説明

イオンの集団加速装置とその応用

【課題】
重イオン加速器に関する。重イオン加速器は電荷と質量の比が完全電離の状態でも2前後で、電場加速では電子や陽子に比べて核子あたりの加速効率は良いとはいえない。本発明は重イオン加速器の類例のないほどの超小型化を可能にする。あるいは大型にすることで、類例のないほどの高エネルギー重イオンを可能にする。
本発明はその応用の一つとして、重粒子線によるがん治療装置に大きなインパクトを与える。エネルギーが400MeV/u(uは核子を表す)強の重粒子線は放射線耐性の強いあるいは、低酸素腫瘍で、従来の放射線治療の効果が少ない悪性の腫瘍に治療効果が高い事がしられている。しかし、そのための重粒子線癌治療装置は規模が大きく、これを収容する建屋も既存の病院に収まらないほど長大で、初期コストも維持費も極めて割高なため、悪性腫瘍の治療などには極めて良い成績がしられているのも関わらず、一般への普及が遅れている。にもかかわらず、そのすぐれた治療効果から重粒子線加速器の小型化の実現とその普及はがんの放射線治療医学界から切望されていることである。
【解決手段】 重イオンを内包した高密度の中空電子雲あるいは電子リングを本発明で提案しているような特殊で新しいレーザー照射技術等によって瞬時に生成し、中空電子雲を直のRF電場により重イオンと共に瞬時に引き出し・加速する方法を提供することで、高い加速効率かつ極めて小型の安価な加速器を実現可能せしめる。その応用のひとつとして要望の強い、既設の病院のサイズに設置可能な重粒子の超小型テーブルトップ重イオン加速器を実現せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のイオン集団(イオンバンチ)を電子集団(電子バンチ)に閉じ込め、強い強度の高密度電子バンチを生成・加速することで電子バンチに閉じ込められたイオン集団を百MV/m以上の電場強度にて加速する集団加速装置(Collective Acceleration Device)とその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
時間的・空間的に限定された荷電集団(チャージバンチ)を強いビーム強度の電子集団(電子バンチ)によって短距離で数GeVを越える高いエネルギーまで加速する方法は1950年中旬から複数の研究者によってさまざまなバリエーションの発明・提案がなされてきた。(最初の電子集団加速法は米国のベネット(Bennett)によって示唆されていたが、明確で分かり易い提案を最初に行ったのは旧ソ連のベクスラー(Veksler)といえる)。
W.H.Bennett,Phys.Rev.45,890(1934)
V.I.Veksler,Proc.CERN Symposium on High Energy Accelerators and Pion Physics 2,80−83(CERN,Geneva,Switzerland;1956).
G.I.Budker,Relativistic Stabilized Electron Beams,CERN Symposium on High Energy Accelerators,Vol.1,68(1956)
1956年には最初の加速器国際会議がスイスのジュネーブで開催され、旧ソ連のドブナ(Dubna)のベクスラー(V.I.Veksler)やモスクワ科学アカデミーのブドカー(G.J.Budker)らが荷電粒子のあたらしい加速方式として大強度・高密度電子バンチによるイオン加速について、理論および実験について報告した。ベクスラーはさらに1967年のケンブリッジでの加速器会議でバンチ当たり100億個の陽子を15mの距離で1GeVまでの加速をめざしたインダクションライナック(誘導線形加速器)のモデル製作について発表を行っている。
V.I.Veksler et al.,Proc.VI.International Conference on High Energy Accelerators,Cambridge Electron Accelerator,Cambridge,1967,P.289.
(ここでいうイオンとは陽子を含むすべての荷電粒子を意味しているが、重イオンと呼ぶ時は元素表でヘリウム以上の重さの荷電粒子を指す)
【0003】
この革新的なイオンの電子集団加速法は欧米の加速器の最前線の研究者の心をしっかりと捕え、世界の主要研究所において、理論と実験の精力的研究が開始された。なかんづく、アメリカのLBL(Lawrence Berkeley Laboratory)では電子リング加速器システム(ERA system)として実証試験加速器の理論および実験・研究が開始された。
D.Keefe et al.,Phys.Rev.Letters 22,558(1969
また大強度の電子ビームの研究のメッカでもあるメリーランド(Maryland)大学のライザー(Reiser)においても同様の研究が開始された。
D.L.Nelson and H.Kim,Studies on Formation of an Electron Ring Using Cylindrical Hollow Beam,Proc.of VII International Conf.on High Energy Accelerators,Yerevan,August 1969,
D.L.Nelson,The Formation of an Electron Ring in a Static Magnetic Field,Ph.D.Thesis,August 1970,Department of Physics & Astronomy,University of Maryland,College Park,Maryland
【0004】
さらにこの電子リングとインダクションライナックを利用してその発明者のクリストフィロス(Christfilos)が核融合のプロジェクトを国立の軍事研究所であるローレンス リバモア研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)で開始したために、電子リング加速器(ERA)方式にたいする研究者の期待が多いに高まった。
N.C.Christfilos,Phys.Rev.Lett.22,830(1969)
【0005】
大電流のERAは主にベータトロン方式を採用していたが次第にビーム不安定性の問題が明らかになってきた。一方で高エネルギー物理学の時代は数百GeVの陽子加速器の早期実現への要求が高まっている時であったため、技術的により容易で実現性の高い大型のシンクロトロン方式の検討もすすみ
A.Garren,“lattice of the NAL proton synchrotron”,PAC1969
高エネルギー陽子加速器は陽子シンクロトロンが選択され、CERN(ヨーロッパ原子核研究所)のSPSおよびFermilab(Fermi national accelerator laboratory)のシンクロトロンの建設に移行した。
【0006】
LBLは早々に撤退したものの、ドイツのガルヒンク(Garching)や旧ソ連時代のドブナ研究所などの様々な研究所でERAの実現に向けて努力が継続された。
D.W.Hudgings et al.,“Trapping of cusp−injected,non neutral,electron ring rings with resistive walls and static mirror coil”,Physical review letters,volume 40,Number 12,march 1978,
C.Andelfinger et al.,“Of the experimental and theoretical investigations in the Garching Electron ring accelerator”,IEEE Transaction on Nuclear Science,1979
E.B.Abubakirov et al.,“Generation and acceleration of high−current annular electron beam in linear induction accelerator and microwave from Cherenkov TWT”,EPAC1990
さらなる高エネルギー化は、円周長27kmの超大型電子シンクロトロンのLEP(Large Electron Positron)加速器や超伝導電磁石のFermilabのTevatronやCERNではさらに高いエネルギーでさらに高磁場の超伝導電磁石のLHC(Large Hadron Collider)のシンクロトロン方式に向かっていった。またLHCの次の次世代の高エネルギー加速器は直線型の電子と陽電子の衝突器であるILC(International Linear Collider)が選択され、電子・陽電子で数百GeVかTeV領域の加速を目指す方針が採択されERAの研究開発は次第に衰退することとなった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ERAによるイオン加速方式は(1)LBL方式の弱い収束方式の一回(ワンターン)入射でのベータトロン方式でこれを時間的に変化する軸磁場を生成するか、(2)ラスレット・セスラー方式のカソードに於いて大きな電子リングをつくりこれを軸方向に減少する静的な軸磁場に入射するか、(3)メリーランド大学のライザー方式のカソードで大きな中空電子ビームを生成しこれをカスプ磁場に入射するか等いずれかの方式で軸方向に短縮し電子リングを形成するなどの方式が主流であった。 しかしながらいずれの場合も、必要な電流量が高いためにさまざまなビーム不安定性が発生し、当初はブドカーなどによればこの安定性は制御可能と主張されていたが、その電子バンチの安定化は困難を極めた。
J.Lasslett,A.Sessler,”a method of static−field compression in an electron−ring accelerator”,UCRL−18589,PAC1969,
A.Sessler,“collective field acceleration”,UCRL−19242,VII international conference on high energy accelerator,Yerevan,USSR,1969,
J.Lasslett,A.Sessler,”a method of static−field compression in an electron−ring accelerator”,UCRL−18589,PAC1969
A.Sessler,“collective field acceleration”,UCRL−19242,VII international conference on high energy accelerator,Yerevan,USSR,1969
【0008】
本発明は、大電流の電子リングのビーム不安定性の問題を抱えた以上のような方式に替わる従来は未解決であったコンパクトかつ大強度の中空電子バンチによる様々なイオン種の集団加速法を提案するものである。
【0009】
その直近の応用として、イオンのエネルギーに応じた距離にて急峻なイオン化現象を誘起するブラッグピーク(Bragg Peak)と同時に陽子線の3倍前後の高い生物効果(RBE)をもつ重粒子線の照射による放射線耐性腫瘍治療のテーブルトップ治療用加速器を実現せしめるものである。(ここでいうテーブルトップ加速器の大きさとは既存の病院の放射線照射室におさまる程度の装置の大きさを意味している)。陽子ビームについてはテーブルトップの開発研究がMIT・Still River Systems の Monarch250PBRT や HiArt・Livermore 研究所の DWA(Dielectric Wall Accelerator)が進行中かつ未完成であるが、重イオンビームではテーブルトップ加速器の提案さえ未だなされていない。
http://www.stillriversystems.com/ (多くは秘密事項でベールに包まれている)
Caporaso et al.,High gradient induction accelerator,Particle Accelerator Conference,2007.PAC.IEEE Volume,Issue,25−29 June 2007 Page(s):857−861
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では大強度電子ビームの不安定性を回避する為に電子集団(電子バンチ、電子雲)を瞬時に生成する方法を取る。即ち従来の方式のように電子銃のカソードで電子を生成したのちこれを真空容器に打ち込むスローな方式ではなく、電子銃に相当する電子の発生源近傍に於いてイオンを捕獲する構造をもった発生過程からしてコンパクトな電子集団を生成する。この方式はLBL方式の電子リング等の複雑な打ち込み(インジェクション)工程を不要にする。
【0011】
電子集団は中空の電子リングまたは中空の円筒状の電子雲の形状をなす。電子雲の両端は閉じた状態または開いた状態である。この中空部分に加速すべきイオンを強いクーロンポテンシャルにて捕獲する。これを以後、“中空電子雲”と呼ぶ。円筒状の長さが短い場合には、従来のERA方式の電子リング形状に一致する。この中空電子雲と捕獲されたイオンは高電場RF電場等によって瞬時に引き出され加速されたのち、ベクスラーらが提案した方式等にて電子雲とイオンは電磁気的に分離される。
【0012】
このような中空電子雲の生成は最近の大出力レーザー等の極短パルス高出力技術の進歩によってようやく可能となったもので、ERAの研究開発が白熱していた60〜70年代に於いては技術的には不可能であった。
以下に中空電子雲を実現する具体的な方法を3種類ほど列挙する。以下に示す方法は基本的にはベクスラーが提示した方法を援用する。しかしながら以下に示すように多くの重要な点でこれを改良したものである。ベクスラーとの相違点は電子ビームとイオンの生成方法である。電子リングの付随装置、たとえば、磁場による電子リングのコンプレッション(軸方向での圧縮)用のコイルなどはこれを実装する。
【0013】
第一の方法は電子とイオンの同心円状発生構造の中空の静的円筒電子雲(ホロービーム)イオンビームの生成方法である。同心円の外側部分はカソード電極の形状をリング状にして静電場によって大電流電子ビームを引き出す。カソード本体にイオン発生のない状態で大電流のホロービーム源はすでに実験的に実証されている方式で、著者らの発明によるCBS(Cold Beam synchrotron Source)方式の電子冷却部で実現されている。中空の電子リングにすることで空間電荷効果制限を緩和してより強い大電流のホロービームが可能となっている。
E.Levichev,V.Kiselev,V.Parkhomchuk,V.Reva,S.Sinyatkin,V.Vostrikov,LATTICE STUDY FOR THE CARBON ION SYNCHROTRON FOR CANCER THERAPY WITH ELECTRON COOLING,EPAC08
E.B. Levichev et al.,“Carbon Ion Accelerator Facility for Cancer Therapy”,Proceedings of RuPAC,2006,Novosibirsk,Russia,pp.363−365.
Masayuki Kumada,Vasily V.Parkhomchuk,B.I.Grishanov,E.B.Leivichev,F.V.Podgorny,S.A.Rastigeev,V.B.Reva,A.N.Skrinsky,V.A.Vostriko,THE CBS−THE MOST COST EFFECTIVE AND HIGH PERFORMANCE CARBON BEAM SOURCE DEDICATED FOR A NEW GENERATION CANCER THERAPY,PAC 205,Koxville,Tennessee
加速すべきイオンバンチはこのカソードの中央に超小型のイオン源を挿入する。この構造によりイオンの生成と電子リングの生成のタイミングが調整可能となる。
【0014】
第二の方法では駆動ビームの中空電子雲と被駆動ビームのイオンバンチをそれぞれ独立の高出力レーザーにて生成する。この場合、レーザーの標的となる電極は同心円構造が望ましく、内側にはイオンの発生源となる固体材料を外側には電子ビームの発生源となるフォトカソード材料を配置する。レーザーの波長はイオンの発生に適した波長と電子の波長に適した独立したかつ波長の異なる2本のレーザーを用いる事が望ましい。また、電子ビーム生成用の中空ビームを生成するためには、レーザービームの断面の強度分布が中心で弱い分布のレーザービームを用いる。中空レーザービームはレンズの材質や幾何的な構造の適切な設計によって可能である。電子雲とイオンの空間的・時間的位置関係は二本のレーザービームの時間と空間構造によって設定を行う。生成されたイオンを閉じ込めた中空電子雲は、RF電子銃で電子を引き出すのと同様の方法で瞬時に光の速度まで加速が可能となる。このときのイオンのエネルギーは主に電子雲の電子数できめられるイオンの保持ポテンシャルで決められる。
【0015】
第三の方法は、高エネルギー電子ビームのレーザー駆動加速器の方法に準じた薄膜(フォイル)をレーザービームで照射する方式のものである。これらはすでに電子のエネルギーでGeV級の質のよい電子ビームが実現され始めている。これらの方法では高出力レーザーをフォイルに照射することでイオンの加速も可能となってきているがまだ数MeVの陽子にとどまっていて、実用的なエネルギーのものは得られていない。
C.−M.Ma et al.,Development of a laser−driven proton accelerator for cancer therapy,Laser phyicics,ISSN 1054−660X(print) 1555−6611(Online),Volume 16,Number 4/2006,page 639−646
これらのイオン加速も集団加速の一種と考えられるが、本発明では、第二の方法と同じように、ビーム断面強度がリング状のレーザービームをフォイルに照射することで電子リングビームを生成する案は初めてである。その時、レーザービームは一本でよいが断面の強度分布は中心強度は必ずしもゼロでなく弱くかつ外の円周の部分の強度が強い構造でもよい。またレーザービーム強度分布を一様にして、フォイルの標的部のほうに厚み分布をつけても同様の効果が期待できる。
このようにレーザー駆動加速器にERA方式を採用することから、本方式は従来の力まかせ(brute force)のレーザー駆動の陽子線方式と異なり、電子リング構造のために、加速効率の大幅な改善が可能となり、必要なレーザーパワーも少なくてすみ、レーザーを含む装置全体もコンパクト化せしめる。
【0016】
以上のいずれかの方法で生成されたコンパクトな電子リング、たとえば、ドーナツのリングの大半径がR、小半径a、バンチの中の電子数をNとするとこの電子リングでできる電場の大きさEmaxは(holding powerあるいは保持力とも呼ばれる)

電荷および誘電率の値を代入して

本発明で可能と考えられるパラメター、R=0.46cm,a=0.1cm,N=1013を代入するとEmax=1,000MV/mを得る。これは電子雲の保持力の電場に対応し、これに閉じ込められたイオンのエネルギーの最大値を示す。イオンを内蔵した電子リングの加速は従来提案されている直接引き出しのRF電場またはmagnetic expansion accelerationのいずれかあるいは両方を用いる。
また、実際には、電子リング中の電子の分布が一様でない影響などもあり、有効電場はフォームファクターf(f〜1/2)を乗じた値が妥当である。
電荷と質量の比が2の場合には例えば、完全電離の炭素イオンの場合では、500MV/mの電場に相当し加速される炭素イオンのエネルギーは1mの長さにて核子あたり250MeV/u/m程度のイオンエネルギーが得られる。
【0017】
本発明は極めて短い加速器の長さにて人間のがん治療装置にふさわしい。身体の深部(30cm弱)での放射線耐性腫瘍の重粒子線治療には核子あたりの重粒子線のエネルギーには400MeV/u強あればよいので本方式の加速器の完成の際には加速器本体の部分の長さが2m程度に収まる。このため放射線遮蔽の強化を行う事で、既設の病院に重粒子線治療装置を設置することを可能せしめる。また、加速装置がライナック方式であるのでイオンビームの出射の繰り返し回数も上げられるため、その結果、パルス当たりの粒子数は少なくてよい。加速電場の強さを減少させる一因となるビームローディング(beam loading)の影響は小さくすることが可能とする。
【0018】
以上、本発明では、従来の方法では困難なコンパクトな高密度電子リングを強度分布がリング型のレーザー光の出力形態を有する高出力レーザーにより、瞬時に生成し、電子リンングの強いポテンシャル場にイオンを閉じ込め、電子雲にイオンを載せて瞬時に軸方向に加速して不安定性を回避する集団加速の3つの具体的方法について述べ、がんの重粒子線治療のテーブルトップ装置の実現を可能とする方法を説明した。
【0019】
加えて、本装置は重粒子ビームと電子ビームを独立に切り替えられる。このことからこれを標的に照射することで、電子ビームからX線の発生が可能となり、これを位置確認、位置モニター、臓器の動きのモニタリングなどに適用可能で治療時の1)位置決め、2)リアルタイムモニターリング、3)治療の3つの機能を持たせしめる特徴を有する。
【0020】
最後に、一般のテーブルトップ加速器装置は患者の周囲を回転するrotating gantry方式が主流である。これらは加速器一台に照射装置が一台の構成となっている。これと比べて従来のサイクロトロンやシンクロトロン方式では複数の照射室の設置が可能で、高価な装置を治療室の数を増やす事で有効利用を図っている。この場合、固定ビームで照射室を増やすときに偏向電磁石を使ったビームラインを必要とされるので、それぞれが大きな曲率半径を必要とし、イオンビームを偏向するためにビームラインの大幅なコストが加算されざるを得ない。本方式は短く軽量な線形加速器(電子ライナック)に近い構造な為、回転ガントリー化が容易であるだけでなく、平面上で自分自身を簡単に回転できるため、固定ビームラインに偏向電磁石を使わないですむという大きな利点を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
瞬時に生成した高密度コンパクト電子集団にてイオンの加速を実現する加速装置とその応用。
【請求項2】
請求項1に記載のイオンの集団加速装置を、中心部に極小サイズのイオン源を具備したリング状のカソードにて中空電子集団を瞬時に生成し、直のRF電場または電子リング加速器(ERA)での磁場拡張加速方式(magnetic expansion acceleration)により高エネルギーのイオン引き出し・加速を実現せしめる。
【請求項3】
請求項1に記載のイオンの集団加速装置を、中心部の光強度がゼロの中空の強度分布をもつレーザーとその中心部を埋めるレーザーの二種類の異なった、波長の独立したレーザーにてそれぞれ電子生成の外側部がフォトカソード、内側部がイオン生成の、固体カソード材料に照射し、中空構造の中空電子雲を瞬時に生成し、イオンを内包した電子雲を直のRF電場または電子リング加速器(ERA)での磁場拡張加速方式(magnetic expansion acceleration)により高エネルギーのイオン引き出し・加速を実現せしめる。
【請求項4】
請求項1に記載のイオンの集団加速装置を、請求項3と同様の中空強度分布をもつレーザーまたは中心部光強度の弱いレーザー光にて、プラスチックフォイル等に照射することで中空構造の中空電子雲を瞬時に生成し直のRF電場または電子リング加速器(ERA)での磁場拡張加速方式(magnetic expansion acceleration)により高エネルギーのイオン引き出し・加速を実現せしめる。または、レーザー光の断面の強度分布を一様にして、フォイル側に厚み分布をつけても同様の効果が期待できる。
【請求項5】
請求項1に記載のイオンの集団加速装置を悪性腫瘍への正確な照射によりQOL(Quality Of Life)の高いがんの治療装置として応用せしめる。
【請求項6】
請求項1に記載のイオンの集団加速装置はその強い電子ビームをX線源として用いる事により、がん患者の位置調整や腫瘍の治療中の動きの動的モニターあるいはCT診断装置にも共用せしめる。
【請求項7】
請求項1に記載のイオンの集団加速装置はその軽量性とサイズのコンパクトさから、平面上での回転自由度が高く容易に回転可能で、その回転軸のまわり360度いずれの方向にも重粒子ビームを出射可能であるので、シンクロトロンやサイクロトロンなどの円形加速器の場合と異なり、偏向電磁石等を用いずとも、複数の治療室に短時間にビームコースを切り替えが可能でビームのタイムシエアリング利用を可能せしめる。

【公開番号】特開2010−251275(P2010−251275A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118006(P2009−118006)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(599037908)
【出願人】(508005299)
【Fターム(参考)】