105から第一給電部104へ向かう通過特性であるS21波形を示したものであり、いずれも横軸は0.6GHzから3GHzまでの周波数特性を示している。図10(d)は、第二アンテナ素子107の自由空間効率を、図10(e)は第一アンテナ素子106の自由空間効率を示している。
【0076】
図10(a)に示すように、条件1から条件3において800MHz帯及び1.7GHzから1.9GHzにおけるS11はほぼ−5dB以下の低い値となっており、この周波数帯域でインピーダンス整合がとれている様子が分かる。一方、図10(b)に示すように、条件1から条件3において1.5GHz帯及び2.4GHz帯におけるS22はほぼ−5dB以下の低い値となっており、この周波数帯域でインピーダンス整合がとれている様子がわかる。
【0077】
また、図10(c)に示すように、条件1を除く全ての条件で、ほぼ全帯域において通過特性であるS21は−10dB以下の低い値となっており、高いアイソレーションが確保され、結合劣化が軽減されている様子が分かる。また、図10(d)に示すように、第二アンテナ素子107の自由空間効率は、条件2及び条件3で、条件1よりも同等以上の高いアンテナ効率が得られていることが分かる。
【0078】
1.5GHz帯は、S21が−10dB程度であるため、結合劣化を大きく軽減できていることが分かる。また、800MHz帯用遮断回路111aを配置した条件3では800MHz帯の自由空間効率が改善していることが分かる。
【0079】
同様に、図10(e)に示すように、第一アンテナ素子106の自由空間効率は、条件2及び条件3で、条件1よりも高いアンテナ効率が得られていることが分かる。1.5GHz帯は、S21が−10dB程度であるため、結合劣化を大きく軽減できていることが分かる。
【0080】
また、2.4GHz帯用遮断回路112aを配置した条件3では2.4GHz帯の自由空間効率が改善していることが分かる。さらに、条件3では、800MHz帯用遮断回路111aと2.4GHz帯用遮断回路112aを同時に配置しており、どちらの周波数帯域においても自由空間効率の改善が確認できる。
【0081】
このように、本実施の形態3によれば、第一の周波数帯域及び第三の周波数帯域で動作する第一アンテナ素子106と、第一の周波数帯域及び第二の周波数帯域で動作する第二アンテナ素子107において、第一の周波数帯域では低結合化して高いアイソレーションを確保するとともに、第二の周波数帯域及び第三の周波数帯域では遮断回路を用いることでアンテナの動作体積を拡大し、高利得な性能を実現することができる内蔵型アンテナを構成できる。
【0082】
図11は、本発明の実施の形態3における携帯無線端末の各周波数帯での動作概略図である。図11(a)は、第二の周波数帯域に該当する800MHz帯での動作概略図である。第二給電部105から第二アンテナ素子107に供給される800MHz帯の高周波電流は、1.5GHz帯用接続回路108bを通じて第一アンテナ素子106にも供給される。
【0083】
同時に、800MHz帯用遮断回路111aがあることで、第一給電部104に流れ込む電流を抑えることができるため、800MHz帯において第一給電部104と第二給電部105の間で高いアイソレーションを確保しつつ、アンテナの動作体積を拡大して性能を向上できる。
【0084】
図11(b)は、第一の周波数帯域に該当する1.5GHz帯での動作概略図である。第一給電部104から第一アンテナ素子106に供給される1.5GHz帯の高周波電流と、第二給電部105から第二アンテナ素子107に供給される1.5GHz帯の高周波電流は、第一アンテナ素子106と第二アンテナ素子107の間に配置された1.5GHz帯用接続回路108bで、相互結合インピーダンスを調整することで、第一アンテナ素子106と第二アンテナ素子107との間に発生する逆位相の電流を低下させ、結合劣化を抑えることができる。
【0085】
図11(c)は、第三の周波数帯域に該当する2.4GHz帯での動作概略図である。第一給電部104から第一アンテナ素子106に供給される。2.4GHz帯の高周波電流は、1.5GHz帯用接続回路108bを通じて第二アンテナ素子107にも供給される。同時に、2.4GHz帯用遮断回路112aがあることで、第二給電部105に流れ込む電流を抑えることができるため、2.4GHz帯において第一給電部104と第二給電部105の間で高いアイソレーションを確保しつつ、アンテナの動作体積を拡大して性能を向上できる。
【0086】
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4における携帯無線端末の構成図である。図12において、図7と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0087】
図12では、第一の周波数帯域と第一の周波数帯域よりも高い第三の周波数帯域で動作する第一アンテナ素子106と第一の周波数帯域と第一の周波数帯域よりも低い第二の周波数帯域で動作する第二アンテナ素子107の一部をプリント基板200に構成することとし、第一アンテナ素子106及び第二アンテナ素子107の先端部分をプリント基板200の側面(携帯無線端末100の長手方向端部側)に配置し、第一アンテナ素子106及び第二アンテナ素子107の間に第一接続回路108を配置する。
【0088】
このように構成することで、設計自由度が向上し、第一の周波数帯域では低結合化して高いアイソレーションを確保するとともに、第二の周波数帯域及び第三の周波数帯域では遮断回路を用いることでアンテナの動作体積を拡大し、高利得な性能を実現することができる。
【0089】
(実施の形態5)
図13は、本発明の実施の形態5における携帯無線端末の構成図である。図13おいて、図11と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0090】
図13では、第一の周波数帯域と第一の周波数帯域よりも低い第二の周波数帯域で動作する第二アンテナ素子107は貫通ビア107aを介して構成され、プリント基板200の異なる平面に構成される。このように構成することで、第一接続回路108をプリント基板200の表面に配置することができ、設計自由度が向上する。さらに、第一の周波数帯域では低結合化して高いアイソレーションを確保するとともに、第二の周波数帯域及び第三の周波数帯域では遮断回路を用いることでアンテナの動作体積を拡大し、高利得な性能を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のアンテナ装置及びこれを搭載した携帯無線端末は、同一周波数帯では低結合化するとともに、異なる周波数帯では遮断回路を用いることで、広帯域に高いアイソレーションを確保しつつ、アンテナの動作体積を拡大して性能向上できるため、携帯電話などの携帯無線端末に有用である。
【符号の説明】
【0092】
100 携帯無線端末
101 回路基板
102 第一無線回路部
103 第二無線回路部
104 第一給電部
105 第二給電部
106 第一アンテナ素子
107 第二アンテナ素子
107a 貫通ビア
108 第一接続回路
108a、108b 1.5GHz帯用接続回路
109 第一インピーダンス整合回路
110 第二インピーダンス整合回路
111 第二周波数帯用遮断回路
111a 800MHz帯用遮断回路
111b、112a 2.4GHz帯用遮断回路
112 第三周波数帯用遮断回路
200 プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に設けられたグランドパターンを有する回路基板と、
導電性の金属で構成された第一の周波数帯域で動作する第一アンテナ素子と、
導電性の金属で構成された第一及び第二の周波数帯域で動作する第二アンテナ素子と、
前記第一アンテナ素子と前記第二アンテナ素子の一部を電気的に接続する第一接続回路と、
前記回路基板に配置された第一無線回路部と、
前記第一無線回路に電気的に接続された第一給電部と、
前記回路基板に配置された第二無線回路部と、
前記第二無線回路に電気的に接続された第二給電部と、
前期第二の周波数帯域を電気的に遮断する第二周波数帯用遮断回路と
を具備し、
前記第一アンテナ素子及び前記第二アンテナ素子は、前記回路基板上のグランドパターンと、所定の間隔を隔てて互いに近接して配置されるとともに、
前記第一アンテナ素子は、前記第二周波数帯用遮断回路を介して前記第一給電部に電気的に接続され、
前記第二アンテナ素子は、前記第二給電部に電気的に接続され、
前記第一接続回路が、前記第一の周波数帯域における前記第一アンテナ素子と前記第二アンテナ素子との間の相互結合インピーダンスをキャンセルする、
ことを特徴とするアンテナ装置
【請求項2】
前記第一アンテナ素子が、第一インピーダンス整合回路を介して前記第一給電部と電気的に接続される
もしくは、
前記第二アンテナ素子が、第二インピーダンス整合回路を介して前記第二給電部と電気的に接続される
請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第一アンテナ素子又は前記第二アンテナ素子のいずれか、または両方の、少なくとも一部が、プリント基板上の銅箔パターンで構成された、
請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第一のアンテナ素子は前記第一の周波数帯域よりも高い第三の周波数帯域及び前記第一の周波数帯域で動作し、
前記第二のアンテナ素子は前記第一の周波数帯域よりも低い第二の周波数帯域及び前記第一の周波数帯域で動作し、
前期第三の周波数帯域を電気的に遮断する第三周波数帯用遮断回路が、
前記第二アンテナ素子と前記第二給電部の間で電気的に接続された、
請求項1記載のアンテナ装置
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のアンテナ装置を搭載した携帯無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−227742(P2012−227742A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93744(P2011−93744)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】