アンテナ装置
【課題】交差偏波の主ビームを主偏波の主ビーム方向とは幾何光学的に異なる方向に向けて、主偏波の主ビーム方向の近傍では、交差偏波の主ビームのレベルを低減することができるアンテナ装置を得ることを目的とする。
【解決手段】N個の反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法が、一次放射器1から当該反射素子5nまでの距離dnと所望方向のビーム走査位相θb,φbとから決まる反射位相φに対応する寸法Lynに設定され、N個の反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法が、同一の寸法L0に設定されている
【解決手段】N個の反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法が、一次放射器1から当該反射素子5nまでの距離dnと所望方向のビーム走査位相θb,φbとから決まる反射位相φに対応する寸法Lynに設定され、N個の反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法が、同一の寸法L0に設定されている
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一次放射器から放射された電波を反射する平面反射鏡において、主偏波のビーム方向付近における交差偏波レベルの低減を図ることが可能なアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛星搭載用アンテナとして、パラボラアンテナやフェーズドアレーアンテナが知られている。
近年では、パラボラアンテナと比較して、製造が容易でかつ高利得が期待でき、また、フェーズドアレーアンテナのような高価で重いモジュールを用いずにビーム走査が可能なアンテナとしてリフレクトアレーアンテナが注目を集めている。
【0003】
衛星搭載用アンテナでは、交差偏波レベルを下げることで不要な電波を受信せずに、アンテナ性能や通信品質を向上させることが重要である。
ここで、リフレクトアレーアンテナは、電波を放射する一次放射器と、その一次放射器から放射された電波を反射する平面反射鏡とから構成されているアンテナ装置であり、また、リフレクトアレーアンテナの平面反射鏡は、導体地板の上に誘電体基板が重ねられ、その誘電体基板上に導体パターンである反射素子が複数個配置されて構成されている。
【0004】
一次放射器から放射された電波は、平面反射鏡に並べられている複数の反射素子に反射されて、所望方向にビームが向けられるが、平面反射鏡に並べられている複数の反射素子は、それぞれが特有の反射位相を有している。
平面反射鏡には、一次放射器からの光路長が一定となるような反射位相を有する反射素子が複数個配置されることで、一次放射器から放射された電波のビームが所望方向に向けられる。
【0005】
非特許文献1には、反射素子としてパッチアンテナを使用し、そのパッチアンテナの寸法を適宜変更することで、反射位相を調整する方式が開示されている。
なお、反射素子の寸法を適宜変更することで反射位相を調整する場合、全ての反射素子における主偏波方向及び交差偏波方向の寸法が、同一の寸法に設定されることが一般的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.E.Bialkowski,K.H.Sayidmarie,“Investigations Into Phase Characteristics of a Single Layer Reflectarray Employing Patch or Ring Elements of Variable Size,”IEEE Trans. On Ant. and Propagation,Vol. 56,No. 11,Nov. 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のアンテナ装置は以上のように構成されているので、主偏波の主ビームを所望方向に向けるために反射素子の反射位相を調整する際、全ての反射素子における主偏波方向及び交差偏波方向の寸法が同一の寸法に設定されることに起因して、主偏波と交差偏波が同一の反射位相で平面反射鏡から反射される。そのため、主偏波のみならず、交差偏波も同一の反射位相になるため、主偏波の主ビーム方向ではヌル、主ビーム方向の近傍では高いレベルの交差偏波の主ビームが現れてしまうなどの課題があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、交差偏波の主ビームを主偏波の主ビーム方向とは幾何光学的に異なる方向に向けて、主偏波の主ビーム方向の近傍では、交差偏波の主ビームのレベルを低減することができるアンテナ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るアンテナ装置は、導体地板の上に誘電体基板が重ねられ、その誘電体基板上に導体パターンである反射素子が所定の間隔で複数個配置されることで、平面反射鏡が構成されており、複数の反射素子における主偏波方向の寸法が、一次放射器から当該反射素子までの距離と所望方向のビーム走査位相とから決まる反射位相に対応する寸法に設定され、複数の反射素子における交差偏波方向の寸法が、同一の寸法に設定されているようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、導体地板の上に誘電体基板が重ねられ、その誘電体基板上に導体パターンである反射素子が所定の間隔で複数個配置されることで、平面反射鏡が構成されており、複数の反射素子における主偏波方向の寸法が、一次放射器から当該反射素子までの距離と所望方向のビーム走査位相とから決まる反射位相に対応する寸法に設定され、複数の反射素子における交差偏波方向の寸法が、同一の寸法に設定されているように構成したので、交差偏波の主ビームが主偏波の主ビーム方向とは幾何光学的に異なる方向に向けられるようになり、その結果、主偏波の主ビーム方向の近傍では、交差偏波の主ビームのレベルを低減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1によるアンテナ装置を示す構成図である。
【図2】n番目の反射素子5nが配置されている位置の座標(xn,yn)とn番目の反射素子5nによる主偏波の主ビーム方向8を示す説明図である。
【図3】一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる交差偏波方向の位相分布を示す説明図である。
【図4】一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる主偏波方向の位相分布を示す説明図である。
【図5】反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図6】図2の平面反射鏡2におけるyz面内の放射特性を示す説明図である。
【図7】交差偏波方向7の寸法を固定長とした場合の交差偏波方向7の位相分布を示す説明図である。
【図8】任意の幅Wを有するリング状の反射素子5を示す斜視図である。
【図9】任意の幅Wを有する2重のリング状の反射素子5を示す斜視図である。
【図10】2つのダイポールを直交させた任意の幅Wを有するクロスダイポールとなる反射素子5を示す斜視図である。
【図11】任意の幅Wのスロットが施された矩形の反射素子5を示す斜視図である。
【図12】図10のクロスダイポールが任意の幅Wを有するリング状の反射素子5を示す斜視図である。
【図13】この発明の実施の形態3によるアンテナ装置を示す構成図である。
【図14】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図15】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図16】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図17】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図18】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図19】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図20】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるアンテナ装置を示す構成図である。
図1において、一次放射器1は電波を放射する機器であり、平面反射鏡2の開口からオフセットさせた位置に配置されている。
図1では、一次放射器1が平面反射鏡2の下側にオフセットされた位置に配置されている例を示しているが、下側に限るものではなく、上側や左側あるいは右側にオフセットされた位置に配置されていてもよい。
一次放射器1が平面反射鏡2の開口からオフセットさせた位置に配置されることで、平面反射鏡2により反射された電波が一次放射器1に重なってしまうなどの状況の発生を防止することができるが、例えば、主偏波の主ビーム方向が一次放射器1に重ならない等の場合には、一次放射器1が平面反射鏡2の開口の前面に配置されていてもよい。この場合、アンテナ装置の設置スペースを小さくすることができる。
【0013】
この実施の形態1では、一次放射器1から放射された電波を平面反射鏡2が反射して、電波のビームを所望方向に向けるアンテナ装置について説明するが、平面反射鏡2が所望方向から到来する電波を一次放射器1に向けて反射するようにしてもよい。
この場合、一次放射器1は、電波を受信する受信機器として作用する。
【0014】
平面反射鏡2は、導体地板3の上に誘電体基板4が重ねられ、その誘電体基板4上に導体パターンである反射素子5が所定の間隔でN個配置されることで構成されている。
以下、N個の反射素子5を区別するために、各々の反射素子の符号を5nとして識別する。n=1,2,・・・,Nである。
反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynについては、一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる反射位相φ、即ち、一次放射器1から反射素子5nまでの距離dnと所望方向のビーム走査位相θb,φbとから決まる反射位相φに対応する寸法L(n)に設定されている。
また、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnについては、一定の反射位相になるように、全ての反射素子5nにおいて同一の寸法L0に設定されている。
なお、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnは固定長(同一の寸法L0)であるが、図1の例では、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnが電波の略半波長に設定されている。
【0015】
図2はn番目の反射素子5nが配置されている位置の座標(xn,yn)とn番目の反射素子5nによる主偏波の主ビーム方向8を示す説明図である。
なお、主偏波の主ビーム方向8は所望方向に調整されており、所望方向のビーム走査位相はθb,φbで表される。
ただし、図2では、図面の簡略化のため、反射素子5nの記述を省略している。
【0016】
次に動作について説明する。
一次放射器1から放射された電波は、平面反射鏡2の誘電体基板4上に配置されているN個の反射素子5nに反射されて、ビームが所望方向に向けられる(主偏波の主ビーム方向8が所望方向に向けられる)。
【0017】
この実施の形態1では、主偏波の主ビーム方向8を所望方向に向けるために、所定の間隔で配置されているN個の反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynと、交差偏波方向7の寸法Lxnとを以下のように設定している。
ただし、この実施の形態1では、全ての反射素子5nにおいて、主偏波方向6の寸法Lynと交差偏波方向7の寸法Lxnとが同一の寸法に設定されることに起因する不具合(主偏波の主ビーム方向ではヌル、主ビーム方向の近傍では高いレベルの交差偏波の主ビームが現れてしまう不具合)の発生を防止するため、全ての反射素子5nにおいて、主偏波方向6の寸法Lynと交差偏波方向7の寸法Lxnとが同一の寸法に設定されないようにしている。
【0018】
(1)反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lyn
まず、平面反射鏡2の誘電体基板4上に所定の間隔で配置されるN個の反射素子5nについて、平面反射鏡2における反射素子5nの配置位置(x座標、y座標)である座標(xn,yn)を特定する。
次に、各々の反射素子5nの配置位置と一次放射器1の配置位置から、一次放射器1から各々の反射素子5nまでの距離dnを特定する。
次に、主偏波の主ビーム方向8を向ける方向(所望方向)を表すビーム走査位相θb,φbを特定する。
【0019】
上記のようにして、各々の反射素子5nが配置される座標(xn,yn)、一次放射器1からの距離dn及びビーム走査位相θb,φbを特定すると、これらを下記の式(1)に代入することで、一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる各々の反射素子5nの反射位相φを算出する。
φ=k0dn−k0(xnsinθbcosφb+ynsinθbsinφb)
(1)
ただし、k0は自由空間における波数である。
【0020】
ここで、図3は一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる交差偏波方向の位相分布を示す説明図である。
また、図4は一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる主偏波方向の位相分布を示す説明図である。
【0021】
上記のようにして、反射素子5nの反射位相φを算出すると、その反射位相φに対応する寸法L(n)を反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynとして設定する。
図5は反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図5から明らかなように、反射素子5nの反射位相φから反射素子5nの寸法を一意に決定することができる。換言すると、反射素子5nの寸法を変更すれば、反射素子5nの反射位相φを調整することができる。
したがって、具体的には、図5に示すような対応関係を予め用意し、その対応関係を参照して、反射素子5nの反射位相φに対応する寸法L(n)を特定し、その寸法L(n)を反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynとして設定すればよい。
【0022】
(2)反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxn
反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnについては、一定の反射位相になるように、全ての反射素子5nにおいて同一の寸法L0に設定する。
具体的には、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnを電波の略半波長に設定する。
【0023】
反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynと、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnとを上記のようにして設定して、それらの反射素子5nを平面反射鏡2の誘電体基板4上に所定の間隔で配置すると、一次放射器1から放射された電波が平面反射鏡2に反射されて、その電波のビームが所望方向に向けられる。
【0024】
ここで、図6は図2の平面反射鏡2におけるyz面内の放射特性を示す説明図である。
図6において、Aは主偏波のビームの放射特性を表し、Bは主偏波方向6の寸法と交差偏波方向7の寸法とを同一寸法に設定した場合の交差偏波のビームの放射特性を表している。
また、Cは交差偏波方向7の寸法を固定長とした場合の交差偏波のビームの放射特性を表している。
図6から明らかなように、主偏波方向6の寸法と交差偏波方向7の寸法とを同一寸法に設定した場合、主偏波の主ビーム方向にヌル、その主ビーム方向の近傍に大きいレベルの交差偏波の主ビームが存在することが分かる。
一方、交差偏波方向7の寸法を固定長とした場合、交差偏波の主ビームが主偏波の主ビーム方向に向かないため、交差偏波レベルの低減が可能である。
なお、図7は交差偏波方向7の寸法を固定長とした場合の交差偏波方向7の位相分布を示す説明図である。
図7に示すように、交差偏波方向7の位相分布は一定である。
【0025】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、導体地板3の上に誘電体基板4が重ねられ、その誘電体基板4上に導体パターンである反射素子5nが所定の間隔でN個配置されることで、平面反射鏡2が構成されており、N個の反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法が、一次放射器1から当該反射素子5nまでの距離dnと所望方向のビーム走査位相θb,φbとから決まる反射位相φに対応する寸法Lynに設定され、N個の反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法が、同一の寸法L0に設定されているように構成したので、交差偏波の主ビームが主偏波の主ビーム方向とは幾何光学的に異なる方向に向けられるようになり、その結果、主偏波の主ビーム方向の近傍では、交差偏波の主ビームのレベルを低減することができる効果を奏する。
【0026】
また、この実施の形態1によれば、平面反射鏡2の開口からオフセットさせた位置に一次放射器1が配置されているように構成したので、平面反射鏡2により反射された電波が一次放射器1に重なってしまうなどの状況の発生を防止することができるようになり、ビームを向ける方向の自由度を高めることができる効果を奏する。
【0027】
一方、平面反射鏡2の開口の前面に一次放射器1が配置されているように構成した場合、アンテナ装置の設置スペースを小さくすることができる効果を奏する。
【0028】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、各々の反射素子5nの形状が矩形であるものを示したが、反射素子5nの形状は矩形であるものに限るものではなく、例えば、図8〜図12に示すような形状であってもよい。
図8〜図12に示すような形状であれば、主偏波方向6の寸法と交差偏波方向7の寸法を独立に調整することが可能であるため、主偏波と交差偏波の反射位相を個別に調整することができる。
【0029】
具体的には、図8は任意の幅Wを有するリング状の反射素子5を示し、図9は任意の幅Wを有する2重のリング状の反射素子5を示している。
また、図10は2つのダイポールを直交させた任意の幅Wを有するクロスダイポールとなる反射素子5を示している。
さらに、図11は任意の幅Wのスロットが施された矩形の反射素子5を示し、図12は図10のクロスダイポールが任意の幅Wを有するリング状の反射素子5を示している。
なお、図8〜図12に示す反射素子5の主偏波方向6の寸法Lyn及び交差偏波方向7の寸法Lxnの決定方法は、上記実施の形態1と同様である。
【0030】
実施の形態3.
図13はこの発明の実施の形態3によるアンテナ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態1,2では、N個の反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法が、同一の寸法L0に設定されているものを示したが、当該反射素子5nが平面反射鏡2に配置されている位置(xn,yn)の反射位相に対応する寸法Lx’nに設定されているようにしてもよい。
具体的には、以下の通りである。
【0031】
反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynについては、上記実施の形態1,2と同様に、一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる反射位相φ、即ち、一次放射器1から反射素子5nまでの距離dnと所望方向のビーム走査位相θb,φbとから決まる反射位相φに対応する寸法L(n)に設定される。
一方、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nについては、当該反射素子5nが平面反射鏡2に配置されている位置(xn,yn)の反射位相に対応する寸法に設定される。
【0032】
ここで、図14は平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図14では、平面反射鏡2の開口中心部及び開口端部の反射位相φと比べて、開口中心部と開口端部の間の反射位相φが大きい位相分布の例を示している。
反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係が図5に示すような対応関係であれば、開口中心部及び開口端部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nは、開口中心部と開口端部の間に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nより短いものとなる。
【0033】
即ち、開口中心部の反射位相φは小さいため、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが短くなるように設定するが、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが極大になるまでは徐々に大きくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に長くなるように設定する。
その後、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが徐々に小さくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に短くなるように設定する。
なお、図13に示している反射素子5nの交差偏波方向7の寸法Lx’nは、図14が示す反射位相φに対応する寸法となっている。
【0034】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、導体地板3の上に誘電体基板4が重ねられ、その誘電体基板4上に導体パターンである反射素子5nが所定の間隔でN個配置されることで、平面反射鏡2が構成されており、N個の反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法が、一次放射器1から当該反射素子5nまでの距離dnと所望方向のビーム走査位相θb,φbとから決まる反射位相φに対応する寸法Lynに設定され、N個の反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法が、当該反射素子5nが平面反射鏡2に配置されている位置(xn,yn)の反射位相φに対応する寸法Lx’nに設定されているように構成したので、交差偏波の主ビームが主偏波の主ビーム方向とは幾何光学的に異なる方向に向けられるようになり、その結果、主偏波の主ビーム方向の近傍では、交差偏波の主ビームのレベルを低減することができる効果を奏する。
【0035】
また、この実施の形態3によれば、平面反射鏡2の開口中心部及び開口端部の反射位相と比べて、開口中心部と開口端部の間の反射位相が大きい位相分布である場合、開口中心部及び開口端部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法が、開口中心部と開口端部の間に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法より短くなるように設定したので、主偏波の主ビームを所望方向に向けることができる効果を奏する。
【0036】
なお、この実施の形態3では、平面反射鏡2における反射位相の位相分布が、図14に示すように、開口中心部と開口端部の間が山形状をなして、開口中心部が谷形状をなしているものを示したが、開口中心部と開口端部の間が山形状をなして、開口中心部が谷形状をなしている図15に示すような位相分布が適用されてもよい。
ただし、図15の場合、開口中心部の左右の位相分布が半円で表されているため、左右の半円の中心で反射位相が大きくなり、開口中心部及び開口端部の反射位相が零になっている。
【0037】
実施の形態4.
上記実施の形態3では、平面反射鏡2における反射位相の位相分布φが、開口中心部及び開口端部と比べて、開口中心部と開口端部の間が大きいものを示したが、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も大きく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが小さくなる位相分布が適用されてもよく、上記実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0038】
図16は平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図16では、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も大きく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが小さくなる位相分布の例を示している。
反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係が図5に示すような対応関係であれば、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も長く、開口端部に近い位置に配置される反射素子5nほど、交差偏波方向7の寸法Lx’nが短いものとなる。
【0039】
即ち、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も大きいため、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も長くなるように設定し、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが徐々に小さくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に短くなるように設定する。
【0040】
なお、この実施の形態4では、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も大きく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが小さくなる位相分布であるものとして、平面反射鏡2における反射位相φの位相分布が正規分布であるものを示したが(図16を参照)、開口中心部の反射位相φが最も大きく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが小さくなる位相分布であるものとして、図17に示すように、平面反射鏡2における反射位相φが線形的に変化するものであってもよい。
【0041】
実施の形態5.
上記実施の形態3では、平面反射鏡2における反射位相の位相分布φが、開口中心部及び開口端部と比べて、開口中心部と開口端部の間が大きいものを示したが、平面反射鏡2における反射位相φの中で、一方の開口端部の反射位相φが最も大きく、他方の開口端部に近い位置ほど反射位相φが線形的に小さくなる位相分布が適用されてもよく、上記実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0042】
図18は平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図18では、平面反射鏡2における反射位相φの中で、一方の開口端部の反射位相φが最も大きく、他方の開口端部に近い位置ほど反射位相φが線形的に小さくなる位相分布の例を示している。
反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係が図5に示すような対応関係であれば、一方の開口端部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も長く、他方の開口端部に近い位置に配置される反射素子5nほど、交差偏波方向7の寸法Lx’nが短いものとなる。
【0043】
即ち、平面反射鏡2における反射位相φの中で、一方の開口端部の反射位相φが最も大きいため、一方の開口端部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も長くなるように設定し、他方の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが線形的に小さくなるため、他方の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に短くなるように設定する。
【0044】
実施の形態6.
上記実施の形態3では、平面反射鏡2における反射位相の位相分布φが、開口中心部及び開口端部と比べて、開口中心部と開口端部の間が大きいものを示したが、平面反射鏡2の開口中心部及び開口端部の反射位相φと比べて、開口中心部と開口端部の間の反射位相φが小さい位相分布が適用されてもよく、上記実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0045】
ここで、図19は平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図19では、平面反射鏡2の開口中心部及び開口端部の反射位相φと比べて、開口中心部と開口端部の間の反射位相φが小さい位相分布の例を示している。
反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係が図5に示すような対応関係であれば、開口中心部及び開口端部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nは、開口中心部と開口端部の間に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nより長いものとなる。
【0046】
即ち、開口中心部の反射位相φは大きいため、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが長くなるように設定するが、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが極小になるまでは徐々に小さくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に短くなるように設定する。
その後、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが徐々に大きくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に長くなるように設定する。
【0047】
実施の形態7.
上記実施の形態3では、平面反射鏡2における反射位相の位相分布φが、開口中心部及び開口端部と比べて、開口中心部と開口端部の間が大きいものを示したが、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も小さく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが大きくなる位相分布が適用されてもよく、上記実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0048】
図20は平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図20では、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も小さく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが大きくなる位相分布の例を示している。
反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係が図5に示すような対応関係であれば、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も短く、開口端部に近い位置に配置される反射素子5nほど、交差偏波方向7の寸法Lx’nが長いものとなる。
【0049】
即ち、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も小さく、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も短くなるように設定し、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが徐々に大きくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に長くなるように設定する。
【0050】
なお、平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係は、図14〜図20のように例示されるが、これに限るものではなく、全ての反射素子5が互いに異なる交差偏波方向7の寸法を有することで、交差偏波の主ビームを散らすことが可能である。
【0051】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 一次放射器、2 平面反射鏡、3 導体地板、4 誘電体基板、5,5n 反射素子、6 主偏波方向、7 交差偏波方向、8 主偏波の主ビーム方向。
【技術分野】
【0001】
この発明は、一次放射器から放射された電波を反射する平面反射鏡において、主偏波のビーム方向付近における交差偏波レベルの低減を図ることが可能なアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛星搭載用アンテナとして、パラボラアンテナやフェーズドアレーアンテナが知られている。
近年では、パラボラアンテナと比較して、製造が容易でかつ高利得が期待でき、また、フェーズドアレーアンテナのような高価で重いモジュールを用いずにビーム走査が可能なアンテナとしてリフレクトアレーアンテナが注目を集めている。
【0003】
衛星搭載用アンテナでは、交差偏波レベルを下げることで不要な電波を受信せずに、アンテナ性能や通信品質を向上させることが重要である。
ここで、リフレクトアレーアンテナは、電波を放射する一次放射器と、その一次放射器から放射された電波を反射する平面反射鏡とから構成されているアンテナ装置であり、また、リフレクトアレーアンテナの平面反射鏡は、導体地板の上に誘電体基板が重ねられ、その誘電体基板上に導体パターンである反射素子が複数個配置されて構成されている。
【0004】
一次放射器から放射された電波は、平面反射鏡に並べられている複数の反射素子に反射されて、所望方向にビームが向けられるが、平面反射鏡に並べられている複数の反射素子は、それぞれが特有の反射位相を有している。
平面反射鏡には、一次放射器からの光路長が一定となるような反射位相を有する反射素子が複数個配置されることで、一次放射器から放射された電波のビームが所望方向に向けられる。
【0005】
非特許文献1には、反射素子としてパッチアンテナを使用し、そのパッチアンテナの寸法を適宜変更することで、反射位相を調整する方式が開示されている。
なお、反射素子の寸法を適宜変更することで反射位相を調整する場合、全ての反射素子における主偏波方向及び交差偏波方向の寸法が、同一の寸法に設定されることが一般的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.E.Bialkowski,K.H.Sayidmarie,“Investigations Into Phase Characteristics of a Single Layer Reflectarray Employing Patch or Ring Elements of Variable Size,”IEEE Trans. On Ant. and Propagation,Vol. 56,No. 11,Nov. 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のアンテナ装置は以上のように構成されているので、主偏波の主ビームを所望方向に向けるために反射素子の反射位相を調整する際、全ての反射素子における主偏波方向及び交差偏波方向の寸法が同一の寸法に設定されることに起因して、主偏波と交差偏波が同一の反射位相で平面反射鏡から反射される。そのため、主偏波のみならず、交差偏波も同一の反射位相になるため、主偏波の主ビーム方向ではヌル、主ビーム方向の近傍では高いレベルの交差偏波の主ビームが現れてしまうなどの課題があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、交差偏波の主ビームを主偏波の主ビーム方向とは幾何光学的に異なる方向に向けて、主偏波の主ビーム方向の近傍では、交差偏波の主ビームのレベルを低減することができるアンテナ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るアンテナ装置は、導体地板の上に誘電体基板が重ねられ、その誘電体基板上に導体パターンである反射素子が所定の間隔で複数個配置されることで、平面反射鏡が構成されており、複数の反射素子における主偏波方向の寸法が、一次放射器から当該反射素子までの距離と所望方向のビーム走査位相とから決まる反射位相に対応する寸法に設定され、複数の反射素子における交差偏波方向の寸法が、同一の寸法に設定されているようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、導体地板の上に誘電体基板が重ねられ、その誘電体基板上に導体パターンである反射素子が所定の間隔で複数個配置されることで、平面反射鏡が構成されており、複数の反射素子における主偏波方向の寸法が、一次放射器から当該反射素子までの距離と所望方向のビーム走査位相とから決まる反射位相に対応する寸法に設定され、複数の反射素子における交差偏波方向の寸法が、同一の寸法に設定されているように構成したので、交差偏波の主ビームが主偏波の主ビーム方向とは幾何光学的に異なる方向に向けられるようになり、その結果、主偏波の主ビーム方向の近傍では、交差偏波の主ビームのレベルを低減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1によるアンテナ装置を示す構成図である。
【図2】n番目の反射素子5nが配置されている位置の座標(xn,yn)とn番目の反射素子5nによる主偏波の主ビーム方向8を示す説明図である。
【図3】一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる交差偏波方向の位相分布を示す説明図である。
【図4】一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる主偏波方向の位相分布を示す説明図である。
【図5】反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図6】図2の平面反射鏡2におけるyz面内の放射特性を示す説明図である。
【図7】交差偏波方向7の寸法を固定長とした場合の交差偏波方向7の位相分布を示す説明図である。
【図8】任意の幅Wを有するリング状の反射素子5を示す斜視図である。
【図9】任意の幅Wを有する2重のリング状の反射素子5を示す斜視図である。
【図10】2つのダイポールを直交させた任意の幅Wを有するクロスダイポールとなる反射素子5を示す斜視図である。
【図11】任意の幅Wのスロットが施された矩形の反射素子5を示す斜視図である。
【図12】図10のクロスダイポールが任意の幅Wを有するリング状の反射素子5を示す斜視図である。
【図13】この発明の実施の形態3によるアンテナ装置を示す構成図である。
【図14】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図15】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図16】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図17】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図18】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図19】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【図20】平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるアンテナ装置を示す構成図である。
図1において、一次放射器1は電波を放射する機器であり、平面反射鏡2の開口からオフセットさせた位置に配置されている。
図1では、一次放射器1が平面反射鏡2の下側にオフセットされた位置に配置されている例を示しているが、下側に限るものではなく、上側や左側あるいは右側にオフセットされた位置に配置されていてもよい。
一次放射器1が平面反射鏡2の開口からオフセットさせた位置に配置されることで、平面反射鏡2により反射された電波が一次放射器1に重なってしまうなどの状況の発生を防止することができるが、例えば、主偏波の主ビーム方向が一次放射器1に重ならない等の場合には、一次放射器1が平面反射鏡2の開口の前面に配置されていてもよい。この場合、アンテナ装置の設置スペースを小さくすることができる。
【0013】
この実施の形態1では、一次放射器1から放射された電波を平面反射鏡2が反射して、電波のビームを所望方向に向けるアンテナ装置について説明するが、平面反射鏡2が所望方向から到来する電波を一次放射器1に向けて反射するようにしてもよい。
この場合、一次放射器1は、電波を受信する受信機器として作用する。
【0014】
平面反射鏡2は、導体地板3の上に誘電体基板4が重ねられ、その誘電体基板4上に導体パターンである反射素子5が所定の間隔でN個配置されることで構成されている。
以下、N個の反射素子5を区別するために、各々の反射素子の符号を5nとして識別する。n=1,2,・・・,Nである。
反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynについては、一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる反射位相φ、即ち、一次放射器1から反射素子5nまでの距離dnと所望方向のビーム走査位相θb,φbとから決まる反射位相φに対応する寸法L(n)に設定されている。
また、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnについては、一定の反射位相になるように、全ての反射素子5nにおいて同一の寸法L0に設定されている。
なお、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnは固定長(同一の寸法L0)であるが、図1の例では、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnが電波の略半波長に設定されている。
【0015】
図2はn番目の反射素子5nが配置されている位置の座標(xn,yn)とn番目の反射素子5nによる主偏波の主ビーム方向8を示す説明図である。
なお、主偏波の主ビーム方向8は所望方向に調整されており、所望方向のビーム走査位相はθb,φbで表される。
ただし、図2では、図面の簡略化のため、反射素子5nの記述を省略している。
【0016】
次に動作について説明する。
一次放射器1から放射された電波は、平面反射鏡2の誘電体基板4上に配置されているN個の反射素子5nに反射されて、ビームが所望方向に向けられる(主偏波の主ビーム方向8が所望方向に向けられる)。
【0017】
この実施の形態1では、主偏波の主ビーム方向8を所望方向に向けるために、所定の間隔で配置されているN個の反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynと、交差偏波方向7の寸法Lxnとを以下のように設定している。
ただし、この実施の形態1では、全ての反射素子5nにおいて、主偏波方向6の寸法Lynと交差偏波方向7の寸法Lxnとが同一の寸法に設定されることに起因する不具合(主偏波の主ビーム方向ではヌル、主ビーム方向の近傍では高いレベルの交差偏波の主ビームが現れてしまう不具合)の発生を防止するため、全ての反射素子5nにおいて、主偏波方向6の寸法Lynと交差偏波方向7の寸法Lxnとが同一の寸法に設定されないようにしている。
【0018】
(1)反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lyn
まず、平面反射鏡2の誘電体基板4上に所定の間隔で配置されるN個の反射素子5nについて、平面反射鏡2における反射素子5nの配置位置(x座標、y座標)である座標(xn,yn)を特定する。
次に、各々の反射素子5nの配置位置と一次放射器1の配置位置から、一次放射器1から各々の反射素子5nまでの距離dnを特定する。
次に、主偏波の主ビーム方向8を向ける方向(所望方向)を表すビーム走査位相θb,φbを特定する。
【0019】
上記のようにして、各々の反射素子5nが配置される座標(xn,yn)、一次放射器1からの距離dn及びビーム走査位相θb,φbを特定すると、これらを下記の式(1)に代入することで、一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる各々の反射素子5nの反射位相φを算出する。
φ=k0dn−k0(xnsinθbcosφb+ynsinθbsinφb)
(1)
ただし、k0は自由空間における波数である。
【0020】
ここで、図3は一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる交差偏波方向の位相分布を示す説明図である。
また、図4は一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる主偏波方向の位相分布を示す説明図である。
【0021】
上記のようにして、反射素子5nの反射位相φを算出すると、その反射位相φに対応する寸法L(n)を反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynとして設定する。
図5は反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図5から明らかなように、反射素子5nの反射位相φから反射素子5nの寸法を一意に決定することができる。換言すると、反射素子5nの寸法を変更すれば、反射素子5nの反射位相φを調整することができる。
したがって、具体的には、図5に示すような対応関係を予め用意し、その対応関係を参照して、反射素子5nの反射位相φに対応する寸法L(n)を特定し、その寸法L(n)を反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynとして設定すればよい。
【0022】
(2)反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxn
反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnについては、一定の反射位相になるように、全ての反射素子5nにおいて同一の寸法L0に設定する。
具体的には、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnを電波の略半波長に設定する。
【0023】
反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynと、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lxnとを上記のようにして設定して、それらの反射素子5nを平面反射鏡2の誘電体基板4上に所定の間隔で配置すると、一次放射器1から放射された電波が平面反射鏡2に反射されて、その電波のビームが所望方向に向けられる。
【0024】
ここで、図6は図2の平面反射鏡2におけるyz面内の放射特性を示す説明図である。
図6において、Aは主偏波のビームの放射特性を表し、Bは主偏波方向6の寸法と交差偏波方向7の寸法とを同一寸法に設定した場合の交差偏波のビームの放射特性を表している。
また、Cは交差偏波方向7の寸法を固定長とした場合の交差偏波のビームの放射特性を表している。
図6から明らかなように、主偏波方向6の寸法と交差偏波方向7の寸法とを同一寸法に設定した場合、主偏波の主ビーム方向にヌル、その主ビーム方向の近傍に大きいレベルの交差偏波の主ビームが存在することが分かる。
一方、交差偏波方向7の寸法を固定長とした場合、交差偏波の主ビームが主偏波の主ビーム方向に向かないため、交差偏波レベルの低減が可能である。
なお、図7は交差偏波方向7の寸法を固定長とした場合の交差偏波方向7の位相分布を示す説明図である。
図7に示すように、交差偏波方向7の位相分布は一定である。
【0025】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、導体地板3の上に誘電体基板4が重ねられ、その誘電体基板4上に導体パターンである反射素子5nが所定の間隔でN個配置されることで、平面反射鏡2が構成されており、N個の反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法が、一次放射器1から当該反射素子5nまでの距離dnと所望方向のビーム走査位相θb,φbとから決まる反射位相φに対応する寸法Lynに設定され、N個の反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法が、同一の寸法L0に設定されているように構成したので、交差偏波の主ビームが主偏波の主ビーム方向とは幾何光学的に異なる方向に向けられるようになり、その結果、主偏波の主ビーム方向の近傍では、交差偏波の主ビームのレベルを低減することができる効果を奏する。
【0026】
また、この実施の形態1によれば、平面反射鏡2の開口からオフセットさせた位置に一次放射器1が配置されているように構成したので、平面反射鏡2により反射された電波が一次放射器1に重なってしまうなどの状況の発生を防止することができるようになり、ビームを向ける方向の自由度を高めることができる効果を奏する。
【0027】
一方、平面反射鏡2の開口の前面に一次放射器1が配置されているように構成した場合、アンテナ装置の設置スペースを小さくすることができる効果を奏する。
【0028】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、各々の反射素子5nの形状が矩形であるものを示したが、反射素子5nの形状は矩形であるものに限るものではなく、例えば、図8〜図12に示すような形状であってもよい。
図8〜図12に示すような形状であれば、主偏波方向6の寸法と交差偏波方向7の寸法を独立に調整することが可能であるため、主偏波と交差偏波の反射位相を個別に調整することができる。
【0029】
具体的には、図8は任意の幅Wを有するリング状の反射素子5を示し、図9は任意の幅Wを有する2重のリング状の反射素子5を示している。
また、図10は2つのダイポールを直交させた任意の幅Wを有するクロスダイポールとなる反射素子5を示している。
さらに、図11は任意の幅Wのスロットが施された矩形の反射素子5を示し、図12は図10のクロスダイポールが任意の幅Wを有するリング状の反射素子5を示している。
なお、図8〜図12に示す反射素子5の主偏波方向6の寸法Lyn及び交差偏波方向7の寸法Lxnの決定方法は、上記実施の形態1と同様である。
【0030】
実施の形態3.
図13はこの発明の実施の形態3によるアンテナ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態1,2では、N個の反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法が、同一の寸法L0に設定されているものを示したが、当該反射素子5nが平面反射鏡2に配置されている位置(xn,yn)の反射位相に対応する寸法Lx’nに設定されているようにしてもよい。
具体的には、以下の通りである。
【0031】
反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法Lynについては、上記実施の形態1,2と同様に、一次放射器1から平面反射鏡2までの光路長が一定になる反射位相φ、即ち、一次放射器1から反射素子5nまでの距離dnと所望方向のビーム走査位相θb,φbとから決まる反射位相φに対応する寸法L(n)に設定される。
一方、反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nについては、当該反射素子5nが平面反射鏡2に配置されている位置(xn,yn)の反射位相に対応する寸法に設定される。
【0032】
ここで、図14は平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図14では、平面反射鏡2の開口中心部及び開口端部の反射位相φと比べて、開口中心部と開口端部の間の反射位相φが大きい位相分布の例を示している。
反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係が図5に示すような対応関係であれば、開口中心部及び開口端部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nは、開口中心部と開口端部の間に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nより短いものとなる。
【0033】
即ち、開口中心部の反射位相φは小さいため、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが短くなるように設定するが、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが極大になるまでは徐々に大きくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に長くなるように設定する。
その後、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが徐々に小さくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に短くなるように設定する。
なお、図13に示している反射素子5nの交差偏波方向7の寸法Lx’nは、図14が示す反射位相φに対応する寸法となっている。
【0034】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、導体地板3の上に誘電体基板4が重ねられ、その誘電体基板4上に導体パターンである反射素子5nが所定の間隔でN個配置されることで、平面反射鏡2が構成されており、N個の反射素子5nにおける主偏波方向6の寸法が、一次放射器1から当該反射素子5nまでの距離dnと所望方向のビーム走査位相θb,φbとから決まる反射位相φに対応する寸法Lynに設定され、N個の反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法が、当該反射素子5nが平面反射鏡2に配置されている位置(xn,yn)の反射位相φに対応する寸法Lx’nに設定されているように構成したので、交差偏波の主ビームが主偏波の主ビーム方向とは幾何光学的に異なる方向に向けられるようになり、その結果、主偏波の主ビーム方向の近傍では、交差偏波の主ビームのレベルを低減することができる効果を奏する。
【0035】
また、この実施の形態3によれば、平面反射鏡2の開口中心部及び開口端部の反射位相と比べて、開口中心部と開口端部の間の反射位相が大きい位相分布である場合、開口中心部及び開口端部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法が、開口中心部と開口端部の間に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法より短くなるように設定したので、主偏波の主ビームを所望方向に向けることができる効果を奏する。
【0036】
なお、この実施の形態3では、平面反射鏡2における反射位相の位相分布が、図14に示すように、開口中心部と開口端部の間が山形状をなして、開口中心部が谷形状をなしているものを示したが、開口中心部と開口端部の間が山形状をなして、開口中心部が谷形状をなしている図15に示すような位相分布が適用されてもよい。
ただし、図15の場合、開口中心部の左右の位相分布が半円で表されているため、左右の半円の中心で反射位相が大きくなり、開口中心部及び開口端部の反射位相が零になっている。
【0037】
実施の形態4.
上記実施の形態3では、平面反射鏡2における反射位相の位相分布φが、開口中心部及び開口端部と比べて、開口中心部と開口端部の間が大きいものを示したが、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も大きく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが小さくなる位相分布が適用されてもよく、上記実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0038】
図16は平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図16では、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も大きく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが小さくなる位相分布の例を示している。
反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係が図5に示すような対応関係であれば、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も長く、開口端部に近い位置に配置される反射素子5nほど、交差偏波方向7の寸法Lx’nが短いものとなる。
【0039】
即ち、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も大きいため、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も長くなるように設定し、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが徐々に小さくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に短くなるように設定する。
【0040】
なお、この実施の形態4では、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も大きく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが小さくなる位相分布であるものとして、平面反射鏡2における反射位相φの位相分布が正規分布であるものを示したが(図16を参照)、開口中心部の反射位相φが最も大きく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが小さくなる位相分布であるものとして、図17に示すように、平面反射鏡2における反射位相φが線形的に変化するものであってもよい。
【0041】
実施の形態5.
上記実施の形態3では、平面反射鏡2における反射位相の位相分布φが、開口中心部及び開口端部と比べて、開口中心部と開口端部の間が大きいものを示したが、平面反射鏡2における反射位相φの中で、一方の開口端部の反射位相φが最も大きく、他方の開口端部に近い位置ほど反射位相φが線形的に小さくなる位相分布が適用されてもよく、上記実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0042】
図18は平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図18では、平面反射鏡2における反射位相φの中で、一方の開口端部の反射位相φが最も大きく、他方の開口端部に近い位置ほど反射位相φが線形的に小さくなる位相分布の例を示している。
反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係が図5に示すような対応関係であれば、一方の開口端部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も長く、他方の開口端部に近い位置に配置される反射素子5nほど、交差偏波方向7の寸法Lx’nが短いものとなる。
【0043】
即ち、平面反射鏡2における反射位相φの中で、一方の開口端部の反射位相φが最も大きいため、一方の開口端部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も長くなるように設定し、他方の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが線形的に小さくなるため、他方の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に短くなるように設定する。
【0044】
実施の形態6.
上記実施の形態3では、平面反射鏡2における反射位相の位相分布φが、開口中心部及び開口端部と比べて、開口中心部と開口端部の間が大きいものを示したが、平面反射鏡2の開口中心部及び開口端部の反射位相φと比べて、開口中心部と開口端部の間の反射位相φが小さい位相分布が適用されてもよく、上記実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0045】
ここで、図19は平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図19では、平面反射鏡2の開口中心部及び開口端部の反射位相φと比べて、開口中心部と開口端部の間の反射位相φが小さい位相分布の例を示している。
反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係が図5に示すような対応関係であれば、開口中心部及び開口端部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nは、開口中心部と開口端部の間に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nより長いものとなる。
【0046】
即ち、開口中心部の反射位相φは大きいため、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが長くなるように設定するが、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが極小になるまでは徐々に小さくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に短くなるように設定する。
その後、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが徐々に大きくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に長くなるように設定する。
【0047】
実施の形態7.
上記実施の形態3では、平面反射鏡2における反射位相の位相分布φが、開口中心部及び開口端部と比べて、開口中心部と開口端部の間が大きいものを示したが、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も小さく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが大きくなる位相分布が適用されてもよく、上記実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0048】
図20は平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係を示す説明図である。
図20では、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も小さく、開口端部に近い位置ほど反射位相φが大きくなる位相分布の例を示している。
反射素子5nの寸法と反射位相φの対応関係が図5に示すような対応関係であれば、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も短く、開口端部に近い位置に配置される反射素子5nほど、交差偏波方向7の寸法Lx’nが長いものとなる。
【0049】
即ち、平面反射鏡2における反射位相φの中で、開口中心部の反射位相φが最も小さく、開口中心部に配置される反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが最も短くなるように設定し、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射位相φが徐々に大きくなるため、交差偏波方向7の開口端部に近づくにしたがって反射素子5nにおける交差偏波方向7の寸法Lx’nが徐々に長くなるように設定する。
【0050】
なお、平面反射鏡2に配置されている反射素子5nの位置(xn,yn)と反射位相φの対応関係は、図14〜図20のように例示されるが、これに限るものではなく、全ての反射素子5が互いに異なる交差偏波方向7の寸法を有することで、交差偏波の主ビームを散らすことが可能である。
【0051】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 一次放射器、2 平面反射鏡、3 導体地板、4 誘電体基板、5,5n 反射素子、6 主偏波方向、7 交差偏波方向、8 主偏波の主ビーム方向。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を放射する一次放射器と、
上記一次放射器から放射された電波を反射する平面反射鏡とを備えたアンテナ装置において、
上記平面反射鏡は、導体地板の上に誘電体基板が重ねられ、上記誘電体基板上に導体パターンである反射素子が所定の間隔で複数個配置されて構成されており、
上記複数の反射素子における主偏波方向の寸法は、上記一次放射器から当該反射素子までの距離と所望方向のビーム走査位相とから決まる反射位相に対応する寸法に設定され、
上記複数の反射素子における交差偏波方向の寸法は、同一の寸法に設定されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
複数の反射素子における交差偏波方向の寸法が電波の略半波長に設定されていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
電波を放射する一次放射器と、
上記一次放射器から放射された電波を反射する平面反射鏡とを備えたアンテナ装置において、
上記平面反射鏡は、導体地板の上に誘電体基板が重ねられ、上記誘電体基板上に導体パターンである反射素子が所定の間隔で複数個配置されて構成されており、
上記複数の反射素子における主偏波方向の寸法は、上記一次放射器から当該反射素子までの距離と所望方向のビーム走査位相とから決まる反射位相に対応する寸法に設定され、
上記複数の反射素子における交差偏波方向の寸法は、当該反射素子が上記平面反射鏡に配置されている位置の反射位相に対応する寸法に設定されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
平面反射鏡の開口中心部及び開口端部の反射位相と比べて、上記開口中心部と上記開口端部の間の反射位相が大きい位相分布である場合、上記開口中心部及び上記開口端部に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法が、上記開口中心部と上記開口端部の間に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法より短いことを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項5】
平面反射鏡における反射位相の位相分布は、開口中心部と開口端部の間が山形状をなし、上記開口中心部が谷形状をなしていることを特徴とする請求項4記載のアンテナ装置。
【請求項6】
開口中心部及び開口端部の反射位相が零であることを特徴とする請求項4記載のアンテナ装置。
【請求項7】
平面反射鏡における反射位相の中で、開口中心部の反射位相が最も大きく、開口端部に近い位置ほど反射位相が小さくなる位相分布である場合、上記開口中心部に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法が最も長く、上記開口端部に近い位置に配置される反射素子ほど、交差偏波方向の寸法が短いことを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項8】
平面反射鏡における反射位相の位相分布が正規分布であることを特徴とする請求項7記載のアンテナ装置。
【請求項9】
平面反射鏡における反射位相が線形的に変化していることを特徴とする請求項7記載のアンテナ装置。
【請求項10】
平面反射鏡における反射位相の中で、一方の開口端部の反射位相が最も大きく、他方の開口端部に近い位置ほど反射位相が線形的に小さくなる位相分布である場合、一方の開口端部に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法が最も長く、他方の開口端部に近い位置に配置される反射素子ほど、交差偏波方向の寸法が短いことを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項11】
平面反射鏡の開口中心部及び開口端部の反射位相と比べて、上記開口中心部と上記開口端部の間の反射位相が小さい位相分布である場合、上記開口中心部及び上記開口端部に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法が、上記開口中心部と上記開口端部の間に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法より長いことを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項12】
平面反射鏡における反射位相の中で、開口中心部の反射位相が最も小さく、開口端部に近い位置ほど反射位相が大きくなる位相分布である場合、上記開口中心部に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法が最も短く、上記開口端部に近い位置に配置される反射素子ほど、交差偏波方向の寸法が長いことを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項13】
平面反射鏡の開口からオフセットさせた位置に一次放射器が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【請求項14】
平面反射鏡の開口の前面に一次放射器が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【請求項1】
電波を放射する一次放射器と、
上記一次放射器から放射された電波を反射する平面反射鏡とを備えたアンテナ装置において、
上記平面反射鏡は、導体地板の上に誘電体基板が重ねられ、上記誘電体基板上に導体パターンである反射素子が所定の間隔で複数個配置されて構成されており、
上記複数の反射素子における主偏波方向の寸法は、上記一次放射器から当該反射素子までの距離と所望方向のビーム走査位相とから決まる反射位相に対応する寸法に設定され、
上記複数の反射素子における交差偏波方向の寸法は、同一の寸法に設定されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
複数の反射素子における交差偏波方向の寸法が電波の略半波長に設定されていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
電波を放射する一次放射器と、
上記一次放射器から放射された電波を反射する平面反射鏡とを備えたアンテナ装置において、
上記平面反射鏡は、導体地板の上に誘電体基板が重ねられ、上記誘電体基板上に導体パターンである反射素子が所定の間隔で複数個配置されて構成されており、
上記複数の反射素子における主偏波方向の寸法は、上記一次放射器から当該反射素子までの距離と所望方向のビーム走査位相とから決まる反射位相に対応する寸法に設定され、
上記複数の反射素子における交差偏波方向の寸法は、当該反射素子が上記平面反射鏡に配置されている位置の反射位相に対応する寸法に設定されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
平面反射鏡の開口中心部及び開口端部の反射位相と比べて、上記開口中心部と上記開口端部の間の反射位相が大きい位相分布である場合、上記開口中心部及び上記開口端部に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法が、上記開口中心部と上記開口端部の間に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法より短いことを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項5】
平面反射鏡における反射位相の位相分布は、開口中心部と開口端部の間が山形状をなし、上記開口中心部が谷形状をなしていることを特徴とする請求項4記載のアンテナ装置。
【請求項6】
開口中心部及び開口端部の反射位相が零であることを特徴とする請求項4記載のアンテナ装置。
【請求項7】
平面反射鏡における反射位相の中で、開口中心部の反射位相が最も大きく、開口端部に近い位置ほど反射位相が小さくなる位相分布である場合、上記開口中心部に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法が最も長く、上記開口端部に近い位置に配置される反射素子ほど、交差偏波方向の寸法が短いことを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項8】
平面反射鏡における反射位相の位相分布が正規分布であることを特徴とする請求項7記載のアンテナ装置。
【請求項9】
平面反射鏡における反射位相が線形的に変化していることを特徴とする請求項7記載のアンテナ装置。
【請求項10】
平面反射鏡における反射位相の中で、一方の開口端部の反射位相が最も大きく、他方の開口端部に近い位置ほど反射位相が線形的に小さくなる位相分布である場合、一方の開口端部に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法が最も長く、他方の開口端部に近い位置に配置される反射素子ほど、交差偏波方向の寸法が短いことを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項11】
平面反射鏡の開口中心部及び開口端部の反射位相と比べて、上記開口中心部と上記開口端部の間の反射位相が小さい位相分布である場合、上記開口中心部及び上記開口端部に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法が、上記開口中心部と上記開口端部の間に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法より長いことを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項12】
平面反射鏡における反射位相の中で、開口中心部の反射位相が最も小さく、開口端部に近い位置ほど反射位相が大きくなる位相分布である場合、上記開口中心部に配置される反射素子における交差偏波方向の寸法が最も短く、上記開口端部に近い位置に配置される反射素子ほど、交差偏波方向の寸法が長いことを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項13】
平面反射鏡の開口からオフセットさせた位置に一次放射器が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【請求項14】
平面反射鏡の開口の前面に一次放射器が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−93710(P2013−93710A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233990(P2011−233990)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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