説明

アンテナ装置

【課題】小形で且つ半波長ホイップアンテナと同程度の特性を備え、しかも、プラスチックの構体に対しても支障なく使用できるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】接栓基部1の上部に方形状の有限地板2を装着する。接栓基部1には、内側に整合コイル4を設けると共に下側に接栓5を装着し、整合コイル4の下端部を接栓5に電気的に接続する。接栓基部1の上側に碍子6を設け、この碍子6の内側にエレメント基部7を介して半波長の放射素子8を装着する。放射素子8は、短縮型ヘリカル構造のモノポールアンテナを構成しており、素子の直径φを略0.001λ、螺旋のピッチPを略0.001〜0.002λ、螺旋の中心径Dを略0.001〜0.004λ、高さHを略λ/4〜λ/5に設定する。上記放射素子8の外側を覆うように素子カバー9を設け、その下端部をエレメント基部7及び碍子6の部分で保持する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、有限地板を有するヘリカル構造のアンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、携帯無線機や車載用無線機等の小型無線機用アンテナとして、1/4波長ホイップアンテナが一般に知られている。この1/4波長ホイップアンテナを携帯無線機と組み合わせて使用した場合、あまり高い効率が得られないという問題がある。すなわち、1/4波長ホイップアンテナは十分広い接地面積があることを前提として製作され、また、無線機は純抵抗終端で設計調整されることを前提として製作され、それぞれ別々に製作されたものを組み合わせて使用するので、小形携帯無線機が人体に保持された形で使用されることも重なってアンテナのインピーダンスが大幅に変化すると共に、アンテナの放射特性(垂直面指向性)
が変わってしまい、その等価的な損失の上に無線機とアンテナ間のインピーダンスの不整合による損失が加わり極めて低い効率になっている。
【0003】
一般に、携帯無線機を同軸ケーブル(50Ω)経由で固定のアンテナに接続した状態では、アンテナと無線機の整合がとれていると、その効率が良く、またアンテナのインピーダンスも無線機近傍の周囲の影響を受けずに安定に動作する。
しかし、携帯無線機の筐体に直接アンテナを接続した場合は、アンテナのインピーダンスが周囲の環境、例えば地面よりの高さ、近接物の影響等に左右されて変化し、その変化に伴ってアンテナの効率も低下する。
【0004】
携帯無線機例えば携帯電話機では、上記したようにその持ち方とか近接物の影響、地面からの高さの違いによって電波の送受信状態が不安定な状態となるが、これは無線機筐体に高周波電流が流れているためである。そこで、携帯無線機筐体もアンテナの一部を構成すると言う考え方でアンテナを見直し、無線機筐体には高周波電流を流さないように設計したものが半波長ホイップアンテナであり、SNアンテナと呼ばれている。このSNアンテナは、従来の1/4波長ホイップアンテナに較べて高い効率で且つ無線機の地上からの高さの変化や、近接物の影響を受け難い安定性を有し、その結果、無線回線のS/Nを改善することができた。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
上記のようにSNアンテナは、1/4波長ホイップアンテナに比較して優れた特性を有している。しかし、上記SNアンテナは、半波長アンテナ構造で素子自体の長さが非常に長く、支障を生じる場合がある。
【0006】
車両は、ガード下などの高さに制限がある場所を通過する場合があり、搭載するアンテナの高さはなるべく低いことが望ましい。特に、救急車などは車高が高いために、1/2波長のSNアンテナを使用すると、高さに制限がある場所、例えばガード下を通行する際にアンテナがガードに当たって損傷するという問題がある。なお、救急車は車体がプラスチックで構成されているために、1/4波長ホイップアンテナはその特性上使用することができない。
【0007】
本考案は上記の課題を解決するためになされたもので、小形で且つ半波長ホイップアンテナと同程度の特性を備え、しかも、プラスチックの構体に対しても支障なく使用できるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本考案に係るアンテナ装置は、有限地板と、前記有限地板上に設けた高さが略1/4〜1/5波長の短縮型ヘリカル構造のモノポールアンテナ素子と、前記モノポールアンテナ素子に給電する給電端子とを具備したことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、小形で、利得、指向性、定在波比等優れた特性を備え、モノポールアンテナ素子の高さをλ/4〜λ/5程度に短くできることにより、例えば車高の高い救急車などに搭載しても、ガード下などの高さに制限がある場所を通過する場合にアンテナがガードに当たる恐れはなく、アンテナの損傷を確実に防止することができる。また、無線機の筐体に高周波電流が流れない設計となっているので、救急車の車体がプラスチックで構成されていても、支障なく使用することができる。更に、構造が非常に簡単であり、無線機器への装着も容易である。
【0010】
【考案の実施の形態】
以下、図面を参照して本考案の一実施形態を説明する。 図1は、本考案の一実施形態に係るアンテナ装置の一部を断面して示す正面図である。図1において、1は接栓基部で、この接栓基部1の上部に有限地板(有限反射板)2が装着される。上記有限地板2は、例えば方形状に形成され、各辺の長さは略λ(波長)/4〜λ/10に設定される。上記有限地板2は、中央部に穴3が形成され、この穴3内に上記接栓基部1の上部側の突部が挿入され、例えばねじ止め等により固定される。
【0011】
上記接栓基部1には、内側に整合コイル4が設けられると共に下側に給電端子となる接栓5が装着され、整合コイル4の下端部が接栓5に電気的に接続される。上記接栓5は、図示しないが、同軸ケーブルを介してあるいは直接無線機に接続される。そして、上記接栓基部1の上側に絶縁部材例えば碍子6が設けられ、この碍子6の内側に誘電体を用いて形成したエレメント基部7が装着され、このエレメント基部7に放射素子8が装着される。上記放射素子8は、例えば銅或いは真鍮等の導体により短縮型ヘリカル構造のモノポールアンテナを構成している。上記放射素子8は、図2に示すように素子の直径φを略0.001λ、螺旋のピッチPを略0.001〜0.002λ、螺旋の中心径Dを略0.001〜0.
004λ、高さHを略λ/4〜λ/5に設定する。
【0012】
上記放射素子8は、エレメント基部7への装着部分を弾性力ある部材により構成すると共にピッチを細かく設定し、他の物体に当たるなど、外部から衝撃を受けた場合でも支障なく正常位置に復帰できるようにしている。そして、上記放射素子8の外側を覆うように素子カバー9を設ける。この素子カバー9は、誘電体により円筒状に形成し、その下端部をエレメント基部7及び碍子6の部分で保持する。
【0013】
上記放射素子8は、下端部をリード線(図示せず)により上記整合コイル4に電気的に接続する。この整合コイル4を設けることにより、アンテナインピーダンスを所定値、例えば50Ωに設定することができる。
【0014】
上記のように構成したアンテナ装置によれば、放射素子8の高さHをλ/4以下に短くでき、且つ従来の半波長ホイップアンテナと同程度の特性が得られ、しかも、プラスチックの構体に対しても支障なく使用することができる。
【0015】
以下、上記アンテナ装置に対する解析結果について説明する。 図2は、上記アンテナ装置を解析するためのアンテナモデルである。 このアンテナモデルは、有限地板2として各辺の長さをλ/4に設定した方形状のものを使用し、その中央部に短縮型ヘリカル構造のモノポールアンテナを放射素子8として設け、その下端部から給電するようにしたものである。そして、上記放射素子8は、中心周波数を265MHz、素子の直径φを0.001λ、高さHを220mm(約1/5波長)とし、螺旋のピッチP及び螺旋の中心径Dを0.001λ(λ/1000)〜0.01λ(λ/100)の範囲で変化させて、水平面(90°)方向の利得(dBi)を計算した。
【0016】
図3は、上記の計算結果に基づく利得のマップを示したもので、横軸に螺旋のピッチPをとり、縦軸に螺旋の中心径Dをとって示した。また、上記図3では、利得をA〜Eの5段階、すなわち、A:2dBi以上、B:1.5〜2dBi、C:1〜1.5dBi、D:0.5〜1dBi、E:0〜0.5dBiに分けて示した。
【0017】
上記図3に示した利得のマップから分かるように、螺旋のピッチPが0.001〜0.002λ、螺旋の中心径Dが0.001〜0.004λの範囲において、2dBi以上の利得、あるいは2dBiに近い利得を得ることができる。
【0018】
図4は、上記アンテナモデルにおいて、可変パラメータである螺旋のピッチPを0.001λ、螺旋の中心径Dを0.002λに設定した場合の垂直面放射パターンを示したもので、水平面方向(正面方向)の利得が最大となっている。また、このアンテナモデルの水平面放射パターンは、図示しないが無指向性となっている。また、このアンテナモデルにおけるVSWR(定在波比)は、使用周波数帯域で2.0以下であった。
【0019】
有限地板の場合には、指向性の主ビームを半波長ダイポールアンテナのように正面方向に向けることが困難である。指向性を正面方向に向かせるための方法として、アンテナ素子自体を半波長アンテナとして動作するようにしなければならない。そのためには、上記実施形態で示したように短縮型ヘリカル構造を有したモノポールアンテナを放射素子8として使用することにより、給電点の電流をちょうど節点とすることができ、正面方向にビームを向けることができる。
【0020】
上記実施形態で示したように有限地板2上に短縮型ヘリカル構造を有したモノポールアンテナを放射素子8として設けたアンテナ装置では、図4の垂直面放射パターンに示したように最大放射方向の低仰角化と水平面内の利得増加を図ることができた。
【0021】
以上の説明では、放射素子8の高さを220mm一定とした場合について説明したが、その他の値、すなわち、278.5mm(λ/4)一定、250mm一定とし、他の条件を上記の場合と同じに設定して水平面方向の利得(dBi)を計算した場合においても、上記図3に示したものと略同様の結果が得られた。また、このときの垂直面放射パターンは、上記図4に示したものと略同様であった。
【0022】
上記の解析結果から分かるように図1に示したアンテナ装置において、放射素子8の直径φを略0.001λ、螺旋のピッチPを略0.001〜0.002λ、螺旋の中心径Dを略0.001〜0.004λに設定することにより、高さHをλ/4〜λ/5程度に短くしても、2dBiあるいはそれ以上の利得が得られ、従来の半波長ホイップアンテナと略同等の特性を得ることができる。なお、有限地板2の各辺の長さは、略λ/4〜λ/10の範囲で任意に設定することが可能である。
【0023】
また、上記したように放射素子8の高さをλ/4〜λ/5程度に短くできるので、例えば車高の高い救急車などに搭載しても、ガード下などの高さに制限がある場所を通過する場合にアンテナがガードに当たる恐れはなく、アンテナの損傷を確実に防止することができる。また、無線機の筐体に高周波電流が流れない設計となっているので、救急車の車体がプラスチックで構成されていても、支障なく使用することができる。また、構造が非常に簡単であり、無線機器への装着も容易である。
【0024】
なお、上記実施形態では、有限地板2を方形状に形成した場合について示したが、例えば多角形や円形状等、その他の形状に形成しても良い。
【0025】
【考案の効果】
以上本考案によれば、有限地板上に高さが略1/4〜1/5波長の短縮型ヘリカル構造のモノポールアンテナ素子を放射素子として使用することにより、小形で、利得、指向性、定在波比等優れた特性を備え、しかも、プラスチックの構体に対しても支障なく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施形態に係るアンテナ装置の一部を断面して示す正面図。
【図2】同実施例に係るアンテナ装置を解析するためのアンテナモデルの斜視図。
【図3】上記アンテナモデルのパラメータを変化した場合の水平面方向の利得のマップを示す図。
【図4】上記アンテナモデルにおける垂直面放射パターンを示す図。
【符号の説明】
1…接栓基部
2…有限地板
3…有限地板に設けられた穴
4…整合コイル
5…接栓
6…碍子
7…エレメント基部
8…放射素子
9…素子カバー

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 有限地板と、前記有限地板上に設けた高さが略1/4〜1/5波長の短縮型ヘリカル構造のモノポールアンテナ素子と、前記モノポールアンテナ素子に給電する給電端子とを具備したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】 接栓基部と、前記接栓基部に装着された有限地板と、前記接栓基部の下側に設けられた接栓と、前記接栓基部の上側に設けられた絶縁部材と、前記絶縁部材に装着され、高さが略1/4〜1/5波長の短縮型ヘリカル構造のモノポールアンテナ素子と、前記絶縁部材に装着され、前記モノポールアンテナ素子を覆う素子カバーと、前記モノポールアンテナ素子と前記接栓とを接続し、インピーダンスを整合する整合コイルとを具備したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】 前記モノポールアンテナ素子の螺旋のピッチPを略0.001〜0.002λ、螺旋の中心径を略0.001〜0.004λに設定したことを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【登録番号】実用新案登録第3093712号(U3093712)
【登録日】平成15年2月19日(2003.2.19)
【発行日】平成15年5月16日(2003.5.16)
【考案の名称】アンテナ装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】有
【出願番号】実願2002−6862(U2002−6862)
【出願日】平成14年10月29日(2002.10.29)
【出願人】(000101857)アンテナ技研株式会社 (4)