説明

イオン処理用の二次元の電極構造

【課題】電極の開口部を含むことに関連した問題を改善する、イオン処理装置に用いる電極構造を提供する。
【解決手段】例えばイオントラップのような装置に使用される電極は、通常、第1の軸方向端部から第2の軸方向端部へと中心軸の方向に延びる軸長、および内側表面を有している。この内側表面は、第1の軸方向端部から第2の軸方向端部にわたって均一、または少なくとも軸方向に沿った均一部分長さについて均一である表面形状を含む。電極は、少なくとも均一部分の長さについては、延びている溝のような細長い表面形状を含んでもよい。開口部は溝とつながっている。電極は軸方向に領域に分割されている。領域間の隙間は、中心軸に直交する平面に対して角度をつけて向けられている。電極は細長い内部空間の近傍に同軸に配列された電極構造として構成された数個の電極のうちの1つであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は以下の同時係属米国特許出願に関係するものであり、その特許は本願との共通の譲受人に譲渡された「線形イオン処理装置における場の欠陥に対する補償」、「異なる作動形態に対する線形イオン処理装置の場の条件の調整」、「線形処理におけるイオン励起に対する場の条件の改善」、「線形イオン処理装置における回転励起場」のそれぞれが、2006年1月30日に本出願と同時出願されている。
【0002】
本発明は一般的に、イオンの操作や処理において利用できる電極や電極のセットのような、二次元または線形構造の電極構造に関連する。本発明はまた、電極構造を使用することができるイオンの操作および処理の方法や装置に関係する。電極構造は例えば、質量分析スペクトルと共に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
イオントラップのような線形または二次元イオン処理装置は、装置の中心(z)軸の同軸上に配置した中心軸の方向に細長い電極のセットで形成されている。各電極は、通常中心軸に対して直交する(x−y)平面に中心軸から径方向の距離に位置している。電極の内側表面は、通常内部で中心軸に対向する双曲線になっている。その結果、電極の構成が反対方向の内側表面の間の装置の軸方向に細長い内側の空間を規定する。操作において、イオンは導入され、捕捉され、蓄積され、分離されて内部空間において様々な反応の影響を受け、検出のために内部空間から排出される。このような操作には、電極構造の物理的構成要素の形状、製作および組立と共に、内部空間にあるイオンの動きに対する正確な制御が要求される。x−y平面に沿ったイオンの径方向運動は、対向する電極の組の間の二次元的RFトラップ場を印加することにより制御してもよい。イオンの軸方向の運動、または中心軸に沿ったイオンの運動は、電極の軸方向端部の間にある軸方向DCトラップ場を印加することにより制御してもよい。さらに補助的または補足的RF場を対向する電極対の間に印加することにより、電極対の軸に沿った選沢された質量対電荷比イオンの振動の振幅を増大し、それにより、イオンの排出、衝突誘起解離(CID)を含む、種々の目的のためのイオンの運動エネルギーを増加することができる。
【0004】
電極セットの内部空間にあるイオンは、内部空間においてアクティブな電場に反応し、またイオンの運動もそれらに影響される。これらの場には上記で述べたDCやRF場といった場合に電気的手段によって意図的に印加される場も含まれ、また電極セットの物理的/幾何学的特徴により本質的に(機械的に)発生する場も含まれる。本質的に発生する場には意図的なものもそうでないものもあり、操作のモードにより、望ましいまたは最適なものもあり、そうでないものもある。印加される場は、用いられる操作のパラメーター(振幅、振動数、位相等)により左右されるだけでなく、電極間の間隔を含む電極のサイズによっても左右される。本質的に発生する場もまた電極のサイズや間隔に左右される。印加される場も本質的に発生する場も両方とも、内部空間に露出している電極の内側表面の形態(外形、形状、特徴等)に左右される。双曲電極の先端線のような中心軸に最も近い内側表面の端部は、RFトラップ場に最も大きな影響を与え、そのためにRFトラップ場により中心軸の周りに大量に抑制されているイオンにも大きな影響を与える。
【0005】
理想的なケースでは、電極の物理的特徴と配置とは、アクティブな場における欠陥が存在せず、場が電極セットの中心軸に沿って均一になる。電極は漸近線に向かって無限に延びる完全な放物表面である。場に対するイオンの反応は完全に予測可能かつ制御可能であり、質量分析器または同様の装置としての性能が完璧に最適化されている。しかしながら実際は、電極は種々のタイプの場の欠陥を引き起こす異なる色々な特徴や、イオンの反応の操作および挙動に悪影響を与える歪みを含んでいる。例えば、イオン捕捉装置として採用されるほとんどの電極のセットは、内部空間から中心軸に対して直交する半径(xまたはy)の方向にイオンを排出する。多くの用途において径方向の排出は、2つの対向する電極がその上に位置する軸に沿って直接影響するときに最も効果がある。電極を通しての径方向の排出は、電極がイオンの出口としての開口部、通常軸(z)方向に細長いスロット形状をした排出開口を有することを必要とする。スロットは、操作のある段階の間、イオンの望ましい操作や処理にとって有害となる場の欠陥の深刻な原因となりうる。そのために、スロットにより生じる場の欠陥を除去し、または少なくとも最小化することが好都合である。
【0006】
従来の技術的構成においては、スロットの長さは、排出されるイオンが、有害な場の歪みが顕著に現れる電極の軸方向端部から離れたところに保たれるように、電極の全体の長さよりも著しく短くなっている。スロットの影響を最小化するための様々なその他の設計の検討が提案されている。例えばスロットのサイズや断面域(例:長さや幅)の最小化、スロットの断面領域の均一性の最大化、電極の他の物理的特徴の変更、スロットの存在を補償するための追加的な物理的特徴の付与、などである。このような提案にもかかわらず、単にスロットが存在することで場の歪みが生じる。なぜならばスロットの先端が幾何学的な非連続性を構成しているからである。その結果、スロットの近傍でアクティブな場は、電極セットの他の領域における場とは異なるのである。電極セットの中心軸に沿った軸方向位置に関連する場の何らかの差異は、イオンの望ましい反応に悪影響を与えることがあり、その結果、イオン処理装置としての電極セットの性能にも悪影響を与える。例えば、電極セットがイオントラップ質量分析器として用いられる場合、中心軸に沿った場の不均一性は質量対電荷比が同じであるイオンが異なる時間に放出される原因となり、その結果質量分解能の損失をもたらす。
【特許文献1】米国特許第6,797,950号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0185596号明細書
【特許文献3】米国特許第6,087,657号明細書
【特許文献4】米国特許第5,886,346号明細書
【非特許文献1】Shwartz et al., “A Two-Dimensional Quadrupole Ion Trap Mass Spectrometer”J.AM.Soc.MASS.SPECTROM, Vol3、3659-669(2002年4月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述を考慮すると、そのような電極の開口部を含むことに関連した問題や、電極セットにおいて有害な場の影響となるその他の誘因をよりよく解決する、または電極の使用により発生する電場の均一性を改善する、イオン処理装置に用いる電極構造を備えることが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題を全体的であれ部分的であれ、および/または当業者により観察されたその他の問題を解決するために、以下に実施形態として述べるように、本開示は方法、処理過程、システム、器具、機器、装置を提供する。
ある局面によれば、イオンを取扱う電極構造が提供されている。電極構造は中心軸と同軸上に配置した複数個の電極を備えている。各電極は大略的に中心軸の方向に延びた軸長を持っている。各電極は、当該電極構造の内部空間から大略的に外方を向く第1の軸方向端部、第2の軸方向端部および外側表面と、前記内部空間に大略的に面し、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる内側表面とを含む複数の電極を備えている。少なくとも前記電極の一つは、前記内側表面から前記外側表面へ径方向に延びる開口部を有する開口された電極である。前記開口された電極の前記内側表面は表面形状を有し、前記表面形状は前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へ前記軸方向に沿って均一である。
【0009】
別の局面によれば、開口部は、開口された電極の第1の軸方向端部から第2の軸方向端部に沿って均一である。
別の局面によれば、開口された電極の内側表面は第1の軸方向端部から軸方向端部まで延びている細長い表面形状を含んでいる。1つの実施形態においては、細長い表面形状は開口部とつながった溝を含む。
【0010】
別の局面によれば、電極構造はさらに第1の端部電極部分と、第1の端部電極部分から中心軸に沿って離間した第2の端部電極部分とを含む。複数個の電極は第1の端部電極部分と第2の端部電極部分との間に軸方向に沿って入っている。
別の局面によれば、各電極は、第1の端部部分と、前記第1の端部部分から軸方向に離間した中心部分と、前記中心部分から軸方向に離間した第2の端部部分とに分割されている。前記開口された電極の前記内側表面の前記表面形状が、前記中心部分の前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へ前記軸方向に沿って均一であり、前記表面形状の前記均一性は、少なくとも前記第1の軸方向端部に最も近い前記開口された電極の前記第1の端部部分の一部と、少なくとも前記第2の軸方向端部に最も近い前記開口された電極の前記第2の端部部分の一部とにわたって連続している。
【0011】
別の局面によれば、前記表面形状の前記均一性は、前記開口された電極の前記第1の端部部分の全長と、前記開口された電極の前記第2の端部部分の全長とにわたって連続している。
別の局面によれば、前記開口された電極は、前記中心軸に直交し径方向軸および横軸によって規定される平面における断面を含んでいる。前記断面は、前記横軸に沿った幅と、前記径方向軸に沿った深さとを有する。前記開口部は、前記幅の中心において前記径方向軸に沿って径方向に延びている。前記断面は、前記開口部と横方向に関して中心を合わせられた断面部分であって、前記内側表面から前記深さを越えて前記開口された電極へと径方向に延びる均一な断面部分を含んでいる。前記均一な断面部分は前記開口された電極の前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へ軸方向に沿って均一である。
【0012】
別の局面によれば、前記開口された電極は、前記内部空間に面する平面であって、前記開口された電極の軸長と前記中心軸に対して直交する方向に向いた横軸とによって規定される平面における断面を含んでおり、前記断面は前記横軸に沿った幅を有する。前記複数の電極は、前記中心軸に対して前記開口された電極の反対に配置された対向電極を含み、前記対向電極は、前記内部空間に面する平面であって、前記開口された電極の前記断面に対向する平面における断面を含む。前記開口された電極および前記対向電極の前記断面は、前記開口された電極および前記対向電極のそれぞれの前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へ前記軸方向に沿って同じである。
【0013】
別の局面によれば、イオンを操作する電極構造が提供されている。この電極構造は、中心軸に同軸に配列された複数の電極であって、各電極は前記中心軸の方向に大略的に延びる軸長を有し、各電極は当該電極構造の内部空間から大略的に外方を向く第1の軸方向端部、第2の軸方向端部および外側表面と、前記内部空間に大略的に面し、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと軸方向に延びる内側表面とを含む複数の電極を備えている。少なくとも前記電極の一つは、前記軸方向に、および前記内側表面から前記外側表面へ径方向に延びる開口部を有する開口された電極であり、前記開口された電極の前記内側表面は表面形状を有し、前記表面形状は前記軸方向に均一な部分長に沿って均一であり、前記開口は前記均一な部分長に沿って位置しており、前記均一な部分長は前記開口部の軸方向長さよりも長い。
【0014】
別の局面によれば、前記開口された電極の前記内側表面が、前記均一な部分長に沿って延びる細長い表面形状を含んでいる。1つの局面においては、細長い表面形状は開口部とつながっている溝を含んでいる。
別の局面によれば、イオン処理装置において電場を発生させる電極が提供されている。この電極は、第1の軸方向端部、第2の軸方向端部、および前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる細長い長さを含む。この電極はさらに、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる外側表面であって、当該外側表面は、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる湾曲部分を含み、前記湾曲部分は、大略的に先端線に中心を合わされた端部領域を含むとともに、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びて前記先端線と整列する細長い表面形状を含んでいる外側表面を含む。1つの局面においては、前記細長い表面形状が、前記湾曲部分から、前記先端線と整列する前記電極の厚みを貫通して径方向に延びるとともに、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと軸方向に延びる開口部を含む。別の局面では、前記細長い表面形状が、前記先端線と整列する前記電極へ径方向に延びるとともに前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと軸方向に延びる溝を含を含む。また別の局面では、細長い表面形状は溝を含み、電極は溝と連通する開口部を持っている。
【0015】
別の局面によれば、イオン処理装置において電場を発生させる電極が提供されている。電極は本体を含む。この本体は、第1の軸方向端部、反対側の第2の軸方向端部、および前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる細長い長さと、前記細長い長さに対して直交する断面平面に位置する厚みと、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる外側表面とを含む。外側表面は、第1の軸方向端部から第2の軸方向端部に延びている湾曲部分を含む。前記本体は、第1の端部部分と、前記第1の端部部分から軸方向に第1の間隙によって離間した中心部分と、前記中心部分から軸方向に第2の間隙によって離間した第2の端部部分とに分割されている。前記第1の間隙の少なくとも一部と、前記第2の間隙の少なくとも一部とが前記断面平面に対してある角度をなすように向けられている。1つの局面では、前記湾曲部分が、前記中央部分の全長に沿って軸方向に延びる細長い表面形状を含む。
【0016】
分割された本体を持つ電極の1つの局面によれば、前記第1の端部部分が第1の端部部分の内側表面を含み、前記中央部分が第1の中央部分の内側表面および対向する第2の中央部分の内側表面を含み、前記第2の端部部分が前記第2の端部部分の内側表面を含む。前記第1の端部部分の内側表面、前記第1の中央部分の内側表面、前記第2の中央部分の内側表面、および前記第2の端部部分の内側表面のそれぞれが、前記直交する平面に対して湾曲している。
【0017】
分割された本体を持つ電極の別の局面によれば、前記中央部分が、第1の幅を狭くした端部領域と、対向する第2の幅を狭くした端部領域とを含み、前記第1の端部部分は、前記第1の幅を狭くした端部領域を収容する第1の凹部領域であって、前記第1の幅を狭くした端部領域と第1の間隙によって離間した第1の凹部領域を含み、前記第2の端部部分は、前記第2の幅を狭くした端部領域を収容する第2の凹部領域であって、前記第2の幅を狭くした端部領域と第2の間隙によって離間した第2の凹部領域を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
一般的に、「つながる(連通する)」という語(例えば、第1の部分が、第2の部分と「連通する」または「連通状態である」など)は、本明細書において、2つ以上の構成部分(または要素、特徴など)の間の構造的、機能的、機械的、電気的、光学的、磁気的、イオン的、または流体的関係を示すために使用されている。このように1つの部分が第2の部分とつながっているということは、第1の部分と第2の部分との間に追加の部分が存在したり、第1の部分や第2の部分に動作可能な関連または係合し、たりする可能性を排除することを意図するものではない。
【0019】
本開示において提供されている主題は、一般的に、イオンの操作、処理または制御のための装置において用いられるタイプの電極および電極の構成に関する。電極の構成は様々な機能の実施において利用が可能である。これらに限定されるものではないが、電極の構成は、中性分子をイオン化するチャンバ、イオンを集束、ゲーティングおよび/または輸送のためのレンズまたはイオンガイド、イオンの冷却または熱運動のための装置として、イオンの捕捉、蓄積および/または排出のための装置、望ましくないイオンから望ましいイオンを分離するための装置、質量分析器または分別装置として、質量フィルターとして、タンデム質量分析または多段型質量分光分析(MS/MSまたはMS)を実効する段階として、前駆イオンの断片化または解離のための衝突セルとして、連続ビーム、連続分析器、パルス化または時系列に基づくイオン処理の段階として、イオン・サイクロトロン・セルとして、極性の異なるイオンを分離する装置として使用できる。しかしながら、本開示において記載されている電極および電極の構成の様々な応用はこれらのタイプの手順、装置およびシステムに限られるものではない。装置および方法における電極および電極の構成ならびに関連実施形態は図1〜図9を参照して以下により詳しく記述する。
【0020】
図1〜図3はイオンの操作または処理に使用できる電極構造、構成、システム、装置、または線形(二次元)のロッドセット100の例である。図1〜図3はまた参照目的でデカルト(直交)(x,y,z)座標のフレームを含んでいる。記載目的のために、z軸に沿った方向または方位は軸方向と称し、直交するx軸およびy軸に沿う方向または方位を径方向または横方向として称する。図4〜図8は電極構造100に設けることができる電極の追加例を示している。
【0021】
図1を参照して、電極構造100はz軸に沿って細長い複数の電極102,104,106,108を含んでいる。つまり、各電極102,104,106,108は、z軸と略平行な方向に延びている主寸法または長手寸法(例えば、長さ)を有している。多くの実施形態において、電極102,104,106,108はz軸に厳密に平行であるか、または実際に可能な限り平行である。この平行性によって、その中でRF場(電界)が電極構造100に適用されるとき、イオンの操作および処理に関連した操作中にイオンの挙動の予測性能や制御性能を向上する。なぜならば、そのような場合、イオンが遭遇するRF場の強さ(振幅)は、電極構造100のイオンの軸位置によって変わらないからである。このように、他の場の欠陥がないと仮定すれば、イオンのマチウパラメーターqの数値は軸位置に依存しなくなる。qの値が軸位置から独立している場合、軸位置が質量のスペクトルピークを広げる、またはアウトプットされるデータの質量分解能に付属する品質低下を招くことなく、イオンを電極構造100から純粋に質量依存ベースで排出することができる。さらに、平行電極102、104、106、108を用いると、電極構造100の端部から端部に与えられるDC電位の大きさが軸位置により変わることがない。
【0022】
図1に示されている例では、複数の電極102、104、106、108は4個の電極を含む。すなわち、第1の電極102、第2の電極104、第3の電極106、第4の電極108である。この例において、第1の電極102と第2の電極104とは大略的にy軸に沿った対向する一対の電極として配置されている。そして第3の電極106と第4の電極108とはx軸に沿った対向する一対として配置されている。したがって、第1および第2の電極102、104はy電極と称し、第3および第4の電極106、108はx電極と称することができる。この例は他の四重極のイオン処理装置同様、線形イオントラップとしての四重極電極構成の典型である。他の実施形態においては、電極102、104、106、108の数は4個以外であってもよい。各電極102、104、106、108は、電極構造100の中で望ましい電場を発生させるために、必要に応じて、他の電極102、104、106、108の1つ以上の電極と電気的に相互接続可能である。また図1に示されているように、電極102、104、106、108は、それぞれ電極構造100の中心に向いている各内側表面112、114、116、118を有する。
【0023】
図2はx−y平面における電極構造の断面図を示している。電極構造100は、大略的に電極102、104、106、108の間に規定されている内部空間、つまりチャンバ202を有している。内部空間202はz軸に沿って電極102、104、106、108が延びている結果として、z軸に沿って延びている。電極102、104、106、108の内側表面112、114、116、118は、大略的に内部空間202に面しており、実際には内部空間202に存在するイオンに対して露出されている。電極102、104、106、108はまた、内部空間202とほぼ反対向きのそれぞれの外側表面212、214、216、218を含んでいる。図2にも示されているように、電極102、104、106、108は、電極構造100またはその内部空間202の主たるまたは中心の縦軸の周囲に同軸に配置されている。多くの実施形態において、中心軸226は電極構造100の幾何学的中心と一致している。各電極102、104、106、108は、中心軸226からx−y平面においていくらかの径方向距離rに配置されている。ある実施形態においては、中心軸226に相対する電極102、104、106、108のそれぞれの径方向の位置は同等である。その他の実施形態においては、ある種の電場効果を導入したり、または他の望ましくない場の効果を補償したりする目的で、電極102、104、106、108の1つ以上の径方向の位置を意図的にその他の電極102、104、106、108の径方向と異ならせてもよい。
【0024】
各電極102、104、106、108は外側表面を有し、外側表面の少なくとも一部が湾曲していてもよい。この例においては、各電極102、104、106、108のx−y平面の横断面の形状または少なくとも内側表面113、114、116、118の形状は湾曲している。いくつかの実施形態においては、x−y平面の断面の形状は、四重極のイオントラップ場の使用を促進するために双曲線になっている。というのは、双曲線の形状は四重極の場に情報を与える等電位線の等高線にほぼ一致しているからである。双曲線の形状は完全な双曲線、または完全な双曲線から幾分ずれていてもよい。いくつかの実施形態においては、場の効果を望ましいものに修正するために、意図的にずらしてある。どちらの場合においても、各内側表面112、114、116、118は曲線をなしており、単一の変曲点を有し、したがってz軸に沿った線状に延びている各頂点232、234、236、238を有している。各頂点232、234、236、238は、通常、対応する内側表面112、114、116、118上で、内部空間202の中心軸226に最も近い点である。この例においては、中心軸226をz軸とすれば、第1の電極102および第2の電極104の各端部232、234はほぼy軸上にあり、第3の電極106および第4の電極108の各端部236、238はほぼx軸上にある。このような実施形態において、径方向距離rは中心軸226と、対応する電極102、104、106、108の端部232、234、236、238との間で規定される。
【0025】
他の実施形態においては、電極102、104、106、108の断面形状は、開口部172近くの電極102上の隆起または突起242および/または電極104もしくはその他の開口部のない電極上の隆起もしくは突起244のような、隆起または突起により、理想的ではない双曲線形状であってもよい。そのような隆起または突起242、244が存在することに付随するいくつかの利点は、2004年5月26日に出願された同時係属中の米国特許出願第10/855,760号「線形イオントラップ装置および非対称のトラップ場を使用する方法」に記載されている。この特許出願も本開示の譲渡人に譲渡されるものである。同様の隆起または突起は、米国カリフォルニア州パロアルトのバリアン社からSaturn(登録商標)およびTitan(商標)MS-4000装置など、市販の三次元イオントラップ装置にも備えられている。
【0026】
その他の実施形態においては、電極102、104、106、108の断面形状は、円形のような他の理想的ではない双曲線形状であってもよく、その場合、電極102、104、106、108は円柱ロッドとして特徴づけることができる。さらに他の実施形態においては、電極102、104、106、108の断面形状はより直線的であってもよく、その場合、電極102、104、106、108は湾曲平面として特徴づけることができる。「大略的に双曲線形状」および「湾曲した」という語は、全てのこのような実施形態を包含するように意図されている。このような全ての実施形態において、各電極102、104、106、108は、電極構造100の内部空間202に面するそれぞれの端部232、234、236、238を有するものとして特徴づけることができる。
【0027】
図1の例として示されているように、いくつかの実施形態において、電極構造100は、z軸に対して複数の部分または領域122、124、126、128に軸方向に分割されている。この例では、最初の端部領域122、中心領域124、および第2の領域126の少なくとも3つの領域がある。別の言い方をすれば、電極構造100の電極102、104、106、108は、第1の端部部分132、134、136、138、中心部分142、144、146、148、および第2の端部領域152、154、156、158に、軸方向にそれぞれ分割されていると考えることができる。したがって、第1の端部電極部分132、134、136、138が、第1の端部領域122を規定し、中心の電極部分142、144、146、148が中心領域124を規定し、そして第2の端部電極部分152、154、156、158は第2の端部領域126を規定する。第1の端部電極部分132、134、136、138および第2の端部電極部分152、154、156、158を、ガード電極または外部電極と称してもよい。この四重極の例示による電極構造100は、12個の軸電極132、134、136、138、142、144、146、148、152、154、156、158を含んでいると考えることもできる。別の実施形態によれば、電極構造100は3つ以上の軸領域122、124、126を含んでもよい。
【0028】
図3はy−z平面の電極構造100の断面図であるが、y電極102、104のみを示している。中心軸226に沿った電極構造100の細長い寸法、細長い内部空間202、および電極構造100の軸の任意の分割が全て明瞭にはっきりと分かる。さらにこの例では、電極構造100の領域122、124、126への分割部分(つまり電極102、104、106、108のそれぞれの部分に入っている分割)は物理的なものである。これは、それぞれの隙間302、304(軸の間隔)が近接領域または部分122と領域124との間および領域124と領域126との間に存在するということである。他の実施形態においては、電極102、104、106、108は、単一のまたは単独部分の構造であり、隙間302、304がなく、物理的に明確な領域122、124、126もないということである。しかし軸の分割は下記において論じられているような有利性を与える。
【0029】
電極100の操作において、様々な電圧信号が、電極102、104、106、108の1つ以上に印加され、イオンの処理および操作に関する異なる目的のために、内部空間202においての軸方向や径方向に向いた種々の電場を発生させる。電場は、イオンを内部空間202に注入したり、内部空間202のイオンを捕捉したり、イオンをある期間蓄積したり、質量スペクトルを生成するためにイオンを内部空間202から質量選別的に排出したり、望ましくないイオンを内部空間202から排出することにより、内部空間202において選別されたイオンを分離したり、タンデム質量分光法の一部として内部空間202におけるイオンの解離を促進したり、といった様々な機能を果たす。
【0030】
例えば、適切な振幅の1つ以上のDC電圧の信号を、電極102、104、106、108に印加することができる。また、内部空間202に注入するイオンを制御する軸(z軸)方向のDC電位を生じるためのかつ/もしくは軸が先端に位置するレンズまたは他の導電構造が用いられる。いくつかの実施形態においては、イオンは、図1および図3の矢印162により示されているように、通常z軸に沿った最初の端部領域122を介して内部空間202に軸方向に注入される。第1の端部領域122の電極部分132、134、136、138および/もしくは軸方向の前方にあるイオン集中レンズまたは多重極イオンガイドはこの目的のためのイオンのゲートとして操作される。軸方向注入のいくつかの有利な点は、2004年5月26日に出願された同時継続中の米国特許出願第10/855,760号に記載されており、その特許も本開示と共通の譲受人に譲渡されるものである。しかしながら一般的に、電極構造100は、外部のイオン化の場合、または内部やトラップ内で中性分子や原子がイオン化される場合、任意の適切な方法で、また任意の適切な入り口の場所を介して内部空間202にイオンを受け入れることができる。別の方法としては、近隣の電極102,104,106,108の間の空間を通して、または電極102,104,106,108の1つの中に形成された開口部を通しての径方向注入がある。しかしながら、これらの別の方法は、先立って発生したイオンが注入される場合(外部イオン化)、イオンが末端の場、エネルギー障壁、およびその他の注入を損なう、または望ましくない放出を生じる、もしくは注入されたイオンの消滅/中性化といった条件に直面するため、しばしば不利であると考えられる。
【0031】
いったんイオンが注入、または内部空間202において生成されると、領域122、124、126の1つ以上、軸方向に先立ち続くレンズ、またはその他の導電構造に印加されるDC電圧信号が、イオンが電極構造100の軸方向端部から出るのを防ぐために適切に調整される。さらに、DC電圧信号は、内部空間202内で注入されたイオンの望ましい領域への軸(z軸)移動を抑制する、軸方向に、より狭いDC電位ウェルを作り出すために調整される。例えば、端部領域122、126におけるDC電圧レベルは、処理されるイオンの極性により、中心に位置する電位ウェルを作り出すために、中心領域124でのDC電圧レベルを高くまたは低くして設定することができる。
【0032】
DC電位に加えて、適切な振幅および周波数のRF電圧信号が、径方向に沿った質量対電荷比(m/z比、または単純に「質量」)の範囲の安定した(トラップ可能な)イオンの動きを抑制する二次元(x−y)の主要RF四重極トラップ場を発生させるために、電極102,104,106,108に印加される。例えば、主要な四重極トラップ場はRF信号を対向するy電極102、104に印加して、同時に、第1のRF信号と同じ振幅および周波数のRF信号であるが、第1のRF信号から180度位相のずれたRF信号を、対向するx電極106、108に印加することにより発生させることができる。DC軸障壁(バリア)場と主要RF四重極トラップ場との組合せは、電極構造100において、基本的な線形イオントラップを形成する。
【0033】
RF四重極トラップ場による分力は、通常電極構造100の内部空間202の中心軸226において最少であるため(電気四重極が中心軸226に対して対称であると仮定した場合)、四重極の操作パラメーターの中で安定しているm/z比を有する全てのイオンは、イオンが占める容量内で動くように、または中心軸226にほぼ沿って分布される位置に集まるように抑制される。このように、このイオンが占める容積は、中心軸226に沿って延びているが、内部空間202の全容積よりはかなり小さい。さらに、イオンが占める容積は、上記の軸電位ウェルを含む非四重極のDCトラップ場を印加することにより、電極構造100の中心領域124に軸方向に集中することができる。多くの実施形態において、周知なイオン冷却および加熱処理法は、イオンの占める容積のサイズをさらに小さくすることができるだろう。イオン冷却処理は例えば、ヘリウムのような適当な不活性バックグラウンドガスを内部空間202に導入することを伴う。イオンとガス分子との間の衝突が動的なエネルギーを失わせるので、それによりイオンの動きを衰退させる。図2に示されているように、電極構造100の全ての適切な開口部、または電極構造100の収容物に連通する全ての適当なガス供給源242はこの目的のために備えられてもよい。イオンの衝突による冷却は、場の欠陥の影響を減らし、質量分解能をある程度改善する。
【0034】
DCおよび主要RFトラップ信号に加えて、適切な振幅および周波数(通常両者とも主要RFトラップ信号よりも小さい)の追加RF電圧信号は、選択されたm/z比の捕捉されたイオンを共鳴励起する補助的なRF双極励起場を生じさせるために、少なくとも一組の対向する電極102/104または106/108に印加される。補助的RF場は主要RF場が印加されている間に印加され、そしてその結果としての場の重ね合わせが組合わされたまたは複合されたRF場として特徴づけられる。共鳴による励起は衝突誘起解離(CID)、またはその他のイオン分子の相互作用、または試薬ガスの反応を助成・促進するために採用される。さらに、励起場の構成成分の強さは、選択された質量のイオンがRFトラップ場により与えられた復元力を克服でき、除去、イオンの分離、質量選沢走査、検出のために電極構造100から排出されるように充分に強くなるように調整することができる。このように、いくつかの実施形態においては、イオンは中心軸226に直交する方向に沿って、すなわちx−y平面内で径方向に内部空間202から排出することができる。例えば、図1および図3に示されているように、イオンは矢印164によって示されているようにy軸に沿って放出される。しかしながら双極共鳴励起は、イオンの動きの振幅を増加させ、線形イオントラップから径方向に排出する技術の1つの例でしかない。他の技術も知られており、未だ開発されていない、公知な技術の変形例と同様に、本開示において記載されている電極構造に適用することができる。
【0035】
径方向の排出を促進するため、1つ以上の開口部が電極102、104、106、108の内の1つ以上に形成されている。図1〜図3に示されている具体例において、開口部172はy電極102、104間に作られる適切な補助的RF双極場に対応するy軸に沿った方向における排出を促進するためy電極102の1つに形成されている。開口部172はz軸に沿って延びており、その場合開口部172はスロットまたはスリットとして特徴づけられ、電極構造100の細長い内部空間202の中で生成される細長いイオンの占める容積に相当するものである。実際においては、適切なイオン検知器(図示せず)が排出されたイオンの流れを測定するため、開口部172と一直線上に整列するように設置される。開口部172を規定しイオン検出器に到達する周壁上に影響を与えることなく完全に開口部172を通って通過する排出イオンの数を最大にするために、開口部172は電極102の頂点232(図2)に添って集中するので、イオン放出に用いられる開口部172の断面領域は均一で、電極102の厚みを介した開口部172の深さは最適化することができる。電極102中に、外側表面212(図2)から開口部172まで延び、開口部172を取り囲む凹面174が作られ、排出されたイオンが、通過しなければならない開口部172の径方向チャネルまたは開口部172の深さを最少にする。このような凹部174は、もし形成されるとすれば、外側表面212の一部であると考えられる。
【0036】
内部空間202の中で発生する電場における望ましい程度の対称性を維持するため、別の対応するイオン検出器が備えられなかったとしても、別の開口部176が電極102の反対側の電極104の中に形成されてもよい。同様に開口部は電極102、104、106、108の全てに形成されてもよい。いくつかの実施形態においてイオンは、上記米国特許出願第10/855,760号に記載されているように、適切な電圧信号の重ね合わせや他の操業条件を提供することにより、好ましくは単一の開口部を通って単一の方向に選択的に排出される。
【0037】
一般的に、焦点レンズとしての先端平面との組合わせによる単断面電極を用いた線形イオントラップに比較して、図3に示されている電極構造100の物理的に明確な領域122,124,126への軸方向分割は、イオン捕捉および質量分析の多くの実施形態において有利であると考えられる。単断面電極を用いた電極構造の場合、DC軸トラップ電位はDC電圧信号を電極構造の各軸方向端部に位置する端部レンズに印加することにより発生しなければならない。これらの端部レンズ近傍では、それらの場所において存在する有意な構造/幾何学的場、および場の非連続性により、電極構造に印加される非線形の末端の歪みまたは摂動が径方向捕捉および励起場において存在する。これらの末端の場は電極構造中のイオンに対する悪影響を有することがある。例えば、上記米国特許出願第10/855,760号、上記非特許文献1および上記特許文献1を参照のこと。例えば、末端の場は、望まない時のイオン排出につながる軸方向および径方向のイオン励起の原因となることがある。さらに、末端の場は、予期したり制御したりするのが難しい適用場へのイオンの反応を与えることがある。これは異なる軸に沿ったイオンの動きの結合と、軸に沿ったイオンの永続周波数のずれとのためである。
【0038】
一方、図1〜図3に示されている軸により分割された電極構造100において、中心領域124は端部領域122、126の間に物理的に挿入されている。この配置により、中心領域124は電極構造100の軸方向端部および全てのレンズ、またはその他の電極100中の軸方向に外側の他の導電機能から離れたところに位置している。電極100の各領域122、124、126に印加される種々のDCおよびRF信号は個々に調整され、もし望まれれば中心領域124が電極構造100の分析部として機能することを可能にしている。例えば、イオンは軸方向および径方向の双方において中心領域124内に抑制(捕捉)され、質量を選択された排出は中心領域124の開口部172を通してのみ生じる。このように、電極100の軸方向分割は端部に位置した末端の場からの望ましくない影響を避けながら、イオンの処理および操作を促進する。
【0039】
しかしながら、軸方向に分割することは、場の不完全化に関連する問題に対し部分的にのみ対処する。軸方向の分割は電極構造100の操作に用いられる種々の場における不均一性の全ての原因を取り除くわけではない。図1〜図3に示されている電極構造100のような多くの構造の特徴は、イオン処理および操作を含むある種のタイプの操作に有害な影響を与える場の歪みを生じることがある。例えば、中心領域124と端部領域122、126との間は、望ましくない場の変化の源泉である。中心軸124からの排出のために用いられている開口または開口部172は、望ましくない変化の別の源泉である。領域122、124、126の間の隙間302、304の存在、および開口部172の存在は、四重極のトラップ場を歪める場の欠陥を導き良くない分解能や正確でない質量につながることがある。
【0040】
これらの問題を解決する1つの方法は、開口部172のサイズ(長さと幅)を最小化することであった。上記特許文献1参照。しかしながら、そのような最小化には限界がある。電極構造100内でのイオントラップ容量または集団は、イオンの排出/検出レベルを受容可能なものに維持するために細長く保存されなければならない。というのは開口部172のサイズは、どれ位の量のイオンが実際に開口部172を通してうまく排出されイオン検出装置に届くかを決定するからである。一方、DC電圧はイオントラップ容積を軸方向に圧縮するように調整できる。これは空間電荷を増やすことになり、その結果質量スペクトルのピークのずれを増加する。別のアプローチは、望ましくない場の影響を補償するために、開口部172を含む電極102、104の対向する一対の間の距離を延ばす(増加する)ことである。また、別のアプローチは電極102、104、106、108のうちの1つ以上を理論的に理想的なパラメーターからずらすという方法で成形するというものである。例えば、上記特許文献2、上記特許文献3および上記非特許文献1を参照のこと。
【0041】
単純に開口部172のサイズを最小化することに加え、性能を最適化する試みとして開口部172の他の設計についての種々の検討が提案されたが、部分的な解決を提供しただけであった。例えば、末端の場の影響を避けて質量の分解能と正確さとを改善するために、中心電極部分142の開口部172の軸方向の長さを中心電極部分142の全長の百分率で、80%〜95%として特定する。さらに開口部172の幅を、電極構造100の内部空間202の中心軸226から電極102の頂点232までの半径距離rの小さな百分率5%〜10%に特定した。上記特許文献1参照。
【0042】
上記の考察より明らかなように、電極102、104、106、108に開口部172を備えることは電極構造100からのイオンの径方向放出を促進するのに有益であるが、開口部172の存在は電極構造100の線形イオントラップ装置、質量分析器、その他の装置としての性能を損なうことがある。上述のような設計の検討の実施にもかかわらず、電極構造100中の電極102に開口部172が単に存在することによって、与えられた操作ステージにおいて電極構造100に印加する複合電場における望ましくない不均一性およびその他の欠陥を引き起こすおそれのある幾何学的非連続性の原因となる。例えば、開口部172の軸の長さを中心電極部分142の軸の全長よりも短く設定するとことは、電極構造100の中心領域124における場が第1の端部領域122および第2の端部領域126における場から必ず異なることを意味する。開口部172を決定する端縁は開口部172が備えられている限り存在する不連続である。
【0043】
例示として、下記に述べる、電極、電極の構成、関連する構成要素、および方法をこれらの問題の解決のために提供する。
図4は本開示の1つの実施形態によって提供される電極400の斜視図である。電極400は図1〜図3に示されている、またはその他の適切な電極の線形構成中において示されている、電極構造100の電極102、104、106、108の1つ以上として用いられてもよい。図4はその内側表面412を見た電極400であり、これは実際には電極セットの内部に面している電極400の外側表面の一部である。いくつかの実施形態においては、電極400は単断面または一体構造となっている。他の実施形態においては、図4に示されているように、電極400は軸方向に第1の端部部分422、中心部分424、第2の端部部分426に分割されており、それぞれの隙間402、404が近傍部分422、424の間および部分424、426の間を決定する。第1の端部部分422は第1の軸方向端部つまり先端面432、第2の軸方向端部つまり先端面434を含み、中心部分424は第1の軸方向端部つまり先端面436および軸方向に関して反対側の第2の軸方向端部つまり先端面438を含む。第2の端部部分426は第1の軸方向端部つまり先端面442および軸方向に関して反対側の第2の軸方向端部つまり先端面444を含んでいる。電極部分422、424、426は、隙間402、404を決定する。特に第1の端部部分422の第2の先端面434および中心部分424の第1の先端面436は、第1の隙間402を決定し、中心部分424の第2の先端面438および第2の端部部分426の第1の先端面442は、第2の隙間404を決定する。さらに電極404は相対する外側の端縁、つまりz軸に沿って延びる表面を含む。したがって軸方向に分割されているとき、第1の端部部分422は相対する端縁456、458を含み、中心部分424は相対する外側端縁456、458を含み、第2の端部部分426は相対する外側端縁462、464を含んでいる。第1の端部部分422、中心部分424および第2の端部部分426に対応する、電極400の内側表面412の各部分は、第1および第2の先端面432/434、436/438、442/444、ならびに外側の端縁452/454、456/458、462/464によってそれぞれ囲まれている。
【0044】
電極400の外側表面の少なくとも一部は湾曲した部分である。図4に示されている例では、電極400、または少なくともその内側表面412は、大略的に湾曲したまたは双曲線形状を持つ。その形状の頂点472は、一般的に電極400の幅の中央線に対応する。ここで、電極400の幅は一般的に電極400の外側端縁(例、452および454)の間の横寸法として決定される。(図4のx方向)。電極構造100(図1〜図3)の一部として、例えば線形イオントラップとして、組立てられるとき、頂点472は電極構造100の中心軸226に最も近い内側表面412の一部である。電極400は、一般的に電極400の頂点472または中央線と同一線上にある開口部またはスロット476のような軸に沿った細長い表面特性を有していてもよい。電極400はこのように開口部付き、または開口部を含むものとして参照される。図に示された例において、開口部476の軸方向の長さは頂点472における中心電極部分424の軸の長さの100%である。つまり、電極構造100の内部空間202に面する電極400側にあり、開口部分476は、中心電極部分424の第1の先端面436から第2の先端面438に至る中心電極部分424の全長に沿って全体に延びている。
【0045】
1つの非限定的例示において、主要電極400は約70mmの軸長と約23mmの横幅を有している。第1の端部部分422および第2の端部部分426は、それぞれ、頂点において約19mm、外側端縁において約11mmの軸長を有している。そして中心部分424は頂点において約30mm、外側端縁において約38mmの軸長を有している。隙間402、404は、それぞれ約1mmの軸長を有している。開口部476は約30mmの軸長と、約0.5mmの横幅とを有している。
【0046】
いくつかの実施形態において、図4に示されているように、中心電極部分424の先端面436、438は、x軸およびy面に対して傾斜している。先端面436、438のそれぞれの向きは、中心電極部分424の内側表面412の軸長が頂点472において外側端縁456、458においてよりも短くなるようになっている。この構造は、その長さが中心電極部分424の内側表面412の100%の長さである開口部476を備えることを容易にする。第1の電極部分422の第2の先端面344および第2の電極部分426の第1の先端面442は幾何学的均一性を維持し、隙間402、404を最少にするために、傾斜して相補的な角度になっている。かくして隙間402、404も傾斜している。従来の分割された電極では、先端面と隙間とはz軸に対して垂直、すなわち完全に平面でx−y平面に沿って位置している。
【0047】
角度における電極400の分割は、さらに図5にも示されており、電極400を、電極構造100(図2および図3)の内部空間202に露出していない電極400の外側表面502の視点から示している。図5に示されているように、電極400の外側の開口部476の軸長は、この外側の視点から見た中心電極部分424の全長よりも短くてもよい。しかしながら、電極400の外側の開口部476の境界は、イオンの動きが、印加される場により影響される内側のものほど重要ではない。開口部476の軸長は、依然として、図4に示されているように、内側の斜視図からの中心電極部分の長さの100%である。電極400を角度をなすように分割すると、開口部476の100%の長さを有する電極400の組立が容易になることがわかる。開口部476は中心電極部分424(図4)の内側表面412わたって延びており、中心電極部分424はこの実施形態によっても単一または一体構造を有することができる。
【0048】
図4に戻り、追加の実施形態において、電極400、つまり、より詳しくは、示されている内側表面412のような組立てられた電極構造100(図2および図3)の内側表面203に露出されている電極400の部分は、軸方向寸法に沿って延びている特徴を有する。いくつかの実施形態においては、軸方向に延びた表面の特徴は、電極400の全長に沿って、1つの先端面432からもう一方の先端面444にまで、そして各電極部分422、424、426にわたって形成される軸溝482である。あるいは、溝482は主要電極400の一部分だけに沿って延びている。電極400の内側表面412が湾曲したまたは放物線の形状を有しており、その形状の端部472が電極400の中央線に沿って配置されている場合、溝482は一般的に内側表面412の端部472に位置している。したがって、中心軸424の軸長にわたる溝482の部分、またはこの部分のより短い下位部分は、開口部476として、または電極構造100の内部空間202からイオンが排出される開口部476の始まりとして機能する。軸溝482から開口部476の深さは、もし提供されるとすれば、電極400の厚みを軸方向に貫通して、外側表面502、または外側表面502の凹部分500まで径方向に続く(図5)。しかしながら、これらの端部422,426が開口部を有していなくても、溝482は第1の端部電極部分422および第2の端部電極部分426を軸方向に貫通している。これらの電極部分422、426に広がる溝482の部分は、電極部分422、426の中へある程度の深さまで延びているが、しかし、開口部476の場合のように、ボアや電極400の外側表面502へ連通するチャネルを貫通するほど長くはなくい。例えば、溝482の深さは開口部476の幅とおよそ同じか、または開口部476の幅よりも大きいかまたは小さい。いくつかの実施形態においては、溝482の幅は開口部476の幅と同じか実質的に同じである。ある意味では、少なくとも電極構造100の内部空間202および内部空間202に存在する何らかのイオンの視点図からは、端部電極部分422、426にわたる溝482の部分は中心電極部分424の開口部476を模倣しているとして特徴づけられる。
【0049】
上述の通り、溝482の軸長は主要電極400の全長よりは短くても、長くても、中心電極部分424の軸長よりも短くても同じでもよく、さらにもし開口部476が備わっているとすれば、開口部476の軸長よりも長くてもよい。いくつかの実施形態において、溝482の軸長は開口部476の軸長の約2倍またはそれより大きく、開口部476は軸方向に溝482の軸の範囲に集中している。ほとんどの重要なz座標が開口部476の近傍にあり、それを通してイオンが排出され不都合な場の影響を受けやすいということから、これらの実施形態も有用である。これらの実施形態において、内側表面412の表面形状は、少なくともz軸に沿った電極400の均一部分の長さにわたって均一である。均一な部分の長さは、細長い表面形状の軸の範囲(例えば100%の長さの開口部476または本開示において記載されている溝482)と対応する。
【0050】
いくつかの実施形態において、開口部476は中央電極部分424にわたる溝482の一部であると考えられる。開口部476と溝482とは異なったものであると考えられる。溝482は内側表面412の特徴であり、したがって溝482中の容積は内部空間202(図2および図3)の一部であると考えられる。実施形態において、開口部476および/または溝482は内側表面412の端部472のラインと整列しており、端部472は実際には中央の電極400の一部でなくてもよい。これは開口部476または溝482が、空間の領域、または物質が存在しないことを規定するためである。このように、これらの実施形態において、端部472は内側表面412を越えて延びるカーブの屈折部分の空間に位置するものとして特徴づけられる。開口部472および/または溝782は端部432に位置して端部432と整列しているか、または端部432の近くの主要電極400の端部領域に位置しているものとして特徴づけられる。
【0051】
前述の通り、電極構造100の内部空間202内でのイオンの動きは、内部空間202の電場によって左右される。これらの電場は、少なくとも部分的には、内側表面412の形状により決定される。図4から、100%の長さの開口部476、軸溝482、または内側表面412上の開口部476の軸長を効果的に延ばす軸溝482を備えている実施形態が、z軸に沿った場の均一性をどのように改善するかがわかる。他の有利性の中でも特に、100%の長さの開口部476および/または軸溝482が、RF場がz座標にほぼ依存していないx軸に沿った長さを効果的に延ばすことが挙げられる。例えば、電極400が、それを通してイオンがy方向に排出される開口部476を有するy電極であるということを考えてみる。100%の長さの開口部476を有する、中心電極424のx−y平面内の湾曲した内部形状は、たとえ任意のz値と同じであり、特に典型的な四重極トラップ場の中心に最も近い端部472の領域においては、z軸に沿って一定のままである。これはまた、その中で開口部476の軸長が中心電極部分424の軸長の100%以下であり、その代わりに、中心電極部分424の軸長の少なくとも100%の軸溝482を備えている実施形態においてもまたその通りである。溝482が電極400の全軸長に沿って延びている実施形態においては、x−y平面における内部形状は、開口部476の存在にもかかわらず、電極400の全長に沿って均一のままである。軸溝482が中心電極部分424の軸長の100%以下で、しかし開口部476の軸長よりは長い実施形態においても、構造的均一性を高め、場の欠陥を最小化するのに大きく貢献している。また溝482をより短い開口部476の上に重ね合わせることにより、中心電極424または電極400全体(溝482の長さによる)の内側の直線的形状が、内部空間202に面しているx−z平面の視点から、開口部476が中心電極部分424の100%の長さであるかそれより短いかには関係なく、z軸に沿って均一になることが観察できる。均一性はまた、溝482が中央電極部分422を超え、溝482が第1の端部電極部分422および第2の端部電極部分426の部分にのみにわたって連続するようにする。
【0052】
図6は、図4および図5に示されている電極400の上部の立面図で、内側表面412が、電極構造100(図2および図3)の内部空間202が位置する紙面の下部に向いていることを示している。図6は、電極400の本体または厚みを貫通して、細長い開口部476が中心電極部分424の長さの100%を横切って、また軸溝482が電極400の先端線472に沿って電極400の100%の長さで横切っている例を示している。内部空間202の中のイオンにとって明らかな電極400の構造または形状が電極400の長さに沿って全面的に均一であることが観察できる。電極400の軸長に沿った内部空間202内で、どの角度から見ても、開口部476と溝482との間に物理的な違いはない。複数部分を有する電極400に必要な隙間402、404はつながったものではない。軸溝482があれば、開口部476の存在に伴う全ての不連続を効果的に取り除く。さらに、矢印606が示しているように、開口部476の最大100%が、末端の場からの好ましい影響がなくても、イオン排出のために利用できる。
【0053】
図4〜図6に示されている例を含む上記の実施形態は、電極構造100のz軸に沿った場の歪みを除去、または少なくとも大幅に最小化するのに有効であり、この歪みは電極構造100の中心領域124と端部領域122、126との間の界面領域における開口部476および末端の場の近傍の場の不完全さをも含む。これらの実施形態において、内部空間202に露出している電極400の1つ以上の軸方向部分422、424、426は、x−y平面や、またはx−z(またはy−z)平面で見て同じ構造的形状を有しており、特に内部空間202に最も深く延びている電極400の端部領域に関してはそうである。場の不完全さを除去または最小化することにより、電極構造100の少なくとも中心領域124の中にある全てのイオンは、電極構造100に印加される場に対して同じ反応を示す。このように質量分解能は、開口部476が存在しても低下することはない。さらに、電極構造100の全ての電極102、104、106、108が同様に細長い表面の特徴と共に構成されると、電極構造100により表される全体の構造的形状は、内部空間202および内部空間202にあるイオンから判るように均一である。このように、本開示により記載されている実施形態は、1つ以上の電極400が使用されるイオントラップやその他のイオン処理装置において性能を高めることができる。例えば、これらの実施形態は、質量分解能やイオン信号の強さを増大させ、電極構造100がイオントラップに基づく質量分析器として用いられるMS実験から得られる質量スペクトルにおいて、ピークが広がってしまう事態の発生を最小化する。
【0054】
比較により、開口部の長さが中心電極部分よりもかなり短い、または溝482のような細長い表面の特徴を欠く先行技術の実施形態において、開口部の軸の終了部分(先端)は、中心電極部分の終了地点(先端面または軸方向端部)に加え、形状的不連続をも表している。その結果、たとえ開口部の長さが開口部が形成されている電極部分の全長の何らかの望ましい割合に特定されていたとしても、質量分析能はそれでも低下する。反対に、図4〜図6に示されている電極400の実施形態においては、開口部476の終了地点が中心電極部分424の終了地点と一致しており、そのために電極400の構造が開口部476を含むことにより必然的に伴う形状的不連続を少なくともいくらか取り除く。
【0055】
伸長された開口部476の全軸長を、電極構造100(図2および図3)の内部空間202からイオンを排出させるのに用いる必要がないことに留意されたい。なぜならDCの電圧レベルは別々の各電極領域422、424、426において個々に調整できるからであり、軸方向DC電位はz軸に沿ったイオンの動きを、イオンの処理および操作に悪影響を与える可能性のある何らかの残っている場の摂動を避けるための中心電極部分424と端部電極部分422、426とが軸方向につながる部分から充分に離れた中心電極部分424の中心下位領域に閉じ込めるように、軸方向のDC電位ウェルを生じさせてもよい。しかしながら、図4〜図6に示されている実施形態においては、開口部476の全長またはほとんど100%に近いものが、場の欠陥による明らかな悪影響なしにイオンの排出に使用することができる。
【0056】
図7〜図10はさらに、イオン処理の過程においてイオンが暴露される電極面の均一性を改善することによる利点を示している。図7および図8は先行技術の典型的な構造を有する電極700(または分割された電極の中心部分)の単純化した断面図である。図7は電極700の先端面732を示している。破線により示されているように、開口部776は先端面732(紙面への方向)からの軸距離(z)における電極700の径方向厚み(ここにおいてはy方向)を貫通して形成されており、湾曲した内側表面712の端部領域772に集中している。内側表面712の形状は先端面732から開口部776がある点または面まで電極700に軸方向に沿う動きとして連続している、または妨げられていない。比較として、図8は開口部776が始まる点または面における電極700の断面を示している。開口部776がある電極700の領域においては、実際にはイオントラップのようなイオン処理装置と連携するイオンの占める容積に面している内側表面712の外側形状は、ここでは開口部776により作り出される空間または隙間により不連続となっている。表面形状も、図7に示されている開口部776がなく、そのために電極700の本体がx−y平面にわたって堅固である領域において不連続である。さらに、連続表面形状から不連続表面形状への推移は必然的に突然(急激)である。したがって、電極700の表面形状は開口部776の端縁のために均一性を欠いている。その結果、図7に示されている電極700の領域近傍のイオンは、図8に示されている電極700の領域近傍のイオンと比較して異なった電気的または磁気的な場の影響を受けることになる。
【0057】
比較として、図9および図10は、100%の長さの開口部および/または溝を設けた本開示において述べられている実施形態により構成された電極900(または分割された電極の中心部分)の単純化した断面図である。図9は電極900の先端面932を示している。溝982は先端面932で始まり、電極900の湾曲した内側表面912の端部973に集まっている。破線により示されているように、もし電極900が開口部のある電極として作られているのであれば、開口部976が先端面932からの軸(z)に対して離間して追加形成され、同様に内側表面912の端部972と中心があわせられる。開口部976の幅(ここではx方向)は、溝982の幅と同じかまたはほとんど同じである。この例における溝982は、電極900(または分割された電極の中心部分)の全長に及ぶ。このように、反対側の先端面における電極900の断面は図9に示されているものの鏡像であることがわかる。図7および図8に示されている開口部776のように、溝982は内側表面412の連続性を妨げる。しかしながら、溝982は電極900の軸方向端部から別の軸方向端部まで延びているので、内側表面912のこの不連続性は電極900の長さを変えることはない。このように、内側表面912の形状は均一のままである。
【0058】
図10は、開口部976が始まる点または面における電極900を示している。図10はたとえ電極900の領域に沿った部分が開口部976を含んでいたとしても、内側表面912の形状は電極900の全長にわたって均一であることを示している。その結果、電極900の内側表面412の片側にあるイオンは、それらのイオンの軸(z)方向に関係なく同じまたはほとんど同じ電気的または磁気的な場の影響を受けることになる。これは溝982の深さが、例えば、溝982の幅とほとんど同じかまたはそれよりも大きく選択される特別な場合である。この例において、溝982の深さは溝982の端部972から底部までの距離により表される。図9および図10において、溝982の底部は比較的平坦で、電極900の本体を貫いて概念上の弦の線に沿って位置するようになっている。また電極900は、均一な表面形状を有していることに加えて、電極900の軸長にわたり均一な断面部分994を有していることがわかる。図9および図10から、断面部分994は、一般的に、端部972と弦の線992との間のx−y平面における電極900の一部である。均一な表面の形状と横断面部分994とは、図9および図10に示されている開口部976との組合わせで、電極900の全軸長にわたる溝982を提供する、または溝982なしで100%の長さの開口部976を提供することにより得られることに留意されたい。さらに、電極セットにおける1つ以上の他の電極が、同じ均一な表面形状および断面部分994を有していてもよく、この場合、このセットの当該1つの電極に、開口部976が形成されており、すべての電極または当該電極に、100%の長さの開口部976または100%の長さの溝982が形成されていることがわかる。
【0059】
図11および図12は本開示の別の実施形態により提供される電極1100の斜視図である。図4〜図6に示されたものと似ているこれらの特徴および要素は、同様の参照符号によって示した。図11は電極構造100(図2および図3)の内部空間202に面している内側表面1112を見た電極1100を示している。図12は内部空間202から外方向を向く外側表面1202を見た電極1100を示している。図4〜図6に示されている電極400の場合のように、電極1100の内側表面1112は先端線1172に沿って位置している細長い表面形状1186を備えている。細長い表面形状1186は、内側表面1112の横の中心電極部分1124の全長に沿って延びる開口部、または内側表面1112の横の中心電極部分1124の全長に沿って延びる溝であってもよい。溝が備えられている場合、電極1100は、溝と整列し、通常溝に対して軸方向に中心があわせられた開口部を有していてもよい。そのような開口部は溝と貫通しており、排出されたイオンが電極1100の径方向または横方向の厚みを貫通して内側表面1112から移動する経路を提供する。この例において、表面形状1186は端部部分1122、1126にわたって連続することはない。図4〜図6に示されている電極400の場合のように、それぞれの軸方向端部は電極部分1122,1124,1126の内側の軸方向先端面1134,1136,1138,1142に面しており、その結果として得られる隙間1102、1104は、電極1100の長手軸(例えば、z軸)に直交する電極1100の平面(例えば、x−y平面)に垂直ではない方向を向いている。この例においては、内側の先端面1134,1136,1138,1142が平坦な面にされる代わりに湾曲している、または扇形をしていることに留意されたい。この配置は中心部分1124の全長にわたる表面形状1186を有する単体としての電極1100の中心部分1124の製造を容易にする。
【0060】
図13および図14は本開示の別の実施形態により提供される電極1300の斜視図である。図4〜図6に示されているものと類似した特徴および要素は、同様の参照符号によって示している。図13は電極構造100(図2および図3)の内部空間202に面している内側表面1312を見た電極1300を示したものである。図14は内部空間202と反対方向を向く外側表面1402を見た電極1300を示したものである。電極1300の内側表面1312は、先端線1372に沿って位置する細長い表面形状1386を有している。細長い表面形状1386は、内側表面1312の横の中心の電極部分1324の全長に沿って延びる開口部、または内側表面1312の横の中心電極部分1324の全長に沿って延びる溝であってもよい。溝があるとき、電極1300は、溝と直線的に整列し、電極1300の厚みを貫通する開口部を有していてもよい。この例において、表面形状1386は端部領域1322、1326わたって連続している。またこの例においては、図14に示されているように、電極1300は、幅を狭くした端部領域1422、1424と、この幅を狭くした端部領域1422、1424を受ける相補的に窪んだ、つまり切り込まれた領域1432、1434を有する端部領域1322、1326をそれぞれ有するように組立てられ分割されている。その結果、図13に示されているように、電極1300の内側表面1312において、それぞれの軸方向内側の端面1334、1336、1338、1342は電極1322、1324、1326に面しており、その結果としての隙間1302、1304はx−y平面に対し垂直に向いている。この構成はまた、中心部分1324の全長にわたる表面形状1386を持つ単体としての電極1300の中心部分1324の組立を容易にする。
【0061】
図11〜図14に示されている電極1100、1300は、その他の態様においては、図4〜図6に示されている電極400と類似している。電極1100、1300は図4〜図6に示されている電極400と併せて、上記と同様の有利な点を有する。
本開示において記載されている電極は、任意の適切な技術により組立てることができる。いくつかの実施形態においては、電極の種々の特徴は電線による放電加工(EDM)による精密加工されたものであってもよい。例えば、EDMの使用は、開口部および溝を同じ処理中にカットして形成することを可能にするだろう。さらに、このプロセスは開口部や溝の構成を確かなものにし、電極の内部に面する形状は互いに正確で精密なものとなる。これは高分解能特性にとって重要なことである。
【0062】
図15はイオンを操作したり処理したりする(イオンの捕捉、イオンの蓄積等)装置1500の、またはそのような装置1500の部分の斜視図であり、本開示の中で述べられている実施形態に基づいて提供され得る。装置1500は複数の電極1502、1504、1506、1508を備えており、それらは適切な筐体1522の中に取り付ける電極構成1510を形成する。筐体1522は真空チャンバ、または真空チャンバの一部であり、また真空チャンバの中に設置することもできる。(図示せず)。このような真空チャンバは、適切なポンプや他の脱気方法により望ましいマイナス気圧に脱気することができる。一例に過ぎないが、図15に示されている電極構造は、4個の軸方向に延びた四重極構造を有しており、分割された電極1502,1504,1506,1508が、図1〜図3に示されている電極構造100の場合のように備えられている。電極1502、1504、1506、1508のうちの1つ以上の電極が上述の、かつ図4〜図6および図9〜図14に示されている電極のように構成されている。イオンの径方向排出のために、電極1502、1504、1506、1508の電極の1つ以上が、電極1502、1504、1506、1508の厚みを貫通するチャネルに関連する開口部1542を有する。筐体1522は1つ以上の開口部1542と列をなす開口部1582を有し、排出されたイオンが、電極構造1510に対して外側に取り付けられた1つ以上の検出器(図示せず)に到達する経路を提供する。電極1502,1504,1506,1508の1つ以上は、図4〜図6および図9〜図14に示されているように、100%の長さかそれより短い開口部1542、軸に沿った溝1586のような細長い表面形状、または開口部1542と軸溝1586との両方を有していてもよい。したがって、電極1502、1504、1506、1508の1つ以上は、上に述べた改善された形状および電気的均一性を備えてもよい。装置1500は適切な質量スペクトル関連の器機またはシステムとして提供されてもよい。
【0063】
図16は、線形イオントラップに基づく質量分光(MS)システム1600の極めて一般化されかつ単純化された概略図である。MSシステム1600は図16に示されているが、一例にしか過ぎず、本開示において述べられている実施形態を適用可能である。本開示において述べられている実施形態の使用は別として、図16に示されている種々の構成要素または機能は一般的に公知であり、そのため簡単な概略のみを必要とする。
【0064】
MSシステム1600は線形または二次元のイオントラップ1602を含み、上述の、そして図1〜図6および図9〜図15に示されている構成要素および形状と結びついた電極構造100または1510のような電極構造を有することができる。種々のDCおよびAC(RF)電圧源が、上に述べたようなイオントラップ1602の種々の導電部品と作用的につながっている。電圧源はDC信号発生器1612、RFトラップ場信号発生器1614、およびRF補助場信号発生器1616を含む。イオン源1622のサンプルは、内部イオン化の場合に、イオン化されるサンプル物質の導入、または外部イオン化の場合に導入されるイオンのためにイオントラップ1602と組合わせることができる。イオン検出器1632は、イオン検出器1632から出力される信号を受信するために、検出後の信号の処理器1634とつながっている。検出後の信号処理器1634は、出力データと質量スペクトルとを取得するための増幅、加算、記憶等の信号処理器能を実行するために種々の回路や構成部品を表すものであってもよい。図16の信号ラインに示されているように、MSシステム1600の種々の構成要素および機能実体は、任意の適切な電子コントローラー1642とつながっている。電子コントローラー1642は1つ以上の計算または電子処理装置を表すものであってもよく、ハードウェアおよびソフトウェア両方の特質を有してもよい。例として電子コントローラー1642は、操作のパラメーターおよびDC信号発生器1612、RFトラップ場信号発生器1614、RF補助場信号発生器1616によりイオントラップ1602に供給される電圧のタイミングを制御することができる。さらに、電子コントローラー1642は、全体的にまたは部分的に、本開示において述べられている方法の1つ以上の工程について実行および制御ができる。
【0065】
本開示において述べられている方法および装置は、上記において一般的に述べられている、または図16に例示として示されているように、MSシステム1600において実行できることがわかる。しかしながら本主題は図16に示されている特定のMSシステム1600または図16に示されている回路や部品の特定の構成に限定されるものではない。さらに、本主題はMSに基づく適用に限定されるものでもない。
【0066】
本開示における主題は、イオンを捕捉するために磁場を用い、イオンをトラップ場(またはイオンシクロトロンセル)から排出するのに電場を用いるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT−ICR)に基づくイオン捕捉操作にも適用できる。本主題はまた、上記特許文献4に記載のような静電トラップにも適用できる。これらのイオントラップおよび質量スペクトル技術の装置や方法は、当業者には周知であるので、本明細書においてさらに詳しく述べる必要はない。
【0067】
本発明の種々の局面または詳細は、発明の範囲を逸脱することなく変更してもよいことがさらに理解されるであろう。さらに、上記の記載は例示の目的のみであり、限定を加えるためのものではなく、本発明は特許請求の範囲により定義されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本開示に記載されている実施形態により提供される電極構造の一例の斜視図である。
【図2】図1に示されている電極構造の、当該電極構造の中心軸に直交する径方向面の断面図である。
【図3】図1に示されている電極構造の、中心軸に直交する軸方向面の断面図である。
【図4】本開示に記載されている実施形態により提供される電極の一例の斜視図である。
【図5】図4に示されている電極の反対側からの斜視図である。
【図6】図4および5に示されている電極の上部の立面図である。
【図7】公知の電極の端部の立面図である。
【図8】図7に示されている電極の横断面である。
【図9】本開示で記載されている実施形態により提供される電極の他の例の端部の立面図である。
【図10】図9に示されている電極の断面図である。
【図11】本開示に記載されている実施形態により提供される電極の他の例の斜視図である。
【図12】図11に示されている電極の反対側からの斜視図である。
【図13】本開示で記載されている実施形態により提供される電極の他の例の斜視図である。
【図14】図13に示されている電極の反対側からの斜視図である。
【図15】本開示に記載されている電極を実施できる装置の例である。
【図16】質量分析システムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを操作するための電極構造であって、
中心軸と同軸に配列された複数の電極であって、各電極は大略的に前記中心軸の方向に延びる軸長を有し、当該電極構造の内部空間から大略的に外方を向く第1の軸方向端部、第2の軸方向端部および外側表面と、前記内部空間に大略的に面し、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる内側表面とを含む複数の電極を備え、
少なくとも前記電極の一つは、前記内側表面から前記外側表面へ径方向に延びる開口部を有する開口された電極であり、
前記開口された電極の前記内側表面は表面形状を有し、前記表面形状は前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へ前記軸方向に沿って均一であることを特徴とする、イオンを操作するための電極構造。
【請求項2】
前記開口部が、前記開口された電極の前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へ前記軸方向に延びていることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造。
【請求項3】
前記開口された電極の前記内側表面が、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる細長い表面形状を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造。
【請求項4】
前記細長い表面形状が、前記開口された電極へ径方向に延びる溝であって、前記開口部と連通している溝を含むことを特徴とする、請求項3に記載の電極構造。
【請求項5】
前記溝の軸長が前記開口部の軸長よりも長いことを特徴とする、請求項4に記載の電極構造。
【請求項6】
第1の端部電極部分と、前記第1の端部電極部分から前記中心軸に沿って軸方向に離間している第2の端部電極部分とを備え、前記複数の電極が前記第1の端部電極部分と前記第2の端部電極部分との間に軸方向に挿入されていることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造。
【請求項7】
前記開口部が、前記開口された電極の前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと前記軸方向に延びていることを特徴とする、請求項6に記載の電極構造。
【請求項8】
前記開口された電極の前記内側表面が、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる細長い表面形状を含んでいることを特徴とする、請求項6に記載の電極構造。
【請求項9】
前記細長い表面形状が、前記開口された電極へと径方向に延びる溝であって、前記開口部と連通している溝を含むことを特徴とする、請求項8に記載の電極構造。
【請求項10】
前記溝の軸長が前記開口部の軸長よりも長いことを特徴とする、請求項9に記載の電極構造。
【請求項11】
各電極が、第1の端部部分と、前記第1の端部部分から軸方向に離間した中心部分と、前記中心部分から軸方向に離間した第2の端部部分とに分割されており、
前記開口された電極の前記内側表面の前記表面形状が、前記中心部分の前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へ前記軸方向に沿って均一であり、前記表面形状の前記均一性は、少なくとも前記第1の軸方向端部に最も近い前記開口された電極の前記第1の端部部分の一部と、少なくとも前記第2の軸方向端部に最も近い前記開口された電極の前記第2の端部部分の一部とにわたって連続していることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造。
【請求項12】
前記開口部が、前記開口された電極の前記中心部分の前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと軸方向に沿って延びていることを特徴とする、請求項11に記載の電極構造。
【請求項13】
前記開口された電極の前記内側表面が、前記中心部分の前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へ、そして少なくとも前記第1の軸方向端部に最も近い前記開口された電極の前記第1の端部部分の一部および少なくとも前記第2の軸方向端部に最も近い前記開口された電極の前記第2の端部部分の一部とにわたって延びている細長い表面形状を含んでいることを特徴とする、請求項11に記載の電極構造。
【請求項14】
前記細長い表面形状が、前記開口された電極へと径方向に延びる溝であって、前記開口部と連通している溝を含むことを特徴とする、請求項13に記載の電極構造。
【請求項15】
前記表面形状の前記均一性は、前記開口された電極の前記第1の端部部分の全長と、前記開口された電極の前記第2の端部部分の全長とにわたって連続していることを特徴とする、請求項11に記載の電極構造。
【請求項16】
前記開口された電極の前記表面形状の少なくとも一部分が、大略的に双曲線状であり、端部領域を有し、前記開口部は前記端部領域と軸方向に整列していることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造。
【請求項17】
前記複数の電極が、前記中心軸に対して前記開口された電極に対向して配置された対向電極を含み、前記対向電極の内側表面は対向する表面形状を含み、前記対向する表面形状は、前記対向電極の前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へ前記軸方向に沿って均一であることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造。
【請求項18】
前記開口された電極は、前記中心軸に直交し径方向軸および横軸によって規定される平面における断面を含んでおり、
前記断面は、前記横軸に沿った幅と、前記径方向軸に沿った深さとを有し、
前記開口部は、前記幅の中心において前記径方向軸に沿って径方向に延び、
前記断面は、前記開口部と横方向に関して中心を合わせられた断面部分であって、前記内側表面から前記深さを越えて前記開口された電極へと径方向に延びる均一な断面部分を含んでおり、
前記均一な断面部分は前記開口された電極の前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へ軸方向に沿って均一であることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造。
【請求項19】
前記開口された電極は、前記内部空間に面する平面であって、前記開口された電極の軸長と前記中心軸に対して直交する方向に向いた横軸とによって規定される平面における断面を含んでおり、前記断面は前記横軸に沿った幅を有し、
前記複数の電極は、前記中心軸に対して前記開口された電極の反対に配置された対向電極を含み、前記対向電極は、前記内部空間に面する平面であって、前記開口された電極の前記断面に対向する平面における断面を含み、
前記開口された電極および前記対向電極の前記断面は、前記開口された電極および前記対向電極のそれぞれの前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へ前記軸方向に沿って同じであることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造。
【請求項20】
イオンを操作するための電極構造であって、
中心軸に同軸に配列された複数の電極であって、各電極は前記中心軸の方向に大略的に延びる軸長を有し、各電極は当該電極構造の内部空間から大略的に外方を向く第1の軸方向端部、第2の軸方向端部および外側表面と、前記内部空間に大略的に面し、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと軸方向に延びる内側表面とを含む複数の電極を備え、
少なくとも前記電極の一つは、前記軸方向に、および前記内側表面から前記外側表面へ径方向に延びる開口部を有する開口された電極であり、
前記開口された電極の前記内側表面は表面形状を有し、前記表面形状は前記軸方向に均一な部分長に沿って均一であり、前記開口は前記均一な部分長に沿って位置しており、前記均一な部分長は前記開口部の軸方向長さよりも長いことを特徴とする、イオンを操作するための電極構造。
【請求項21】
第1の端部電極部分と、前記第1の端部電極部分から前記中心軸に沿って軸方向に離間している第2の端部電極部分とを備え、前記複数の電極が前記第1の端部電極部分と前記第2の端部電極部分との間に軸方向に挿入されていることを特徴とする、請求項20に記載の電極構造。
【請求項22】
前記開口された電極の前記内側表面が、前記均一な部分長に沿って延びる細長い表面形状を含んでいることを特徴とする、請求項20に記載の電極構造。
【請求項23】
前記細長い表面形状が、前記開口された電極へ径方向に延びる溝であって、前記開口部と連通している溝を含むことを特徴とする、請求項22に記載の電極構造。
【請求項24】
前記複数の電極が、前記中心軸に対して前記開口された電極の反対側に配置された第2の電極を含み、
前記第2の電極の前記内側表面は、第2の表面形状を含み、
前記第2の表面形状は、前記軸方向に第2の均一な部分長に沿って均一であり、
前記第2の均一な部分長は、前記中心軸に対して前記開口された電極の前記均一な部分長と軸方向に整列していることを特徴とする、請求項20に記載の電極構造。
【請求項25】
第1の軸方向端部、第2の軸方向端部、および前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる細長い長さと、
前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる外側表面であって、当該外側表面は、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる湾曲部分を含み、前記湾曲部分は、大略的に先端線に中心を合わされた端部領域を含むとともに、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びて前記先端線と整列する細長い表面形状を含んでいる外側表面とを備えたことを特徴とする、イオン処理装置において電場を生成する電極。
【請求項26】
前記細長い表面形状が、前記湾曲部分から、前記先端線と整列する前記電極の厚みを貫通して径方向に延びるとともに、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと軸方向に延びる開口部を含んでいることを特徴とする、請求項25に記載の電極。
【請求項27】
前記細長い表面形状が、前記先端線と整列する前記電極へ径方向に延びるとともに前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと軸方向に延びる溝を含んでいることを特徴とする、請求項25に記載の電極。
【請求項28】
前記湾曲部から、前記先端線と整列する前記電極の厚みを貫通して径方向に延び、前記溝と連通している開口部を有していることを特徴とする、請求項27に記載の電極。
【請求項29】
第1の端部部分と、前記第1の端部部分から前記中心軸に沿って軸方向に離間した第2の端部部分とを有し、
前記電極が前記第1の端部部分と前記第2の端部部分との間に軸方向に挿入されていることを特徴とする、請求項27に記載の電極。
【請求項30】
第1の軸方向端部、反対側の第2の軸方向端部、および前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる細長い長さと、前記細長い長さに対して直交する断面平面に位置する厚みと、前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる外側表面とを含む本体を備え、前記外側表面は前記第1の軸方向端部から前記第2の軸方向端部へと延びる湾曲部分を含み、
前記本体は、第1の端部部分と、前記第1の端部部分から軸方向に第1の間隙によって離間した中心部分と、前記中心部分から軸方向に第2の間隙によって離間した第2の端部部分とに分割されており、
前記第1の間隙の少なくとも一部と、前記第2の間隙の少なくとも一部とが前記断面平面に対してある角度をなすように向けられていることを特徴とする、イオン処理装置において電場を生成する電極。
【請求項31】
前記湾曲部分が、前記中央部分の全長に沿って軸方向に延びる細長い表面形状を含むことを特徴とする、請求項30に記載の電極。
【請求項32】
前記第1の端部部分が第1の端部部分の内側表面を含み、前記中央部分が第1の中央部分の内側表面および対向する第2の中央部分の内側表面を含み、前記第2の端部部分が前記第2の端部部分の内側表面を含み、
前記第1の端部部分の内側表面、前記第1の中央部分の内側表面、前記第2の中央部分の内側表面、および前記第2の端部部分の内側表面のそれぞれが、前記直交する平面に対して湾曲していることを特徴とする、請求項30に記載の電極。
【請求項33】
前記中央部分が、第1の幅を狭くした端部領域と、対向する第2の幅を狭くした端部領域とを含み、前記第1の端部部分は、前記第1の幅を狭くした端部領域を収容する第1の凹部領域であって、前記第1の幅を狭くした端部領域と第1の間隙によって離間した第1の凹部領域を含み、前記第2の端部部分は、前記第2の幅を狭くした端部領域を収容する第2の凹部領域であって、前記第2の幅を狭くした端部領域と第2の間隙によって離間した第2の凹部領域を含むことを特徴とする、請求項30に記載の電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−207756(P2007−207756A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−18220(P2007−18220)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】