アントラキノン誘導体調合物
式(I):
(式中、Aは、NHおよびN(O)R’R”の間の鎖長が少なくとも炭素原子2個であるCアルキレン基であり、そしてR’およびR”は各々別々に、C1−4アルキル基、C2−4ヒドロキシアルキル基およびC2−4ジヒドロキシアルキル基から選択されるか、または、R’およびR”は共にC2−6アルキレン基である)
の化合物の安定な無菌水溶液を密閉容器中に単位用量形態で調合する。該溶液は、式(I)の化合物の濃度が150mg/mlまでであり、pHが5〜9の範囲内である。該溶液は凍結乾燥工程なしで調製することができる。
(式中、Aは、NHおよびN(O)R’R”の間の鎖長が少なくとも炭素原子2個であるCアルキレン基であり、そしてR’およびR”は各々別々に、C1−4アルキル基、C2−4ヒドロキシアルキル基およびC2−4ジヒドロキシアルキル基から選択されるか、または、R’およびR”は共にC2−6アルキレン基である)
の化合物の安定な無菌水溶液を密閉容器中に単位用量形態で調合する。該溶液は、式(I)の化合物の濃度が150mg/mlまでであり、pHが5〜9の範囲内である。該溶液は凍結乾燥工程なしで調製することができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、がんの治療に有効なビス−バイオリダクティブエージェント(bis-bioreductive agent)であるAQ4Nのような新規のアントラキノン誘導体調合物に関する。
WO−A−91/05824(National Research Development Corporation)は、式:
【0002】
【化1】
【0003】
{式中、R1、R2、R3およびR4は各々別々に、水素、X、NH−A−NHRおよびNH−A−N(O)R’R”(式中、Xは、ヒドロキシ、ハロゲノ、アミノ、C1−4アルコキシまたはC2−6アルカノイルオキシであり、Aは、NHとNHRまたはN(O)R’R”との間の鎖長が少なくとも炭素原子2個であるCアルキレン基であり、そしてR、R’およびR”は各々別々に、C1−4アルキル基、C2−4ヒドロキシアルキル基およびC2−4ジヒドロキシアルキル基から選択され、ここで、窒素原子に結合した炭素原子はヒドロキシ基をもたず、また、2個のヒドロキシ基で置換されている炭素原子は存在しない、または、R’およびR”は共にC2−6アルキレン基であり、このC2−6アルキレン基は、R’およびR”が結合している窒素原子とともに、3〜7個の原子を環内に有する複素環式基を形成している)から選択される}
の化合物であって、場合により生理学的に許容され得る塩の形態である化合物を開示している。
【0004】
この一般式の範囲内の好適な化合物は、ビス−N−オキシドであるAQ4N(バノキサントロン)であり、これはAQ4を酸化することにより合成することができる:
【0005】
【化2】
【0006】
AQ4Nは実際にはプロドラッグであり、インビボでは逆反応が起こり、低酸素性がん細胞内における還元的代謝により、そのプロトン化した形態である活性物質AQ4を与える。このプロドラッグは、活性物質であるAQ4と比べた場合、比較的非毒性であり、医薬として投与するためには特に魅力的である。しかし、AQ4Nは、容易には結晶形態を与えない。今までは、投与用には、塩または凍結乾燥物質の形態で、AQ4Nを製造し調合することが望ましいと考えられてきた。
【0007】
AQ4Nは、二塩酸塩であるAQ4N・2HClの形態として報告されてきた。例えば、J. Chem. Soc., Perkin Trans. I, 1999, 2755-2758(Leeら)およびWO−A−00/05194(BTG International Limited)を参照されたい。しかし、AQ4N・2HCl原料の研究により、不純物である1−アミノ−4−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}−5,8−ジヒドロキシアントラキノン(AQMNと表す)を有意な量含むことが実証されている。AQMNは、LCMSによって特性解析され、さらに、AQMN物質:
【0008】
【化3】
【0009】
の純粋試料を合成することによって確認されている。
この不純物は、AQ4Nの分解により形成することができ、更に有意なことには、望ましくない水準の細胞毒性を示し、これは一般にAQ4N自体の細胞毒性より高い。この細胞毒性の水準は、比較的非毒性であるプロドラッグの形態で投与することが意図された化合物においては回避すべきである。
【0010】
AQMN分解は、優勢な経路であるが、酸性および中性の水溶液条件下でのAQ4Nの更なる分解生成物は、更に望ましくない生成物、すなわちモノ−N−オキシドであるAQ4M:
【0011】
【化4】
【0012】
である。
同時係属する特許出願であるWO−A−03/078387(BTG International Limited)は更に、−3.0〜9.0の範囲内のpKaを有する、生理学的に許容され得る酸とのAQ4Nの塩を開示している。また、この特許出願は、水溶液中に溶解したときに溶液のpHが5〜9の範囲内であるようにこの化合物を調合することも開示している。
【0013】
医薬製品の製造後にこの製品の期限が切れる(もはや患者に使用できない)時点は、意図される薬剤の含有量の減少、および/または、付随する不純物の増加によって定義される。親化合物の分解速度を減少させることにより、この化合物が、期限が切れる時点(有効期限)に到達するまでにかかる時間が増加する。必要であれば、最終生成物を凍結乾燥調合物として製造することによって、薬剤化合物を安定化する。
【0014】
しかし、AQ4Nに関して、本発明者らは、凍結乾燥調合物としてのAQ4Nの安定性および製造品質が、凍結乾燥ケーキの水分含有量と反比例することを見出した:即ち、水分が少なければ少ないほど、最終生成物の品質および安定性は悪くなる。さらに、相当する凍結乾燥調合物よりも、(適当なpHの)水溶液としての方が安定である。このように、凍結乾燥を行わず、AQ4Nを製造する方がよい。
【0015】
したがって、本発明によれば、式(I)
【0016】
【化5】
【0017】
(式中、Aは、NHおよびN(O)R’R”の間の鎖長が少なくとも炭素原子2個であるCアルキレン基であり、そしてR’およびR”は、各々別々に、C1−4アルキル基、C2−4ヒドロキシアルキル基およびC2−4ジヒドロキシアルキル基より選択され、ここで、窒素原子に結合した炭素原子はヒドロキシ基を持たず、また、2個のヒドロキシ基で置換されている炭素原子は存在しないか、または、R’およびR”は共にC2−6アルキレン基であり、このC2−6アルキレン基は、R’およびR”が結合している窒素原子とともに、3〜7個の原子を環内に有する複素環式基を形成している)
の化合物の安定な無菌水溶液であって、
密閉容器中の単位用量形態において、式(I)の化合物の濃度が150mg/mlまでであり、pHが5〜9の範囲内である、前記溶液が提供される。
【0018】
好ましくは、かかる溶液のpHは、5.0〜8.4の範囲内であり、より好ましくは、6.0〜8.0であり、7.0〜8.0のpHが最適である。式(I)の化合物がAQ4Nである場合は、pH7.4が最も安定であることが示された。これは、最も安定であるのはpH6と観察された、凍結乾燥AQ4N調合物とは対照的である。
【0019】
好ましくは、式(I)の化合物は、0.1〜100mg/mlの濃度で存在する。
式(I)の化合物は、あらかじめ生理的に許容され得る塩の形態で単離してもよく、これは有機または無機酸との酸付加塩となる。好ましくは、この生理的に許容され得る酸は、−3.0〜9.0の範囲内、より好ましくは、2.0〜9.0の範囲内のpKaを有する。より好ましくは、この生理的に許容され得る酸は、2.0〜6.0の範囲内のpKaを有する。
【0020】
好ましくは、この生理的に許容され得る酸は、酒石酸、マロン酸、ジクロロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、ピメリン酸、および酢酸からなる群より選択される。
【0021】
より好ましくは、この生理的に許容され得る酸は、3.0〜6.0の範囲内のpKaを有する。この生理的に許容され得る酸は、特に有機酸、特定的には、有機モノ−、ジ−、またはトリ−酸、そして特に、酒石酸、クエン酸、ピメリン酸および酢酸からなる群より選択されるものであってもよい。
【0022】
式(I)中のA基は、分枝であってもよいが、都合の良いことには、直鎖アルキレン基、即ち、テトラメチレン、特にトリメチレン、または、特定的にはエチレン、が好都合である。
【0023】
また、R’およびR”は、分枝炭素鎖を有していてもよいが、アルキル基またはヒドロキシ置換アルキル基のいずれかである直鎖が好都合である。R’およびR”がモノヒドロキシアルキル基である場合、末端が置換されていると好都合であり、また、R’およびR”がジヒドロキシアルキル基である場合、末端がヒドロキシ基の一つで置換されていると好都合である。R’およびR”がアルキルである場合、炭素原子が3個、または、特に2個もしくは1個である基が好ましく、また、R’およびR”がヒドロキシ置換アルキルである場合、炭素原子が3個であるアルキル基が好ましく、あるいは、モノヒドロキシアルキル基の場合は、代わりに、炭素原子が2個であるアルキル基が好ましい。R’およびR”の好ましい個々の基の例は、CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CH2OH、CH2CH2CH2OH,CH(CH3)CH2OHおよびCH2CHOHCH2OHである。
【0024】
R’およびR”は、通常は同一となる。
別の態様では、既に示したように、R’およびR”は、それらが結合している窒素原子とともに、複素環式基−N(CH2)n(式中、nは2〜6である)、即ち、アジリジン−1−イル、アゼチジン−1−イル、ピロリジン−1−イル、ピペリジン−1−イル、およびペルヒドロアゼピン−1−イルであってもよく、アゼチジン−1−イルおよび特にアジリジン−1−イルのようなより小さい基が最も重要である。
【0025】
特に重要である具体的なNH−A−N(O)R’R”基は、NH−(CH2)2−N(O)(CH3)C2H5、NH−(CH2)2−N(O)(C2H5)2、NH−(CH2)2−N(O)(CH2CH2OH)2、NH−(CH2)2−N(O)(CH2CH2CH2OH)2、NH−(CH2)2−N(O)(CH(CH3)CH2OH)2、NH−(CH2)2−N(O)(CH2CHOHCH2OH)2、および特にNH−(CH2)2−N(O)(CH3)2である。
【0026】
この生理的に許容され得る塩は、単に水溶液中に溶解している場合は、通常、所望の範囲より低いpHを有する溶液を与えることになる。例えば、1.4ミリモル溶液のAQ4N酢酸塩水溶液は、pHが3.8である。このように、好ましくは、式(I)の化合物は、追加の成分を含有する混合物中に調合し、溶液のpHが5〜9の範囲内になるよう緩衝化する。
【0027】
緩衝液は、塩および酸の溶媒和混合物であり、少量の酸および塩基をこの溶液に加える場合にpH変化に対抗する。適する緩衝液としては、酢酸ナトリウム緩衝液およびオルトリン酸ナトリウム緩衝液が挙げられる。
【0028】
生理的に許容され得る酸との塩は、任意の慣用的な手段、例えば、有機塩基(I)と適切な無機または有機の酸との反応により、通常は、溶液中での単なる混合により、調製することができる。酸付加塩は、一般的には、水、メタノール、エタノールおよび同様の溶媒中で比較的可溶性である結晶性固体である。また、一つの塩の形態は、所望の生理的に許容され得る酸で前処置したカラムを用いるクロマトグラフィーにより、他の形態に転化させてもよい。
【0029】
式(I)の化合物は、家畜および特定的にはヒトの両方の用途のための医薬として用いるため、生理的に許容され得る希釈剤またはキャリヤーとともに様々な方法により調合してもよい。例えば、この化合物は、液体希釈剤またはキャリヤー、例えば、水溶液、懸濁液または乳濁液を組み込んだ組成物として施用されてもよく、この組成物は、しばしば、非経口投与のために注射可能な形態で使用されてもよく、したがって、無菌かつ発熱因子を含まないことが好都合であろう。また、経口投与を用いてもよい。
【0030】
ヒトおよび家畜の両方の状況において使用する、注射または経口経路以外の他の投与のタイプとしては、座薬またはペッサリーの使用が挙げられる。医薬組成物の別の形態は、頬または鼻へ投与するためのもの、あるいは別の態様では、眼に投与するための滴剤であり、これは都合のよいことには、無菌の液体希釈剤またはキャリヤーを含有してもよい。局所投与のための他の調合物としては、ローション、軟膏、クリーム、ゲルおよびスプレーが挙げられる。
【0031】
組成物は、単位用量形態、即ち、単位投与量を含有するか、または、複数の単位投与量もしくは単位投与量以下を含有する、別個の部分の形態で調合されてもよい。
使用される化合物の用量は、特定の化合物の活性と治療される状態に従って変わることになるが、指標としては、一日あたり25〜500mg/m2の範囲内、特定的には、一日あたり50〜300mg/m2の範囲内で選択された用量が多くの場合に適していると言うことができるが、化合物(I)によりもたらされる有毒な副作用がより低いレベルであることを考慮して、これより高い用量、例えば、一日あたり25〜750mg/m2の範囲内、または更に最大で1200mg/m2の用量を考慮してもよい。この用量養生法は、どんなに多くの日数であっても問題の患者にとって適切であれば継続してもよく、所望により、一日の用量をいくつかの分離投与に分けてもよい。このように、例えば、進行した乳がん、非ホジキンリンパ腫および肝がんのような状態の場合、治療を一日行い、次いで、21日などの間隔をあけた後に繰り返し投与することによって治療することが適切であろうが、急性非リンパ性白血病を治療するためには、連続して5日以上の治療がより適しているであろう。別の方法としては、数日の間隔をあけて一回投与する、例えば、2または3週間毎に一回の投与を用いてもよい。
【0032】
化合物(I)は、ヒトを含む温血動物のがん治療に特別な価値がある。これら化合物は、種々の形態の肉腫およびがん腫のような固形腫瘍の治療に関して重要であり、また、白血病のような散在性腫瘍のためにも重要である。特に重要な領域は、乳がん、肺がん、前立腺がん、膵臓がん、および食道がんの治療、ならびに、非ホジキンリンパ腫および急性非リンパ性白血病の治療である。がんの治療において、非経口および時には局所投与が、多くの場合特に重要である。さらに、化合物(I)を、有糸分裂阻害剤(例えば、ビンブラスチン);アルキル化剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、およびシクロホスファミド);他の代謝拮抗物質(例えば、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、およびヒドロキシ尿素);介在性(intercalating)抗生物質(例えば、アドリアマイシンおよびブレオマイシン);酵素(例えば、アスパラギナーゼ);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド)、ならびに生物学的応答調節剤(例えば、インターフェロン)のような他の抗がん剤と共に、別々に与えるかまたは同一組成物内で一緒に与える併用治療に用いることは好都合であろう。また、化合物(I)は、腫瘍の放射線療法と共に、併用療法に用いてもよい。
【0033】
このように、本発明は、がんの退縮および緩和を助けるための方法を含み、この方法は、これまでに説明したように、治療上有効な量の化合物(I)を患者に投与することを含む。
【0034】
抗がん使用に加えて、化合物(I)は、キレート化剤としての活性を考慮して、種々の他の製薬用途に関して重要である。
また、本発明は、これまでに定義したように、密閉容器内に単位用量形態で溶液を調製するための方法を含み、この方法は、式(I)化合物の安定かつ無菌の水溶液を容器内に導入し、そしてこの容器を密封することを含み、その際、溶液は凍結乾燥工程なしで調製される。
【0035】
本発明は、以下の実施例により説明する。
実施例
実施例1:AQ4Nの物理化学的性質へのpHの影響の実証
AQ4Nジヒドロクロリド溶液のpHの変化をモニターして、AQ4NのAQMNへの分解を測定した。pH曲線を図1および図2に示す。図1は、pH7.7〜pH9.4の間での明らかな解離を示し、これは、図2に示すおよそ2モル当量での解離事象に相当する。低いpHでの解離事象を観察することができ、推論としては、4.1〜4.6の間のpHが割り当てられ、モル当量は0.95〜1.15の間である。
【0036】
実施例2:AQMNの細胞毒性の実証
AQ4NおよびAQMNのP388系における純粋試料(99.3%)の毒性を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
これらのデータに基づけば、AQMNは、同一系内でのAQ4Nの細胞毒性より少なくとも5倍大きい細胞毒性を有する。AQ4Nのすべての試料は実質的な割合のAQMNを含有し、細胞毒性の結果に影響を与えることになるから、「より大きい」と言う修飾語句は必要である。
【0039】
実施例3:溶液中でのAQ4Nジヒドロクロリドの不安定性−AQMNの蓄積−の実証
AQ4Nの5mg/ml溶液を用い、それぞれ、水、20mM酢酸ナトリウム緩衝液および20mMオルトリン酸ナトリウム緩衝液に相当する、pH2.4、4.5および6.8にてAQ4Nの分解を調べた。AQ4Nの最初の分解経路は、AQMNへの転化である。40℃で中間時間点(14日)までインキュベートした5mg/ml溶液中のAQMN濃度の増加を図3に示す。
【0040】
分解速度は、これらの条件下で一日あたり、0.84%(AQ4Nに関して)、0.19%(AQ4Nに関して)および0.02%(AQ4Nに関して)のAQMN含量の増加に相当する。
【0041】
標準として用いた物質中の既知量のAQMNに関して直線回帰および相互相関を用いると、これらのデータは表3に示したAQMNの蓄積速度を示す。
【0042】
【表2】
【0043】
図4に示すように、63日後のデータにおいて類似の傾向が観察された。蓄積速度(上記と同じやり方で計算)は、リン酸緩衝液中で、AQMNが一月あたり0.6%増加することを示している。
【0044】
実施例4:溶液中のAQ4Nジヒドロクロリドの不安定性−AQ4Nの分解−の実証
AQ4Nの安定性へのpHの影響を、異なる溶液においてAQ4N分解を調べることにより検討した。選択した溶液は、前実験のとおり、蒸留水、20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH=4)および20mMリン酸緩衝液(pH=7)である。5mg/mlのAQ4Nの緩衝溶液を調製した後、そのpHを必要とされる緩衝液のpHに校正した。最終pH値は、蒸留水、20mM酢酸ナトリウム緩衝液および20mMリン酸ナトリウム緩衝液についてそれぞれ、2.4、4.5および6.8であった。これら試料を40℃でインキュベートし、規則的な間隔で採取した。試料を希釈してからHPLC分析により、アッセイを行った。
【0045】
14日後に暫定的な分析を行った。そのデータを図5に示す。
さらに、これら溶液を全体で63日間40℃でインキュベートした。最終的なグラフを図6に示す。AQ4N含量について得られた値は、もとの試料中で重量測定されたAQ4Nの量と(実験誤差の範囲内で)一致した。
【0046】
実施例5:「標準的」オートクレーブ条件に対する、pH7.4の10mMリン酸ナトリウム緩衝液中の40mg/ml溶液としてのAQ4Nの不安定性の実証
pH7.4の10mMリン酸ナトリウム緩衝液中、40mg/mlにてAQ4Nの溶液を調製した。この溶液の試料を、標準的なオートクレーブサイクル(121℃、15分間)の前および後で分析した。オートクレーブ後の試料は、7.3%のAQ4N濃度の減少を示した。これに相当する増加が関連する不純物に関して認められた。
【0047】
実施例6:種々の濃度でのAQ4N安定性とpHとの関係の実証
幾つかのAQ4N溶液を、異なるpH値にて異なる濃度のAQ4Nを含むリン酸ナトリウム緩衝液(10mM)として調製した。得られた結果を表4に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
これら試料をインキュベーション前に分析し、次いで、55℃のインキュベーター内に置いた。溶液を、1日、1週間、2週間、4週間および8週間後に繰返し採取した。
AQ4N含量に関する結果を図7に示し、AQMNの増加に関する結果を図8に示す。
【0050】
これらの結果は、10〜40mg/ml(pH7.4にて)の間では、分解速度に対して濃度変化の影響がほとんどないことを示している。また、これらの結果は、次のようなAQ4NのpH安定性のプロフィールを示している:
【0051】
【数1】
【0052】
実施例7:種々のpH値での凍結乾燥調合物としてのAQ4Nの安定性の実証
AQ4Nの3つの凍結乾燥したバッチ(40mg/ml、pH=6.0、7.0および8.0のリン酸ナトリウム緩衝液10mM)を、それぞれ、BN99019、BN99020およびBN99021として製造した。これらのバッチの試料を、4℃、25℃および40℃で貯蔵し、表5にしたがって種々の時間点で分析した。
【0053】
【表4】
【0054】
それぞれの時間点での、AQ4N含量、AQ4N関連不純物レベル、水分含量、pHおよびモル浸透圧濃度(osmolality)を調べた。後者の3要素については、さらなる検討を行わない。
【0055】
pH=6.0、7.0および8.0調合物(それぞれ、BN99019、BN99020、BN99021)のAQ4N含量のレベルを、個々の温度について図9〜11に時間に対して示す。図9は4℃で、図10は25℃で、そして図11は40℃で貯蔵した場合のAQ4N含量を示す。
【0056】
AQ4Nの分解(親化合物の減少により測定される)は、25℃および40℃で明りょうに認めることができた。BN99019(pH=6.0)は、最も安定であると思われる。
【0057】
4℃および25℃の貯蔵条件下で、3つのバッチについて関連する不純物のレベルをプロットした。
AQ4N製造生成物の分解プロフィールは、主要な分解生成物がAQ4MおよびAQMNであることを示している。pH=6.0、7.0および8.0(それぞれ、BN99019、BN99020およびBN99021)の調合物について、関連する不純物レベルを図12〜15に示す。図12および13は、それぞれ、4℃でのAQ4MおよびAQMNの変化を示し、図14および15は、25℃でのAQ4MおよびAQMNの変化を示している。
【0058】
25℃の結果から、pH=6.0の調合物が最も安定であることが確認される。しかしながら、4℃で貯蔵したBN99019試料中の分解生成物のレベルは、pH=7.0および8.0の調合物よりわずかに高いことが明らかである。
【0059】
実施例8:40mg/mlでのAQ4Nの安定性とpHとの関係の実証
低濃度(5mg/ml)でのAQ4Nの安定性に関する前述の検討(実施例3および4を参照されたい)により、中性pHにおいてAQ4N分子の安定性が高いことが示唆された。この実験は、調合されたAQ4N生成物が水で戻した調合物(40mg/ml)としてどれだけ安定であるかを調査するために計画された。調合されたAQ4N材料を、pH6.0、7.0、8.0の10mMリン酸ナトリウム緩衝液中において40mg/mlにて調製し、凍結乾燥した。これらのバッチを、凍結乾燥材料の安定性を示すものとして(実施例7を参照されたい)、3年間の安定性を調べるために置いておいた。前記時間の後、(AQ4Nの損失が最小であると示された)4℃で貯蔵したバイアルを2mlの蒸留水中で戻した。(安定性についての最終時点でのpHは、それぞれ、5.916、6.946、7.928であった。)戻した後、2つのバイアルを、AQ4N、AQMNおよび他の関連する不純物について分析した。凍結乾燥したままのバイアルおよび戻したバイアルの両方を表6〜8に詳細に示すとおり貯蔵した。
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
55℃で貯蔵した試料についてのAQ4N含量の結果を図16に示す。
これらのデータから、pH6.0では凍結乾燥物質は相当するpH7または8の材料より安定であることが確認されたが、調合したAQ4Nは、凍結乾燥調合物としてよりも溶液としての方が安定であることが示された。本実験でのAQ4N溶液のpH安定性のプロフィールは次に示すとおりである:
【0064】
【数2】
【0065】
分解生成物(AQMNおよびAQ4M)に関する結果を、溶液試料について図17および18に示す。
【0066】
実施例9および6の分解速度は、これらの個々の実験において標準および試料として異なるAQ4N原料を用いたため、直接数値的に比較することはできない。
【0067】
実施例10:AQ4N製品の品質への(溶液調製物に対する)凍結乾燥の影響の実証
調合したAQ4N物質を、pH7.0の10mMリン酸ナトリウム緩衝液中40mg/mlに調製した。この溶液の一部分をアンプルへ、残りをバイアルに満たし、表9および10に詳細に示したサイクルに従って凍結乾燥した。
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
凍結乾燥の前および後の試料(それぞれアンプルおよびバイアルに満たした)のAQ4N含量を測定した。結果は表11に示すとおりである。
【0071】
【表10】
【0072】
関連するAQ4N原料のAQMN含量は、標準と比較して22.6%である。このことは、AQMNが凍結乾燥サイクル中に生成され、凍結乾燥段階を除去することが製品の全体品質を改良することを示している。
【0073】
実施例11:AQ4N安定性への温度の影響の実証
実施例10で調製したAQ4N溶液(液体で満たした)アンプルを、4℃および25℃でインキュベーションすることによって、その安定性について試験した。種々の時間点においてバイアル中のAQ4N、AQMNおよび関連する不純物の含量をHPLCで分析した。4℃で貯蔵したアンプル(BN03−05と表示)のAQMN含量を、実施例10で調製した(4℃で貯蔵)AQ4N凍結乾燥バイアル(BN03−06)と比較して図19に示す。25℃で貯蔵したアンプルでのAQMN含量を、実施例7で調製し25℃で貯蔵した相当するAQ4N凍結乾燥バイアル(BN99020、pH=7)と比較して図20に示す。(両グループについてのデータは、およそ200日での同等の時間について示しているにすぎない。)
BN03−05およびBN99020は、異なる原料のバッチから調製されている(そのため最初から異なるレベルのAQMNを含んでいる)ので、y−軸は最終製品バッチの初期AQMN含量の割合(%)として表されていることを銘記すべきである。
【0074】
実施例12:4℃でのAQ4Nの安定性の実証
水性調合物の安定性に関するさらなる例示を、実施例10と同様の方法で調製した追加バッチの(液体で満たした)AQ4N溶液のアンプル(BN03−12)によって実証した。しかし、BN03−12は、5ml溶液中により大容量の200mgを有するように調製した。バッチを4℃に置いておき、適する有効期限の範囲を与えるように種々の時間点で分析した。この材料のAQMNレベルは実施例11と一致し、AQMN含量の値(標準に対して)は、製造後の0.226から、4℃にて162日後の0.232に増加した。
【0075】
実施例13:凍結乾燥調合物としてのAQ4Nの水分含量に関する不安定性の実証
AQ4N凍結乾燥生成物(40mg/ml、pH7.0の10mMリン酸ナトリウム緩衝液)のいくつかのバッチを、これまでに説明したものと類似または同一のやり方で調製した。
【0076】
AQMNの増加は2つの方法で観察される:製造中におけるAQMN含量の段階的増加(前述の実施例10を参照されたい)および時間経過による漸進的増加(図21を参照されたい)。
【0077】
いくつかのバッチにおける4℃でのAQMNの増加を図22に示す。
グラフ上の直線は、特定のバッチを製造するために用いた原料中で認められたAQMNレベルを示している。(原料1は、バッチ01−13、02−18および03−06のために用いられた。原料2は、バッチ99020、00−15および01−10のために用いられた。)
【0078】
これらバッチの水分含量(QC/製造後試験にてカールフィッシャー滴定により測定)を、4℃での分解速度(直線プロットに適合させた場合のAQMN増加の傾きにより測定した)に対してプロットした。結果を図23に示す。
【0079】
これらバッチの水分含量(QC/製造後試験にてカールフィッシャー滴定により測定)を、製造(具体的には凍結乾燥)中のAQMNレベルの段階的増加に対してプロットした。結果を図24に示す。
【0080】
これらのグラフはいずれも、(製造の間および製造後の)生成物の分解と製造後の凍結乾燥ケーク中の水分量との間に相関があることを示している。これは、水分含量によって表される凍結乾燥過程自体の作用であることが明らかである。
【0081】
実施例14:安定な無菌水溶液の調製
装置および周囲環境の準備ならびに条件
AQ4N最終製品を製造するための装置および容器を、無菌製品の無菌製造のために適切に処置した(乾熱滅菌、オートクレーブ殺菌およびIPA消毒を含む)。調製および製造中に使用したクリーンルームおよびクリーンベンチ(laminar air flow cabinet)は、無菌製品の製造のために適切な様式で監視した(固定接触プレート、気圧差ならびに粒子計測を使用)。製造過程において重量測定に使用する天秤は、製造の直前に分銅で校正した。
【0082】
緩衝液の調製
3桁天秤を用いて、3.450gのオルトリン酸二水素ナトリウム一水和物(一塩基)を600mlビーカー中に秤量し、8.900gのオルトリン酸水素二ナトリウム二水和物(二塩基)を1000mlビーカー中に秤量した。潅水(WFI)を一塩基のビーカーに400ml、二塩基のビーカーに800ml、それぞれ加えた。磁気攪拌子を加え、15分間攪拌させた。各々の溶液を、それぞれ500ml(一塩基)および1000ml(二塩基)のメスフラスコに無菌状態で移した。各々フラスコを、適切にラベルを貼って分類し、規定容量にあわせて栓をした。
【0083】
390mlの一塩基溶液および610mlの二塩基溶液を、500mlおよび1000mlのメスシリンダーを用いて2000mlのビーカーに加えた。これらを混合し、0.05Mリン酸緩衝液pH7.0とラベルを貼った。
【0084】
375mlのpH7.0緩衝液を、重量(溶液の密度は1.0042g/mlであると測定されたため、必要とされる重量は376.58gである)で500mlメスフラスコに移し、AQ4Nの可溶化に用いた。
【0085】
バルク溶液の処理
30.00gのAQ4N(ジヒドロクロリドとして)を1000mlビーカーに加えた。重量を記録し、磁気攪拌棒を加えた。
【0086】
43.5mlの2M水酸化ナトリウムを、50mlの注射器および5mlの注射器により500mlビーカーに加え、WFIでおよそ150ml容量にした。150mlのNaOHをAQ4N粉末に加えた。およそ225mlのpH7.0緩衝液をAQ4N混合物に加え、1000mlビーカー中の全AQ4Nが、この手順の間に緩衝液に溶解したことを確認した。次いで、この溶液を2000mlビーカーに移し、残っている緩衝液溶液ですすぎ、15分間かくはんした。AQ4N溶液を、WFIでおよそ600ml容量にした。pHを測定し、必要であれば7.0±0.1に調整した。760gの目標とする重量になるまで、WFIをAQ4N溶液に加えた。
【0087】
バルク溶液のろ過
清潔、無菌、不活性であるチューブを備えたぜん動ポンプを無菌的に組み立て、バルク溶液から2枚のMillipak(商標)20フィルターを通して、清潔、処理済み、無菌のスコット瓶アセンブリ(充てんラインおよびベントフィルターを含む)中に、AQ4N溶液をポンプで入れた。
【0088】
アンプルへの充てんおよび封印
アンプル充てんが必要であれば、アンプルを購入し、準備し、処理し、そして、AQ4N溶液調製の前に、医薬として利用するために適する品質標準を受け入れた。ろ過したAQ4N溶液を、清潔、無菌、不活性であるチューブを備えたぜん動ポンプを用いて、アンプル中に分配した。分配は容量基準で行われたが、充てん前、および製造中は規則的な間隔(名目上は50番目毎のアンプル後であるが、これはバッチの大きさに従って変わるであろう)で重量を確認検査した。溶液密度は前もって確認しておいた。アンプルをクリーンルーム内でガスバーナーの炎を用いて手で密封した。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、AQ4Nジヒドロクロリドの溶液中でのpHの一次導関数対pHを示す。
【図2】図2は、同一条件下でのpHの一次導関数対NaOHモル当量を示す。
【図3】図3は、40℃で14日間インキュベートした5mg/ml溶液中でのインキュベーション時間の間のAQMNの増加を示す。
【図4】図4は、40℃で63日間インキュベートした5mg/ml溶液中でのインキュベーション時間の間のAQMNの増加を示す。
【図5】図5は、40℃で14日間インキュベートした5mg/ml溶液中でのインキュベーション時間の間のAQ4Nの減少を示す。
【図6】図6は、40℃で63日間インキュベートした5mg/ml溶液中でのインキュベーション時間の間のAQ4Nの減少を示す。
【図7】図7は、異なるpH値および濃度での、インキュベーション時間の間のAQ4Nの減少を示す。
【図8】図8は、異なるpH値および濃度での、インキュベーション時間の間のAQMNの増加を示す。
【図9】図9は、4℃で貯蔵した場合の、時間に対する凍結乾燥調合物のAQ4N含量を示す。
【図10】図10は、25℃で貯蔵した場合の、時間に対する凍結乾燥調合物のAQ4N含量を示す。
【図11】図11は、40℃で貯蔵した場合の、時間に対する凍結乾燥調合物のAQ4N含量を示す。
【図12】図12は、4℃の異なる凍結乾燥バッチにおける、AQ4M含量の変化を示す。
【図13】図13は、4℃の異なる凍結乾燥バッチにおける、AQMN含量の変化を示す。
【図14】図14は、25℃の異なる凍結乾燥バッチにおける、AQ4M含量の変化を示す。
【図15】図15は、25℃の異なる凍結乾燥バッチにおける、AQMN含量の変化を示す。
【図16】図16は、55℃で貯蔵した場合の、時間に対する凍結乾燥および溶液調合物のAQ4N含量の減少を示す。
【図17】図17は、4℃および55℃で貯蔵した場合の、時間に対する溶液調合物のAQMN含量の増加を示す。
【図18】図18は、4℃および55℃で貯蔵した場合の、時間に対する溶液調合物のAQ4M含量の増加を示している。
【図19】図19は、4℃で貯蔵した場合の、時間に対する溶液調合物のAQMN含量の増加を示している。
【図20】図20は、25℃で貯蔵した場合の、時間に対する溶液調合物のAQMN含量の増加を示している。
【図21】図21は、2つのやり方においてAQMNの増加がどのように観察されるかを示す。
【図22】図22は、4℃に貯蔵した場合の、いくつかのバッチにおいて時間に対する凍結乾燥調合物のAQMN含量の増加を示す。
【図23】図23は、4℃におけるバッチの水分含有量に対する分解速度(直線プロットに適合させた場合のAQMN増加の傾きにより測定)を示す。
【図24】図24は、4℃におけるバッチの水分含有量に対する、製造中のAQMNレベルの段階的増加を示す。
【発明の開示】
【0001】
本発明は、がんの治療に有効なビス−バイオリダクティブエージェント(bis-bioreductive agent)であるAQ4Nのような新規のアントラキノン誘導体調合物に関する。
WO−A−91/05824(National Research Development Corporation)は、式:
【0002】
【化1】
【0003】
{式中、R1、R2、R3およびR4は各々別々に、水素、X、NH−A−NHRおよびNH−A−N(O)R’R”(式中、Xは、ヒドロキシ、ハロゲノ、アミノ、C1−4アルコキシまたはC2−6アルカノイルオキシであり、Aは、NHとNHRまたはN(O)R’R”との間の鎖長が少なくとも炭素原子2個であるCアルキレン基であり、そしてR、R’およびR”は各々別々に、C1−4アルキル基、C2−4ヒドロキシアルキル基およびC2−4ジヒドロキシアルキル基から選択され、ここで、窒素原子に結合した炭素原子はヒドロキシ基をもたず、また、2個のヒドロキシ基で置換されている炭素原子は存在しない、または、R’およびR”は共にC2−6アルキレン基であり、このC2−6アルキレン基は、R’およびR”が結合している窒素原子とともに、3〜7個の原子を環内に有する複素環式基を形成している)から選択される}
の化合物であって、場合により生理学的に許容され得る塩の形態である化合物を開示している。
【0004】
この一般式の範囲内の好適な化合物は、ビス−N−オキシドであるAQ4N(バノキサントロン)であり、これはAQ4を酸化することにより合成することができる:
【0005】
【化2】
【0006】
AQ4Nは実際にはプロドラッグであり、インビボでは逆反応が起こり、低酸素性がん細胞内における還元的代謝により、そのプロトン化した形態である活性物質AQ4を与える。このプロドラッグは、活性物質であるAQ4と比べた場合、比較的非毒性であり、医薬として投与するためには特に魅力的である。しかし、AQ4Nは、容易には結晶形態を与えない。今までは、投与用には、塩または凍結乾燥物質の形態で、AQ4Nを製造し調合することが望ましいと考えられてきた。
【0007】
AQ4Nは、二塩酸塩であるAQ4N・2HClの形態として報告されてきた。例えば、J. Chem. Soc., Perkin Trans. I, 1999, 2755-2758(Leeら)およびWO−A−00/05194(BTG International Limited)を参照されたい。しかし、AQ4N・2HCl原料の研究により、不純物である1−アミノ−4−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}−5,8−ジヒドロキシアントラキノン(AQMNと表す)を有意な量含むことが実証されている。AQMNは、LCMSによって特性解析され、さらに、AQMN物質:
【0008】
【化3】
【0009】
の純粋試料を合成することによって確認されている。
この不純物は、AQ4Nの分解により形成することができ、更に有意なことには、望ましくない水準の細胞毒性を示し、これは一般にAQ4N自体の細胞毒性より高い。この細胞毒性の水準は、比較的非毒性であるプロドラッグの形態で投与することが意図された化合物においては回避すべきである。
【0010】
AQMN分解は、優勢な経路であるが、酸性および中性の水溶液条件下でのAQ4Nの更なる分解生成物は、更に望ましくない生成物、すなわちモノ−N−オキシドであるAQ4M:
【0011】
【化4】
【0012】
である。
同時係属する特許出願であるWO−A−03/078387(BTG International Limited)は更に、−3.0〜9.0の範囲内のpKaを有する、生理学的に許容され得る酸とのAQ4Nの塩を開示している。また、この特許出願は、水溶液中に溶解したときに溶液のpHが5〜9の範囲内であるようにこの化合物を調合することも開示している。
【0013】
医薬製品の製造後にこの製品の期限が切れる(もはや患者に使用できない)時点は、意図される薬剤の含有量の減少、および/または、付随する不純物の増加によって定義される。親化合物の分解速度を減少させることにより、この化合物が、期限が切れる時点(有効期限)に到達するまでにかかる時間が増加する。必要であれば、最終生成物を凍結乾燥調合物として製造することによって、薬剤化合物を安定化する。
【0014】
しかし、AQ4Nに関して、本発明者らは、凍結乾燥調合物としてのAQ4Nの安定性および製造品質が、凍結乾燥ケーキの水分含有量と反比例することを見出した:即ち、水分が少なければ少ないほど、最終生成物の品質および安定性は悪くなる。さらに、相当する凍結乾燥調合物よりも、(適当なpHの)水溶液としての方が安定である。このように、凍結乾燥を行わず、AQ4Nを製造する方がよい。
【0015】
したがって、本発明によれば、式(I)
【0016】
【化5】
【0017】
(式中、Aは、NHおよびN(O)R’R”の間の鎖長が少なくとも炭素原子2個であるCアルキレン基であり、そしてR’およびR”は、各々別々に、C1−4アルキル基、C2−4ヒドロキシアルキル基およびC2−4ジヒドロキシアルキル基より選択され、ここで、窒素原子に結合した炭素原子はヒドロキシ基を持たず、また、2個のヒドロキシ基で置換されている炭素原子は存在しないか、または、R’およびR”は共にC2−6アルキレン基であり、このC2−6アルキレン基は、R’およびR”が結合している窒素原子とともに、3〜7個の原子を環内に有する複素環式基を形成している)
の化合物の安定な無菌水溶液であって、
密閉容器中の単位用量形態において、式(I)の化合物の濃度が150mg/mlまでであり、pHが5〜9の範囲内である、前記溶液が提供される。
【0018】
好ましくは、かかる溶液のpHは、5.0〜8.4の範囲内であり、より好ましくは、6.0〜8.0であり、7.0〜8.0のpHが最適である。式(I)の化合物がAQ4Nである場合は、pH7.4が最も安定であることが示された。これは、最も安定であるのはpH6と観察された、凍結乾燥AQ4N調合物とは対照的である。
【0019】
好ましくは、式(I)の化合物は、0.1〜100mg/mlの濃度で存在する。
式(I)の化合物は、あらかじめ生理的に許容され得る塩の形態で単離してもよく、これは有機または無機酸との酸付加塩となる。好ましくは、この生理的に許容され得る酸は、−3.0〜9.0の範囲内、より好ましくは、2.0〜9.0の範囲内のpKaを有する。より好ましくは、この生理的に許容され得る酸は、2.0〜6.0の範囲内のpKaを有する。
【0020】
好ましくは、この生理的に許容され得る酸は、酒石酸、マロン酸、ジクロロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、ピメリン酸、および酢酸からなる群より選択される。
【0021】
より好ましくは、この生理的に許容され得る酸は、3.0〜6.0の範囲内のpKaを有する。この生理的に許容され得る酸は、特に有機酸、特定的には、有機モノ−、ジ−、またはトリ−酸、そして特に、酒石酸、クエン酸、ピメリン酸および酢酸からなる群より選択されるものであってもよい。
【0022】
式(I)中のA基は、分枝であってもよいが、都合の良いことには、直鎖アルキレン基、即ち、テトラメチレン、特にトリメチレン、または、特定的にはエチレン、が好都合である。
【0023】
また、R’およびR”は、分枝炭素鎖を有していてもよいが、アルキル基またはヒドロキシ置換アルキル基のいずれかである直鎖が好都合である。R’およびR”がモノヒドロキシアルキル基である場合、末端が置換されていると好都合であり、また、R’およびR”がジヒドロキシアルキル基である場合、末端がヒドロキシ基の一つで置換されていると好都合である。R’およびR”がアルキルである場合、炭素原子が3個、または、特に2個もしくは1個である基が好ましく、また、R’およびR”がヒドロキシ置換アルキルである場合、炭素原子が3個であるアルキル基が好ましく、あるいは、モノヒドロキシアルキル基の場合は、代わりに、炭素原子が2個であるアルキル基が好ましい。R’およびR”の好ましい個々の基の例は、CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CH2OH、CH2CH2CH2OH,CH(CH3)CH2OHおよびCH2CHOHCH2OHである。
【0024】
R’およびR”は、通常は同一となる。
別の態様では、既に示したように、R’およびR”は、それらが結合している窒素原子とともに、複素環式基−N(CH2)n(式中、nは2〜6である)、即ち、アジリジン−1−イル、アゼチジン−1−イル、ピロリジン−1−イル、ピペリジン−1−イル、およびペルヒドロアゼピン−1−イルであってもよく、アゼチジン−1−イルおよび特にアジリジン−1−イルのようなより小さい基が最も重要である。
【0025】
特に重要である具体的なNH−A−N(O)R’R”基は、NH−(CH2)2−N(O)(CH3)C2H5、NH−(CH2)2−N(O)(C2H5)2、NH−(CH2)2−N(O)(CH2CH2OH)2、NH−(CH2)2−N(O)(CH2CH2CH2OH)2、NH−(CH2)2−N(O)(CH(CH3)CH2OH)2、NH−(CH2)2−N(O)(CH2CHOHCH2OH)2、および特にNH−(CH2)2−N(O)(CH3)2である。
【0026】
この生理的に許容され得る塩は、単に水溶液中に溶解している場合は、通常、所望の範囲より低いpHを有する溶液を与えることになる。例えば、1.4ミリモル溶液のAQ4N酢酸塩水溶液は、pHが3.8である。このように、好ましくは、式(I)の化合物は、追加の成分を含有する混合物中に調合し、溶液のpHが5〜9の範囲内になるよう緩衝化する。
【0027】
緩衝液は、塩および酸の溶媒和混合物であり、少量の酸および塩基をこの溶液に加える場合にpH変化に対抗する。適する緩衝液としては、酢酸ナトリウム緩衝液およびオルトリン酸ナトリウム緩衝液が挙げられる。
【0028】
生理的に許容され得る酸との塩は、任意の慣用的な手段、例えば、有機塩基(I)と適切な無機または有機の酸との反応により、通常は、溶液中での単なる混合により、調製することができる。酸付加塩は、一般的には、水、メタノール、エタノールおよび同様の溶媒中で比較的可溶性である結晶性固体である。また、一つの塩の形態は、所望の生理的に許容され得る酸で前処置したカラムを用いるクロマトグラフィーにより、他の形態に転化させてもよい。
【0029】
式(I)の化合物は、家畜および特定的にはヒトの両方の用途のための医薬として用いるため、生理的に許容され得る希釈剤またはキャリヤーとともに様々な方法により調合してもよい。例えば、この化合物は、液体希釈剤またはキャリヤー、例えば、水溶液、懸濁液または乳濁液を組み込んだ組成物として施用されてもよく、この組成物は、しばしば、非経口投与のために注射可能な形態で使用されてもよく、したがって、無菌かつ発熱因子を含まないことが好都合であろう。また、経口投与を用いてもよい。
【0030】
ヒトおよび家畜の両方の状況において使用する、注射または経口経路以外の他の投与のタイプとしては、座薬またはペッサリーの使用が挙げられる。医薬組成物の別の形態は、頬または鼻へ投与するためのもの、あるいは別の態様では、眼に投与するための滴剤であり、これは都合のよいことには、無菌の液体希釈剤またはキャリヤーを含有してもよい。局所投与のための他の調合物としては、ローション、軟膏、クリーム、ゲルおよびスプレーが挙げられる。
【0031】
組成物は、単位用量形態、即ち、単位投与量を含有するか、または、複数の単位投与量もしくは単位投与量以下を含有する、別個の部分の形態で調合されてもよい。
使用される化合物の用量は、特定の化合物の活性と治療される状態に従って変わることになるが、指標としては、一日あたり25〜500mg/m2の範囲内、特定的には、一日あたり50〜300mg/m2の範囲内で選択された用量が多くの場合に適していると言うことができるが、化合物(I)によりもたらされる有毒な副作用がより低いレベルであることを考慮して、これより高い用量、例えば、一日あたり25〜750mg/m2の範囲内、または更に最大で1200mg/m2の用量を考慮してもよい。この用量養生法は、どんなに多くの日数であっても問題の患者にとって適切であれば継続してもよく、所望により、一日の用量をいくつかの分離投与に分けてもよい。このように、例えば、進行した乳がん、非ホジキンリンパ腫および肝がんのような状態の場合、治療を一日行い、次いで、21日などの間隔をあけた後に繰り返し投与することによって治療することが適切であろうが、急性非リンパ性白血病を治療するためには、連続して5日以上の治療がより適しているであろう。別の方法としては、数日の間隔をあけて一回投与する、例えば、2または3週間毎に一回の投与を用いてもよい。
【0032】
化合物(I)は、ヒトを含む温血動物のがん治療に特別な価値がある。これら化合物は、種々の形態の肉腫およびがん腫のような固形腫瘍の治療に関して重要であり、また、白血病のような散在性腫瘍のためにも重要である。特に重要な領域は、乳がん、肺がん、前立腺がん、膵臓がん、および食道がんの治療、ならびに、非ホジキンリンパ腫および急性非リンパ性白血病の治療である。がんの治療において、非経口および時には局所投与が、多くの場合特に重要である。さらに、化合物(I)を、有糸分裂阻害剤(例えば、ビンブラスチン);アルキル化剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、およびシクロホスファミド);他の代謝拮抗物質(例えば、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、およびヒドロキシ尿素);介在性(intercalating)抗生物質(例えば、アドリアマイシンおよびブレオマイシン);酵素(例えば、アスパラギナーゼ);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド)、ならびに生物学的応答調節剤(例えば、インターフェロン)のような他の抗がん剤と共に、別々に与えるかまたは同一組成物内で一緒に与える併用治療に用いることは好都合であろう。また、化合物(I)は、腫瘍の放射線療法と共に、併用療法に用いてもよい。
【0033】
このように、本発明は、がんの退縮および緩和を助けるための方法を含み、この方法は、これまでに説明したように、治療上有効な量の化合物(I)を患者に投与することを含む。
【0034】
抗がん使用に加えて、化合物(I)は、キレート化剤としての活性を考慮して、種々の他の製薬用途に関して重要である。
また、本発明は、これまでに定義したように、密閉容器内に単位用量形態で溶液を調製するための方法を含み、この方法は、式(I)化合物の安定かつ無菌の水溶液を容器内に導入し、そしてこの容器を密封することを含み、その際、溶液は凍結乾燥工程なしで調製される。
【0035】
本発明は、以下の実施例により説明する。
実施例
実施例1:AQ4Nの物理化学的性質へのpHの影響の実証
AQ4Nジヒドロクロリド溶液のpHの変化をモニターして、AQ4NのAQMNへの分解を測定した。pH曲線を図1および図2に示す。図1は、pH7.7〜pH9.4の間での明らかな解離を示し、これは、図2に示すおよそ2モル当量での解離事象に相当する。低いpHでの解離事象を観察することができ、推論としては、4.1〜4.6の間のpHが割り当てられ、モル当量は0.95〜1.15の間である。
【0036】
実施例2:AQMNの細胞毒性の実証
AQ4NおよびAQMNのP388系における純粋試料(99.3%)の毒性を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
これらのデータに基づけば、AQMNは、同一系内でのAQ4Nの細胞毒性より少なくとも5倍大きい細胞毒性を有する。AQ4Nのすべての試料は実質的な割合のAQMNを含有し、細胞毒性の結果に影響を与えることになるから、「より大きい」と言う修飾語句は必要である。
【0039】
実施例3:溶液中でのAQ4Nジヒドロクロリドの不安定性−AQMNの蓄積−の実証
AQ4Nの5mg/ml溶液を用い、それぞれ、水、20mM酢酸ナトリウム緩衝液および20mMオルトリン酸ナトリウム緩衝液に相当する、pH2.4、4.5および6.8にてAQ4Nの分解を調べた。AQ4Nの最初の分解経路は、AQMNへの転化である。40℃で中間時間点(14日)までインキュベートした5mg/ml溶液中のAQMN濃度の増加を図3に示す。
【0040】
分解速度は、これらの条件下で一日あたり、0.84%(AQ4Nに関して)、0.19%(AQ4Nに関して)および0.02%(AQ4Nに関して)のAQMN含量の増加に相当する。
【0041】
標準として用いた物質中の既知量のAQMNに関して直線回帰および相互相関を用いると、これらのデータは表3に示したAQMNの蓄積速度を示す。
【0042】
【表2】
【0043】
図4に示すように、63日後のデータにおいて類似の傾向が観察された。蓄積速度(上記と同じやり方で計算)は、リン酸緩衝液中で、AQMNが一月あたり0.6%増加することを示している。
【0044】
実施例4:溶液中のAQ4Nジヒドロクロリドの不安定性−AQ4Nの分解−の実証
AQ4Nの安定性へのpHの影響を、異なる溶液においてAQ4N分解を調べることにより検討した。選択した溶液は、前実験のとおり、蒸留水、20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH=4)および20mMリン酸緩衝液(pH=7)である。5mg/mlのAQ4Nの緩衝溶液を調製した後、そのpHを必要とされる緩衝液のpHに校正した。最終pH値は、蒸留水、20mM酢酸ナトリウム緩衝液および20mMリン酸ナトリウム緩衝液についてそれぞれ、2.4、4.5および6.8であった。これら試料を40℃でインキュベートし、規則的な間隔で採取した。試料を希釈してからHPLC分析により、アッセイを行った。
【0045】
14日後に暫定的な分析を行った。そのデータを図5に示す。
さらに、これら溶液を全体で63日間40℃でインキュベートした。最終的なグラフを図6に示す。AQ4N含量について得られた値は、もとの試料中で重量測定されたAQ4Nの量と(実験誤差の範囲内で)一致した。
【0046】
実施例5:「標準的」オートクレーブ条件に対する、pH7.4の10mMリン酸ナトリウム緩衝液中の40mg/ml溶液としてのAQ4Nの不安定性の実証
pH7.4の10mMリン酸ナトリウム緩衝液中、40mg/mlにてAQ4Nの溶液を調製した。この溶液の試料を、標準的なオートクレーブサイクル(121℃、15分間)の前および後で分析した。オートクレーブ後の試料は、7.3%のAQ4N濃度の減少を示した。これに相当する増加が関連する不純物に関して認められた。
【0047】
実施例6:種々の濃度でのAQ4N安定性とpHとの関係の実証
幾つかのAQ4N溶液を、異なるpH値にて異なる濃度のAQ4Nを含むリン酸ナトリウム緩衝液(10mM)として調製した。得られた結果を表4に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
これら試料をインキュベーション前に分析し、次いで、55℃のインキュベーター内に置いた。溶液を、1日、1週間、2週間、4週間および8週間後に繰返し採取した。
AQ4N含量に関する結果を図7に示し、AQMNの増加に関する結果を図8に示す。
【0050】
これらの結果は、10〜40mg/ml(pH7.4にて)の間では、分解速度に対して濃度変化の影響がほとんどないことを示している。また、これらの結果は、次のようなAQ4NのpH安定性のプロフィールを示している:
【0051】
【数1】
【0052】
実施例7:種々のpH値での凍結乾燥調合物としてのAQ4Nの安定性の実証
AQ4Nの3つの凍結乾燥したバッチ(40mg/ml、pH=6.0、7.0および8.0のリン酸ナトリウム緩衝液10mM)を、それぞれ、BN99019、BN99020およびBN99021として製造した。これらのバッチの試料を、4℃、25℃および40℃で貯蔵し、表5にしたがって種々の時間点で分析した。
【0053】
【表4】
【0054】
それぞれの時間点での、AQ4N含量、AQ4N関連不純物レベル、水分含量、pHおよびモル浸透圧濃度(osmolality)を調べた。後者の3要素については、さらなる検討を行わない。
【0055】
pH=6.0、7.0および8.0調合物(それぞれ、BN99019、BN99020、BN99021)のAQ4N含量のレベルを、個々の温度について図9〜11に時間に対して示す。図9は4℃で、図10は25℃で、そして図11は40℃で貯蔵した場合のAQ4N含量を示す。
【0056】
AQ4Nの分解(親化合物の減少により測定される)は、25℃および40℃で明りょうに認めることができた。BN99019(pH=6.0)は、最も安定であると思われる。
【0057】
4℃および25℃の貯蔵条件下で、3つのバッチについて関連する不純物のレベルをプロットした。
AQ4N製造生成物の分解プロフィールは、主要な分解生成物がAQ4MおよびAQMNであることを示している。pH=6.0、7.0および8.0(それぞれ、BN99019、BN99020およびBN99021)の調合物について、関連する不純物レベルを図12〜15に示す。図12および13は、それぞれ、4℃でのAQ4MおよびAQMNの変化を示し、図14および15は、25℃でのAQ4MおよびAQMNの変化を示している。
【0058】
25℃の結果から、pH=6.0の調合物が最も安定であることが確認される。しかしながら、4℃で貯蔵したBN99019試料中の分解生成物のレベルは、pH=7.0および8.0の調合物よりわずかに高いことが明らかである。
【0059】
実施例8:40mg/mlでのAQ4Nの安定性とpHとの関係の実証
低濃度(5mg/ml)でのAQ4Nの安定性に関する前述の検討(実施例3および4を参照されたい)により、中性pHにおいてAQ4N分子の安定性が高いことが示唆された。この実験は、調合されたAQ4N生成物が水で戻した調合物(40mg/ml)としてどれだけ安定であるかを調査するために計画された。調合されたAQ4N材料を、pH6.0、7.0、8.0の10mMリン酸ナトリウム緩衝液中において40mg/mlにて調製し、凍結乾燥した。これらのバッチを、凍結乾燥材料の安定性を示すものとして(実施例7を参照されたい)、3年間の安定性を調べるために置いておいた。前記時間の後、(AQ4Nの損失が最小であると示された)4℃で貯蔵したバイアルを2mlの蒸留水中で戻した。(安定性についての最終時点でのpHは、それぞれ、5.916、6.946、7.928であった。)戻した後、2つのバイアルを、AQ4N、AQMNおよび他の関連する不純物について分析した。凍結乾燥したままのバイアルおよび戻したバイアルの両方を表6〜8に詳細に示すとおり貯蔵した。
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
55℃で貯蔵した試料についてのAQ4N含量の結果を図16に示す。
これらのデータから、pH6.0では凍結乾燥物質は相当するpH7または8の材料より安定であることが確認されたが、調合したAQ4Nは、凍結乾燥調合物としてよりも溶液としての方が安定であることが示された。本実験でのAQ4N溶液のpH安定性のプロフィールは次に示すとおりである:
【0064】
【数2】
【0065】
分解生成物(AQMNおよびAQ4M)に関する結果を、溶液試料について図17および18に示す。
【0066】
実施例9および6の分解速度は、これらの個々の実験において標準および試料として異なるAQ4N原料を用いたため、直接数値的に比較することはできない。
【0067】
実施例10:AQ4N製品の品質への(溶液調製物に対する)凍結乾燥の影響の実証
調合したAQ4N物質を、pH7.0の10mMリン酸ナトリウム緩衝液中40mg/mlに調製した。この溶液の一部分をアンプルへ、残りをバイアルに満たし、表9および10に詳細に示したサイクルに従って凍結乾燥した。
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
凍結乾燥の前および後の試料(それぞれアンプルおよびバイアルに満たした)のAQ4N含量を測定した。結果は表11に示すとおりである。
【0071】
【表10】
【0072】
関連するAQ4N原料のAQMN含量は、標準と比較して22.6%である。このことは、AQMNが凍結乾燥サイクル中に生成され、凍結乾燥段階を除去することが製品の全体品質を改良することを示している。
【0073】
実施例11:AQ4N安定性への温度の影響の実証
実施例10で調製したAQ4N溶液(液体で満たした)アンプルを、4℃および25℃でインキュベーションすることによって、その安定性について試験した。種々の時間点においてバイアル中のAQ4N、AQMNおよび関連する不純物の含量をHPLCで分析した。4℃で貯蔵したアンプル(BN03−05と表示)のAQMN含量を、実施例10で調製した(4℃で貯蔵)AQ4N凍結乾燥バイアル(BN03−06)と比較して図19に示す。25℃で貯蔵したアンプルでのAQMN含量を、実施例7で調製し25℃で貯蔵した相当するAQ4N凍結乾燥バイアル(BN99020、pH=7)と比較して図20に示す。(両グループについてのデータは、およそ200日での同等の時間について示しているにすぎない。)
BN03−05およびBN99020は、異なる原料のバッチから調製されている(そのため最初から異なるレベルのAQMNを含んでいる)ので、y−軸は最終製品バッチの初期AQMN含量の割合(%)として表されていることを銘記すべきである。
【0074】
実施例12:4℃でのAQ4Nの安定性の実証
水性調合物の安定性に関するさらなる例示を、実施例10と同様の方法で調製した追加バッチの(液体で満たした)AQ4N溶液のアンプル(BN03−12)によって実証した。しかし、BN03−12は、5ml溶液中により大容量の200mgを有するように調製した。バッチを4℃に置いておき、適する有効期限の範囲を与えるように種々の時間点で分析した。この材料のAQMNレベルは実施例11と一致し、AQMN含量の値(標準に対して)は、製造後の0.226から、4℃にて162日後の0.232に増加した。
【0075】
実施例13:凍結乾燥調合物としてのAQ4Nの水分含量に関する不安定性の実証
AQ4N凍結乾燥生成物(40mg/ml、pH7.0の10mMリン酸ナトリウム緩衝液)のいくつかのバッチを、これまでに説明したものと類似または同一のやり方で調製した。
【0076】
AQMNの増加は2つの方法で観察される:製造中におけるAQMN含量の段階的増加(前述の実施例10を参照されたい)および時間経過による漸進的増加(図21を参照されたい)。
【0077】
いくつかのバッチにおける4℃でのAQMNの増加を図22に示す。
グラフ上の直線は、特定のバッチを製造するために用いた原料中で認められたAQMNレベルを示している。(原料1は、バッチ01−13、02−18および03−06のために用いられた。原料2は、バッチ99020、00−15および01−10のために用いられた。)
【0078】
これらバッチの水分含量(QC/製造後試験にてカールフィッシャー滴定により測定)を、4℃での分解速度(直線プロットに適合させた場合のAQMN増加の傾きにより測定した)に対してプロットした。結果を図23に示す。
【0079】
これらバッチの水分含量(QC/製造後試験にてカールフィッシャー滴定により測定)を、製造(具体的には凍結乾燥)中のAQMNレベルの段階的増加に対してプロットした。結果を図24に示す。
【0080】
これらのグラフはいずれも、(製造の間および製造後の)生成物の分解と製造後の凍結乾燥ケーク中の水分量との間に相関があることを示している。これは、水分含量によって表される凍結乾燥過程自体の作用であることが明らかである。
【0081】
実施例14:安定な無菌水溶液の調製
装置および周囲環境の準備ならびに条件
AQ4N最終製品を製造するための装置および容器を、無菌製品の無菌製造のために適切に処置した(乾熱滅菌、オートクレーブ殺菌およびIPA消毒を含む)。調製および製造中に使用したクリーンルームおよびクリーンベンチ(laminar air flow cabinet)は、無菌製品の製造のために適切な様式で監視した(固定接触プレート、気圧差ならびに粒子計測を使用)。製造過程において重量測定に使用する天秤は、製造の直前に分銅で校正した。
【0082】
緩衝液の調製
3桁天秤を用いて、3.450gのオルトリン酸二水素ナトリウム一水和物(一塩基)を600mlビーカー中に秤量し、8.900gのオルトリン酸水素二ナトリウム二水和物(二塩基)を1000mlビーカー中に秤量した。潅水(WFI)を一塩基のビーカーに400ml、二塩基のビーカーに800ml、それぞれ加えた。磁気攪拌子を加え、15分間攪拌させた。各々の溶液を、それぞれ500ml(一塩基)および1000ml(二塩基)のメスフラスコに無菌状態で移した。各々フラスコを、適切にラベルを貼って分類し、規定容量にあわせて栓をした。
【0083】
390mlの一塩基溶液および610mlの二塩基溶液を、500mlおよび1000mlのメスシリンダーを用いて2000mlのビーカーに加えた。これらを混合し、0.05Mリン酸緩衝液pH7.0とラベルを貼った。
【0084】
375mlのpH7.0緩衝液を、重量(溶液の密度は1.0042g/mlであると測定されたため、必要とされる重量は376.58gである)で500mlメスフラスコに移し、AQ4Nの可溶化に用いた。
【0085】
バルク溶液の処理
30.00gのAQ4N(ジヒドロクロリドとして)を1000mlビーカーに加えた。重量を記録し、磁気攪拌棒を加えた。
【0086】
43.5mlの2M水酸化ナトリウムを、50mlの注射器および5mlの注射器により500mlビーカーに加え、WFIでおよそ150ml容量にした。150mlのNaOHをAQ4N粉末に加えた。およそ225mlのpH7.0緩衝液をAQ4N混合物に加え、1000mlビーカー中の全AQ4Nが、この手順の間に緩衝液に溶解したことを確認した。次いで、この溶液を2000mlビーカーに移し、残っている緩衝液溶液ですすぎ、15分間かくはんした。AQ4N溶液を、WFIでおよそ600ml容量にした。pHを測定し、必要であれば7.0±0.1に調整した。760gの目標とする重量になるまで、WFIをAQ4N溶液に加えた。
【0087】
バルク溶液のろ過
清潔、無菌、不活性であるチューブを備えたぜん動ポンプを無菌的に組み立て、バルク溶液から2枚のMillipak(商標)20フィルターを通して、清潔、処理済み、無菌のスコット瓶アセンブリ(充てんラインおよびベントフィルターを含む)中に、AQ4N溶液をポンプで入れた。
【0088】
アンプルへの充てんおよび封印
アンプル充てんが必要であれば、アンプルを購入し、準備し、処理し、そして、AQ4N溶液調製の前に、医薬として利用するために適する品質標準を受け入れた。ろ過したAQ4N溶液を、清潔、無菌、不活性であるチューブを備えたぜん動ポンプを用いて、アンプル中に分配した。分配は容量基準で行われたが、充てん前、および製造中は規則的な間隔(名目上は50番目毎のアンプル後であるが、これはバッチの大きさに従って変わるであろう)で重量を確認検査した。溶液密度は前もって確認しておいた。アンプルをクリーンルーム内でガスバーナーの炎を用いて手で密封した。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、AQ4Nジヒドロクロリドの溶液中でのpHの一次導関数対pHを示す。
【図2】図2は、同一条件下でのpHの一次導関数対NaOHモル当量を示す。
【図3】図3は、40℃で14日間インキュベートした5mg/ml溶液中でのインキュベーション時間の間のAQMNの増加を示す。
【図4】図4は、40℃で63日間インキュベートした5mg/ml溶液中でのインキュベーション時間の間のAQMNの増加を示す。
【図5】図5は、40℃で14日間インキュベートした5mg/ml溶液中でのインキュベーション時間の間のAQ4Nの減少を示す。
【図6】図6は、40℃で63日間インキュベートした5mg/ml溶液中でのインキュベーション時間の間のAQ4Nの減少を示す。
【図7】図7は、異なるpH値および濃度での、インキュベーション時間の間のAQ4Nの減少を示す。
【図8】図8は、異なるpH値および濃度での、インキュベーション時間の間のAQMNの増加を示す。
【図9】図9は、4℃で貯蔵した場合の、時間に対する凍結乾燥調合物のAQ4N含量を示す。
【図10】図10は、25℃で貯蔵した場合の、時間に対する凍結乾燥調合物のAQ4N含量を示す。
【図11】図11は、40℃で貯蔵した場合の、時間に対する凍結乾燥調合物のAQ4N含量を示す。
【図12】図12は、4℃の異なる凍結乾燥バッチにおける、AQ4M含量の変化を示す。
【図13】図13は、4℃の異なる凍結乾燥バッチにおける、AQMN含量の変化を示す。
【図14】図14は、25℃の異なる凍結乾燥バッチにおける、AQ4M含量の変化を示す。
【図15】図15は、25℃の異なる凍結乾燥バッチにおける、AQMN含量の変化を示す。
【図16】図16は、55℃で貯蔵した場合の、時間に対する凍結乾燥および溶液調合物のAQ4N含量の減少を示す。
【図17】図17は、4℃および55℃で貯蔵した場合の、時間に対する溶液調合物のAQMN含量の増加を示す。
【図18】図18は、4℃および55℃で貯蔵した場合の、時間に対する溶液調合物のAQ4M含量の増加を示している。
【図19】図19は、4℃で貯蔵した場合の、時間に対する溶液調合物のAQMN含量の増加を示している。
【図20】図20は、25℃で貯蔵した場合の、時間に対する溶液調合物のAQMN含量の増加を示している。
【図21】図21は、2つのやり方においてAQMNの増加がどのように観察されるかを示す。
【図22】図22は、4℃に貯蔵した場合の、いくつかのバッチにおいて時間に対する凍結乾燥調合物のAQMN含量の増加を示す。
【図23】図23は、4℃におけるバッチの水分含有量に対する分解速度(直線プロットに適合させた場合のAQMN増加の傾きにより測定)を示す。
【図24】図24は、4℃におけるバッチの水分含有量に対する、製造中のAQMNレベルの段階的増加を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、Aは、NHおよびN(O)R’R”の間の鎖長が少なくとも炭素原子2個であるCアルキレン基であり、そしてR’およびR”は各々別々に、C1−4アルキル基、C2−4ヒドロキシアルキル基およびC2−4ジヒドロキシアルキル基から選択され、ここで、窒素原子に結合した炭素原子はヒドロキシ基をもたず、また、2個のヒドロキシ基で置換されている炭素原子は存在しないか、または、R’およびR”は共にC2−6アルキレン基であり、このC2−6アルキレン基は、R’およびR”が結合している窒素原子とともに、3〜7個の原子を環内に有する複素環式基を形成している)
の化合物の安定な無菌水溶液であって、
密閉容器中の単位用量形態において、式(I)の化合物の濃度が150mg/mlまでであり、pHが5〜9の範囲内である、前記溶液。
【請求項2】
溶液のpHが5.0〜8.4の範囲内である、請求項1記載の溶液。
【請求項3】
溶液のpHが6.0〜8.0の範囲内である、請求項2記載の溶液。
【請求項4】
式(I)の化合物が0.1〜100mg/mlの濃度で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項5】
Aが直鎖アルキレン基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項6】
Aがエチレンである、請求項に記載の溶液。
【請求項7】
R’およびR”が直鎖アルキル基またはヒドロキシ置換アルキル基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項8】
R’およびR”が各々CH3またはCH2CH3である、請求項7記載の溶液。
【請求項9】
式NH−A−N(O)R’R”の各々の基が式NH−(CH2)2−N(O)(CH3)2の基である、請求項8記載の溶液。
【請求項10】
追加の成分を含有する混合物中に調合され、その結果、溶液のpHが5〜9の範囲内にあるように緩衝化されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項11】
治療に使用するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の溶液の調製方法であって、式(I)の化合物の安定な無菌水溶液を容器中に導入し、該容器を密封することを含み、該溶液を凍結乾燥工程なしで調製する、前記方法。
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、Aは、NHおよびN(O)R’R”の間の鎖長が少なくとも炭素原子2個であるCアルキレン基であり、そしてR’およびR”は各々別々に、C1−4アルキル基、C2−4ヒドロキシアルキル基およびC2−4ジヒドロキシアルキル基から選択され、ここで、窒素原子に結合した炭素原子はヒドロキシ基をもたず、また、2個のヒドロキシ基で置換されている炭素原子は存在しないか、または、R’およびR”は共にC2−6アルキレン基であり、このC2−6アルキレン基は、R’およびR”が結合している窒素原子とともに、3〜7個の原子を環内に有する複素環式基を形成している)
の化合物の安定な無菌水溶液であって、
密閉容器中の単位用量形態において、式(I)の化合物の濃度が150mg/mlまでであり、pHが5〜9の範囲内である、前記溶液。
【請求項2】
溶液のpHが5.0〜8.4の範囲内である、請求項1記載の溶液。
【請求項3】
溶液のpHが6.0〜8.0の範囲内である、請求項2記載の溶液。
【請求項4】
式(I)の化合物が0.1〜100mg/mlの濃度で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項5】
Aが直鎖アルキレン基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項6】
Aがエチレンである、請求項に記載の溶液。
【請求項7】
R’およびR”が直鎖アルキル基またはヒドロキシ置換アルキル基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項8】
R’およびR”が各々CH3またはCH2CH3である、請求項7記載の溶液。
【請求項9】
式NH−A−N(O)R’R”の各々の基が式NH−(CH2)2−N(O)(CH3)2の基である、請求項8記載の溶液。
【請求項10】
追加の成分を含有する混合物中に調合され、その結果、溶液のpHが5〜9の範囲内にあるように緩衝化されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項11】
治療に使用するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の溶液の調製方法であって、式(I)の化合物の安定な無菌水溶液を容器中に導入し、該容器を密封することを含み、該溶液を凍結乾燥工程なしで調製する、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2007−505876(P2007−505876A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526688(P2006−526688)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003954
【国際公開番号】WO2005/025537
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(500431508)ビーティージー・インターナショナル・リミテッド (41)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003954
【国際公開番号】WO2005/025537
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(500431508)ビーティージー・インターナショナル・リミテッド (41)
【Fターム(参考)】
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