説明

アンテナ装置及び無線通信装置

【課題】1つのアンテナ素子で複数の通信システムに対応し、同時に複数の通信システムにおける複数の周波数帯域での通信を可能にする。
【解決手段】第1の周波数帯域の電波を送出あるいは受信する第1のアンテナ素子と、第1の周波数帯域より低い第2の周波数帯域の電波を第1のアンテナ素子とともに送出あるいは受信する第2のアンテナ素子と、第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子とを接続するもので第1の周波数帯域を減衰し第2の周波数帯域を導通する第1の接続部と、第1のアンテナ素子の一方の端部に設けられた第1の給電部と、第2のアンテナ素子の第1の接続部側とは異なる端部に設けられ第2の周波数帯域を減衰する第2の接続部と、第2の接続部を介し第2のアンテナ素子と接続される第2の給電部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機やPHS(Personal Handy-phone System)端末等の移動通信端末装置に適用可能なアンテナ装置及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの無線通信装置に用いられるアンテナ装置として、従来、図14に示すようなアンテナ装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この従来例のアンテナ装置は、グランド基板12の上端側縁12aから奥行き方向に切り欠いて一端13aを開放したスリット13と、このスリット13の切り欠き方向と略直交する幅方向におけるギャップ部14に高周波信号を給電する給電部15と、高周波信号を、前記スリット13の幅方向における一側縁13cから当該スリット13の付け根近傍部を介して前記一側縁13cと対向する他側縁13dに流れることによって形成される誘導性リアクタンスと、前記スリット13のギャップ部14に設けられた容量性リアクタンス素子16と、を備えて構成されている。この構成により、簡単な構造でスリットの長さに対応する共振周波数以外の周波数帯域でも共振化でき、複数の通信システムに対応することができる。
【特許文献1】特開2004−336328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたものは、複数の通信システムに対応することは可能であるが、1つのアンテナ素子で同時に複数の通信システムにおける複数の周波数帯域での通信を行うことができないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、1つのアンテナ素子で複数の通信システムに対応し、同時に複数の通信システムにおける複数の周波数帯域での通信を行うことが可能なアンテナ装置及び無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアンテナ装置は、第1の周波数帯域の電波を送出あるいは受信する第1のアンテナ素子と、前記第1のアンテナ素子の一方の端部に設けられた第1の給電部と、前記第1のアンテナ素子の他方の端部に設けられ、前記第1の周波数帯域を減衰し、前記第1の周波数帯域より低い第2の周波数帯域を導通する第1の接続部と、前記第1の接続部を介し前記第1のアンテナ素子に接続され、前記第2の周波数帯域において前記第1のアンテナ素子とともに前記第2の周波数帯域の電波を送出あるいは受信する第2のアンテナ素子と、前記第2のアンテナ素子の前記第1の接続部側とは異なる端部に設けられ、前記第2の周波数帯域を減衰する第2の接続部と、前記第2の接続部を介し前記第2のアンテナ素子に給電する第2の給電部と、を備えたものである。
これにより、一つのアンテナ素子で複数の通信システムに対応可能であり、同時に第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の複数の周波数帯域での通信を行うことが可能となる。
【0007】
また、本発明は、上記のアンテナ装置であって、前記第1の接続部は、前記第2の周波数帯域より高い第3の周波数帯域を減衰し、前記第2の接続部は、前記第3の周波数帯域を導通するものを含む。
これにより、第1の周波数帯域と第2の周波数帯域に加えて、第3の周波数帯域での通信を同時に行うことが可能となる。
【0008】
また、本発明は、上記のアンテナ装置であって、前記第1の接続部は、バンドパスフィルタまたはローパスフィルタにより構成されるものを含む。
また、本発明は、上記のアンテナ装置であって、前記第2の接続部は、バンドパスフィルタまたはハイパスフィルタにより構成されるものを含む。
【0009】
また、本発明は、上記のアンテナ装置であって、前記第1の周波数帯域は、1.7GHz帯から2GHz帯であり、前記第2の周波数帯域は、800MHz帯であるものを含む。
これにより、例えば、移動通信端末が使用する800MHz帯から2GHz帯までの複数の周波数帯域の通信を、一つのアンテナ素子で同時に行うことが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記のアンテナ装置であって、前記第3の周波数帯域は1.5GHz帯または2.5GHz帯であるものを含む。
これにより、例えば、移動通信端末が使用する800MHz帯から2GHz帯までの複数の周波数帯域、及び、GPS、Bluetooth(登録商標)、ワイアレスLAN等の無線システムが使用する複数の周波数帯域の通信を、一つのアンテナ素子で同時に行うことが可能となる。
【0011】
本発明の無線通信装置は、上記いずれかのアンテナ装置と、前記アンテナ装置の第1の給電部に接続され、前記第1の周波数帯域で動作する第1の無線部と、前記アンテナ装置の第2の給電部に接続され、前記第2の周波数帯域で動作する第2の無線部と、前記アンテナ装置の第2の給電部に接続され、前記第3の周波数帯域で動作する第3の無線部と、を備えるものである。
これにより、1つのアンテナ素子で第1〜第3の無線部による複数の通信システムに対応可能であり、同時に複数の通信システムにおける第1〜第3の複数の周波数帯域での通信を行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明の無線通信装置は、上記いずれかのアンテナ装置と、前記アンテナ装置の第1の給電部に接続される第1の無線通信ユニットと、前記アンテナ装置の第2の給電部に接続される第2の無線通信ユニットと、を備えるものである。
これにより、1つのアンテナ素子で第1及び第2の無線通信ユニットによる複数の通信システムに対応可能であり、同時に複数の通信システムにおける複数の周波数帯域での通信を行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明の無線通信装置は、上記いずれかのアンテナ装置と、前記アンテナ装置の第1の給電部に接続される第1の無線通信ユニットと、前記アンテナ装置の第2の給電部に接続される第2の無線通信ユニットと、を備え、前記第1の無線通信ユニットは、前記第1の周波数帯域で動作する第1の無線部を有し、前記第2の無線通信ユニットは、前記第2の周波数帯域で動作する第2の無線部と、前記第3の周波数帯域で動作する第3の無線部とを有するものである。
これにより、1つのアンテナ素子で第1及び第2の無線通信ユニットにおける第1〜第3の無線部による複数の通信システムに対応可能であり、同時に複数の通信システムにおける第1〜第3の複数の周波数帯域での通信を行うことが可能となる。
【0014】
また、本発明は、上記の無線通信装置であって、前記第1の無線部は、前記第2の周波数帯域においても動作するものを含む。
これにより、複数の通信システムに対応してそれぞれの無線部による複数の周波数帯域での通信が同時に可能であるとともに、第1の無線部において複数の周波数帯域での通信を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明は、上記の無線通信装置であって、前記第2の給電部と前記第2の無線部との接続と、前記第2の給電部と前記第3の無線部との接続を切り替える切り替え部を備えるものを含む。
これにより、第2の無線部と第3の無線部とを切り替えて第2の給電部に接続し、それぞれの無線部による複数の周波数帯域の通信を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1つのアンテナ素子で複数の通信システムに対応し、同時に複数の通信システムにおける複数の周波数帯域での通信を行うことが可能なアンテナ装置及び無線通信装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るアンテナ装置を含む無線通信装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態で想定している周波数帯域を示す図である。本実施形態では、第1の周波数帯域301として1.7GHz帯から2GMHz帯、第2の周波数帯域302として800MHz帯、第3の周波数帯域303として1.5GHz帯及び2.5GMHz帯を想定している。なお、周波数帯域はこれに限るものではなく、種々の帯域に適用可能である。
【0018】
本実施形態に係る無線通信装置の一例としての携帯無線装置113は、第1の周波数帯域301の電波を送信あるいは受信する第1のアンテナ素子101と、前記第1のアンテナ素子101の一方の端部に設けられ第1の周波数帯域301を遮断し第1の周波数帯域301より低い第2の周波数帯域302を導通しかつ第2の周波数帯域302より高い第3の周波数帯域303を遮断する第1の接続部103とを有する。
【0019】
また、前記第1の接続部103を介し第1のアンテナ素子101に接続され第2の周波数帯域302において前記第1のアンテナ素子101とともに第2の周波数帯域302の電波を送信あるいは受信する第2のアンテナ素子102と、前記第1のアンテナ素子101の第1接続部103側とは異なる側に設けられた第1の給電部105とを有する。
【0020】
さらに、前記第1の給電部105側の第1のアンテナ素子101側とは異なる側に設けられ第1のアンテナ素子101の共振周波数を第1の周波数帯域301に調整し、また、第2のアンテナ素子102が第1の接続部103を介して第1のアンテナ素子101と接続するときの共振周波数を第2の周波数帯域302に調整する整合回路部108と、前記整合回路部108の第1の給電部105側とは異なる側に設けられ移動通信端末の音声、データ信号の送信及び受信の制御を行う移動通信用の無線部109とを有する。
【0021】
移動通信用の無線部109は、第1の無線通信ユニットとして整合回路部108を介して第1の給電部105に接続され、第1の周波数帯域301及び第2の周波数帯域302の2つの周波数帯で動作する第1の無線部として機能する。なお、無線部109は、第1の周波数帯域301と第2の周波数帯域302のいずれかの周波数帯で動作するものであってもよい。
【0022】
また、前記第2のアンテナ素子102の第1接続部103側とは異なる側に設けられ第2の周波数帯域302を遮断し第3の周波数帯域303を導通する第2の接続部104と、前記第2の接続部104を介して第2のアンテナ素子102の第1接続部103側とは異なる側に設けられる第2の給電部106と、前記第2の給電部106の第2のアンテナ素子102とは異なる側に設けられ無線システムを相互に切り替える切り替え部107と、前記切り替え部107を介して設けられGPS、Bluetooth(登録商標)、ワイアレスLAN等の複数の方式による無線通信が可能な無線システム112とを有する。
【0023】
前記無線システム112は、前記給電部105側に設けられる整合回路部108及び無線部109と同様にして、各無線方式において、前記第2のアンテナ素子102の共振周波数を第3の周波数帯域303に調整する整合回路部110と、各無線方式の無線システムの音声、データ信号の送信及び受信の制御を行う無線システム用の無線部111とを有して構成される。
【0024】
無線システム用の複数の整合回路部110及び無線部111を含む無線システム112は、第2の無線通信ユニットとして切り替え部107を介して第2の給電部106に接続され、第2の周波数帯域302で動作する第2の無線部、第3の周波数帯域303で動作する第3の無線部として機能する。
【0025】
次に、本実施形態の携帯無線装置113の動作モードについて説明する。図3〜図6は本実施形態における携帯無線装置113の各々の動作モードの説明図である。
【0026】
図3は、本実施形態の携帯無線装置113における第1の動作モード201の状態を示す図である。第1の動作モード201は、本実施形態の携帯無線装置113が移動通信端末用の無線部109による通信を行うモードであり、通信を行う周波数帯域が第1の周波数帯域301である場合の動作である。このときの動作原理は、第1の接続部103により第1の周波数帯域301は遮断されるため、無線部109からは共振周波数が第1の周波数帯域301である第1のアンテナ素子101のみが存在し、動作しているようにみえていることによるもので、これによって第1の動作モード201として動作する。
【0027】
図4は、本実施形態の携帯無線装置113における第2の動作モード202の状態を示す図である。第2の動作モード202は、本実施形態の携帯無線装置113が移動通信端末用の無線部109による通信を行うモードであり、通信を行う周波数帯域が第2の周波数帯域302である場合の動作である。このときの動作原理は、第1の接続部103が第2の周波数帯域302を導通し、かつ第2の接続部104が第2の周波数帯域302を遮断するため、無線部109からは第1のアンテナ素子101と第1の接続部103を介して設けられる第2のアンテナ素子102のみが存在し、第1のアンテナ素子101から第2のアンテナ素子までを一つの素子とし、共振周波数帯域が第2の周波数帯域302であるアンテナ素子として動作しているようにみえていることによるもので、これによって第2の動作モード202として動作する。
【0028】
図5は、本実施形態の携帯無線装置113における第3の動作モード203の状態を示す図である。第3の動作モード203は、本実施形態の携帯無線装置113がGPS、Bluetooth(登録商標)、ワイアレスLAN等の無線システム112による通信を行うモードであり、通信を行う周波数帯域が第3の周波数帯域303である場合の動作である。このときの動作原理は、第2の接続部104が第3の周波数帯域303を導通し、かつ第1の接続部103が第3の周波数帯域303を遮断するため、無線システム112からは第2の接続部104を介して設けられる第2のアンテナ素子102のみが存在し、共振周波数帯域が第3の周波数帯域303であるアンテナ素子として動作しているようにみえていることによるもので、これによって第3の動作モード203として動作する。
【0029】
ここで、図6を参照して本実施形態の携帯無線装置113が使用する周波数帯域について説明する。第1の周波数帯域301は、CDMAやTDMAなどの移動通信端末の無線通信に使用される周波数帯域であり、具体的には1.7GHz帯から2GHz帯の周波数である。この第1の周波数帯域301は、第1のアンテナ素子101の共振周波数帯域である。
【0030】
また、第2の周波数帯域302は、CDMAやTDMAなどの移動通信端末の無線通信に使用される周波数帯域であり、具体的には800MHz帯の周波数である。この第2の周波数帯域302は、第1のアンテナ素子101と第2のアンテナ素子102とが第1の接続部103を介して接続するときの共振周波数帯域である。
【0031】
また、第3の周波数帯域303は、GPS、Bluetooth(登録商標)、ワイアレスLANなどの無線システムでの通信に使用される周波数帯域であり、具体的には1.5GHz帯及び2.5GHz帯の周波数である。この第3の周波数帯域303は、第2のアンテナ素子102の共振周波数帯域である。
【0032】
次に、本実施形態の携帯無線装置113における接続部及び整合回路部の具体的な構成例を示す。
【0033】
第1の接続部103は、第1の周波数帯域301を遮断し、かつ第2の周波数帯域302を導通するもので構成される。具体的には、第1の接続部103は、1GHz以上を遮断し、1GHzより低い周波数を導通するようなローパスフィルタ(LPF:Low-Pass Filter)となる回路構成により実現する。もしくは、800MHzから1GHzを通過させるようなバンドパスフィルタ(BPF:Band-pass filter)となる回路構成でもよい。
【0034】
図7は、第1の接続部103をローパスフィルタ103aで構成した例を示す図であり、(a)はその概略構成を、(b)は周波数特性を示している。このローパスフィルタ103aは、第2の周波数帯域302より低い周波数帯を導通し、第1の周波数帯域301及び第3の周波数帯域303を遮断する周波数特性を有する。
【0035】
図8は、第1の接続部103をバンドパスフィルタ103bで構成した例を示す図であり、(a)はその概略構成を、(b)は周波数特性を示している。このバンドパスフィルタ103bは、第2の周波数帯域302を導通し、第1の周波数帯域301及び第3の周波数帯域303を遮断する周波数特性を有する。
【0036】
第2の接続部104は、第2の周波数帯域302を遮断し、かつ第3の周波数帯域303を導通するもので構成される。具体的には、800MHz帯及び1700MHzから2.2GHzを遮断するようなバンドエリミネーションフィルタ(帯域除去フィルタ、BEF:Band-Elimination Filter)となる回路構成により実現する。もしくは、1GHzから1700MHzまでを通過させるバンドパスフィルタと2.2GHzから2.5GHzまでを通過させるバンドパスフィルタとの組み合わせによる回路構成でもよい。また、1700MHz以上を通過させるハイパスフィルタ(HPF:High-pass filter)となる回路構成でもよい。
【0037】
図9は、第2の接続部104をハイパスフィルタ104aで構成した例を示す図であり、(a)はその概略構成を、(b)は周波数特性を示している。このハイパスフィルタ104aは、第3の周波数帯域303より高い周波数帯を導通し、第2の周波数帯域302を遮断する周波数特性を有する。
【0038】
図10は、第2の接続部104をバンドパスフィルタ104bで構成した例を示す図であり、(a)はその概略構成を、(b)は周波数特性を示している。このバンドパスフィルタ104bは、第1の周波数帯域301及び第3の周波数帯域303を導通し、第2の周波数帯域302を遮断する周波数特性を有する。
【0039】
図11は、移動通信端末用の整合回路部108の構成例を示す図であり、(a)はその概略構成を、(b)はVSWR特性を示している。整合回路部108は、第1の給電部105と移動通信端末用の無線部109との間に配置され、第1の周波数調整用のインダクタL2及びキャパシタC2による整合回路108aと、第2の周波数調整用のキャパシタC1及びインダクタL1による整合回路108bとを有する。この整合回路部108は、第1のアンテナ素子101の共振周波数を第1の周波数帯域301に調整し、第2のアンテナ素子102が第1の接続部103を介して第1のアンテナ素子101と接続されるときの共振周波数を第2の周波数帯域302に調整する。整合回路部108におけるVSWR特性は、第1の周波数帯域301と第2の周波数帯域302において極小となるような特性を有する。
【0040】
次に、本実施形態の携帯無線装置113における切り替え部及び無線システムの構成例を示す。無線システム112は、GPS、Bluetooth(登録商標)、ワイアレスLAN等、複数の無線方式の無線部111を備え、各々の無線部111には、第2のアンテナ素子102の中心周波数を各々の無線部111で使用する所望の周波数帯域とするための整合回路部110が接続されている。
【0041】
図12は、無線システム112用の整合回路部110の構成例を示す図であり、(a)は第1例の概略構成を、(b)は第2例の概略構成を示している。また、(c)は第1例のVSWR特性を、(d)は第2例のVSWR特性を示している。
【0042】
図12(a)に示す第1例の整合回路部110aは、切り替え部107と無線システム用の無線部111との間に配置され、キャパシタC3及びインダクタL3を有する。また、図12(b)に示す第2例の整合回路部110bは、切り替え部107と無線システム用の無線部111との間に配置され、インダクタL4及びキャパシタC4を有する。これらの整合回路部110a、110bは、第2のアンテナ素子102の共振周波数を第3の周波数帯域に調整する。整合回路部110a、110bにおけるVSWR特性は、図12(c),(d)にそれぞれ示すように、第3の周波数帯域303において極小となるような特性を有する。
【0043】
図13は、切り替え部107の構成例を示す図であり、(a)はその概略構成を、(b)は切り替え制御用の論理表を示している。切り替え部107は、第2の給電部106と整合回路部110a,110b,110cとの間に設けられ、スイッチ部114とコントロール部115とを有する。
【0044】
切り替え部107は、無線システム112からの制御信号により、複数の無線部A111a,無線部B111b,無線部C111cのうちの所望の無線部と第2のアンテナ素子102とを接続するために接続の切り替えを行う。切り替え部107のスイッチ部114は、SPDT(Single Pole Double Throw:単極双投スイッチ)、ピンダイオードなどによって構成される。この切り替え部107は、コントロール部115にて制御電圧V1、V2を検知し、図13(b)に示す予め設定された切り替え制御用の論理表に基づき、スイッチ部114にて所望の無線部A111a,無線部B111b,無線部C111cとの接続を切り替える。
【0045】
上述したように、本実施形態の携帯無線装置113では、移動通信端末側の第1の給電部105、第1のアンテナ素子101、第1の接続部103、第2のアンテナ素子102、第2の接続部104、無線システム側の第2の給電部106によるアンテナ装置の構成により、一つのアンテナ素子で第1の無線部である移動通信端末が音声、データ通信に使用する800MHz帯から2GHz帯までの複数の周波数帯域、及び、第2の無線部、第3の無線部であるGPS、Bluetooth(登録商標)、ワイアレスLAN等の無線システムが使用する複数の周波数帯域の通信を同時に行うことができる。これにより、1つのアンテナ素子で移動通信端末と他の無線システム等の複数の通信システムに対応し、これらの複数の通信システムにおける複数の周波数帯域での通信を同時に行うことが可能となる。
【0046】
なお、本発明は上記の実施形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、1つのアンテナ素子で複数の通信システムに対応し、同時に複数の通信システムにおける複数の周波数帯域での通信を行うことが可能となる効果を有し、携帯電話機やPHS端末等の移動通信端末装置に適用可能なアンテナ装置及び無線通信装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係るアンテナ装置を含む無線通信装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本実施形態で想定している周波数帯域を示す図
【図3】本実施形態の携帯無線装置における第1の動作モードの状態を示す図
【図4】本実施形態の携帯無線装置における第2の動作モードの状態を示す図
【図5】本実施形態の携帯無線装置における第3の動作モードの状態を示す図
【図6】本実施形態の携帯無線装置が使用する周波数帯域を説明する図
【図7】本実施形態において第1の接続部をローパスフィルタで構成した例を示す図
【図8】本実施形態において第1の接続部をバンドパスフィルタで構成した例を示す図
【図9】本実施形態において第2の接続部をハイパスフィルタで構成した例を示す図
【図10】本実施形態において第2の接続部をバンドパスフィルタで構成した例を示す図
【図11】本実施形態における移動通信端末用の整合回路部の構成例を示す図
【図12】本実施形態における無線システム用の整合回路部の構成例を示す図
【図13】本実施形態における切り替え部の構成例を示す図
【図14】従来例のアンテナ装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0049】
101 第1のアンテナ素子
102 第2のアンテナ素子
103 第1の接続部
104 第2の接続部
105 第1の給電部
106 第2の給電部
107 切り替え部
108 移動通信端末用の整合回路部
109 移動通信端末用の無線部
110 無線システム用の整合回路部
111 無線システム用の無線部
112 無線システム
113 携帯無線装置
114 スイッチ部
115 コントロール部
201 第1の動作モード
202 第2の動作モード
203 第3の動作モード
301 第1の周波数帯域
302 第2の周波数帯域
303 第3の周波数帯域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯域の電波を送出あるいは受信する第1のアンテナ素子と、
前記第1のアンテナ素子の一方の端部に設けられた第1の給電部と、
前記第1のアンテナ素子の他方の端部に設けられ、前記第1の周波数帯域を減衰し、前記第1の周波数帯域より低い第2の周波数帯域を導通する第1の接続部と、
前記第1の接続部を介し前記第1のアンテナ素子に接続され、前記第2の周波数帯域において前記第1のアンテナ素子とともに前記第2の周波数帯域の電波を送出あるいは受信する第2のアンテナ素子と、
前記第2のアンテナ素子の前記第1の接続部側とは異なる端部に設けられ、前記第2の周波数帯域を減衰する第2の接続部と、
前記第2の接続部を介し前記第2のアンテナ素子に給電する第2の給電部と、
を備えたアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置であって、
前記第1の接続部は、前記第2の周波数帯域より高い第3の周波数帯域を減衰し、
前記第2の接続部は、前記第3の周波数帯域を導通するアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアンテナ装置であって、
前記第1の接続部は、バンドパスフィルタまたはローパスフィルタにより構成されるアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のアンテナ装置であって、
前記第2の接続部は、バンドパスフィルタまたはハイパスフィルタにより構成されるアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のアンテナ装置であって、
前記第1の周波数帯域は、1.7GHz帯から2GHz帯であり、
前記第2の周波数帯域は、800MHz帯であるアンテナ装置。
【請求項6】
請求項2に記載のアンテナ装置であって、
前記第3の周波数帯域は1.5GHz帯または2.5GHz帯であるアンテナ装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置の第1の給電部に接続され、前記第1の周波数帯域で動作する第1の無線部と、
前記アンテナ装置の第2の給電部に接続され、前記第2の周波数帯域で動作する第2の無線部と、
前記アンテナ装置の第2の給電部に接続され、前記第3の周波数帯域で動作する第3の無線部と、
を備える無線通信装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置の第1の給電部に接続される第1の無線通信ユニットと、
前記アンテナ装置の第2の給電部に接続される第2の無線通信ユニットと、
を備える無線通信装置。
【請求項9】
請求項2〜6のいずれかに記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置の第1の給電部に接続される第1の無線通信ユニットと、
前記アンテナ装置の第2の給電部に接続される第2の無線通信ユニットと、を備え、
前記第1の無線通信ユニットは、前記第1の周波数帯域で動作する第1の無線部を有し、
前記第2の無線通信ユニットは、前記第2の周波数帯域で動作する第2の無線部と、前記第3の周波数帯域で動作する第3の無線部とを有する無線通信装置。
【請求項10】
請求項7または9に記載の無線通信装置であって、
前記第1の無線部は、前記第2の周波数帯域においても動作する無線通信装置。
【請求項11】
請求項7または9に記載の無線通信装置であって、
前記第2の給電部と前記第2の無線部との接続と、前記第2の給電部と前記第3の無線部との接続を切り替える切り替え部を備える無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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