説明

アースドリル

【課題】高さ方向のスペースに制限がある場合でも、分割ケリーバの長さを長くして、切削深さを深くすることができるアースドリルを提供すること。
【解決手段】ケリーバ9の最小短縮時に、第2ケリーバ92〜第4ケリーバ94は、伸縮方向の上端が側方第1凹設部8b2より下方に位置するよう構成され、第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99は、伸縮方向の上端は側方第2凹設部8c2の下方に位置するよう構成されているので、高さ方向のスペースを十分に確保できない場合でも、ケリーバ9の最大伸長持の長さを長くして、より深くまで掘削することができる。また、第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99には、第1貫通孔H1が形成されているので、ケリーバ9の最小短縮時においても、第1連結部材P1を挿抜することができ、スイベルジョイント8をケリーバ9から着脱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースドリルに関し、特に、高さ方向のスペースに制限がある場合でも、分割ケリーバの長さを長くして、掘削深さを深くすることができるアースドリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アースドリルは、伸縮自在に嵌合された複数段の分割ケリーバを備え、最外層の分割ケリーバが、走行作業車のリーダに昇降可能に設けられた回転駆動装置に保持される。リーダの頂部には、シーブが軸支されており、このシーブに掛け渡されたロープの先端に、スイベルジョイントを介して、最内層の分割ケリーバが吊設される。また、最内層の分割ケリーバの底部には、掘削バケットが取着される。
【0003】
掘削作業は、ロープの張力を緩め、掘削バケットを地面に預けた状態で回転駆動装置により最外層の分割ケリーバを回転駆動させる。これにより、複数の分割ケリーバと共に掘削バケットが一体に回転して地面を掘削する。掘削バケットに掘削土砂が充満した場合には、ロープを巻き取り、掘削バケットを地上に引き上げると共に、走行作業車を旋回させ、掘削バケット中の掘削土砂を地上に排土する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−203288号(例えば、段落[0029]及び第9図など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、トンネル内の掘削現場など、高さ方向のスペースに制限があり、リーダの全高を低くする必要がある場合には、その分、最小短縮時の分割ケリーバの長さを短くしなければならず、伸長時の全長が短くなるため、掘削深さを十分に確保することができないという問題点があった。
【0006】
即ち、最小短縮時の分割ケリーバの長さは、スイベルジョイントがシーブの直前に位置するまでロープを巻き上げた状態で、スイベルジョイントの下端から地面までの距離内に収める必要がある。そのため、リーダの全高が低くなれば、シーブの位置が下がるため、その分、最小短縮時の分割ケリーバの長さが短くなる。
【0007】
一方、分割ケリーバの段数を多くすれば、掘削深さを大きくすることは可能であるが、最外層部の分割ケリーバが大径化するため、回転駆動装置の大型化により装置コストが嵩むだけでなく、重量の増加により重量バランスが不安定となり、安全性の低下を招く。或いは、分割ケリーバの板厚を薄くすることで、段数を確保しつつ、大径化を抑制する場合には、強度低下により、掘削作業時の分割ケリーバの損壊を招く。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、高さ方向のスペースに制限がある場合でも、分割ケリーバの長さを長くして、掘削深さを深くすることができるアースドリルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、請求項1記載のアースドリルは、伸縮自在に嵌合され外層ほど外形が大きくなる複数段の分割ケリーバを備え、それら複数段の分割ケリーバの内の最内層の分割ケリーバがシーブから垂下されたロープにスイベルジョイントを介して吊設されると共に、前記複数段の分割ケリーバの内の最外層の分割ケリーバが回転駆動装置により回転駆動されることで、前記最内層の分割ケリーバの底部に取着された掘削バケットが回転して掘削対象を掘削するものであり、前記最内層の分割ケリーバと前記スイベルジョイントとが第1連結部材を介して連結され、前記複数段の分割ケリーバの内の少なくとも一部の分割ケリーバは、最小短縮状態において、上端が少なくとも前記第1連結部材を越える位置まで延設されると共に、前記第1連結部材が挿抜可能に形成される第1貫通孔を備えている。
【0010】
請求項2記載のアースドリルは、請求項1記載のアースドリルにおいて、前記最外層の分割ケリーバから所定位置までの外層側の分割ケリーバの一群は、前記最小短縮状態において、上端が少なくとも前記第1連結部材を越える位置まで延設されると共に、前記第1貫通孔を備え、前記所定位置から最内層の分割ケリーバまでの内層側の分割ケリーバの一群は、前記最小短縮状態において、上端が前記連結位置よりも低くされている。
【0011】
請求項3記載のアースドリルは、請求項1又は2に記載のアースドリルにおいて、前記ロープと前記スイベルジョイントとが第2連結部材を介して連結され、前記一部の分割ケリーバは、最小短縮状態において、上端が前記第2連結部材を越える位置まで延設されると共に、前記第2連結部材が挿抜可能に形成される第2貫通孔と前記第1貫通孔とを備え、前記第1貫通孔と第2貫通孔とが前記分割ケリーバの周方向の同位相となる位置に貫通形成されている。
【0012】
請求項4記載のアースドリルは、請求項1又は2に記載のアースドリルにおいて、前記ロープと前記スイベルジョイントとが第2連結部材を介して連結され、前記一部の分割ケリーバは、最小短縮状態において、上端が前記第2連結部材を越える位置まで延設されると共に、前記第2連結部材が挿抜可能に形成される第2貫通孔と前記第1貫通孔とを備え、前記第1貫通孔と第2貫通孔とが前記分割ケリーバの周方向に180度位相をずらした位置に貫通形成されている。
【発明の効果】
【0013】
この目的を達成するために、請求項1記載のアースドリルは、複数段の分割ケリーバの内の少なくとも一部の分割ケリーバが、最小短縮状態において、上端が少なくとも第1連結部材を越える位置まで延設されているので、その延設された分、分割ケリーバの長さを長くすることできる。その結果、高さ方向のスペースに制限がある場合でも、最大伸長時の全長を長くして、掘削深さを深くすることができるという効果がある。
【0014】
即ち、本発明のアースドリルは、分割ケリーバの上端を延設することで、その分割ケリーバの長さを長くする構成なので、スイベルジョイントの位置や大きさを変更する必要がない。よって、シーブの位置を高くする必要がなく、リーダの全高を維持したまま、分割ケリーバの長さを長くすることができるので、高さ方向のスペースに制限がある場合でも、最大伸長時の全長を長くして、掘削深さを深くすることができる。
【0015】
この場合、本発明のアースドリルによれば、上述した一部の分割ケリーバは、第1連結部材が挿抜可能に形成される第1貫通孔を備えているので、かかる第1貫通孔を介して、第1連結部材を挿抜することができ、その結果、スイベルジョイントの着脱を行うことができるという効果がある。
【0016】
請求項2記載のアースドリルは、請求項1記載のアースドリルにおいて、最外層の分割ケリーバから所定位置までの外層側の分割ケリーバの一群は、最小短縮状態において、上端が少なくとも第1連結部材を越える位置まで延設されているので、その延設分だけ、分割ケリーバの長さを長くすることができる。よって、上述したように、高さ方向のスペースに制限がある場合でも、最大伸長時の全長を長くして、掘削深さを深くすることができるという効果がある。
【0017】
また、本発明のアースドリルによれば、上記外層側の分割ケリーバの一群は、第1貫通孔を備えるので、この第1貫通孔を介して、第1連結部材を挿抜することができ、その結果、スイベルジョイントの着脱を行うことができるという効果がある。この場合、上記内層側の分割ケリーバの一群は、最小短縮状態において、上端が連結位置よりも低くされているので、スイベルジョイントの周囲に空間を設けることができる。よって、第1連結部材をスイベルジョイントに着脱する場合には、かかる空間を利用することができるので、その着脱作業の作業性を向上させることができるという効果がある。
【0018】
ここで、上記外層側の分割ケリーバの一群は、上記内層側の分割ケリーバの一群に対して、外形が大きくねじり強度が高いところ、本発明のアースドリルによれば、これら外層側の分割ケリーバの一群に第1貫通孔を貫通形成する構成であるので、第1貫通孔の貫通形成による影響を抑制して、分割ケリーバの強度を確保することができるという効果がある。一方、外形が小さくねじり強度が低い内層側の分割ケリーバは、上端が連結位置よりも低くされるので、第1貫通孔を貫通形成する必要がない。よって、第1貫通孔を貫通形成することによる影響を回避して、分割ケリーバの強度を確保することができるという効果がある。
【0019】
請求項3記載のアースドリルは、請求項1又は2に記載のアースドリルにおいて、一部の分割ケリーバは、最小短縮状態において、上端が少なくとも第2連結部材を越える位置まで延設されているので、第1連結部材と第2連結部材との間の位置まで延設される場合と比較して、分割ケリーバの長さをより長くすることができる。よって、上述したように、高さ方向のスペースに制限がある場合でも、最大伸長時の全長を長くして、掘削深さをより一層深くすることができるという効果がある。
【0020】
また、本発明のアースドリルによれば、第1貫通孔と第2貫通孔とが周方向に同位相となる位置に貫通形成されているので、同じ方向から穴加工を施すことができる。よって、穴加工工程において、分割ケリーバの向きを変更する必要がないので、その分、加工工数を抑制して、加工コストの削減を図ることができるという効果がある。
【0021】
請求項4記載のアースドリルは、請求項1又は2に記載のアースドリルにおいて、一部の分割ケリーバは、最小短縮状態において、上端が少なくとも第2連結部材を越える位置まで延設されているので、第1連結部材と第2連結部材との間の位置まで延設される場合と比較して、分割ケリーバの長さをより長くすることができる。よって、上述したように、高さ方向のスペースに制限がある場合でも、最大伸長時の全長を長くして、掘削深さをより一層深くすることができるという効果がある。
【0022】
また、本発明のアースドリルによれば、第1貫通孔と第2貫通孔とが周方向に180度位相をずらした位置に貫通形成されているので、第1貫通孔と第2貫通孔とを貫通形成することによる影響を分散させて、その分、分割ケリーバの強度を確保することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施の形態におけるアースドリルの側面図である。
【図2】ケリーバの最大伸長時におけるアースドリルの部分拡大正面図である。
【図3】最小短縮時におけるケリーバの拡大断面図である。
【図4】(a)は、第2実施の形態の最小短縮時におけるケリーバの拡大断面図であり、(b)は、第3実施の形態の最小短縮時におけるケリーバの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態におけるアースドリル100の側面図である。まず、図1を参照してアースドリル100の概略構成について説明する。
【0025】
アースドリル100は、例えば、トンネル内などの高さ方向のスペースに制限がある場所においても、掘削深さをより深くすることができるように構成された掘削作業用の機械であり、自走可能な走行体2と、その走行体2の上部に旋回可能に支持される旋回体3と、その旋回体3に固定されケリードライブ10を上昇下降可能に支持するリーダ4と、そのリーダ4から突設されるブーム5と、そのブーム5の突設端に回転可能に軸支されるシーブ6と、そのシーブ6に懸架されたロープ7と、そのロープ7の先端が連結されるスイベルジョイント8と、そのスイベルジョイント8を介してロープ7に吊設された伸縮可能な円筒状のケリーバ9と、そのケリーバ9の外周面を支持しつつ周方向に回転駆動するケリードライブ10と、ケリーバ9の下端に着脱可能に連結された地面を掘削する掘削バケット11とを備えている。
【0026】
次に、図2を参照して、アースドリル100を用いた掘削作業について説明する。図2は、ケリーバ9の最大伸長時におけるアースドリル100の部分拡大正面図である。なお、図2では、アースドリル100を一部断面視して図示すると共に、リーダ4およびロープ7の図示を省略している。また、図2では、ケリーバ9の板厚を拡大して模式的に図示している。
【0027】
図2に示すように、ケリーバ9は、円筒状に形成される9つの分割ケリーバ(以下、「第1ケリーバ91〜第9ケリーバ99」と称する)から構成され、それぞれが異なる直径を有し互いに出没可能に嵌合されている。なお、9つの分割ケリーバのうち、最内層に位置するものを第1ケリーバ91とし、第1ケリーバ91の外層側に配設されるものを第2ケリーバ92とする。以下、同様に内層側から外層側に向けて順に第3ケリーバ93〜第8ケリーバ98とし、最外層に位置するものを第9ケリーバ99とする。
【0028】
各分割ケリーバ(第1ケリーバ91〜第9ケリーバ99)の伸縮方向(図2上下方向)の長さは、第1ケリーバ91〜第4ケリーバ94が等しい長さとされ、第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99が等しい長さとされている。また、第1ケリーバ91〜第4ケリーバ94の伸縮方向の長さは第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99の伸縮方向の長さより短く形成されている。なお、詳細については、後述する。
【0029】
第1ケリーバ91の上端はスイベルジョイント8に連結され、下端は掘削バケット11に連結されている。また、第9ケリーバ99にケリードライブ10からの回転駆動力が付与されると、第9ケリーバ99が周方向に回転され、その回転力が内層側の第8ケリーバ98に伝達され、第8ケリーバ98が回転される。第8ケリーバ98が回転されると、その回転力が内層側の第7ケリーバ97に伝達され、第7ケリーバ97が回転される。同様に、第7ケリーバ97〜第2ケリーバ92を介して、回転力が伝達されることで、第1ケリーバ91に回転力が伝達され、第1ケリーバ91が回転される。その結果、掘削バケット11が回転される。
【0030】
アースドリル100を用いて掘削作業を行うには、掘削バケット11を掘削する地面に預け、ロープ7を繰り出しつつ、ケリードライブ10の回転駆動力によりケリーバ9及び掘削バケット11を回転させる。これにより、ケリーバ9及び掘削バケット11の自重およびケリードライブ10のリーダ4に沿った下降による下方への押圧力により、地面を掘削する。この場合、掘削バケット11により地面を深く掘り下げていくにつれて、各分割ケリーバが下方へ伸出してケリーバ9が伸長する。よって、各分割ケリーバの伸縮方向の長さが長いほど、ケリーバ9全体としての最大伸長を長くでき、掘削深さを深くすることができる。
【0031】
次に、図3を参照して、スイベルジョイント8及びケリーバ9の詳細構成について説明する。図3は、最小短縮時におけるケリーバ9の拡大断面図である。なお、図3では図示を省略したが、ケリーバ9の最小短縮時における第2ケリーバ92〜第9ケリーバ99の伸縮方向の下端は、それぞれケリーバ9の伸縮方向に対して同じ位置に配設されている。
【0032】
図3に示すように、スイベルジョイント8は、中央部に配設される支軸部8aと、その支軸部8aの下端に回転可能に軸支される第1回転体8bと、その第1回転体8bと反対側における支軸部8aの上端に回転可能に軸支される第2回転体8cとを備えている。
【0033】
第1回転体8bは、その下端から軸心に沿って凹設された下方凹設部8b1を備えており、その下方凹設部8b1内には、第1ケリーバ91の上端に凸設されたジョイント結合部91aが挿抜可能に配設される。また、第1回転体8bは、その外周面から下方凹設部8b1を超える位置まで凹設され内面にめねじが螺刻された側方第1凹設部8b2を備える。よって、下方凹設部8b1にジョイント結合部91aを挿入し、外周面におねじが螺刻された第1連結部材P1を、ジョイント結合部91aに穿設された穴を貫通させつつ側方第1凹設部8b2に螺合することで、ケリーバ9がスイベルジョイント8に連結保持される。
【0034】
第2回転体8cは、その上端から軸心に沿って凹設された上方凹設部8c1を備えており、その上方凹設部8c1内には、ロープ7の先端に取着された連結具が挿抜可能に配設される。また、第2回転体8cは、その外周面から上方凹設部8c1を超える位置まで凹設され内面にめねじが螺刻された側方第2凹設部8c2を備える。よって、上方凹設部8c1にロープ7の連結具を挿入し、外周面におねじが螺刻された第1連結部材P2を、ロープ7の連結具に穿設された穴を貫通させつつ側方第2凹設部8c2に螺合することで、ロープ7がスイベルジョイント8に連結保持される。
【0035】
ケリーバ9の最小短縮時において、第2ケリーバ92〜第4ケリーバ94は、伸縮方向の上端が側方第1凹設部8b2より下方に位置するよう構成されている。一方、第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99は、伸縮方向の上端が、側方第1凹設部8b2より上方、かつ、側方第2凹設部8c2より下方に位置するよう構成されている。これにより、第1ケリーバ91〜第9ケリーバ99の伸縮方向の上端がすべて側方第1凹設部8b2より下方に位置する場合と比べ、第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99の上端側が側方第1凹設部8b2よりも上方に位置する長さの分だけ、最大伸長時のケリーバ9の長さを長くすることができる。よって、高さ方向のスペースを十分に確保できずケリーバ9の最小短縮時の長さが制限される場合でも、分割ケリーバの段数を増加させることなく、より深くまで掘削することができる。
【0036】
ここで、各分割ケリーバの伸縮方向の上端が、側方第1凹設部8b2より上方に位置する場合、ケリーバ9の最小短縮時にはケリーバ9をスイベルジョイント8から取り外すことができない。これに対し、本実施の形態では、第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99の側壁に第1連結部材P1を挿抜可能な大きさの第1貫通孔H1が貫通形成され、図3に示すように、ケリーバ9の最小短縮時には、第1貫通孔H1が側方第1凹設部8b2に対応する位置に配設される。
【0037】
よって、第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99の伸縮方向の上端を側方第1凹設部8b2より上方に位置するように構成した場合であっても、ケリーバ9の最小短縮時において、第1連結部材P1を挿抜して、スイベルジョイント8をケリーバ9から着脱することができる。
【0038】
また、第2ケリーバ92〜第4ケリーバ94の伸縮方向の上端は、側方第1凹設部8b2より下方に位置しているので、スイベルジョイント8の周囲に一定の空間を設けることができる。よって、この空間を利用して、第1連結部材P1の着脱作業を行うことができるので、スイベルジョイント8をケリーバ9から着脱する際に、その作業効率の向上を図ることができる。
【0039】
その一方で、各分割ケリーバの伸縮方向の長さが長すぎると、ロープ7を巻きあげる際に、各分割ケリーバの伸縮方向の上端がブーム5などと接触し、ロープ7を完全に巻き上げることができない。しかし、第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99の伸縮方向の上端は、側方第2凹設部8c2より下方に位置するよう構成されているので、ブーム5などと接触することはなく、ロープ7を完全に巻き上げることができる。
【0040】
さらに、第2ケリーバ92〜第4ケリーバ94には、第1連結部材P1を挿抜するための穴を貫通形成する必要がないので、外径が小さくねじり強度が小さい内層側の分割ケリーバ(第2ケリーバ92〜第4ケリーバ94)の強度を確保することができる。よって、地面の掘削時における欠損等を防止することができる。
【0041】
なお、第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99の内周面側には、第1貫通孔H1の周縁部に、円環状に形成された板状体からなる補強パッチ(図示せず)が取着されている。なお、補強パッチは、各ケリーバ95〜99の内周面に密着可能に湾曲されると共に、第1貫通孔H1の内径と同等の内径を有する円環状に形成されている。これにより、第1貫通孔H1の周縁部の強度を確保し、地面の掘削時における欠損等を防止することができる。
【0042】
次に、図4(a)を参照して、第2実施の形態について説明する。図4(a)は、第2実施の形態の最小短縮時におけるケリーバ209の拡大断面図である。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0043】
第1実施の形態では、ケリーバ9の最小短縮時において、第2ケリーバ92〜第4ケリーバ94の伸縮方向の上端が側方第1凹設部8b2より下方に位置し、第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99の伸縮方向の上端が、側方第1凹設部8b2より上方、かつ、側方第2凹設部8c2より下方に位置する場合を説明したが、第2実施の形態におけるケリーバ209は、ケリーバ209の最小短縮時において、第2ケリーバ292〜第4ケリーバ294の伸縮方向の上端が、側方第1凹設部8b2より上方、かつ、側方第2凹設部8c2より下方に位置し、第5ケリーバ295〜第9ケリーバ299の伸縮方向の上端が第2凹設部8c2より上方に位置するように構成されている。
【0044】
図4(a)に示すように、第5ケリーバ295〜第9ケリーバ299には、その側壁に第1貫通孔H1が形成され、その上方には、第2連結部材P2を挿抜可能な大きさの第2貫通孔H2が貫通形成されている。ケリーバ209の最小短縮時には、第2貫通孔H2が側方第2凹設部8c2に対応する位置に配設される。なお、第5ケリーバ295〜第9ケリーバ299の第1貫通孔H1及び第2貫通孔H2はそれぞれ周方向に同位相になる位置に形成されている。よって、第1貫通孔H1及び第2貫通孔H2の形成工程において、同じ方向から加工を施すことができるので、加工工数を抑制して加工コストの削減を図ることができる。
【0045】
また、第5ケリーバ295〜第9ケリーバ299の側壁に第2貫通孔H2が貫通形成されることで、ケリーバ9の最小短縮時においても、第2連結部材P2を挿抜することができるので、ロープ7をスイベルジョイント8から着脱することができる。
【0046】
第2ケリーバ292〜第4ケリーバ294には、その側壁に第1貫通孔H1が形成され、その第1貫通孔H1は、ケリーバ209の最小短縮時において、側方第1凹設部8b2に対応する位置に配設されている。即ち、第2ケリーバ292〜第9ケリーバ299の各第1貫通孔H1を介して、第1連結部材P1を挿抜することができるので、スイベルジョイント8を第1ケリーバ91から着脱することができる。
【0047】
以上のように、第2実施の形態におけるケリーバ209によれば、最大伸長時の長さをより長くすることができるので、その分、掘削深さを深くすることができる。また、第2ケリーバ292〜第4ケリーバ294は、伸縮方向の上端が側方第2凹設部8c2より下方に位置するので、第2連結部材P2を挿抜するための穴を貫通形成する必要がない。よって、外径が小さくねじり強度が小さい内層側の分割ケリーバ(第2ケリーバ292〜第4ケリーバ294)の強度を確保することができる。また、スイベルジョイント8の周囲に一定の空間を設け、かかる空間を第2連結部材P2の着脱作業スペースとして利用することができるので、ロープ7をスイベルジョイント8から着脱する際の作業効率の向上を図ることができる。
【0048】
次に、図4(b)を参照して、第3実施の形態について説明する。図4(b)は、第3実施の形態の最小短縮時におけるケリーバ309の部分断面図である。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0049】
第1実施の形態では、ケリーバ9の最小短縮時において、第2ケリーバ92〜第4ケリーバ94の伸縮方向の上端が側方第1凹設部8b2より下方に位置し、第5ケリーバ95〜第9ケリーバ99の伸縮方向の上端が、側方第1凹設部8b2より上方、かつ、側方第2凹設部8c2より下方に位置する場合を説明したが、第3実施の形態におけるケリーバ309は、第2ケリーバ392〜第9ケリーバ399の伸縮方向の上端が側方第2凹設部8c2より上方に位置するよう構成されている。
【0050】
図4(b)に示すように、第2ケリーバ392〜第9ケリーバ399には、その側壁に第1貫通孔H1が貫通形成され、第1貫通孔H1よりも上方であって180度位相をずらした位置に第2貫通孔H3が形成されている。よって、最大伸長時のケリーバ309の長さをより長くすることができるので、より掘削深さを深くすることができる。また、第1貫通孔H1と180度位相をずらした位置に第2貫通孔H3が貫通形成されているので、強度が低下される部位の配置を分散させて、その分、第2ケリーバ392〜第9ケリーバ399全体としての強度を確保することができる。
【0051】
以上、各実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0052】
即ち、第1実施の形態および第2実施の形態は一例であり、他の構成とすることは当然可能である。他の構成としては、例えば、第1実施の形態における符号を利用して説明すると、第2ケリーバ92〜第4ケリーバ94の伸縮方向の上端が側方第1凹設部8b2より下方に位置し、第5ケリーバ95〜第7ケリーバ97の伸縮方向の上端が、側方第1凹設部8b2より上方、かつ、側方第2凹設部8c2より下方に位置し、第8ケリーバ98〜第9ケリーバ99の伸縮方向の上端が、側方第2凹設部8c2より上方に位置する構成が例示される。この場合には、第5ケリーバ95〜第7ケリーバ97には第1貫通孔H1が、第8ケリーバ98〜第9ケリーバ99には第1貫通孔H1及び第2貫通孔H2が、それぞれ貫通形成される。
【0053】
この構成によれば、スイベルジョイント8とケリーバ9及びロープ7との着脱を可能としつつ、分割ケリーバの段数を増加させることなく、より深くまで掘削することを可能とすることができる。また、スイベルジョイント8の周囲に空間を設けることができるので、第1連結部材P1及び第2連結部材P2の着脱作業効率の向上を図ることができる。更に、外径が小さくねじり強度が小さい内層側の分割ケリーバほど貫通孔の配設数が少ない又は配設されないので、強度を確保して、地面の掘削時における欠損等を防止することができる。
【0054】
また、第1実施の形態および第2実施の形態では、ケリーバ9,209の最小短縮時に、外層側の分割ケリーバ(第5ケリーバ95,295〜第9ケリーバ99,299)の伸縮方向の上端が内層側の分割ケリーバ(第2ケリーバ92,292〜第4ケリーバ94,294)の伸縮方向の上端よりも上方に位置する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、内層側の分割ケリーバの伸縮方向の上端が外層側の分割ケリーバの伸縮方向の上端よりも上方に位置する構成であっても良い。或いは、中間層の分割ケリーバの伸縮方向の上端が内層側および外層側の分割ケリーバの伸縮方向の上端よりも上方に位置する構成であっても良い。即ち、複数の分割ケリーバの内の少なくとも1の分割ケリーバの伸縮方向の上端が側方第1凹設部8b2を超える位置まで延設され、その延設された分割ケリーバの側壁に第1連結部材P1(及び第2連結部材P2)を挿抜可能な大きさの穴が貫通形成されていれば良い。これにより、その延設された長さの分だけ、ケリーバ9の最大伸長時の長さを長くすることができ、より掘削深さを深くすることができる。
【符号の説明】
【0055】
100,200,300, アースドリル
6 シーブ
7 ロープ
8 スイベルジョイント
9 ケリーバ
91,291,391 第1ケリーバ(最内層の分割ケリーバ)
99,299,399 第9ケリーバ(最外層の分割ケリーバ)
91〜99,291〜299,391〜399 第1ケリーバ〜第9ケリーバ(分割ケリーバ)
10 ケリードライブ(回転駆動装置)
11 掘削バケット
H1 第1貫通孔
H2 第2貫通孔
P1 第1連結部材
P2 第2連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮自在に嵌合され外層ほど外形が大きくなる複数段の分割ケリーバを備え、それら複数段の分割ケリーバの内の最内層の分割ケリーバがシーブから垂下されたロープにスイベルジョイントを介して吊設されると共に、前記複数段の分割ケリーバの内の最外層の分割ケリーバが回転駆動装置により回転駆動されることで、前記最内層の分割ケリーバの底部に取着された掘削バケットが回転して掘削対象を掘削するアースドリルにおいて、
前記最内層の分割ケリーバと前記スイベルジョイントとが第1連結部材を介して連結され、
前記複数段の分割ケリーバの内の少なくとも一部の分割ケリーバは、最小短縮状態において、上端が少なくとも前記第1連結部材を越える位置まで延設されると共に、前記第1連結部材が挿抜可能に形成される第1貫通孔を備えていることを特徴とするアースドリル。
【請求項2】
前記最外層の分割ケリーバから所定位置までの外層側の分割ケリーバの一群は、前記最小短縮状態において、上端が少なくとも前記第1連結部材を越える位置まで延設されると共に、前記第1貫通孔を備え、前記所定位置から最内層の分割ケリーバまでの内層側の分割ケリーバの一群は、前記最小短縮状態において、上端が前記連結位置よりも低くされていることを特徴とする請求項1記載のアースドリル。
【請求項3】
前記ロープと前記スイベルジョイントとが第2連結部材を介して連結され、
前記一部の分割ケリーバは、最小短縮状態において、上端が前記第2連結部材を越える位置まで延設されると共に、前記第2連結部材が挿抜可能に形成される第2貫通孔と前記第1貫通孔とを備え、
前記第1貫通孔と第2貫通孔とが前記分割ケリーバの周方向の同位相となる位置に貫通形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアースドリル。
【請求項4】
前記ロープと前記スイベルジョイントとが第2連結部材を介して連結され、
前記一部の分割ケリーバは、最小短縮状態において、上端が前記第2連結部材を越える位置まで延設されると共に、前記第2連結部材が挿抜可能に形成される第2貫通孔と前記第1貫通孔とを備え、
前記第1貫通孔と第2貫通孔とが前記分割ケリーバの周方向に180度位相をずらした位置に貫通形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアースドリル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−255220(P2010−255220A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103974(P2009−103974)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】