説明

アンテナ装置及びアンテナ励振方法

【課題】広い範囲の振幅を満足する可変減衰器を実装することなく、振幅の制御を実施できるようにして、高効率化や低消費電力化を図ることができるようにする。
【解決手段】利得評価値F及び干渉評価値Fからなる評価関数Fを用いて、振幅制御範囲内に収まる関数の独立変数x及び複数の素子アンテナ6の励振位相φを算出する独立変数・励振位相算出装置11と、その独立変数xから複数の素子アンテナ6の励振振幅Aを算出する振幅算出装置12とを設け、複数の素子アンテナ6の励振位相及び励振振幅が、その励振位相φ及び励振振幅Aと一致するように移相器3及び可変減衰器4を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の素子アンテナの励振振幅及び励振位相を制御して、不要波を抑圧することが可能なアンテナ装置及びアンテナ励振方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は以下の特許文献1に開示されているアンテナ装置を示す構成図である。
図7のアンテナ装置は、素子アンテナの励振位相を制御することで、不要波を抑圧するものであり、送信機101、分配器102、移相器103、高出力増幅器104、素子アンテナ105、不要波抑圧方向設定装置106、位相演算装置107及び位相制御装置108から構成されている。
以下、図7のアンテナ装置の処理内容を説明する。
【0003】
まず、送信機101は、送信対象の信号(以下、「送信信号」と称する)を生成して、その送信信号を分配器102に出力する。
分配器102は、素子アンテナ105の本数がN本であれば、送信機101から送信信号を受けると、その送信信号をN個の移相器103に分配する。
【0004】
一方、不要波抑圧方向設定装置106は、不要波を抑える方向の設定を受け付けて、その不要波方向を示す情報を位相演算装置107に出力する。
位相演算装置107は、不要波抑圧方向設定装置106から不要波方向を示す情報を受けると、不要波の抑圧が可能な位相(各素子アンテナ105の励振位相φ)を算出する。
ここで、不要波の抑圧が可能な位相は、例えば、下記の式(1)に示す評価関数Fが最小になるように最適化することで求められる。
即ち、評価関数Fが最小となる位相(各素子アンテナ105の励振位相φ)は、例えば、最急降下法や共役勾配法によって算出することができる。
【0005】



【0006】
位相制御装置108は、位相演算装置107が、不要波の抑圧が可能な位相として、各素子アンテナ105の励振位相φを算出すると、その励振位相φを移相器103に設定する。
移相器103は、分配器102により分配された送信信号の位相が、位相制御装置108により設定された素子アンテナ105の励振位相φと一致するように、その送信信号の位相を調整する。
【0007】
高出力増幅器104は、移相器103により位相が調整された送信信号を増幅し、増幅後の送信信号を素子アンテナ105に出力する。これにより、素子アンテナ105から送信信号が空間に放射される。
図7のアンテナ装置では、送信信号の位相が制御されることで、不要波が抑圧されるが、送信信号の位相を制御するだけでは、不要波を抑圧することができない場合がある(不要波の抑圧範囲に制約を生じることがある)。
例えば、メインビームに対して、対称な位置にある不要波については抑圧することが困難である。
【0008】
そこで、以下の特許文献2に開示されているアンテナ装置では、送信信号の位相を制御するだけでなく、送信信号の振幅も制御することで、不要波を抑圧する範囲の制約を無くしている。
図8は以下の特許文献2に開示されているアンテナ装置を示す構成図であり、図において、図7と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
図8のアンテナ装置では、図7のアンテナ装置の構成の他に、可変減衰器110、振幅位相演算装置111及び振幅制御装置112を実装している。
【0009】
不要波抑圧方向設定装置106は、不要波を抑える方向の設定を受け付けて、その不要波方向を示す情報を振幅位相演算装置111に出力する。
振幅位相演算装置111は、不要波抑圧方向設定装置106から不要波方向を示す情報を受けると、不要波の抑圧が可能な振幅(各素子アンテナ105の励振振幅A)と不要波の抑圧が可能な位相(各素子アンテナ105の励振位相φ)を算出する。
ここで、不要波の抑圧が可能な振幅と位相は、上記の式(1)に示す評価関数Fが最小になるように最適化することで求められる。
即ち、評価関数Fが最小となる振幅と位相は、例えば、最急降下法や共役勾配法によって算出することができる。
【0010】
位相制御装置108は、振幅位相演算装置111が、不要波の抑圧が可能な位相として、各素子アンテナ105の励振位相φを算出すると、その励振位相φを移相器103に設定する。
振幅制御装置112は、振幅位相演算装置111が、不要波の抑圧が可能な振幅として、各素子アンテナ105の励振振幅Aを算出すると、その励振振幅Aを可変減衰器110に設定する。
【0011】
移相器103は、分配器102により分配された送信信号の位相が、位相制御装置108により設定された素子アンテナ105の励振位相φと一致するように、その送信信号の位相を調整する。
可変減衰器110は、移相器103により位相が調整された送信信号の振幅が、振幅制御装置112により設定された素子アンテナ105の励振振幅Aと一致するように、その送信信号の振幅を調整する。
【0012】
高出力増幅器104は、可変減衰器110により振幅が調整された送信信号を増幅し、増幅後の送信信号を素子アンテナ105に出力する。これにより、素子アンテナ105から送信信号が空間に放射される。
図8のアンテナ装置では、送信信号の位相と振幅が制御されることで、不要波が抑圧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭63−208306号公報(第6頁から第7頁、図1)
【特許文献2】特開平2−276302号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来のアンテナ装置は以上のように構成されているので、送信信号の位相を制御するだけでなく、送信信号の振幅も制御すれば、不要波を抑圧する範囲の制約を無くすことができる。しかし、単に、送信信号の振幅を制御するプロセスを加えるだけでは、不要波を抑圧する範囲によっては、可変減衰器110が、広い範囲の振幅を満足する必要があり、設計及び製造コストが高くなってしまう。また、高出力増幅器104が、可変減衰器110の振幅範囲に対応するダイナミックレンジを持つ必要があるため、電源効率が低下して消費電力が多くなってしまう課題があった。
【0015】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、広い範囲の振幅を満足する可変減衰器を実装することなく、振幅の制御を実施できるようにして、高効率化や低消費電力化を図ることができるアンテナ装置及びアンテナ励振方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明に係るアンテナ装置は、所望の振幅制御範囲の設定を受け付ける振幅制御範囲設定受付手段と、定義域に対する値域が振幅制御範囲設定受付手段により設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数及び複数の素子アンテナの励振位相を用いて、所望方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す利得評価値及び不要波方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す干渉評価値を設定する評価値設定手段と、評価値設定手段により設定された利得評価値及び干渉評価値からなる評価関数を定義し、その評価関数を用いて、その振幅制御範囲内に収まる関数の独立変数及び複数の素子アンテナの励振位相を算出する独立変数・励振位相算出手段と、独立変数・励振位相算出手段により算出された関数の独立変数から複数の素子アンテナの励振振幅を算出する振幅算出手段とを設け、制御手段が、複数の素子アンテナの励振位相が独立変数・励振位相算出手段により算出された励振位相と一致するように位相振幅調整手段を制御するとともに、複数の素子アンテナの励振振幅が振幅算出手段により算出された励振振幅と一致するように位相振幅調整手段を制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、所望の振幅制御範囲の設定を受け付ける振幅制御範囲設定受付手段と、定義域に対する値域が振幅制御範囲設定受付手段により設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数及び複数の素子アンテナの励振位相を用いて、所望方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す利得評価値及び不要波方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す干渉評価値を設定する評価値設定手段と、評価値設定手段により設定された利得評価値及び干渉評価値からなる評価関数を定義し、その評価関数を用いて、その振幅制御範囲内に収まる関数の独立変数及び複数の素子アンテナの励振位相を算出する独立変数・励振位相算出手段と、独立変数・励振位相算出手段により算出された関数の独立変数から複数の素子アンテナの励振振幅を算出する振幅算出手段とを設け、制御手段が、複数の素子アンテナの励振位相が独立変数・励振位相算出手段により算出された励振位相と一致するように位相振幅調整手段を制御するとともに、複数の素子アンテナの励振振幅が振幅算出手段により算出された励振振幅と一致するように位相振幅調整手段を制御するように構成したので、広い範囲の振幅を満足する可変減衰器を実装することなく、振幅の制御を実施できるようになり、その結果、高効率化や低消費電力化を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1によるアンテナ装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるアンテナ装置の処理内容(アンテナ励振方法)を示すフローチャートである。
【図3】不要波を抑圧する各素子アンテナの振幅分布を示す説明図である。
【図4】アンテナ装置から放射される電波の放射パターンを示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態3によるアンテナ装置を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態3によるアンテナ装置の処理内容(アンテナ励振方法)を示すフローチャートである。
【図7】特許文献1に開示されているアンテナ装置を示す構成図である。
【図8】特許文献2に開示されているアンテナ装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるアンテナ装置を示す構成図である。
図1において、送信機1は送信対象の信号(以下、「送信信号」と称する)を生成して、その送信信号を分配器2に出力する処理を実施する。
分配器2は素子アンテナ6の本数がN本であれば、送信機1から出力された送信信号をN個の移相器3に分配する処理を実施する。なお、分配器2は信号分配手段を構成している。
【0020】
移相器3は分配器2により分配された送信信号の位相が、位相制御装置13により設定された素子アンテナ6の励振位相φと一致するように、その送信信号の位相を調整する処理を実施する。
可変減衰器4は移相器3により位相が調整された送信信号の振幅が、振幅制御装置14により設定された素子アンテナ6の励振振幅Aと一致するように、その送信信号の振幅を調整する処理を実施する。
図1では、移相器3が可変減衰器4の前段に配置されている例を示しているが、移相器3が可変減衰器4の後段に配置されていてもよい。
なお、移相器3及び可変減衰器4から位相振幅調整手段が構成されている。
【0021】
高出力増幅器5は可変減衰器4により振幅が調整された送信信号を増幅し、増幅後の送信信号を素子アンテナ6に出力する処理を実施する。
素子アンテナ6は高出力増幅器5による増幅後の送信信号を空間に放射する。
【0022】
不要波抑圧方向設定装置7は例えばキーボードやマウスなどのマンマシンインタフェース、あるいは、外部からデータや情報を受信する通信インタフェースを備えており、不要波を抑圧する方向を示す情報を入力して、不要波抑圧方向の設定を受け付ける処理を実施する。
振幅範囲規定装置8は例えばキーボードやマウスなどのマンマシンインタフェース、あるいは、外部からデータや情報を受信する通信インタフェースを備えており、所望の振幅制御範囲を示す情報を入力して、所望の振幅制御範囲の設定を受け付ける処理を実施する。なお、振幅範囲規定装置8は振幅制御範囲設定受付手段を構成している。
【0023】
振幅定義装置9は定義域に対する値域が振幅範囲規定装置8により設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数で、各素子アンテナ6の励振振幅Aを定義する処理を実施する。
評価値設定装置10は振幅定義装置9により定義された各素子アンテナ6の励振振幅Aや励振位相φi、不要波抑圧方向設定装置7により設定が受け付けられた不要波抑圧方向などを用いて、所望方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す利得評価値F及び不要波方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す干渉評価値Fを設定する処理を実施する。
なお、振幅定義装置9及び評価値設定装置10から評価値設定手段が構成されている。
【0024】
独立変数・励振位相算出装置11は評価値設定装置10により設定された利得評価値F及び干渉評価値Fからなる評価関数Fを定義し、その評価関数Fが最小になるように最適化することで、その振幅制御範囲内に収まる関数の独立変数x及び各素子アンテナ6の励振位相φを算出する処理を実施する。なお、独立変数・励振位相算出装置11は独立変数・励振位相算出手段を構成している。
図1では、評価値設定装置10と独立変数・励振位相算出装置11が別個の装置として構成されている例を示しているが、評価値設定装置10と独立変数・励振位相算出装置11が1つの装置で構成されていてもよい。
【0025】
振幅算出装置12は独立変数・励振位相算出装置11により算出された関数の独立変数xから各素子アンテナ6の励振振幅Aを算出する処理を実施する。なお、振幅算出装置12は振幅算出手段を構成している。
位相制御装置13は各素子アンテナ6の励振位相が独立変数・励振位相算出装置11により算出された励振位相φと一致するように、移相器3の移相量を制御する処理を実施する。
振幅制御装置14は各素子アンテナ6の励振振幅が振幅算出装置12により算出された励振振幅Aと一致するように、可変減衰器4の減衰量を制御する処理を実施する。
なお、位相制御装置13及び振幅制御装置14から制御手段が構成されている。
【0026】
図1では、アンテナ装置の構成要素の一部である振幅範囲規定装置8、関数定義装置9、評価値設定装置10、独立変数・励振位相算出装置11、振幅算出装置12、位相制御装置13及び振幅制御装置14のそれぞれが専用のハードウェア(例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなど)で構成されているものを想定しているが、アンテナ装置の一部がコンピュータで構成される場合には、振幅範囲規定装置8、振幅定義装置9、評価値設定装置10、独立変数・励振位相算出装置11、振幅算出装置12、位相制御装置13及び振幅制御装置14の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにしてもよい。
図2はこの発明の実施の形態1によるアンテナ装置の処理内容(アンテナ励振方法)を示すフローチャートである。
【0027】
次に動作について説明する。
まず、送信機1は、送信対象の送信信号を生成して、その送信信号を分配器2に出力する。
分配器2は、素子アンテナ6の本数がN本であれば、送信機1から送信信号を受けると、その送信信号をN個の移相器3に分配する。
【0028】
一方、不要波抑圧方向設定装置7は、不要波を抑圧する方向を示す情報を入力して、不要波抑圧方向の設定を受け付ける処理を実施する(図2のステップST1)。
次に、振幅範囲規定装置8は、所望の振幅制御範囲を示す情報を入力して、所望の振幅制御範囲の設定を受け付ける処理を実施する(ステップST2)。
なお、不要波抑圧方向設定装置7及び振幅範囲規定装置8での設定の受け付けは、例えば、ユーザが不要波抑圧方向設定装置7及び振幅範囲規定装置8のマンマシンインタフェースを操作することで行ってもよいし、図示せぬ外部装置から、不要波を抑圧する方向を示す情報や所望の振幅制御範囲を示す情報を不要波抑圧方向設定装置7及び振幅範囲規定装置8に送信することで行ってもよい。
【0029】
振幅定義装置9は、振幅範囲規定装置8が所望の振幅制御範囲の設定を受け付けると、定義域に対する値域が振幅範囲規定装置8により設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数で、各素子アンテナ6の励振振幅Aを定義する(ステップST3)。
ただし、振幅制御範囲内に収まる関数は、以下の特徴を有しているものとする。
(1)関数の独立変数は1つである
(2)関数の定義域に制約がない
(3)全ての定義域において連続である
(4)全ての定義域において微分可能である
(5)全ての定義域において、その関数の値域が振幅制御範囲を満足している
【0030】
具体的には、振幅定義装置9は、各素子アンテナ6の励振振幅Aを以下の関数で定義する。

式(2)において、xは関数の独立変数、aは振幅制御範囲によって決まる定数、bは任意の定数である。
式(2)の関数は、独立変数xに関して、全ての定義域で連続であって、微分可能であり、関数の値域は振幅制御範囲を満足している。
また、式(2)の関数は、独立変数xの値が大きくなるにしたがって関数値が振幅制御範囲の最大値に漸近する一方、独立変数xの値が小さくなるにしたがって関数値が振幅制御範囲の最小値に漸近し、独立変数xの値に対して関数値が単調に増加する特徴を有している。
【0031】
評価値設定装置10は、振幅定義装置9が振幅制御範囲内に収まる関数で、各素子アンテナ6の励振振幅Aを定義すると、下記の式(3)に示すように、各素子アンテナ6の励振振幅Aなどを用いて、所望方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す利得評価値F(所望方向へのアンテナ利得を評価する利得評価値)を設定する(ステップST4)。



なお、式(3)が示す利得評価値Fは、一例に過ぎず、他の式で利得評価値Fを設定するようにしてもよい。
【0032】
また、評価値設定装置10は、下記の式(4)に示すように、各素子アンテナ6の励振振幅Aや不要波抑圧方向設定装置7により設定が受け付けられた不要波抑圧方向などを用いて、不要波方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す干渉評価値F(不要波方向へのアンテナ利得を評価する干渉評価値)を設定する(ステップST5)。



不要波が複数ある場合には、下記の式(5)で干渉評価値Fを設定する。

ただし、Mは不要波の数である。
【0033】
独立変数・励振位相算出装置11は、評価値設定装置10が利得評価値F及び干渉評価値Fを設定すると、下記の式(6)に示すように、その利得評価値F及び干渉評価値Fからなる評価関数Fを定義する。

独立変数・励振位相算出装置11は、評価関数Fを定義すると、その評価関数Fが最小になるように最適化することで、その振幅制御範囲内に収まる関数の独立変数x及び各素子アンテナ6の励振位相φを算出する(ステップST6)。
なお、関数の独立変数x及び各素子アンテナ6の励振位相φの算出方法としては、例えば、最急降下法や共役勾配法があり、この実施の形態1では、共役勾配法を用いるものとする。
【0034】
振幅算出装置12は、独立変数・励振位相算出装置11が関数の独立変数xを算出すると、その関数の独立変数xから各素子アンテナ6の励振振幅Aを算出する(ステップST7)。
即ち、振幅算出装置12は、独立変数・励振位相算出装置11により算出された関数の独立変数xを上記の式(2)に代入することで、各素子アンテナ6の励振振幅Aを算出する。
【0035】
ここで、図3は不要波を抑圧する各素子アンテナの振幅分布を示す説明図である。
図3において、31は振幅制御範囲が設定されていない従来のアンテナ装置による不要波を抑圧する振幅分布を示しており、32は振幅制御範囲が設定されている実施の形態1のアンテナ装置による不要波を抑圧する振幅分布を示している。
この実施の形態1では、最大振幅と最小振幅の比を2dBに設定しており、図3より振幅制御範囲が2dBを満足していることがわかる。
【0036】
位相制御装置13は、独立変数・励振位相算出装置11が各素子アンテナ6の励振位相φを算出すると、その励振位相φを移相器3に設定する(ステップST8)。
即ち、位相制御装置13は、各素子アンテナ6の励振位相φに対応する移相量を移相器3に指示する。
振幅制御装置14は、振幅算出装置12が各素子アンテナ6の励振振幅Aを算出すると、その励振振幅Aを可変減衰器4に設定する(ステップST9)。
即ち、振幅制御装置14は、各素子アンテナ6の励振振幅Aに対応する減衰量を可変減衰器4に指示する。
【0037】
移相器3は、分配器2により分配された送信信号の位相が、位相制御装置13により設定された素子アンテナ6の励振位相φと一致するように、その送信信号の位相を調整する(ステップST10)。
即ち、移相器3は、位相制御装置13により指示された移相量だけ、分配器2により分配された送信信号の位相を移相する。
可変減衰器4は、移相器3により位相が調整された送信信号の振幅が、振幅制御装置14により設定された素子アンテナ6の励振振幅Aと一致するように、その送信信号の振幅を調整する(ステップST11)。
即ち、可変減衰器4は、振幅制御装置14により指示された減衰量だけ、移相器3により位相が調整された送信信号を減衰する。
【0038】
高出力増幅器5は、可変減衰器4により振幅が調整された送信信号を増幅し、増幅後の送信信号を素子アンテナ6に出力する。これにより、素子アンテナ6から送信信号が空間に放射される(ステップST12)。
図1のアンテナ装置では、送信信号の位相と振幅が制御されることで、不要波が抑圧される。
【0039】
ここで、図4はアンテナ装置から放射される電波の放射パターンを示す説明図である。
図4において、41は全ての素子アンテナの振幅分布が同じである場合の放射パターン、42は従来のアンテナ装置による不要波抑圧の放射パターン、43は実施の形態1のアンテナ装置による不要波抑圧の放射パターンである。
ここでは、所望方向は正面方向(0度)の位置とし、不要波抑圧方向は正面方向から+6.8度の位置としている。
実施の形態1のアンテナ装置における放射パターンの不要波方向のアンテナ利得と、従来のアンテナ装置における放射パターンの不要波方向のアンテナ利得とがほぼ同じであることから、振幅制御範囲を規定している実施の形態1のアンテナ装置の不要波抑圧と、従来のアンテナ装置の不要波抑圧とはほぼ同等である。
【0040】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、所望の振幅制御範囲の設定を受け付ける振幅範囲規定装置8と、定義域に対する値域が振幅範囲規定装置8により設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数を用いて、所望方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す利得評価値F及び不要波方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す干渉評価値Fを設定する評価値設定装置10と、評価値設定装置10により設定された利得評価値F及び干渉評価値Fからなる評価関数Fを定義し、その評価関数Fを用いて、その振幅制御範囲内に収まる関数の独立変数x及び複数の素子アンテナ6の励振位相φを算出する独立変数・励振位相算出装置11と、独立変数・励振位相算出装置11により算出された関数の独立変数xから複数の素子アンテナ6の励振振幅Aを算出する振幅算出装置12とを設け、移相制御装置13が、複数の素子アンテナ6の励振位相が独立変数・励振位相算出装置11により算出された励振位相φと一致するように移相器3の移相量を制御するとともに、振幅制御装置14が、複数の素子アンテナ6の励振振幅が振幅算出装置12により算出された励振振幅Aと一致するように可変減衰器4の減衰量を制御するように構成したので、広い範囲の振幅を満足する可変減衰器を実装することなく、振幅の制御を実施できるようになり、その結果、高効率化や低消費電力化を図ることができる効果を奏する。
【0041】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、振幅定義装置9が、各素子アンテナ6の励振振幅Aを式(2)で表される関数で定義するものを示したが、式(2)以外の関数で各素子アンテナ6の励振振幅Aを定義するようにしてもよい。
ただし、振幅制御範囲内に収まる関数は、上記実施の形態1と同様に、以下の特徴を有している必要がある。
(1)関数の独立変数は1つである
(2)関数の定義域に制約がない
(3)全ての定義域において連続である
(4)全ての定義域において微分可能である
(5)全ての定義域において、その関数の値域が振幅制御範囲を満足している
【0042】
具体的には、振幅定義装置9が、各素子アンテナ6の励振振幅Aを下記の式(7)、式(8)又は式(9)で表される関数で定義するようにしてもよい。

【0043】
式(7)及び式(8)の関数は、独立変数xの値が或る値になるときに関数値が振幅制御範囲の最大値と一致し、それ以外の値では、独立変数xの絶対値が大きくなるにしたがって関数値が振幅制御範囲の最小値に漸近する特徴を有している。
また、式(9)の関数は、関数値が振幅制御範囲の最大値と一致する独立変数xの値と、関数値が振幅制御範囲の最小値と一致する独立変数xの値とがあり、独立変数xの値に対して関数値が振動する特徴を有している。
【0044】
なお、上記実施の形態1では、評価値設定装置10が利得評価値Fを式(3)で設定し、干渉評価値Fを式(4)で設定しているものを示しているが、振幅定義装置9が、各素子アンテナ6の励振振幅Aを式(7)、式(8)又は式(9)で表される関数で定義する場合、式(3)及び式(4)における(atan−1+b)の部分を、式(7)、式(8)又は式(9)で表される関数に置き換えるようにすればよい。
【0045】
また、上記実施の形態1では、独立変数・励振位相算出装置11が、式(6)に示すように、その利得評価値F及び干渉評価値Fからなる評価関数Fを定義するものを示したが、例えば、下記の式(10)に示すように、利得評価値F又は干渉評価値Fに対する重み付けを行うようにしてもよい。

式(10)において、αは任意の重み係数である。
【0046】
実施の形態3.
上記実施の形態1,2では、可変減衰器4が、移相器3により位相が調整された送信信号の振幅が、振幅制御装置14により設定された素子アンテナ6の励振振幅Aと一致するように、その送信信号の振幅を調整するものを示したが、可変減衰器4の代わりに、信号の入力が一定で、出力を可変することが可能な可変出力増幅器を実装するようにしてもよい。
【0047】
図5はこの発明の実施の形態3によるアンテナ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
可変出力増幅器21は移相器3により位相が調整された送信信号を一定に入力し、振幅制御装置22の制御の下で、出力が可変される増幅器である。
図5では、移相器3が可変出力増幅器21の前段に配置されている例を示しているが、移相器3が可変出力増幅器21の後段に配置されていてもよい。
なお、移相器3及び可変出力増幅器21から位相振幅調整手段が構成されている。
【0048】
振幅制御装置22は各素子アンテナ6の励振振幅が振幅算出装置12により算出された励振振幅Aと一致するように、可変出力増幅器21のバイアス電圧を制御する処理を実施する。
なお、位相制御装置13及び振幅制御装置22から制御手段が構成されている。
【0049】
図5では、アンテナ装置の構成要素の一部である振幅範囲規定装置8、振幅定義装置9、評価値設定装置10、独立変数・励振位相算出装置11、振幅算出装置12、位相制御装置13及び振幅制御装置22のそれぞれが専用のハードウェア(例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなど)で構成されているものを想定しているが、アンテナ装置の一部がコンピュータで構成される場合には、振幅範囲規定装置8、振幅定義装置9、評価値設定装置10、独立変数・励振位相算出装置11、振幅算出装置12、位相制御装置13及び振幅制御装置22の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにしてもよい。
図6はこの発明の実施の形態3によるアンテナ装置の処理内容(アンテナ励振方法)を示すフローチャートである。
【0050】
次に動作について説明する。
まず、送信機1は、上記実施の形態1と同様に、送信信号を生成して、その送信信号を分配器2に出力する。
分配器2は、送信機1から送信信号を受けると、上記実施の形態1と同様に、その送信信号をN個の移相器3に分配する。
【0051】
一方、不要波抑圧方向設定装置7は、上記実施の形態1と同様に、不要波を抑圧する方向を示す情報を入力して、不要波抑圧方向の設定を受け付ける処理を実施する(図6のステップST1)。
次に、振幅範囲規定装置8は、上記実施の形態1と同様に、所望の振幅制御範囲を示す情報を入力して、所望の振幅制御範囲の設定を受け付ける処理を実施する(ステップST2)。
【0052】
振幅定義装置9は、振幅範囲規定装置8が所望の振幅制御範囲の設定を受け付けると、上記実施の形態1と同様に、定義域に対する値域が振幅範囲規定装置8により設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数で、各素子アンテナ6の励振振幅Aを定義する(ステップST3)。
具体的には、上記実施の形態1と同様に、各素子アンテナ6の励振振幅Aを式(2)で表される関数で定義する。
上記実施の形態2で言及したように、各素子アンテナ6の励振振幅Aを式(7)、式(8)又は式(9)表される関数で定義するようにしてもよい。
【0053】
評価値設定装置10は、振幅定義装置9が振幅制御範囲内に収まる関数で、各素子アンテナ6の励振振幅Aを定義すると、上記実施の形態1と同様に、式(3)に示すように、各素子アンテナ6の励振振幅Aなどを用いて、所望方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す利得評価値Fを設定する(ステップST4)。
また、評価値設定装置10は、式(4)に示すように、各素子アンテナ6の励振振幅Aや不要波抑圧方向設定装置7により設定が受け付けられた不要波抑圧方向などを用いて、不要波方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す干渉評価値Fを設定する(ステップST5)。
ただし、不要波が複数ある場合には、式(5)で干渉評価値Fを設定する。
【0054】
独立変数・励振位相算出装置11は、評価値設定装置10が利得評価値F及び干渉評価値Fを設定すると、上記実施の形態1と同様に、式(6)に示すように、その利得評価値F及び干渉評価値Fからなる評価関数Fを定義する。
独立変数・励振位相算出装置11は、評価関数Fを定義すると、その評価関数Fが最小になるように最適化することで、その振幅制御範囲内に収まる関数の独立変数x及び各素子アンテナ6の励振位相φを算出する(ステップST6)。
【0055】
振幅算出装置12は、独立変数・励振位相算出装置11が関数の独立変数xを算出すると、上記実施の形態1と同様に、その関数の独立変数xから各素子アンテナ6の励振振幅Aを算出する(ステップST7)。
即ち、振幅算出装置12は、独立変数・励振位相算出装置11により算出された関数の独立変数xを上記の式(2)に代入することで、各素子アンテナ6の励振振幅Aを算出する。
【0056】
位相制御装置13は、独立変数・励振位相算出装置11が各素子アンテナ6の励振位相φを算出すると、上記実施の形態1と同様に、その励振位相φを移相器3に設定する(ステップST8)。
即ち、位相制御装置13は、各素子アンテナ6の励振位相φに対応する移相量を移相器3に指示する。
振幅制御装置22は、振幅算出装置12が各素子アンテナ6の励振振幅Aを算出すると、その励振振幅Aを可変出力増幅器21に設定する(ステップST21)。
即ち、振幅制御装置22は、各素子アンテナ6の励振振幅Aに対応するバイアス電圧を可変出力増幅器21に出力する。
【0057】
移相器3は、分配器2により分配された送信信号の位相が、位相制御装置13により設定された素子アンテナ6の励振位相φと一致するように、その送信信号の位相を調整する(ステップST10)。
即ち、移相器3は、位相制御装置13により指示された移相量だけ、分配器2により分配された送信信号の位相を移相する。
可変出力増幅器21は、移相器3により位相が調整された送信信号の振幅が、振幅制御装置22により設定された素子アンテナ6の励振振幅Aと一致するように、その送信信号の振幅を調整する(ステップST11)。
即ち、可変出力増幅器21は、振幅制御装置22から出力されたバイアス電圧に対応する増幅率で、出力信号のレベルを可変し、増幅後の信号を素子アンテナ6に出力する。これにより、素子アンテナ6から送信信号が空間に放射される(ステップST12)。
図5のアンテナ装置では、送信信号の位相と振幅が制御されることで、不要波が抑圧される。
【0058】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、上記実施の形態1,2と同様の効果を奏することができるが、可変減衰器4の代わりに、信号の入力が一定で、出力を可変することが可能な可変出力増幅器21を実装し、振幅制御装置22が可変出力増幅器21のバイアス電圧を制御するだけで各素子アンテナ6の励振振幅Aを制御することができるので、上記実施の形態1,2よりも効率低下を低減することができるようになり、更なる低消費電力化を図ることができる。
【0059】
なお、この実施の形態3では、振幅制御装置22が可変出力増幅器21のバイアス電圧を制御する例を示しているが、これは一例に過ぎず、可変出力増幅器21のバイアス電圧以外を制御して、可変出力増幅器21の出力信号のレベルを可変するようにしてもよい。
【0060】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 送信機、2 分配器(信号分配手段)、3 移相器(位相振幅調整手段)、4 可変減衰器(位相振幅調整手段)、5 高出力増幅器、6 素子アンテナ、7 不要波抑圧方向設定装置、8 振幅範囲規定装置(振幅制御範囲設定受付手段)、9 振幅定義装置(評価値設定手段)、10 評価値設定装置(評価値設定手段)、11 独立変数・励振位相算出装置(独立変数・励振位相算出手段)、12 振幅算出装置(振幅算出手段)、13 位相制御装置(制御手段)、14,22 振幅制御装置(制御手段)、21 可変出力増幅器(位相振幅調整手段)、31 従来のアンテナ装置による不要波を抑圧する振幅分布、32 実施の形態1のアンテナ装置による不要波を抑圧する振幅分布、41 全ての素子アンテナの振幅分布が同じである場合の放射パターン、42 従来のアンテナ装置による不要波抑圧の放射パターン、43 実施の形態1のアンテナ装置による不要波抑圧の放射パターン、101 送信機、102 分配器、103 移相器、104 高出力増幅器、105 素子アンテナ、106 不要波抑圧方向設定装置、107 位相演算装置、108 位相制御装置、110 可変減衰器、111 振幅位相演算装置、112 振幅制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機により生成された信号を分配する信号分配手段と、上記信号分配手段により分配された各々の信号の位相及び振幅を調整する位相振幅調整手段と、上記位相振幅調整手段により位相及び振幅が調整された信号を放射する複数の素子アンテナとを備えたアンテナ装置において、
所望の振幅制御範囲の設定を受け付ける振幅制御範囲設定受付手段と、
定義域に対する値域が上記振幅制御範囲設定受付手段により設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数及び上記複数の素子アンテナの励振位相を用いて、所望方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す利得評価値及び不要波方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す干渉評価値を設定する評価値設定手段と、
上記評価値設定手段により設定された利得評価値及び干渉評価値からなる評価関数を定義し、上記評価関数を用いて、上記振幅制御範囲内に収まる関数の独立変数及び上記複数の素子アンテナの励振位相を算出する独立変数・励振位相算出手段と、
上記独立変数・励振位相算出手段により算出された関数の独立変数から上記複数の素子アンテナの励振振幅を算出する振幅算出手段と、
上記複数の素子アンテナの励振位相が上記独立変数・励振位相算出手段により算出された励振位相と一致するように上記位相振幅調整手段を制御するとともに、上記複数の素子アンテナの励振振幅が上記振幅算出手段により算出された励振振幅と一致するように上記位相振幅調整手段を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
振幅制御範囲設定受付手段により設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数の独立変数は1つであって、上記関数の定義域には制約がなく、全ての定義域で上記関数が連続かつ微分可能であることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
位相振幅調整手段は、
信号分配手段により分配された各々の信号の位相を移相する複数の移相器と、
上記信号分配手段により分配された各々の信号の振幅を減衰する複数の可変減衰器と
から構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
位相振幅調整手段は、
信号分配手段により分配された各々の信号の位相を移相する複数の移相器と、
上記信号分配手段により分配された各々の信号の入力が一定で、出力を可変することが可能な複数の可変出力増幅器と
から構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項5】
振幅制御範囲設定受付手段により設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数は、独立変数の値が大きくなるにしたがって関数値が上記振幅制御範囲の最大値に漸近する一方、上記独立変数の値が小さくなるにしたがって関数値が上記振幅制御範囲の最小値に漸近し、上記独立変数の値に対して関数値が単調に増加することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【請求項6】
振幅制御範囲設定受付手段により設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数は、独立変数の値が或る値になるときに関数値が上記振幅制御範囲の最大値と一致し、それ以外の値では、上記独立変数の絶対値が大きくなるにしたがって関数値が上記振幅制御範囲の最小値に漸近することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【請求項7】
振幅制御範囲設定受付手段により設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数は、関数値が上記振幅制御範囲の最大値と一致する独立変数の値と、関数値が上記振幅制御範囲の最小値と一致する独立変数の値とがあり、上記独立変数の値に対して関数値が振動することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【請求項8】
送信機により生成された信号を分配する信号分配手段と、上記信号分配手段により分配された各々の信号の位相及び振幅を調整する位相振幅調整手段と、上記位相振幅調整手段により位相及び振幅が調整された信号を放射する複数の素子アンテナとを備えたアンテナ装置に適用されるアンテナ励振方法において、
振幅制御範囲設定受付手段が、所望の振幅制御範囲の設定を受け付ける振幅制御範囲設定受付処理ステップと、
評価値設定手段が、定義域に対する値域が上記振幅制御範囲設定受付処理ステップで設定が受け付けられた振幅制御範囲内に収まる関数及び上記複数の素子アンテナの励振位相を用いて、所望方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す利得評価値及び不要波方向の目標利得に対するアンテナ利得の到達具合を示す干渉評価値を設定する評価値設定処理ステップと、
独立変数・励振位相算出手段が、上記評価値設定処理ステップで設定された利得評価値及び干渉評価値からなる評価関数を定義し、上記評価関数を用いて、上記振幅制御範囲内に収まる関数の独立変数及び上記複数の素子アンテナの励振位相を算出する独立変数・励振位相算出処理ステップと、
振幅算出手段が、上記独立変数・励振位相算出処理ステップで算出された関数の独立変数から上記複数の素子アンテナの励振振幅を算出する振幅算出処理ステップと、
制御手段が、上記複数の素子アンテナの励振位相が上記独立変数・励振位相算出処理ステップで算出された励振位相と一致するように上記位相振幅調整手段を制御するとともに、上記複数の素子アンテナの励振振幅が上記振幅算出処理ステップで算出された励振振幅と一致するように上記位相振幅調整手段を制御する制御処理ステップと
を備えていることを特徴とするアンテナ励振方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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