説明

イオン交換樹脂の処理方法、イオン交換樹脂細粒化システム、除染装置、原子力発電所、除染装置の改造方法、および、原子力発電所の改造方法

【課題】イオン交換樹脂の移送性または貯蔵性を改良する。
【解決手段】原子力発電所で用いられる除染装置や復水脱塩装置などから取り出され使用済みの粒状イオン交換樹脂を、冷却水が循環するジャケット20を備えた処理タンクで受け取り、使用済み粒状イオン交換樹脂を攪拌機15で攪拌し、乳化分散機14でエマルジョン化して細粒化する。必要に応じて、エマルジョン化したイオン交換樹脂は再び再注入配管23で処理タンク12に再注入される。十分に細粒化されたイオン交換樹脂は排出配管25から、粉末イオン交換樹脂貯蔵タンクなどに送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂の処理方法、イオン交換樹脂細粒化システム、除染装置、原子力発電所、除染装置の改造方法、および、原子力発電所の改造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の原子炉をはじめとする機器は、蓄積した放射性物質を除去するために除染工事が必要となる。この除染工事に使用する除染装置には、溶解金属イオンや除染剤の回収を目的として粒状イオン交換樹脂を充填した脱塩装置が付帯している。除染工事が終了すると粒状イオン交換樹脂は脱塩装置から抜き出され、放射性の使用済み粒状イオン交換樹脂として専用の貯蔵用タンクに移送される。タンクに移送された使用済み粒状イオン交換樹脂は最終の処理が行われるまで長期にわたり貯蔵される。
【0003】
また、原子力発電所においては、種々の水処理装置がありイオン交換樹脂が多用されている。たとえば、復水浄化系に設置された復水脱塩装置には粒状イオン交換樹脂が充填され、復水中のイオン成分の除去が行われている。また、原子炉冷却材浄化系においては、粉末状のイオン交換樹脂を用いて炉水中のクラッド(腐食生成物)とイオン成分の両者の除去を行っている。
【0004】
粒状イオン交換樹脂にあっては、イオン交換能力がなくなった時点で薬剤(陽イオン交換樹脂は硫酸、陰イオン交換樹脂は水酸化ナトリウム)による再生操作が実施される。再生を繰返すことでイオン交換樹脂はイオンに対する捕集能力が低下し、最終的には脱塩装置から抜き出され専用の貯蔵タンクで保管される。このような使用済みの粒状および粉末状イオン交換樹脂は、その内部にたとえばCo-60といった放射性核種を捕集しているため、放射性物質として取扱われる。
【0005】
粒状および粉末状イオン交換樹脂は分解などの処理が難しいため、殆どの使用済みイオン交換樹脂は長期間タンクに貯蔵されている。このような使用済みイオン交換樹脂の処理法としては、セメント固化(たとえば特許文献1参照)、灰化(たとえば特許文献2参照)、および超臨界酸化分解(たとえば特許文献3参照)などの方法が知られている。
【0006】
また、粒状イオン交換樹脂の中間貯蔵または最終貯蔵を可能とするため、粒状イオン交換樹脂を粉砕化して膨潤性を低下させる方法(たとえば特許文献4参照)、均一固化体を製作するために粒状イオン交換樹脂を粉末化する方法(たとえば特許文献5参照)、放射能を帯びた廃イオン交換樹脂を乾燥状態で安定貯蔵するために粉砕化する方法(たとえば特許文献6参照)などが知られている。
【特許文献1】特開平9−54195号公報
【特許文献2】特開平10−232300号公報
【特許文献3】特開平10−204206号公報
【特許文献4】特表2001−509268号公報
【特許文献5】特開昭54−85253号公報
【特許文献6】特開昭63−29300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
原子力発電所の使用済みイオン交換樹脂用貯蔵タンクは大きく2つに分類される。1つは粒状イオン交換樹脂を貯蔵するためのタンクで、他は粉末イオン交換樹脂を貯蔵するためのタンクである。除染工事から発生する使用済み粒状イオン交換樹脂は、現在、除染工事専用のタンクに移送しているが、除染工事の回数が増えるために専用タンクの貯蔵量が限界に達し、他の使用済みイオン交換樹脂貯蔵タンクに移送する必要が生じる可能性がある。将来的には、空き容量の大きい使用済み粉末イオン交換樹脂貯蔵タンクに移送するという作業も想定される。この場合、粒状のままでは受け入れができないという課題がある。
【0008】
除染工事が終了すると、除染装置に付帯する脱塩装置に充填された粒状イオン交換樹脂は抜き出され、専用の使用済み粒状イオン交換樹脂貯蔵タンクに移送される。使用済み粒状イオン交換樹脂は水と一緒にスラリー状で移送されるが、貯蔵タンクまでの移送距離が長い場合、バルブやエルボなど固形物が溜まり易い部位があるために途中で使用済み粒状イオン交換樹脂が沈降堆積し、作業員の被曝が大きくなる等の課題がある。
【0009】
将来的には粒状および粉末イオン交換樹脂は酸化分解処理や焼却処理などの減容処理が必要となるが、これらの処理を行う場合、粒状イオン交換樹脂では装置へのポンプ移送が難しいことや粒状であるために処理(分解)時間が長い等の課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、イオン交換樹脂の移送性または貯蔵性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、使用済みイオン交換樹脂を細粒化する使用済みイオン交換樹脂の処理方法において、前記使用済みイオン交換樹脂を処理タンクに注入する注入工程と、前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌工程と、前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、使用済みイオン交換樹脂を細粒化する使用済みイオン交換樹脂細粒化システムにおいて、処理タンクと、前記使用済みイオン交換樹脂を前記処理タンクに注入する注入配管と、前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌機と、前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散機と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、原子力発電所内で行われる除染工事に用いられる除染装置において、イオン交換樹脂が充填されている脱塩装置と、処理タンク、前記脱塩装置から取り出された使用済みイオン交換樹脂を前記処理タンクに注入する注入配管、前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌機、および、前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散機を備えて、前記使用済みイオン交換樹脂を細粒化するイオン交換樹脂細粒化システムと、前記イオン交換樹脂細粒化システムから前記使用済みイオン交換樹脂を貯蔵する貯蔵タンクに延びる排出配管と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、原子力発電所において、原子炉と、前記原子炉で発生した蒸気によって駆動される発電タービンと、前記発電タービンを駆動した前記蒸気を、前記原子炉に供給される冷却水へと凝縮する復水器と、イオン交換樹脂が充填されていて前記冷却水を浄化する水処理手段と、処理タンク、前記水処理手段から取り出された使用済みイオン交換樹脂を前記処理タンクに注入する注入配管、前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌機、および、前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散機を備えて、前記使用済みイオン交換樹脂を細粒化するイオン交換樹脂細粒化システムと、前記イオン交換樹脂細粒化システムから前記使用済みイオン交換樹脂を貯蔵する貯蔵タンクに延びる排出配管と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、イオン交換樹脂を充填した既存の脱塩装置、および、前記脱塩装置から取り出される使用済みイオン交換樹脂を貯蔵する貯蔵タンクに前記脱塩装置から延びる既存の排出配管を備えた除染装置の改造方法において、前記排出配管の一部を切断する工程と、処理タンク、前記使用済みイオン交換樹脂を前記処理タンクに注入する注入配管、前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌機、および、前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散機とを備えて、前記使用済みイオン交換樹脂を細粒化するイオン交換樹脂細粒化システムを設置する工程と、切断された前記排出配管の前記脱塩装置側に前記注入配管を接続する工程と、切断された前記排出配管の前記貯蔵タンク側に前記乳化分散機を接続する工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、イオン交換樹脂が充填されて原子炉の冷却水を浄化する既存の水処理手段、および、前記脱塩装置から取り出される使用済みイオン交換樹脂を貯蔵する貯蔵タンクに前記脱塩装置から延びる既存の排出配管を備えた原子力発電所の改造方法において、前記排出配管の一部を切断する工程と、処理タンク、前記使用済みイオン交換樹脂を前記処理タンクに注入する注入配管、前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌機、および、前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散機とを備えて、前記使用済みイオン交換樹脂を細粒化するイオン交換樹脂細粒化システムを設置する工程と、切断された前記排出配管の前記水処理手段側に前記注入配管を接続する工程と、切断された前記排出配管の前記貯蔵タンク側に前記乳化分散機を接続する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、イオン交換樹脂の移送性または貯蔵性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る使用済みイオン交換樹脂の処理方法およびイオン交換樹脂細粒化システムの実施形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
[実施形態1]
図2は、本発明に係る実施形態1の使用済みイオン交換樹脂の処理の流れを示すブロック図である。
【0020】
原子力発電所内で行われる除染工事においては、除染装置1が用いられる。除染装置1にはイオン交換樹脂塔2が含まれており、このイオン交換樹脂塔2には、粒状のイオン交換樹脂が充填されている。除染工事が終了した後などに、粒状の使用済みイオン交換樹脂は、イオン交換樹脂塔2から配管4を介して使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11に送られる。使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11は、使用済みの粒状のイオン交換樹脂を粉末状のイオン交換樹脂に細粒化する。細粒化された使用済みのイオン交換樹脂は、使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11から、排出配管25を介して粉末イオン交換樹脂貯蔵タンク10に排出される。
【0021】
図1は、本発明に係る実施形態1の使用済みイオン交換樹脂細粒化システムのブロック図である。
【0022】
使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11は、処理タンク12を有している。除染装置1などから排出される粒状の使用済みイオン交換樹脂は、まず処理タンク12に受け入れられる。この処理タンク12の周囲はジャケット20で囲まれていて、ジャケット20には冷却装置13から送られる冷却水が循環している。ジャケット20と冷却装置13の間は、冷却水配管21で接続されている。
【0023】
処理タンク12の底部は、取り出し配管24を介して乳化分散機14に接続されている。乳化分散機14はポンプ機能も有している。乳化分散機14には、粉末イオン交換樹脂貯蔵タンク10まで延びる排出配管25が接続されている。排出配管25の途中には、切り替えバルブ26が取り付けられていて、切り替えバルブ26には、処理タンク12に延びる再注入配管23が接続されている。
【0024】
また、使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11には、処理タンク12に蓄えられたものを攪拌するための攪拌機15が取り付けられている。攪拌機15は、たとえば処理タンク10の内部に位置するプロペラとそのプロペラを回転させるためのモータなどを有している。
【0025】
なお、使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11を除染装置1に組み込んでもよい。
【0026】
除染装置1から排出される粒状の使用済みイオン交換樹脂は、まず、処理タンク12に受け入れられる。処理タンク12に受け入れる使用済みイオン交換樹脂は、スラリー状である。したがって、そのまま放置すると比重の大きいイオン交換樹脂が沈降する。そこで、攪拌機15によって処理タンク12に蓄えられたスラリーを攪拌し、スラリー状に保つようになっている。
【0027】
乳化分散機14は水と油を高速に混合してエマルジョン化する装置であり、スラリー状のイオン交換樹脂は乳化分散機14に通すことで粉末イオン交換樹脂程度に細粒化する。また、乳化分散機14には、スラリーや液体を移送するポンプ機能があり、スラリー状のイオン交換樹脂は排出配管25に排出される。
【0028】
乳化分散機14を一度通すだけでは、十分に細粒化しない場合もある。その場合には、切り替えバルブ26によって、乳化分散機14を通ったイオン交換樹脂を含んだスラリーを、再び処理タンク12に戻し、再度攪拌し、乳化分散機14を通す。このような循環処理を適当な回数行うことによって、十分細粒化することができる。
【0029】
また、使用済みイオン交換樹脂を含んだスラリーの循環処理を続けると、乳化分散機14などからの入熱によってイオン交換樹脂を含んだスラリーの温度が上昇するため、処理タンク12を取り囲むジャケット20には冷却装置13によって冷却水が循環している。このように冷却水が循環することによって、処理タンク12内のイオン交換樹脂を含むスラリーの温度は約60℃以下に保たれるように調節される。約60℃以下にすることで、温度上昇による陰イオン交換樹脂のイオン交換基(トリメチルアミン)の蒸散を防ぐことができる。
【0030】
図3は、この使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11で細粒化したイオン交換樹脂の粒径分布を示すグラフである。
【0031】
図3で示すように、使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11で細粒化したイオン交換樹脂の粒径分布は、約100μmにピークを持ち、市販の粉末イオン交換樹脂の粒径分布と同様となる。
【0032】
本実施形態によれば、使用済みの粒状イオン交換樹脂を粉末イオン交換樹脂程度に細粒化することができるため、粒状イオン交換樹脂貯蔵タンクの空き容量がない場合に粉末イオン交換樹脂タンク10に移送することが可能となる。また、粒子径を小さくしたことで水への分散性が良くなり、ポンプによる移送が容易になり、長距離の移送も可能となる。
【0033】
[実施形態2]
図4は、本発明に係る実施形態2の使用済みイオン交換樹脂の処理の流れを示すブロック図である。
【0034】
本実施形態は、実施形態1の使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11を沸騰水型原子力発電所の復水脱塩装置8で生じる粒状の使用済みイオン交換樹脂の処理に適用したものである。
【0035】
沸騰水型原子力発電所において、原子炉5で発生する高温高圧の蒸気はタービン・復水器6で水に凝縮され、復水ろ過装置7および復水脱塩装置8で浄化された後、再度原子炉5に供給される。また、原子炉5に供給された水の一部は原子炉冷却水浄化装置9に送られて浄化された後、再度原子炉5に供給される。
【0036】
原子炉冷却材浄化装置9には粉末イオン交換樹脂が用いられていて、原子炉水に含まれるクラッド分とイオン成分が除去される。原子炉冷却材浄化装置9で使用された使用済みの粉末イオン交換樹脂は、粉末イオン交換樹脂貯蔵タンク10に排出される。
【0037】
復水脱塩装置8には、粒状のイオン交換樹脂が充填されていて、水中のイオン成分が除去される。復水脱塩装置8で長期間にわたって水浄化に使用された粒状のイオン交換樹脂は、粒状イオン交換樹脂貯蔵タンク3に排出される。復水脱塩装置8から排出され、粒状イオン交換樹脂貯蔵タンク3に貯蔵された粒状の使用済みイオン交換樹脂は、配管4を介して使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11に送られる。使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11で細粒化された使用済みのイオン交換樹脂は、排出配管25を介して粉末イオン交換樹脂貯蔵タンク10へ排出される。
【0038】
本実施形態によれば、使用済みの粒状イオン交換樹脂を粉末イオン交換樹脂程度に細粒化することができるため、粒状イオン交換樹脂貯蔵タンク3の空き容量がない場合に粉末イオン交換樹脂タンク10に移送することが可能となる。また、粒子径を小さくしたことで水への分散性が良くなり、ポンプによる移送が容易になり、長距離の移送も可能となる。
【0039】
[実施形態3]
本実施形態は、実施形態2の使用済みイオン交換樹脂の処理に酸化分解装置19による処理を追加したものである。
【0040】
図5は、本発明に係る実施形態3の使用済みイオン交換樹脂の処理の流れを示すブロック図である。
【0041】
復水脱塩装置8から排出された使用済みの粒状イオン交換樹脂は粒状イオン交換樹脂貯蔵タンク3に排出されて長期間貯蔵される。この使用済みの粒状イオン交換樹脂は酸化分解装置19に移送する前に、使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11で粉末イオン交換樹脂程度に細粒化される。
【0042】
図6は、実施形態3の使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11によって細粒化されたイオン交換樹脂の粒径分布(点線30で示す)と市販の粉末イオン交換樹脂の粒径分布(実線31で示す)とを比較して示すグラフである。図に示すように、使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11によって、イオン交換樹脂の粒径分布を市販の粉末イオン交換樹脂よりも小さくすることができる。
【0043】
このように前処理装置として使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11を用いて、細粒化された使用済みイオン交換樹脂を酸化分解装置19に移送するため、ポンプによる移送が容易になる。また、酸化分解に要する反応時間も短縮することができる。
【0044】
[実施形態4]
本実施形態は、実施形態1の使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11を沸騰水型原子力発電所の原子炉冷却材浄化装置9で生じる粉末状の使用済みイオン交換樹脂の処理に適用したものである。
【0045】
図7は、本発明に係る実施形態4の使用済みイオン交換樹脂の処理の流れを示すブロック図である。
【0046】
沸騰水型原子力発電所において、原子炉冷却材浄化装置9から排出され、粉末イオン交換樹脂タンク10に貯蔵された粉末状の使用済みイオン交換樹脂を、使用済みイオン交換樹脂処理システム11によって処理する。処理されてさらに細粒化された粉末状の使用済みイオン交換樹脂は、酸化分解装置19に移送されて、処理される。
【0047】
このように前処理装置として使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11を用いて、細粒化された使用済みイオン交換樹脂を酸化分解装置19に移送するため、ポンプによる移送が容易になる。また、酸化分解に要する反応時間も短縮することができる。
【0048】
なお、以上の説明は単なる例示であり、本発明は上述の各実施形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。たとえば、復水脱塩装置8や原子炉冷却材浄化装置9以外のイオン交換樹脂を用いている水処理手段から排出されるイオン交換樹脂の処理に使用済みイオン交換樹脂細粒化システム11を用いてもよい。また、各実施形態の特徴を組み合わせて実施することもできる。さらに、使用済みイオン交換樹脂細粒化システムを備えていない除染装置や原子力発電所を改造して、既存の除染装置や原子力発電所に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る実施形態1の使用済みイオン交換樹脂細粒化システムのブロック図である。
【図2】本発明に係る実施形態1の使用済みイオン交換樹脂の処理の流れを示すブロック図である。
【図3】本発明に係る実施形態1の使用済みイオン交換樹脂細粒化システムにより細粒化されたイオン交換樹脂の粒子形分布の例を示すグラフである。
【図4】本発明に係る実施形態2の使用済みイオン交換樹脂の処理の流れを示すブロック図である。
【図5】本発明に係る実施形態3の使用済みイオン交換樹脂の処理の流れを示すブロック図である。
【図6】本発明に係る実施形態3の使用済みイオン交換樹脂細粒化システムによって細粒化されたイオン交換樹脂の粒径分布と市販の粉末イオン交換樹脂の粒径分布とを比較して示すグラフである。
【図7】本発明に係る実施形態4の使用済みイオン交換樹脂の処理の流れを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
1…除染装置、2…イオン交換樹脂塔、3…粒状イオン交換樹脂貯蔵タンク、4…配管、5…原子炉、6…タービン・復水器、7…復水ろ過装置、8…復水脱塩装置、9…原子炉冷却材浄化装置、10…粉末イオン交換樹脂貯蔵タンク、11…使用済みイオン交換樹脂細粒化システム、12…処理タンク、13…冷却装置、14…乳化分散機、15…攪拌機、16…使用済み粒状イオン交換樹脂スラリー、19…酸化分解装置、20…ジャケット、21…冷却水配管、24…取り出し配管、25…排出配管、26…切り替えバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みイオン交換樹脂を細粒化する使用済みイオン交換樹脂の処理方法において、
前記使用済みイオン交換樹脂を処理タンクに注入する注入工程と、
前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌工程と、
前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散工程と、
を有することを特徴とするイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項2】
前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を所定の温度以下に保つ温度保持工程を有することを特徴とする請求項1記載のイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項3】
前記乳化分散工程でエマルジョン化された前記使用済みイオン交換樹脂を再び前記処理タンクに注入する再注入工程を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項4】
前記乳化分散工程でエマルジョン化された前記使用済みイオン交換樹脂を貯蔵タンクに排出する排出工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか記載のイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項5】
前記乳化分散工程でエマルジョン化された前記使用済みイオン交換樹脂を前記貯蔵タンクに排出する前に酸化分解する酸化分解工程を有することを特徴とする請求項4記載のイオン交換樹脂の処理方法。
【請求項6】
使用済みイオン交換樹脂を細粒化するイオン交換樹脂細粒化システムにおいて、
処理タンクと、
前記使用済みイオン交換樹脂を前記処理タンクに注入する注入配管と、
前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌機と、
前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散機と、
を有することを特徴とするイオン交換樹脂細粒化システム。
【請求項7】
前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を所定の温度以下に保つ冷却手段を有することを特徴とする請求項6記載のイオン交換樹脂細粒化システム。
【請求項8】
前記乳化分散機でエマルジョン化された前記使用済みイオン交換樹脂を再び前記処理タンクに注入する再注入配管を有することを特徴とする請求項6または請求項7記載のイオン交換樹脂細粒化システム。
【請求項9】
前記乳化分散機でエマルジョン化された前記使用済みイオン交換樹脂を貯蔵タンクに排出する排出配管を有することを特徴とする請求項6ないし請求項8いずれか記載のイオン交換樹脂細粒化システム。
【請求項10】
前記乳化分散機でエマルジョン化された前記使用済みイオン交換樹脂を前記貯蔵タンクに排出する前に酸化分解する酸化分解機を有することを特徴とする請求項9記載のイオン交換樹脂細粒化システム。
【請求項11】
原子力発電所内で行われる除染工事に用いられる除染装置において、
イオン交換樹脂が充填されている脱塩装置と、
処理タンク、前記脱塩装置から取り出された使用済みイオン交換樹脂を前記処理タンクに注入する注入配管、前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌機、および、前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散機を備えて、前記使用済みイオン交換樹脂を細粒化するイオン交換樹脂細粒化システムと、
前記イオン交換樹脂細粒化システムから前記使用済みイオン交換樹脂を貯蔵する貯蔵タンクに延びる排出配管と、
を有することを特徴とする除染装置。
【請求項12】
原子力発電所において、
原子炉と、
前記原子炉で発生した蒸気によって駆動される発電タービンと、
前記発電タービンを駆動した前記蒸気を、前記原子炉に供給される冷却水へと凝縮する復水器と、
イオン交換樹脂が充填されていて前記冷却水を浄化する水処理手段と、
処理タンク、前記水処理手段から取り出された使用済みイオン交換樹脂を前記処理タンクに注入する注入配管、前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌機、および、前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散機を備えて、前記使用済みイオン交換樹脂を細粒化するイオン交換樹脂細粒化システムと、
前記イオン交換樹脂細粒化システムから前記使用済みイオン交換樹脂を貯蔵する貯蔵タンクに延びる排出配管と、
を有することを特徴とする原子力発電所。
【請求項13】
イオン交換樹脂を充填した既存の脱塩装置、および、前記脱塩装置から取り出される使用済みイオン交換樹脂を貯蔵する貯蔵タンクに前記脱塩装置から延びる既存の排出配管を備えた除染装置の改造方法において、
前記排出配管の一部を切断する工程と、
処理タンク、前記使用済みイオン交換樹脂を前記処理タンクに注入する注入配管、前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌機、および、前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散機とを備えて、前記使用済みイオン交換樹脂を細粒化するイオン交換樹脂細粒化システムを設置する工程と、
切断された前記排出配管の前記脱塩装置側に前記注入配管を接続する工程と、
切断された前記排出配管の前記貯蔵タンク側に前記乳化分散機を接続する工程と、
を有することを特徴とする除染装置の改造方法。
【請求項14】
イオン交換樹脂が充填されて原子炉の冷却水を浄化する既存の水処理手段、および、前記脱塩装置から取り出される使用済みイオン交換樹脂を貯蔵する貯蔵タンクに前記脱塩装置から延びる既存の排出配管を備えた原子力発電所の改造方法において、
前記排出配管の一部を切断する工程と、
処理タンク、前記使用済みイオン交換樹脂を前記処理タンクに注入する注入配管、前記処理タンクに蓄えられた前記使用済みイオン交換樹脂を攪拌する攪拌機、および、前記処理タンクから前記使用済イオン交換樹脂を受け取ってエマルジョン化することによって前記使用済みイオン交換樹脂の粒子径を小さくする乳化分散機とを備えて、前記使用済みイオン交換樹脂を細粒化するイオン交換樹脂細粒化システムを設置する工程と、
切断された前記排出配管の前記水処理手段側に前記注入配管を接続する工程と、
切断された前記排出配管の前記貯蔵タンク側に前記乳化分散機を接続する工程と、
を有することを特徴とする原子力発電所の改造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−199023(P2007−199023A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20624(P2006−20624)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】