説明

アームレスト装置

【課題】全体として軽量で組付工数も少なくて済み、使用感も良好で安価且つ小型のアームレスト装置を提供する。
【解決手段】アームレスト装置16を、シートに上下回動可能に取り付けられるアームレスト本体20と、固定側の第1ラチェット歯80及びアームレスト本体20と一体回動する可動側の第2ラチェット歯82を有するラチェット機構と、それらを押圧する向きに付勢するコイルスプリング70と、ラチェット機構を噛合い解除する解除カム部104と、その解除を保持するための弾性爪112及び鍔部116と、ラチェット機構を噛合い復帰させるための切欠き118とを含んで構成する。そしてアームレスト本体20を樹脂製としてその成形時に第2ラチェット歯82を一体成形しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車その他におけるシートに取り付けられるアームレスト装置、詳しくはアームレストの上下の回動方向の角度位置が調節可能なアームレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のシートに取り付けられるアームレスト装置は、シートへの着座或いは離座の際にアームレスト(肘掛け)が邪魔とならないようにアームレストが上下回動可能とされていることが多い。
また使用者の体型等に応じてアームレストが使い易いように、かかるアームレストを使用時に上下回動の角度位置を調節可能とすることが行われている。
【0003】
そのための機構として、従来、金属製のねじりコイルスプリングを、アームレスト本体の上向き回動については許容し、下向き回動は禁止する一方向性のロックスプリングとして用いた形式のものが多く採用されている。
【0004】
この形式のものは、シートに固定の支持軸体にロックスプリングを嵌装し、その一端をアームレスト本体に固定して他端を自由端とし、そしてアームレスト本体を下向き回動させようとしたときにはロックスプリングが縮径して支持軸体を締め付け、ロックスプリングと支持軸体との間の摩擦力でアームレスト本体の下向き回動を禁止し、一方アームレスト本体を上向き回動させたときにはロックスプリングが拡径して、ロックスプリングがアームレスト本体と一体に支持軸体周りに回転し、以てアームレスト本体の上向き回動を許容するようになしてある。
例えば下記特許文献1,特許文献2,特許文献3にこの種のロックスプリングを用いたアームレスト装置が開示されている。
【0005】
しかしながらこの形式のアームレスト装置の場合、金属製で且つ大型の重量の重いロックスプリングを用いるために、アームレスト装置自体が重量の重いものとなって、アームレストを回動操作する際の操作が重くなってしまうとともに、特に近年軽量化が強く要請されている自動車のシート用に用いたときに、軽量化の要請に応えることが難しいといった問題がある。
【0006】
一方このようなロックスプリング方式のものの他に、ラチェット機構を利用してアームレスト本体を上向き方向には回動許容し、下向き方向には回動を禁止するようになしたものも従来公知である。
例えば特許文献4,特許文献5にこの種のラチェット式のアームレスト装置が開示されている。
【0007】
この方式のものは、シートに対して基端部で上下回動可能に取り付けられるアームレスト本体と、アームレスト本体の回動の軸線周りに設けられた固定側の第1ラチェット歯、及び第1ラチェット歯に対向する状態に且つアームレスト本体と一体回動する状態に設けられ、アームレスト本体の下向き回動方向には第1ラチェット歯に噛み合って移動阻止され、上向き回動方向には第1ラチェット歯を乗り越えて移動可能な可動側の第2ラチェット歯を有するラチェット機構と、第1ラチェット歯と第2ラチェット歯とを互いに押圧する向きに付勢する付勢部材とを有し、そのラチェット機構によりアームレスト本体を使用する際の角度位置を調節可能となしている。
【0008】
このアームレスト装置ではまた、第1ラチェット歯と第2ラチェット歯とを離間させて噛合い解除する解除機構と、離間させた第1ラチェット歯と第2ラチェット歯とを離間状態に保持してアームレスト本体の下向き回動を許容する保持機構と、保持機構による保持を解いて第1ラチェット歯を第2ラチェット歯に接近する方向に相対移動させ、噛合い復帰させる復帰機構とを備えている。
このようにすることで、アームレストの角度位置を上側位置から下側位置に変更し、調節することが可能となる。
【0009】
このラチェット式のアームレスト装置の場合、ロックスプリング式のものに比べて重量の重い金属製のロックスプリングを用いる必要がなく、また第1ラチェット歯を有する部材と、第2ラチェット歯を有する部材とをそれぞれ樹脂製とすることが可能で(特許文献4ではこれらを樹脂製とすることが開示されている)、上記のロックスプリング式のものに比べてアームレスト装置を軽量化することが可能である。
【0010】
しかしながらこれら特許文献4,特許文献2に開示のものを含めてこの種従来のラチェット式のアームレスト装置の場合、固定側の第1ラチェット歯を有するラチェット部材と、可動側の第2ラチェット歯を有するラチェット部材とが、それぞれアームレストとは別体の部材で構成されており、これに伴って以下のような問題を有する。
【0011】
即ち、ラチェット機構を構成するためのものとして第1のラチェット部材と第2のラチェット部材とがそれぞれ必要で部品点数が多くなり、またこれに伴って一方のラチェット部材をアームレスト本体に組み付けるための組付工程が必要で、所要の組付工数が多くなってしまい、これに伴ってコストも高くなってしまう。
【0012】
更に一方のラチェット部材をアームレスト本体に組付固定する際に、その組付部分にはアームレスト本体に加わる大きな荷重が作用するために組付部分の結合強度を高強度としておかなければならない。
そのためにはラチェット部材とアームレスト本体とを嵌め合せ構造として、嵌め合せ部分で物理的に力を受けるようになすのが有効であるが、この場合嵌め合せのための構造及びそのためのスペースを設けなければならず、これに伴ってラチェット機構とアームレスト本体との組付部分が大型化してしまう。
【0013】
更にそのような組付構造としたとき、組付部分でガタが生じているとアームレスト本体に使用者が荷重を掛けたときに、アームレスト本体がガタツキを生じる恐れがあり、そのことがアームレスト本体の円滑な動きを阻害し、またアームレストの使用感を悪化させてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第4089386号公報
【特許文献2】特許第4094421号公報
【特許文献3】特許第4087635号公報
【特許文献4】特表2003−520156号公報
【特許文献5】特開2007−283908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は以上のような事情を背景とし、全体として軽量で組付工数も少なくて済み、使用感も良好で安価且つ小型のアームレスト装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
而して請求項1のものは、(イ)シートに対して基端部で上下回動可能に取り付けられるアームレスト本体と、(ロ)該アームレスト本体の回動の軸線周りに設けられた固定側の第1ラチェット歯、及び該第1ラチェット歯に対向する状態に且つ前記アームレスト本体と一体回動する状態に設けられ、該アームレスト本体の下向き回動方向には該第1ラチェット歯に噛み合って移動阻止され、上向き回動方向には該第1ラチェット歯を乗り越えて移動可能な可動側の第2ラチェット歯を有するラチェット機構と、(ハ)前記第1ラチェット歯と第2ラチェット歯とを互いに押圧する向きに付勢する付勢部材と、(ニ)該第1ラチェット歯と第2ラチェット歯とを離間させて噛合い解除する解除機構と、(ホ)該離間させた第1ラチェット歯と第2ラチェット歯とを離間状態に保持して前記アームレスト本体の下向き回動を許容する保持機構と、(へ)該保持機構による保持を解いて該第1ラチェット歯を第2ラチェット歯に接近する方向に相対移動させ、噛合い復帰させる復帰機構と、を有し、前記ラチェット機構により前記アームレスト本体の使用位置での角度位置が調節可能となしてあるアームレスト装置であって、前記第1ラチェット歯が前記アームレスト本体とは別体のラチェット部材に形成してあるとともに、該アームレスト本体が樹脂製とされ且つ該アームレスト本体の成形時に前記第2ラチェット歯が該アームレスト本体に一体成形してあることを特徴とする。
【0017】
請求項2のものは、請求項1において、前記固定側のラチェット部材を付勢部材が前記アームレスト側の前記第2ラチェット歯の側に付勢しているとともに、前記解除機構は、前記アームレスト本体と一体に回動し、該アームレスト本体が使用範囲上限に至ったときに前記ラチェット部材を前記付勢部材の付勢力に抗して軸方向に押し上げ、前記第1ラチェット歯を前記第2ラチェット歯から離間させる、該アームレスト本体に一体に成形された解除カム部を有しており、前記保持機構は、該押し上げられたラチェット部材を押上位置に保持して前記アームレスト本体の使用範囲上限からの下向き回動を許容するものとなしてあることを特徴とする。
【0018】
請求項3のものは、請求項2において、前記保持機構は、前記ラチェット部材に且つ前記軸線周りに延びる形態で設けられた鍔部と、該ラチェット部材に対して前記第2ラチェット歯とは軸方向の反対側に配置された爪部材とを有しており、該爪部材には該ラチェット部材側に軸方向に突出した弾性爪が保持部として設けられていて、該ラチェット部材の押上げ時に該弾性爪が弾性変形して先端側の爪部に対し前記鍔部を軸方向に通過させた後、該爪部にて該鍔部を掛止し保持するものとなしてあることを特徴とする。
【0019】
請求項4のものは、請求項3において、前記弾性爪は前記鍔部に沿った周方向に複数設けられており、複数個所で該鍔部を保持するようになしてあることを特徴とする。
【0020】
請求項5のものは、請求項3,4の何れかにおいて、前記ラチェット部材が樹脂製とされて該ラチェット部材に前記第1ラチェット歯及び前記鍔部が一体成形してあることを特徴とする。
【0021】
請求項6のものは、請求項3〜5の何れかにおいて、前記爪部材は前記アームレスト本体と一体に回動するものとなしてあり、前記復帰機構は、前記鍔部に形成され、前記アームレスト本体が回動下限に至ったとき前記弾性爪の前記爪部を軸方向に通過させて該弾性爪による該鍔部の保持を解き、前記ラチェット部材を前記第2ラチェット歯側に移動可能とする切欠きを有していることを特徴とする。
【0022】
請求項7のものは、請求項3〜6の何れかにおいて、前記ラチェット機構を軸方向の一端側から覆う状態で前記アームレスト本体と一体回動する状態に設けられた蓋部材が前記爪部材を成しており、且つ該蓋部材は樹脂製とされていて該蓋部材に前記弾性爪が一体成形してあることを特徴とする。
【0023】
請求項8のものは、請求項1〜6の何れかにおいて、前記シートに取り付けられて前記アームレスト本体を回動可能に支持する支持軸体を有しており、前記ラチェット部材はリング状をなしていて、該ラチェット部材が該支持軸体に対して、少なくとも何れか一方が軸方向に延びる案内凸部と案内凹部との凹凸嵌合により回転方向に固定且つ軸方向に相対移動可能に組み付けてあり、前記アームレスト本体の前記基端部には円筒状のハウジングが一体に成形してあって、該ハウジングの内部に前記支持軸体と前記ラチェット部材とが収容してあって、該ハウジングにおける軸方向を向いた底部内面に前記第2ラチェット歯が成形される一方、該ラチェット部材の該第2ラチェット歯に対向する軸方向の端面に前記第1ラチェット歯が形成してあり、該ハウジングの該底部内面とは軸方向の反対側の開放部を、前記アームレスト本体と一体回動する樹脂製の蓋部材で閉鎖していることを特徴とする。
【0024】
請求項9のものは、請求項8において、前記蓋部材には、前記支持軸体の軸方向端部の外周面に対し径方向外方への弾性変形を伴って外嵌状態に嵌合し、且つ該支持軸体の外周面の被係止部に径方向内向きに係止する、軸方向に突出した引掛爪が設けてあり、且つ該引掛爪は、前記ハウジングの該蓋部材側の軸方向端部の内周面に非遊嵌状態に内嵌するものとなしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0025】
以上のように本発明は、固定側の第1ラチェット歯をアームレスト本体とは別体のラチェット部材に形成する一方、アームレスト本体を樹脂製となし且つその樹脂製のアームレスト本体に可動側の第2ラチェット歯を成形時に一体成形したものである。
【0026】
従って本発明によれば、第2ラチェット歯のための部材をアームレスト本体と別に設けなくてもよく、これによりアームレスト装置に要する部品点数を少なくすることができるとともに、その第2ラチェット歯を有する部材をアームレスト本体に一体回動状態に組み付ける必要もなく、その際の組付工数を削減することができる。
これによりアームレスト装置の所要コストを低減することができる。
【0027】
また第2ラチェット歯を有するラチェット部材をアームレスト本体に組み付ける必要がないので、組付けのための嵌合い構造をそれらに設ける必要もなく、従ってその組付けのためのスペースも削減し得て、ラチェット機構とアームレスト本体との組付部分を小型化することができる。
【0028】
本発明では、アームレスト装置の大部分を占めるアームレスト本体が樹脂製であるため、アームレスト装置全体を大幅に軽量化することができる。
加えて第2ラチェット歯をアームレスト本体とは別体の部材に形成する必要がないため、第2ラチェット歯のための部材、更にこれを締結するための締結部材の削減によって、より一層の軽量化を図ることができる。
【0029】
以上の外、本発明に従ってアームレスト本体に第2ラチェット歯を直接一体成形することによって、次のような利点が得られる。
使用者がアームレストを使用したとき、即ちアームレストに体重を持たせかけたとき、アームレスト本体には大きな荷重が加わる。従ってアームレスト本体を樹脂製とする場合、その樹脂として高強度のものを用いることとなる。
アームレスト本体に加わる荷重は、アームレスト本体に一体成形した第2ラチェット歯にもそのまま加わることとなる。
【0030】
この場合、第2ラチェット歯の強度が弱いと第2ラチェット歯が破断を生じたり、亀裂発生したりしてしまう恐れがあり、強度上十分な信頼性を確保できなくなるが、本発明ではその第2ラチェット歯が、アームレスト本体を構成する高強度の樹脂にて形成されるため、第2ラチェット歯を十分に高強度とすることができる。
【0031】
また第2ラチェット歯を有する別体の部材をアームレスト本体に組み付ける場合のように、その組付部分にガタを生ぜしめてしまう問題がなく、アームレストの使用時のガタツキを無くしてアームレストの円滑な動きを確保でき、またその使用感を高めることができる。
【0032】
次に請求項2は、固定側の第1ラチェット歯を有するラチェット部材を付勢部材にてアームレスト本体側の第2ラチェット歯の側に付勢するとともに、上記の解除機構を、アームレスト本体と一体回動し、アームレスト本体が使用範囲上限に到ったときにラチェット部材を上記の付勢部材の付勢力に抗して軸方向に押し上げ、第1ラチェット歯を第2ラチェット歯から離間させる、アームレスト本体に一体に成形された解除カム部を有するものとなし、そして上記の保持機構を、押し上げられたラチェット部材を押上位置に保持してアームレスト本体の使用範囲上限からの下向き回動を許容するものとなしたものである。
【0033】
この請求項2によれば、アームレスト本体を使用範囲上限まで上向きに回動させることで、解除カム部の作用により自動的に第1ラチェット歯と第2ラチェット歯との噛合いを解除することができる。
また保持機構は、押し上げられたラチェット部材を押上位置に保持するため、アームレスト本体を使用範囲上限まで持ち上げることで、その後これを下向きに自在に回動操作することができる。
【0034】
この請求項2では、解除機構が、ラチェット部材を軸方向に押し上げて、軸線周りの回転方向に噛み合う第1ラチェット歯と第2ラチェット歯とを噛合い解除するものであるため、解除機構を簡単な構造で構成することができる。
【0035】
また解除カム部がアームレスト本体に一体に成形してあるため、解除カム部のための部材をアームレスト本体と別途に設ける必要がなく、所要部品点数及び組付工数を更に低減することができ、またこれに伴ってアームレスト装置の所要コストをより一層低減することができる。
【0036】
次に請求項3のものは、上記保持機構を、ラチェット部材に軸線周りの周方向に延びる形態で設けられた鍔部と、ラチェット部材に対して第2ラチェット歯とは軸方向の反対側に配置された爪部材とを有するものとなし、そしてその爪部材には、ラチェット部材側に軸方向に突出した弾性爪を保持部として備え、ラチェット部材の押上時にその弾性爪の弾性変形を伴って先端側の爪部により鍔部を係止し保持するようになしたもので、このようにすることにより、アームレストの使用範囲上限で解除カム部により第1ラチェット歯から離間して押し上げられたラチェット部材を保持機構にて簡単に保持することができ、且つその保持機構を簡素な構造で容易に構成することができる。
【0037】
またこの保持機構は弾性爪を軸方向に突出させてラチェット部材を軸方向に保持するものであるため、保持機構によって径方向に構造が大型化しない利点を有する。
【0038】
この場合において上記弾性爪は、鍔部に沿った周方向に複数設けておき、複数個所で鍔部を保持するようになしておくことができる(請求項4)。
このようにすれば、弾性爪を周方向の1個所にだけ設けた場合のように、弾性爪による鍔部の保持が片持状態となるのを回避して、複数個所で鍔部を安定して保持することができる。
【0039】
上記ラチェット部材は樹脂製となして、これに上記の第1ラチェット歯及び鍔部を一体成形しておくことができる(請求項5)。
このようにすれば、ラチェット部材に別体の部材を組み付けてこれに鍔部を設ける場合に比べて所要部品点数を少なくすることができ、また組付工数をより一層低減することができる。
更にラチェット部材を樹脂製とすることでアームレスト装置をより一層軽量化することができる。
【0040】
この場合において爪部材をアームレスト本体と一体に回動するものとなしておき、また上記の復帰機構を、鍔部に形成された切欠きを有するものとなし、アームレスト本体が回動下限に到ったときに弾性爪の爪部が切欠きを軸方向に通過するようになして、弾性爪による鍔部の保持を解き、ラチェット部材を第2ラチェット歯側に移動させるようになしておくことができる(請求項6)。
このようにすれば、保持機構によりアームレスト本体を下向き方向に回動可能となす一方で、そのアームレスト本体が回動下限に到ったところで、自動的にラッチ機構を噛合い復帰させることができる。
【0041】
また復帰機構を簡単な構造で構成することができるとともに、この復帰機構もまた、弾性爪の爪部を鍔部に対して軸方向に通過させて復帰作用を行うものであるため、復帰機構によって径方向に構造が大型化しない利点を有する。
【0042】
請求項7は、上記のラチェット機構を軸方向の一端側から覆う状態でアームレスト本体と一体回動する蓋部材を設け、且つその蓋部材を樹脂製となしてこれに弾性爪を一体成形し、かかる蓋部材にて上記の爪部材を兼用させるようになしたもので、この請求項7によれば、爪部材を蓋部材とは別途に設ける必要がなく、部品点数,組付工数を削減することができるとともに、蓋部材もまた樹脂製となしてあるため、より一層のアームレスト装置の軽量化を図ることができる。
更にこの樹脂製の蓋部材に弾性爪を一体成形することで、弾性爪に十分な弾性変形能を持たせることができる。
【0043】
本発明では、シートに取り付けられる支持軸体に対して、リング状に形成したラチェット部材を凹凸嵌合により回転方向に固定且つ軸方向に相対移動可能に組み付けるようになし、また樹脂製のアームレスト本体の基端部に円筒状のハウジングを一体に成形して、そのハウジングの内部に支持軸体とラチェット部材とを収容し、更にハウジングにおける軸方向を向いた底部内面に第2ラチェット歯を成形し、またラチェット部材の対向する軸方向の端面に第1ラチェット歯を形成し、そしてハウジングの底部内面とは軸方向の反対側の開放部を、アームレスト本体と一体回動する樹脂製の蓋部材にて閉鎖しておくことができる(請求項8)。
このようにすることで、アームレスト本体の基端部に形成したハウジングの内部にラチェット機構と支持軸体とを収めておくことができる。
【0044】
この場合において、蓋部材には支持軸体の軸方向端部の外周面に対し、径方向外方への弾性変形を伴って外嵌状態に嵌合し、且つ支持軸体の外周面の被係止部に径方向内向きに係止する、軸方向に突出した引掛爪を設けておき、且つその引掛爪を、ハウジングの蓋部材側の軸方向端部の内周面に非遊嵌状態に内嵌するものとなしておくことができる(請求項9)。
【0045】
このようになしておくことで、支持軸体をシート側にボルト等にて固定したとき、同時に蓋部材を支持軸体に対して抜止状態に且つアームレスト本体と一体回動する状態に固定することが可能となる。
即ち、蓋部材を単独で固定するための別途のボルト等の固定具を用いなくても、支持軸体を固定することで自動的に蓋部材を抜止状態に固定することが可能となる。
【0046】
この請求項9においては、蓋部材が支持軸体から軸方向に外れるためには引掛爪が径方向外方に弾性変形して拡がる必要があるが、その引掛爪の外周側にはハウジングの軸方向端部が位置して壁となっており、引掛爪の径方向外方への弾性変形を阻止するため、支持軸体を固定することで同時に蓋部材が支持軸体に抜止状態に固定されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態のアームレスト装置を自動車のシートへの取付状態で示した図である。
【図2】同実施形態におけるアームレスト本体と位置調節装置とを外観状態で示した図である。
【図3】同実施形態のアームレスト装置の分解斜視図である。
【図4】図3の一部を拡大して示した図である
【図5】図2のV−V断面である。
【図6】同実施形態におけるラチェット部材を示した図である。
【図7】同実施形態におけるアームレスト本体の要部を拡大して示した図である。
【図8】同実施形態における蓋部材の各部の作用説明図である。
【図9】同実施形態のラチェット歯及びカム部の作用説明図である。
【図10】同実施形態のアームレスト装置の作用説明図である。
【図11】図10に続く作用説明図である。
【図12】図11に続く作用説明図である。
【図13】図12に続く作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は自動車のシートで、12は座部、14はシートバックで、16はそのシートバック14に取り付けられたアームレスト装置である。
18は、そのアームレスト装置16の主体をなすアームレストで、ここではアームレスト18は図1(A)に示すほぼ水平な回動下限と、これよりも角度α(ここでは60°)上向きに回動した図1(B)に示す使用範囲上限との間において使用時の角度位置(以下単に角度とする)が調節可能となしてある。
【0049】
アームレスト装置16は、アームレスト18の内部に埋設された強度部材である芯体としてのアームレスト本体20(図2,図3参照)と、これを外側から覆う図示を省略した弾性材と、アームレスト本体20の付根側の基端部に内蔵された角度調節装置22を含んでいる。
ここで角度調節装置22は、アームレスト本体20を回動可能に支持するとともに、上下回動方向の角度を調節する機能を有する。
【0050】
アームレスト本体20は樹脂(ここでは高強度を有するガラス繊維強化ポリプロピレン樹脂)製のもので、図3に示しているように周壁24と側壁26とを有し、図3中右側の面が開放された形態の中空構造をなしており、その中空部に補強リブ28が一体成形にて設けられている。
尚、30は上記弾性材(ここではポリウレタン材)を成形する際の原料液の注入穴である。
【0051】
このアームレスト本体20の基端部には、円筒状のハウジング32が一体成形されている。
そしてこのハウジング32の内部に上記の角度調節機構22が収容されている。
このハウジング32は、図3及び図4中左側の軸方向端に底部34を有している。底部34には円形の開口36が形成されている。
また図中右側の軸方向端は全体が開放形状とされている。
【0052】
上記角度調節装置22は、アームレスト本体20を回動可能に支持する断面円形のブロック状をなす支持軸体38と、円形のリング状をなし、支持軸体38に外嵌状態に嵌合されたラチェット部材40とを有しており、それらがハウジング32の内部に収容されている。
またハウジング32の図中右側の軸方向端の開放部は、アームレスト本体20と一体回動する蓋部材42にて閉鎖されている。
これら支持軸体38,ラチェット部材40,蓋部材42もまた樹脂製とされている。
【0053】
ここでは支持軸体38及びラチェット部材40を構成する樹脂としてガラス繊維強化ポリプロピレン樹脂(GFPP)が用いられている。
一方蓋部材42を構成する樹脂としてポリアセタール樹脂(POM)が用いられている。
【0054】
支持軸体38は、図5に示しているように中心部に軸方向に貫通のボルト挿通孔44を有しており、そのボルト挿通孔44においてボルト46により、固定プレート48を介してシートバック14側に締結固定されている。(ここでは固定プレート48とシートバック14との回り止め機構は省略しているものとする。)なお、本実施形態では、固定プレート48をアームレスト装置16の部品として記載しているが、シートバック14側の部品に固定プレート48と同様の機能を持たせてもよい。
図3に示しているように、支持軸体38は軸方向の図中左端側に小径部50を有し、更にこの小径部50に続いて中径部52を、また中径部52に続いて大径のフランジ部54を有している。
その小径部50には、周方向に所定間隔ごとに位置決溝56が設けられている。
【0055】
一方金属製の上記固定プレート48には、切起し形状の位置決突起58が、位置決溝56に対応する位置に複数設けられており、これら位置決突起58が位置決溝56に嵌り込むことで、支持軸体38を固定プレート48により回転方向に位置決めしている。
尚固定プレート48には、中心部に貫通孔60が設けられている。この貫通孔60はボルト46を挿通するためのものである。
【0056】
小径部50にはまた、図5に示すように樹脂製(ここではポリアセタール樹脂製)のスリップリング62が嵌着されている。
スリップリング62は、図3に示しているように周方向所定個所で分断された形態の円形のリング状をなしており、図5に示しているようにその断面形状はコ字形状をなしていて、幅方向中間部に全周に亘る円環状の溝64が形成されている。
そしてその溝64に、ハウジング32の底部34の内周端部65が径方向に嵌入されている。
【0057】
即ち内周端部65が、スリップリング62を介して支持軸体38の小径部50の外周面に嵌合され、内周端部65が支持軸体38にて回転可能に支持されている。
【0058】
支持軸体38における上記の中径部52の外周面には、周方向に所定間隔ごとに軸方向に延びる凸条66が設けられている。
一方円形のリング状をなすラチェット部材40には、その内周面に、凸条66に対応した凹条68が周方向に所定間隔ごとに設けられており、この凹条68と凸条66とを凹凸嵌合させる状態に、ラチェット部材40が支持軸体38における中径部52に対し、回転方向に固定で軸方向に相対移動可能に外嵌状態に嵌合されている。
【0059】
このラチェット部材40の軸方向端と、支持軸体38の大径のフランジ部54との間には、周方向に90°ごと4個所に配置された金属製のコイルスプリング(付勢部材)70が介在させられており、これらコイルスプリング70によって、ラチェット部材40が図3中左方向に付勢されている。
ここでコイルスプリング70は、図中左端側がラチェット部材40の差込孔72に差し込まれ、また右端側が支持軸体38のフランジ部54に設けられた突起74に嵌め合わされ、回転方向に位置決めされている。
【0060】
支持軸体38のフランジ部54には、図5に示すように外周端から軸方向に起立する円形の立上り部76が設けられている。
また外周側には、周方向に連続した円環状をなす段違い形状の被係止部78が設けられている。
【0061】
ラチェット部材40の、図3中軸方向の左側端面には、鋸歯状をなす固定側の第1ラチェット歯80が全周に亘って連続して一体成形により設けられている。
またこれに対応して、アームレスト本体20における上記底部34の内面には、この第1ラチェット歯80に対して軸方向に対向する鋸歯状の可動側の第2ラチェット歯82が全周に亘って連続して設けられている。
ここで第2ラチェット歯82は、アームレスト本体20の成形時にアームレスト本体20に一体に成形されたものである。
この実施形態では、第2ラチェット歯82と第1ラチェット歯80を備えたラチェット部材40によってラチェット機構が構成されている。
【0062】
このラチェット機構は次のように作用する。
即ち、アームレスト本体20が図1(A)に示す回動下端から上向きに回動しようとするときには、図9(A)に示しているようにアームレスト本体20側に一体成形された可動側の第2ラチェット歯82が、通常は回転不能状態にある固定側の即ちラチェット部材40に形成された第1ラチェット歯80を乗り越えて移動でき(このときラチェット部材40はコイルスプリング70を弾性圧縮変形させながら支持軸体38のフランジ部54側に軸方向に後退移動する)、これによってアームレスト本体20の上向きの回動が許容される。
【0063】
一方アームレスト本体20が下向きに回動しようとすると、可動側の第2ラチェット歯82と固定側の第1ラチェット歯80とが互いに噛み合った状態となって、第2ラチェット歯82の回転を阻止する。そしてこのことによってアームレスト本体20の下向きの回動が禁止される。
尚、アームレスト本体20は図5に示しているようにハウジング32の嵌合壁部84をラチェット部材40に外嵌させた状態で回動運動する。
【0064】
ハウジング32の開放部を閉鎖する蓋部材42は、図4に示しているように外周縁にそって軸方向に微小高さで突出した環状のリブ86を有しており、このリブ86が、ハウジング32の軸方向端面(図5中上端の端面)に形成された、対応する浅い環状の溝88に嵌め込まれ、蓋部材42がハウジング32に対して位置決めされている。
【0065】
リブ86は、周方向の3個所に部分的に突出した突部90を有しており、これら突部90が、これに対応してハウジング32に設けられた穴部92に嵌め込まれている。
これら突部90は先端に係合部94を有し、この係合部94が穴部92周りに係合せしめられている。
【0066】
蓋部材42には、リブ86の径方向の内側において、リブ86よりも大きく軸方向に突出した嵌合片96が環状に一体成形にて設けられている。そしてこの嵌合片96が、図8(B)(I)に示しているように支持軸体38の蓋部材42側の軸方向端部、詳しくは上記の立上り部76の外周面に非遊嵌状態で外嵌状態に嵌合されている。
【0067】
この嵌合片96は、その一部が周方向に分断されることによって径方向に弾性変形可能な引掛爪96Aとされている。
引掛爪96Aは、嵌合片96の他部と同様に支持軸体38の立上り部76の外周面に接触状態で嵌合している。
この引掛爪96Aは先端部に爪部98を有しており、図8(A)に示すようにこの爪部98を支持軸体38の上記の被係止部78に引掛けることによって、蓋部材42を支持軸体38に取り付けている。
尚この引掛爪96Aは、周方向に沿って90°毎隔たった4個所に設けられている。
【0068】
この引掛爪96Aを含む嵌合片96は、図8(A)(II),(B)(II)にそれぞれ示しているように、ハウジング32の蓋部材42側の軸方向の端部32Aの内周面に非遊嵌状態で内嵌しており、引掛爪96Aを含む嵌合片96が、支持軸体38の立上り部76とハウジング32の軸方向の端部32Aとで径方向の内外方向に実質上隙間なく挟まれている。
【0069】
この結果、蓋部材42を支持軸体38に組み付けた状態で、蓋部材42の中心の貫通穴100を通じボルト46にて支持軸体38をシートバック14側に固定すると、同時に蓋部材42が支持軸体38から抜止状態で、且つアームレスト本体20と一体回動する状態で、支持軸体38に回転可能に固定された状態となる。
【0070】
蓋部材42を、図5及び図8において上方向に外すためには、弾性変形を有する引掛爪96Aを径方向外方に弾性変形させて、爪部98を被係止部78から外す必要があるが、図8(A)(II)に示しているように、引掛爪96Aは支持軸体38の立上り部76とハウジング32の軸方向の端部32Aとに隙間なく挟まれた状態にあって、引掛爪96Aは、その軸方向の端部32Aが壁となって径方向外方へ弾性変形することができず、このことによって爪部98と被係止部78との係合が強固に保持されるからである。
【0071】
この蓋部材42の引掛爪96Aを含む嵌合片96が、支持軸体38の立上り部76と、ハウジング32の軸方向の端部32Aとにより全周に亘り隙間なく挟まれることによって、即ち立上り部76とハウジング32の端部32Aとの間の隙間が嵌合片96により埋められることで、アームレスト本体20の先端側に力が加わったときに、アームレスト本体20が撓むのが有効に抑制される効果も得られる。
【0072】
上記ハウジング32の底部34には、図7に示しているように周方向に180°隔たった2個所において、L字状に折れ曲ってラチェット部材40側に軸方向に突出した解除カム部104が一体成形にて設けられている。
この解除カム部104には、傾斜した形状のカム面106が設けられている。このカム面106は、アームレスト本体20を上向きに回動させたとき、即ちハウジング32が図4中反時計方向に回動したとき、基端から先端に向ってその回転方向とは逆方向に移行する傾斜形状の面をなしている。
【0073】
他方ラチェット部材40にもまた、図6に示しているように対応する一対の従動カム部108が、周方向に180°隔たった2個所に設けられている。
これら従動カム部108にもまた、傾斜形状のカム面110が設けられている。
これらカム面110は、解除カム部104のカム面106にそれぞれ回転方向に対向する向きで且つ同じ傾斜方向,傾斜角度で設けられている。
この実施形態においては、解除カム部104と従動カム部108とで第1ラチェット歯80と第2ラチェット歯82との噛合いを解除する解除機構が構成されている。
【0074】
これら解除カム部104及び従動カム部108は次のように作用する。
アームレスト本体20が図1(A)に示す回動下限にあってほぼ水平位置にあるとき、図10(I)(A)に示しているように、解除カム部104と従動カム部108とは回転方向に離隔した位置、詳しくは解除カム部104が、従動カム部108に対して図10中時計方向に離隔した位置にある。
この状態でアームレスト20を上方に回動操作すると、解除カム部104が図10(I)(A)中反時計方向に回動して従動カム部108に漸次接近する。
【0075】
そしてアームレスト本体20を使用範囲上限直近まで回動操作したところで、図11(II)(A)及び図9(B)(I)に示すように、一対の解除カム部104のそれぞれのカム面106が、対応する一対の従動カム部108のそれぞれのカム面110に当接し、そしてアームレスト本体20の更なる回動に伴ってカム面106,110のカム作用により従動カム部108が図9(B)(II)及び(III)に示しているように図中上方に軸方向に押し上げられる。即ちラチェット部材40が、スプリング70の付勢力に抗して図中上方に軸方向に押し上げられる。
そしてラチェット部材40が軸方向に押し上げられることによって、第1ラチェット歯80と第2ラチェット歯82との噛合いが解除される。
【0076】
而して押し上げられたラチェット部材40は、保持機構によってその押上位置に保持される。即ち第1ラチェット歯80と第2ラチェット歯82とが噛合い解除状態に保持される。
【0077】
上記蓋部材42には、図4及び図5に示しているように、その保持機構の一部をなす弾性爪112が、周方向に180°隔たった2個所に設けられている。これら弾性爪112は蓋部材42に一体成形にて設けられている。
これら弾性爪112は、それぞれ軸方向に突出する形状で設けられており、それぞれが径方向に弾性変形可能である。
また各先端部には、内向きの爪部114が設けられている。
【0078】
他方ラチェット部材40には、蓋部材42の弾性爪112と協働して保持機構をなす鍔部116(図6参照)が、ラチェット部材40の蓋部材42側の軸方向端部に、且つアームレスト本体20の回動軸心周りに周方向に環状に延びる形態で一体成形により設けられている。
【0079】
上記のように解除カム部104と従動カム部108とによってラチェット部材40が軸方向に押し上げられたとき、図11(B),(C)に示すように鍔部116が蓋部材42側の弾性爪112を径方向外側に弾性変形させながら、その先端の爪部114を図中上側に乗り越え、そして乗り越えたところで弾性爪112が弾性復元力で元の形状に戻って、爪部114が鍔部116を図11において下側から上向きに保持した状態となる。
ここにおいてラチェット部材40が押上げ位置に保持され、この状態でアームレスト本体20は自由に下向きに回動可能となる。
【0080】
尚、蓋部材42はアームレスト本体20と一体に回動する。
この蓋部材42の弾性爪112は、アームレスト本体20が図10(I)(A)に示す回動下限にあるとき、鍔部116に形成された後述の切欠き118の位置に位置した状態にあり、この状態からアームレスト本体20が上向きに回動すると、これとともに弾性爪112も同じ方向に回動して位置移動し、そしてアームレスト本体20が使用範囲上限に至ったところで、図11(II)(A)に示すように、弾性爪112が鍔部116の切欠き118と118との間の中間の周方向位置に位置した状態となり、その状態でラチェット部材40が押し上げられることにより、ラチェット部材40の鍔部116を弾性爪112が弾性変形を伴って保持する。
【0081】
上記のように鍔部116には、図6に示しているように周方向に180°隔たった2個所に、弾性爪112の爪部114を軸方向に通過させる切欠き118が設けられている。
この切欠き118は、鍔部116と弾性爪112とによって押上位置に保持されたラチェット部材40に対する保持を解いて、ラチェット部材40詳しくは第1ラチェット歯80を、ハウジング32側の第2ラチェット歯82に噛合い状態に復帰させる復帰機構をなすものである。
【0082】
これら切欠き118は、図10,図13に示しているようにアームレスト本体20が回動下限まで下向きに回動操作されたとき、弾性爪112と同じ周方向位置に位置するように配置されている。
【0083】
従って上限まで回動したアームレスト本体20を下向きに回動し、図12,図13に示すようにこれを回動下限まで持ち来すと、そこにおいてアームレスト本体20と一体回動する蓋部材42の一対の弾性爪112が、ラチェット部材40の鍔部116に形成された一対の切欠き118に合致した状態となり、そこにおいてスプリング70に抗して押し上げられ且つ鍔部116と弾性爪112とで押上位置に保持されていたラチェット部材40が保持を解かれて、スプリング70の付勢力により第2ラチェット歯82側に軸方向に移動せしめられる。
ここにおいて第1ラチェット歯80と第2ラチェット歯82とが再び噛合い状態に復帰する。
【0084】
以上のような機構によって本実施形態のアームレスト18は、図1(A)に示す回動下限にある位置から上向きに所望量だけ回動させることで、ラチェット機構による噛合いによりその位置に保持され、使用者による荷重をラチェット機構の噛合いにより受けてこれを支持する。
またこの状態からアームレスト18の角度をもう少し上に角度調整したい場合には、その分だけアームレスト18を上向きに回動操作すれば良い。
【0085】
一方アームレスト18の位置を現在よりも下方の回動角度に位置調整したいときには、一旦アームレスト18を図1(B)に示す使用範囲上限まで操作した後、図1(A)に示す回動下限まで押し下げ、その位置から所望位置までアームレスト18を回動操作することで、所望の角度にこれを位置調節することができる。
【0086】
以上のように本実施形態においては、第2ラチェット歯82のための部材をアームレスト本体20と別に設けなくてもよく、アームレスト装置16に要する部品点数を少なくすることができるとともに、その第2ラチェット歯82を有する部材をアームレスト本体20に一体回動状態に組み付ける必要もなく、その際の組付工数を削減することができる。
これによりアームレスト装置16の所要コストを低減することができる。
【0087】
また第2ラチェット歯82を有するラチェット部材40をアームレスト本体20に組み付ける必要がないので、組付けのための嵌合い構造をそれらに設ける必要もなく、従ってその組付けのためのスペースも削減し得て、ラチェット機構とアームレスト本体20との組付部分を小型化することができる。
【0088】
本実施形態では、アームレスト装置16の大部分を占めるアームレスト本体20が樹脂製であるため、アームレスト装置16全体を大幅に軽量化することができる。
加えて第2ラチェット歯82をアームレスト本体20とは別体の部材に形成する必要がないため、第2ラチェット歯82のための部材、更にこれを締結するための締結部材の削減によって、より一層の軽量化を図ることができる。
更に本実施形態では、アームレスト本体20のみならずラチェット部材40,支持軸体38,蓋部材42,スリップリング62が全て樹脂製とされているため、アームレスト装置16を従来に比べて大幅に軽量化することができる。
【0089】
また本実施形態ではその第2ラチェット歯82が、アームレスト本体20を構成する高強度の樹脂にて形成されるため、第2ラチェット歯82を十分に高強度とすることができる。
【0090】
また第2ラチェット歯82を有する別体の部材をアームレスト本体20に組み付ける場合のように、その組付部分にガタを生ぜしめてしまう問題がなく、アームレスト18の使用時のガタツキを無くしてアームレスト18の円滑な動きを確保でき、またその使用感を高めることができる。
【0091】
また本実施形態では、ラチェット機構の噛合いを解除する解除機構,噛合い解除状態に保持する保持機構、更にその保持を解いてラチェット機構を噛合い復帰させる復帰機構の何れもが軸方向に動作してこれを行うようになしてあるため、それらの機構を簡単な構造で簡素に構成することができるとともに、それら機構によって位置調節装置22が径方向に大型化してしまうのを有効に防止することができる。
【0092】
また本実施形態では、上記の解除機構をなす解除カム部104がアームレスト本体20に一体成形され、更にこれに対応する従動カム部108がラチェット部材40に一体成形され、また保持機構をなす鍔部116と弾性爪112とが、それぞれ支持軸体38,蓋部材42に一体成形されているため、更に加えて解除機構をなす切欠き118が蓋部材42に一体に備えられているため、全体として部品点数を効果的に削減でき、またこれに伴ってそれらの組付けのための工数を削減することができ、アームレスト装置16の所要コストをより一層低減することができる。
【0093】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は自動車以外のシートに取り付けられるアームレスト装置にも適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 シート
16 アームレスト装置
18 アームレスト
20 アームレスト本体
22 角度調節装置
32 ハウジング
34 底部
36 開口
38 支持軸体
40 ラチェット部材
42 蓋部材
66 凸条
68 凹条
70 コイルスプリング(付勢部材)
78 被係止部
80 第1ラチェット歯
82 第2ラチェット歯
96A 引掛爪
98,114 爪部
104 解除カム部
108 従動カム部
112 弾性爪
116 鍔部
118 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)シートに対して基端部で上下回動可能に取り付けられるアームレスト本体と
(ロ)該アームレスト本体の回動の軸線周りに設けられた固定側の第1ラチェット歯、及び該第1ラチェット歯に対向する状態に且つ前記アームレスト本体と一体回動する状態に設けられ、該アームレスト本体の下向き回動方向には該第1ラチェット歯に噛み合って移動阻止され、上向き回動方向には該第1ラチェット歯を乗り越えて移動可能な可動側の第2ラチェット歯を有するラチェット機構と
(ハ)前記第1ラチェット歯と第2ラチェット歯とを互いに押圧する向きに付勢する付勢部材と
(ニ)該第1ラチェット歯と第2ラチェット歯とを離間させて噛合い解除する解除機構と
(ホ)該離間させた第1ラチェット歯と第2ラチェット歯とを離間状態に保持して前記アームレスト本体の下向き回動を許容する保持機構と
(へ)該保持機構による保持を解いて該第1ラチェット歯を第2ラチェット歯に接近する方向に相対移動させ、噛合い復帰させる復帰機構と
を有し、前記ラチェット機構により前記アームレスト本体の使用位置での角度位置が調節可能となしてあるアームレスト装置であって、
前記第1ラチェット歯が前記アームレスト本体とは別体のラチェット部材に形成してあるとともに、該アームレスト本体が樹脂製とされ且つ該アームレスト本体の成形時に前記第2ラチェット歯が該アームレスト本体に一体成形してあることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項2】
請求項1において、前記固定側のラチェット部材を付勢部材が前記アームレスト側の前記第2ラチェット歯の側に付勢しているとともに、
前記解除機構は、前記アームレスト本体と一体に回動し、該アームレスト本体が使用範囲上限に至ったときに前記ラチェット部材を前記付勢部材の付勢力に抗して軸方向に押し上げ、前記第1ラチェット歯を前記第2ラチェット歯から離間させる、該アームレスト本体に一体に成形された解除カム部を有しており、
前記保持機構は、該押し上げられたラチェット部材を押上位置に保持して前記アームレスト本体の使用範囲上限からの下向き回動を許容するものとなしてあることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項3】
請求項2において、前記保持機構は、前記ラチェット部材に且つ前記軸線周りに延びる形態で設けられた鍔部と、
該ラチェット部材に対して前記第2ラチェット歯とは軸方向の反対側に配置された爪部材とを有しており、
該爪部材には該ラチェット部材側に軸方向に突出した弾性爪が保持部として設けられていて、該ラチェット部材の押上げ時に該弾性爪が弾性変形して先端側の爪部に対し前記鍔部を軸方向に通過させた後、該爪部にて該鍔部を掛止し保持するものとなしてあることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項4】
請求項3において、前記弾性爪は前記鍔部に沿った周方向に複数設けられており、複数個所で該鍔部を保持するようになしてあることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項5】
請求項3,4の何れかにおいて、前記ラチェット部材が樹脂製とされて該ラチェット部材に前記第1ラチェット歯及び前記鍔部が一体成形してあることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項6】
請求項3〜5の何れかにおいて、前記爪部材は前記アームレスト本体と一体に回動するものとなしてあり、
前記復帰機構は、前記鍔部に形成され、前記アームレスト本体が回動下限に至ったとき前記弾性爪の前記爪部を軸方向に通過させて該弾性爪による該鍔部の保持を解き、前記ラチェット部材を前記第2ラチェット歯側に移動可能とする切欠きを有していることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項7】
請求項3〜6の何れかにおいて、前記ラチェット機構を軸方向の一端側から覆う状態で前記アームレスト本体と一体回動する状態に設けられた蓋部材が前記爪部材を成しており、且つ該蓋部材は樹脂製とされていて該蓋部材に前記弾性爪が一体成形してあることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記シートに取り付けられて前記アームレスト本体を回動可能に支持する支持軸体を有しており、前記ラチェット部材はリング状をなしていて、該ラチェット部材が該支持軸体に対して、少なくとも何れか一方が軸方向に延びる案内凸部と案内凹部との凹凸嵌合により回転方向に固定且つ軸方向に相対移動可能に組み付けてあり、
前記アームレスト本体の前記基端部には円筒状のハウジングが一体に成形してあって、該ハウジングの内部に前記支持軸体と前記ラチェット部材とが収容してあって、該ハウジングにおける軸方向を向いた底部内面に前記第2ラチェット歯が成形される一方、該ラチェット部材の該第2ラチェット歯に対向する軸方向の端面に前記第1ラチェット歯が形成してあり、
該ハウジングの該底部内面とは軸方向の反対側の開放部を、前記アームレスト本体と一体回動する樹脂製の蓋部材で閉鎖していることを特徴とするアームレスト装置。
【請求項9】
請求項8において、前記蓋部材には、前記支持軸体の軸方向端部の外周面に対し径方向外方への弾性変形を伴って外嵌状態に嵌合し、且つ該支持軸体の外周面の被係止部に径方向内向きに係止する、軸方向に突出した引掛爪が設けてあり、且つ該引掛爪は、前記ハウジングの該蓋部材側の軸方向端部の内周面に非遊嵌状態に内嵌するものとなしてあることを特徴とするアームレスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−269030(P2010−269030A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124550(P2009−124550)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000219668)東海化成工業株式会社 (39)
【出願人】(599012721)株式会社リバース (6)
【Fターム(参考)】