説明

アンテナ装置及びその製造方法

【課題】誘電損失が低くかつ外部物体からの影響が低減されたアンテナ装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アンテナ装置100は、背面ケース部102の内面の所定の位置に窪み部106が形成されており、この窪み部106の内部に低誘電率の発泡層112が形成されている。誘電率の低い発泡層112上にアンテナパターン111を載置することで、誘電損失が低減されるとともに広帯域な特性が得られる。また、アンテナパターン111から背面ケース部102の外表面までの電気的な距離が長くなり、外部物体からの影響を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及びその製造方法に関し、特に外部からの影響を低減可能にしたアンテナ装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯端末や自動車等に搭載されるアンテナ装置は、前面ケース部と背面ケース部からなるケースの内部に制御用基板やアンテナ等が収納されている。例えば携帯端末では、制御用基板等が前面ケース部の内面に搭載される一方、アンテナが背面ケース部の内面に搭載されることが多く、前面ケース部と背面ケース部とを嵌合させたときに制御用基板等とアンテナとが電気的に接続される構成となっている。(例えば特許文献1)。従来のアンテナ装置の一例を図8、9に示す。
【0003】
図8に示すアンテナ装置900は、一例として携帯端末の構成を示したものであり、アンテナパターン902が背面ケース部901bの内面に装着され、制御用基板903が前面ケース部901aの内面に装着されている。図8(a)は、アンテナ装置900のアンテナパターン902の近傍を拡大した断面図を示し、図8(b)は、背面ケース部901b内面のアンテナパターン902の近傍を拡大した平面図を示している。アンテナパターン902は、厚さ0.1〜0.2mm程度のSUSやリン青銅等からなる板金で形成されており、背面ケース部901bの内面に樹脂製の溶着ボス906で溶着されている。また、制御用基板903には端子把持部905で把持された給電端子904が載置されており、前面ケース部901aと背面ケース部901bとを嵌合させたとき、アンテナパターン902が給電端子904で制御用基板903に電気的に接続される構成となっている。
【0004】
また、図9に示すアンテナ装置910では、厚さ12.5〜50μm程度のPI(ポリイミド)またはPETからなるFPC(Flexible Printed Circuit)915をベースフィルムとして、その上にアンテナパターン912が形成されている。このFPC915が厚さ50μm程度の両面テープ916で背面ケース部901bの内面に接着されることで、アンテナパターン912が背面ケース部901b側に固定されている。前面ケース部901aと背面ケース部901bとを嵌合させたとき、アンテナパターン912が給電端子904で制御用基板903に電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−267003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来アンテナ装置及びその製造方法では、以下のような問題を有していた。高効率なアンテナ装置を実現するには、アンテナの誘電損失を低減することが必要であり、そのためには低誘電率のアンテナ基板を用いる必要があるが、従来はアンテナ基板の誘電率を低くするのが困難であった。
【0007】
また、アンテナパターンが背面ケース部上またはそれに近接して配置されることから、背面ケース部の外部近傍に金属や高誘電体からなる外部物体があると、その影響を強く受けてアンテナ特性が劣化してしまうといった問題がある。アンテナパターンが周囲の物体から受ける影響を小さくして良好なアンテナ特性が得られるようにするためには、アンテナパターン922と周囲の物体との距離をできるだけ大きくするのが望ましい。すなわち、図10に示すアンテナパターン922から背面ケース部921bの外表面までの距離D2を大きくすることで、例えば背面ケース部921bに手(外部物体)が接触したときのアンテナ特性への影響を小さくすることができる。同様に、アンテナパターン922から制御用基板923上のグランド923aまでの距離D1についても、これを大きくすることでアンテナ特性を良くすることができる。
【0008】
しかしながら、アンテナ装置については従来より小型化の強いニーズがあることから、距離D1やD2を大きくすることはこのようなニーズに反することになってしまう。特に、アンテナ装置が携帯端末の場合には通常手で把持して使用されることから、アンテナ装置が外部物体の影響をできるだけ受けないようにすることが強く望まれる。
【0009】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、誘電損失が低くかつ外部物体からの影響が低減されたアンテナ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアンテナ装置の第1の態様は、ケース部と、前記ケース部の内面側に固定されたアンテナパターンと、発泡構造を有して前記アンテナパターンと前記ケース部の内面との間に配置される発泡層と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のアンテナ装置の他の態様は、前記ケース部の内面に所定深さの窪み部が形成されており、前記発泡層が前記窪み部の内部に配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のアンテナ装置の他の態様は、前記アンテナパターンは、前記発泡層の面上に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のアンテナ装置の他の態様は、前記アンテナパターンが所定のアンテナ基板の一方の面上に形成され、前記アンテナ基板の他方の面が前記発泡層に載置されて所定の固定手段により固定されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のアンテナ装置の他の態様は、前記アンテナパターンが前記発泡層の一方の面上に形成され、前記発泡層の他方の面が前記ケース部の内面に固定されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のアンテナ装置の他の態様は、前記アンテナパターンが移動中にも送受信可能に構成された携帯端末であることを特徴とする。
【0016】
本発明のアンテナ装置の製造方法の第1の態様は、ケース部と、前記ケース部の内面側に固定されたアンテナパターンと、発泡構造を有して前記アンテナパターンと前記ケース部の内面との間に配置される発泡層と、を備えるアンテナ装置の製造方法であって、金属を付着させにくい第1の樹脂を用いて前記ケース部を射出成形する第1工程と、金属を付着させやすい第2の樹脂を用いて前記発泡層を形成する第2の工程と、所定のアンテナ基板上に前記アンテナパターンを形成する第3の工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明のアンテナ装置の製造方法の他の態様は、前記第1工程では、前記ケース部の所定の位置に窪み部を形成し、前記第2工程では、前記発泡層を前記窪み部の内部に形成することを特徴とする。
【0018】
本発明のアンテナ装置の製造方法の他の態様は、前記第1工程と前記第2工程とを二色成形により処理することを特徴とする。
【0019】
本発明のアンテナ装置の製造方法の他の態様は、前記アンテナ基板は前記発泡層であることを特徴とする。
【0020】
本発明のアンテナ装置の製造方法の他の態様は、前記第3の工程では、導電ペーストを前記アンテナパターンの形状に印刷することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、誘電損失が低くかつ外部物体からの影響が低減されたアンテナ装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態のアンテナ装置の断面図及び平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のアンテナ装置の製造方法を説明するための工程図である。
【図3】本発明の第2実施形態のアンテナ装置の断面図及び平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態のアンテナ装置の製造方法を説明するための工程図である。
【図5】本発明の第3実施形態のアンテナ装置及びその製造方法を説明するための断面図及び平面図である。
【図6】本発明の第4実施形態のアンテナ装置及びその製造方法を説明するための断面図及び平面図である。
【図7】本発明の第5実施形態のアンテナ装置の断面図及び平面図である。
【図8】従来のアンテナ装置のアンテナパターンの近傍を拡大した断面図及び平面図である。
【図9】従来の別のアンテナ装置のアンテナパターンの近傍を拡大した断面図及び平面図である。
【図10】従来のアンテナ装置におけるアンテナパターンから背面ケース部及び制御用基板上のグランドまでの距離を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施の形態におけるアンテナ装置及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。以下では、本発明のアンテナ装置として携帯端末を一例に説明するが、これに限定されず、例えば自動車に搭載される車載アンテナ等であってもよい。通常の携帯端末では、アンテナパターン等を収納するケース部が、前面ケース部と背面ケース部とに分かれていることから、以下ではケース部を前面ケース部と背面ケース部の2つに分けて説明する。ケース部の構成は、これに限定されず、1つあるいは3つ以上に分割されていてもよい。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置を、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態のアンテナ装置の構成を示しており、同図(a)はアンテナ装置100の断面図、同図(b)は平面図である。図1(a)に示す断面図は、図1(b)に示す平面図のAA線で切断したときの断面図である。本実施形態のアンテナ装置100は、前面ケース部101と背面ケース部102とからなるケースの内部に、アンテナパターン111や制御用基板103等を内蔵している。
【0025】
本実施形態のアンテナ装置100は、背面ケース部102の内面の所定の位置に窪み部106が形成されており、この窪み部106の内部に発泡層112が形成されている。発泡層112には、金属を付着させやすいABS(アクリロニトリル・ブタジエンスチレン)を発泡させて用いることができる。また、前面ケース部101及び背面ケース部102を形成する樹脂材料には、金属を付着させにくい例えばPCやPPSを用いることができる。なお、ABSに限らずさまざまな樹脂を発泡させて発泡層112に用いることができる。
【0026】
このような窪み部106を有する背面ケース部102とその内部の発泡層112は、後述するように、二色成形法により一体的に製造することができる。別の製造方法として、発泡層112をあらかじめ別に製造しておき、これを窪み部106に嵌め込むことも可能であるが、二色成形法を用いて製造する方がより高い強度が得られる。
【0027】
本実施形態では、発泡層112がアンテナ基板となり、その面上にアンテナパターン111が載置されている。アンテナパターン111は、従来と同様のSUSやリン青銅等からなる厚さ0.1〜0.2mm程度の板金で形成することができる。背面ケース部102には溶着ボス107があらかじめ設けられており、発泡層112上にアンテナパターン111が配置された後、溶着ボス107を溶融してこれを固定している。溶着ボス107は、その強度を確保するために発泡構造としないのが好ましい。
【0028】
一方、前面ケース部101側に搭載されている制御用基板103には、端子把持部105で把持された給電端子104が載置されており、前面ケース部101と背面ケース部102とを嵌合させたとき、従来と同様にアンテナパターン111が給電端子104で制御用基板103に電気的に接続される。本実施形態では、アンテナパターン111から制御用基板103上のグランドまでの距離D1、及びアンテナパターン111から背面ケース部102の外表面までの距離D2は、いずれも図8に示した従来のアンテナ装置900と同じとしている。
【0029】
発泡層112は、内部にガスを含んだ発泡構造に形成されており、発泡層112の材料である樹脂の誘電率がガスの低い誘電率で平均的に低減されて低い誘電率を有している。発泡層112の発泡径は、10μm以下とするのがよい。また、発泡層112の誘電率は、比誘電率で2以下となるようにするのがよい。このような誘電率の低い発泡層112上にアンテナパターン111を載置することで、誘電損失(tanδ)が低減されて高効率なアンテナ特性が得られ、かつ広帯域な特性が得られる。
【0030】
また、低誘電率の発泡層112を、背面ケース部102とアンテナパターン111との間に配置することで、背面ケース部102の外表面とアンテナパターン111との間の電気的な距離が長くなる。その結果、背面ケース部102の外部に金属または高誘電体からなる外部物体が配置されても、アンテナパターン111に与える影響を低減することができる。さらに、発泡層112は、FPCと同程度にパターン加工したり曲げ加工することができる、といった特徴も有している。
【0031】
本実施形態では、誘電率の低い発泡層112をアンテナ基板に用いていることから、導電ペースト印刷の方法によりアンテナパターン111を形成することもできる。導電ペースト印刷法によりアンテナパターン111を形成した場合には、アンテナパターン111の抵抗値が大きくなって損失が増大するといった問題があるが、アンテナ基板である発泡層112の誘電率が低く誘電損失が低減されることから、これによりアンテナパターン111の抵抗値増大による損失を補償することができる。導電ペースト印刷法を用いた場合には、アンテナパターン111を低コストで形成することができる。
【0032】
本実施形態のアンテナ装置100の製造方法を、図2を用いて以下に説明する。図2は、本実施形態のアンテナ装置100の製造方法を説明するための工程図である。図2(a)は、従来のアンテナ装置900の背面ケース部901bの断面図を示している。ここでは、アンテナを搭載するための加工は特に行われていない。また、図2(b)〜(d)は、本実施形態のアンテナ装置100の背面ケース部102の一部を拡大して表示した断面図である。
【0033】
図2(b)に示す本実施形態のアンテナ装置100では、PC等の樹脂を射出成形して背面ケース部102を形成するときに、その内面の所定の位置(図2(a)の破線で囲む位置)に窪み部106と溶着ボス107を形成している。その後、図2(c)に示す工程では、窪み部106の内部に発泡層112を成形している。発泡層112は、所定の樹脂材(ABS、PPS等)を射出成形すると同時にその内部を発泡させて形成することができる。上記の背面ケース部102の射出成形及び発泡層112の射出成形は、二色成形法を用いて行うことができる。
【0034】
図2(d)の工程では、発泡層112の表面にSUSやリン青銅等からなる厚さ0.1〜0.2mm程度の板金で形成されたアンテナパターン111を載置し、溶着ボス107を溶着させてアンテナパターン111を固定する。本実施形態では、アンテナパターン111を板金で形成しているが、これに限らず別の方法を用いて形成してもよい。
【0035】
アンテナパターン111を形成する別の方法として、発泡層112の表面に所定の金属を蒸着させた後、エッチングによりアンテナパターン111を形成する方法を用いることができる。あるいは、発泡層112の表面に形成されている発泡構造を有さないスキン層をアンテナパターン111の形状に合わせてレーザ等で除去し、その後無電解メッキによりアンテナパターン111を形成する方法を用いることができる。さらには、上記で説明した導電ペースト印刷法を用いて、アンテナパターン111を低コストで形成することも可能である。
【0036】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置を、図3を用いて以下に説明する。図3は、本実施形態のアンテナ装置の構成を示しており、同図(a)はアンテナ装置200の断面図、同図(b)は平面図である。図3(a)に示す断面図は、図3(b)に示すAA線で切断したときの断面図である。
【0037】
本実施形態でも、アンテナ装置200の背面ケース部102の内面の所定の位置に窪み部106を形成し、窪み部106の内部に発泡層212を形成している。また、アンテナパターン211がベースフィルムのFPC213の面上に形成されており、これが両面テープ(固定手段)214で発泡層212に接着されている。
【0038】
本実施形態でも、誘電率の低い発泡層212上にFPC213及び両面テープ214を挟んでアンテナパターン211を載置することで、誘電損失(tanδ)が低減されて高効率なアンテナ特性が得られ、かつ広帯域な特性が得られる。また、誘電率の低い発泡層212を背面ケース部102とアンテナパターン211との間に配置することで、背面ケース部102の外表面とアンテナパターン211との間の電気的な距離が長くなる。その結果、背面ケース部102の外部に金属または高誘電体からなる外部物体が配置されても、アンテナパターン211に与える影響を低減することができる。本実施形態では、背面ケース部102とアンテナパターン211との間にさらにFPC213及び両面テープ214を配置しており、その分だけ背面ケース部102の外表面とアンテナパターン211との距離が大きくなり、外部物体の影響をさらに小さくすることができる。
【0039】
本実施形態のアンテナ装置200の製造方法を、図4を用いて以下に説明する。図4は、本実施形態のアンテナ装置200の製造方法を説明するための工程図である。図4(a)は、従来のアンテナ装置900の背面ケース部901bの断面図を示し、図4(b)〜(d)は、本実施形態のアンテナ装置200の背面ケース部102の一部を拡大して表示した断面図である。
【0040】
本実施形態のアンテナ装置200では、樹脂(PC)を射出成形して背面ケース部102を形成するときに、その内面に窪み部106を形成している。本実施形態では、溶着ボスの形成は不要となる。その後、図4(c)に示す工程では、窪み部106の内部に発泡層212を成形している。発泡層212は、第1実施形態と同様に、所定の樹脂材(ABS、PPS等)を射出成形すると同時にその内部を発泡させて形成することができる。また、背面ケース部102の射出成形と発泡層212の射出成形を、二色成形法を用いて行うことができる。
【0041】
本実施形態では、アンテナパターン211がFPC213上にあらかじめ形成されている。図4(d)の工程では、アンテナパターン211が形成されたFPC213を、両面テープ214を用いて発泡層212の表面に接着して固定する。FPC213上にアンテナパターン211を形成する方法として、FPC213の表面に所定の金属を蒸着させた後、エッチングによりアンテナパターン211を形成する方法を用いることができる。あるいは、導電ペースト印刷法を用いてアンテナパターン211を低コストで形成することも可能である。
【0042】
(第3実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置及びその製造方法を、図5を用いて以下に説明する。図5(a)は、本実施形態のアンテナ装置を製造する途中工程を示す断面図(左側図面)及び平面図(右側図面)であり、図5(b)は、本実施形態のアンテナ装置の断面図(左側図面)及び平面図(右側図面)である。各断面図は、各平面図のAA線における断面図である。
【0043】
本実施形態でも、アンテナ装置300の背面ケース部102の内面の所定の位置に窪み部106を形成し、窪み部106の内部に発泡層312を形成している。また、発泡層312をアンテナ基板とし、その面上にアンテナパターン311を載置している。
【0044】
本実施形態では、発泡層312のアンカー効果を利用してアンテナパターン311を形成している。二色成形法により背面ケース部102及び発泡層312が射出成形された後、アンテナパターン311を形成するために、発泡層312の表面に形成されているスキン層がアンテナパターン311の形状に合わせてレーザ等で除去される(図5(a))。その後、無電解メッキによりアンテナパターン311が形成される。
【0045】
発泡層312は、スキン層が除去された発泡構造部分が金属を固着させるアンカー効果を有しているのに対し、スキン層はアンカー効果を有していない。その結果、無電解メッキによりにスキン層が除去された発泡構造部分のみに所定の金属がメッキされる。これにより、アンテナパターン311が形成される。発泡層312の樹脂材料には、ABSやPPS等を用いることができる。また、前面ケース部101及び背面ケース部102の樹脂材料には、PCを用いることができる。
【0046】
本実施形態のように発泡層312をアンテナ基板としてその上にアンテナパーン311を形成する場合には、レーザ等でスキン層を除去して無電解メッキを行う方法(ここでは第1の方法とする)を用いることで、発泡層をABSで形成して蒸着、エッチングによりアンテナパターンを形成する方法(ここでは第2の方法とする)に比べて、以下のような効果が得られる。まず、第1の方法では、第2の方法で必要となるABSの化学エッチングによる粗化処理が不要となる。第1の方法では、ケース部に用いる一般的な材料(PC等)にはメッキが付かず、レーザ処理してスキン層を除去した部分のみにメッキを定着させることが可能となる(発泡構造部分のアンカー効果)。そこで、二色成形法により背面ケース部102及び発泡層312を射出成形するのに、同一材料を用いて行うことができる。同一材料を用いても、発泡されている発泡層312側のみにレーザ処理によりメッキを定着させることができる。同一材料を用いることで、材料間の接続が強固になって高い信頼性が得られるといった効果がある。
【0047】
本実施形態でも、誘電率の低い発泡層312上にアンテナパターン311が形成されていることから、誘電損失(tanδ)が低減されて高効率なアンテナ特性が得られ、かつ広帯域な特性が得られる。また、誘電率の低い発泡層312を背面ケース部102とアンテナパターン311との間に配置することで、背面ケース部102の外表面とアンテナパターン311との間の電気的な距離が長くなる。その結果、背面ケース部102の外部に金属または高誘電体からなる外部物体が配置されても、アンテナパターン311に与える影響を低減することができる。
【0048】
(第4実施形態)
本発明の第4の実施形態に係るアンテナ装置及びその製造方法を、図6を用いて以下に説明する。図6(a)は、本実施形態のアンテナ装置を製造する途中工程を示す断面図(左側図面)及び平面図(右側図面)であり、図6(b)は、本実施形態のアンテナ装置の断面図(左側図面)及び平面図(右側図面)である。各断面図は、それぞれ各平面図のAA線における断面図である。
【0049】
本実施形態でも、アンテナ装置400の背面ケース部102の内面の所定の位置に窪み部106が形成されており、窪み部106の内部に発泡層412が配置されている。また、アンテナパターン411がベースフィルムのFPC413の面上に形成されており、これが両面テープ414で発泡層412に接着されている。本実施形態では、発泡層412に加えてFPC413も発泡構造としている。
【0050】
本実施形態でも、二色成形法により背面ケース部102及び発泡層412を射出成形する(図6(a))。このとき、図6(a)右側の平面図では、発泡層412がスキン層で蔽われているため、断面図のような発泡構造は見えない。また、表面にアンテナパターン411が形成されたFPC413は、あらかじめ発泡構造に形成されている。これにより、FPC413も低誘電率を有している。背面ケース部102及び発泡層412が射出成形された後、アンテナパターン411が形成された発泡構造のFPC413を両面テープ414で発泡層412に接着する。
【0051】
本実施形態では、誘電率の低い発泡構造のFPC413及び発泡層412の上にアンテナパターン411が形成されていることから、誘電損失(tanδ)が低減されて高効率なアンテナ特性が得られ、かつ広帯域な特性が得られる。また、低誘電率の発泡層412に加えて低誘電率のFPC413も背面ケース部102とアンテナパターン311との間に配置されることで、背面ケース部102の外表面とアンテナパターン411との間の電気的な距離が長くなる。その結果、背面ケース部102の外部に金属または高誘電体からなる外部物体が配置されても、アンテナパターン411に与える影響をさらに低減することができる。
【0052】
本実施形態では、アンテナパターン411が蒸着または導電ペースト印刷法により形成されていることから、金型で形成された図8に示す従来のアンテナ装置900に比べて、アンテナパターン411から制御用基板103上のグランドまでの距離も長くなる。その結果、アンテナ特性がさらに改善される。
【0053】
(第5実施形態)
本発明の第5の実施形態に係るアンテナ装置及びその製造方法を、図7を用いて以下に説明する。図7は、本実施形態のアンテナ装置の断面図(同図(a))及び平面図(同図(b))である。
【0054】
本実施形態では、アンテナ装置500の背面ケース部502の内面には窪み部が形成されておらず、また発泡層も配置されていない。本実施形態では、第4実施形態のアンテナ装置400と同様に、アンテナパターン511が発泡構造のFPC513の面上に形成されており、これが両面テープ514で背面ケース部502の内面に接着されている。本実施形態では、FPC513のみが発泡構造を有している。
【0055】
本実施形態では、FPC513が発泡構造を有していることから、その誘電率が低減されている。そして、低誘電率のFPC513の表面にアンテナパターン511が形成されていることから、誘電損失(tanδ)が低減されて高効率なアンテナ特性が得られ、かつ広帯域な特性が得られる。また、低誘電率のFPC513を背面ケース部502とアンテナパターン511との間に配置することで、背面ケース部502の外表面とアンテナパターン511との間の電気的な距離が長くなる。その結果、背面ケース部502の外部に金属または高誘電体からなる外部物体が配置されても、アンテナパターン511に与える影響を低減することができる。
【0056】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るアンテナ装置及びその製造方法の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態におけるアンテナ装置及びその製造方法の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
100、200、300、400、500 アンテナ装置
101 前面ケース部(第1ケース部)
102、502 背面ケース部(第2ケース部)
103 制御用基板
104 給電端子
105 端子把持部
106 窪み部
107 溶着ボス
111、211、311、411、511 アンテナパターン
112、212、312、412 発泡層
213、413、513 FPC
214、414、514 両面テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部と、
前記ケース部の内面側に固定されたアンテナパターンと、
発泡構造を有して前記アンテナパターンと前記ケース部の内面との間に配置される発泡層と、を備える
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記ケース部の内面に所定深さの窪み部が形成されており、
前記発泡層が前記窪み部の内部に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナパターンは、前記発泡層の面上に形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナパターンが所定のアンテナ基板の一方の面上に形成され、前記アンテナ基板の他方の面が前記発泡層に載置されて所定の固定手段により固定されている
ことを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナパターンが前記発泡層の一方の面上に形成され、前記発泡層の他方の面が前記ケース部の内面に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナパターンが移動中にも送受信可能に構成された携帯端末である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
ケース部と、前記ケース部の内面側に固定されたアンテナパターンと、発泡構造を有して前記アンテナパターンと前記ケース部の内面との間に配置される発泡層と、を備えるアンテナ装置の製造方法であって、
金属を付着させにくい第1の樹脂を用いて前記ケース部を射出成形する第1工程と、
金属を付着させやすい第2の樹脂を用いて前記発泡層を形成する第2の工程と、
所定のアンテナ基板上に前記アンテナパターンを形成する第3の工程と、を有する
ことを特徴とするアンテナ装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1工程では、前記ケース部の所定の位置に窪み部を形成し、
前記第2工程では、前記発泡層を前記窪み部の内部に形成する
ことを特徴とする請求項7に記載のアンテナ装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1工程と前記第2工程とを二色成形により処理する
ことを特徴とする請求項7または8に記載のアンテナ装置の製造方法。
【請求項10】
前記アンテナ基板は前記発泡層である
ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載のアンテナ装置の製造方法。
【請求項11】
前記第3の工程では、導電ペーストを前記アンテナパターンの形状に印刷する
ことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載のアンテナ装置の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−15578(P2012−15578A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147151(P2010−147151)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】