説明

アンテナ

【課題】特性が安定し、効率的な電力伝送を行うことが可能なアンテナを提供する。
【解決手段】本発明のアンテナは、第1面311と、前記第1面311の裏面である第2面312とを有する基材310と、前記基材310上の前記第1面311に形成されると共に、第1面最内端部331と第1面最外端部332の2つの端部を有しコイルを形成する第1面導電部330と、前記第1面最外端部332に固着されるコンデンサ400と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムに用いられ、電力の受電又は送電を行うアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源コードなどを用いることなく、ワイヤレスで電力(電気エネルギー)を伝送する技術の開発が盛んとなっている。ワイヤレスで電力を伝送する方式の中でも、特に注目されている技術として、磁気共鳴方式と呼ばれるものがある。この磁気共鳴方式は2007年にマサチューセッツ工科大学の研究グループが提案したものであり、これに関連する技術は、例えば、特許文献1(特表2009−501510号公報)に開示されている。
【0003】
磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムは、送電側アンテナの共振周波数と、受電側アンテナの共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うものであり、電力伝送距離を数十cm〜数mとすることが可能であることが大きな特徴の一つである。
【0004】
上記のような磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムに用いるアンテナの具体的な構成についてもこれまでいくつか提案がされてきた。例えば、特許文献2(特開2010−74937号公報)には、電源から電力を受けて送電を行なう送電コイルから電力を受電する非接触受電装置であって、前記送電コイルから送電された電力を電磁共鳴により受電する受電コイルと、前記受電コイルを内部に収容するコイルケースと、前記コイルケースの外部に配置され、前記受電コイルの共鳴周波数を調整するために前記受電コイルに電気的に接続されるコンデンサとを備える、非接触受電装置が開示されている。
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【特許文献2】特開2010−74937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電力伝送システムで用いられているアンテナにおいては、受電コイルに電気的に接続される調整用のコンデンサは、受電コイルが収容されたコイルケースの外部に配置された構造となっている。
【0006】
コンデンサと受電コイルと間の電気接続部はインダクタンス成分を有するものであるが、前記のような構造であると形状が不定な前記電気接続部に基づくインダクタンス成分の変動によって、想定通りのアンテナの特性が得られず、効率的な電力伝送を行うことができない、という問題があった。また、前記電気接続部には抵抗成分もあり、この抵抗成分によってアンテナ全体の特性が低下し、同じく効率的な電力伝送を行うことができない、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に係る発明は、第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する基材と、前記基材上の前記第1面に形成され、コイルを形成する第1面導電部と、前記コイルと接続されると共に、前記第1面側に載置されるコンデンサと、を有することを特徴とするアンテナである。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する基
材と、前記基材上の前記第1面に形成されると共に、第1面最内端部と第1面最外端部の
2つの端部を有しコイルを形成する第1面導電部と、前記第1面最外端部と接続されると共に、前記第1面側に載置されるコンデンサと、を有することを特徴とするアンテナである。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する基材と、前記基材上の前記第1面に形成されると共に、第1面最内端部と第1面最外端部の
2つの端部を有しコイルを形成する第1面導電部と、前記基材上の前記第2面に形成されると共に、第2面最内端部と第2面最外端部の2つの端部を有しコイルを形成し、前記第1面から前記第2面に透過的にみたとき、前記第1面導電部と重なる第2面導電部と、前記第1面と前記第2面との間を貫通して前記第1面最内端部と前記第2面最内端部とを導通する第1スルーホール導通部と、前記第1面と前記第2面との間を貫通して前記第1面最外端部と前記第2面最外端部とを導通する第2スルーホール導通部と、前記第1面最外端部と接続されると共に、前記第1面側に載置されるコンデンサと、を有することを特徴とするアンテナである。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、最内端部と最外端部とを有しコイルを形成する導電部が基材を介して積層されるようにして複数設けられ、積層された前記基材のうち露出する基材の前記最外端部にコンデンサが接続されると共に、その露出した基材に該コンデンサが載置され、前記導電部における前記最内端部同士は前記基材を貫通するスルーホール導通部により互いに導通され、前記導電部における前記最外端部同士は前記基材を貫通するスルーホール導通部により互いに導通され、積層方向から透過的にみたとき、複数の前記導電部は全て重なるように構成されることを特徴とするアンテナである。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアンテナにおいて、前記コンデンサの誘電材料には酸化チタンが含まれることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアンテナにおいて、前記コンデンサの誘電材料にはチタン酸マグネシウムが含まれることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアンテナにおいて、前記コンデンサの誘電材料にはステアタイト系材料が含まれることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のアンテナにおいて、前記基材と前記コンデンサが共に共通のケースに収容されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るアンテナは、コンデンサは、コイルを形成する第1面導電部の第1面最外端部に固着されているので、このような構成の本発明に係るアンテナによれば、コイルとコンデンサとの間の電気接続部におけるリアクタンス成分の変動がなく、また、コイルとコンデンサとの間の電気接続部における抵抗成分も実質的にないので、アンテナの特性が安定し、効率的な電力伝送を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るアンテナが用いられる電力伝送システムのブロック図である。
【図2】電力伝送システムのインバーター部を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る受電アンテナ201におけるコンデンサ400の取り付け構造を説明する図である。
【図6】送電アンテナ105と受電アンテナ201とを近接させたときの送電効率の周波数依存性例を示す図である。
【図7】第1極値周波数における電流と電界の様子を模式的に示す図である。
【図8】第2極値周波数における電流と電界の様子を模式的に示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係るアンテナが用いられる電力伝送システムのブロック図である。なお、本発明に係るアンテナは、電力伝送システムを構成する受電側のアンテナと送電側のアンテナのいずれにも適用可能であるが、以下の実施形態においては主として受電側のアンテナに本発明のアンテナを適用した例につき説明する。
【0018】
本発明のアンテナが用いられる電力伝送システムとしては、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両への充電のためのシステムが想定されている。電力伝送システムは、上記のような車両に対して電力を非接触で伝送するため、当該車両を停車させることが可能な停車スペースに設けられる。車両充電用のスペースである当該停車スペースには、送電アンテナ105などが地中部に埋設されるような構成となっている。車両のユーザーはこの電力伝送システムが設けられている停車スペースに車両を停車させて、車両に搭載されている受電アンテナ201と、前記送電アンテナ105とを対向させることによって電力伝送システムからの電力を受電する。車両を停車スペースに停車させる際には、車両搭載の受電アンテナ201が、送電アンテナ105に対して伝送効率が良い位置関係となるようにする。
【0019】
電力伝送システムでは、電力伝送システム100側の送電アンテナ105から、受電側システム200側の受電アンテナ201へ効率的に電力を伝送する際、送電アンテナ105の共振周波数と、受電アンテナ201の共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うようにする。
【0020】
送電側システム100におけるAC/DC変換部101は、入力される商用電源を一定の直流に変換するコンバータである。このAC/DC変換部101からの出力は高電圧発生部102において、所定の電圧に昇圧されたりする。この高電圧発生部102で生成される電圧の設定は主制御部110から制御可能となっている。
【0021】
インバーター部103は、高電圧発生部102から供給される高電圧から所定の交流電圧を生成して、整合器104に入力する。図2は電力伝送システムのインバーター部を示す図である。インバーター部103は、例えば図2に示すように、フルブリッジ方式で接続されたQA乃至QDからなる4つの電界効果トランジスタ(FET)によって構成されている。
【0022】
本実施形態においては、直列接続されたスイッチング素子QAとスイッチング素子QBの間の接続部T1と、直列接続されたスイッチング素子QCとスイッチング素子QDとの間の接続部T2との間に整合器104が接続される構成となっており、スイッチング素子QA
とスイッチング素子QDがオンのとき、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオ
フとされ、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオンのとき、スイッチング素子QAとスイッチング素子QDがオフとされることで、接続部T1と接続部T2との間に矩形波の交流電圧を発生させる。なお、本実施形態においては、各スイッチング素子のスイッチングによって生成される矩形波の周波数の範囲は数100kHz〜数1000kHz程度である。
【0023】
上記のようなインバーター部103を構成するスイッチング素子QA乃至QDに対する駆動信号は主制御部110から入力されるようになっている。また、インバーター部103を駆動させるための周波数は主制御部110から制御することができるようになっている。
【0024】
整合器104は、所定の回路定数を有する受動素子から構成され、インバーター部103からの出力が入力される。そして、整合器104からの出力は送電アンテナ105に供給される。整合器104を構成する受動素子の回路定数は、主制御部110からの指令に基づいて調整することができるようになっている。主制御部110は、送電アンテナ105と受電アンテナ201とが共振するように整合器104に対する指令を行う。
【0025】
送電アンテナ105は、インダクタンス成分を有するコイルから構成されており、対向するようにして配置される車両搭載の受電アンテナ201と共鳴することで、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電アンテナ201に送ることができるようになっている。
【0026】
電力伝送システム100の主制御部110はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部110は、図示されている主制御部110と接続される各構成と協働するように動作する。
【0027】
また、通信部120は車両側の通信部220と無線通信を行い、車両との間でデータの送受を可能にする構成である。通信部120によって受信したデータは主制御部110に転送され処理されるようになっている。また、主制御部110は所定情報を、通信部120を介して車両側に送信することができるようになっている。
【0028】
次に、車両側に設けられている構成について説明する。車両の受電側のシステムにおいて、受電アンテナ201は、送電アンテナ105と共鳴することによって、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電するものである。このような受電アンテナ201は、車両の底面部に取り付けられるようになっている。
【0029】
受電アンテナ201で受電された交流電力は、整流部202において整流され、整流された電力は充電制御部203を通してバッテリー204に蓄電されるようになっている。充電制御部203は主制御部210からの指令に基づいてバッテリー205の蓄電を制御する。また、充電制御部203はバッテリー204の残量管理なども行い得るように構成される。
【0030】
主制御部210はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部210は、図示されている主制御部210と接続される各構成と協働するように動作する。
【0031】
インターフェイス部230は、車両の運転席部に設けられ、ユーザー(運転者)に対し所定の情報などを提供したり、或いは、ユーザーからの操作・入力を受け付けたりするものであり、表示装置、ボタン類、タッチパネル、スピーカーなどで構成されるものである
。ユーザーによる所定の操作が実行されると、インターフェイス部230から操作データとして主制御部210に送られ処理される。また、ユーザーに所定の情報を提供する際には、主制御部210からインターフェイス部230に対して、所定情報を表示するための表示指示データが送信される。
【0032】
また、車両側の通信部220は送電側の通信部120と無線通信を行い、送電側のシステムとの間でデータの送受を可能にする構成である。通信部220によって受信したデータは主制御部210に転送され、また、主制御部210は所定情報を通信部220を介して送電システム側に送信することができるようになっている。
【0033】
電力伝送システムで、電力を受電しようとするユーザーは、上記のような送電側のシステムが設けられている停車スペースに車両を停車させ、インターフェイス部230から充電を実行する旨の入力を行う。これを受けた主制御部210は、充電制御部203からのバッテリー205の残量を取得し、バッテリー205の充電に必要な電力量を算出する。算出された電力量と送電を依頼する旨の情報は、車両側の通信部220から送電側のシステムの通信部120に送信される。これを受信した送電側システムの主制御部110は高電圧発生部102、インバーター部103、整合器104を制御することで、車両側に電力を伝送するようになっている。
【0034】
次に、以上のように構成される電力伝送システム100で用いるアンテナの具体的な構成について説明する。以下、受電アンテナ201に本発明の構成を採用した例について説明するが、本発明のアンテナは送電アンテナ105に対しても適用し得るものである。
【0035】
図3は本発明の第1実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図である。また、図4は本発明の第1実施形態に係る受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図である。なお、以下の実施形態では、コイル体300として矩形平板状のものを例に説明するが、本発明のアンテナはこのようなこのような形状のコイルに限定されるものではない。例えば、コイル体300として円形平板状のものなども利用し得る。
【0036】
このようなコイル体300は、受電アンテナ201における磁気共鳴アンテナ部として機能する。磁気共鳴アンテナ部は、このコイル体300のインダクタンス成分のみならず、コンデンサ400に基づくキャパシタンス成分をも含むものである。
【0037】
樹脂ケース260は、受電アンテナ201のインダクタンス成分を有するコイル体300を収容するために用いられるものである。この樹脂ケース260は、例えばポリカーボネートなどの樹脂により構成される開口を有する箱体の形状をなしている。
【0038】
樹脂ケース260の矩形状の底板部261の各辺からは側板部262が、前記底板部261に対して垂直方向に延在するようにして設けられている。そして、樹脂ケース260の上方においては、側板部262に囲まれるような上方開口部263が構成されている。樹脂ケース260を車両本体部に取り付けるためには、従来周知の任意の方法を用いることができる。なお、上方開口部263の周囲には、車両本体部への取り付け性を向上するために、フランジ部材などを設けるようにしても良い。
【0039】
コイル体300は、ガラスエポキシ製の矩形平板状の基材310と、この表面側と裏面側に形成されている導電部により構成されている。より具体的には、基材310は主面として第1面311と、この第1面311と表裏の関係にある第2面312とを有しており、このうち第1面311に渦巻き状の第1面導電部330がコイルとして形成されることで、受電アンテナ201にインダクタンス成分が付与される。
【0040】
基材310上の第1面311において、渦巻き状のコイルを形成する第1面導電部330の内周側には第1面最内端部331が、また、外周側には第1面最外端部332がそれぞれ設けられている。
【0041】
第1面最内端部331においては、第1面311と第2面312との間を貫通する最内端部貫通孔333が、また、第1面最外端部332においては、第1面311と第2面312との間を貫通する最外端部貫通孔334が、それぞれ設けられている。
【0042】
導電線路241、導電線路242は受電アンテナ201と整流部202とを電気的に接続するものであり、このうち、導電線路241は第1面導電部330の第1面最内端部331と電気的に接続される。このために、図示するように、導電線路241の端子243を、第1面最内端部331上に配すると共に、基材310上の第1面311側からネジ251を、導電線路241の端子243の孔部、及び、最内端部貫通孔333に挿通し、基材310上の第2面312側においてナット252と螺合させる。これにより、導電線路241は第1面最内端部331と電気的に導通接続されると共に、機械的に固着される。
【0043】
一方、第1面最外端部332においては、受電アンテナ201におけるキャパシタンス成分となるコンデンサ400が直接的に固着される構成となっている。第1面最外端部332におけるコンデンサ400の固着構造について、図5も参照して説明する。図5は本発明の第1実施形態に係る受電アンテナ201におけるコンデンサ400の取り付け構造を説明する図である。この図5は、第1面最内端部331におけるコンデンサ400の取り付け断面を模式的に示している。
【0044】
まず、本発明の第1実施形態に係る受電アンテナ201に好適に用い得るコンデンサ400の概略について説明する。
【0045】
コンデンサ400を構成する誘電体401の一方には金属製の第1接続端子部403と導電材料からなる第1薄膜電極407が配され、他方には金属製の第2接続端子部404と導電材料からなる第2薄膜電極408が配されて、これらにより、誘電体401をサンドイッチ状に挟むことで容量を確保する。本発明の受電アンテナ201においては、誘電体401に用いる誘電材料として、酸化チタンが主成分として含まれるもの、或いは、チタン酸バリウムが主成分として含まれるものを用いることが好ましい。これら材料は誘電率が高く、したがって、これらを用いたコンデンサ400はコンパクトであるにもかかわらずキャパシタンスが高く、受電アンテナ201の体積容量を減らすことが可能となる。
【0046】
また、本発明の受電アンテナ201においては、誘電体401に用いる誘電材料として、チタン酸マグネシウムが主成分として含まれるもの、或いは、ステアタイト系材料が主成分として含まれるものを用いることも好ましい態様である。このような誘電材料は、誘電率が高く、したがって、これらを用いたコンデンサ400はコンパクトであるにもかかわらずキャパシタンスが高く、受電アンテナ201の体積容量を減らすことが可能となるからである。
【0047】
コンデンサ400の一方側に設けられた金属製の第1接続端子部403には、第1ネジ孔405が設けられている。導電線路242の端子244を、この第1ネジ孔405上に配すると共に、ネジ253を、導電線路242の端子244の孔部、及び、第1ネジ孔405に挿通し、螺着させる。これにより、導電線路242とコンデンサ400の一方側の第1接続端子部403との電気的導通、及び機械的固着が図られる。
【0048】
また、コンデンサ400の他方側に設けられた金属製の第2接続端子部404には、第2ネジ孔406が設けられている。コンデンサ400の第2接続端子部404を、第1面
最外端部332上に配するようにし、第2面312側から、ネジ254を最外端部貫通孔334と第2ネジ孔406に挿通して、ネジ254と第2ネジ孔406とを螺着する。これにより、コンデンサ400の第2接続端子部404と、第1面導電部330の第1面最外端部332とを電気的に導通させると共に、コンデンサ400と基材310とを機械的に固着させる。
【0049】
上記のように渦巻き状をなす第1面導電部330の内周側の第1面最内端部331、及び外周側の第1面最外端部332には、それぞれ導電線路241、導電線路242が電気接続される。これにより、受電アンテナ201によって受電した電力を整流部202へと導けるようになっている。このようなコイル体300は樹脂ケース260の矩形状の底板部261上に載置され、適当な固着手段によって底板部261上に固着される。
【0050】
本発明に係るアンテナは、コンデンサ400は、コイルを形成する第1面導電部330の第1面最外端部332に固着されているので、このような構成の本発明に係るアンテナによれば、コイルとコンデンサ400との間の電気接続部におけるリアクタンス成分の変動がなく、また、コイルとコンデンサ400との間の電気接続部における抵抗成分も実質的にないので、アンテナの特性が安定し、効率的な電力伝送を行うことが可能となる。
【0051】
磁性シールド280は、中抜き部285を有する平板状の磁性部材である。この磁性シールド280を構成するためには、フェライトなどの磁性材料を用いることができる。磁性シールド280は、樹脂ケース260に対して適当な手段により固着されることで、コイル体300の上方にある程度の空間を空けて配されるようになっている。このようなレイアウトにより、送電アンテナ105側で発生する磁力線は、磁性シールド280を透過する率が高くなり、送電アンテナ105から受電アンテナ201への電力伝送において、車両本体部を構成する金属物による磁力線への影響が軽微となる。
【0052】
本発明に係るアンテナにおいては、コイル体300の上方に配される平板状の磁性シールド280には、中抜き部285を設けることが好ましい。磁性シールド280に中抜き部285を設けることにより、磁性シールド280自体の損失が低減され、磁性シールド280のシールド効果を最大限に引き出すことが可能となる。また、中抜き部285を有する磁性シールド280においては、部材面積が少なくてすみ、アンテナのコスト低減が可能となる。なお、中抜き部285の広さは、磁性シールド280自体とコイル体300の導電部272とが積層方向からみて重畳しなくならない程度の広さに留めることが好ましい。
【0053】
ところで、本発明に係るアンテナにおいては、コンデンサ400を、コイルを形成する第1面導電部330の第1面最内端部331に固着させるのではなく、コンデンサ400は、第1面導電部330の第1面最外端部332に固着するようにしている。この理由について説明する。図6は送電アンテナ105と受電アンテナ201とを近接させたときの送電効率の周波数依存性例を示す図である。
【0054】
磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムにおいては、図6に示すように、第1極値周波数fm、第2極値周波数feの2つがあるが、電力伝送を行うときには、これらのいずれかの周波数でこれを行うことが好ましい。
【0055】
図7は第1極値周波数における電流と電界の様子を模式的に示す図である。第1極値周波数においては、送電アンテナ105のコイルに流れる電流と、受電アンテナ201のコイルに流れる電流とで位相が略等しくなり、磁界ベクトルが揃う位置が送電アンテナ105のコイルや受電アンテナ201のコイルの中央部付近となる。この状態を、送電アンテナ105と受電アンテナ201との間の対称面に対して磁界の向きが垂直となる磁気壁が
生じているものとして考える。
【0056】
また、図8は第2極値周波数における電流と電界の様子を模式的に示す図である。第2極値周波数においては、送電アンテナ105のコイルに流れる電流と、受電アンテナ201のコイルに流れる電流とで位相がほぼ逆となり、磁界ベクトルが揃う位置が送電アンテナ105のコイルや受電アンテナ201のコイルの対称面付近となる。この状態を、送電アンテナ105と受電アンテナ201との間の対称面に対して磁界の向きが水平となる電気壁が生じているものとして考える。
【0057】
なお、以上のような電気壁や磁気壁などの概念に関しては、居村岳広、堀洋一「電磁界共振結合による伝送技術」IEEJ Journal,Vol.129,No.7,2009、或いは、居村岳広、岡部浩之、内田利之、堀洋一「等価回路から見た非接触電力伝送の磁界結合と電界結合に関する研究」IEEJ Trans.IA,Vol.130,No.1,2010などに記載されているものを本明細書においては準用している。
【0058】
第1極値周波数fm、第2極値周波数feのいずれの周波数で電力伝送を実行するときにおいても、コイルの内周側では磁力線が集中することがある。このような磁力線が集中する箇所にコンデンサ400を配置すると、コンデンサ400を構成する電極(第1接続端子部403、第2接続端子部404、第1薄膜電極407、第2薄膜電極408)に渦電流が発生し、発熱することがある。このようなことから、本発明に係るアンテナにおいては、コンデンサ400を、コイルを形成する第1面導電部330の第1面最内端部331に固着させるのではなく、コンデンサ400は、第1面導電部330の第1面最外端部332に固着するようにしている。
【0059】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図9は本発明の第2実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図であり、図10は本発明の第2実施形態に係る受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図である。第2実施形態はコイル体300の構造が第1実施形態と異なるのみで、コイル体300とコンデンサ400との固着方法については、第1実施形態と同様であるので、以下、第2実施形態に特有なコイル体300の構造について説明する。
【0060】
図9は本発明の第2実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図であり、図9(B)はコイル体300を形成する基材310の厚さ方向を誇張的に表現した図である。また、図10は本発明の第2実施形態に係る受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図である。なお、以下の実施形態では、コイル体300として矩形平板状のものを例に説明するが、本発明のアンテナはこのようなこのような形状のコイルに限定されるものではない。例えば、コイル体300として円形平板状のものなども利用し得る。
【0061】
コイル体300は、ガラスエポキシ製の矩形平板状の基材310と、この表面側と裏面側に形成されている導電部により構成されている。より具体的には、基材310は主面として第1面311と、この第1面311と表裏の関係にある第2面312とを有しており、これら第1面311と第2面312の双方に渦巻き状の導電部が形成されることで、受電アンテナ201にインダクタンス成分が付与される。
【0062】
基材310上の第1面311には渦巻き状の第1面導電部330が形成されており、第1面導電部330の内周側には第1面最内端部331が、また、外周側には第1面最外端部332がそれぞれ設けられている。
【0063】
同様に、基材310上の第2面312には渦巻き状の第2面導電部350が形成されており、第2面導電部350の内周側には第2面最内端部351が、また外周側には第2面
最外端部352がそれぞれ設けられている。
【0064】
ここで、第1面導電部330と第2面導電部350とは、第1面311から第2面312に透過的にみたとき、ちょうど重なるように構成されている。このように構成することで、第1面311側の第1面導電部330に基づくインダクタンス成分と、第2面312側の第2面導電部350に基づくインダクタンス成分との相互インダクタンスを調整・設計することが容易となる。
【0065】
基材310中においては、第1面311と第2面312との間を貫通する第1スルーホール導通部341が、第1面最内端部331と第2面最内端部351とを導通するようになっている。また、第1面311と第2面312との間を貫通第2スルーホール導通部342が、第1面最外端部332と第2面最外端部352とを導通するようになっている。
【0066】
上記のような渦巻き状をなす第1面導電部330の内周側の第1面最内端部331には導電線路241が、また、外周側の第1面最外端部332にはコンデンサ400を介して導電線路242が電気接続される。これにより、受電アンテナ201によって受電した電力を整流部202へと導けるようになっている。このようなコイル体300は樹脂ケース260の矩形状の底板部261上に載置され、適当な固着手段によって底板部261上に固着される。
【0067】
以上のような本発明に係るアンテナは、インダクタンス成分として、第1面311の第1面導電部330に基づくもの、及び、第2面312の第2面導電部350に基づくもの、及び第1面導電部330と、これに重なるように形成される第2面導電部350とによって相互に形成される相互インダクタンスに基づくもの、を有することとなり、インダクタンスを大幅に低下させることがなく、さらに、第1面導電部330と第2面導電部350とは並列接続の関係になるので、アンテナにおける電路の抵抗が減少する。以上によれば、Q(Qaulity Factor)を向上させることが可能となるので、アンテナ間の伝送効率が向上する。
【0068】
以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を享受することが可能であると共に、インダクタンスを大幅に低下させることなく、抵抗値を下げてQ(Qaulity Factor)を向上させることができ、アンテナ間の伝送効率が向上する。
【0069】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態はコイル体300の構造が第1実施形態、第2実施形態と異なるのみで、コイル体300とコンデンサ400との固着方法については、第1実施形態、第2実施形態と同様であるので、以下、第3実施形態に特有なコイル体300の構造について説明する。
【0070】
第2実施形態においては、コイル体300における導電部は基材310の表裏に設けられる構成となっていたが、第3実施形態においては、コイル体300の導電部が基材310の中間層にも設けられている点で相違している。以下、この相違点であるコイル体300の構成について説明する。
【0071】
図11は本発明の第3実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図であり、図11(B)はコイル体300を形成する基材310の厚さ方向を誇張的に表現した図である。
【0072】
コイル体300は、ガラスエポキシ製の矩形平板状の基材310と、この表面側と裏面側と中間層に形成されている導電部により構成されている。より具体的には、基材310は主面として第1面311と、この第1面311と表裏の関係にある第2面312と、これら第1面311と第2面312と間の中間層313を有しており、これら第1面311
と第2面312と中間層313に渦巻き状の導電部が形成されることで、受電アンテナ201にインダクタンス成分が付与される。
【0073】
基材310上の第1面311には渦巻き状の第1面導電部330が形成されており、第1面導電部330の内周側には第1面最内端部331が、また、外周側には第1面最外端部332がそれぞれ設けられている。
【0074】
同様に、基材310上の中間層313には渦巻き状の中間層導電部360が形成されており、中間層導電部360の内周側には中間層最内端部361が、また、外周側には中間層最外端部362がそれぞれ設けられている。
【0075】
同様に、基材310上の第2面312には渦巻き状の第2面導電部350が形成されており、第2面導電部350の内周側には第2面最内端部351が、また外周側には第2面最外端部352がそれぞれ設けられている。
【0076】
ここで、第1面導電部330と中間層導電部360と第2面導電部350とは、第1面311から第2面312に透過的にみたとき、ちょうど重なるように構成されている。このように構成することで、第1面311側の第1面導電部330に基づくインダクタンス成分と、中間層313の中間層導電部360に基づくインダクタンス成分と、第2面312側の第2面導電部350に基づくインダクタンス成分と、の相互インダクタンスを調整・設計することが容易となる。
【0077】
基材310中においては、第1面311と中間層313との間を貫通する第1スルーホール導通部341が、第1面最内端部331と中間層最内端部361とを導通するようになっている。また、第1面311と中間層313との間を貫通第2スルーホール導通部342が、第1面最外端部332と中間層最外端部362とを導通するようになっている。
【0078】
また、中間層313と第2面312との間を貫通する第3スルーホール導通部343が、中間層最内端部361と第2面最内端部351とを導通するようになっている。また、中間層313と第2面312との間を貫通する第4スルーホール導通部344が、中間層最外端部362と第2面最外端部352とを導通するようになっている。
【0079】
以上のような構成のコイル体300を有する第3実施形態においても、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。なお、第3実施形態においては、導電部が第1面311、中間層313、第2面312の3層に形成されて、それぞれの導電部の端部同士が基材を貫通するスルーホール導通部で導通される構成であったが、中間層を2層以上設けて、導電部を設ける層を4層以上とすることも可能である。
【0080】
なお、中間層313は基材中に埋設されているのに対して、第1面311や第2面312は露出した構成となっている。このため、基材のうち、第1面311や第2面312のような露出した導電部が設けられている基材を、特許請求の範囲では、「露出する基材」として表現している。
【0081】
また、本実施例においては、基材310にガラスエポキシ樹脂を用いた例について記述したが、より放熱効果の高いセラミック基材を用いても良く、更にはアルミなど金属基材に絶縁膜を施した基材を用いても良い。また、もちろんフレキシブルプリント基板などを用いた物であっても良い。
【0082】
以上のような第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を享受することが可能であると共に、インダクタンスを大幅に低下させることなく、抵抗値を下げてQ(Qau
lity Factor)を向上させることができ、アンテナ間の伝送効率が向上する。
【符号の説明】
【0083】
100・・・電力伝送システム
101・・・AC/DC変換部
102・・・高電圧発生部
103・・・インバーター部
104・・・整合器
105・・・送電アンテナ
110・・・主制御部
120・・・通信部
201・・・受電アンテナ
202・・・整流部
203・・・充電制御部
204・・・バッテリー
210・・・主制御部
220・・・通信部
230・・・インターフェイス部
241・・・導電線路、
242・・・導電線路、
243・・・端子、
244・・・端子、
251・・・ネジ、
252・・・ナット、
253・・・ネジ、
254・・・ネジ、
260・・・樹脂ケース
261・・・底板部
262・・・側板部
263・・・上方開口部
280・・・磁性シールド
281・・・シールド保持板
282・・・磁性シールド分割片
285・・・中抜き部
300・・・コイル体
310・・・基材
311・・・第1面
312・・・第2面
313・・・中間層
330・・・第1面導電部
331・・・第1面最内端部
332・・・第1面最外端部
333・・・最内端部貫通孔、
334・・・最外端部貫通孔、
341・・・第1スルーホール導通部
342・・・第2スルーホール導通部
343・・・第3スルーホール導通部
344・・・第4スルーホール導通部
350・・・第2面導電部
351・・・第2面最内端部
352・・・第2面最外端部
360・・・中間層導電部
361・・・中間層最内端部
362・・・中間層最外端部
400・・・コンデンサ
401・・・誘電体
403・・・第1接続端子部
404・・・第2接続端子部
405・・・第1ネジ孔
406・・・第2ネジ孔
407・・・第1薄膜電極
408・・・第2薄膜電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する基材と、
前記基材上の前記第1面に形成され、コイルを形成する第1面導電部と、
前記コイルと接続されると共に、前記第1面側に載置されるコンデンサと、を有することを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する基材と、
前記基材上の前記第1面に形成されると共に、第1面最内端部と第1面最外端部の2つの
端部を有しコイルを形成する第1面導電部と、
前記第1面最外端部と接続されると共に、前記第1面側に載置されるコンデンサと、を有することを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する基材と、
前記基材上の前記第1面に形成されると共に、第1面最内端部と第1面最外端部の2つの
端部を有しコイルを形成する第1面導電部と、
前記基材上の前記第2面に形成されると共に、第2面最内端部と第2面最外端部の2つの端部を有しコイルを形成し、前記第1面から前記第2面に透過的にみたとき、前記第1面導電部と重なる第2面導電部と、
前記第1面と前記第2面との間を貫通して前記第1面最内端部と前記第2面最内端部とを導通する第1スルーホール導通部と、
前記第1面と前記第2面との間を貫通して前記第1面最外端部と前記第2面最外端部とを導通する第2スルーホール導通部と、
前記第1面最外端部と接続されると共に、前記第1面側に載置されるコンデンサと、を有することを特徴とするアンテナ。
【請求項4】
最内端部と最外端部とを有しコイルを形成する導電部が基材を介して積層されるようにして複数設けられ、
積層された前記基材のうち露出する基材の前記最外端部にコンデンサが接続されると共に、その露出した基材に該コンデンサが載置され、
前記導電部における前記最内端部同士は前記基材を貫通するスルーホール導通部により互いに導通され、
前記導電部における前記最外端部同士は前記基材を貫通するスルーホール導通部により互いに導通され、
積層方向から透過的にみたとき、複数の前記導電部は全て重なるように構成されることを特徴とするアンテナ。
【請求項5】
前記コンデンサの誘電材料には酸化チタンが含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項6】
前記コンデンサの誘電材料にはチタン酸マグネシウムが含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項7】
前記コンデンサの誘電材料にはステアタイト系材料が含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項8】
前記基材と前記コンデンサが共に共通のケースに収容されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−16550(P2013−16550A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146495(P2011−146495)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】