説明

イオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス

本発明に係るプロセスは、(a)破砕、スクラビング、アトリション、分離および高強度磁気選鉱による前記ラテライト鉱石(O)の処理(1)段階と、(b)前記段階(a)から得られた非磁性画分(CN)の浸出(2)段階と、(c)任意選択の、前記浸出からの排出物の中和(3)および/または固液分離(4)段階と、(d)不純物の除去のための少なくとも1つの回路と、ニッケルおよびコバルトの回収のための少なくとも1つの回路とを有するイオン交換ハイブリッドシステムにおける、段階(b)または段階(c)からの排出物の処理(5)段階と、(e)使用した前記イオン交換樹脂の溶出(6)段階と、(f)前記ニッケルおよびコバルトの分離、精製および回収(7)段階と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ニッケル鉱の各種形態の浸出から生成される、パルプまたは溶液の形の浸出排出物中に存在するニッケルおよびコバルトの回収のためのイオン交換処理を有する。より詳細には、浸出排出物中に存在するニッケルおよびコバルトを回収するためのイオン交換処理は、ニッケル鉱を処理するための湿式冶金プロセスにおけるパルプおよび溶液の精製に代わる代替法である。
【背景技術】
【0002】
当業者に公知のように、ラテライト鉱石中に含まれるニッケルおよびコバルトを抽出するために、各種の湿式冶金経路が開発されてきた。この経路の目的は、大気圧条件下のタンクにおいて沸点より低い温度で、あるいは加圧容器において、ヒープ浸出のために無機酸を使用して金属種を可溶化し、その後中和(Cu、Fe、CrおよびAlの除去)と、任意選択で溶液の精製の前に固液分離を行い、最終的に、ニッケルおよびコバルトを、金属の形であるいは中間生成物として回収することにある。従来の湿式冶金経路が図1に示される。
【0003】
浸出排出物中に存在する金属の選択的回収は、経済的評価を行ううえで重要な段階である。ニッケルとコバルトを例に挙げると、これらは非常に似た化学特性を有する。このため、これらの金属は、混合硫化物(MSP)または混合水酸化物(MHP)の形での析出、塩酸、アンモニアまたは硫酸の媒質中での溶媒抽出、あるいは高分子樹脂型イオン交換樹脂を使用したイオン交換抽出のいずれかにより、同時回収操作を容易に行うことができる。
【0004】
ニッケルを選択的に吸着させるための高分子樹脂を用いたイオン交換法としては、溶液中樹脂(resin in a solution)またはパルプ中樹脂(resin in a pulp)の2種類の方法を適用することができる。
【0005】
溶液中樹脂操作の選択肢では、金属が溶解している溶液を樹脂と接触させており、一般に、吸着は例えば吸着カラムなどの固定床で行われる。
【0006】
パルプ中樹脂操作の選択肢では、撹拌システムによって、鉱石パルプまたは任意の他のパルプを樹脂に直接接触させ、この結果、先にパルプの固液分離を行う必要なく、金属の吸着が行われる。その後、選別によって樹脂とパルプが分離される。
【0007】
ニッケルラテライト鉱処理のフローシートでは、この2つの選択肢のいずれも採用することができる。溶液中樹脂操作では、得られた生成物が既に溶液の形であるヒープ浸出の場合を除き、固液分離が必要となる。この固液分離段階では、その運転コストが多額であることに加え、固体を洗浄し、溶解している化学種を回収することが困難であることによるプロセスの効率の低さから、ニッケルの一部ロスが生ずる。これに対し、パルプ中樹脂プロセスでは、浸出パルプから、溶解している金属がイオン交換樹脂によって直接回収されるため、固液分離が不要となる。
【0008】
パルプ中樹脂の適用は、溶液中樹脂と比べてある程度の利点を有するものの、この適用には、パルプとの接触に耐えるのに十分に高い機械強度と耐摩耗性を有する多くの樹脂が市場に出回っていないことなど、ある種の制約と技術上のリスクがある。この理由により、溶液中樹脂の適用が最良の選択肢であると考えられることが多い。
【0009】
図10として示される、従来のプロセスを示すフローシート1に示すように、溶液中樹脂またはパルプ中樹脂の適用の前に、酸性度の中和、pHを上げる操作および析出による不純物の除去が必要とされうる。
【0010】
ニッケルの選択的回収のための、好ましいと考えられる価格で商業的に入手可能な最近の樹脂には、以下の2つの大きな制約がある。
【0011】
1.H+イオンに対する選択性が高いため、樹脂のほとんどがニッケルに対して選択的となり、この金属に対して高い吸着性能を表すように、溶液のpHをpH=3より大きな値に上げる必要がある。これを行わない場合には、余分なH+イオン(低pH)が吸着され、ニッケル吸着プロセスが損なわれる。
【0012】
2.ニッケル鉱の酸浸出から得られるあらゆる排出物溶液には、不純物とみなされる各種金属が溶解している。ニッケルに対して選択性を有するあらゆる樹脂は、溶液中の鉄、銅およびアルミニウムの濃度が低くても、これらの元素(鉄、銅およびアルミニウム)に対して選択性を有するため、これらの不純物を除去するために、溶液を事前に処理する必要がある。
【0013】
上に挙げた問題は、現在は、石灰、石灰石、炭酸ナトリウムまたはアンモニウムを添加する中和段階を採用することにより解決されている。この手法は制約を解消するものの、ニッケルのロスが大きいなどの欠点を有する。ニッケルは不純物と共沈し、カラム中樹脂(resin-in-column)操作の場合、中和後に煩雑な固液分離段階が必要となる。
【0014】
本明細書では、上に挙げた、主として中和段階、先に不純物の除去が必要な点、pHを上げることが必要な点、およびこれによる共沈ニッケルによるロスなどの障害に対する解決策として、低pH範囲で機能する樹脂(例えば2−ピコリルアミン官能基を含む樹脂など)の使用と、BR0600901−8号明細書に記載されている、樹脂段階前の不純物の除去を不要にするハイブリッドプロセス技術の同時使用を提案する。このため、浸出段階から得られたパルプまたは溶液の形の排出物は、イオン交換樹脂段階に直接送られる。BR0600901−8号明細書に記載されている樹脂ハイブリッドプロセスは、溶液(堆積浸出)の形およびパルプ(タンク浸出)の形の浸出排出物に必然的かつ直接的に適用可能である。このプロセスには、ラテライト鉱石(O)の処理(1)段階と、その後行う大気下浸出または加圧浸出(2)段階と、既存のプラント(2)における固液分離からの溶液の任意選択の処理の段階が含まれる。このプロセスは、陽イオン樹脂またはキレート樹脂から構成される回路を有し、そのうち、イオン交換樹脂(Re)による第1段階(3)は、鉄、銅およびアルミニウムを除去しpHを上げるための特定の選択性条件を与え、イオン交換樹脂(Re)による第2段階(4)は、ニッケルおよびコバルトの回収を可能にすることを特徴とする。
【0015】
ニッケル鉱の浸出から得られる排出物に適用される樹脂のさまざまな使用法が、多くの文献に記載されている。文献のなかには、排出物溶液への樹脂の使用を論じているものもあれば、排出物パルプへの樹脂の使用を論じているものもある。当該「従来技術」のセクションで言及した全ての方法は、何らかの方法でイオン交換樹脂との接触前または接触中にpHの調整を必要としている。
【0016】
特定の鉱石からニッケルおよびコバルトを直接回収するためのプロセスが、米国特許第6,350,420号明細書に記載されている。当該米国発明の実施形態の1つでは、ニッケル鉱が、金属類を可溶化するために無機酸によって浸出され、これにより、これらの金属を多量に含む溶液および浸出残渣から構成されるパルプが生成される。浸出排出物が、パルプからニッケルおよびコバルトを選択的に回収するイオン交換樹脂と接触される。好ましくは、中和されたパルプにイオン交換樹脂が添加される。樹脂とパルプの接触中に、中和剤の添加によりpHが調整される。イオン交換抽出中にインサイチュでpHの調節が行われるため、このことは上記米国のプロセスの最も大きな利点である。
【0017】
浸出排出物の中和段階と固液分離段階の後に浸出溶液に適用される樹脂の使用は、オーストラリア国特許第699127号明細書および米国特許第5,571,308号明細書に記載されている。
【0018】
新規技術の開発は、一段と低コストで、より効果的なプロセスを開発することを目指している。しかし、公知の技術は、多くの場合、特定の単位作業に限定され、典型的な特性を有するほかの種類の鉱石の基本的な運用上のニーズに対処するものではない。新しい開発については、プロセスの対費用効果を向上させることを狙いとした技術的改善を行うために、既存の先行技術のフローシートを何らかの形で適応させる必要がある。また、プロセス自体が、更に効率を向上させるために新しい傾向に合わせて改善および適合されうる。
【0019】
浸出排出物からニッケルおよびコバルトを回収するための従来のイオン交換プロセスの別の欠点の1つとして、中和段階が常に必要であるという点が挙げられる。また、固液分離段階は任意選択であり、これが適用できない場合は、プロセスは「パルプ中樹脂」として知られる。
【0020】
浸出排出物からニッケルおよびコバルトを回収するための従来のイオン交換プロセスの別の欠点の1つとして、多くの場合、開発されたフローシートから、技術的課題に対する解決策が得られないという点も挙げられる。多くの場合、既存の技術を改善するために最適化および新規技術の開発が行われていないことにより、単位作業の効率が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】BR0600901−8号明細書
【特許文献2】オーストラリア国特許第699127号明細書
【特許文献3】米国特許第5,571,308号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的とその利点は以下のとおりである。
−低効率(low performance)の鉱石画分を除去するために、浸出段階の前に鉱石処理段階を導入する。
−パルプ中樹脂の形での液体排出物の使用を可能にするプロセスを開発する。これにその後ヒープ浸出が行われ、その後中和されてパルプが形成される。
−任意選択で、段階的に中和を行ない、その後固液分離が行なわれて、固相がシステムに再循環され、これにより、一般に中和段階でニッケルのロスが発生するのを防ぐことができる。
−中和段階を省略できるように、イオン交換ハイブリッドプロセスを採用する。
−プロセスの効率を向上させる。
−より純度の高い最終生成物を生成する。
−酸性(低pH)条件下、ならびに高濃度の不純物(銅、アルミニウムおよび鉄など)の存在下で、ニッケルの吸着の性能の高いプロセスを開発する。
−プロセスの資本費用、いわゆるキャピタルコストを削減する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の技術的課題を解決し、これにより性能を向上させることを目的として、イオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセスが開発された。上記プロセスは、
(a)破砕、スクラビング、アトリション、分級および高強度磁気選鉱による前記ラテライト鉱石(O)の処理(1)段階と、
(b)前記段階(a)から得られた非磁性画分(CN)の浸出(2)段階と、
(c)任意選択の、前記浸出からの排出物の中和(3)および/または固液分離(4)段階と、
(d)不純物の除去のための少なくとも1つの回路と、ニッケルおよびコバルトの回収のための少なくとも1つの回路とを有するイオン交換ハイブリッドシステムにおける、段階(b)または段階(c)からの排出物の処理(5)段階と、
(e)使用した前記イオン交換樹脂の溶出(6)段階と、
(f)前記ニッケルおよびコバルトの分離、精製および回収(7)段階と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】カラム1における累積抽出質量の説明図。
【図2】カラム2における抽出質量の説明図。
【図3】ニッケルの除去のためのハイブリッド溶液中樹脂プロセスの第2段階はにおける選択的な精製のためのステップの説明図。
【図4】ハイブリッド溶液中樹脂プロセスの第1段階における銅の除去のためのステップの説明図。
【図5】ハイブリッド溶液中樹脂プロセスの第1段階における銅の除去のためのステップの説明図。
【図6】選択的な精製のための各種ステップの説明図。
【図7】pH=4まで中和され、ハイブリッドパルプ中樹脂プロセスを使用して樹脂と接触させた浸出排出物の説明図。
【図8】pH=4まで中和され、ハイブリッドパルプ中樹脂プロセスを使用して樹脂と接触させた浸出排出物の説明図。
【図9】pH=4まで中和され、ハイブリッドパルプ中樹脂プロセスを使用して樹脂と接触させた浸出排出物の説明図。
【図10】従来のプロセスを示すフローシート。
【図11】本明細書に提案するプロセスを表すフローシート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、従来技術のプロセスとは異なり、ラテライト鉱石の浸出排出物からニッケルおよびコバルトを回収するためのイオン交換プロセスを提案し、中和段階および固液分離段階と関連する(適用可能な場合)、パルプ中樹脂モードと溶液中樹脂モードの両方を含むさまざまな技術的選択肢を提示する。あるいは、中和段階の代わりに、BR0600901−8号明細書に記載されているような樹脂ハイブリッドプロセスが行われてもよく、この場合も、pHを上げ、異物であるFe、AlおよびCuを除去するという同じ効果が得られる。
本発明に係るプロセスは、ニッケルおよびコバルトを含む溶液の中和(前処理)段階を必ずしも含んでいなくてもよく、浸出排出物を精製するための経済的に適当な技術的選択肢としてイオン交換技術を使用する。このような課題は、より好ましくは、BR0600901−8号明細書に記載されている、先の中和段階を必要とせずにハイブリッドイオン交換樹脂プロセスを使用し、任意の不純物の除去も保証する、イオン交換処理によって解消することができる。
【0026】
パルプ内で機能できる樹脂が存在しなければ、液固分離後に溶液内で樹脂が使用される。この場合、共沈したニッケルのロス分を含む残渣の一部を再生および回収することが不可欠となる。ヒープ浸出液体排出物の場合には、中和後に、この同じ溶液を、鉱石が存在しない場合でさえパルプであるとみなすことができ、パルプ中樹脂プロセスの選択肢を使用することができる。このようにして、中和後の煩雑な固液分離段階を省略することができる。
【0027】
処理(1)。この段階においては、その目的は、本明細書で提案するプロセスにより良好に反応する鉱石画分を分離し、濃縮することにある。シリカを多く含む鉱石では、スクラビング操作とその後の分級が行われ、シリカ含有量が高く、わずかなニッケルしか含まない未精練画分が廃棄されうる。ニッケル含有量の高い細粒分画のみがその後処理される。別の選択肢の1つとして、高強度磁気選鉱段階の使用が挙げられる。鉱石は、浸出段階に供給される前に適切に準備される。この段階は、ニッケル鉱処理のフローシートにおいて極めて重要である。
【0028】
タンクまたはスタックにおいて大気下浸出が使用される場合、鉄を含むニッケル鉱(結晶構造において針鉄鉱に関連するニッケル)はプロセスに良好に反応せず、このため、鉱石のこのような部分を除去し、浸出段階に供給する部分として考慮しないことが従来行われている。これにより処理対象の鉱石の量が減り、この結果、浸出容器およびタンクを小型化でき、この装置内の鉱石の滞留時間が短縮される。
【0029】
磁性画分(CM)は針鉄鉱からなり、大気下浸出および主としてヒープ浸出において効率が低いため、プロセスから分離される。加圧浸出の場合、鉱石の種類に関して制限がないため、磁気選鉱段階は考慮されない。
【0030】
浸出プロセスの前に磁気選鉱段階が行われることにより、プロセスから効率の低いタイプの鉱石(磁性画分またはCM)が除去される。非磁性画分(CN)のみが回路に残される。
【0031】
この段階は、処理対象の質量を減少させるために行われる。針鉄鉱を含まない非磁性画分(CN)のみが回路で処理され、高い回収量を得やすくなるほか、装置を小型化でき、滞留時間を短縮できる。
【0032】
浸出(2)。本発明に係る浸出は、酸性(硫酸、塩酸または硝酸)あるいは塩基性を有しうる。浸出は、大気下または加圧条件下でのヒープ浸出(2)またはタンクの形で、あるいはこれらの組み合わせで行われうる。
【0033】
・パルプの形の排出物の場合、ニッケル回収のために、パルプ中樹脂ハイブリッドプロセス(5b)に直接送られうる。この場合、先の中和は不要である。
【0034】
・溶液の形の排出物は、ニッケル回収のために、ハイブリッド樹脂プロセス(5a)を使用する溶液中樹脂プロセスに直接送られうる。この場合、先の中和は不要である。
【0035】
・中和および固液分離が行われるヒープ浸出およびタンク浸出の場合、析出した固体の一部が、再可溶化、再生され、プロセスに戻されうる。液相は、ハイブリッド樹脂回路(5a)によるイオン交換樹脂段階に供給される。
【0036】
・固体が含まれない液体の排出物のみが得られるヒープ浸出の場合、前記液体排出物が中和され、その結果、鉱石を含まないパルプが形成され、パルプがパルプ中樹脂プロセス(5b)において樹脂と接触される。
【0037】
・大気下浸出または加圧浸出から得られたパルプが、樹脂中の不純物のオーバーロードを低減させるために必然的に中和され、固液分離段階が不要となる場合には、パルプ中樹脂ハイブリッドプロセス(5b)が採用される。
【0038】
前処理または中和(3)。この段階は、樹脂のオーバーロードを低減させるために溶液から不純物を除去することを意図しており、上で説明したように任意選択である。また、排出物のpHを上げ、このためニッケルおよびコバルトのローディングに関して樹脂性能を改善することが必須である。前記段階は、pH値の異なる複数のステップで行われうる。第1ステップは、低いpH値で行われ、析出した不純物を含む固体は、共沈ニッケルを含まないため廃棄されうる。第2ステップでは、これよりも高いpH値で行われ、ニッケルが共沈した場合、固液分離からの残渣が再可溶化され、プロセスに戻される。析出物へのニッケルのロスのない第1ステップ(pH<3)では、残渣が生成されて廃棄されるのに対し、第2ステップでは、析出物へのニッケルのロスが生じ(pH>3)、このためこの固相が再可溶化のためのタンクに戻される。再可溶化されると、中和段階に再び供給される。
【0039】
この手順により、中和段階でニッケルのロスが発生するのを防ぐことができる。中和段階後に、固液分離(適用可能な場合)と、カラム中樹脂を含む次の段階(5a)が行われる。
【0040】
中和から得られた生成物が、固液分離を必要とすることなく、パルプ中樹脂段階(5b)に直接送られてもよい。この場合、溶液の形のヒープ浸出排出物が、中和されてパルプの形の生成物が生成され、これが樹脂と接触されうる点に留意すべきである。この場合、パルプ中樹脂プロセスが、鉱石を含まないパルプで行われる。パルプの処理時には固液分離が不要である。
【0041】
大気下浸出またはオートクレーブ浸出からのパルプは、必然的に中和段階と、その後任意選択で固液分離が行われる場合には、イオン交換樹脂ハイブリッド回路に供給される。イオン交換樹脂によるこの種の操作は、最初の回路において、不純物の大部分を除去し、ニッケルを効率的に吸着させるために溶液を準備することによって、溶液をより高度に精製するために好都合である。
【0042】
固液分離が行われる場合、溶液に樹脂ハイブリッドプロセスが適用され、残渣の一部が再可溶化され、プロセスに戻されて中和段階に供給される。
【0043】
固液分離が行われない場合、パルプに樹脂ハイブリッドプロセスが適用される。この段階では、中和で共沈されたニッケルが浸出−収着現象によってプロセスに戻され、このため、ニッケルのロスを最小限に抑えられる。
【0044】
固液分離(4)。パルプ中樹脂プロセスが望ましくないかまたは適用できない場合には、中和した排出物に固液分離が行われる。この場合、得られた溶液が、好ましくはカラム内イオン交換樹脂(5a)を含むハイブリッドプロセスによって樹脂と接触される。これは、ニッケルを選択的に吸着させるために、溶液を高度に精製および準備することを意図している。析出した固体の一部は、プロセスに戻され、再可溶化されて中和段階に供給されうる。
【0045】
イオン交換樹脂を使用するハイブリッドシステム(5)。目的および処理対象の鉱石の種類に応じて、浸出段階で得られたニッケルおよびコバルトを含む排出物に、パルプ中樹脂または溶液中樹脂(5)を使用してハイブリッドシステムプロセスが適用されうる。ハイブリッドプロセスは、異なる金属を除去するための少なくとも2つの別個の回路を有する。例えば、1つの回路は銅および他の不純物を除去し、別の回路はニッケルを選択的に吸着する。このプロセスにより、不純物を除去し、pHを上げるために、排出物を先に中和する必要がなくなる。ニッケル除去回路の場合、酸性(低pH)条件において効率が高い、Cu、AlおよびFeなどの不純物の選択性ができるだけ低いなどの特別な特性を有する樹脂を選択することが極めて重要である。しかし、ニッケルの選択的吸着の前に、溶液の高度な精製およびスクラビングを行うために、このプロセスが中和段階と併用されてもよい。この段階へのフィードの種類に応じて、カラム中樹脂(5a)またはパルプ中樹脂(5b)が使用されうる。
【0046】
溶出(6)。溶出は、異なる薬剤(例えば硫酸、塩酸、および水酸化アンモニウム、硫酸アンモニウムまたはこれらの混合物)を使用することにより行われうる。
【0047】
分離、精製および回収法(7)。ニッケルおよびコバルトを、金属の形で、あるいは中間生成物としてその酸化物、水酸化物および炭酸塩などで製造するための析出、水素還元、電解採取によって生成物が取得されうる。また、ほかの可能な方法のうち、溶媒抽出が使用されてもよい。
【0048】
好ましい操作プロセスを本明細書に記載し、図示したが、本発明の範囲を逸脱することなく、変更が可能であり達成可能であることを理解すべきである。
【0049】
以下に、本発明の範囲の説明のための例を示す。
【実施例】
【0050】
本明細書に図11として添付されたフローシート2は、本明細書に提案するプロセスを表しており、フローシート2は、破砕、スクラビング、アトリション、分級および磁気選鉱を含む処理段階(1)から開始し、これは浸出段階の前のラテライト鉱石(O)の処理段階である。これにより、非磁性画分(CN)と磁性画分(CM)の2つの画分が得られる。後者は、針鉄鉱に関連するニッケルを含んでおり、選択したプロセスに関して望ましくない性能を与え、このため、フローシートから除去する必要がある。非磁性画分(CN)は高効率という特徴を有し、このため高品質を与えるため、非磁性画分(CN)のみがプロセスで処理される。
【0051】
磁気選鉱段階(1)の後に浸出(2)が行われる。本明細書で提案する鉱石浸出法段階(2)は、一部の段階では、酸または塩基の形の浸出剤により、大気条件下のタンクまたは加圧容器内で、あるいはこれらのタイプの任意の組み合わせで行われうる。
【0052】
金属が鉱石から抽出され、水溶液中に可溶化されると、得られた生成物はパルプまたは溶液の形の排出物(E)である。
【0053】
実施例1:次に、ニッケルおよびコバルトを回収するために、好ましくはキレート型樹脂によるイオン交換樹脂法(5)が排出物(E)に直接適用されうる。イオン交換法は、カラム中樹脂(5a)またはパルプ中樹脂(5b)のいずれかにより使用されうる。大気下ヒープ浸出からの排出物(E)は、BR0600901−8号明細書に記載されている、必然的な先の中和(3)と固液分離(4)も行われることなく、ハイブリッド溶液中樹脂プロセスとして溶液中樹脂段階(5a)に直接送られうる。この場合、酸性(低pH)条件において効率が高い、Cu、AlおよびFeなどの不純物の選択性が低いなどの特別な特性を有する樹脂を選択することが極めて重要である。
【0054】
以下に、イオン交換ハイブリッドプロセスにおける浸出排出物の直接適用の例を示す。以下の表に示すように、第1段階は、2ステップを含み、不純物(主として銅)の除去を意図している。第2段階は、多数のステップが含まれてもよく、ニッケルの選択的除去に使用される。
【0055】
排出物の化学組成が下記の表1に示される。
【表1】

【0056】
ハイブリッド溶液中樹脂プロセスの第1段階は銅の除去のための2ステップを含む。図1はカラム1における累積抽出質量を示し、図2はカラム2における抽出質量を示している。
【0057】
ニッケルの除去のためのハイブリッド溶液中樹脂プロセスの第2段階は、選択的な精製のためのさまざまなステップが含まれてもよく、図3に示される。
【0058】
実施例2:パルプ中樹脂プロセスが適用可能でない場合には、任意の種類の浸出から得られたパルプまたは溶液の形の浸出排出物(E)に対して中和(3)などの前処理が行われ、その後固液分離(4)が行われうる。溶液を更に精製するほか、ニッケル吸着のために前記溶液を準備するためにこれらの段階が必要な場合には、BR0600901−8号明細書に記載されているような液相と樹脂が接触されるハイブリッドプロセスが使用される。この場合、析出したニッケルを回収するために、固液分離段階(4)からの固相(C)の一部が再可溶化され、プロセスの中和段階(3)に戻されうる。
【0059】
中和、濾過されてハイブリッドイオン交換プロセスに送られた浸出排出物の例を以下に示す。第1段階は、銅および不純物の除去のための2ステップを含む。第2段階は、ニッケルの除去のための1以上のステップを含む。
【0060】
浸出排出物の化学組成が下記の表2に示される。
【表2】


pH4.5まで中和され、濾過された排出物の化学組成を下記の表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
ハイブリッド溶液中樹脂プロセスの第1段階は銅の除去のための2ステップを含み、これらは図4および図5に示される。
【0063】
ニッケルの除去のためのハイブリッド溶液中樹脂プロセスの第2段階は、選択的な精製のための各種ステップを含んでもよい。この段階は図6に示される。
【0064】
実施例3:液体の形の排出物が生成されるヒープ浸出の場合、中和されたが、その後固液分離が行われなかった排出物溶液がパルプとみなされる場合には、前記排出物がパルプ中樹脂の形で処理されうる。
【0065】
実施例4:パルプの形の排出物の場合、前記排出物は、先の固液分離を必要とせずに、中和され、パルプ中樹脂操作(5b)に送られうる。この場合、樹脂がパルプと接触されるハイブリッドプロセスが使用される。
【0066】
図7,8,9は、pH=4まで中和され、ハイブリッドパルプ中樹脂プロセスを使用して樹脂と接触させた浸出排出物の例を示す。
【0067】
ハイブリッドパルプ中樹脂の第1段階は、選択的な樹脂を使用して、Fe、Mg、MnおよびCuなどの不純物の除去を行う。
【0068】
ニッケルおよびコバルトの除去のための、ハイブリッド溶液中パルププロセスの第2段階は、選択的な精製のために10のステップを含んでもよい。
【0069】
その後、イオン交換段階(5)から得られたロードされた樹脂(Rc)に対して、溶出(6)段階が行われ、ニッケルおよびコバルトが回収される分離、精製および回収(7)段階が直ちに行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセスであって、
(a)破砕、スクラビング、アトリション、分級および高強度磁気選鉱による前記ラテライト鉱石(O)の処理(1)段階と、
(b)前記段階(a)からの非磁性画分(CN)の浸出(2)段階と、
(c)任意選択の、前記浸出段階からの排出物の中和(3)および/または固液分離(4)段階と、
(d)不純物の除去のための少なくとも1つの回路と、ニッケルおよびコバルトの回収のための少なくとも1つの回路とを有するハイブリッドイオン交換樹脂システムにおける、段階(b)または段階(c)からの排出物の処理(5)段階と、
(e)使用した前記イオン交換樹脂の溶出段階と、
(f)前記ニッケルおよびコバルトの分離、精製および回収(7)段階と、を有するプロセス。
【請求項2】
前記磁気選鉱から得られた磁性画分(CM)が廃棄されることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項3】
前記浸出(2)は、酸性または塩基性の浸出剤を使用して行われることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項4】
前記浸出は硫酸、塩酸または硝酸であってもよいことを特徴とする請求項3に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項5】
前記浸出は硫酸により行われることを特徴とする請求項4に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項6】
前記浸出は、加圧下または大気下条件あるいはこれらの組み合わせで稼働されているタンク内で行われることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項7】
パルプの形の排出物が使用される場合、前記排出物が、先に中和を行う必要なく、ニッケルの回収のための前記ハイブリッドパルプ中樹脂プロセス(5b)に直接送られてもよいことを特徴とする請求項1または6に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項8】
溶液の形の前記排出物が、先に中和を行う必要なく、前記ハイブリッド樹脂プロセス(5a)を使用した、ニッケルの回収のための前記溶液中樹脂プロセスに直接送られてもよいことを特徴とする請求項1または6に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項9】
前記浸出は大気下のタンクおよび加圧容器において行われ、中和および固液分離が行われ、析出した固体の一部は、再生、再可溶化されて前記プロセスに戻される一方、液相はハイブリッド樹脂回路(5a)による前記イオン交換樹脂段階に供給されることを特徴とする請求項1または6に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項10】
ヒープ浸出によって、固体が含まれない液体排出物のみが得られる場合には、前記液体排出物が中和され、その後鉱石を含まないパルプが形成され、前記パルプが前記パルプ中樹脂プロセス(5b)において樹脂と接触されうることを特徴とする請求項1または6に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項11】
前記樹脂中の不純物のオーバーロードを低減させるために、大気圧浸出または加圧浸出から得られた前記排出物パルプが中和を必要とする場合、前記固液分離段階が不要であり、前記ハイブリッドパルプ中樹脂プロセス(5b)が使用されることを特徴とする請求項1または6に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項12】
前記中和(3)はpH値の異なる複数のステップで行われることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項13】
前記中和の第1ステップはpH<3に対応し、第2ステップはpH>3に対応することを特徴とする請求項12に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項14】
前記第1ステップから前記析出物へのニッケルのロスなく残渣が得られ廃棄される一方、前記第2ステップでは、前記析出物へのニッケルのロスが生じ、この理由のため、前記固相が再可溶化のためのタンクに戻され、再可溶化されると、前記中和段階に再び供給されることを特徴とする請求項12または13に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項15】
前記固液分離段階(4)からの前記固相(D)は、再可溶化させ、前記中和段階(5)に再循環させることができることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項16】
前記中和段階(5)からの前記排出物はパルプの形であってもよく、前記固液分離段階(4)からの前記排出物は溶液の形であってもよいことを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項17】
酸性(低pH)条件下で高い性能を有し、銅、アルミニウムおよび鉄などの不純物の選択性が低い樹脂が使用されることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項18】
溶液中樹脂(5a)またはパルプ中樹脂(5b)が、当該段階に供給されるフィードの種類に応じて使用されることを特徴とする請求項1または17に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項19】
溶液の形の前記ヒープ浸出排出物は中和に送られ、前記イオン交換は、前記パルプ中樹脂段階(5b)において行われ、その際、パルプは、その後固液分離が行われない中和された排出物溶液とされることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項20】
タンク浸出から得られたパルプの形の排出物は、先の固液分離を行う必要なく中和され、前記パルプ中樹脂操作(5b)に送られてもよく、前記樹脂が前記パルプと接触される前記ハイブリッドプロセスが使用されることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項21】
パルプまたは溶液の形の前記浸出排出物(E)、任意の種類の浸出生成物に対して中和(3)などの処理が行なわれ、その後固液分離(4)が行われてもよく、前記樹脂が前記液相と接触される前記ハイブリッドプロセスが使用されることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項22】
大気下浸出または加圧浸出から得られたパルプまたは溶液の形の前記浸出排出物(E)は、先に中和(3)または固液分離(4)を行わずに、前記ハイブリッドイオン交換プロセスに直接送られてもよいことを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項23】
前記溶出で使用される前記薬剤は、硫酸、塩酸、水酸化アンモニウム、硫酸アンモニウムおよびこれらの混合物を含む群に属することを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項24】
前記溶出(6)段階の後に、前記樹脂を再生および再利用することができることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項25】
ニッケルまたはコバルト(7)の前記精製は、析出、水素還元、電解採取、溶媒抽出によって行うことができるが、これらに限定されないことを特徴とする請求項1に記載のイオン交換樹脂を使用してラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを回収するためのプロセス。
【請求項26】
請求項1〜25に記載のプロセスによって得られたことを特徴とするニッケルまたはコバルトを含む生成物。

【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−509497(P2010−509497A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535533(P2009−535533)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【国際出願番号】PCT/BR2007/000314
【国際公開番号】WO2008/055335
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(506395954)
【Fターム(参考)】