説明

アンテナ装置及びアンテナシステム

【課題】質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置10は、アンテナ取付板11上に、アンテナ基板12、GFRP13、多孔質性部材14、GFRP15が順次設けられ、アンテナ基板12は、アンテナ素子が形成されるアンテナ素子形成面12aと、グランドとなる導体が形成されるグランド面12bと、を有し、GFRP13及び15と多孔質性部材14とがレドームを構成し、多孔質性部材14は、ポリイミド発泡体によって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、航空機や飛しょう体に搭載されるアンテナ装置及びアンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアンテナ装置には、電波を透過する誘電体で構成されたレドーム(レーダドームの略称)が設けられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された従来のレドームは、3層で構成されており、最も外側の層が石英ガラスやヒューズドシリカ焼結体(以下「石英ガラス等」という。)で形成されている。したがって、このレドームを用いたアンテナ装置は、空力加熱により数百度の高温に曝される環境にも適応でき、航空機や飛しょう体に搭載することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2845040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のレドームを用いた従来のアンテナ装置では、石英ガラス等が用いられているため、以下に示すような課題があった。
【0005】
(1)従来のアンテナ装置では、石英ガラス等の強度を確保するために石英ガラス等の厚さをある程度厚くする必要があるので、アンテナ装置の質量が比較的大きくなるという課題があった。
【0006】
(2)従来のアンテナ装置では、石英ガラス等のみでは断熱効果が得られないため、石英ガラス等とアンテナ基板との間に空気層を設ける必要があった。また、従来のアンテナ装置では、衝撃による石英ガラス等の割れやクラック等の発生を防止するための衝撃対策の構造が必要であった。これらの理由により、従来のアンテナ装置では、レドームの表面からアンテナ装置の底面までの高さを積層化等によって低くすること(以下「低背化」という。)が困難であるという課題があった。
【0007】
(3)従来のアンテナ装置では、石英ガラス等が、切削加工を主とする製造工程で製造されるので、製造コストが比較的高くなるという課題があった。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができるアンテナ装置及びアンテナシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアンテナ装置は、誘電体基板の一の面上にアンテナ素子が形成されたアンテナ基板と、前記一の面側に、ガラス繊維を含む第1の樹脂部材と、多孔質性の材料で形成された多孔質性部材と、ガラス繊維を含む第2の樹脂部材とが順次積層された構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明のアンテナ装置は、多孔質性部材が第1及び第2の樹脂部材に挟持されてレドームを形成するので、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができる。
【0011】
本発明のアンテナシステムは、アンテナ装置を複数備え、前記複数のアンテナ装置の少なくとも1つは送信アンテナ装置であり、少なくとも1つは受信アンテナ装置であるアンテナシステムであって、前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置を固定するアンテナ装置固定板と、前記送信アンテナ装置と前記受信アンテナ装置との間に設けられた金属壁と、を備えた構成を有している。
【0012】
この構成により、本発明のアンテナシステムは、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができるとともに、金属壁を備えることにより、送信アンテナ装置の側面から受信アンテナ装置の側面に漏れる電波の強度を弱めることができる。
【0013】
また、本発明のアンテナシステムは、アンテナ装置を複数備え、前記複数のアンテナ装置の少なくとも1つは送信アンテナ装置であり、少なくとも1つは受信アンテナ装置であるアンテナシステムであって、前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置を固定するアンテナ装置固定板と、前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置の各側面を覆う金属枠体と、を備えた構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明のアンテナシステムは、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができるとともに、金属枠体を備えることにより、送信アンテナ装置の側面から受信アンテナ装置の側面に漏れる電波の強度を弱めることができる。
【0015】
さらに、本発明のアンテナシステムは、アンテナ装置を複数備え、前記複数のアンテナ装置の少なくとも1つは送信アンテナ装置であり、少なくとも1つは受信アンテナ装置であるアンテナシステムであって、前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置のいずれか一方を固定するアンテナ装置固定板と、前記送信アンテナ装置と前記受信アンテナ装置との間に設けられた金属壁と、を備え、前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置のいずれか他方が移動体の筐体に固定される構成を有している。
【0016】
この構成により、本発明のアンテナシステムは、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができるとともに、金属壁を備えることにより、送信アンテナ装置の側面から受信アンテナ装置の側面に漏れる電波の強度を弱めることができる。
【0017】
さらに、本発明のアンテナシステムは、アンテナ装置を複数備え、前記複数のアンテナ装置の少なくとも1つは送信アンテナ装置であり、少なくとも1つは受信アンテナ装置であるアンテナシステムであって、前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置のいずれか一方を固定するアンテナ装置固定板と、前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置の各側面を覆う金属枠体と、を備え、前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置のいずれか他方が移動体の筐体に固定される構成を有している。
【0018】
この構成により、本発明のアンテナシステムは、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができるとともに、金属枠体を備えることにより、送信アンテナ装置の側面から受信アンテナ装置の側面に漏れる電波の強度を弱めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができるという効果を有するアンテナ装置及びアンテナシステムを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態におけるアンテナ装置の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるアンテナ装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態におけるアンテナシステムの断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるアンテナシステムの斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態におけるアンテナシステムの斜視図である。
【図6】本発明の第4実施形態におけるアンテナシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
まず、本発明に係るアンテナ装置の第1実施形態における構成について図1及び図2を用いて説明する。なお、本発明のアンテナ装置を航空機に搭載するものとして説明する。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施形態におけるアンテナ装置10は、アンテナ取付板11、アンテナ基板12、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic:ガラス繊維強化プラスチック)13、多孔質性部材14、GFRP15を備えている。ここで、GFRP13及び15と多孔質性部材14とがアンテナ装置10のレドームを構成している。
【0024】
また、アンテナ装置10は、航空機の機体外表面(例えば機体側面の外表面)にGFRP15の表面が露出するよう取り付けられる構成となっている。そのため、GFRP15の表面形状は、取り付けられる場所の表面形状に合わせた形状とされる。本実施形態では、GFRP15の表面形状は、所定半径の円弧状の曲面形状としている。このGFRP15の表面形状に基づいて、アンテナ取付板11、アンテナ基板12、GFRP13及び多孔質性部材14の曲面形状が決定されている。
【0025】
アンテナ取付板11は、例えば、アルミニウム合金をダイキャスト成型して作製され、図示しない航空機等の筐体にねじ止めにより固定されるようになっている。このアンテナ取付板11は、アンテナ基板12が搭載される、所定半径の円弧状の曲面形状を有する基板搭載面11aと、L型形状の同軸ケーブル用レセプタクルコネクタ(以下、単に「同軸コネクタ」という。)100が固定されるコネクタ固定部11bと、を有する。同軸コネクタ100は、同軸ケーブル110の中心導体(図示省略)と電気的に接続された中心電極101と、同軸ケーブル110の外部導体(図示省略)と電気的に接続されたグランド電極102と、を有する。アンテナ取付板11には、中心電極101を貫通させる貫通孔(符号省略)と、グランド電極102をねじ止めするためのねじ孔(符号省略)とが形成されている。なお、アンテナ取付板11を、プレス加工技術や切削加工を用いて作製する構成としてもよい。
【0026】
アンテナ基板12は、所定半径の円弧状の曲面形状に形成された誘電体基板であり、例えば、マイクロストリップ線路によりパッチアンテナが形成されるものである。このパッチアンテナは、例えば、GPS衛星からの電波を受信する受信アンテナや、所定周波数の電波を送信する送信アンテナとして構成される。
【0027】
アンテナ基板12は、アンテナ素子が形成されるアンテナ素子形成面12aと、グランドとなる導体が形成されるグランド面12bと、を有している。また、アンテナ基板12には、同軸コネクタ100の中心電極101が貫通される貫通孔(符号省略)及び半田付けされるランドが設けてある(図示省略)。また、アンテナ基板12とアンテナ取付板11との間は、導電性接着剤で接着固定されるようになっている。この導電性接着剤は、空力加熱によって発生する数百度の温度に耐えうる耐熱性を有する。したがって、アンテナ基板12のグランド面12bは、アンテナ取付板11を介し、グランド電極102と電気的に接続される構成となっている。
【0028】
GFRP13及び15は、所定半径の円弧状の曲面形状に形成されたものであり、空力加熱によって発生する数百度の温度に耐えうる耐熱性を有する。ここで、GFRP13及び15は、それぞれ、本発明に係る第1及び第2の樹脂部材を構成する。
【0029】
多孔質性部材14は、所定半径の円弧状の曲面形状に形成されたものであり、空気含有の気泡を多く有する部材、例えば、ポリイミド発泡体によって構成されている。多孔質性部材14の発泡率は、レドームとしての強度を確保するため、数倍程度とするのが好ましい。ここで、発泡率とは、発泡前の体積に対する発泡後の体積の比率をいう。
【0030】
この構成により、多孔質性部材14は、レドームとしての強度及び断熱性を有する。また、多孔質性部材14をGFRP13及び15が挟持してレドームを構成しているので、GFRP13及び15によって多孔質性部材14の吸湿を防止することができる。なお、多孔質性部材14の厚さは、断熱効果やアンテナ装置10の高さ寸法(図1に示すH寸法)の仕様値等を考慮して決定する。
【0031】
前述のアンテナ基板12とGFRP13、GFRP13と多孔質性部材14、多孔質性部材14とGFRP15は、それぞれ、接着剤により接着固定される構成となっている。これらの接着剤は、空力加熱によって発生する数百度の温度に耐えうる耐熱性を有する。
【0032】
次に、以上のように構成された本実施形態におけるアンテナ装置10の効果について説明する。
【0033】
まず、アンテナ装置10は、GFRP13及び15と多孔質性部材14とでレドームを構成しているので、従来のように、石英ガラス等の切削加工工程を必要としない。したがって、アンテナ装置10は、従来のものよりも製造コストを大幅に低減することができる。
【0034】
また、アンテナ装置10は、質量の減少や低背化を図ることもできる。具体的には、アンテナ装置10の試作品において以下のような結果が得られた。
【0035】
第1に、アンテナ装置10は、従来用いられていた石英ガラス等と比べて極めて軽量のGFRP13及び15と多孔質性部材14とを備える構成としたので、質量を従来の1/8程度にすることができた。
【0036】
第2に、アンテナ装置10は、石英ガラス等を用いず、断熱性を有する多孔質性部材14を備える構成としたので、従来のものと異なり、石英ガラス等の衝撃対策の構造や、断熱のための空気層が不要となって図1に示す高さHが従来の約1/2となり、低背化を図ることができた。この結果、アンテナ装置10は従来必要とされていた設置スペースを半減することができる。したがって、従来の設置スペースに、アンテナ装置10に加えて、例えばアンテナ装置10に接続される送信機や受信機等を設けることができるので、アンテナ装置10は、設置スペースの縮小化を図ることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態におけるアンテナ装置10によれば、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができる。
【0038】
なお、前述の実施形態において、アンテナ取付板11の基板搭載面11aからGFRP15までの各構成要素が円弧状の曲面形状になるよう構成したアンテナ装置10を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、アンテナ装置10の各構成要素が平面形状や球面形状等、又は円錐形状の先端部を丸めたような形状等であっても同様な効果が得られる。
【0039】
また、前述の実施形態において、アンテナ装置10を航空機に搭載する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、レドームが数百度の高温に曝される飛しょう体等のような移動体に好適に適用することができる。
【0040】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態におけるアンテナシステムの構成について図3及び図4を用いて説明する。なお、本発明のアンテナシステムを航空機に搭載するものとして説明する。
【0041】
図3及び図4に示すように、本実施形態におけるアンテナシステム20は、受信アンテナ装置50及び60と、アンテナ装置固定板21と、を備えている。ここで、図3は、受信アンテナ装置50及び60の断面図であって、図3に示した括弧内の符号は受信アンテナ装置60の構成要素に対応する符号である。図示のように、受信アンテナ装置50のGFRP55及び受信アンテナ装置60のGFRP65の各表面(以下「アンテナ表面」という。)側には、機体シャーシ90が設けられている。
【0042】
受信アンテナ装置50は、アンテナ取付板51、アンテナ基板52、GFRP53、多孔質性部材54、GFRP55を備えている。また、受信アンテナ装置60は、アンテナ取付板61、アンテナ基板62、GFRP63、多孔質性部材64、GFRP65を備えている。すなわち、受信アンテナ装置50及び60は、第1実施形態におけるアンテナ装置10を、所定の無線周波数の信号を受信する装置に適用したものであり、それぞれ、互いに異なる周波数又は同じ周波数の電波を受信するようになっている。
【0043】
アンテナ装置固定板21の表面側には、受信アンテナ装置50及び60が予め定められた間隔で固定されている。なお、図示を省略したが、アンテナ装置固定板21の裏面側には、受信アンテナ装置50及び60が受信した信号を処理する受信機が取り付けられるようになっている。
【0044】
機体シャーシ90には、受信アンテナ装置50及び受信アンテナ装置60の各アンテナ表面を露出させる露出窓91及び92が形成されている。
【0045】
以上のように、本実施形態におけるアンテナシステム20によれば、従来用いられていた石英ガラス等を廃止した受信アンテナ装置50及び60を備える構成としたので、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができる。
【0046】
なお、前述の実施形態において、アンテナシステム20が2つの受信アンテナ装置50及び60を備える構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、3つ以上の受信装置や複数の送信装置を備える構成としてもよい。
【0047】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態におけるアンテナシステムの構成について図5を用いて説明する。
【0048】
図5に示すように、本実施形態におけるアンテナシステム30は、第2実施形態におけるアンテナシステム20(図4参照)の構成を一部変更したものである。したがって、第2実施形態の構成と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
本実施形態におけるアンテナシステム30は、送信アンテナ装置70と、受信アンテナ装置80と、アンテナ装置固定板21と、金属壁31と、を備えている。
【0050】
送信アンテナ装置70は、第1実施形態におけるアンテナ装置10を、所定の無線周波数の信号を送信する装置に適用したものである。受信アンテナ装置80は、第1実施形態におけるアンテナ装置10を、所定の無線周波数の信号を受信する装置に適用したものである。
【0051】
ここで、送信アンテナ装置70及び受信アンテナ装置80は、例えば、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダとして構成され、図示しない送信機や受信機(例えばアンテナ装置固定板21の裏面側に設置)に接続されるようになっている。このFMCWレーダは、次のように動作する。まず、送信機は、時間とともに周波数が直線的に変化するように周波数変調された送信信号を送信アンテナ装置70に出力し、送信アンテナ装置70が信号波を送信する。この信号波を反射した目標物からの反射波を受信アンテナ装置80が受信して、受信信号が受信機に送られる。そして、受信機は、送信信号と受信信号とを混合してビート信号を生成し、FFT等を用いてビート信号を周波数解析することにより検出されるピーク成分の周波数(ビート周波数)に基づいて、信号波を反射した目標物と航空機との距離や相対速度を求める。或いは、ビート信号が一定の周波数となるよう時間とともに周波数が直線的に変化する時間を制御し、その変化する時間を計測して目標物との距離を求める。
【0052】
金属壁31は、例えば、ダイキャスト成型や切削加工により作製されるものであり、溶接によりアンテナ装置固定板21に接合されるものである。図示のように、金属壁31は、送信アンテナ装置70と受信アンテナ装置80との間、アンテナ装置固定板21の一方の端面及び他方の端面の3箇所に設けてある。
【0053】
アンテナシステム30は、金属壁31を備えることにより、送信アンテナ装置70の側面から受信アンテナ装置80の側面に漏れる電波の強度を弱めることができる。
【0054】
金属壁31の材料、厚さ及び配置位置等は、空力加熱による熱がアンテナ装置固定板21と機体シャーシ90とで囲われた空間内に伝わる時間や熱の温度、送信アンテナ装置70の側面から受信アンテナ装置80の側面に漏れる電波の強度や送信アンテナ装置70及び受信アンテナ装置のビームパターン等を考慮して、シミュレーションや実験により決定する。
【0055】
以上のように、本実施形態におけるアンテナシステム30によれば、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができるとともに、金属壁31を設ける構成としたので、送信アンテナ装置70の側面から受信アンテナ装置80の側面に漏れる電波の強度を弱めることができる。
【0056】
その結果、本実施形態におけるアンテナシステム30は、送信アンテナ装置70の側面から受信アンテナ装置80の側面に漏れる電波の強度を弱めることにより、目標物との距離や相対速度の測定精度を向上させることができる。
【0057】
なお、前述の実施形態において、アンテナシステム30が送信アンテナ装置70及び受信アンテナ装置80を1つずつ備える構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、送信アンテナ装置70及び受信アンテナ装置80を各2つ以上備えるアンテナシステムに対しても金属壁31を設けることにより、前述と同様な効果が得られる。
【0058】
次に、第3実施形態の他の態様について説明する。前述の第3実施形態では、金属壁31を挟んで送信アンテナ装置70及び受信アンテナ装置80の両方をアンテナ装置固定板21の表面側に設置する構成の例を挙げたが、次のように構成することもできる。
【0059】
すなわち、送信アンテナ装置70のみをアンテナ装置固定板21の表面側に設置するとともに、受信アンテナ装置80を機体の筐体の所定位置に設置し、金属壁31を送信アンテナ装置70と受信アンテナ装置80との間(例えばアンテナ装置固定板21上)に設ける構成とすることもできる。また、この逆の構成として、受信アンテナ装置80のみをアンテナ装置固定板21の表面側に設置するとともに、送信アンテナ装置70を機体の筐体の所定位置に設置し、金属壁31を送信アンテナ装置70と受信アンテナ装置80との間(例えばアンテナ装置固定板21上)に設ける構成とすることもできる。これらの構成では、アンテナ装置固定板21の裏面側に送信機及び受信機を設置する。
【0060】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態におけるアンテナシステムの構成について図6を用いて説明する。
【0061】
図6に示すように、本実施形態におけるアンテナシステム40は、第3実施形態におけるアンテナシステム30(図5参照)の構成を一部変更したものである。したがって、第3実施形態の構成と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
アンテナシステム40は、送信アンテナ装置70と、受信アンテナ装置80と、アンテナ装置固定板21と、金属枠体41と、を備えている。送信アンテナ装置70及び受信アンテナ装置80は、例えば、FMCWレーダとして構成され、アンテナ装置固定板21の裏面側に設置された送信機や受信機に接続されている(図示省略)。
【0063】
金属枠体41は、例えば、ダイキャスト成型や切削加工により作製されたものであり、送信アンテナ装置70及び受信アンテナ装置80の各アンテナ取付板(図1のアンテナ取付板11に相当)に溶接により接合されるようになっている。
【0064】
アンテナシステム40は、金属枠体41を備えることにより、送信アンテナ装置70の側面から受信アンテナ装置80の側面に漏れる電波の強度を弱めることができる。なお、金属枠体41をアンテナ取付板と一体に成型する構成としてもよい。
【0065】
金属枠体41の材料、枠の厚さ、枠の高さ等は、空力加熱による熱がアンテナ装置固定板21と機体シャーシ90とで囲われた空間内に伝わる時間や熱の温度、送信アンテナ装置70の側面から受信アンテナ装置80の側面に漏れる電波の強度や送信アンテナ装置70及び受信アンテナ装置80のビームパターン等を考慮して、シミュレーションや実験により決定する。
【0066】
以上のように、本実施形態におけるアンテナシステム40によれば、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができるとともに、金属枠体41を設ける構成としたので、送信アンテナ装置70の側面から受信アンテナ装置80の側面に漏れる電波の強度を弱めることができる。
【0067】
その結果、本実施形態におけるアンテナシステム40は、送信アンテナ装置70の側面から受信アンテナ装置80の側面に漏れる電波の強度を弱めることにより、目標物との距離や相対速度の測定精度を向上させることができる。
【0068】
次に、第4実施形態の他の態様について説明する。前述の第4実施形態では、金属枠体41がそれぞれ設けられた送信アンテナ装置70及び受信アンテナ装置80の両方をアンテナ装置固定板21の表面側に設置する構成の例を挙げたが、次のように構成することもできる。
【0069】
すなわち、金属枠体41が設けられた送信アンテナ装置70のみをアンテナ装置固定板21の表面側に設置し、金属枠体41が設けられた受信アンテナ装置80を機体の筐体の所定位置に設置する構成とすることもできる。また、この逆の構成として、金属枠体41が設けられた受信アンテナ装置80のみをアンテナ装置固定板21の表面側に設置し、金属枠体41が設けられた送信アンテナ装置70を機体の筐体の所定位置に設置する構成とすることもできる。これらの構成では、アンテナ装置固定板21の裏面側に送信機及び受信機を設置する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明に係るアンテナ装置及びアンテナシステムは、質量の減少や低背化を図りつつ、製造コストを低減することができるという効果を有し、航空機や飛しょう体に搭載されるアンテナ装置及びアンテナシステム等として有用である。
【符号の説明】
【0071】
10 アンテナ装置
11、51、61 アンテナ取付板
11a 基板搭載面
11b コネクタ固定部
12、52、62 アンテナ基板
12a アンテナ素子形成面
12b グランド面
13、53、63 GFRP(第1の樹脂部材)
14、54、64 多孔質性部材
15、55、65 GFRP(第2の樹脂部材)
20、30、40 アンテナシステム
21 アンテナ装置固定板
31 金属壁
41 金属枠体
50、60、80 受信アンテナ装置
70 送信アンテナ装置
90 機体シャーシ
91、92 露出窓
100 同軸コネクタ
101 中心電極
102 グランド電極
110 同軸ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板の一の面上にアンテナ素子が形成されたアンテナ基板と、前記一の面側に、ガラス繊維を含む第1の樹脂部材と、多孔質性の材料で形成された多孔質性部材と、ガラス繊維を含む第2の樹脂部材とが順次積層されたアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置を複数備え、前記複数のアンテナ装置の少なくとも1つは送信アンテナ装置であり、少なくとも1つは受信アンテナ装置であるアンテナシステムであって、
前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置を固定するアンテナ装置固定板と、前記送信アンテナ装置と前記受信アンテナ装置との間に設けられた金属壁と、を備えたアンテナシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナ装置を複数備え、前記複数のアンテナ装置の少なくとも1つは送信アンテナ装置であり、少なくとも1つは受信アンテナ装置であるアンテナシステムであって、
前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置を固定するアンテナ装置固定板と、前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置の各側面を覆う金属枠体と、を備えたアンテナシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のアンテナ装置を複数備え、前記複数のアンテナ装置の少なくとも1つは送信アンテナ装置であり、少なくとも1つは受信アンテナ装置であるアンテナシステムであって、
前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置のいずれか一方を固定するアンテナ装置固定板と、前記送信アンテナ装置と前記受信アンテナ装置との間に設けられた金属壁と、を備え、
前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置のいずれか他方が移動体の筐体に固定されるアンテナシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のアンテナ装置を複数備え、前記複数のアンテナ装置の少なくとも1つは送信アンテナ装置であり、少なくとも1つは受信アンテナ装置であるアンテナシステムであって、
前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置のいずれか一方を固定するアンテナ装置固定板と、前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置の各側面を覆う金属枠体と、を備え、
前記送信アンテナ装置及び前記受信アンテナ装置のいずれか他方が移動体の筐体に固定されるアンテナシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−109657(P2012−109657A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254773(P2010−254773)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】