アンテナ装置
【課題】 アンテナ放射特性を改善し、インピーダンスマッチングを容易にとること。
【解決手段】 可撓性の絶縁フィルム部材(20)を中心軸の回りで筒状に形成した筒体(11)と、この筒体の周面に形成された複数本の導体から成るアンテナパターンとを有するアンテナ装置において、アンテナパターンは、中心軸方向で螺旋状に延在して形成されたヘリカルパターン(21〜24)と、筒体の上端部においてヘリカルパターンの端部と接続されるループパターン(28)とから構成されている。
【解決手段】 可撓性の絶縁フィルム部材(20)を中心軸の回りで筒状に形成した筒体(11)と、この筒体の周面に形成された複数本の導体から成るアンテナパターンとを有するアンテナ装置において、アンテナパターンは、中心軸方向で螺旋状に延在して形成されたヘリカルパターン(21〜24)と、筒体の上端部においてヘリカルパターンの端部と接続されるループパターン(28)とから構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポール型アンテナ装置に関し、特に、人工衛星からの電波(以下「衛星波」とも呼ぶ。)または地上での電波(以下「地上波」とも呼ぶ。)を受信してデジタルラジオ放送を聴取することが可能なデジタルラジオ受信機用のパーソナルタイプの小型ポール型アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、衛星波または地上波を受信して、デジタルラジオ放送を聴取可能にしたデジタルラジオ受信機が開発され、米国において実用化されている。このデジタルラジオ受信機は、一般には、自動車等の移動体に搭載され、周波数が約2.3GHz帯の電波を受信してラジオ放送を聴取することが可能である。すなわち、デジタルラジオ受信機は、モバイル放送を聴取することが可能なラジオ受信機である。受信電波の周波数が約2.3GHz帯なので、そのときの受信波長(共振波長)λは約128.3mmである。尚、地上波は、衛星波を一旦、地球局で受信した後、周波数を若干シフトし、直線偏波で再送信したものである。すなわち、衛星波は円偏波であるのに対して、地上波は直線偏波である。
【0003】
このようにデジタルラジオ放送では、約2.3GHz帯の周波数の電波が使用されるので、その電波を受信するアンテナ装置は、室外に設置されなければならない。
【0004】
デジタルラジオ受信機としては、自動車に搭載されるもの、家屋などに設置されるもの、さらに、バッテリを電源として持ち運びができる可搬型のものがある。
【0005】
可搬型のデジタルラジオ受信機の具体例として、可搬型音響機器等の可搬型電子機器が提供されている。この可搬型電子機器では、デジタルラジオ放送を聴取するためのデジタルチューナに加えて、例えばコンパクトディスク(CD)等の光ディスクを再生するための光ディスクドライブや、アンプ、スピーカを一体的に筐体に内蔵している。
【0006】
一方、約2.3GHz帯の周波数の電波を受信するアンテナとしては、種々の構造のものが提案されている。その形状で大別すると、パッチアンテナである平面型(平板型)と、ループアンテナやヘリカルアンテナ等の円筒型とがある。このような平面型アンテナや円筒型アンテナは、前述した可搬型電子機器の筐体とは別体の状態で用意され、筐体に内蔵されたデジタルラジオチューナに対してケーブルおよびコネクタを介して接続され、使用される。
【0007】
尚、一般的に円筒型アンテナが平面型アンテナよりも使用されている。その理由は、広い指向性がアンテナを円筒型に形成することによって達成されるからである。上述したように、円筒型アンテナは、ループアンテナとヘリカルアンテナとに大別される。
【0008】
ループアンテナとしては、電磁結合型4点給電ループアンテナが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された電磁結合型4点給電ループアンテナは、可撓性の絶縁フィルム部材を中心軸の回りに筒状に丸めて形成された筒体と、この筒体にその周面に沿って中心軸の回りにループ状に形成されたループ部と、筒体の周面上に形成されたループ部へ給電する4本の給電線とを有する。ループ部には、4本の給電線に対して、それぞれ、ギャップを空けた状態でループ部から4本の給電線に沿って延在している4本の電磁結合線が接続されており、電磁結合によって給電を行っている。このループアンテナでは、中心軸と直交する方向へ延在する回路基板の裏面に接地導体パターンが形成されている。
【0009】
一方、ヘリカルアンテナも知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、可撓性の絶縁フィルム部材の一面上に4本のへリックス導線から成るアンテナパターンを印刷したもの(以下「アンテナパターン付き絶縁フィルム部材」と呼ぶ)を作製し、そのアンテナパターン付き絶縁フィルム部材を上記一面が外周面となるように中心軸の回りに円筒状に丸めることによって、ヘリカルアンテナを製造することを提案している。このようなヘリカルアンテナにおいても、中心軸と直交する方向へ延在する回路基板の裏面には接地導体パターンが形成されている。
【0010】
尚、このような円筒型アンテナの場合、そのループ部から4本の電磁結合線を介して受信又はヘリックス導線で受信された複数の衛星波(円偏波)は、移相器によってそれらの位相をシフトすることにより互いに位相を一致させて(調整して)合成された後、低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)によって増幅され、受信機本体へ送られる。ここで、ヘリカルアンテナと移相器とLNAとの組合せは、アンテナ装置と呼ばれる。
【0011】
また、円筒状部材の外周面にアンテナパターンを形成して成るヘリカルアンテナと、その円筒状部材の外周面にアンテナパターンと連続して(接続して)形成されたフェーズシフタパターンを形成して成る移相器とを含むアンテナ装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
このようなアンテナ装置は、防水のために、有頭で筒状の外装ケース(シリンダ)内に収容される。従って、アンテナ装置全体の外観形状は、ポール形状を呈することになる。その為、このような外観を持つアンテナ装置はポール型アンテナ装置と呼ばれる。ポール型アンテナ装置は、例えば、ポケットなどにクリップなどで挟んだ状態で携帯して使用されるので、人体に近接して配置されることになる。
【0013】
【特許文献1】特開2003−298335号公報
【特許文献2】特開2003−37430号公報
【特許文献3】特開2001−339228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
円筒型アンテナとして、上述した電磁結合型4点給電ループアンテナを使用した場合、中心軸と直交する方向へ延在するある程度の大きさの接地導体パターンが無ければ、上方向と下方向に同じ強さの電波の放射がある。詳述すると、交差偏波に関して、上方向に左旋円偏波があると仮定すると、下方向にはその左旋円偏波と同じ強さの右旋円偏波がある。しかしながら、ボール型アンテナ装置では、このような中心軸と直交する方向へ延在する接地導体パターンを設けるスペースがない。
【0015】
また、上述したように、電磁結合型4点給電ループアンテナでは、ループ部に対して、4本の給電線を介してギャップを空けて4本の電磁結合線から電磁的に給電がなされている。その為、ギャップを正確に設定しなければならず、インピーダンスマッチングをとるのが煩雑になるという問題もある。
【0016】
更に、ポール型アンテナ装置は、可搬型、車載型、携帯型のいずれの受信機に適用する場合であっても、サイズ、特にポールの中心軸方向のサイズを極力小さくすることが要求される。
【0017】
加えて、携帯型の受信機に適用する場合、受信機を手で持った時に人体の影響、例えば共振周波数のずれが発生し易くなる。
【0018】
したがって、本発明の課題は、中心軸と直交する方向へ延在する接地導体パターンが無くとも、アンテナ放射特性を改善することができるポール型アンテナ装置を提供することにある。
【0019】
本発明の他の課題は、インピーダンスマッチングを容易にとることができるポール型アンテナ装置を提供することにある。
【0020】
本発明の更に他の課題は、サイズ、特にポールの中心軸方向のサイズを極力小さくすることができるポール型アンテナ装置を提供することにある。
【0021】
本発明のより他の課題は、携帯型の受信機に適用した場合であっても人体の影響を受け難いポール型アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、可撓性の絶縁フィルム部材(20)を中心軸の回りで筒状に形成した筒体(11)と、該筒体の周面に形成された複数本の導体(21,22,23,24,28)から成るアンテナパターンとを有するアンテナ装置(10)において、前記アンテナパターンは、前記中心軸方向で螺旋状に延在して形成されたヘリカルパターン(21〜24)と、前記筒体の上端部において前記ヘリカルパターンの端部と接続されるループパターン(28)とから構成されていることを特徴とするアンテナ装置が得られる。
【0023】
上記アンテナ装置において、前記ヘリカルパターン(21〜24)は、前記中心軸方向で少なくとも1回反対方向へ屈曲した屈曲部を有することが好ましい。また、前記筒体の周面に、前記ヘリカルパターンと電気的に接続されて形成されたフェーズシフタパターン(25)を更に有することが望ましい。前記アンテナパターン(21〜24、28)と前記フェーズシフタパターン(25)は、前記筒体の内周面(20−1)に形成されることが好ましい。その場合、前記筒体の外周面(20−2)で、且つ前記フェーズシフタパターンが形成された場所と対応する面に形成されたグランドパターン(27)を更に有して良い。前記筒体(11)を覆う筒状の外装ケース(40)を更に有して良い。前記ヘリカルパターン(21〜24)は、前記螺旋状に延在する部分の少なくとも一部がミアンダ状にされていても良い。
【0024】
尚、上記括弧内の符号は、本発明の理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、アンテナパターンがヘリカルパターンとループパターンとの組合せから構成されるので、中心軸と直交する方向へ延在する接地導体パターンが無くとも、アンテナ放射特性を改善することができ、インピーダンスマッチングを容易にとることができる。
【0026】
ヘリカルパターンにおいて螺旋状に延在する部分の形状を、中心軸方向で少なくとも1回反対方向へ屈曲した屈曲部を有するようにし、また少なくとも一部をミアンダ状にしたことにより中心軸方向のサイズを縮小することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1および図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係るポール型アンテナ装置10について説明する。図示のポール型アンテナ装置10は、デジタルラジオ受信機用のアンテナ装置であって、可搬型電子機器(図示せず)の筐体に内蔵されたデジタルラジオチューナ(図示せず)に対してケーブル31およびコネクタ(図示せず)を介して接続され、使用される。
【0029】
図示のポール型アンテナ装置10は、図2に示されるような可撓性の絶縁フィルム部材20を中心軸の回りに筒状に丸めて形成された筒体11を有する。図2において、(A)は絶縁フィルム部材20の第1の面20−1を示し、(B)は絶縁フィルム部材20の第2の面20−2を示す。絶縁フィルム部材20は、アンテナパターン部分20Aとフェーズシフタ部分20Pとから構成される。アンテナパターン部分20Aは、実質的に平行四辺形の形状をしており、フェーズシフタ部分20Pは、実質的に矩形の形状をしている。
【0030】
アンテナパターン部分20Aは、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で螺旋状に延在して形成されたヘリカルパターン部分20Hと、筒体11の上端部においてヘリカルパターン部分20Hの端部と接続されるループパターン部分20Lとから構成されている。
【0031】
絶縁フィルム部材20を丸め、その一対の側辺間を、第1の面20−1が内周面となるように接続することにより、図1に示されるような、筒体11が形成される。一対の側辺間の接続は、例えば、両面接着テープや接着剤、半田付けなどによって行われる。
【0032】
ヘリカルアンテナ部分20Hの第1の面20−1上には、第1乃至第4のヘリカル導体21,22,23,24から成る第1のアンテナパターンが形成されている。図示の第1乃至第4のヘリカル導体21〜24の各々は、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で2回反対方向へ屈曲した状態で、側辺と平行に延在して形成されている。従って、上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11に丸めると、第1乃至第4のヘリカル導体21〜24の各々は、筒体11の内周面に、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で2回反対方向へ屈曲した状態で、へリックス状に延在して形成されることになる。第1乃至第4のヘリカル導体21〜24から成る第1のアンテナパターンはヘリカルアンテナとして働く。
【0033】
このように第1の実施形態では、第1乃至第4のヘリカル導体21〜24の各々がポール型アンテナ装置10の長手方向で屈曲しているので、ヘリカル導体を屈曲しない場合に比較して、ポール型アンテナ装置10の高さを低くすることができる。
【0034】
ループアンテナ部分20Lの第1の面20−1上には、第1乃至第4のヘリカル導体21〜24の先端(上端)と接続されたループ導体28から成る第2のアンテナパターンが形成されている。このループ導体28から成る第2のアンテナパターンはループアンテナとして働く。
【0035】
フェーズシフタ部分20Pの第1の面20−1上には、上記第1のアンテナパターンと電気的に接続されたフェーズシフタパターン25が形成されている。従って、上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11に丸めると、筒体11の内周面にフェーズシフタパターン25が形成されることになる。このフェーズシフタパターン25は移相器として働く。
【0036】
フェーズシフタ部分20Pの第2の面20−2上には、グランドパターン27が形成されている。すなわち、グランドパターン27は、フェーズシフタパターン25が形成された場所と対向する面に形成されている。従って、上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11に丸めると、筒体11の外周面で、且つフェーズシフタパターン25が形成された場所と対応する面にグランドパターン27が形成されることになる。このグランドパターン27は、フェーズシフタパターン25を覆うように設けられたシールド部材として働く。
【0037】
ポール型アンテナ装置10は、筒体11を覆う有頭で筒状の外装ケース(シリンダ)40を更に有する。この外装ケース40の内径は、筒体11の直径よりも大きい。
【0038】
上述したように、第1の実施形態では、ヘリカルアンテナ部分20Hを構成する第1乃至第4のヘリカル導体21〜24から成る第1のアンテナパターンおよびループアンテナ部分20Lを構成するループ導体28から成る第2のアンテナパターンが、筒体11の内周面20−1に形成されているので、第1及び第2のアンテナパターンと外装ケース40の内壁とが直接接触することはない。従って、ポール型アンテナ装置10のアンテナ特性が外装ケース40の影響を受けるのを防止することができる。また、シールド部材として働くグランドパターン27がフェーズシフタパターン25の外側に配置されるので、ポール型アンテナ装置10のアンテナ特性が人体の影響を受けるのを防止することができる。その結果、第1の実施形態に係るポール型アンテナ装置10は、使用中においても所望のアンテナ特性を得ることができる。
【0039】
図示の実施形態では、図3に示すように、アンテナパターン部分20Aの先端部に第1の環状クッション材51が巻かれている。また、この第1の環状クッション材51の直下に第2の環状クッション材52がアンテナパターン部分20Aに巻かれている。第2の環状クッション材52の厚さは、筒体11と外装ケース40との間の隙間より若干厚めである。第1および第2の環状のクッション材51、52は、例えば、発泡ウレタンなどの材料から成る。
【0040】
このように、アンテナパターン部分20Aの先端部に第1の環状クッション材51を巻くことにより、アンテナパターン部分20Aの先端部の誘電率を変動させることができ、それにより、ポール型アンテナ装置10のアンテナ周波数特性を調整することが可能となる。従って、第1の環状クッション材51の厚さ、太さを変更することにより、ポール型アンテナ装置10のアンテナ周波数特性を変更することが可能となる。
【0041】
一方、第2の環状クッション材52は、外装ケース40の内壁とアンテナパターン部分20Aとの間のクッション的な役割を果たし、外装ケース40の内壁とアンテナパターン部分20Aとの間の隙間を一定に保つことができる。これにより、外装ケース40に対するアンテナパターン部分20Aの極端な傾きを防ぐことができるので、ポール型アンテナ装置10の指向性のばらつきを抑制することが可能となる。ここで、上述したように、第2の環状クッション材52の厚さがアンテナパターン部分20Aと外装ケース40の内壁との間の隙間より若干厚いので、第2の環状クッション材52は外装ケース40に圧入されることになる。この結果、外装ケース40の内壁とアンテナパターン部分20Aとの間の距離を一定に保つことができる。
【0042】
ポール型アンテナ装置10は、基板32を備える。基板32上には低雑音増幅器(図示せず)などの電子部品が搭載されている。低雑音増幅器はフェーズシフタパターン25の出力端子25aとケーブル31とに接続される。
【0043】
ループアンテナ部分20Lのループ導体28及びヘリカルアンテナ部分20Hの4本の導体21〜24で受信された複数の衛星波(円偏波)は、フェーズシフタパターン25によってそれらの位相をシフトすることにより互いに位相を一致させて(調整して)合成された後、低雑音増幅器(LNA)によって増幅され、ケーブル31を介して受信機本体(図示せず)へ送られる。
【0044】
図1に加えて図3乃至図5をも参照して、ポール型アンテナ装置10は、ケーブル31に摺動自在に取り付けられたブーツ33と、外装ケース40の下端に後述するように取り付けられるアンダーキャップ(ボトムカバー)34と、防水用のパッキン35とを更に備える。ブーツ33はポリウレタン製である。
【0045】
アンダーキャップ34にブーツ33とパッキン35とを入れ、そこに基板32を挿入することにより、ケーブル31側の防水機能と基板固定機能とを持たせている。
【0046】
図6はアンダーキャップ34の断面図である。図6に示されるように、アンダーキャップ34は、その上端側に、基板32の両側端部321が挿入される切り欠き341を持つ。アンダーキャップ34には、基板32圧入の際に戻らないよう、爪342が付けられている。また、アンダーキャップ34の下端には、ブーツ33が貫通される開口343が空けられている。
【0047】
一方、基板32は、その両側面から側方へ突出した両側端部321を有する。この基板32の両側端部321には、図3に示されるように、アンダーキャップ34の爪342に収まるような切り欠き321aが形成されている。
【0048】
図7はパッキン35を示す図で、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は(B)のB−B断面図である。図6及び図7に示されるように、パッキン35の外径D2は、アンダーキャップ34の内径D1よりもわずかに大きい。パッキン35には、基板32の下端部322が挿入される切り欠き351が形成されている。
【0049】
このように、アンダーキャップ34にパッキン35が圧入され、基板32でその圧入状態が固定されることにより、ケーブル31側の防水機能を持たせている。その際、基板32も外装ケース40内で固定されるので、基板32の位置決めもできる。
【0050】
図8を参照すると、外装ケース40は、シリンダ部41とトップカバー42とから構成される。シリンダ部41の内壁には、基板31の両側端部321が挿入される溝411が切られている。
【0051】
図9はポール型アンテナ装置10の外観を示す正面図であり、図10はポール型アンテナ装置10の断面図を示す。トップカバー42はシリンダ部41の上端に超音波溶着によって接合されている。ボトムカバー(アンダーキャップ)34は、シリンダ部41の下端に超音波溶着によって接合されている。従って、ポール型アンテナ装置10はネジを使用しない構造なので、部品点数を削減することができる。
【0052】
図11乃至図14を参照して、基板32と筒体11との配置関係について説明する。筒体11は、基板32の両側端部321が挿入される切り欠き11aを有する。
【0053】
図13に示されるように、低雑音増幅器(LNA)61を搭載した基板32の一部は、筒体11の内部に挿入される。筒体11に形成された出力端子25aは、図14に示されるように、半田62により基板32(低雑音増幅器61)と接続される。
【0054】
このように、基板32の一部を筒体11の内部に挿入するので、ポール型アンテナ装置10の長手方向のサイズを短縮することができる。又、筒体11と基板32(低雑音増幅器61)との間の接続を、可撓性の絶縁フィルム部材20に形成した出力端子25aを用いて行うので、従来のポール型アンテナ装置において必要であった特別な(専用の)ターミナル部品が不要となり、部品点数を削減することができる。
【0055】
図15に第1の実施形態に係るアンテナ装置10の交差偏波特性(放射パターン)を示す。図15において、(A)は第1の実施形態に係るアンテナ装置10の透視斜視図であり、(B)はアンテナ装置10の放射パターンを示す図である。図15(B)に示されるように、アンテナ装置10の放射パターンは、左旋円偏波ELの放射パターンと右旋円偏波ERの放射パターンとから成る。
【0056】
参考例として、図16にループアンテナのみから成る従来のアンテナ装置の交差偏波特性(放射パターン)を示す。図16において、(A)は従来のアンテナ装置の透視斜視図であり、(B)は従来のアンテナ装置の放射パターンを示す図である。図16(B)に示されるように、従来のアンテナ装置の放射パターンも、左旋円偏波ELの放射パターンと右旋円偏波ERの放射パターンとから成る。
【0057】
図16(B)に示されるように、従来のアンテナ装置においては、左旋円偏波ELが上方向に放射されており、この左旋円偏波ELと実質的に同じ強さの右旋円偏波ERが下方向に放射されているのが分かる。
【0058】
これに対して、図15(B)に示されるように、第1の実施形態に係るアンテナ装置10においては、上方向に放射される左旋円偏波ELの放射強度が強くなっており、下方向に放射される右旋円偏波ERの放射強度が弱くなっていることが分かる。すなわち、第1の実施形態に係るアンテナ装置10では、主に上方向に電波が放射される。したがって、中心軸と直交する方向へ延在する接地導体パターンが無くとも、アンテナ装置10のアンテナ放射特性を改善できる。換言すれば、ループアンテナとヘリカルアンテナとを組合せることによって、接地導体パターンが無いときのアンテナ放射特性を改善することができる。
【0059】
また、従来のアンテナ装置では、図16(A)に示されるように、ループ導体28に対して4本の電磁結合線がギャップを介して結合されていたのに対して、第1の実施形態に係るアンテナ装置10は、図15(A)に示されるように、ループ導体28に対して第1乃至第4のヘリカル導体21〜24がストレート接続されるので、インピーダンスマッチングを容易にとることが可能となる。
【0060】
尚、アンテナ装置10のアンテナ放射特性は、ループ導体28の径や第1乃至第4のヘリカル導体21〜24の角度を設計変更することにより、ある程度自由に変えることができる。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、図17、図18を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0062】
第2の実施形態によるポール型アンテナ装置は、外形形状は図1に示されるものと同じであり、絶縁フィルム部材に形成される導体パターンの形状が異なるだけである。それゆえ、第1の実施形態によるポール型アンテナ装置と同じ部分には同一番号を付し、詳しい説明は省略する。
【0063】
第2の実施形態によるポール型アンテナ装置10も、図17に示されるような可撓性の絶縁フィルム部材20を中心軸の回りに筒状に丸めて形成された筒体11を有する。図17において、(A)は絶縁フィルム部材20の第1の面20−1を示し、(B)は絶縁フィルム部材20の第2の面20−2を示す。絶縁フィルム部材20は、低損失誘電体材料、例えばテフロン(登録商標)系材料によるフィルムを用いて作製され、第1の面20−1側にはアンテナパターン部分20Aとフェーズシフタ部分20Pとを有する。アンテナパターン部分20Aは、実質的に平行四辺形の形状をしており、フェーズシフタ部分20Pは、実質的に矩形の形状をしている。
【0064】
アンテナパターン部分20Aは、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で螺旋状に延在して形成されたヘリカルパターン部分20Hと、筒体11の上端部においてヘリカルパターン部分20Hの端部と接続されるループパターン部分20Lとから構成されている。
【0065】
絶縁フィルム部材20を第1の面20−1が内周面となるように丸めたうえでその一対の側辺間を接続することにより、図1に示されるものと同様の筒体11が形成される。一対の側辺間の接続は、例えば、両面接着テープや接着剤、半田付けなどによって行われる。
【0066】
ヘリカルアンテナ部分20Hの第1の面20−1上には、第1乃至第4のヘリカル導体21’,22’,23’,24’から成る第1のアンテナパターンが形成されている。第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の各々は、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で4回反対方向へ屈曲した状態で、側辺と平行に延在して形成されている。特に、第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の各々において側辺と平行に延在している5本の導体パターンのうちの少なくとも1本、ここではフェーズシフタパターン25’に接続される導体パターンをミアンダ状、つまりジグザグに蛇行させるようにしている。
【0067】
上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11に丸めると、第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の各々は、筒体11の内周面に、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で4回反対方向へ屈曲した状態で、へリックス状に延在して形成されることになる。第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’から成る第1のアンテナパターンはヘリカルアンテナとして働く。
【0068】
このように第2の実施形態では、第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の各々がポール型アンテナ装置10の長手方向で屈曲し、しかも各ヘリカル導体の一部がミアンダ状に形成されているので、導体長を長くすることができ、ヘリカル導体が屈曲しない場合は勿論のこと、第1の実施形態に比べてもポール型アンテナ装置10の高さを低くすることができる。
【0069】
ループアンテナ部分20Lの第1の面20−1上には、第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の先端(上端)と接続されたループ導体28から成る第2のアンテナパターンが形成されている。このループ導体28から成る第2のアンテナパターンはループアンテナとして働く。
【0070】
フェーズシフタ部分20Pの第1の面20−1上には、上記第1のアンテナパターンと電気的に接続されたフェーズシフタパターン25’が形成されている。従って、上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11に丸めると、筒体11の内周面にフェーズシフタパターン25’が形成されることになる。このフェーズシフタパターン25’は移相器として働く。
【0071】
フェーズシフタ部分20Pの第2の面20−2上には、グランドパターン27が形成されている。すなわち、グランドパターン27は、フェーズシフタパターン25’が形成された面とは反対側の面に形成されている。従って、上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11として丸めると、筒体11の外周面で、且つフェーズシフタパターン25’が形成された部分と反対側の面にグランドパターン27が形成されることになる。このグランドパターン27は、フェーズシフタパターン25’を覆うように設けられ、シールド部材として働く。
【0072】
図17に示された部分を除く部分は、第1の実施形態と同じである。
【0073】
上述したように、第2の実施形態でも、ヘリカルアンテナ部分20Hを構成する第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’から成る第1のアンテナパターンおよびループアンテナ部分20Lを構成するループ導体28から成る第2のアンテナパターンが、筒体11の内周面20−1に形成されているので、第1及び第2のアンテナパターンと外装ケース40の内壁とが直接接触することはない。従って、ポール型アンテナ装置10のアンテナ特性が外装ケース40の影響を受けるのを防止することができる。また、シールド部材として働くグランドパターン27がフェーズシフタパターン25’の外側に配置されるので、ポール型アンテナ装置10のアンテナ特性が人体(手、指等)の影響を受けるのを防止することができる。その結果、第2の実施形態に係るポール型アンテナ装置10も、使用中においても所望のアンテナ特性を得ることができる。加えて、高誘電体であるセラミックを用いた小型化ではないため誘電体損失が小さく、高利得のアンテナ装置を安価で提供できる。
【0074】
従来のアンテナ装置では、図16(A)に示されるように、ループ導体28に対して4本の電磁結合線がギャップを介して結合されていたのに対して、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置10は、図17(A)に示されるように、ループ導体28に対して第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’がストレート接続されるので、インピーダンスマッチングを容易にとることが可能となる。
【0075】
図17において、第1の実施形態で詳しく説明したように、絶縁フィルム部材20におけるフェーズシフタ部分20Pの下側の一部を、基板32の両側端部321を受ける切り欠き11aを形成するために下方に突出させている。しかし、このような切り欠き11aは無くても良い。つまり、フェーズシフタ部分20Pの下側を、図17(A)、(B)に一点鎖線で示すように形成しても良い。この場合、基板32(低雑音増幅器61)と接続するための出力端子は25a’で示す箇所となる。つまり、フェーズシフタ部分20Pの下側の一部をわずかに下方に突出させ、この突出部まで延びたフェーズシフタパターン25’の端部を出力端子25a’として基板32上の低雑音増幅器61と接続する。
【0076】
尚、第2の実施形態によるアンテナ装置10においても、そのアンテナ放射特性は、ループ導体28の径や第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の角度を設計変更することにより、ある程度自由に変えることができる。
【0077】
以上、本発明を2つの実施形態によって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されないのは勿論である。例えば、上記実施形態では、第1のアンテナパターンとして筒体の内周面に形成された4本のヘリカル導体を用いているが、少なくとも1本のヘリカル導体から成って良い。ヘリカル導体が1本の場合には、移相器(フェーズシフタ部分)は不要である。上記実施形態では、第1のアンテナパターンを構成する各ヘリカル導体がポール型アンテナ装置の長手方向(中心軸方向)で2回及び4回反対方向へ屈曲しているが、少なくとも1回反対方向へ屈曲するもので良い。上記実施形態では、シールド部材として筒体の外周面に形成されたグランドパターンを用いているが、シールド部材はこれに限定されず、フェーズシフタパターンを覆うように設けられていれば良い。例えば、シールド部材は、外装ケース40の内壁で、且つフェーズシフタパターンが形成された場所と対応する面に形成された導体パターンであっても良いし、外装ケース40の外壁で、且つフェーズシフタパターンが形成された場所と対応する面に張られたシールド効果のあるテープであっても良い。
【0078】
また、上記実施形態において説明したポール型アンテナ装置は、デジタルラジオ受信機用のパーソナルタイプで小型のアンテナ装置に適しているが、これに限定される訳ではなく、GPS受信機用のアンテナ装置や、他の衛星波、地上波を受信するための移動体通信用のアンテナ装置としても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るポール型アンテナ装置を示す概略分解図である。
【図2】図1に示したポール型アンテナ装置に使用されるアンテナパターン部分及びフェーズシフタ部分の展開図で、(A)は第1の面(内周面)を示す平面図、(B)は第2の面(外周面)を示す平面図である。
【図3】図1に示したポール型アンテナ装置を、外装ケースを除いて示す、分解背面図である。
【図4】図3に示したポール型アンテナ装置を、筒体を除いて示す、分解背面図である。
【図5】図4に示したポール型アンテナ装置の分解側面図である。
【図6】図1に示したポール型アンテナ装置に使用されるアンダーキャップの断面図である。
【図7】図1に示したポール型アンテナ装置に使用されるパッキンを示す図で、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は(B)のB−B断面図である。
【図8】図1に示したポール型アンテナ装置の分解正面断面図である。
【図9】図1に示したポール型アンテナ装置の外観を示す正面図である。
【図10】図1に示したポール型アンテナ装置の正面断面図を示す。
【図11】図1に示したポール型アンテナ装置に使用される、基板と筒体との配置関係を説明するための分解側面図である。
【図12】図11に示した基板と筒体との配置関係を説明するための分解背面図である。
【図13】図11に示した基板と筒体とを組み付けた状態を示す背面図である。
【図14】図13の丸で囲んだ部分の拡大図である。
【図15】本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の交差偏波特性(放射パターン)を説明するための図で、(A)は本発明に係るアンテナ装置の透視斜視図であり、(B)は本発明に係るアンテナ装置の放射パターンを示す図である。
【図16】従来のアンテナ装置の交差偏波特性(放射パターン)を説明するための図で、(A)は従来のアンテナ装置の透視斜視図であり、(B)は従来のアンテナ装置の放射パターンを示す図である。
【図17】本発明の第2の実施形態に係るポール型アンテナ装置に使用されるアンテナパターン部分及びフェーズシフタ部分の展開図で、(A)は第1の面(内周面)を示す平面図、(B)は第2の面(外周面)を示す平面図である。
【図18】図17に示した導体パターンを持つ絶縁フィルム部材を丸めて筒状にした場合の外観を示した図である。
【符号の説明】
【0080】
10 ポール型アンテナ装置
11 筒体
20 可撓性の絶縁フィルム部材
20A アンテナパターン部分
20H ヘリカルアンテナ部分
20L ループアンテナ部分
20P フェーズシフタ部分
20−1 第1の面(内周面)
20−2 第2の面(外周面)
21〜24、21’〜24’ ヘリカル導体(第1のアンテナパターン)
25、25’ フェーズシフタパターン(移相器)
27 グランドパターン(シールド部材)
28 ループ導体(第2のアンテナパターン)
40 外装ケース(シリンダ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポール型アンテナ装置に関し、特に、人工衛星からの電波(以下「衛星波」とも呼ぶ。)または地上での電波(以下「地上波」とも呼ぶ。)を受信してデジタルラジオ放送を聴取することが可能なデジタルラジオ受信機用のパーソナルタイプの小型ポール型アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、衛星波または地上波を受信して、デジタルラジオ放送を聴取可能にしたデジタルラジオ受信機が開発され、米国において実用化されている。このデジタルラジオ受信機は、一般には、自動車等の移動体に搭載され、周波数が約2.3GHz帯の電波を受信してラジオ放送を聴取することが可能である。すなわち、デジタルラジオ受信機は、モバイル放送を聴取することが可能なラジオ受信機である。受信電波の周波数が約2.3GHz帯なので、そのときの受信波長(共振波長)λは約128.3mmである。尚、地上波は、衛星波を一旦、地球局で受信した後、周波数を若干シフトし、直線偏波で再送信したものである。すなわち、衛星波は円偏波であるのに対して、地上波は直線偏波である。
【0003】
このようにデジタルラジオ放送では、約2.3GHz帯の周波数の電波が使用されるので、その電波を受信するアンテナ装置は、室外に設置されなければならない。
【0004】
デジタルラジオ受信機としては、自動車に搭載されるもの、家屋などに設置されるもの、さらに、バッテリを電源として持ち運びができる可搬型のものがある。
【0005】
可搬型のデジタルラジオ受信機の具体例として、可搬型音響機器等の可搬型電子機器が提供されている。この可搬型電子機器では、デジタルラジオ放送を聴取するためのデジタルチューナに加えて、例えばコンパクトディスク(CD)等の光ディスクを再生するための光ディスクドライブや、アンプ、スピーカを一体的に筐体に内蔵している。
【0006】
一方、約2.3GHz帯の周波数の電波を受信するアンテナとしては、種々の構造のものが提案されている。その形状で大別すると、パッチアンテナである平面型(平板型)と、ループアンテナやヘリカルアンテナ等の円筒型とがある。このような平面型アンテナや円筒型アンテナは、前述した可搬型電子機器の筐体とは別体の状態で用意され、筐体に内蔵されたデジタルラジオチューナに対してケーブルおよびコネクタを介して接続され、使用される。
【0007】
尚、一般的に円筒型アンテナが平面型アンテナよりも使用されている。その理由は、広い指向性がアンテナを円筒型に形成することによって達成されるからである。上述したように、円筒型アンテナは、ループアンテナとヘリカルアンテナとに大別される。
【0008】
ループアンテナとしては、電磁結合型4点給電ループアンテナが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された電磁結合型4点給電ループアンテナは、可撓性の絶縁フィルム部材を中心軸の回りに筒状に丸めて形成された筒体と、この筒体にその周面に沿って中心軸の回りにループ状に形成されたループ部と、筒体の周面上に形成されたループ部へ給電する4本の給電線とを有する。ループ部には、4本の給電線に対して、それぞれ、ギャップを空けた状態でループ部から4本の給電線に沿って延在している4本の電磁結合線が接続されており、電磁結合によって給電を行っている。このループアンテナでは、中心軸と直交する方向へ延在する回路基板の裏面に接地導体パターンが形成されている。
【0009】
一方、ヘリカルアンテナも知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、可撓性の絶縁フィルム部材の一面上に4本のへリックス導線から成るアンテナパターンを印刷したもの(以下「アンテナパターン付き絶縁フィルム部材」と呼ぶ)を作製し、そのアンテナパターン付き絶縁フィルム部材を上記一面が外周面となるように中心軸の回りに円筒状に丸めることによって、ヘリカルアンテナを製造することを提案している。このようなヘリカルアンテナにおいても、中心軸と直交する方向へ延在する回路基板の裏面には接地導体パターンが形成されている。
【0010】
尚、このような円筒型アンテナの場合、そのループ部から4本の電磁結合線を介して受信又はヘリックス導線で受信された複数の衛星波(円偏波)は、移相器によってそれらの位相をシフトすることにより互いに位相を一致させて(調整して)合成された後、低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)によって増幅され、受信機本体へ送られる。ここで、ヘリカルアンテナと移相器とLNAとの組合せは、アンテナ装置と呼ばれる。
【0011】
また、円筒状部材の外周面にアンテナパターンを形成して成るヘリカルアンテナと、その円筒状部材の外周面にアンテナパターンと連続して(接続して)形成されたフェーズシフタパターンを形成して成る移相器とを含むアンテナ装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
このようなアンテナ装置は、防水のために、有頭で筒状の外装ケース(シリンダ)内に収容される。従って、アンテナ装置全体の外観形状は、ポール形状を呈することになる。その為、このような外観を持つアンテナ装置はポール型アンテナ装置と呼ばれる。ポール型アンテナ装置は、例えば、ポケットなどにクリップなどで挟んだ状態で携帯して使用されるので、人体に近接して配置されることになる。
【0013】
【特許文献1】特開2003−298335号公報
【特許文献2】特開2003−37430号公報
【特許文献3】特開2001−339228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
円筒型アンテナとして、上述した電磁結合型4点給電ループアンテナを使用した場合、中心軸と直交する方向へ延在するある程度の大きさの接地導体パターンが無ければ、上方向と下方向に同じ強さの電波の放射がある。詳述すると、交差偏波に関して、上方向に左旋円偏波があると仮定すると、下方向にはその左旋円偏波と同じ強さの右旋円偏波がある。しかしながら、ボール型アンテナ装置では、このような中心軸と直交する方向へ延在する接地導体パターンを設けるスペースがない。
【0015】
また、上述したように、電磁結合型4点給電ループアンテナでは、ループ部に対して、4本の給電線を介してギャップを空けて4本の電磁結合線から電磁的に給電がなされている。その為、ギャップを正確に設定しなければならず、インピーダンスマッチングをとるのが煩雑になるという問題もある。
【0016】
更に、ポール型アンテナ装置は、可搬型、車載型、携帯型のいずれの受信機に適用する場合であっても、サイズ、特にポールの中心軸方向のサイズを極力小さくすることが要求される。
【0017】
加えて、携帯型の受信機に適用する場合、受信機を手で持った時に人体の影響、例えば共振周波数のずれが発生し易くなる。
【0018】
したがって、本発明の課題は、中心軸と直交する方向へ延在する接地導体パターンが無くとも、アンテナ放射特性を改善することができるポール型アンテナ装置を提供することにある。
【0019】
本発明の他の課題は、インピーダンスマッチングを容易にとることができるポール型アンテナ装置を提供することにある。
【0020】
本発明の更に他の課題は、サイズ、特にポールの中心軸方向のサイズを極力小さくすることができるポール型アンテナ装置を提供することにある。
【0021】
本発明のより他の課題は、携帯型の受信機に適用した場合であっても人体の影響を受け難いポール型アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、可撓性の絶縁フィルム部材(20)を中心軸の回りで筒状に形成した筒体(11)と、該筒体の周面に形成された複数本の導体(21,22,23,24,28)から成るアンテナパターンとを有するアンテナ装置(10)において、前記アンテナパターンは、前記中心軸方向で螺旋状に延在して形成されたヘリカルパターン(21〜24)と、前記筒体の上端部において前記ヘリカルパターンの端部と接続されるループパターン(28)とから構成されていることを特徴とするアンテナ装置が得られる。
【0023】
上記アンテナ装置において、前記ヘリカルパターン(21〜24)は、前記中心軸方向で少なくとも1回反対方向へ屈曲した屈曲部を有することが好ましい。また、前記筒体の周面に、前記ヘリカルパターンと電気的に接続されて形成されたフェーズシフタパターン(25)を更に有することが望ましい。前記アンテナパターン(21〜24、28)と前記フェーズシフタパターン(25)は、前記筒体の内周面(20−1)に形成されることが好ましい。その場合、前記筒体の外周面(20−2)で、且つ前記フェーズシフタパターンが形成された場所と対応する面に形成されたグランドパターン(27)を更に有して良い。前記筒体(11)を覆う筒状の外装ケース(40)を更に有して良い。前記ヘリカルパターン(21〜24)は、前記螺旋状に延在する部分の少なくとも一部がミアンダ状にされていても良い。
【0024】
尚、上記括弧内の符号は、本発明の理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、アンテナパターンがヘリカルパターンとループパターンとの組合せから構成されるので、中心軸と直交する方向へ延在する接地導体パターンが無くとも、アンテナ放射特性を改善することができ、インピーダンスマッチングを容易にとることができる。
【0026】
ヘリカルパターンにおいて螺旋状に延在する部分の形状を、中心軸方向で少なくとも1回反対方向へ屈曲した屈曲部を有するようにし、また少なくとも一部をミアンダ状にしたことにより中心軸方向のサイズを縮小することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1および図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係るポール型アンテナ装置10について説明する。図示のポール型アンテナ装置10は、デジタルラジオ受信機用のアンテナ装置であって、可搬型電子機器(図示せず)の筐体に内蔵されたデジタルラジオチューナ(図示せず)に対してケーブル31およびコネクタ(図示せず)を介して接続され、使用される。
【0029】
図示のポール型アンテナ装置10は、図2に示されるような可撓性の絶縁フィルム部材20を中心軸の回りに筒状に丸めて形成された筒体11を有する。図2において、(A)は絶縁フィルム部材20の第1の面20−1を示し、(B)は絶縁フィルム部材20の第2の面20−2を示す。絶縁フィルム部材20は、アンテナパターン部分20Aとフェーズシフタ部分20Pとから構成される。アンテナパターン部分20Aは、実質的に平行四辺形の形状をしており、フェーズシフタ部分20Pは、実質的に矩形の形状をしている。
【0030】
アンテナパターン部分20Aは、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で螺旋状に延在して形成されたヘリカルパターン部分20Hと、筒体11の上端部においてヘリカルパターン部分20Hの端部と接続されるループパターン部分20Lとから構成されている。
【0031】
絶縁フィルム部材20を丸め、その一対の側辺間を、第1の面20−1が内周面となるように接続することにより、図1に示されるような、筒体11が形成される。一対の側辺間の接続は、例えば、両面接着テープや接着剤、半田付けなどによって行われる。
【0032】
ヘリカルアンテナ部分20Hの第1の面20−1上には、第1乃至第4のヘリカル導体21,22,23,24から成る第1のアンテナパターンが形成されている。図示の第1乃至第4のヘリカル導体21〜24の各々は、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で2回反対方向へ屈曲した状態で、側辺と平行に延在して形成されている。従って、上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11に丸めると、第1乃至第4のヘリカル導体21〜24の各々は、筒体11の内周面に、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で2回反対方向へ屈曲した状態で、へリックス状に延在して形成されることになる。第1乃至第4のヘリカル導体21〜24から成る第1のアンテナパターンはヘリカルアンテナとして働く。
【0033】
このように第1の実施形態では、第1乃至第4のヘリカル導体21〜24の各々がポール型アンテナ装置10の長手方向で屈曲しているので、ヘリカル導体を屈曲しない場合に比較して、ポール型アンテナ装置10の高さを低くすることができる。
【0034】
ループアンテナ部分20Lの第1の面20−1上には、第1乃至第4のヘリカル導体21〜24の先端(上端)と接続されたループ導体28から成る第2のアンテナパターンが形成されている。このループ導体28から成る第2のアンテナパターンはループアンテナとして働く。
【0035】
フェーズシフタ部分20Pの第1の面20−1上には、上記第1のアンテナパターンと電気的に接続されたフェーズシフタパターン25が形成されている。従って、上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11に丸めると、筒体11の内周面にフェーズシフタパターン25が形成されることになる。このフェーズシフタパターン25は移相器として働く。
【0036】
フェーズシフタ部分20Pの第2の面20−2上には、グランドパターン27が形成されている。すなわち、グランドパターン27は、フェーズシフタパターン25が形成された場所と対向する面に形成されている。従って、上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11に丸めると、筒体11の外周面で、且つフェーズシフタパターン25が形成された場所と対応する面にグランドパターン27が形成されることになる。このグランドパターン27は、フェーズシフタパターン25を覆うように設けられたシールド部材として働く。
【0037】
ポール型アンテナ装置10は、筒体11を覆う有頭で筒状の外装ケース(シリンダ)40を更に有する。この外装ケース40の内径は、筒体11の直径よりも大きい。
【0038】
上述したように、第1の実施形態では、ヘリカルアンテナ部分20Hを構成する第1乃至第4のヘリカル導体21〜24から成る第1のアンテナパターンおよびループアンテナ部分20Lを構成するループ導体28から成る第2のアンテナパターンが、筒体11の内周面20−1に形成されているので、第1及び第2のアンテナパターンと外装ケース40の内壁とが直接接触することはない。従って、ポール型アンテナ装置10のアンテナ特性が外装ケース40の影響を受けるのを防止することができる。また、シールド部材として働くグランドパターン27がフェーズシフタパターン25の外側に配置されるので、ポール型アンテナ装置10のアンテナ特性が人体の影響を受けるのを防止することができる。その結果、第1の実施形態に係るポール型アンテナ装置10は、使用中においても所望のアンテナ特性を得ることができる。
【0039】
図示の実施形態では、図3に示すように、アンテナパターン部分20Aの先端部に第1の環状クッション材51が巻かれている。また、この第1の環状クッション材51の直下に第2の環状クッション材52がアンテナパターン部分20Aに巻かれている。第2の環状クッション材52の厚さは、筒体11と外装ケース40との間の隙間より若干厚めである。第1および第2の環状のクッション材51、52は、例えば、発泡ウレタンなどの材料から成る。
【0040】
このように、アンテナパターン部分20Aの先端部に第1の環状クッション材51を巻くことにより、アンテナパターン部分20Aの先端部の誘電率を変動させることができ、それにより、ポール型アンテナ装置10のアンテナ周波数特性を調整することが可能となる。従って、第1の環状クッション材51の厚さ、太さを変更することにより、ポール型アンテナ装置10のアンテナ周波数特性を変更することが可能となる。
【0041】
一方、第2の環状クッション材52は、外装ケース40の内壁とアンテナパターン部分20Aとの間のクッション的な役割を果たし、外装ケース40の内壁とアンテナパターン部分20Aとの間の隙間を一定に保つことができる。これにより、外装ケース40に対するアンテナパターン部分20Aの極端な傾きを防ぐことができるので、ポール型アンテナ装置10の指向性のばらつきを抑制することが可能となる。ここで、上述したように、第2の環状クッション材52の厚さがアンテナパターン部分20Aと外装ケース40の内壁との間の隙間より若干厚いので、第2の環状クッション材52は外装ケース40に圧入されることになる。この結果、外装ケース40の内壁とアンテナパターン部分20Aとの間の距離を一定に保つことができる。
【0042】
ポール型アンテナ装置10は、基板32を備える。基板32上には低雑音増幅器(図示せず)などの電子部品が搭載されている。低雑音増幅器はフェーズシフタパターン25の出力端子25aとケーブル31とに接続される。
【0043】
ループアンテナ部分20Lのループ導体28及びヘリカルアンテナ部分20Hの4本の導体21〜24で受信された複数の衛星波(円偏波)は、フェーズシフタパターン25によってそれらの位相をシフトすることにより互いに位相を一致させて(調整して)合成された後、低雑音増幅器(LNA)によって増幅され、ケーブル31を介して受信機本体(図示せず)へ送られる。
【0044】
図1に加えて図3乃至図5をも参照して、ポール型アンテナ装置10は、ケーブル31に摺動自在に取り付けられたブーツ33と、外装ケース40の下端に後述するように取り付けられるアンダーキャップ(ボトムカバー)34と、防水用のパッキン35とを更に備える。ブーツ33はポリウレタン製である。
【0045】
アンダーキャップ34にブーツ33とパッキン35とを入れ、そこに基板32を挿入することにより、ケーブル31側の防水機能と基板固定機能とを持たせている。
【0046】
図6はアンダーキャップ34の断面図である。図6に示されるように、アンダーキャップ34は、その上端側に、基板32の両側端部321が挿入される切り欠き341を持つ。アンダーキャップ34には、基板32圧入の際に戻らないよう、爪342が付けられている。また、アンダーキャップ34の下端には、ブーツ33が貫通される開口343が空けられている。
【0047】
一方、基板32は、その両側面から側方へ突出した両側端部321を有する。この基板32の両側端部321には、図3に示されるように、アンダーキャップ34の爪342に収まるような切り欠き321aが形成されている。
【0048】
図7はパッキン35を示す図で、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は(B)のB−B断面図である。図6及び図7に示されるように、パッキン35の外径D2は、アンダーキャップ34の内径D1よりもわずかに大きい。パッキン35には、基板32の下端部322が挿入される切り欠き351が形成されている。
【0049】
このように、アンダーキャップ34にパッキン35が圧入され、基板32でその圧入状態が固定されることにより、ケーブル31側の防水機能を持たせている。その際、基板32も外装ケース40内で固定されるので、基板32の位置決めもできる。
【0050】
図8を参照すると、外装ケース40は、シリンダ部41とトップカバー42とから構成される。シリンダ部41の内壁には、基板31の両側端部321が挿入される溝411が切られている。
【0051】
図9はポール型アンテナ装置10の外観を示す正面図であり、図10はポール型アンテナ装置10の断面図を示す。トップカバー42はシリンダ部41の上端に超音波溶着によって接合されている。ボトムカバー(アンダーキャップ)34は、シリンダ部41の下端に超音波溶着によって接合されている。従って、ポール型アンテナ装置10はネジを使用しない構造なので、部品点数を削減することができる。
【0052】
図11乃至図14を参照して、基板32と筒体11との配置関係について説明する。筒体11は、基板32の両側端部321が挿入される切り欠き11aを有する。
【0053】
図13に示されるように、低雑音増幅器(LNA)61を搭載した基板32の一部は、筒体11の内部に挿入される。筒体11に形成された出力端子25aは、図14に示されるように、半田62により基板32(低雑音増幅器61)と接続される。
【0054】
このように、基板32の一部を筒体11の内部に挿入するので、ポール型アンテナ装置10の長手方向のサイズを短縮することができる。又、筒体11と基板32(低雑音増幅器61)との間の接続を、可撓性の絶縁フィルム部材20に形成した出力端子25aを用いて行うので、従来のポール型アンテナ装置において必要であった特別な(専用の)ターミナル部品が不要となり、部品点数を削減することができる。
【0055】
図15に第1の実施形態に係るアンテナ装置10の交差偏波特性(放射パターン)を示す。図15において、(A)は第1の実施形態に係るアンテナ装置10の透視斜視図であり、(B)はアンテナ装置10の放射パターンを示す図である。図15(B)に示されるように、アンテナ装置10の放射パターンは、左旋円偏波ELの放射パターンと右旋円偏波ERの放射パターンとから成る。
【0056】
参考例として、図16にループアンテナのみから成る従来のアンテナ装置の交差偏波特性(放射パターン)を示す。図16において、(A)は従来のアンテナ装置の透視斜視図であり、(B)は従来のアンテナ装置の放射パターンを示す図である。図16(B)に示されるように、従来のアンテナ装置の放射パターンも、左旋円偏波ELの放射パターンと右旋円偏波ERの放射パターンとから成る。
【0057】
図16(B)に示されるように、従来のアンテナ装置においては、左旋円偏波ELが上方向に放射されており、この左旋円偏波ELと実質的に同じ強さの右旋円偏波ERが下方向に放射されているのが分かる。
【0058】
これに対して、図15(B)に示されるように、第1の実施形態に係るアンテナ装置10においては、上方向に放射される左旋円偏波ELの放射強度が強くなっており、下方向に放射される右旋円偏波ERの放射強度が弱くなっていることが分かる。すなわち、第1の実施形態に係るアンテナ装置10では、主に上方向に電波が放射される。したがって、中心軸と直交する方向へ延在する接地導体パターンが無くとも、アンテナ装置10のアンテナ放射特性を改善できる。換言すれば、ループアンテナとヘリカルアンテナとを組合せることによって、接地導体パターンが無いときのアンテナ放射特性を改善することができる。
【0059】
また、従来のアンテナ装置では、図16(A)に示されるように、ループ導体28に対して4本の電磁結合線がギャップを介して結合されていたのに対して、第1の実施形態に係るアンテナ装置10は、図15(A)に示されるように、ループ導体28に対して第1乃至第4のヘリカル導体21〜24がストレート接続されるので、インピーダンスマッチングを容易にとることが可能となる。
【0060】
尚、アンテナ装置10のアンテナ放射特性は、ループ導体28の径や第1乃至第4のヘリカル導体21〜24の角度を設計変更することにより、ある程度自由に変えることができる。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、図17、図18を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0062】
第2の実施形態によるポール型アンテナ装置は、外形形状は図1に示されるものと同じであり、絶縁フィルム部材に形成される導体パターンの形状が異なるだけである。それゆえ、第1の実施形態によるポール型アンテナ装置と同じ部分には同一番号を付し、詳しい説明は省略する。
【0063】
第2の実施形態によるポール型アンテナ装置10も、図17に示されるような可撓性の絶縁フィルム部材20を中心軸の回りに筒状に丸めて形成された筒体11を有する。図17において、(A)は絶縁フィルム部材20の第1の面20−1を示し、(B)は絶縁フィルム部材20の第2の面20−2を示す。絶縁フィルム部材20は、低損失誘電体材料、例えばテフロン(登録商標)系材料によるフィルムを用いて作製され、第1の面20−1側にはアンテナパターン部分20Aとフェーズシフタ部分20Pとを有する。アンテナパターン部分20Aは、実質的に平行四辺形の形状をしており、フェーズシフタ部分20Pは、実質的に矩形の形状をしている。
【0064】
アンテナパターン部分20Aは、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で螺旋状に延在して形成されたヘリカルパターン部分20Hと、筒体11の上端部においてヘリカルパターン部分20Hの端部と接続されるループパターン部分20Lとから構成されている。
【0065】
絶縁フィルム部材20を第1の面20−1が内周面となるように丸めたうえでその一対の側辺間を接続することにより、図1に示されるものと同様の筒体11が形成される。一対の側辺間の接続は、例えば、両面接着テープや接着剤、半田付けなどによって行われる。
【0066】
ヘリカルアンテナ部分20Hの第1の面20−1上には、第1乃至第4のヘリカル導体21’,22’,23’,24’から成る第1のアンテナパターンが形成されている。第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の各々は、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で4回反対方向へ屈曲した状態で、側辺と平行に延在して形成されている。特に、第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の各々において側辺と平行に延在している5本の導体パターンのうちの少なくとも1本、ここではフェーズシフタパターン25’に接続される導体パターンをミアンダ状、つまりジグザグに蛇行させるようにしている。
【0067】
上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11に丸めると、第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の各々は、筒体11の内周面に、ポール型アンテナ装置10の長手方向(中心軸方向)で4回反対方向へ屈曲した状態で、へリックス状に延在して形成されることになる。第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’から成る第1のアンテナパターンはヘリカルアンテナとして働く。
【0068】
このように第2の実施形態では、第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の各々がポール型アンテナ装置10の長手方向で屈曲し、しかも各ヘリカル導体の一部がミアンダ状に形成されているので、導体長を長くすることができ、ヘリカル導体が屈曲しない場合は勿論のこと、第1の実施形態に比べてもポール型アンテナ装置10の高さを低くすることができる。
【0069】
ループアンテナ部分20Lの第1の面20−1上には、第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の先端(上端)と接続されたループ導体28から成る第2のアンテナパターンが形成されている。このループ導体28から成る第2のアンテナパターンはループアンテナとして働く。
【0070】
フェーズシフタ部分20Pの第1の面20−1上には、上記第1のアンテナパターンと電気的に接続されたフェーズシフタパターン25’が形成されている。従って、上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11に丸めると、筒体11の内周面にフェーズシフタパターン25’が形成されることになる。このフェーズシフタパターン25’は移相器として働く。
【0071】
フェーズシフタ部分20Pの第2の面20−2上には、グランドパターン27が形成されている。すなわち、グランドパターン27は、フェーズシフタパターン25’が形成された面とは反対側の面に形成されている。従って、上述したように絶縁フィルム部材20を筒体11として丸めると、筒体11の外周面で、且つフェーズシフタパターン25’が形成された部分と反対側の面にグランドパターン27が形成されることになる。このグランドパターン27は、フェーズシフタパターン25’を覆うように設けられ、シールド部材として働く。
【0072】
図17に示された部分を除く部分は、第1の実施形態と同じである。
【0073】
上述したように、第2の実施形態でも、ヘリカルアンテナ部分20Hを構成する第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’から成る第1のアンテナパターンおよびループアンテナ部分20Lを構成するループ導体28から成る第2のアンテナパターンが、筒体11の内周面20−1に形成されているので、第1及び第2のアンテナパターンと外装ケース40の内壁とが直接接触することはない。従って、ポール型アンテナ装置10のアンテナ特性が外装ケース40の影響を受けるのを防止することができる。また、シールド部材として働くグランドパターン27がフェーズシフタパターン25’の外側に配置されるので、ポール型アンテナ装置10のアンテナ特性が人体(手、指等)の影響を受けるのを防止することができる。その結果、第2の実施形態に係るポール型アンテナ装置10も、使用中においても所望のアンテナ特性を得ることができる。加えて、高誘電体であるセラミックを用いた小型化ではないため誘電体損失が小さく、高利得のアンテナ装置を安価で提供できる。
【0074】
従来のアンテナ装置では、図16(A)に示されるように、ループ導体28に対して4本の電磁結合線がギャップを介して結合されていたのに対して、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置10は、図17(A)に示されるように、ループ導体28に対して第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’がストレート接続されるので、インピーダンスマッチングを容易にとることが可能となる。
【0075】
図17において、第1の実施形態で詳しく説明したように、絶縁フィルム部材20におけるフェーズシフタ部分20Pの下側の一部を、基板32の両側端部321を受ける切り欠き11aを形成するために下方に突出させている。しかし、このような切り欠き11aは無くても良い。つまり、フェーズシフタ部分20Pの下側を、図17(A)、(B)に一点鎖線で示すように形成しても良い。この場合、基板32(低雑音増幅器61)と接続するための出力端子は25a’で示す箇所となる。つまり、フェーズシフタ部分20Pの下側の一部をわずかに下方に突出させ、この突出部まで延びたフェーズシフタパターン25’の端部を出力端子25a’として基板32上の低雑音増幅器61と接続する。
【0076】
尚、第2の実施形態によるアンテナ装置10においても、そのアンテナ放射特性は、ループ導体28の径や第1乃至第4のヘリカル導体21’〜24’の角度を設計変更することにより、ある程度自由に変えることができる。
【0077】
以上、本発明を2つの実施形態によって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されないのは勿論である。例えば、上記実施形態では、第1のアンテナパターンとして筒体の内周面に形成された4本のヘリカル導体を用いているが、少なくとも1本のヘリカル導体から成って良い。ヘリカル導体が1本の場合には、移相器(フェーズシフタ部分)は不要である。上記実施形態では、第1のアンテナパターンを構成する各ヘリカル導体がポール型アンテナ装置の長手方向(中心軸方向)で2回及び4回反対方向へ屈曲しているが、少なくとも1回反対方向へ屈曲するもので良い。上記実施形態では、シールド部材として筒体の外周面に形成されたグランドパターンを用いているが、シールド部材はこれに限定されず、フェーズシフタパターンを覆うように設けられていれば良い。例えば、シールド部材は、外装ケース40の内壁で、且つフェーズシフタパターンが形成された場所と対応する面に形成された導体パターンであっても良いし、外装ケース40の外壁で、且つフェーズシフタパターンが形成された場所と対応する面に張られたシールド効果のあるテープであっても良い。
【0078】
また、上記実施形態において説明したポール型アンテナ装置は、デジタルラジオ受信機用のパーソナルタイプで小型のアンテナ装置に適しているが、これに限定される訳ではなく、GPS受信機用のアンテナ装置や、他の衛星波、地上波を受信するための移動体通信用のアンテナ装置としても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るポール型アンテナ装置を示す概略分解図である。
【図2】図1に示したポール型アンテナ装置に使用されるアンテナパターン部分及びフェーズシフタ部分の展開図で、(A)は第1の面(内周面)を示す平面図、(B)は第2の面(外周面)を示す平面図である。
【図3】図1に示したポール型アンテナ装置を、外装ケースを除いて示す、分解背面図である。
【図4】図3に示したポール型アンテナ装置を、筒体を除いて示す、分解背面図である。
【図5】図4に示したポール型アンテナ装置の分解側面図である。
【図6】図1に示したポール型アンテナ装置に使用されるアンダーキャップの断面図である。
【図7】図1に示したポール型アンテナ装置に使用されるパッキンを示す図で、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は(B)のB−B断面図である。
【図8】図1に示したポール型アンテナ装置の分解正面断面図である。
【図9】図1に示したポール型アンテナ装置の外観を示す正面図である。
【図10】図1に示したポール型アンテナ装置の正面断面図を示す。
【図11】図1に示したポール型アンテナ装置に使用される、基板と筒体との配置関係を説明するための分解側面図である。
【図12】図11に示した基板と筒体との配置関係を説明するための分解背面図である。
【図13】図11に示した基板と筒体とを組み付けた状態を示す背面図である。
【図14】図13の丸で囲んだ部分の拡大図である。
【図15】本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の交差偏波特性(放射パターン)を説明するための図で、(A)は本発明に係るアンテナ装置の透視斜視図であり、(B)は本発明に係るアンテナ装置の放射パターンを示す図である。
【図16】従来のアンテナ装置の交差偏波特性(放射パターン)を説明するための図で、(A)は従来のアンテナ装置の透視斜視図であり、(B)は従来のアンテナ装置の放射パターンを示す図である。
【図17】本発明の第2の実施形態に係るポール型アンテナ装置に使用されるアンテナパターン部分及びフェーズシフタ部分の展開図で、(A)は第1の面(内周面)を示す平面図、(B)は第2の面(外周面)を示す平面図である。
【図18】図17に示した導体パターンを持つ絶縁フィルム部材を丸めて筒状にした場合の外観を示した図である。
【符号の説明】
【0080】
10 ポール型アンテナ装置
11 筒体
20 可撓性の絶縁フィルム部材
20A アンテナパターン部分
20H ヘリカルアンテナ部分
20L ループアンテナ部分
20P フェーズシフタ部分
20−1 第1の面(内周面)
20−2 第2の面(外周面)
21〜24、21’〜24’ ヘリカル導体(第1のアンテナパターン)
25、25’ フェーズシフタパターン(移相器)
27 グランドパターン(シールド部材)
28 ループ導体(第2のアンテナパターン)
40 外装ケース(シリンダ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の絶縁フィルム部材を中心軸の回りで筒状に形成した筒体と、該筒体の周面に形成された複数本の導体から成るアンテナパターンとを有するアンテナ装置において、
前記アンテナパターンは、前記中心軸方向で螺旋状に延在して形成されたヘリカルパターンと、前記筒体の上端部において前記ヘリカルパターンの端部と接続されるループパターンとから構成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記ヘリカルパターンは、前記中心軸方向で少なくとも1回反対方向へ屈曲した屈曲部を有する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記筒体の周面に、前記ヘリカルパターンと電気的に接続されて形成されたフェーズシフタパターンを更に有する、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナパターンと前記フェーズシフタパターンは、前記筒体の内周面に形成されており、
前記筒体の外周面で、且つ前記フェーズシフタパターンが形成された場所と対応する面に形成されたグランドパターンを更に有する、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記筒体を覆う筒状の外装ケースを更に有する、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記ヘリカルパターンは、前記螺旋状に延在する部分の少なくとも一部がミアンダ状にされていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項1】
可撓性の絶縁フィルム部材を中心軸の回りで筒状に形成した筒体と、該筒体の周面に形成された複数本の導体から成るアンテナパターンとを有するアンテナ装置において、
前記アンテナパターンは、前記中心軸方向で螺旋状に延在して形成されたヘリカルパターンと、前記筒体の上端部において前記ヘリカルパターンの端部と接続されるループパターンとから構成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記ヘリカルパターンは、前記中心軸方向で少なくとも1回反対方向へ屈曲した屈曲部を有する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記筒体の周面に、前記ヘリカルパターンと電気的に接続されて形成されたフェーズシフタパターンを更に有する、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナパターンと前記フェーズシフタパターンは、前記筒体の内周面に形成されており、
前記筒体の外周面で、且つ前記フェーズシフタパターンが形成された場所と対応する面に形成されたグランドパターンを更に有する、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記筒体を覆う筒状の外装ケースを更に有する、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記ヘリカルパターンは、前記螺旋状に延在する部分の少なくとも一部がミアンダ状にされていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−60617(P2007−60617A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369430(P2005−369430)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】
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