説明

アンテナ

【課題】誘電体の厚さに制約されず、設計自由度の高いアンテナを提供する。
【解決手段】スロットを設けた地導体板、前記スロットと交差するストリップ線路、及び、前記地導体板に略平行な平板状の放射素子を備え、前記ストリップ線路に高周波信号を供給することによって前記スロットを励振し、前記スロットと前記放射素子との電磁結合によって、前記放射素子に給電するアンテナであって、前記スロットの長手方向において、前記放射素子の外周部と前記地導体板とを短絡させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つ以上の放射素子を備えるアンテナに関し、特に地導体板に設けたストリップ線路に高周波電流を供給して放射素子を励振するアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅箔付き第1誘電体基板の表面側にスロットと、該第1誘電体基板の裏面側にマイクロストリップラインを形成した励振回路とを設けた地導体板と、矩形又は任意形状の放射素子を設けた第2誘電体基板とを設けた平面アンテナがある。このような平面アンテナは、該第2誘電体基板をスロット上部に設けて、放射素子と励振回路とを電磁結合させるスロット結合給電方式によって動作している(Aperture Coupled Microstrip Antenna)。この給電方式は、放射素子とマイクロストリップラインが独立した構造が特徴である。
【0003】
具体的には、このようなアンテナは、図7に示すように、誘電体基板10の下面にストリップ線路13、誘電体基板10の上面に地導体板11を設け、地導体板11には、ストリップ線路13と直交するようにスロット12が配置されている。さらに、地導体板11の上面に誘電体基板2に設けられた放射素子20が保持される。
【0004】
このアンテナは、まず、スロット12が直交するストリップ線路13により励振される。地導体板11上面に保持された放射素子20と励振されたスロット間で結合が生じ、放射素子20も励振されることによってアンテナとして動作する。
【0005】
すなわち、この従来技術のアンテナでは、放射素子20は、地導体板11やストリップ線路13とは、直流的には接続されていない。この給電方式は、放射素子20とストリップ線路13が独立した構造であるため、アレイ化の際に必要となる合成分配回路と給電回路を共用することが容易な特徴がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来のアンテナは、スロット12を設けた地導体板11と放射素子20とを電磁結合させるために、放射素子20側にも誘電体基板2を用いる。そして、放射素子20が設けられた誘電体基板2は、地導体板11が設けられた誘電体基板1に接着される。また、誘電体基板2を用いなくても、地導体板11と放射素子20との間に発泡材やハニカム材等を設け、これらを接着して固定する必要がある。
【0007】
従って、従来のアンテナは、誘電体基板を使用したり、誘電体基板を接着するため、アンテナの価格が高くなる問題があった。また、誘電体基板の誘電率や厚さを自由に選択できないため、アンテナを所望のインピーダンスに整合させることが難しかった。さらに、誘電体の誘電正接により生じる抵抗によって、電磁結合時の損失が生じるため、アンテナの放射効率が低下する問題があった。
【0008】
本発明は、誘電体の厚さに制約されず、設計自由度の高いアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、スロットを設けた地導体板、前記スロットと交差するストリップ線路、及び、前記地導体板に略平行な平板状の放射素子を備え、前記ストリップ線路に高周波信号を供給することによって前記スロットを励振し、前記スロットと前記放射素子との電磁結合によって、前記放射素子に給電するアンテナであって、前記スロットの長手方向において、前記放射素子の外周部と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、スロットを設けた地導体板、前記スロットと交差するストリップ線路、及び、前記地導体板に略平行な平板状の放射素子を備え、前記ストリップ線路に高周波信号を供給することによって前記スロットを励振し、前記スロットと前記放射素子との電磁結合によって、前記放射素子に給電するアンテナであって、前記放射素子上で高周波電圧が小さくなる箇所において、前記放射素子の外周部と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、所定の角度で交差する二つのスロットを設けた地導体板、前記各スロットと交差する二つのストリップ線路、及び、前記地導体板に略平行な平板状の放射素子を備え、前記各ストリップ線路に高周波信号を供給することによって前記各スロットを励振し、前記スロットと前記放射素子との電磁結合によって、前記放射素子に給電するアンテナであって、前記スロットの長手方向において、前記放射素子の外周部と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、第1から第3の発明において、前記放射素子を前記地導体板と略平行な位置に保持する短絡棒を備え、前記短絡棒によって、前記放射素子と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、第1から第4の発明において、前記放射素子は導体板によって構成されることを特徴とする。
【0014】
第6の発明のアレイアンテナは、第1から第5の発明に係るアンテナを複数個並べて配置して構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、放射素子の外周部を地導体板へ短絡させることによって、放射素子を地導体板に固定する構造とした。すなわち、誘電体基板裏面のストリップ線路に直交するように地導体板表面にスロットを設け、該スロットによって励振される放射素子の外周部と、地導体板とを短絡させた。よって、放射素子を誘電体基板に設ける必要がないので、アンテナのインピーダンスの設計自由度が高い。また、誘電体基板の誘電正接により生じる損失によって放射効率が低下することがない。さらに、放射素子を設けた誘電体基板を用いないので軽量なアンテナを、安価に実現することができる。
【0016】
なお、地導体板と放射素子との短絡箇所は、前記放射素子の辺の中央部とすることが望ましい。前記放射素子の辺の中央部で放射素子と地導体板を短絡しても、放射素子上の高周波電圧の分布の変化が小さくなるからである。
【0017】
また、短絡棒を用いて地導体板と放射素子とを短絡させるので、短絡棒の高さの変更が容易である。よって、前記放射素子の高さ位置の設計自由度が高くなる。従って、アンテナを所望のインピーダンスに整合させることができる。
【0018】
さらに、放射素子を導体板によって構成するので、アンテナを軽量かつ安価に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のアンテナの斜視図である。
【0021】
第1実施形態のアンテナは、誘電体基板10及び放射素子20によって構成されている。
【0022】
誘電体基板10の表面には地導体板11が設けられる。地導体板11は誘電体基板10の略全面に設けられた導体パターンによって構成する。なお、誘電体基板10の代わりにプリント配線板を用い、該プリント配線板の表面に設けた金属パターンによって地導体板11を構成してもよい。
【0023】
また、地導体板11にはスロット12が設けられる。スロット12は、その箇所だけ地導体板11の導体パターンを除去して構成する。
【0024】
また、誘電体基板10の裏面には、スロット12の中央部において、スロット12と直交するストリップ線路13が設けられる。ストリップ線路13は、地導体板11の端部から地導体板11の中央部(地導体板11の中央上部に設けられた放射素子20の略中央部、すなわち、スロット12を超えた位置)に延伸して設けられる。また、ストリップ線路13は、誘電体基板10の裏面の導体パターンによって構成されており、放射素子20を励振する高周波信号が供給されるマイクロストリップラインを構成している。
【0025】
放射素子20は、平板状の導電体(例えば、金属板)によって構成されており、スロット12の上部に、地導体板11と略並行に設けられる。これによって、スロット12と放射素子20とが電磁結合する。なお、本実施の形態では放射素子20は四角形であるが、丸形、三角形等の多様な形状にすることができる。本実施形態では、放射素子20を板状の導体によって構成するので、アンテナに誘電体を用いる必要がなく、アンテナを安価に構成することができる。
【0026】
放射素子20の外周部には取付部21が設けられる。また、取付部21は、スロット12が延伸する方向に、放射素子20から突出している。放射素子20は、この取付部21において、地導体板11と電気的に接続される。なお、図1に示すように放射素子20が四角形の場合、取付部21は放射素子20の対向する辺の中央部に設けることが望ましい。
【0027】
すなわち、ストリップ線路13に供給された高周波信号は、放射素子20を励振する。励振された放射素子20では、スロット12と直交する方向にダイポールアンテナが形成されたように高周波電圧が分布する。
【0028】
よって、ダイポールアンテナの中央部(放射素子20のスロット12と直交する辺の中央部)に励起される高周波電圧はほぼ0になる。従って、放射素子20の辺のうちスロット12と直交する辺の中央部において、放射素子20と地導体板11とを短絡しても、放射素子20上の電圧分布は変化しない。
【0029】
ここで、本発明の実施形態のアンテナの動作原理について説明する。
【0030】
本実施形態のアンテナは方形パッチアンテナであって、放射素子20には高周波電圧が励起され、約1/2波長で動作する。一般に、方形パッチアンテナでは、放射素子の一端に給電点が設けられ、放射素子に直接給電される。この場合、放射素子上の電界は、給電点から該給電点に対向する辺の方向に向かうものとなる。
【0031】
一方、本実施形態のように、放射素子20とスロット12が電磁的に結合して放射素子20に給電するアンテナでは、放射素子20上の電界はスロットと直交する向きとなる。このとき、放射素子20には約1/2波長の高周波電圧が励起されるので、放射素子20の外周辺の内、電界と平行な辺の中央部の電圧はゼロに近くなる。よって、この点で放射素子20と地導体板11とを短絡してもアンテナ特性に及ぼす影響は極めて少ない。
【0032】
すなわち、放射素子20上の電界と直交する仮想的な面を考えると、該電界と直交する面と放射素子の外周との交点付近では、高周波電圧はほぼゼロになり、この点で放射素子20と接地することができる。
【0033】
なお、本発明に係る方形パッチアンテナと異なる種類の平面アンテナとして、逆Fアンテナがある。逆Fアンテナでは、放射素子に励起される高周波電圧は約1/4波長である。すなわち、逆Fアンテナでは、1/4波長の放射導体を備え、その一端に給電点を、他端を接地したものである。
【0034】
以上説明したように、本発明のアンテナは、公知技術のアンテナとは動作原理が異なる。
【0035】
図2は、第1実施形態のアンテナの分解斜視図である。
【0036】
地導体板11には、取付穴14が設けられる。本実施形態では、取付穴14はスロット12の延長線上に設けられる。なお、取付穴14はこの位置に限らず、放射素子20の取付部21に対応する位置に設ければよい。例えば、スロット12が、放射素子20の中心からずれた位置に設けられている場合は、取付穴14は、スロット12の延長線上からずれた位置に設けられる。
【0037】
放射素子20の取付部21には、ビス42が貫通する取付穴22が設けられる。
【0038】
放射素子20と地導体板11との間には短絡棒41が設けられる。短絡棒41は導電体(例えば、金属)で円筒形が形成されている。すなわち、短絡棒41は並行な底面を有し、中心軸に貫通穴が設けられる。
【0039】
そして、ビス42が、放射素子20(取付穴22)、短絡棒41及び誘電体基板10をを貫通し、誘電体基板10の裏面側(ストリップ線路13が設けられた側)からナットで止められる。これによって、放射素子20が地導体板11に略平行に固定される。短絡棒41は導電体で形成されているので、放射素子20の外周部(取付部21)と地導体板11とは、電気的(直流的)に接続される。
【0040】
なお、短絡棒41は、導電体に限らず絶縁体で構成してもよい。この場合、ビス42によって放射素子20と地導体板11とを電気的に接続する。
【0041】
なお、放射素子20の誘電体基板10への固定方法は、前述した方法に限らず多様な方法を採用することができる。例えば、取付穴14に雌ネジを設け、取付穴14を貫通したビス42を、取付穴14の雌ネジと係合させる方法がある。また、短絡棒41に雌ネジを設け、放射素子20と地導体板11との双方からビスによって固定する方法がある。
【0042】
このように第1実施形態では、放射素子20の外周部(放射素子20の辺の中央部)において、短絡棒41を用いて地導体板11と放射素子20とを短絡させる。よって、短絡棒41の高さを調整することにより、放射素子20の高さ位置の設計自由度を高くすることができる。従って、アンテナを所望のインピーダンスに容易に整合させることができ、アンテナ設計の自由度が向上する。
【0043】
図3は、第1実施形態のアンテナの放射素子の変形例の斜視図である。
【0044】
第1実施形態の変形例では、放射素子20の2辺の中央部には、取付部23が設けられる。取付部23は、スロット12が延伸する方向に、放射素子20から突出している。そして、第1実施形態の変形例の取付部23は下方に(地導体板11の方向に略直角に)折り曲げられる。さらに、その先端部が地導体板11と平行となるように折り曲げられる。
【0045】
さらに、取付部23の先端の地導体板11と平行となるように折り曲げられた部分には、ビスが貫通する取付穴24が設けられる。
【0046】
第1実施形態の変形例では、ビスが、放射素子20の取付穴24及び誘電体基板10の取付穴14を貫通し、誘電体基板10の裏面側(ストリップ線路13が設けられた側)からナットで止められることによって、放射素子20が地導体板11に略平行に固定される。これによって、放射素子20の取付部23と地導体板11とが電気的に接続される。
【0047】
このように、取付部23が折り曲げられ、その先端部に設けられた取付穴24によって誘電体基板10に固定されることによって、地導体板11と放射素子20とを接続する連結棒等の部材を使用せずに、放射素子20と地導体板11とを接続することができる。
【0048】
また、第1実施形態のアンテナを複数並べて、送受信機の給電回路と各アンテナとの間に合成分配回路を設けることによって、自由な指向特性を持つアレイアンテナを構成することができる。
【0049】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態のアンテナの斜視図である。
【0050】
第1実施形態のアンテナは、誘電体基板10、第1放射素子20及び第2放射素子30によって構成されている。
【0051】
誘電体基板10は、前述した第1実施形態と同様に、地導体板11、スロット12、ストリップ線路13及び取付穴14が設けられる。
【0052】
第1放射素子20は、平板状の導電体(例えば、金属板)によって構成されており、スロット12の上部に、地導体板11及び第2放射素子30と略並行に設けられる。なお、本実施の形態では第1放射素子20は四角形であるが、丸形、三角形等の多様な形状にすることができる。
【0053】
第1放射素子20の外周部には取付部21が設けられる。また、取付部21は、スロット12が延伸する方向に、第1放射素子20から突出している。第1放射素子20は、この取付部21において、地導体板11と電気的に接続される。なお、図4に示すように第1放射素子20が四角形の場合、取付部21は第1放射素子20の対向する辺の中央部に設けることが望ましい。
【0054】
第2放射素子30は、第1放射素子20と略相似形で、少し小さい平板状の導電体(例えば、金属板)によって構成されている。第2放射素子30は、第1放射素子20の上部に、地導体板11及び第1放射素子20と略並行に設けられる。なお、本実施の形態では第2放射素子30は四角形であるが、丸形、三角形等多様な形状とすることができる。
【0055】
第2放射素子30の中央部には取付穴31が設けられる。第2放射素子30は、この取付穴31によって、第1放射素子20と接続される。なお、取付穴31は第2放射素子30の中央部の他に、第1放射素子20のように、第2放射素子30の外周部(より望ましくは、中央部)に設けてもよい。
【0056】
すなわち、ストリップ線路13に供給された高周波信号は、第1放射素子20を励振する。励振された第1放射素子20では、スロット12と直交する方向にダイポールアンテナが形成されたように高周波電圧が分布する。よって、ダイポールアンテナの中央部(第1放射素子20のスロット12と直交する辺の中央部)に励起される高周波電圧はほぼ0になる。従って、放射素子20の辺のうち、スロット12と直交する辺の中央部において、放射素子20と地導体板11を短絡しても、放射素子20上の電圧分布は変化しない。
【0057】
また、第1放射素子20に誘起した高周波電圧は、第2放射素子30を励起する。第2放射素子30では、第1放射素子20と同じ方向(スロット12と直交する方向)にダイポールアンテナが形成されたように高周波電圧が分布する。よって、ダイポールアンテナの中央部(第2放射素子30のスロットと直交する二つの辺の中央部を結ぶ直線上)の高周波電圧はほぼ0になる。同様に第1放射素子20の中央部(第1放射素子20のスロットと直交する二つの辺の中央部を結ぶ直線上)の高周波電圧はほぼ0になる。従って、第2放射素子30の中央部において、第2放射素子30と第1放射素子20とを短絡しても、第2放射素子30上の電圧分布は変化しない。
【0058】
なお、第2放射素子30の外周部(辺の中央部)に取付穴を設けた場合も、その部位の電圧はほぼ0であることから、当該部位(辺の中央部)において、第2放射素子30と第1放射素子20とを短絡しても、第2放射素子30上の電圧分布は変化しない。
【0059】
このように第2実施形態では、複数の放射素子を設けたので、アンテナの共振周波数帯域を広くすることができる。
【0060】
図5は、第2実施形態のアンテナの分解斜視図である。
【0061】
誘電体基板10には、取付穴14が設けられる。本実施形態では、取付穴14はストリップ線路13の延長線上に設けられる。なお、取付穴14はこの位置に限らず、第1放射素子20の取付部21に対応する位置に設ければよい。
【0062】
第1放射素子20の取付部21には、ビス42が貫通する取付穴22が設けられる。また、第1放射素子20の中央部には、ビス44が係合する取付穴24が設けられる。また、取付穴24には、雌ネジが設けられるとよい。
【0063】
放射素子20と地導体板11との間には短絡棒41が設けられる。短絡棒41は導電体(例えば、金属)で円筒形が形成されている。すなわち、短絡棒41は並行な底面を有し、中心軸に貫通穴が設けられる。
【0064】
そして、ビス42が、第1放射素子20(取付穴22)、短絡棒41及び誘電体基板10の取付穴14を貫通し、誘電体基板10の裏面側(ストリップ線路13が設けられた側)からナットで止められる。これによって、放射素子20が地導体板11に略平行に固定される。短絡棒41は導電体で形成されているので、第1放射素子20の外周部(取付部21)と地導体板11とは、電気的(直流的)に接続される。
【0065】
なお、短絡棒41は、導電体に限らず絶縁体で構成してもよい。この場合、ビス42によって第1放射素子20と地導体板11とを電気的に接続する。
【0066】
さらに、第2放射素子30と第1放射素子20との間には短絡棒43が設けられる。短絡棒43は、短絡棒41と同様に、導電体(例えば、金属)で円筒形が形成されている。すなわち、短絡棒43は並行な底面を有し、中心軸に貫通穴が設けられる。
【0067】
そして、ビス44が、第2放射素子30(取付穴31)、短絡棒43を貫通し、第1放射素子20の取付穴24の雌ネジと係合することによって、第2放射素子30が第1放射素子20に略平行に固定される。短絡棒43は導電体で形成されているので、第2放射素子30の中央部(取付穴31)と地導体板11とは、電気的(直流的)に接続される。
【0068】
なお、短絡棒41は、導電体に限らず絶縁体で構成してもよい。この場合、ビス44によって第2放射素子30と第1放射素子20とを電気的に接続する。
【0069】
なお、第1放射素子20の誘電体基板10への固定方法、及び、第2放射素子30の第1放射素子20への固定方法は、第1実施形態で前述したように多様な方法を採用することができる。
【0070】
このように第2実施形態では、第1放射素子20の外周部(第1放射素子20の辺の中央部)において、短絡棒41を用いて地導体板11と第1放射素子20とを短絡させる。また、第2放射素子30の外周部(第2放射素子30の辺の中央部)において、短絡棒43を用いて第1放射素子20と第2放射素子30とを短絡させる。
【0071】
よって、短絡棒41の高さを調整することにより、第1放射素子20の高さ位置の設計自由度を高くすることができる。また、短絡棒43の高さを調整することによって、第2放射素子30の高さ位置の設計自由度を高くすることができる。従って、アンテナの共振周波数帯域幅を広く保ちつつ、所望のインピーダンスに容易に整合させることができ、アンテナ設計の自由度が向上する。
【0072】
なお、図示を省略するが、前述した第1実施形態の変形例(図3)のように、放射素子20から突出した取付部22を下方に(地導体板11の方向に略直角に)折り曲げられる。さらに、その先端部が地導体板11と平行となるように折り曲げて構成することもできる。
【0073】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態のアンテナの分解斜視図である。
【0074】
第3実施形態のアンテナは、誘電体基板10及び放射素子20によって構成されている。
【0075】
誘電体基板10には、地導体板11、二つのスロット12a、12b、二つのストリップ線路13a、13b、及び、四つの取付穴14a〜14dが設けられる。
【0076】
誘電体基板10の表面には地導体板11が設けられる。地導体板11は誘電体基板10の略全面に設けられた導体パターンによって構成する。なお、誘電体基板10の代わりにプリント配線板を用い、該プリント配線板の表面に設けた金属パターンによって地導体板11を構成してもよい。
【0077】
また、地導体板11の表面には二つのスロット12a、12bが設けられる。スロット12a、12bは、その箇所だけ地導体板11の導体パターンを除去して構成する。二つのスロット12a、12bは所定の角度(例えば、図6に示すように直交して)で交差するように設けられる。この所定の角度は、第3実施形態のアンテナから放射される電波の偏波面に従って設定する。
【0078】
また、地導体板11の裏面には、スロット12aと直交するようにストリップ線路(ストリップ線路)13aが設けられ、スロット12bと直交するようにストリップ線路(ストリップ線路)13bが設けられる。二つのストリップ線路13a、13bが設けられる。ストリップ線路13a、13bは、地導体板11の端部から地導体板11の中央部(地導体板11の中央上部に設けられた放射素子20の略中央部)に延伸して設けられる。また、ストリップ線路13a、13bは、誘電体基板10の裏面の導体パターンによって構成されており、放射素子20を励振する高周波信号が供給されるマイクロストリップラインを構成している。
【0079】
二つのストリップ線路13a、13bは、二つのスロット12a、12bが形成する所定の角度(例えば、図6に示すように直交して)で交差するように設けられる。
【0080】
ストリップ線路13aは、スロット12aの中心部からはずれた位置において、スロット12aと交差する。また、ストリップ線路13bは、スロット12bの中心部からはずれた位置において、スロット12bと交差する。また、ストリップ線路13a、13bの先端は、両ストリップ線路が交差しないように略45度曲げられて延伸している。これは、その中心で二つのスロット12a、12bが交差するように設けられているので、ストリップ線路13aとストリップ線路13bとが交差しないようにするためである。
【0081】
第3実施形態では、二つのストリップ線路13a、13bを所定の角度で設け、ストリップ線路13a、13bに選択的に(又は、双方に)給電することによって、複数の偏波面を有するアンテナを構成することができる。
【0082】
取付穴14a、14bは、スロット12aの延長線上に設けられる。また、取付穴14c、14dは、スロット12bの延長線上に設けられる。なお、取付穴14a〜14dはこの位置に限らず、放射素子20の取付部21a〜21dに対応する位置に設ければよい。例えば、スロット12a、12bが、放射素子20の中心からずれた位置に設けられている場合は、取付穴14a〜14dは、スロット12a、12bの延長線上からずれた位置に設けられる。
【0083】
放射素子20は、平板状の導電体(例えば、金属板)によって構成されており、スロット12a及びスロット12bの上部に、地導体板11と略並行に設けられる。なお、本実施の形態では放射素子20は四角形であるが、丸形、三角形等の多様な形状にすることができる。
【0084】
放射素子20の外周部には四つの取付部21a〜21dが設けられる。取付部21a、21bは、スロット12aが延伸する方向に、放射素子20から突出している。また、取付部21c、21dは、スロット12bが延伸する方向に、放射素子20から突出している。
【0085】
放射素子20は、この取付部21a〜21dにおいて、地導体板11と電気的に接続される。なお、図6に示すように放射素子20が四角形の場合、取付部21a、21bは放射素子20の対向する辺の中央部に設け、取付部21c、21dは放射素子20の対向する他の辺の中央部に設けることが望ましい。
【0086】
取付部21a〜21dの各々には、ビス42が貫通する取付穴22が設けられる。
【0087】
放射素子20と地導体板11との間には短絡棒41が設けられる。短絡棒41は導電体(例えば、金属)で円筒形が形成されている。すなわち、短絡棒41は並行な底面を有し、中心軸に貫通穴が設けられる。
【0088】
そして、ビス42が、放射素子20(取付穴22)、短絡棒41及び誘電体基板10の取付穴14を貫通し、誘電体基板10の裏面側(ストリップ線路13が設けられた側)からナットで止められる。これによって、放射素子20が地導体板11に略平行に固定される。短絡棒41は導電体で形成されているので、放射素子20の外周部(取付部21)と地導体板11とは、電気的(直流的)に接続される。
【0089】
なお、短絡棒41は、導電体に限らず絶縁体で構成してもよい。この場合、ビス42によって放射素子20と地導体板11とを電気的に接続する。
【0090】
なお、放射素子20の誘電体基板10への固定方法は、第1実施形態で前述したように多様な方法を採用することができる。
【0091】
また、図示を省略するが、前述した第1実施形態の変形例(図3)のように、放射素子20から突出した取付部21を下方に(地導体板11の方向に略直角に)折り曲げ、さらに、その先端部が地導体板11と平行となるように折り曲げて構成することもできる。
【0092】
このように第3実施形態では、ストリップ線路13aに供給された高周波信号は、放射素子20を励振する。励振された放射素子20では、スロット12aと直交する方向にダイポールアンテナが形成されたように高周波電圧が分布する。また、ストリップ線路13bに供給された高周波信号は、放射素子20を励振する。励振された放射素子20では、スロット12bと直交する方向にダイポールアンテナが形成されたように高周波電圧が分布する。
【0093】
よって、ダイポールアンテナの中央部(放射素子20のスロットと直交する辺の中央部)に励起される高周波電圧はほぼ0になる。従って、放射素子20の辺の中央部において、放射素子20と地導体板11を短絡しても、放射素子20上の電圧分布は変化しない。
【0094】
すなわち第3実施形態では、二つのストリップ線路13a、13bを設け、短絡棒41を用いて地導体板11と放射素子20とを短絡させる。よって、複数の偏波面を有するアンテナにおいても、短絡棒41の高さを調整することにより、放射素子20の高さ位置の設計自由度を高くすることができる。従って、アンテナを所望のインピーダンスに容易に整合させることができる。
【0095】
特許請求の範囲に記載した以外に本明細書に開示した発明の観点の代表的なものとして、次のものがあげられる。
【0096】
1.スロットを設けた地導体板及び前記スロットと交差するストリップ線路を備え、
少なくとも、前記地導体板に略平行な平板状の第1放射素子及び前記第1放射素子に略平行な平板状の第2放射素子を備え、
前記ストリップ線路に高周波信号を供給することによって前記スロットを励振し、前記スロットと前記第1放射素子との電磁結合によって前記第1放射素子に給電し、前記第1放射素子と前記第2放射素子との電磁結合によって前記第2放射素子に給電するアンテナであって、
前記スロットの長手方向において、前記第1放射素子の外周部と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とするアンテナ。
【0097】
2.スロットを設けた地導体板、前記スロットと交差するストリップ線路を備え、
少なくとも、前記地導体板に略平行な平板状の第1放射素子及び前記第1放射素子に略平行な平板状の第2放射素子を備え、
及び、前記地導体板に略平行な平板状の放射素子を備え、
前記ストリップ線路に高周波信号を供給することによって前記スロットを励振し、前記スロットと前記第1放射素子との電磁結合によって前記第1放射素子に給電し、前記第1放射素子と前記第2放射素子との電磁結合によって前記第2放射素子に給電するアンテナであって、
前記第1放射素子上で高周波電圧が小さくなる箇所において、前記第1放射素子の外周部と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とするアンテナ。
【0098】
3.所定の角度で交差する二つのスロットを設けた地導体板、前記各スロットと交差する二つのストリップ線路を備え、
少なくとも、前記地導体板に略平行な平板状の第1放射素子及び前記第1放射素子に略平行な平板状の第2放射素子を備え、
前記各ストリップ線路に高周波信号を供給することによって前記各スロットを励振し、スロットと前記第1放射素子との電磁結合によって前記第1放射素子に給電し、前記第1放射素子と前記第2放射素子との電磁結合によって前記第2放射素子に給電するアンテナであって、
前記スロットの長手方向において、前記第1放射素子の外周部と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とするアンテナ。
【0099】
4.前記第1放射素子を前記地導体板と略平行な位置に保持する短絡棒を備え、
前記短絡棒によって、前記第1放射素子と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とする1項から3項のいずれか一つに記載のアンテナ。
【0100】
5.前記第1放射素子は導体板によって構成されることを特徴とする1項から3項のいずれか一つに記載のアンテナ。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係るアンテナは、携帯電話システム等の移動体通信システムの基地局に使用すると好適である。また、本実施の形態のアンテナを複数並べるアレイアンテナに用いると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1実施形態のアンテナの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態のアンテナの分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態のアンテナの放射素子の変形例の斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態のアンテナの斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態のアンテナの分解斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態のアンテナの分解斜視図である。
【図7】従来のアンテナの斜視図である。
【符号の説明】
【0103】
10 誘電体基板
11 地導体板
12 スロット
13 ストリップ線路
14 取付穴
20 放射素子(第1放射素子)
21、23 取付部
22、24 取付穴
30 放射素子(第2放射素子)
31 取付穴
41、43 短絡棒
42、44 ビス
2 誘電体板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットを設けた地導体板、前記スロットと交差するストリップ線路、及び、前記地導体板に略平行な平板状の放射素子を備え、
前記ストリップ線路に高周波信号を供給することによって前記スロットを励振し、前記スロットと前記放射素子との電磁結合によって、前記放射素子に給電するアンテナであって、
前記スロットの長手方向において、前記放射素子の外周部と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
スロットを設けた地導体板、前記スロットと交差するストリップ線路、及び、前記地導体板に略平行な平板状の放射素子を備え、
前記ストリップ線路に高周波信号を供給することによって前記スロットを励振し、前記スロットと前記放射素子との電磁結合によって、前記放射素子に給電するアンテナであって、
前記放射素子上で高周波電圧が小さくなる箇所において、前記放射素子の外周部と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
所定の角度で交差する二つのスロットを設けた地導体板、前記各スロットと交差する二つのストリップ線路、及び、前記地導体板に略平行な平板状の放射素子を備え、
前記各ストリップ線路に高周波信号を供給することによって前記各スロットを励振し、前記スロットと前記放射素子との電磁結合によって、前記放射素子に給電するアンテナであって、
前記スロットの長手方向において、前記放射素子の外周部と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とするアンテナ。
【請求項4】
前記放射素子を前記地導体板と略平行な位置に保持する短絡棒を備え、
前記短絡棒によって、前記放射素子と前記地導体板とを短絡させたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のアンテナ。
【請求項5】
前記放射素子は導体板によって構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のアンテナ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のアンテナを複数個並べて配置して構成したことを特徴とするアレイアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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