説明

アース・ソーラーシステム(地中熱回収パイプ方式)

【課題】 石油、ガス、電気等の人工エネルギーの浪費を抑え、太陽熱や地中の地熱を有効に利用して住宅の室温調整を行う為の、エネルギーコストが低く構造が簡単な冷暖房装置を提供する事を課題とする。
【解決手段】 建物の室内に取付けた全熱交換形換気扇が吸気した新鮮な外気を、建物の1階床下部に送り込むと共に、1階床下の基礎底盤にはU字形に成形した複数の地中熱回収パイプを埋設し、地中熱回収パイプの一端には送風機を取付け、地中熱回収パイプに吸込まれた空気は、冬期は地中熱により地中熱回収パイプの中で暖められ、また、夏期は地中熱により地中熱回収パイプの中で冷やされ、1階床下部の空気の温度調整を行い、その温度調整された空気を、給気ダクトを経由して各階の天井内部に供給し、天井に設けたガラリより室内に供給するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の室内に取付けた全熱交換形換気扇が室内側に供給する新鮮な外気を、建物の1階床下部に送り込むと共に、1階床下の基礎底盤に下部をU字形に形成した複数の地中熱回収パイプを、両端を基礎底盤より1階床下部に突き出すように地中に埋設し、地中熱回収パイプの一端には送風機を取付け、その送風機を作動させる事により1階床下内部の空気が地中熱回収パイプに吸込まれ、その地中熱回収パイプに吸込まれた空気は、冬期は地中熱により地中熱回収パイプの中で暖められ、また、夏期は地中熱により地中熱回収パイプの中で冷やされた空気が1階床下部に供給されると共に、その1階床下の空気をダクトを経由して各階の天井内部に供給し、天井内部に供給された空気が各室天井に設けたガラリより室内に供給され、室温調整を行う為の装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、小規模な住宅における室温調整は、夏期にはクーラーを使用し、冬期には電気、ガス、石油等のエネルギーを利用して冷暖房を行って来たが、近年では地球温暖化防止の観点から、エネルギー消費に伴うCO2排出量の削減が急務となり、エネルギー消費量の削減や、さらに自然エネルギーへの代替が早急に望まれている。
【0003】
これに伴い、自然エネルギーの利用手段として、現在、一般的に普及しているものは、太陽エネルギーを利用した、太陽熱温水器(熱効率50〜60%)と太陽光発電(変換効率10〜15%)があるが、いずれも、太陽エネルギーだけを利用する省エネ技術は天候に左右され易く、不安定な点から単独では利用が出来ず、他のエネルギーと兼用して利用されて来た為、なお一層の改良が求められている。
【0004】
これに対して、地下4〜5mの地中は、年間を通じて安定した温度を保つことから、夏期は外気と比べて低温となり、冬期は外気と比べて暖温となる。そのため、従来からこのような地中熱を利用した設備は、大型の建物や公共設備等で実験的に施工されているが、その利用方法は、冬の間に自然界で出来た氷を保存しておき、その氷を夏期に地下に設けた蓄熱槽に移して冷水を作り、その冷水を各室に循環させて冷房を行うことが一般的であり、大掛かりな工事が必要となり、しかも、定期的に蓄熱層に氷を補充しなければならず、小規模な住宅用としては不向きであった。
【0005】
さらに、地中熱を利用したヒートポンプ方式で、家庭内の給湯と、室内の冷暖房を行う方法も行われているが、水平ループ方式(地中に深さ1〜2mの堀を堀り、そこに採熱用パイプを這わせて埋設する)では、建坪100mの住宅の熱源を得るために400〜600mの採熱用パイプを埋設することが必要であり、又、垂直ループ方式(地中に深さ50〜100mの井戸を堀り、そこに採熱用パイプを埋設する)では2本の井戸が必要となり、一般住宅用で300〜500万円の費用を要すると共に、ヒートポンプの稼動コスト(電気代)が、深夜電力を利用した電気温水器の約75%かかるといった問題があった。
【0006】
また、平成15年7月に建築基準法が改正され、「シックハウス対策」として、居室の24時間換気(1時間で居室体積の0.5回分を換気させる事)が義務づけられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
そこで、本出願人は、特許文献1に記載された、建築基準法に対応できる「アース・ソーラーシステム(二層式)」を発明し出願した。この発明によれば、貯水タンクと、貯温水タンクの2つのタンクを地中に埋設し、その双方のタンク内に、外気取入口から各室の24時間給気パイプに連通する熱交換パイプを配管し、貯水タンクを雨水又は地下水又は水道水で満たすと共に、貯温水タンクは太陽熱温水器からの温水で満たし、前記、熱交換パイプに設けた開閉バルブを操作する事により、夏期においては、冬期の冷たい外気で冷やしておいた貯水タンク内の冷水を利用して、外気を貯水タンク内の熱交換パイプを経由させ、暑い外気を冷やして各室に送り込むため、効率よく冷風運転を行うことが出来る。また、冬期においては、夏期の暑い外気で温めておいた貯水タンクの弱温水に冷たい外気を熱交換バイプを経由して暖めると共に、さらに太陽熱温水器を利用した、貯温水タンク内の温水中の熱交換パイプを経由するため、各室に温風を送り込むことが可能となる。
【特許文献1】特願2007―42895
【特許文献2】特願2008―134783
【0008】
しかしながら、本出願人の出願した特許においては、貯水タンクと貯温水タンクの2つのタンクを必要とした為、配管が複雑になり、開閉バルブの数も増え、高価格になると共に、施工する為の工期も長く必要であった。
【0009】
また、従来より地中熱交換機を利用した建物の空調換気システムとして知られているジオパワーシステムの場合は、冬期において、地中熱だけでは暖房効果(地下5mでも地中温度は約18度前後だから、外気を地中熱により暖めても、それ以下の温度にしかならない)が低く、さらに価格が高く、一般住宅に施工する場合はコストの面で問題があった。
【特許文献3】特開2007―303693
【0010】
さらに、太陽エネルギーを利用するソーラーシステムとして知られているOMソーラーの場合は、夏期においては冷風運転が出来ないといった欠点があった。
【特許文献4】特開平08―005161
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような、従来の欠点に鑑みて、自然との調和を図る事を目的とし、石油、ガス、電気等の人工エネルギーの浪費を抑え、太陽熱や地中の地熱を有効に利用して、住宅の室温調整を行うものであり、エネルギーコストが低く、構造が簡単な冷暖房装置を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願人の出願した特許文献1、特許文献2による発明では、上記のような問題が発生した為、当社では、新たに、建物の室内に取付けた全熱交換形換気扇が室内側に供給する新鮮な外気を、建物の1階床下部に送り込むと共に、1階床下の基礎底盤に下部をU字形に形成した複数の地中熱回収パイプを、両端を基礎底盤より1階床下部に突き出すように地中に埋設し、地中熱回収パイプの一端には送風機を取付け、その送風機を作動させる事により1階床下内部の空気が地中熱回収パイプに吸込まれ、その地中熱回収パイプに吸込まれた空気は、冬期は地中熱により地中熱回収パイプの中で暖められ、また、夏期は地中熱により地中熱回収パイプの中で冷やされた空気が1階床下部に供給されると共に、その床下の空気をダクトを経由して各階の天井内部に供給し、天井内部に供給された空気が各室天井に設けたガラリより室内に供給され、室温調整を行う為の装置に改良し、本発明を特許出願すると同時に、新製品の発売に踏み切る事となった。
【0013】
かかる課題を解決する為、請求項1に記載の発明は、建物の室内に取付けた全熱交換形換気扇が室内側に供給する新鮮な外気を、建物の1階床下部に送り込むと共に、1階床下の基礎底盤に下部をU字形に成形した複数の地中熱回収パイプを、両端を基礎底盤より1階床下部に突き出すように地中に埋設し、地中熱回収パイプの一端には送風機を取付け、その送風機を作動させる事により1階床下内部の空気が地中熱回収パイプに吸込まれ、その地中熱回収パイプに吸込まれた空気は、冬期は地中熱により地中熱回収パイプの中で暖められ、また、夏期は地中熱により地中熱回収パイプの中で冷やされた空気が1階床下部に供給されると共に、その1階床下の空気をダクトを通して各階の天井内部に供給し、天井内部に供給された空気を各室天井に設けたガラリより室内に供給した事を特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、地中熱回収パイプを1階床下基礎底盤の隅に設置する事により、地中熱回収パイプの位置を相互に離すと共に、地中熱回収パイプの基礎底盤から突き出した端部を基礎底盤に対してL字形に構成し、地中熱回収パイプの送風機が空気を送り出す方向と、別の位置の地中熱回収パイプの空気吸込口が、互いに向い合うように構成した事を特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構造に加え、冬期においては、太陽熱温水器からの温水を1階床下部に設けた温水蓄熱槽に循環させ、1階床下内部の空気を暖めた事を特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1及至3のいずれか一つに記載の構造に加え、基礎の外側に基礎外断熱材を施工すると共に、1階床下部を外気調整槽として利用する事により、1階床下部を外気から遮断した密封状態として構成した事を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、1階床下部を外気調整槽として活用する為、建物の室内に取付けた全熱交換形換気扇が室内側に供給する新鮮な外気を、室内に循環させるのではなく、建物の1階床下部に送り込むと共に、1階床下の基礎底盤に下部をU字形に形成した複数の地中熱回収パイプを、両端を基礎底盤より1階床下部に突き出すように地中に埋設し、地中熱回収パイプの一端には送風機を取付け、その送風機を作動させる事により1階床下内部の空気が地中熱回収パイプに吸込まれ、その地中熱回収パイプに吸込まれた空気は、冬期は地中熱により地中熱回収パイプの中で暖められ、また、夏期は地中熱により地中熱回収パイプの中で冷やされた空気が1階床下部に供給されると共に、その1階床下の空気をダクトを経由して各階の天井内部に供給し、天井内部に供給された空気が各室天井に設けたガラリより室内に供給される。このように、全熱交換形換気扇と地中熱を利用する事により、従来のように、外気を地中熱回収パイプに直接取り込んで地中熱により熱交換する事に比べて熱効率が飛躍的に高まり、省エネにも貢献する事が可能となり、工期の短縮と、大幅にコストの低減を図る事が出来る。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、地中熱回収パイプを1階床下の基礎底盤の隅に設置する事により、地中熱回収パイプの位置を相互に離す事が可能となり、複数の地中熱回収パイプ同士が、お互いの地中熱回収パイプ同士からの地中熱の干渉を少なくする事が可能となる。さらに、地中熱回収パイプの基礎底盤から突き出した端部を基礎底盤に対してL字形に構成し、地中熱回収パイプの送風機が空気を送り出す方向と、別の位置の地中熱回収パイプの空気吸込口が互いに向い合うように構成する事により、1階床下内部の空気が掻き混ぜられ、1階床下内部の温度を場所によって、温度の高い低いが無いように均一に保つ事が可能となり、複数の地中熱回収パイプに対して、同一温度の空気を供給する事が可能となる。このように構成する事により、各階に供給する空気の温度を、常に安定させる事が可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、冬期における地下5mの地中の温度は、関東地方で概ね18度前後の為、これまで地中熱だけを利用して室内を暖房した場合、室内の温度が低いといった欠点を抱えていた。本発明では、これまでの欠点を改善する為、太陽熱温水器からの温水を1階床下部に設けた温水蓄熱槽に循環させて1階床下内部の空気を暖める事により、地中熱回収パイプで暖めた空気を、それ以上の温度に上げる事が可能となるばかりでなく、曇りや雨の日が続いた場合にも、これまでの、太陽エネルギーを利用するソーラーシステムに比べて1階床下部に設けた温水蓄熱槽の熱源を利用する事により室内に温風を給気する事が可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、基礎部の外側に基礎外断熱材を施工すると共に、1階床下部を外気から遮断した密封状態にして外気調整槽として利用した事により、1階床部の温度を一定に保ち1階室内の温度を一定温度に調整出来るだけではなく、各室に送り込む給気の温度の変化も最小限に抑える事が可能となる。
【実施例】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態]
【0022】
図1及至図5には、この発明の実施の形態を示す。
【0023】
図1は、本発明の太陽熱温水器と温水蓄熱槽と地中熱回収パイプと全熱交換型換気扇を利用した、木造住宅の分解図である。以下に、太陽熱と地中熱を利用した冷暖房システムを説明する。
【0024】
図1は、本発明のアース・ソーラーシステム(地中熱回収パイプ方式)を分かり易く説明する為、アース・ソーラーシステム(地中熱回収パイプ方式)を組み込んだ木造住宅1を分解図で表したものである。屋根3の上に、太陽熱温水器2を設置すると共に、太陽熱温水器2で温められ矢印43で示す温水は、温水パイプ42から温水パイプ33を経由して、基礎底盤46の上部に取付けられたビニール製の温水蓄熱槽35に送られる。温水蓄熱槽35に送られた温水は、温水蓄熱槽35を温めると共に、回収パイプ34、給水パイプ41を経由して矢印44で示す循環水となり、再び太陽熱温水器2で温められる。さらに、基礎45の外面には基礎断熱材40が施工され、基礎45の内側の基礎底盤46には4本の地中熱回収パイプ12、18、22、26が設置されると共に、居室に取付けられた全熱交換型換気扇4で熱交換された室内側供給空気(新鮮な空気)は、外気導入ダクト5を経由して矢印7方向に送られ1階床下内部に給気される。
【0025】
地中熱回収パイプ12、18、22、26は、2本の塩ビパイプの下部を継手で継いで、下部をU字形に構成すると共に、基礎底盤46の上部に突き出す2本の塩ビパイプの部分には、L字形のエルボ等の継手を取り付け、一方のエルボの先端に送風機を取付ける。
【0026】
さらに、図1、図5に示すように、送風機10、送風機16、送風機31、送風機38を作動させる事により、地中熱回収パイプ6が矢印143方向から吸込んだ空気は、図1の地中熱回収パイプ12の中を矢印11方向から矢印13方向を経由して地中熱により温度調整されて、地中熱回収パイプ9を経由して送風機10から1階床下内部に排出される。このようにして排出された空気は矢印8方向に送風され、1階床下内部の空気と混ぜ合わされて温度調節が行われ、矢印140方向から再び地中熱回収パイプ14に吸込まれ、地中熱回収パイプ18の中を矢印17方向から矢印19方向を経由して地中熱によって温度調整されて、地中熱回収パイプ15を経由して送風機16より1階床下内部に排出される。このようにして排出された空気は矢印20方向に送風され、1階床下内部の空気と混ぜ合わされて温度調節が行われ、矢印141方向から再び地中熱回収パイプ29に吸込まれ、地中熱回収パイプ26の中を矢印27方向から矢印25方向を経由して地中熱によって温度調整されて、地中熱回収パイプ30を経由して送風機31より1階床下内部に排出される。このようにして排出された空気は矢印32方向に送風され、1階床下内部の空気と混ぜ合わされて温度調節が行われ、矢印142方向から再び地中熱回収パイプ36に吸込まれ、地中熱回収パイプ22の中を矢印23方向から矢印21方向を経由して地中熱によって温度調整されて、地中熱回収パイプ37を経由して送風機38より1階床下内部に排出される。このようにして排出された空気は矢印39方向に送風され、1階床下内部の空気と混ぜ合わされて温度調節が行われ、矢印143方向から再び地中熱回収パイプ6に吸込まれる。このように構成する事により、1階床下内部の空気は床下内部で部分的に澱む事が無くなり、1階床下内部の温度は均一の温度になるように調整される。
【0027】
このように、一本一本の地中熱回収パイプに各々一台の送風機を取付けて地中熱を回収した事により、地中熱を効率良く回収する事が可能となった。さらに、それぞれの地中熱回収パイプに独立して送風機を取付けた事により、1階床下内部の空気の温度が、夏(冬)の初期等に冷え(暖か)すぎる場合には、4本の地中熱回収パイプの内の数本のみ可動させ、他の地中熱回収パイプを停止する事により1階床下内部の空気の温度を調整する事が可能となった。
【0028】
本発明において、地中熱回収パイプ12、18、22、26は塩ビパイプを使用し、地中に埋め込む深さは約5mである。その理由は、地中約4〜5mの深さの温度は、一年を通じて約18℃前後と温度があまり変わらない為です。
【0029】
なお、一般の住宅の1階床下の基礎部、特に布基礎においては、1階床下部の湿気を防ぐ為、通風が良い構造となっているが、本発明においては、1階床下部を外気調整槽として利用する為、外気が1階床下部に流入しないように1階床下部を密封状態に構成するように施工される。
【0030】
以上のような構成において、図2により夏期における各室の冷風運転について説明する。
【0031】
最初に、全熱交換型換気扇53、全熱交換型換気扇55から室内側に供給する空気を1階床下90へ給気する方法について説明する。1階室内Aの室内側吐出空気(よごれた室内空気)は矢印58方向から全熱交換型換気扇55に吸込まれて室外に排気される。その際、全熱交換型換気扇55が排気する室内の空気と室内に給気する外気とが全熱交換型換気扇55により熱交換されると共に、吸込んだ室外側吸込空気(新鮮な空気)は全て外気導入ダクト56を経由して矢印59で示すように1階床下90に導かれる。同様にして、2階室内Bの室内側吐出空気(よごれた室内空気)は矢印54方向から全熱交換型換気扇53に吸込まれて室外に排気される。その際、全熱交換型換気扇53が排気する室内の空気と室内に給気する外気とが全熱交換型換気扇55により熱交換されると共に、吸込んだ室外側吸込空気(新鮮な空気)は全て外気導入ダクト57を経由して矢印59で示すように1階床下90に導かれる。
【0032】
このようにして、全熱交換型換気扇53、全熱交換型換気扇55を使用する事により、夏期における涼しい室内の空気を、外の暑い外気と入れ替える際に、温度の上昇を最小限に抑える事が可能となる。
【0033】
つづいて、このようにして給気された外気が、どのようにして1階床下90で熱交換されて弱冷風になるかを説明する。外気導入ダクト56、外気導入ダクト57から導入された外気は1階床下90の空気と混ざり合い、送風機65を作動させる事により、矢印64方向から地中熱回収パイプ63に吸込まれ、地中熱回収パイプ63の中で地中熱により冷やされて弱冷風となって、送風機65より矢印66方向に示すように1階床下90に排気される。同様に、送風機69を作動させる事により、矢印67方向から地中熱回収パイプ68に吸込まれ、地中熱回収パイプ68の中で地中熱により冷やされて弱冷風となって、送風機69より矢印70方向に示すように1階床下90に排気される。同様に、送風機73を作動させる事により、矢印71方向から地中熱回収パイプ72に吸込まれ、地中熱回収パイプ72の中で地中熱により冷やされて弱冷風となって、送風機73より矢印74方向に示すように1階床下90に排気される。同様に、送風機77を作動させる事により、矢印75方向から地中熱回収パイプ76に吸込まれ、地中熱回収パイプ76の中で地中熱により冷やされて弱冷風となって、送風機77より矢印78方向に示すように1階床下90に排気される。
【0034】
このようにして、1階床下90の中で弱冷風となった外気は、1階床を冷やす事により1階室内Aを冷やすと共に、給気ダクト87、給気ダクト103に取付けられた送風機82を作動させる事により、弱冷風となった1階床下90の空気は給気ダクト87を経由して1階天井裏91に給気され、ガラリ93、ガラリ96より1階室内Aに給気されて1階室内Aを冷やす。同様に、1階床下90で弱冷風となった1階床下90の空気は、給気ダクト103を経由して2階天井裏100に給気され、ガラリ102、ガラリ99より2階室内Bに給気されて2階室内Bを冷やす。
【0035】
なお、夏期においては、1階床下90に設けられた温水蓄熱槽81は、太陽熱温水器120からの温水パイプ79に取付けられた開閉バルブ110を閉め、さらに回収パイプ80の開閉バルブ113を閉め、開閉バルブ118を開ける事により、温水蓄熱槽81内の水を排水して空にした状態にして、夏期においては温水蓄熱槽81は使用しない。
【0036】
また、当然の事ながら、太陽熱温水器120で温められた温水は、開閉バルブ112を開けて開閉バルブ110を閉じ、開閉バルブ113を閉じて水栓86を開ける事により温水パイプ108を経由し、矢印89から矢印84方向を経由して風呂に給湯する事が出来る。
【0037】
つづいて、図3で示す、冬期における各室の温風運転について説明する。
【0038】
最初に、全熱交換型換気扇53、全熱交換型換気扇55から室内側に供給する空気を1階床下90へ給気する方法について説明する。1階室内Aの室内側吐出空気(よごれた室内空気)は矢印58方向から全熱交換型換気扇55に吸込まれて室外に排気される。その際、全熱交換型換気扇55が排気する室内の空気と、室内に給気する外気とが全熱交換型換気扇55により熱交換されると共に、吸込んだ室外側吸込空気(新鮮な空気)は全て外気導入ダクト56を経由して矢印59で示すように1階床下に導かれる。同様にして、2階室内Bの室内側吐出空気(よごれた室内空気)は矢印54方向から全熱交換型換気扇53に吸込まれて室外に排気される。その際、全熱交換型換気扇53が排気する室内の空気と室内に供給する外気とが全熱交換型換気扇53により熱交換されると共に、吸込んだ室外側吸込空気(新鮮な空気)は全て外気導入ダクト57を経由して矢印59で示すように1階床下に導かれる。
【0039】
このようにして、全熱交換型換気扇53、全熱交換型換気扇55を使用する事により、冬期における室内の温かい空気を、外の冷たい外気と入れ替える際に、温度が下がるのを最小限に抑える事が可能となる。
【0040】
つづいて、このようにして給気された外気が、どのようにして1階床下90で熱交換されて弱温風になるかを説明する。外気導入ダクト56、外気導入ダクト57から導入された外気は1階床下90の空気と混ざり合い、送風機65を作動させる事により、矢印64方向から地中熱回収パイプ63に吸込まれ、地中熱回収パイプ63の中で地中熱により暖められて弱温風となって、送風機65より矢印66方向に示すように1階床下90に排気される。同様に、送風機69を作動させる事により、矢印67方向から地中熱回収パイプ68に吸込まれ、地中熱回収パイプ68の中で地中熱により暖められて弱温風となって、送風機69より矢印70方向に示すように1階床下90に排気される。同様に、送風機73を作動させる事により、矢印71方向から地中熱回収パイプ72に吸込まれ、地中熱回収パイプ72の中で地中熱により暖められて弱温風となって、送風機73より矢印74方向に示すように1階床下90に排気される。同様に、送風機77を作動させる事により、矢印75方向から地中熱回収パイプ76に吸込まれ、地中熱回収パイプ76の中で地中熱により暖められて弱温風となって、送風機77より矢印78方向に示すように1階床下90に排気される。
【0041】
さらに冬期では、太陽熱温水器120の温水を温水パイプ108の開閉バルブ110を開け、開閉バルブ118を閉じ、開閉バルブ112を閉じ、開閉バルブ113を開けて送水ポンプ111を運転する事により、太陽熱温水器120の温水は、矢印122方向から矢印106方向を経由して、矢印131の方向に流れて温水蓄熱槽81に溜められる。このようにして温水蓄熱槽81に溜められた温水が1階床下90の空気を暖める。さらに、このようにして、温水蓄熱槽81を温めた温水が冷めた場合は、送水ポンプ111を運転する事により再び太陽熱温水器120に戻され、太陽50により再び温められ、温水パイプ108を経由して温水蓄熱槽81を温める。
【0042】
このようにして、太陽熱温水器120の温水を溜めた温水蓄熱槽81を1階床下90に設置する事により、地中熱回収パイプ63、68、72、76の中で地中熱により暖められた1階床下90の空気は、さらに温められる事となる。
【0043】
なお、当然の事ながら、太陽熱温水器120で温められた温水は、開閉バルブ112を開けて開閉バルブ110を閉じて、水栓86を開ける事により、太陽熱温水器120の温水は、矢印89から矢印84方向を経由して風呂に給湯される。
【0044】
このようにして、1階床下90で弱温風となった外気は、1階床部を暖める事により1階室内Aを温めると共に、送風機82を作動させる事により、弱温風となった1階床下90の空気は、給気ダクト87を経由して1階天井裏91に給気され、ガラリ93、ガラリ96より1階室内Aに給気され1階室内Aを温める。同様に、弱温風となった1階床下90の空気は、給気ダクト103を経由して2階天井裏100に給気され、ガラリ102、ガラリ99より2階室内Bに給気され、2階室内Bを温める。
【0045】
このように、冬期においては、太陽熱温水器120の温水を温水蓄熱槽81に貯留させた事により、曇りや雨の日が続いた場合でも、蓄熱した温水蓄熱槽81の温水を利用する事により、地中熱回収パイプ63、68、72、76の中で地中熱により暖められた1階床下90の空気を、さらに暖め、弱温風として居室に給気する事が可能となる。
【0046】
図4は、本発明における木造住宅51を、次世代省エネタイプの断熱で構成した状態を示す。屋根の断熱に関しては、屋根断熱材135(一般的には、厚さ160mmの発泡ウレタン)を屋根内側に施工する。外壁の断熱に関しては、外壁断熱材136(一般的には、厚さ75mmの発泡ウレタン)を外壁内側に施工する。窓のサッシに関しては、各社から発売されている断熱等級四(次世代省エネタイプ)の断熱サッシ137を使用する。基礎の断熱に関しては、基礎外断熱材138(一般的には、厚さ50mmの発泡スチロール板)を基礎コンクリートの外側に施工する。但し、ここに書かれた断熱材の種類と材質に関しては、例えば、発泡スチロール板であっても、密度の違いにより断熱効果に変化が生じるる為、同一メーカーであっても、密度により厚さが変わる場合があり得る。
【0047】
本発明における木造住宅51の断熱に関しては、最大限の省エネ効果を得る為にも、図4で説明した次世代省エネタイプの断熱を施工する必要がある。
【0048】
以上、実施の形態に基づいて、本発明に係るアース・ソーラーシステム(地中熱回収パイプ方式)について詳細に説明してきたが、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の改変をなしても、本発明の技術的範囲に属するのはもちろんである。
【0049】
図1、図5において、太陽熱温水器2からの温水を貯留するための温水蓄熱槽35の形状は立方体で描かれているが、この形状に限らず温水パイプ33と回収パイプ34との間を長い塩ビパイプや曲げて施工する事が簡単なリブパイプ等を接続して温水蓄熱槽とする事も可能である。このような材質を使用して温水蓄熱槽を構成する事により、1階床下の基礎が複雑に構成された場合においても、簡単に温水蓄熱槽を構築する事が出来る。また、温水蓄熱槽の材質に関しても、この発明の実施の形態ではビニール製としているが、FRP製、さらに、ステンレス等の金属で構成する事ももちろん可能である。
【0050】
図1、図5において、温水蓄熱槽35は基礎底盤46の上に設置されているが、温水蓄熱槽35を設置する際には、基礎底盤46を欠き込んで、その中に温水蓄熱槽35を埋め込んだり、または、温水蓄熱槽35を設置する基礎底盤46の場所に囲いを設けて、その中に温水蓄熱槽35を設置する事も、もちろん可能である。さらに、温水蓄熱槽35は1個で描かれているが、1階床下の基礎が複雑に構成された場合においては、複数個の温水蓄熱槽を連結して対応することも可能である。
【0051】
図1、図5において、地中熱回収パイプ12、18、22、26は基礎底盤46の四隅に配置されているが、これは、互いの地中熱回収パイプが地中の熱を回収(放出)する際、地中熱回収パイプで熱回収(熱放出)した際に地中に与えた熱の影響が、互いの地中熱回収パイプに対して干渉するのを少なく抑える為です。
【0052】
図1及至図5においては、地中熱回収パイプは4本設置されているが、当然の事ながら住宅の規模(床面積)の大小に応じて地中熱回収パイプの本数は増減する。また、地中熱回収パイプの材質は、地下の水位の高低に応じて地中の熱容量が変化する為、熱伝導率の高いアルミやステンレス等の材料を使用する事も、もちろん可能である。
【0053】
本発明においては、地中熱回収パイプは塩ビパイプを使用し、地中に埋め込む深さは、約5mである。と表示しているが、地中の地下水位の高低により、当然ながら地中に埋め込む塩ビパイプの深さを変える事はもちろん必要である。
【0054】
図1及至図3において、太陽熱温水器120は太陽光の集熱板と貯湯槽が一体となった形式のもので説明したが、この形式に限らず、太陽光の集熱板と貯湯槽が分離され、太陽光の集熱板が屋根に設置されると共に、貯湯槽が地表面に固定されたタイプの太陽熱温水器を使用する事も可能である。
【0055】
図3において、太陽熱温水器120からの温水を、1階床下90の温水蓄熱槽81に溜める場合において、太陽熱温水器120の構造によっては、常時、太陽熱温水器120の貯湯槽の温水を、送水ポンプにより温水蓄熱槽81に送り込みながら循環回収して、温水蓄熱槽81の温度を一定に保つ事も可能である。
【0056】
図3において、室内に温度センサーを取付けると共に、太陽熱温水器120、温水蓄熱槽81にも温度センサーを取付け、水(温水)を送水する為の開閉バルブは、電磁式開閉バルブや切替式電磁バルブ弁等を使用し、コンピューター制御により室内の温度を検知し、開閉バルブ110、112、113、118の開閉並びに、送水ポンプ111の駆動と停止を自動的に行うようにして室内の温度調整を行う事も出来る。さらに、太陽熱温水器120に水温センサーを設置すると共に、温水蓄熱槽81内にも水温を感知するセンサーを設置して、温水蓄熱槽81内の水温が変化した場合、開閉バルブ110、113を開閉させて、送水ポンプ111を作動させ、太陽熱温水器120からの温水を温水蓄熱槽81内に循環させる事も可能である。
【0057】
図1及至図5において、外気導入ダクト56、57、給気ダクト81、103の配管スペースは、壁内、床内、天井内、又は専用配管スペースにこだわらず、最適な位置に配管される事は、当然である。
【0058】
この発明の実施の形態については、木造住宅に関して説明してきたが、鉄骨住宅、RCコンクリート住宅に応用出来ることは、当然である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の実施の形態に係るアース・ソーラーシステム(地中熱回収パイプ方式)の分解図である。
【図2】同実施の形態に係る夏期における、木造住宅断面図の全熱交換型換気扇と地中熱回収パイプを利用したアース・ソーラーシステム(地中熱回収パイプ方式)の弱冷風システム図である。
【図3】同実施の形態に係る冬期における、木造住宅断面図の全熱交換型換気扇と地中熱回収パイプと太陽熱温水器を利用したアース・ソーラーシステム(地中熱回収パイプ方式)の弱温風システム図である。
【図4】同実施の形態に係る木造住宅に、屋根断熱材、外壁断熱材、断熱樹脂サッシ、基礎外断熱材を施工した状態の断面図である。
【図5】同実施の形態に係る基礎底盤における、温水蓄熱槽と地中熱回収パイプと送風機と空気の流れを表す基礎底盤平面図である。
【符号の説明】
【0060】
A 1階室内
B 2階室内
1 木造住宅
2 太陽熱温水器
3 屋根
4 全熱交換型換気扇
5 外気導入ダクト
6 地中熱回収パイプ
7 矢印
8 矢印
9 地中熱回収パイプ
10 送風機
11 矢印
12 地中熱回収パイプ
13 矢印
14 地中熱回収パイプ
15 地中熱回収パイプ
16 送風機
17 矢印
18 地中熱回収パイプ
19 矢印
20 矢印
21 矢印
22 地中熱回収パイプ
23 矢印
24 開閉バルブ
25 矢印
26 地中熱回収パイプ
27 矢印
28 排水溝
29 地中熱回収パイプ
30 地中熱回収パイプ
31 送風機
32 矢印
33 温水パイプ
34 回収パイプ
35 温水蓄熱槽
36 地中熱回収パイプ
37 地中熱回収パイプ
38 送風機
39 矢印
40 基礎外断熱材
41 給水パイプ
42 温水パイプ
43 温水
44 循環水
45 基礎
46 基礎底盤
50 太陽
51 木造住宅
52 屋根
53 全熱交換型換気扇
54 矢印
55 全熱交換型換気扇
56 外気導入ダクト
57 外気導入ダクト
58 矢印
59 矢印
60 地表面
61 基礎
62 水位
63 地中熱回収パイプ
64 矢印
65 送風機
66 矢印
67 矢印
68 地中熱回収パイプ
69 送風機
70 矢印
71 矢印
72 地中熱回収パイプ
73 送風機
74 矢印
75 矢印
76 地中熱回収パイプ
77 送風機
78 矢印
79 温水パイプ
80 回収パイプ
81 温水蓄熱槽
82 送風機
83 矢印
84 矢印
85 蛇口
86 水栓
87 給気ダクト
88 風呂温水パイプ
89 矢印
90 1階床下
91 1階天井裏
92 矢印
93 ガラリ
94 矢印
95 矢印
96 ガラリ
97 矢印
98 矢印
99 ガラリ
100 2階天井裏
101 矢印
102 ガラリ
103 給気ダクト
104 矢印
105 矢印
106 矢印
107 給水パイプ
108 温水パイプ
109 矢印
110 開閉バルブ
111 送水ポンプ
112 開閉バルブ
113 開閉バルブ
114 給水パイプ
115 排水パイプ
116 排水溝
117 給水管
118 開閉バルブ
119 矢印
120 太陽熱温水器
121 矢印
122 矢印
130 矢印
131 矢印
135 屋根断熱材
136 外壁断熱材
137 断熱サッシ
138 基礎外断熱材
140 矢印
141 矢印
142 矢印
143 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の室内に取付けた全熱交換形換気扇が室内側に供給する新鮮な外気を、建物の1階床下部に送り込むと共に、1階床下の基礎底盤に下部をU字形に成形した複数の地中熱回収パイプを、両端を基礎底盤より1階床下部に突き出すように地中に埋設し、地中熱回収パイプの一端には送風機を取付け、その送風機を作動させる事により1階床下内部の空気が地中熱回収パイプに吸込まれ、その地中熱回収パイプに吸込まれた空気は、冬期は地中熱により地中熱回収パイプの中で暖められ、また、夏期は地中熱により地中熱回収パイプの中で冷やされた空気が1階床下部に供給されると共に、その1階床下の空気をダクトを通して各階の天井内部に供給し、天井内部に供給された空気を各室天井に設けたガラリより室内に供給した事を特徴とするアース・ソーラーシステム(地中熱回収パイプ方式)。
【請求項2】
地中熱回収パイプを1階床下基礎底盤の隅に設置する事により、地中熱回収パイプの位置を相互に離すと共に、地中熱回収パイプの基礎底盤から突き出した端部を基礎底盤に対してL字形に構成し、地中熱回収パイプの送風機が空気を送り出す方向と、別の位置の地中熱回収パイプの空気吸込口が、互いに向い合うように構成した事を特徴とする請求項1に記載のアース・ソーラーシステム(地中熱回収パイプ方式)。
【請求項3】
冬期においては、太陽熱温水器からの温水を1階床下部に設けた温水蓄熱槽に循環させ、1階床下内部の空気を暖めた事を特徴とする請求項1又は2に記載のアース・ソーラーシステム(地中熱回収パイプ方式)。
【請求項4】
基礎の外側に基礎外断熱材を施工すると共に、1階床下部を外気調整槽として利用する事により、1階床下部を外気から遮断した密封状態として構成した事を特徴とする請求項1及至3のいずれか一つに記載のアース・ソーラーシステム(地中熱回収パイプ方式)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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