説明

イオン交換ポリマーを含む化粧品組成物、及びその使用方法

皮膚上の小皺及び皺の外観を減少させるための局所用化粧品組成物が提供される。このような組成物は、化粧品としてもしくは医薬として許容可能な担体中にイオン交換ポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年9月1日に出願された米国特許出願第61/238,783号に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ヒトの皮膚の外見を向上させるために局所適用するための化粧品組成物に関する。より詳細には、本発明は、皮膚にハリを与え(skin-tightening)及び皺を減少させる(wrinkle-reduction)作用ならびに皮膚への他の恩恵を呈する化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚は多くの外的及び内的要因によるダメージを受けやすい。外的要因としては、(例えば日光への暴露等による)紫外線放射、環境汚染、風、熱、低湿度、重力、強い化学物質、研磨剤(abrasives)、ある種の薬(例えば利尿剤やレチノイン酸)等が挙げられる。内的要因としては、年齢的老化(chronological aging)及び皮膚の中で起こる他の生化学的変化が挙げられる。これらの外的及び内的要因は、皮膚上の深い皺(deep wrinkles)や小皺(fine lines)の出現等の、皮膚老化の目に見えるサインをもたらし得る。多くの人々にとって、皺や小皺は、彼らの若さが消えていくことを思い出させるものである。したがって、皮膚に効果的にハリを与え、皺及び/又は小皺の外観(appearance)を減少させることができる化粧品処方物に対する大きな需要がある。
【0004】
ある化粧品組成物は、皮膚にハリを与えるもしくは皺を減少させる成分として、植物、卵、ミルク、又は動物由来等の天然起源の物質を含む。例えば血清アルブミンは、皮膚にハリを与える効果が非常に高く、皺の外観を減少させるために使用されてきた。しかし、血清アルブミンは、使用感が良くない上に、皮膚上に見苦しい白い(while)膜を残す。
【0005】
またある化粧品組成物は、皮膚にハリを与える又は皺を減少させる成分として合成ポリマーを使用していた。例えば、米国特許第4,777,041号は、乾いたときに皺を埋めるゲル化可能な(gelable)親水性ポリウレタン及び沈殿シリカ増粘ゲル化剤(precipitated silica thickener gelling agent)を含む皺用トリートメント処方物について記載している。しかし、この処方物のポリウレタン及びシリカ成分は、それを広範な使用に適さないものにする様々な望ましくない特性を有する。
【0006】
したがって、上記従来の化粧品組成物もしくは処方物の欠点を持たない、好適な皺減少効果を提供し、且つ皮膚の外観を良くするために使用することができる、改良された化粧品組成物が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、皮膚上の小皺及び皺の外観を減少させるための局所用化粧品組成物であって、化粧品としてもしくは医薬として許容可能な担体中に1種以上のイオン交換系を含む上記組成物に関する。
【0008】
本発明はさらに、皮膚上の小皺及び皺の外観を減少させる方法であって、たるんだもしくは皺のある皮膚に、本明細書中に記載の局所用化粧品組成物を適用する工程を含む、上記方法に関する。必須というわけではないが、好ましくは、この局所用組成物を、少なくとも1ヶ月の期間、週約1回〜1日約5回の頻度で、小皺もしくは皺のある又はたるんだ皮膚に絶えず適用する。
【0009】
本発明の他の態様及び目的は、以下の記載、実施例及び特許請求の範囲から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I.定義
本明細書を通して、「含む」という用語は、要素(element)または要素の群が、はっきり記載されたものに限定されるのではなく、追加的な要素を含むかもしれないし、含まないかもしれないことを意味する。
【0011】
II.イオン交換系
1種以上のイオン交換系を含む局所用化粧品組成物は、皮膚上の小皺及び皺の外観を減少させる上で、驚くべきそして予期しなかった効果を有することが分かった。たるんだもしくは皺のある皮膚にこの局所用化粧品組成物を適用して数分以内に、皮膚は顕著によりハリがあるように見え、小皺や皺は顕著により見えなくなる。
【0012】
アニオン交換系としては、例えば、固く結合した正電荷を持つ基及びゆるく結合した負イオンを含む不溶性もしくは難溶性(weakly soluble)物質が挙げられる。カチオン交換系としては、例えば、固く結合した負の電荷を持つ基及びゆるく結合した正イオンを含む不溶性もしくは難溶性物質が挙げられる。イオン種の流れを制限しない溶液中に不溶性イオン交換系を入れると、一般に「対イオン」と呼ばれるゆるく結合したイオンが、その溶液から取り込まれた同じ電荷のイオンと交換され得る。一般的に使用される対イオンとしては、塩化物(Cl-)及びナトリウム(Na+)イオンが挙げられる。
【0013】
イオン交換技術の中では、珪酸アルミニウム、合成樹脂、及び多糖類等のポリマー等の様々な材料がマトリックス自体として使用されてきた。本発明では、最終的な製品の化学組成及び意図する用途に応じて、化粧品としてもしくは医薬としての用途に適した多くのイオン交換系を使用することが可能である。しかし、局所適用のためには、イオン交換基質は、好ましくは高分子状(polymeric)であり、且つ水に対して不溶性である。この場合、好適な高分子物質は、架橋された高分子マトリックスの形態を有する。このようなマトリックスは、ポリスチレン、ポリアクリレート、及びポリメタクリレート等の1種以上の材料から作製することができる。これらは、例えばジビニルベンゼン等の架橋剤で架橋させることができる。また、架橋された高分子マトリックスは、デキストリンやプルランなどの天然の多糖類で作製することもできる。本出願では、架橋されたポリマーの方が、架橋されていないポリマーよりも安定しているため、好ましい。
【0014】
固く結合した帯電基に関して、カチオン交換系においては、フェノール性ヒドロキシル基、カルボキシル基、ホスホン酸基、及びスルホン酸基の使用が公知であり、中でも(強酸性の基である)スルホン酸基が最も好ましい。アニオン交換系においては、第三級アミノ基及び第四級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、第四級ピリジニウム基、第四級イミダゾリウム基、トリメチルアンモニウム基、及びポリエチレンアミン基等の脂肪族及び芳香族アミノ基の使用が公知であり、中でも(強塩基性の基である)第四級アンモニウム基及び第四級ピリジニウム基が最も好ましい。
【0015】
固く結合した帯電基の仕様(specifics)は、イオン交換系の幾つかの特性を決定する。これらには、タイプ(カチオン型かアニオン型か)、イオン強度(イオン交換基質上の結合部位についてゆるく結合した対イオンが競合する度合い)、及びイオン交換容量(乾燥イオン交換体のグラムあたりの帯電基の数)が含まれる。一般に、より弱い対イオンを用いると、より高い交換容量が得られる。溶液の温度及びpH、そして基質の多孔率、基質の架橋度合い(架橋度合いが大きいほど一般には容量が低いことを意味する)、ならびに基質上の結合部位へのアクセスに影響を及ぼし得る他のあらゆる要因を含む、他の多くの要因も、交換プロセスに影響を及ぼす。
【0016】
これから分かるとおり、本発明において、皺を減少させる効果を最大限にするために、十分に大きなイオン交換容量(すなわち十分に弱いイオン強度)を有する1種以上のイオン交換ポリマー系を使用することが望ましい。例えば、本発明において、有効なイオン交換系を含む商業的に実現可能な組成物は、乾燥ポリマー1gあたり0.1〜6.0mmolのイオン交換容量を有し得る。さらに、乾燥ポリマー1gあたり0.3〜4.0mmolがより好ましい。イオン交換ポリマーの水分含有量は、イオン交換ポリマーの乾燥質量に対して、好ましくは0〜90質量%、より好ましくは0.1〜50質量%である。
【0017】
本発明を実施するために特に好適なアニオン交換ポリマーとしては、複合アミン官能基を支持する、ジビニルベンゼンで架橋させたポリアクリル酸マトリックスなどの高容量の弱塩基性アニオン交換樹脂が挙げられる。このような樹脂は、Purolite Company(Bala Cynwyd, PA)よりPurolite(登録商標)A830として市販されている。あるいは、ジエチルアミノエチル官能基を支持する架橋されたデキストランマトリックスなどの弱塩基性アニオン交換樹脂も特に好ましい。このような樹脂は、GE Healthcare(Waukesha, WI)よりDEAEセファデックス(商品名)A-25として市販されている。
【0018】
本発明を実施するために特に好適なカチオン交換ポリマーとしては、カルボン酸官能基を支持する、ジビニルベンゼンと架橋させたポリメタクリル酸マトリックスなどの高容量の弱酸性カチオン交換樹脂が挙げられる。このような樹脂は、Purolite Company(Bala Cynwyd, PA)よりPurolite(登録商標)C115として市販されている。あるいは、カルボキシメチル官能基を支持する架橋されたデキストランマトリックスなどの弱酸性カチオン交換樹脂も特に好ましい。このような樹脂は、GE Healthcare(Waukesha, WI)よりCMセファデックス(商品名)C-25として市販されている。
【0019】
本発明の局所用化粧品組成物におけるイオン交換ポリマーの含有量は、最終的な組成物全体の重量に対して好ましくは1〜99%、より好ましくは10〜90%である。水に不溶性であるイオン交換ポリマーは、化粧品としてもしくは医薬として許容可能な担体中に簡単に分散させることができるくらい十分小さな粒子サイズを有する中空(hollow)又は中実(solid)のミクロ化した粒子またはマイクロスフェアとして提供され得る。皮膚上での化粧品のカバー力(coverage)及び感触(feel)も粒子サイズに左右され得る。粒子サイズが大きすぎると、使用者にはマイナスの感触をもたらし得る。好ましくは、イオン交換ポリマーの粒子もしくはマイクロスフェアは、最も寸法が大きなところで平均サイズが約1〜150μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜50μmであるものとして特徴付けられる。例えば、粒子が球状もしくはほぼ球状である場合、最も大きな粒子寸法は直径である。粒子がプレート状である場合、最も大きな寸法は、長軸の長さである。また、粒子の最も大きな寸法の分布が複合的(multi-modal)である場合、好ましくは各モードのピークは、1〜150μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜50μmの範囲内である。
【0020】
III.動作原理
同時に係属中の出願(US2010-0030058号)(本明細書中に参照により全て組み込まれる)において、年齢に伴う皮膚の皺は、内生的なしわ電場(endogenous wrinkle electric field)によって特徴付けることができることが示されている。さらに、皺の進行過程は、しわ電場の変化によって特徴づけることができる。このように、第’058号は、内生的なしわ電場に関連した新しい種類の皺診断を開示している。また、新しい種類の皺トリートメント、すなわちしわ電場を直接操作することによって皺に影響を及ぼすトリートメントが開示された。どの皺用トリートメントの結果も、内生的なしわ電場において測定可能な変化を示すであろうと開示されている。第’058号発明の主な目的は、皺の電場極性を反転させる傾向があるトリートメントを皺に適用することによって皺をトリートメントすることである。しかし、参考文献第’058号は、本発明の局所用皺トリートメント製品を開示していなかった。
【0021】
どれか1つの理論によって限定したいわけではないが、本発明の皺を減少させる組成物において、少なくとも2つの関連しているが別個の作用メカニズムが働いていると思われる。まず第1に、ヒトの皮膚(特に皺のある皮膚)の表面に適用したときに、本発明の組成物は、皮膚の表面に静電荷、及び皮膚の奥深くまで伸びる電位を生じるようである。参考文献第’058号が示唆するように、電位を形成させて内生的なしわ電場を操作することができる。
【0022】
第2に、参考文献第’058号に開示されているものとは別に、皮膚の表面にイオン交換系を付着させることにより、上皮の上部層の中でゆるく結合したイオンの濃度を人工的に上昇させる(すなわち、上皮の上部層の中の純水の濃度を低下させると言うことができる)。上皮のこれらの層が半透膜として作用するので、結果的に浸透圧バランスが不均等になる。上皮のこれらの層が半透膜として作用するので、上皮のこれらの層は、水は通過させるが、イオン交換系のイオンは通過させない。水分子が上皮のより深い層からより表面に近い層へと移動すると、浸透圧のバランスが回復する。上皮のより表面に近い層の水分含有量が増大すれば、皮膚の中の目に見える小皺や皺の数及び/又は程度(severity)の減少として、ならびに皮膚にハリを与える効果として、外観にはっきりと表れる。局所適用してすぐ、又は数分内に、外見上皮膚の皺は少なくなる。この効果は、1時間〜数時間持続し、再度適用すればその効果を更に長続きさせることができる。
【0023】
局所用組成物が浸透圧のより大きな不均衡を生み出せば、皺を減少させる効果はより大きくなると期待される。浸透圧のより大きな不均衡は、対イオンがイオン交換マトリックスに非常に弱く保持されている場合(イオン交換系がより大きなイオン交換容量を有するとき)に得られる。従って、より強いイオン交換系よりもより弱いイオン交換系の方が好ましい。また、浸透圧は束一的な性質であるので、対イオンが正電荷を持っているか負電荷を持っているかは重要ではない。いずれにせよ、水は、純水濃度が比較的高いより深い層から、対イオンによって純水濃度が低くなったより表面に近い層へと流れると考えられる。しかし、本発明者らは、対イオンによって作り出された電場によって上皮の透過性に変化が起こり、それによって水の流れに対する上皮の透過性がより高くなる、という仮説も立てている。もしそうであれば、対イオン上の電荷は、本明細書中に記載される浸透の全体的なプロセスに関係があると思われる。
【0024】
IV.任意成分
本発明の組成物は、本明細書中に記載されるものを含む様々な任意成分(ただしこれらに限定されない)を含み得る。一般に、任意の特定の成分又は成分の組合せは、その成分が皮膚に適用された交換イオンに対する皮膚の反応を完全に打ち消すものでない限り、本発明の組成物の中に使用することができる。
【0025】
組成物中の水に関して、組成物は、エマルジョン、ゲル、溶液、懸濁液、粉末、又は無水物であってもよい。油中水及び/又は水中油型エマルジョンが適しており、組成物全体の重量に対して水を約0.01〜99%、好ましくは約0.5〜95%、より好ましくは約1〜90%、及び組成物全体の重量に対して油を約0.01〜98%、好ましくは約0.1〜95%、より好ましくは約0.5〜90%含み得る。溶液又はゲル形態で存在する場合、組成物は組成物全体の重量に対して約0.01〜99%の水及び他の任意成分を含み得る。粉末又は無水物形態で存在する場合、組成物は、実質的に水を含まない、すなわち水分含有量は組成物全体の重量に対して5%未満、より好ましくは1%未満である。上記のように浸透圧の効果を最大限にしたい場合は、組成物中の遊離水の量を低く(例えば組成物全体の重量に対して0〜50%、より好ましくは約0〜20%、さらに好ましくは約0〜10%、最も好ましくは約0〜5%に)維持することが好ましい。この意味で、しばしば無水組成物が好ましい。
【0026】
本発明の局所用化粧品組成物は更に、1以上のスキンケア有効成分(skin care active ingredints)もしくはスキンケア剤(skin care actives)を含み得る。本明細書中において「スキンケア有効成分」もしくは「スキンケア剤」という用語は、局所用組成物の物理的特長を単に改善するというよりは、皮膚に恩恵をもたらす物質をさす。例えば、局所用組成物は、フリーラジカルを除去(scavenging)し、脂質過酸化反応を防ぎ、リポゲナーゼ(lipogenase)を不活化し、望ましくない酵素活性を阻害し、そしてコラーゲン合成を刺激することによって紫外線や年齢による老化から皮膚を守ることができる、アンチエージング剤を含み得る。また局所用組成物は、抗にきび剤、酵素阻害剤、コラーゲン刺激剤、日焼け止め剤、抗酸化剤、角質剥離剤(exfoliants)、年齢によるしみ(age spot)や角質や皺を根絶するための剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗菌剤、抗酵母剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、ふけ止剤、抗皮膚炎剤、鎮痒剤、鎮吐剤、抗炎症剤、抗角化症剤(antihyperkeratolytic agents)、制汗剤、抗乾癬剤、抗脂漏剤、抗皺剤、抗ヒスタミン剤、美白剤、脱色素剤、ビタミン類、コルチコステロイド、セルフタンニング剤、ホルモン、レチノール酸やレチノール等のレチノイド、循環器官用外用薬(topical cardiovascular agents)、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール(miconozol)、グリセオフルビン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、 プラモキシン、リドカイン、プロカイン、メピバカイン、モノベンゾン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、クリンダマイシン、メクロサイクリン、ハイドロキノン、ミノサイクリン、ナプロキセン、イブプロフェン、テオフィリン、クロモリン、アルブテロール、局所用ステロイド(例えばヒドロコルチゾン、21-酢酸ヒドロコルチゾン、17-吉草酸ヒドロコルチゾン、及び17-酪酸ヒドロコルチゾン)、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、過酸化ベンゾイル、クロタミトン、プロプラノロール、プロメタジン、ビタミンAパルミテート、ビタミンEアセテートならびにこれらの混合物を含み得る。
【0027】
本出願の局所用化粧品組成物はさらに、化粧品として許容可能なビヒクルを含む。本発明の目的では、化粧品として許容可能なビヒクルは、上記有効成分を、局所に適用することができるクリーム、ゲル、エマルジョン、液体、懸濁液、オイル、ローション、ペースト、または粉末へと製剤化するために使用することができる物質である。本出願の局所用組成物へと製剤化することができる物質としては、保湿剤、収斂剤、キレート剤、界面活性剤、エモリエント、保存剤、安定剤、増粘剤、湿潤剤、顔料等が挙げられるがこれらに限定されない。必ずしもというわけではないが、好ましくは、このようなビヒクルは、皮膚の表面上に保護層を形成するのを助けるものである。ビヒクルは、本発明の局所用組成物の中に、局所用組成物全体の重量に対して約1%〜約99.9%、好ましくは約50%〜約99.5%、より好ましくは約70%〜約99%、最も好ましくは約80%〜約90%の量で存在し得る。
【0028】
本発明の局所用化粧品組成物を製剤化するために使用することができる任意成分は、米国特許出願第61/238,783号に記載されており、当該出願は、本明細書中に参照により全て組み込まれる。
【0029】
V.組成物の形態
本発明で有用な組成物のタイプとしては、皮膚の外観をより滑らかにしより若々しくするためのモイスチャライザー、セーラム、ローション、トナー、クリーム、ゲルなどが挙げられる。また組成物は、皮膚の外観を強調するためのチーク(blush)、アイシャドー、口紅、リップグロス、ファンデーション、コンシーラ等のカラー化粧品組成物も含み得る。これらの組成物は、スキンクリームまたはローション、トナー、ゲル、チーク、アイシャドー、ファンデーション、コンシーラなどの形態であってもよい。好適には、チーク、アイシャドー、ファンデーション、コンシーラ等のカラー化粧品組成物である。
【0030】
好適なファンデーションメークアップ、コンシーラ、チーク又はアイシャドー組成物は、一般には粉末状の無水形態または液体のエマルジョン形態であり、そして水、油、顔料、及び組成物がエマルジョン形態である場合は任意で少なくとも1種の界面活性剤を本明細書中に記載する範囲のパーセンテージで含有する。
【0031】
好適なリップトリートメント組成物としては、口紅、リップグロス、リップバーム等が挙げられる。このような組成物は、本明細書中に記載される量の水、オイル及び顔料を含む水性エマルジョン形態であってもよい。リップトリートメント組成物は、本明細書中に記載される量の顔料、油、及び油相構造化剤(oil phase structuring agent)を含む無水形態である場合が多い。
【0032】
スキンクリーム及びローションは、好ましくは、本明細書中に記載される範囲の量の水及びオイルを含むエマルジョン形態である。本明細書中に記載されるイオン交換系がこのような組成物中に組み込まれると、組成物は、皮膚の皺、小皺、または窪み(depression)の見た目を減少させるか、あるいは皮膚の外観を化粧により改善するのに高い効果を示す。
【0033】
VI. 方法
また本発明は、小皺及び皺を有する皮膚に、化粧品としてもしくは医薬として許容可能な担体中にイオン交換ポリマーを含む局所用化粧品組成物を適用することによって、老化した皮膚の外観を改善するための方法、特に皮膚の小皺及び皺の外観を減少させるための方法も含む。このような局所用組成物は、目、頬、首及び顔の他の領域に適用して皮膚のたるみを減少させ、小皺及び皺の外観を減少させることができる。また組成物は、たるんだ又は皺のある皮膚を有する身体の他の領域にも適用することができる。本発明の組成物は、即効的且つ目に見える、皮膚にハリを与える効果及び皺を減少させる効果を提供する。これらの組成物は、小皺及び深くて目立つ皺の両方を減少させることにおいて有効である。さらに、本発明の組成物は、比較的長時間皮膚の上に残って長時間皮膚に恩恵をもたらし得る。これは、交換イオンが皮膚の表面上に置かれると静的性質を示すことによるものであると考えられる。
【0034】
また本発明の局所用化粧品組成物は、上皮中の水分が不十分であることに伴う他の皮膚障害を治療または調整する(regulating)ために使用することもできる。また、本発明の局所用化粧品組成物は、他のタイプの皮膚障害を予防する、遅らせる、阻止する(arresting)もしくは治療するために有効な1種以上の成分を加えることによって、このような他の皮膚障害を治療する又は調整するために使用することもできる。例えば、本発明の局所用化粧品組成物は、乾燥肌、乾燥症、ふけ、角化症、乾癬、湿疹、年齢によるしみ、黒子、肝斑、傷ついた皮膚(blemished skin)、色素過剰、過角化症、炎症性皮膚疾患、酒さ及び年齢に伴う皮膚の変化を調整するために使用することができる。
【0035】
本発明の適用方法は、最終的に意図する組成物の用途に応じて異なる。局所用化粧品組成物は、たるんだもしくは皺のある皮膚に局所適用することもできるし、あるいは、使用者の身体全体に適用することもできる。本発明の局所用化粧品組成物は、即効的な皺を減少させる効果及び保湿効果(典型的には数分内に観察される)を得るために、必要に応じて皮膚に適用してもよい。あるいは、局所用化粧品組成物は、予め決められたスケジュールに従って繰り返し皮膚に適用することができる。1回に適用される局所用化粧品組成物の量、適用領域、適用期間及び適用頻度は、使用者の具体的なニーズに応じて様々である。例えば、局所用化粧品組成物は、少なくとも1ヶ月間の間、1週間に約1回〜1日あたり約5回の頻度で適用することができる。他の例では、局所用化粧品組成物は、約6ヶ月間の間、1週間に約3回〜1日あたり約3回の頻度で、好ましくは1日約1回又は2回の頻度で、適用される。
【0036】
本発明の局所用化粧品組成物は、モイスチャライザー、ファンデーション、メークアップ等を適用する前に、清潔な皮膚に直接適用することができる。あるいは、本発明の局所用化粧品組成物は、モイスチャライザーの上から、場合によってはファンデーション及び/又はメークアップの上から適用することができる。他の局所用組成物と併用して使用する場合は、他の局所用組成物が、皮膚に適用された交換イオンに対する皮膚の反応を阻害しないように、注意を払わなければならない。
【0037】
本発明を好適な実施形態に則して記載してきたが、記載した特定の形態に本発明の範囲を限定することを意図しているわけではなく、反対に、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲の中に含まれ得るこのような代替物、修正物、及び同等物を網羅することを意図している。
【0038】
VII. 実施例
以下に挙げる本発明の組成物の実施例は、例示目的にすぎない。
【実施例1】
【0039】
中性クリームベース
【表1】

【実施例2】
【0040】
正電荷を持つクリーム
【表2】

【0041】
DEAEセファデックスは、その官能基としてジエチルアミノエチルを有する弱塩基性アニオン交換体である。
【実施例3】
【0042】
負電荷を持つクリーム
【表3】

【0043】
CMセファデックスは、その官能基としてカルボキシメチルを有する弱酸性カチオン交換体である。
【実施例4】
【0044】
中性クリームベース
【表4】

【実施例5】
【0045】
負電荷を持つクリーム
【表5】

【0046】
Purolite A830MRは、機能性(functional)イオンとして遊離塩基を有する弱塩基性ポリスチレンアニオン型交換体である。
【実施例6】
【0047】
正電荷を持つクリーム
【表6】

【0048】
Purolite C115HMRは、その機能性イオンとしてH+を有する弱酸性ポリスチレンカチオン型交換体である。
【実施例7】
【0049】
電気極性の評価
実施例1〜6の組成物の電気極性を評価するために、電池エレメント(voltaic element)を以下のように作製した。測定しようとする組成物のサンプル30g及び蒸留水30gを、別々のガラスビーカーに入れた。テストサンプル及び蒸留水を、直径約1mm、長さ2インチ、抵抗0.01-5オームを有するNi-Crイオンスチールワイヤに電気的に接続した。テストサンプル及び蒸留水は、電池エレメントの電極の働きをする。
【0050】
この電池エレメントの電位及び極性は、従来の電池の電位及び極性の測定法に似た方法で、即ち電圧計(Instek Corpotarion USA製のデジタルマルチメーターモデルGDM 8034)を電池エレメントの電極に接続することによって、測定した。サンプルが汚れないように、電圧計の電極を、直径約0.5mm、抵抗約0.01-1オームのプラチナワイヤを介してテストサンプル及び蒸留水に接続した。これらの測定結果は以下の通りである。
【表7】

【0051】
このように、本発明の組成物は、皮膚に適用すると、皮膚に浸透して本来の皮膚の電位を調節する静電位を生じることができる。加えられたこの電位は、期待する恩恵を得るために皮膚の皺の電場を調節するために使用することができる。及び/又は本発明の組成物は、皮膚に適用されると、皮膚のより低い層から皮膚のより高い層へと水を浸透させ、おそらく、浸透率に関して上皮の透過性を変えることができる。いずれにせよ、観察される効果は、皺の減少及び皮膚にハリを与える効果を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の上の小皺及び皺の外観(appearance)を減少させる局所用化粧品組成物であって、化粧品として又は医薬として許容可能な担体中に1種以上のイオン交換ポリマーを含む、上記組成物。
【請求項2】
前記イオン交換ポリマーの少なくとも1種がアニオン交換ポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記アニオン交換ポリマーが、ジビニルベンゼンで架橋され、アミン官能基を支持するポリアクリル酸マトリックスを含む弱塩基性アニオン交換ポリマーである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記アニオン交換ポリマーが、ジエチルアミノエチル官能基を支持する架橋されたデキストランマトリックスを含む弱塩基性アニオン交換ポリマーである、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
前記イオン交換ポリマーの少なくとも1種がカチオン交換ポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記カチオン交換ポリマーが、ジビニルベンゼンで架橋され、カルボン酸官能基を支持するポリメチルアクリル酸マトリックスを含む弱酸性カチオン交換ポリマーである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記カチオン交換ポリマーが、カルボキシメチル官能基を支持する架橋されたデキストランマトリックスを含む弱酸性カチオン交換ポリマーである、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
皮膚上の小皺及び皺の外観を減少させる方法であって、皺のある皮膚に、化粧品として又は医薬として許容可能な担体中に1種以上のイオン交換ポリマーを含む局所用化粧品組成物を適用する工程を含む、上記方法。
【請求項9】
前記イオン交換ポリマーの少なくとも1種がアニオン交換ポリマーである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記アニオン交換ポリマーが、ジビニルベンゼンで架橋され、アミン官能基を支持するポリアクリル酸マトリックスを含む弱塩基性アニオン交換ポリマーである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記アニオン交換ポリマーが、ジエチルアミノエチル官能基を支持する架橋されたデキストランマトリックスを含む弱塩基性アニオン交換ポリマーである、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記イオン交換ポリマーの少なくとも1種がカチオン交換ポリマーである、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記カチオン交換ポリマーが、ジビニルベンゼンで架橋され、カルボン酸官能基を支持するポリメチルアクリル酸マトリックスを含む弱酸性カチオン交換ポリマーである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記カチオン交換ポリマーが、カルボキシルメチル官能基を支持する架橋されたデキストランマトリックスを含む弱酸性カチオン交換ポリマーである、請求項12記載の方法。

【公表番号】特表2013−503820(P2013−503820A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527091(P2012−527091)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/047287
【国際公開番号】WO2011/028696
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】