説明

アンモニア計

【課題】定期的に装置の校正を行うので、常に正確で安定した計測値を得る。
【解決手段】試料の測定を行なう際、同じ濃度の試料の時には、試料が一定の量で化学発光部19に導入されてこないと、発光強度は低下する。そこで、定期的に、切替バルブ44を校正液側の流路に切り替えて、校正液による測定を行なう。この場合において、発光強度が初期校正時の値より低下していたら、流量計31と気体流量計41の計測値を、1つのコントローラ45に導入して演算処理する。演算処理結果から設定流量より低下している方の流量計31あるいは41の流量を上昇させる。このようにして両流量計31,41を制御することにより、安定した測定値(発光強度)を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、FIA法(フローインジェクション法)・化学発光法を用いたアンモニア計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、浄水原水や工程水などに溶存するアンモニア性窒素を測定できるアンモニア計を開発した。このアンモニア計の測定方式は、FIA法・化学発光法を使用している。
【0003】
この測定原理は、試料水中のアンモニアが試薬(次亜塩素酸ナトリウム)と反応してクロラミンを生成する。クロラミンは、気液分離管で気相へ移り、気体として加熱酸化炉内で一酸化窒素NOとなる。その後、一酸化窒素NOは、化学発光部に導入され、オゾンガスと反応して発光する。この発光を検出器により化学発光強度として検出して、試料水中のアンモニウムイオン濃度を定量する。
【0004】
この測定原理の特徴は、(a)FIA法を用いているために、応答性が極めて速く、且つ検出方法に化学発光法を用いているため、高感度であること、(b)気体を測定するため検出器が直接、試料水の影響を受けないこと、などが上げられる。
【0005】
また、性能検証を実施した結果から、試薬を変更した新たなアンモニウムイオン濃度測定装置を提案している(特許文献1参照)。
【0006】
その測定装置の概略構成を図8に示すに、図8は、ガス化反応部(液相反応部)1と化学発光測定部(気相反応部)2から構成されている。以下図8によりアンモニウムイオン濃度測定の流れについて述べる。
【0007】
図8において、試料水は、試料水注入ポンプ(P1)11の駆動によって、流量5mL/分で常時、六方バルブ12に通水される。また、試薬は、六方バルブ12が切り替わると同時に、試薬注入ポンプ(P2)13が駆動して、細管流路14に試薬が50μL注入される。試料水と試薬は、流路14から混合コイル15に流入し、その混合コイル15を流れる過程で混合され、試料水中のアンモニウムイオンと試薬中の次亜塩素酸が反応し、クロラミンを生成する。
【0008】
混合コイル15から送出された混合液は、気液分離管16に流入され、ここで、混合液から試料水中のアンモニウムイオン濃度に応じたクロラミン(試料ガス)が空気中に逃げ出す。
【0009】
この試料ガスを加熱酸化炉17へ導入する。加熱酸化炉17に導入された試料ガスは、一酸化窒素NOに変換された後、水分除去チューブ18を経て、化学発光部19に一定流量で導入される。
【0010】
化学発光部19には、一定流量でオゾン発生器20からオゾンが通気され、試料ガス中の一酸化窒素NOとオゾンが化学発光部19で反応し、化学発光強度が検出される。この化学発光強度から試料水中のアンモニウムイオン濃度が算出され、電気信号として変換器表示部21に供給されて、その濃度が表示される。
【0011】
イオン濃度算出後のオゾンと試料ガスの混合ガスは、減圧ポンプ(P4)22を経て、排オゾン処理器23に導入され、オゾンを除去した後、最終的に廃ガス排出口から排出される。なお、24はガス乾燥器、25は気液分離管16から排出される廃液を排出する廃液排出ポンプ(P3)である。
【特許文献1】特開2001−183299
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したFIA法は、細管の中を流れている試料水に試薬を注入し、細管内で試料水と試薬が混合反応し、検出器である化学発光部19で目的のものを測定する方法である。また、混合コイル15で試料水と試薬が速やかに混合するために、通常は内径0.5〜1.0mm程度の細管を用いている。
【0013】
ところで、アンモニア計は、浄水工程水(原水、凝集沈殿処理水、ろ過水など)中のアンモニア濃度の監視や、その濃度を基にした塩素注入量制御に用いられる。原水、凝集沈殿処理水、ろ過水などの試料水は浮遊物質を含んでいるため、細管が詰まりやすくなる。
【0014】
このため、アンモニア計には、除濁装置を設置し、アンモニア計に入ってくる試料水の浮遊物質を取り除いて運転を行う。しかし、除濁装置では、取りきれない浮遊物質が徐々にアンモニア計に入り込み細管に蓄積されて行くと、細管を詰まらせることになる。細管が詰まると、混合コイル15などの細管内の流量が落ちてくる。流量が一定していないと、前述したように測定値に影響が生じてくる。
【0015】
また、試料水中のアンモニアは、次亜塩素酸ナトリウムと反応してクロラミンが生成する。さらに、加熱酸化炉17内では、以下の反応によりアンモニア濃度に比例した一酸化窒素NOが発生する。
【0016】
クロラミン + O2 → NO↑
一酸化窒素NOは、図9に示すように、水分除去チューブ18と化学発光部19とを接続するために、試料用キャピラリ26が使用されている。このため、一酸化窒素NOは、キャピラリ26を通って化学発光部19の発光チャンバーに導入される。このとき、試薬の次亜塩素酸ナトリウムが結晶化してキャピラリ26を詰まらせる恐れがある。キャピラリ26が詰まると、気体の流量が落ちることになり、気体の流量が一定しなくなって測定値に影響が発生し、アンモニウムイオン濃度の計測値が不正確になる恐れがある。
【0017】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、液体流路あるいは気体流路に流量計を設けるとともに、校正液と試料水とを切替バルブで切り替えて、校正液の発光強度を定期的に測定するようにしたので、常に正確で安定した計測値を得るようにしたアンモニア計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明は、上記の課題を達成するために、試料水流路に設けた試料水注入ポンプの駆動により試料水を流下させながら、その試料水に試薬を注入混合し、気液分離管により液体から分離した気体を一酸化窒素に転換し、気体流路を介して化学発光部に供給し化学発光させ、その発光強度からアンモニア性窒素を測定するアンモニア計において、
前記試料水注入ポンプの駆動により試料水を流下させながらその試薬を注入混合させる試料水流路に液体流量計を設けるとともに、前記気体流路に気体流量計を設け、前記注入ポンプの前段側の試料水流路に試料水と校正液とを切り替える切替バルブを設け、前記液体流量計と気体流量計の計測値が導入されるコントローラを設け、前記切替バルブを校正液側に切り替えて、校正液を前記試料水流路に注入し、校正液の発光強度を定期的に測定し、初回校正時の値と比較して、その比較結果を前記コントローラに導入し、前記流量計の計測値とともに、前記コントローラで演算処理し、その演算処理結果により、前記試料水注入ポンプ及び化学発光部の出力側に設けた減圧ポンプを制御して安定した測定値を得るようにしたことを特徴とするアンモニア計である。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、この発明によれば、アンモニア計に流量計を設置するとともに、校正液と試料水とを切替バルブで切り替えて、校正液の発光強度を定期的に測定するようにしたので、以下のような効果が得られる。
(1)試料の流量を一定にすることが可能なため、常に正確で安定した測定値を得ることができ、装置の信頼性の向上を図ることができる。
(2)装置に使用される部品の交換が、直感や目視に頼るのではなく、定量的に示されるので、無駄なく正確に行うことができ、コストダウンに寄与する。
(3)定期的に装置の校正を行なうので、常に正確で安定した測定値を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下この発明の実施の形態を図面に基づいて説明するに、図8、図9と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略して述べる。図1は、実施の第1形態例を示す概略構成説明図で、この第1形態例の構成は、試料水注入ポンプ11と六方バルブ12との流路に、液体流量計31を介挿したものである。
【0021】
この流量計31で測定した流量計測信号は、コントローラ32に導入されて、ここで、計測信号は演算処理される。この処理により、流量計測値が設定流量値より低下したとき、コントローラ32から制御信号が試料水注入ポンプ11に与えられ、ポンプ11の設定値を上昇させて、試料水の流量を一定にする。
【0022】
ここで、試料水をポンプ11から注入し、六方バルブ12を経て混合コイル15内で試薬と混合させ、気液分離管16で得られた試料ガスを、化学発光測定部2に導入してアンモニアイオン濃度を測定しているときに、試料水の流路が詰まって来たとする。
【0023】
すると、流量計31の計測値が低下してくる。このため、試料水の流量を一定にするために、ポンプ11の設定値を上昇させるようにコントローラ32から制御信号がポンプ11に与えられる。試料水の流量が一定になったら、コントローラ32は、ポンプ11への制御信号を停止する。
【0024】
図2は実施の第2形態例を示す概略構成説明図で、この第2形態例の構成は、試料水注入ポンプ11の手前の試料水用流路33に、試料水と洗浄水を切り替える切替バルブ34と洗浄水用流路35を設置し、試料水注入ポンプ11と六方バルブ12との流路に流量計31を介挿したもので、流量計31からの計測信号をコントローラ32で演算処理してポンプ11へ制御信号を与えるとともに、切替バルブ34へ切替信号を与える。
【0025】
上記のように構成した第2形態例において、試料水は、試料水注入ポンプ11により試料水用流路33から六方バルブ12をへて、第1形態例と同様に混合コイル15内で試薬(次亜塩素酸ナトリウム)と混合されて処理される。
【0026】
このようにして計測しているときに、試料水の流路が次第に詰まってくると、流量計31の計測値が低下してくる。このため、試料水の流量を一定に維持するために、ポンプ11の設定値を上昇するように制御する。試料水の流量が一定になったら、ポンプ11の制御を停止する。
【0027】
その後、試料水用流路33が汚濁により詰まってくると、ポンプ11の設定値を最大値まで上昇させても、流量計31の設定流量まで達しなくなる。そのときには、切替バルブ34にコントローラ32から切替信号を与えて、洗浄水用流路35に切り替える。
【0028】
これにより、洗浄水が、洗浄水用流路35から切替バルブ34を経て試料水用流路33に流れ込み、その流路33を洗浄する。試料水用流路33が洗浄され、流量計31の計測値が設定値に戻ったなら、コントローラ32から切替バルブ34へ切替信号を与えて、試料水を試料水用流路33に供給する。
【0029】
上記のように、第2形態例は、第1形態例に洗浄水用流路35と切替バルブ34を設置し、流量が低下して来て、試料水注入ポンプ11の設定値を最大限まで上昇させても流量計31の設定流量まで上昇しないとき、試料水用流路33を洗浄して試料水の流量を確保するようにしたものである。
【0030】
図3は実施の第3形態例を示す概略構成説明図で、この第3形態例は、第2形態例において、試料水用流路33を洗浄しても流量計31の計測値が設定値に戻らないときには、試料水用流路33の交換を促すことを表示する信号をコントローラ32から表示部36に与えるように構成したものである。その他の構成及び作用は、第2形態例と同様である。
【0031】
図4は実施の第4形態例を示す概略構成説明図で、この第4形態例は、第3形態例において、表示部36に試料水用流路交換の表示が出たときに、試料水用流路33を交換するまでの時間、測定が停止しないように試料水用流路37を別に設けて、六方バルブ12に試料水を供給するように構成したものである。
【0032】
図5は実施の第5形態例を示す概略構成説明図で、この第5形態例は、化学発光測定部2への気体の供給流量を一定にするために、水分除去チューブ18と化学発光部19とを結ぶ試料用キャピラリ26に、気体流量計41を介挿したものである。
【0033】
図5において、ガス化反応部1によりガスになった試料は、加熱酸化炉17内で一酸化窒素NOになり、水分除去チューブ18、試料用キャピラリ26、気体流量計41をへて化学発光部19に導入される。一方、オゾン発生器20より発生されたオゾンガスも化学発光部19に導入され、一酸化窒素NOと反応して発光する。その発光光線を検出器により化学発光強度として検出して、試料水中のアンモニウムイオン濃度を定量し、その定量結果を表示部21に表示する。
【0034】
なお、反応で使用されなかったオゾンガスは、排オゾンとして排オゾン処理器23で処理されて外部ヘ放出される。
【0035】
アンモニウムイオン濃度測定中に、試料ガスの流路、すなわち試料用キャピラリ26がガスの結晶化により詰まってくると、流量計41の計測値が低下してくる。この計測値は、コントローラ42で演算処理していて、計測値が低下してくると、試料ガスの流量を一定に保持するために、コントローラ42から減圧ポンプ22に設定値を上昇させる制御信号を与える。この制御信号によりポンプ22が制御されて設定値を上昇させ、試料ガスの流量が一定に達したなら、減圧ポンプ22の制御をコントローラ42からの停止信号により停止させる。
【0036】
図6は実施の第6形態例を示す概略構成説明図で、この第6形態例は、第5形態例の改良に関する。この第6形態例では、化学発光測定部2への気体の供給流量を一定にするために、試料用キャピラリ26に、気体流量測定用流量計41を介挿している。流量計41で気体(ガス)の流量測定中に、ガス流量が低下したときに、減圧ポンプ22の設定値を最大限まで上昇させる。しかし、最大限まで流量を上昇させても流量計41の設定流量まで達しないときには、試料用キャピラリ26の交換を促すことを、コントローラ42から表示部43に表示させるようにしたものである。
【0037】
図7はこの発明の実施の第7形態を示す概略構成説明図で、この第7形態は、校正液(アンモニア性窒素濃度2.0mg/L)と試料水とを切替バルブ44で切り替えて、校正液の発光強度を、定期的に測定できるようにしたものである。例えば、初回校正時より発光強度が低下していたら、試料注入ポンプ11あるいは減圧ポンプ22の設定値を上昇させることにより安定した発光強度(測定値)を得るようにした。
【0038】
図7において、試料の測定を行なう際、同じ濃度の試料の時には、試料が一定の量で化学発光部19に導入されてこないと、発光強度は低下する。そこで、定期的に、切替バルブ44を校正液側の流路に切り替えて、校正液による測定を行なう。この測定において、測定値(発光強度)が初期校正時の値より低下していたら、流量計31と気体流量計41の計測値を、1つのコントローラ45に導入して演算処理する。
【0039】
この演算処理結果から設定流量より低下している方の流量計31あるいは41の流量を上昇させる(試料水注入ポンプ11あるいは減圧ポンプ22を操作する)。このようにして両流量計31,41を制御することにより、安定した測定値(発光強度)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の第1形態例を示す概略構成説明図。
【図2】実施の第2形態例を示す概略構成説明図。
【図3】実施の第3形態例を示す概略構成説明図。
【図4】実施の第4形態例を示す概略構成説明図。
【図5】実施の第5形態例を示す概略構成説明図。
【図6】実施の第6形態例を示す概略構成説明図。
【図7】この発明の実施の第7形態を示す概略構成説明図。
【図8】従来のアンモニウムイオン濃度測定措置の概略構成説明図。
【図9】化学発光測定部の概略構成説明図。
【符号の説明】
【0041】
1…ガス化反応部
2…化学発光測定部
11…試料水注入ポンプP1
12…六方バルブ
13…試薬注入ポンプP2
15…混合コイル
16…気液分離管
17…加熱酸化炉
18…水分除去チューブ
19…化学発光部
20…オゾン発生器
21…変換器表示部
22…減圧ポンプP4
25…廃液排出ポンプP3
26…試料用キャピラリ
31…液体流量計
32、42、45…コントローラ
33、37…試料水用流路
34…切替バルブ
35…洗浄水用流路
36…表示部
41…気体流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水流路に設けた試料水注入ポンプの駆動により試料水を流下させながら、その試料水に試薬を注入混合し、気液分離管により液体から分離した気体を一酸化窒素に転換し、気体流路を介して化学発光部に供給し化学発光させ、その発光強度からアンモニア性窒素を測定するアンモニア計において、
前記試料水注入ポンプの駆動により試料水を流下させながらその試薬を注入混合させる試料水流路に液体流量計を設けるとともに、前記気体流路に気体流量計を設け、
前記注入ポンプの前段側の試料水流路に試料水と校正液とを切り替える切替バルブを設け、
前記液体流量計と気体流量計の計測値が導入されるコントローラを設け、
前記切替バルブを校正液側に切り替えて、校正液を前記試料水流路に注入し、校正液の発光強度を定期的に測定し、初回校正時の値と比較して、その比較結果を前記コントローラに導入し、前記流量計の計測値とともに、前記コントローラで演算処理し、その演算処理結果により、前記試料水注入ポンプ及び化学発光部の出力側に設けた減圧ポンプを制御して安定した測定値を得るようにしたことを特徴とするアンモニア計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−147633(P2007−147633A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342035(P2006−342035)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【分割の表示】特願2002−145634(P2002−145634)の分割
【原出願日】平成14年5月21日(2002.5.21)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】