説明

アームレスト及びシート

【課題】衣服や手指の挟み込みを簡易な構造で防止でき、軽量な構造でかつ低コストで製造可能なアームレストを提供する。
【解決手段】芯プレート20とカバー部材30が一体成形され、芯プレート20が一部の面を除いてカバー部材30で覆われていると共に、芯プレート20の回動範囲を規制するストッパ部10c,10cを備えたベース部材10に、芯プレート20の基端部21を対面配置している。アームレスト1の通常使用位置及び跳ね上げ位置のいずれにおいても、ストッパ部10b,10cと芯プレート20との接触は、カバー部材30で被覆された範囲で行われることになるため、衣服や手指が、両者間で挟みこまれるようなことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームレスト及び該アームレストを備えたシートに関し、特に、航空機、列車、船舶、バスなどの乗物用シートに取り付けられるアームレスト及び該アームレストを備えたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、航空機の客室に設置されるシートにおいて、特に通路側のアームレストは固定されているものが多いが、車いす利用者が座席に移動しやすいように、少なくとも一部のシートでは可動式アームレストが採用されている。例えば、特許文献1において従来例として示されている図11には、アームレストの基端部をシートバック部に軸支し、通常使用位置である略水平状態から上方に向かって跳ね上げ、シートバック部の側部に沿った姿勢に変位させる機構が示されている。同じく、特許文献1において従来例として示されている図12には、シートバック部の側部にガイド溝を設け、このガイド溝に沿ってアームレストを上下動させる機構が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−156393号公報(図11,図12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図11及び図12に示された機構は、いずれも、アームレストの前方端側を、シートクッション部に回転自由に軸支されたステイを介して支持する機構であり、アームレストを上下動させる際に、これらのステイの変位により衣服や手指が挟まれる可能性がある。また、シートクッション部及びシートバック部の側方に沿って架台フレームを設置し、この架台フレームの上部に、基端部を回動可能に軸支したアームレストも知られているが、この場合には、架台フレームの上部とアームレストの基端部との間に、衣服や手指が挟まれる可能性がある。もちろん、このような従来の構成では、衣服や手指等が挟まれることを防止するため、種々の対策が施されているが、そのような対策を施すことで構造が複雑化し、部品点数が多くなりがちで、重量も重くなるといった問題があった。
【0005】
その一方、アームレストを可動式にする場合、離陸時、着陸時等における不用意な可動を避けなければならない。そのため、アームレストを可動するためのロック解除を、基本的には客室乗務員が実施するようにして、乗客が簡単には操作できないような工夫も必要である。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、衣服や手指の挟み込みを簡易な構造で防止でき、軽量な構造でかつ低コストで製造可能なアームレスト及び該アームレスを備えたシートを提供することを課題とし、さらに、本発明は、この課題に加え、アームレストを可動するロック解除を乗客が簡単には操作できないようにしたアームレスト及び該アームレストを備えたシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、取付対象部に、通常使用位置と跳ね上げ位置との範囲で回動可能に設けられるアームレストであって、前記取付対象部に取り付けられるベース部材と、基端部が前記ベース部材に回動可能に軸支される所定長さの芯プレートと、前記芯プレートの基端部における前記ベース部材との対向面を除いて前記芯プレートを被覆するプレート被覆部と前記プレート被覆部の周縁から外方に張り出す突出片とを有する断面略I字状に成形されると共に、前記芯プレートと一体成形される合成樹脂製のカバー部材と、前記ベース部材において、前記芯プレートの回動中心を挟んで前記芯プレートの基端部の上端縁側と下端縁側にそれぞれ突設され、前記通常使用位置と跳ね上げ位置とのいずれにおいても前記芯プレートに共に当接し、前記芯プレートにかかる荷重を両方で分散負担する一対のストッパ部とを有することを特徴とするアームレストを提供する。
【0008】
前記カバー部材内で、前記芯プレートの基端部における前記ベース部材との対向面との反対面に積層され、前記ベース部材と共に前記芯プレートの基端部を回動可能に支持し、かつ、前記一対のストッパ部の先端がそれぞれ挿通されるストッパ部挿通孔を有する支持ディスクを備えることが好ましい。前記芯プレートの前記通常使用位置と跳ね上げ位置でロックを行うためのロック機構であって、前記芯プレートに形成されたロック用シャフト受け部に当接し、前記通常使用位置又は跳ね上げ位置における前記芯プレートの回動を規制するロックシャフトと、前記ロックシャフトに係合して、前記ロック用シャフト受け部に当接した状態又は当接が解除された状態を維持するロックスプリングと、前記ロックスプリングにより、前記ロックスプリングが前記ロックシャフトに係合する方向に付勢されると共に、この付勢力に抗して動かすことにより前記ロックスプリングの前記ロックシャフトへの係合を解除する解除ノブと、前記解除ノブを被覆すると共に、前記ロックシャフトの前記ロック用シャフト受け部への当接操作又は当接状態の解除操作を行うためのダミーカバーとを備えたロック機構を有することが好ましい。前記一対のストッパ部は、前記ベース部材において、前記芯プレートの回動中心を挟んだ対称位置に設けられていることが好ましい。前記ベース部材が、前記取付対象部としてシートバック部のサイドフレームに取り付けられることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、シートバック部とシートクッション部とを備えたシートであって、前記アームレストが、前記シートバック部のサイドフレームにベース部材を取り付けることにより設けられていることを特徴とするシートを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアームレストは、芯プレートとカバー部材が一体成形され、芯プレートが一部の面を除いてカバー部材で覆われていると共に、芯プレートの回動範囲を規制するストッパ部を備えたベース部材に、芯プレートの基端部を対面配置している。従って、アームレストの通常使用位置及び跳ね上げ位置のいずれにおいても、ストッパ部と芯プレートとの接触は、カバー部材で被覆された範囲で行われることになるため、衣服や手指が、両者間で挟みこまれるようなことがない。また、通常使用位置及び跳ね上げ位置のいずれにおいても一対のストッパ部の両方に芯プレートが当接し、両方のストッパ部により荷重が分散負担される構造であるため、上記した従来の跳ね上げ式のアームレストのように、荷重を支持するステイのような部材が不要であり、簡易な構造で部品点数が少なく軽量化に資すると共に、より低コストで製造可能である。
【0011】
また、アームレストを可動する際のロックの解除にあたって、解除ノブだけでなくダミーカバーを備えたロック機構を採用することで、乗客がロック解除する手段を容易には発見できなくなり、離着陸時における不用意な可動の防止に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態に係るアームレストを備えたシートの要部を正面側から見た斜視図である。
【図2】図2(a)は、上記実施形態のアームレストの分解斜視図であり、図2(b)は、ディスク挿通孔の位置を示した図であり、図2(c)はロック機構を構成するロックシャフトとダミーカバーを組み付けた状態を示した図である。
【図3】図3は、上記実施形態に係るアームレストの平面図である。
【図4】図4(a)は、上記実施形態に係るアームレストの芯プレートのとカバー部材とを分離して示した図であり、図4(b)は芯プレートとカバー部材とを一体成形した状態を示した図である。
【図5】図5(a)は、ロックシャフト及びダミーカバーが挿入された状態のアームレストの側面図であり、図5(b)は図5(a)のB−B線断面図であり、図5(c)は図5(b)のD部拡大図である。
【図6】図6(a)は、ロックシャフト及びダミーカバーを引き出した状態のアームレストの側面図であり、図6(b)は図6(a)のA−A線断面図であり、図6(c)は図6(b)のC部拡大図である。
【図7】図7は、上記実施形態に係るアームレストを備えた航空機用のシートを示した図である。
【図8】図8は、アームレストをシートバック部のサイドフレームに取り付ける状態を示した分解斜視図である。
【図9】図9(a)〜(e)は、通常使用位置から跳ね上げ位置までアームレストを動作させる方法を説明するための図である。
【図10】図10(a)は、解除ノブを正面から見た際における、ロックスプリングがロックシャフトに係合している状態を示した図であり、図10(b)は、解除ノブを正面から見た際における、解除ノブを回転させてロックスプリングのロックシャフトへの係合を解除した状態を示した図である。
【図11】図11(a)は、ダミーカバーを裏側から見た際における、ロックスプリングがロックシャフトに係合している状態を示した図であり、図11(b)は、ダミーカバーを裏側から見た際における、解除ノブを回転させてロックスプリングのロックシャフトへの係合を解除した状態を示した図である。
【図12】図12(a)は、通常使用位置における芯プレートとベース部材のストッパ部等との位置関係を示した図であり、図12(b)は、跳ね上げ位置における芯プレートの位置関係を示した図であり、図12(c)は、通常使用位置におけるロック用シャフト受け部、第1ロック用シャフト挿通部及びロックシャフトの位置関係を示した図であり、図12(d)は、跳ね上げ位置におけるロック用シャフト受け部、第1ロック用シャフト挿通部及びロックシャフトの位置関係を示した図である。
【図13】図13(a)は、サイドフレームにベース部材と取り付けた状態での通常使用位置における芯プレートとベース部材のストッパ部等との位置関係を示した図であり、図12(b)は、サイドフレームにベース部材と取り付けた状態での跳ね上げ位置における芯プレートとベース部材のストッパ部等との位置関係を示した図である。
【図14】図14(a)は、通常使用位置における芯プレートと支持ディスクの位置関係を示した図であり、図14(b)は、跳ね上げ位置における芯プレートと支持ディスクの位置関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示した実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。図1は、シート(航空機の客室用座席)100のシートバック部110の側部に本発明の一の実施形態に係るアームレスト1を設けた状態を示した図である。
【0014】
アームレスト1は、図2〜図6に示したように、ベース部材10、芯プレート20、カバー部材30、支持ディスク40、ロック機構50等を有して構成される。ベース部材10は、取付対象部であるシートバック部110の側部(サイドフレーム111)の所定位置に裏面を重ね合わせ、ねじ止め等により固定される(図7及び図8参照)。ベース部材10は、該ベース部材10の中心付近に、該ベース部材10の表面から突出するように中空の軸部(以下、「中空軸部」)10aが設けられている。また、この中空軸部10aを挟んだ対称位置に、該ベース部材10の表面から突出する突起からなるストッパ部10b,10cが2個一対設けられている。
【0015】
芯プレート20は、図2(a)、図3及び図4(a)に示したように、長尺に形成され、長手方向の一端側の基端部21に厚み方向に貫通する軸挿通孔21aが形成され、この軸挿通孔21aに上記中空軸部10aが挿通されることにより、該中空軸部10aを中心として回動可能となっている。基端部21は、通常使用位置(図12(a),図13(a),図14(a)の位置)から跳ね上げ位置(図12(b),図13(b),図14(b)の位置)まで、上記した一対のストッパ部10b,10c間に位置して回動できるような幅(通常使用位置において上側となる上端縁211から下側となる下端縁212までの長さ)で形成される。また、基端部21の後端縁側は幅が狭くなっており、上端縁211側と下端縁212側に段差部211a,212aが形成されている。基端部21の前方側に隣接する部位は、基端部21の幅よりも幅広の幅広部211b,212bが設けられている。
【0016】
これにより、通常使用位置では、上端縁211のうち、軸挿通孔21aよりも後方寄りの段差部211aが一方のストッパ部10bに当接し、下端縁212のうち、軸挿通孔21aよりも前方寄りの幅広部212bが他方のストッパ部10cに当接して、2つのストッパ部10b,10cに荷重が分散され、芯プレート20は通常使用位置において略水平姿勢で安定的に支持される。跳ね上げ位置では、上端縁211のうち、軸挿通孔21aよりも前方寄りの幅広部211bが一方のストッパ部10bに当接し、下端縁212のうち、軸挿通孔21aよりも後方寄りの段差部212aが他方のストッパ部10cに当接して、2つのストッパ部10b,10cに荷重が分散され、芯プレート20は跳ね上げ位置において略垂直姿勢(シートバック部110の側部に沿った姿勢)で安定的に支持される。
【0017】
なお、本実施形態では、芯プレート20の基端部21の範囲を含む、長手方向略中央部から後端縁までの範囲において、補強プレート25が重ね合わせられ、2枚重ねとなっている。
【0018】
カバー部材30は、合成樹脂製で、芯プレート20(補強プレート25を含む)と一体成形される。具体的には、図4に示したように、芯プレート20を被覆するプレート被覆部31を有している。プレート被覆部31は、芯プレート20の外形よりも一回り大きな形状で形成されている。プレート被覆部31の周縁には、該プレート被覆部31の両側に外方に張り出す突出片32を有しており、断面略I字状に形成されている。
【0019】
カバー部材30のプレート被覆部31は、図2(a)及び図4(a)に示したように、芯プレート20の外面側については全ての面を被覆するが、内面側である、基端部21におけるベース部材10の表面との対向面(本実施形態では、補強プレート25の対向面)21bは、回動時においてベース部材10の表面と摺接するため、合成樹脂では被覆されていない露出面となっている(図4(b),図5(b),(図6(b)参照)。また、プレート被覆部31は、基端部21の外面(対向面21bの反対面)には密着せずに隙間を有するように成形されており、カバー部材30の後端面には、この隙間に連通する位置に縦長のディスク挿通孔31aが開口形成されている(図2(b),図4(b)参照)。
【0020】
また、プレート被覆部31は、芯プレート20の回動中心に対応する位置に、中空軸部10aの中空部に嵌合されるボルト11が挿通される貫通孔31bが形成され、さらに、プレート被覆部31の外面には、後述のロック機構50を構成するロックスプリング52や解除ノブ53を支持するスプリング支持突起36及びシャフトガイド37がほぼ横方向に隣接して成形されている(図4参照)。
【0021】
カバー部材30には、上記のように、プレート被覆部31の周縁に沿って外方に張り出す突出片32が形成されているが、これにより、解除ノブ53やダミーカバー54を含むロック機構50が、プレート被覆部31の外面に沿って設けられ、アームレスト1を平面から見た際に、突出片32の側縁32aよりも内方に位置する(図1,図2(a)参照)。カバー部材30をこのような構成とすることで、通路に位置する客室乗務員によるロック機構50の操作の容易性を確保しつつ、当該席に着席している乗客からはロック機構50を見つけにくくすることができ、さらには、後述のように、解除ノブ53を操作した後にダミーカバー54の引き抜き操作を行わなければアームレスト1が回動しない構造であるため、離着陸時等における乗客による誤操作を防止する効果が高い。
【0022】
支持ディスク40は、図2(a)に示したように、四角形に近い板状体からなり、ほぼ中央にボルト11を挿通するためのボルト挿通孔40aが形成されていると共に、該ボルト挿通孔40aを挟んだ対称位置であって、ベース部材10のストッパ部10b,10cに対応する部位にストッパ部挿通孔40b,40cが貫通形成されている。支持ディスク40は、芯プレート20に一体成形されるカバー部材30の後端面に開口形成した上記のディスク挿通孔31aから挿通され、基端部21の外面に積層した状態で、カバー部材30のプレート被覆部31の外面側から貫通孔31bを介してボルト11を中空軸部10aの中空部に挿通することにより固定される。これにより、ボルト11が中空軸部10aの中空部に挿通されると共に、ストッパ部10b,10cの先端がストッパ部挿通孔40b,40cにそれぞれ挿通されるため、図5及び図6に示したように、芯プレート20は、基端部21がベース部材10と支持ディスク40との間に挟まれることにより両持ち支持となり、支持ディスク40を設けない場合よりも大きな荷重を負担することができる。なお、カバー部材30の後端面には、後端面カバー34が装着され、ディスク挿通孔31aは目隠しされる(図2(a)参照)。
【0023】
ロック機構50は、ロックシャフト51、ロックスプリング52、解除ノブ53及びダミーカバー54を有して構成される。ロックシャフト51は、後端部51aがダミーカバー54によって支持されている(図5(b),図6(b)参照)。ロックシャフト51は、断面角形、本実施形態では断面四角形に形成され、芯プレート20に形成されたロック用シャフト受け部26に外面が当接することにより、芯プレート20が回動できないようにロックする。
【0024】
ここで、本実施形態では、ロック用シャフト受け部26は、図4(a)に示したように、基端部21の下端縁212のうち、段差部212aと幅広部212bとの間において、略逆V字状に切り欠かれた切り欠き溝から構成される。そして、ベース部材10及び支持ディスク40には、図12(a),図13(a)及び図14(a)に示したように、芯プレート20が通常使用位置の姿勢(略水平姿勢)の際のロック用シャフト受け部26の位置に対応する部位に、第1ロック用シャフト挿通部12,42がそれぞれ形成されている。また、図12(b),図13(b)及び図14(b)に示したように、芯プレート20が跳ね上げ位置の姿勢(略垂直姿勢)の際のロック用シャフト受け部26の位置に対応する部位に、第2ロック用シャフト挿通部13,43がそれぞれ形成されている。第1ロック用シャフト挿通部12,42及び第2ロック用シャフト挿通部13,43は、いずれも、ロックシャフト51の断面形状に合致するように略四角形の孔に形成されているが、いずれの位置においても、略四角形の孔のうちの隣り合う一辺同士が略逆V字状の切り欠き溝からなるロック用シャフト受け部26の後側傾斜面26aと前側傾斜面26bとほぼ合致するような向きで形成される(図12(c),(d)参照)。
【0025】
それにより、通常使用位置において、第1ロック用シャフト挿通部12,42にロックシャフト51を挿通すると、断面略四角形のロックシャフト51は外面が水平に対して斜めの位置関係となるため、後側傾斜面26aがロックシャフト51の対向する外面に押しつけられ、上方への回動が阻止される(図12(c)参照)。一方、跳ね上げ位置においては、ロックシャフト51は、第2ロック用シャフト挿通部13,43に挿通される。この場合も、断面略四角形のロックシャフト51の外面が水平に対して斜めの位置関係となるため、芯プレート20が跳ね上げ位置から前方に回動しようとしても、前側傾斜面26bがロックシャフト51の対向する外面に押しつけられるため、前方への回動が阻止される(図12(d)参照)。
【0026】
なお、カバー部材30のプレート被覆部31の外面には、図4に示したように、シャフトガイド37が一体成形されている。このシャフトガイド37は、略四角形の中空部37bを有し、この中空部37bが、通常使用位置では、第1ロック用シャフト挿通部12,42に連通し、跳ね上げ位置では、第2ロック用シャフト挿通部13,43に連通する。
【0027】
解除ノブ53は、台形の上底と下底を円弧状とした楕円に近い形状で形成されている。この形状自体は限定されるものではないが、人の手で操作する際にできるだけ容易に操作しやすいように図面に示したような形状が好ましい。解除ノブ53は、中央付近にカバー部材30に形成されたシャフトガイド37が挿通されるシャフトガイド用孔部53aを有する。解除ノブ53は、図10(a)の位置と図10(b)の位置との間で回転方向に動かされるため、シャフトガイド用孔部53aは、その際に、シャフトガイド37が該シャフトガイド用孔部53a内を相対移動できるように、上下方向に沿って円弧状に若干長い形状に開設されている。図2(a)、図8及び図10に示したように、シャフトガイド用孔部53aの一方側に隣接して、突起用孔部53bが貫通形成されている。この突起用孔部53bには、シャフトガイド37に隣接して形成されたスプリング支持突起36が挿通される。また、シャフトガイド用孔部53aの他方側に隣接してスプリング端係合部53cが設けられている。
【0028】
解除ノブ53のシャフトガイド用孔部53a及び突起用孔部53bのそれぞれにシャフトガイド37及びスプリング支持突起36を挿通した状態で、ロックスプリング52が配設される。ロックスプリング52は、断面略円形のスプリング支持突起36と断面略四角形のシャフトガイド37の周囲に沿った形状に加工されたバネ材からなる。より具体的には、図10及び図11に示すように、一端部52aを、断面略四角形のシャフトガイド用孔部53aから突出しているシャフトガイド37に係合し、シャフトガイド37の上面側を通過させて突起用孔部53bから突出しているスプリング支持突起36側に延びるように配置し、さらに、中途部52bを該スプリング支持突起36の外周に巻き付くように位置させて折り返し、他端部52cを、シャフトガイド用孔部53aの他方側に設けたスプリング端係合部53cに係合させて配置され、中途部52bを中心として、他端部52cが一端部52aに接近する方向にバネ力が作用する。シャフトガイド37の下面側にはスリット37aが形成されており(図5(b),(c)参照)、中途部52bと他端部52cの間の下側バネ部52dは、該スリット37aを介して、シャフトガイド37の中空部37b内を通過している。従って、シャフトガイド37の中空部37b内に挿入されるロックシャフト51に下側バネ部52dは接触する。
【0029】
ロックシャフト51の下面には、その長さ方向の奥側と先端側とにスプリング係合溝511,512が形成されており、スプリング係合溝511,512に下側バネ部52dが係合すると、ロックシャフト51は、第1ロック用シャフト挿通部12,42及び第2ロック用シャフト挿通部13,43への抜き差しができないようになり、すなわち、芯プレート20のロック用シャフト受け部26にロックシャフト51の外面が当接した状態か又は当接状態が解除された状態が維持される。奥側スプリング係合溝511の溝深さは相対的に浅く形成され、先端側スプリング係合溝512はそれよりも深く形成されている。また、先端側スプリング係合溝512は、図6(c)に示したように、側面視で略直角三角形状に形成され、溝底部よりも奥側スプリング係合溝511寄りの一方の面512aは傾斜面状に形成され、他方の面512bは溝底部からロックシャフト51の外面に向かって略直角に延びるような面に形成されている。このため、下側バネ部52dが先端側スプリング係合溝512に係合した状態で、さらにロックシャフト51を引き抜き方向に動かしても、下側バネ部52dは他方の面512bに当接するため、それ以上引き抜くことはできないが、ロックシャフト51を押し込む方向に動作させた場合には下側バネ部52dは傾斜面状の一方の面512aに沿って相対移動し、先端側スプリング係合溝512から離脱できるようになっている。
【0030】
ダミーカバー54は、解除ノブ53とほぼ同形状の同じ大きさに形成され、解除ノブ53の表面を被覆するように配設される。ダミーカバー54の内面には、ロックシャフト51の後端部51aが固定されており、ダミーカバー54を把持して、ロックシャフト51を、シャフトガイド37の中空部37b、さらには、第1ロック用シャフト挿通部12,42又は第2ロック用シャフト挿通部13,43に挿通したり、抜き出したりする。但し、ダミーカバー54を押し込んだ状態でも、解除ノブ53は単独で回転方向に操作できるように、ダミーカバー54自体が解除ノブ53を押しつけないように設けられる。
【0031】
次に、本実施形態のアームレスト1の作用を説明する。まず、図7及び図9(a)に示すように、通常使用位置にアームレスト1が設定されているとする。この状態では、図12(a),図13(a)及び図14(a)に示したように、芯プレート20の上端縁211のうち段差部211aが一方のストッパ部10bに当接し、下端縁212のうち幅広部212bが他方のストッパ部10cに当接している。従って、アームレスト1にかかる荷重は、2つのストッパ部10b,10cに分散支持される。ダミーカバー54は、図5に示したように、差し込まれた状態であり、ロックシャフト51は、シャフトガイド37の中空部37bから、支持ディスク40の第1ロック用シャフト挿通部42に挿通され、その先端は、ベース部材10の第1ロック用シャフト挿通部12に挿通されている。また、ロックシャフト51のうち、支持ディスク40の第1ロック用シャフト挿通部42とベース部材10の第1ロック用シャフト挿通部12との間に位置する部位は、芯プレート20のロック用シャフト受け部26に当接している。この状態では、ロックスプリング52の下側バネ部52dがロックシャフト51の下面に形成された奥側スプリング係合溝511に係合しており、引き抜けないようになっている。また、この状態でアームレスト1を上方に回動させようとすると、ロック用シャフト受け部26の後側傾斜面26aがロックシャフト51の対向する外面に押しつけられ、上方への回動が阻止される(図12(c)参照)。
【0032】
通常使用位置からアームレスト1を跳ね上げる場合は次のように操作する。まず、図9(b)及び図10(b)に示したように、ダミーカバー54に覆われた状態の解除ノブ53のみを図の右方向(図10(b)の破線位置から実線位置の方向)に回転させる。それにより、解除ノブ53は、スプリング支持突起36を中心として回転し、スプリング端係合部53cが右方向に回転するため、該スプリング端係合部53cに係合されているロックスプリング52の他端部52cが下方向に拡開し、下側バネ部52dがロックシャフト51の奥側スプリング係合溝511から離脱する(図10(b)の実線で示した状態及び図11(b)の状態)。これにより、ロックシャフト51とロックスプリング52との係合が解除される。この状態では、ダミーカバー54を正面から見ると、ダミーカバー54に対して、解除ノブ53が右回転方向に位置ずれしている(図9(b)参照)。
【0033】
次に、図9(c)に示したように、ダミーカバー54を把持して外方に引き出していく。ロックスプリング52の他端部52cは、拡開状態では常に一端部52aに接近するように、すなわち、閉じる方向にバネ力が作用しているため、ロックシャフト51を引き出し、奥側スプリング係合溝511よりも深い溝で形成された先端側スプリング係合溝512の位置に至ると、図6(b),(c)に示したように、下側バネ部52dが該先端側スプリング係合溝512に嵌り込む。ロックシャフト51は先端側スプリング係合溝512に係合した状態でさらに引き抜こうとしても、略直角に立ち上がる他方の面512bに下側バネ部52dが当接するため、それ以上に引き抜くことができなくなると共に、下側バネ部52dが先端側スプリング係合溝512に嵌り込むことで他端部52cが一端部52aに接近しようとし、ロックスプリング52のバネ力により、解除ノブ53は、スプリング支持突起36を中心として図10(b)の左方(図10(b)の実線位置から破線位置)に回転し、原位置に復帰する。従って、この状態では、ダミーカバー54を正面から見ると、ダミーカバー54と解除ノブ53とは回転方向の向きが一致する。
【0034】
ロックスプリング52が先端側スプリング係合溝512に係合した段階では、図6(b)に示したように、ロックシャフト51は、ベース部材10の第1ロック用シャフト挿通部12、芯プレート20のロック用シャフト受け部26、及び支持ディスク40の第1ロック用シャフト挿通部42から離脱している。従って、この状態で、アームレスト1(芯プレート20)は上方への回動が可能になる。
【0035】
アームレスト1を上方に回動させていくと、図12(b)に示したように、芯プレート20の上端縁211の前方寄りの幅広部211bが一方のストッパ部10bに当接し、かつ、下端縁212の後方寄りの段差部212aが他方のストッパ部10cに当接するまで動作して停止する。解除ノブ53は、ロックスプリング52を介してシャフトガイド37及びスプリング支持突起36に係合しているため、カバー部材30及び芯プレート20と共に回動する。ロックスプリング52を介して解除ノブ53に係合しているロックシャフト51及びダミーカバー54も同様であり、ダミーカバー54及び解除ノブ53は、図9(d)及び図14(a),(b)に示したように、通常使用位置から略90度回転した向きになる。一方、ベース部材10及び支持ディスク40は回動せずに固定されている。
従って、跳ね上げ位置においては、芯プレート20のロック用シャフト受け部26は、第2ロック用シャフト挿通部13,43に対応する連通位置となり、さらにロックシャフト51がそれらの延長線上に位置することになる。次いで、図9(d)の状態から図9(e)の状態になるように、ダミーカバー54を押すと、ロックシャフト51の先端側スプリング係合溝512の一方の面512aが傾斜面状であるため、該一方の面512aに沿って下側バネ部52dが相対移動して離脱し、ロックシャフト51が押し込まれていく。
【0036】
それにより、ロックシャフト51は、図14(b)に示したように、支持ディスク40の第2ロック用シャフト挿通部43に挿通され、芯プレート20のロック用シャフト受け部26に係合し、さらにベース部材10の第2ロック用シャフト挿通部13に挿通される。これにより、アームレスト1を前方に回動させる力が不用意に加わっても、ロック用シャフト受け部26の前側傾斜面26bがロックシャフト51の対向する外面に押しつけられ、前方への回動が阻止され、アームレスト1は跳ね上げ位置で保持される(図12(d)参照)。また、跳ね上げ位置においても、芯プレート20が一方のストッパ部10b及び他方のストッパ部10cに当接した状態で保持されるため、跳ね上げ位置においてアームレスト1にかかる荷重も、2つのストッパ部10b,10cにより分散支持される。
【0037】
上記したように、芯プレート20は、ベース部材10との対向面を除いてカバー部材30によって一体成形により被覆されている。また、プレート被覆部31の周縁に沿って外方に張り出す突出片32が設けられているが、この突出片32は、図3に示したように、芯プレート20の基端部21付近において、アームレスト1を通常姿勢位置で上面から見た際に、ベース部材10の上面及び下面の少なくとも一部を被覆するまで張り出されている。そのため、操作者の衣服や手指がそれらの隙間に入り込むことが防止される。また、通常使用位置及び跳ね上げ位置のいずれにおいても、ベース部材10に設けられた2つのストッパ部10b,10cによって荷重を負担する構成であるため、カバー部材30の外方に飛び出した部品がなく、その意味でも、衣服や手指の挟み込み防止効果が高い。また、カバー部材30により被覆された内部に荷重を受ける部材や回動させるための機構を配置した構成であり、従来のように荷重を受けるための別途のステイなどが不要であるため、部品点数が少なく、さらに、それらを配置することにより別途必要となる衣服や手指の挟み込み防止機構を設ける必要もないため、構造が簡易で軽量化が図られ、製造コストの低減に資する。
【0038】
上記した説明では、航空機における乗客用のシートに適用しているが、これに限らず、列車、船舶、バスなど種々の乗物用シートにおけるアームレストとして適用可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0039】
1 アームレスト
10 ベース部材
10a 中空軸部
10b,10c ストッパ部
12 第1ロック用シャフト挿通部
13 第2ロック用シャフト挿通部
20 芯プレート
21 基端部
30 カバー部材
31 プレート被覆部
32 突出片
36 スプリング支持突起
37 シャフトガイド
40 支持ディスク
40a ボルト挿通孔
42 第1ロック用シャフト挿通部
43 第2ロック用シャフト挿通部
50 ロック機構
51 ロックシャフト
52 ロックスプリング
53 解除ノブ
54 ダミーカバー
100 シート
110 シートバック部
111 サイドフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象部に、通常使用位置と跳ね上げ位置との範囲で回動可能に設けられるアームレストであって、
前記取付対象部に取り付けられるベース部材と、
基端部が前記ベース部材に回動可能に軸支される所定長さの芯プレートと、
前記芯プレートの基端部における前記ベース部材との対向面を除いて前記芯プレートを被覆するプレート被覆部と前記プレート被覆部の周縁から外方に張り出す突出片とを有する断面略I字状に成形されると共に、前記芯プレートと一体成形される合成樹脂製のカバー部材と、
前記ベース部材において、前記芯プレートの回動中心を挟んで前記芯プレートの基端部の上端縁側と下端縁側にそれぞれ突設され、前記通常使用位置と跳ね上げ位置とのいずれにおいても前記芯プレートに共に当接し、前記芯プレートにかかる荷重を両方で分散負担する一対のストッパ部と
を有することを特徴とするアームレスト。
【請求項2】
前記カバー部材内で、前記芯プレートの基端部における前記ベース部材との対向面との反対面に積層され、前記ベース部材と共に前記芯プレートの基端部を回動可能に支持し、かつ、前記一対のストッパ部の先端がそれぞれ挿通されるストッパ部挿通孔を有する支持ディスクを備える請求項1記載のアームレスト。
【請求項3】
前記芯プレートの前記通常使用位置と跳ね上げ位置でロックを行うためのロック機構であって、
前記芯プレートに形成されたロック用シャフト受け部に当接し、前記通常使用位置又は跳ね上げ位置における前記芯プレートの回動を規制するロックシャフトと、
前記ロックシャフトに係合して、前記ロック用シャフト受け部に当接した状態又は当接が解除された状態を維持するロックスプリングと、
前記ロックスプリングにより、前記ロックスプリングが前記ロックシャフトに係合する方向に付勢されると共に、この付勢力に抗して動かすことにより前記ロックスプリングの前記ロックシャフトへの係合を解除する解除ノブと、
前記解除ノブを被覆すると共に、前記ロックシャフトの前記ロック用シャフト受け部への当接操作又は当接状態の解除操作を行うためのダミーカバーと
を備えたロック機構を有する請求項1又は2記載のアームレスト。
【請求項4】
前記一対のストッパ部は、前記ベース部材において、前記芯プレートの回動中心を挟んだ対称位置に設けられている請求項1〜3のいずれか1に記載のアームレスト。
【請求項5】
前記ベース部材が、前記取付対象部としてシートバック部のサイドフレームに取り付けられる請求項1〜4のいずれか1に記載のアームレスト。
【請求項6】
シートバック部とシートクッション部とを備えたシートであって、
請求項1〜4のいずれか1に記載のアームレストが、前記シートバック部のサイドフレームにベース部材を取り付けることにより設けられていることを特徴とするシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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