説明

アンテナ装置及び無線通信装置

【課題】利得特性の優れたアンテナ装置と、それを用いた無線通信装置を提供する。
【解決手段】基体に第1放射導体が形成された第1アンテナ要素1と、前記第1アンテナ要素1を実装する基板20と、前記第1アンテナ要素1と異なる平面に設けられ、前記第1放射導体1の一端と接続手段3を介して接続された第2放射導体を備えた第2アンテナ要素2とを含む構成としたアンテナ装置及び前記アンテナ装置を用いて無線通信装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の小型の無線通信装置に用いられるアンテナ装置に関し、特には複数のアンテナ要素で構成したアンテナ装置とそれを用いた無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の無線通信装置は小型化と共に多機能化が進み、通話のみならず、FM放送やデジタルテレビジョン放送などの放送波を受信し視聴可能とした無線通信装置がある。この様な無線通信装置では、通話のための送受信に使用される通信システム(例えばGSM、CDMA等)の周波数帯域は通常800MHz以上の周波数であり、デジタルテレビジョン放送では500MHz〜800MHzの帯域が利用され、FM放送では70MHz〜120MHz前後の帯域が利用される。
【0003】
複数の無線通信の信号を送受信する場合、利用する周波数帯域が広いため、一つのアンテナでは各周波数帯において要求特性を満たすのは困難であって、その性能は専ら通話のための周波数帯域に合わせて調整されるため、周波数が大きく離間するFM放送の周波数帯域でのアンテナ感度が劣るものであった。この様なアンテナであっても、高い放射電界の強度が得られ易い送信アンテナの近くでは使用上の問題は少ないが、弱電界の環境下では受信信号に大きくノイズが重畳し、あるいは全く受信できないと言った問題があった。そこで、別途各周波数帯に応じたアンテナをそれぞれ無線通信装置に設けることが一般的に行われている。
【0004】
前記無線通信において、最も低周波数帯であるF M放送の帯域ではその波長が他の周波数帯域と比べてかなり長く、受信アンテナをモノポールアンテナとして構成するのであれば、波長λの1/4の長さの放射導体が必要とされ、その長さは100MHzにおいては75cmにもなる。この為、イヤホンケーブルをFM放送の受信アンテナに利用して、無線通信装置の外部に設けるのが主流となっている。なおFM放送で使用される場合にはアンテナは高周波電力を受信専用であり高周波電力を放射するものでは無いが、本明細書においてはアンテナに用いる導体を入射導体では無く放射導体と便宜上呼ぶこととし、特に機能によって区別はしない。
【0005】
イヤホンケーブルを受信アンテナに利用することは、良好な受信感度を得る上では有効な手段であるものの、利用者のニーズからすれば、イヤホンからでは無く無線通信装置に内蔵するスピーカにより放送を楽しむ場合でも、FM放送の受信においてイヤホンケーブルを必要とすることは不便であり、また、イヤホンケーブルで受信アンテナとして理想的な特性を得ようとすれば、直線的に延ばして用いるのが好ましいものの、通常巻回すなどして扱われるため、本来の性能が発揮されないこともあった。この為、感度に優れた受信アンテナを無線通信装置への内蔵し、イヤホンケーブルを用いなくても良好な受信状態が得られるアンテナ装置に対する要求が高まっている。
【0006】
アンテナを小型に構成する場合には、ヘリカルアンテナやミアンダアンテナの構造をとる場合が多い。このアンテナは誘電体材や磁性体材を用いて構成された基体に、放射導体を形成し巻回すなどして構成される。基体による波長短縮効果によって放射導体の実効長が短くなりアンテナの小型化を実現できる。しかしながら、一方で利得及び帯域幅が劣化し易いという問題があった。高い放射電界の強度が得られる環境では、利得及び帯域幅の劣化はそれほど受信状態に影響無いが、弱電界の環境下では受信信号に大きくノイズが重畳し、あるいは全く受信できないと言った問題があった。
【0007】
特許文献1にはこの様な問題を改善するアンテナ装置が開示されている。このアンテナ装置の構成を図7に示す。アンテナ装置80はセラミックを主体とする基体11に放射導体12の一部と、前記導体が接続する端子電極13,14とが形成されたチップアンテナ10と、それを実装するための基板20とで構成される。前記実装基板にも放射導体40が形成されており、前記チップアンテナ10の端子電極14と前記放射導体40の一端とを接続している。また放射導体40の他端41は開放端となる。端子電極13は実装基板20に形成された給電線路61を通じて高周波回路と接続される。
チップアンテナ10の放射導体12だけでは、実効長に対して不足する部分を実装基板の放射導体40で補うことで、アンテナ装置全体での放射導体の実効長を長くすることが出来、放射導体における電流分布が増して放射電界が強くなり、アンテナ装置として高利得及び広帯域幅を得ることが出来ると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−330830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アンテナ装置を1/4λモードで動作させる場合には、アンテナ装置の近辺に存在するグランド面に生じるイメージ電流を利用する。一般的にはグランド面で発生するイメージ電流がアンテナ装置に誘起された電流とほぼ同一ベクトルを持つ場合に、イメージ電流を含めて1/2λの誘導電流を発生させることになり利得が向上する。一方、イメージ電流がアンテナ装置を流れる電流と異なるベクトル、例えば逆方向であれば電流を打ち消してしまい、結果、利得は低下する。
【0010】
このような技術常識に基づいて引用文献1のアンテナ装置も構成されている。基板20はイメージ電流を発生させるグランド面21を有し、そのグランド非形成部22にチップアンテナ10と放射導体40とを配置して同一平面上に構成している。またグランド面21を有する基板20とは別体の実装基板に、チップアンテナ10と放射導体40とを配置して同一平面上に構成することも記載されている。いずれの場合もグランド面21に対して、同一平面にチップアンテナ10と放射導体40とを配置することで、イメージ電流が基板20のグランド面21に適切なイメージ電流が発生するようにしている。
【0011】
しかしながら無線通信装置の筐体内においては、スピーカやディスプレイ装置等の他の構成装置がアンテナ装置の近傍に配置される。前記構成装置には多くの導体が用いられるため、そこに不適切なイメージ電流が誘起されるなどしてアンテナ性能が十分に発揮されず、アンテナの利得低下などの性能劣化を生じる問題があった。また限られた空間において、構成装置をアンテナ装置に影響を与えない程度に離間して配置することは無線通信装置の大型化を招くため、実質的に困難な状況にあった。
【0012】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するもので、無線通信装置に構成可能であり、アンテナ特性に優れたアンテナ装置と、それを用いた無線通信装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、基体に第1放射導体が形成された第1アンテナ要素と、前記第1アンテナ要素を実装する基板と、前記第1アンテナ要素と異なる平面に設けられ、前記第1放射導体の一端と接続手段を介して接続された第2放射導体を備えた第2アンテナ要素とを含むアンテナ装置である。
【0014】
本発明においては基板にグランド電極を形成しても良い。またその場合には、前記グランド電極と重ならない部位に、第1アンテナ要素及び第2アンテナ要素が構成される。前記基体は誘電体材や磁性体材からなるセラミックや樹脂を用いることが出来る。基体に構成される第1放射導体は、導電線や導電板、印刷やエッチング等の手法によって形成された電極パターン、あるいはフレキシブルなプリント配線板によって形成される。第2放射導体も同様に構成することが出来る。
【0015】
第1放射導体と第2放射導体とを接続する接続手段は、コンタクトばね、コンタクトピン、ネジ、導電性ゴム等を用いることが出来る。
【0016】
第2の発明は、第1の発明のアンテナ装置を搭載した通信機器である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無線通信装置に構成可能であり、アンテナ特性に優れたアンテナ装置と、それを用いた通信機器の提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置を備えた無線通信装置の要部断面図である。
【図2】図1の無線通信装置の筐体内部の平面図である。
【図3】図1の無線通信装置の筐体に形成された第2放射導体を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置に用いる第1アンテナ要素の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置と従来のアンテナ装置との利得の評価結果を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の評価方法を説明するための図である。
【図7】従来のアンテナ装置である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るアンテナ装置について説明する。図1は本発明の一実施形態に係るアンテナ装置を備えた無線通信装置の要部断面図である。図2は無線通信装置の筐体内部であって、第1アンテナ要素を実装した基板を見た平面図である。図3は無線通信装置の筐体に形成された第2放射導体を示す平面図である。
【0020】
アンテナ装置は、FM放送の受信に用いられるものであって、グランド電極面21と、給電部4と、接触部6とが形成された基板20に、第1放射導体が形成され第1アンテナ要素となるチップアンテナ1が実装され、無線通信装置100aの筐体30(30a)に設けられた第2アンテナ要素となる第2放射導体2と、前記第1放射導体と第2放射導体2とを接続する接続手段3とからなる。図示しないが、第1アンテナ要素の近傍にはスピーカが配置されている。
【0021】
本実施態様では、チップアンテナ1としてヘリカルアンテナを用いた。図4はその構成を示す外観斜視図である。チップアンテナ1は液晶ポリマーを基材とする基体16に第1放射導体となる導線を巻回して構成している。導線は基体16の胴部に巻かれ、その両端は基体16の両端側に設けられた鍔部11、12の実装端子13,14と接続されている。基体16には両端部に至る凹部15を備え、凹部15には磁性体18が収容されており、チップアンテナ1のインダクタンス値を高めている。FM放送受信用アンテナでは自己インダクタンスを0.6〜4μHに調整される。
本実施態様のチップアンテナは外形寸法が10mm×2mm×1.5mmに構成され、胴部にφ80μmの銅線が45ターン巻回されている。チップアンテナにおける第1放射導体の長さは。凡そ220mmであった。
【0022】
基体16はエポキシ樹脂などの樹脂材料を用いても良い。また、アルミナもしくはアルミナを主成分とするセラミック材料等の絶縁体、チタン酸マグネシウム系、チタン酸カルシウム系、ジルコニア・スズ・チタン系、チタン酸バリウム系などの誘電体セラミック材料を用いてもよい。また、Ni系、Li系フェライトなどの磁性体セラミック材料でも良い。この場合は基体の凹部に設けられる磁性体は不要となる。また磁性体18としてNi系、Li系フェライトなどの磁性体セラミック材料やアモルファス、ナノ結晶合金などの金属磁性体材料を用いても良い。また、低温焼成可能な誘電体セラミックスや磁性体セラミックスからなる矩形状のシート層を積層して、第1放射導体を構成する電極パターンと一体焼成して構成することも出来る。
【0023】
第2放射導体2は筐体30bに形成された帯状の銅箔で構成されている。その外形寸法は40mm×0.5mm×0.15mmである。接続手段を除く第1及び第2放射導体の合計長は、凡そ260mmとなり、100MHzにおける1/4λの約1/3となっており、アンテナ装置において第2放射導体2の占める割合は約15%程度である。第2放射導体2を成す銅箔をシール状に構成して筐体に貼り付けても良いし、プリント配線板として固定しても良くい、固定手段は限定されない。第2放射導体は樹脂製の筐体内にインサート成形で埋め込んでも良いし、筐体の内面に固定する形態にしても良い。筐体内部にインサート成形すれば、無線通信装置を落下した場合などの衝撃に対して破損が起きにくくなる。
【0024】
第2放射導体2は開放端となっており、他の回路やグランドなどと接続されていない。前記開放端では電圧が最大となるので、他の導体やグランド面と極力離れた位置に配置するのが好ましい。本実施形態では第2放射導体2は略矩形の筐体30bの短辺に沿って直線状に形成されている。
【0025】
第1及び第2アンテナ要素とは接続手段と接触部を介して電気的に接続される。接続手段として弾性変形が可能な板バネ部材や実装基板の板厚方向に摺動可能、あるいは実装基板の板厚方向に伸縮自在なコネクタピンなどの構造を採用することができる。ネジ、導電性ゴム等であっても良い。
【0026】
本発明のアンテナ装置について平均利得を評価した。平均利得の測定に際しては、電波無響暗室内で送信用基準アンテナの給電端子に信号発生器を接続し、前記送信用基準アンテナから放射された電力を被試験ンテナで受信することにより測定している。試験においては、従来例として第2放射導体を基板20の面上に第1アンテナ要素とともに構成したアンテナ装置も合わせて評価した。結果を図5の利得と周波数との関係を示す特性図として示す。測定した88MHz〜108MHzの周波数の大部分において、図中、実施例として示した本発明のアンテナ装置では、従来例よりも大きな利得が得られた。
【0027】
またアンテナ装置による受信感度を以下の手順で評価した。図6に評価方法を説明するための図を示す。FMトランスミッターを設置しFM電波を89.7MHz、96.5MHz、102.3MHz、106.5MHzで発信し、3m離れた位置でアンテナ装置を組み込んだ無線通信装置でFM電波を受信する。観測者は受信した音声の聞こえ方を0〜4点の点数で評価した。0点は受信信号がノイズレベルであって音声受信が出来ない状態である。1点はノイズレベルが大きく音声が確認し難い状態である。2点はノイズレベルが小さく音声も確認でき使用上問題の無い状態である。3点はノイズレベルが僅かであり殆ど気にならない状態で有り、4点は確認できるノイズは無く、音声はクリアである状態を示す。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
本発明のアンテナ装置においては、弱電界の環境であっても各周波数で音声受信が可能であった。
【符号の説明】
【0030】
1 第1アンテナ要素
2 第2アンテナ要素
3 接続手段
4 給電部
20 基板
21 グランド面
22 非グランド面
30a、30b 筐体




【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に第1放射導体が形成された第1アンテナ要素と、前記第1アンテナ要素を実装する基板と、前記第1アンテナ要素と異なる平面に設けられ、前記第1放射導体の一端と接続手段を介して接続された第2放射導体を備えた第2アンテナ要素とを含むことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1アンテナ装置を搭載したことを特徴とする無線通信装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9188(P2013−9188A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140922(P2011−140922)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】