説明

イオン発生器および電子機器

【課題】小型で簡単な構造のイオン発生器を提供する。
【解決手段】イオン発生器35では、第1電極41および第2電極42に電圧が印加されると、第1電極41の先端で電界の集中に基づき強い電界が発生する。空気分子の電離に基づきコロナ放電が引き起こされる。その結果、第1電極41の先端ではイオン45が発生する。その一方で、第1電極41周りに広がる第2電極42では表面から電界47が発生する。電界47は第1電極41に沿って生成される。その結果、イオン45は第1電極41に沿って前方に放出される。こうしてイオン発生器35は極めて小型でかつ簡単な構造でイオンを放出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばイオンを発生させるイオン発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン発生器すなわちイオナイザは広く知られる。イオナイザは針状の電極を備える。電極に例えば数kVの高電圧が印加されると、電極の先端ではコロナ放電が生じる。こうして電極の先端で空気イオンが発生する。空気イオンは電極の先端周辺に漂う。こうした空気イオンは例えば送風ファンに基づき対象物に放射される。その結果、対象物の電荷は中和される。対象物の帯電は防止される。
【特許文献1】特開昭60−221776号公報
【特許文献2】特開平5−36490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば現金自動預払い機(ATM)に組み込まれるスタッカ内には紙幣が重ね合わせられる。例えば紙幣が帯電してしまうと、スタッカ内で紙幣同士の反発に基づき紙幣はうまく重なり合うことができない。ATMの故障につながる。しかしながら、ATMの内部空間は比較的に狭い。したがって、送風ファン付きのイオナイザは組み込まれることはできない。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、小型で簡単な構造のイオン発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、イオン発生器は、先端でイオンを発生させる針状の第1電極と、前記第1電極の基端を支持しつつ前記第1電極周りに広がり、第1電極に沿って電界を発生させる板状の第2電極とを備えることを特徴とする。
【0006】
こうしたイオン発生器では、第1電極および第2電極に電圧が印加されると、第1電極の先端では電界の集中に基づき強い電界が発生する。空気分子の電離に基づきコロナ放電が引き起こされる。その結果、第1電極の先端ではイオンが発生する。その一方で、第1電極周りに広がる第2電極では表面から電界が発生する。電界は第1電極に沿って生成される。その結果、イオンは第1電極に沿って前方に放出される。こうしてイオン発生器は極めて小型でかつ簡単な構造でイオンを放出することができる。
【0007】
こういったイオン発生器では、前記第2電極の表面は、前記第1電極に直交する仮想平面に沿って広がる。その一方で、前記第2電極の表面は、前記第1電極周りに広がる湾曲面で規定されてもよい。こうした湾曲面によれば、電界は湾曲面の法線に沿って生成される。イオンは広い範囲に放出されることができる。このとき、前記第1電極は前記第2電極の表面の法線に沿って前記第2電極の表面から直立する。こうしたイオン発生器は電子機器に組み込まれればよい。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、小型で簡単な構造のイオン発生器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0010】
図1は本発明に係る電子機器の一具体例すなわち現金自動預け払い機(ATM)11の外観を概略的に示す。このATM11は例えば現金の預け入れや引き出し、口座振り込みといった各種の手続きを実現する。ATM11は箱形の筐体12を備える。筐体12の前面には紙幣投入口13や硬貨投入口14が形成される。紙幣投入口13や硬貨投入口14には開閉扉が配置される。預け入れや引き出し、口座振り込みにあたって、紙幣や硬貨は、紙幣投入口13や硬貨投入口14に受け入れられたり、紙幣投入口13や硬貨投入口14から利用者に引き渡されたりする。
【0011】
筐体12の前面にはカード挿入口15や通帳挿入口16が形成される。各種の手続きの実現にあたってカード挿入口15には例えばキャッシュカードが挿入される。通帳挿入口16には通帳が挿入される。各種の手続きの事実は通帳に記帳される。同様に、各種の手続きの実現にあたって筐体12には入力装置すなわちタッチパネル17が組み込まれる。タッチパネル17の画面には、選択肢を表示する例えばキーボタンやテンキー、文字キーが表示される。タッチパネル17の表面でキーボタンやテンキー、文字キーが触れられると、対応する選択肢や数字、文字がATM11に取り込まれる。
【0012】
図2に示されるように、紙幣投入口13には繰り出しユニット21が接続される。例えば入金時に紙幣投入口13に複数枚の紙幣が投入されると、繰り出しユニット21は鑑別部22に向かって1枚ずつ紙幣を繰り出す。鑑別部22は紙幣の中から真券を選別すると同時に、真券の合計金額を算出する。選別された真券は一時格納室23に収容される。鑑別部22で受け取ることができないと判断された紙葉類は繰り出しユニット21に戻される。戻された紙葉類は利用者に返却される。この時点で入金手続きがキャンセルされると、一時格納室23の真券は鑑別部22を通過して繰り出しユニット21に戻される。戻された真券は利用者に返却される。
【0013】
その一方で、入金手続きの続行が確認されると、一時格納室23に格納された真券は再び鑑別部22に送り込まれる。このとき、鑑別部22では再利用可能な一万円札と千円札とが選別される。再利用することができないと判断された真券すなわち破損券や五千円札は真券回収室24に送り込まれる。選別された一万円札および千円札は種類別に振り分けられる。一万円札は第1スタッカ25に収容される。千円札は第2スタッカ26に収容される。利用者の取り忘れによって繰り出しユニット21に残された紙葉類は、鑑別部22を通過して回収箱27に回収される。
【0014】
出金手続き時には、引き出し希望金額に見合った枚数の一万円札や千円札が第1スタッカ25や第2スタッカ26から繰り出される。繰り出された紙幣の幅や厚みは幅センサ28や厚みセンサ29で確認される。確認された紙幣は繰り出しユニット21に送り込まれる。利用者は、引き出し希望金額に相当する紙幣を紙幣投入口13から受け取ることができる。利用者が紙幣を取り忘れると、繰り出しユニット21は、取り忘れられた紙幣を繰り出す。繰り出された紙幣は鑑別部22を通過して回収箱27に回収される。
【0015】
第1スタッカ25や第2スタッカ26は収容箱31を備える。収容箱31には例えば床面に直交する垂直方向に移動自在のステージ32が組み込まれる。ステージ32上に紙幣が積み重ねられる。1対のローラ33の働きで紙幣はステージ32上に積み重ねられる。同様に、ステージ32上に積み重ねられる紙幣は1対のローラ33の働きで収容箱31から繰り出される。収容箱31に形成される開口34にはイオン発生器35の先端が向き合わせられる。後述のように、イオン発生器35は収容箱31内にイオンを照射することができる。イオン発生器35の先端は収容箱31の外側に配置される。
【0016】
図3は本発明の第1実施形態に係るイオン発生器35の構造を概略的に示す。このイオン発生器35は針状の第1電極41を備える。第1電極41は基端で円盤状の第2電極42に支持される。第1電極は先端に向かうにつれて先細る。第2電極42は第1電極41周りで広がる。第2電極42の表面は、第1電極41に直交する仮想平面に沿って広がる。第1電極41は、第2電極42の表面の法線に沿って第2電極42の表面から直立する。ここでは、第1電極41は第2電極42の軸心に沿って直立する。
【0017】
こうしたイオン発生器35では、基端から先端まで第1電極41の長さは例えば10mm程度に設定される。第2電極42の直径は例えば10mm程度に設定される。こうした第1電極41および第2電極42には例えば鉄やステンレス鋼といった高伝導性の導電材料が用いられる。第1電極41の基端および第2電極42は相互に結合されてもよく、相互に分離して配置されてもよい。
【0018】
第1電極41および第2電極42には高電圧発生回路43が接続される。接続にあたって配線44が用いられる。配線44は例えば第2電極42の中心すなわち第1電極41の基端に接続される。こうして高電圧発生回路43は第1電極41および第2電極42に同一の電圧値の電圧を印加することができる。第1電極41および第2電極42には、直流電圧が印加されてもよく、交流電圧が印加されてもよい。ここでは、第1電極41および第2電極42に印加される電圧の電圧値は例えば5[kV]程度に設定される。
【0019】
いま、第1電極41および第2電極42に例えば直流の正電圧が印加されると、第1電極41の先端では電界の集中に基づき強い電界が発生する。空気分子の電離に基づきコロナ放電が引き起こされる。その結果、図4に示されるように、第1電極41の先端ではプラスイオン45およびマイナスイオン46が発生する。第1電極41には正電圧が印加されることから、マイナスイオン46は第1電極41に吸着する。プラスイオン45は第1電極41の先端付近に飛散する。
【0020】
第2電極42では正電圧の印加に応じて表面から電界47が発生する。電界47は第2電極42の表面の法線すなわち第1電極41に沿って生成される。電界47は、第1電極41の先端付近に広がるプラスイオン45に作用する。その結果、プラスイオン45は第1電極41に沿ってイオン発生器35の前方に放出される。プラスイオン45は収容箱31内に飛散する。こうしたプラスイオン45の働きで紙幣同士の間で静電気の発生は回避される。ステージ32上で紙幣同士の吸着は回避される。ステージ32上に紙幣は整然と積み重ねられることができる。
【0021】
なお、第1電極41および第2電極42に交流電圧が印加される場合、第1電極41および第2電極42には例えば正電圧と負電圧とが交互に印加される。このとき、例えば電圧が正から負に反転するまでの間にプラスイオン45はすでに前方に放出される。電圧が負に反転すると、プラスイオン45は第1電極41の先端に吸着する。マイナスイオン46は第1電極41に沿ってイオン発生器35の前方に放出される。こうして電圧の反転に応じてプラスイオン45およびマイナスイオン46が交互に放出される。
【0022】
こうしたイオン発生器35では、第1電極41の先端でプラスイオン45やマイナスイオン46が発生する。第2電極42では表面からその法線に沿って電界47が発生する。電界47の働きでプラスイオン45やマイナスイオン46はイオン発生器35の前方に放出される。こうしてイオン発生器35は極めて小型でかつ簡単な構造でプラスイオン45やマイナスイオン46を放出することができる。その結果、イオン発生器35は、例えばATM11といった筐体12内の限られた収容空間を区画する電子機器にも組み込まれることができる。
【0023】
以上のようなイオン発生器35では、第2電極42の直径が増大するにつれて第1電極41の先端付近の空間で電位が上昇する。第1電極41の先端付近の空間の電位と第1電極41に印加される電位との差が減少する。その結果、プラスイオン45やマイナスイオン46の発生の効率が低下する。したがって、第2電極42の直径Dと第1電極41の長さLとの比はD/Lは例えば0.5〜2.0程度に設定されることが望ましい。
【0024】
図5は本発明に係る電子機器の一具体例すなわちレーザプリンタ51の構造を概略的に示す。レーザプリンタ51はハウジング52を備える。ハウジング52の収容区間には給紙カセット53が配置される。給紙カセット53には例えば複数枚のプリント用紙が収納される。ハウジング52の上面には排紙受け54が形成される。プリント後のプリント用紙は排紙口55から排紙受け54に向かって吐き出される。こういったレーザプリンタ51は例えばコンピュータ端末(図示せず)に接続されて使用される。
【0025】
ハウジング52の収容空間にはトナーカットリッジ56が組み込まれる。トナーカットリッジ56の筐体57内には例えば黒色のトナーが収納される。筐体57には感光ドラム58が組み込まれる。感光ドラム58は水平方向に延びる回転軸回りで回転する。筐体57には、円筒表面で感光ドラム58の円筒表面に接触する帯電ローラ59が組み込まれる。帯電ローラ59は感光ドラム58の回転軸に平行な回転軸回りで回転する。帯電ローラ59は感光ドラム58の円筒表面を帯電させる。
【0026】
筐体57内には現像ローラ61が組み込まれる。現像ローラ61は円筒表面で感光ドラム58の円筒表面に接触する。現像ローラ61は感光ドラム58の回転軸に平行な回転軸回りで回転する。現像ローラ61は回転に基づき、トナーカットリッジ56の筐体57内に収容されるトナーを円筒表面に付着させる。こうしてトナーは感光ドラム58に供給される。その結果、前述の帯電ローラ59に基づき帯電した感光ドラム58の円筒表面にトナーが付着する。
【0027】
感光ドラム58にはハウジング52の収容区間に収容される光学ユニット62が向き合わせられる。光学ユニット62は、現像ローラ61との接触に先立って感光ドラム58の円筒表面に向けてレーザ光線を照射する。レーザ光線は感光ドラム58の円筒表面に静電潜像を描き出す。その後、感光ドラム58の円筒表面は現像ローラ61の円筒表面に接触する。その結果、確立された静電潜像に基づき感光ドラム58の円筒表面にはトナーが付着する。感光ドラム58の円筒表面に可視像が形成される。
【0028】
感光ドラム58の円筒表面には転写ローラ63の円筒表面が向き合わせられる。転写ローラ63は感光ドラム58の回転軸に平行な回転軸回りで回転する。感光ドラム58および転写ローラ63の間には給紙カセット53から供給されるプリント用紙が挟み込まれる。転写ローラ63および感光ドラム58の回転に基づき転写ローラ63および感光ドラム58の間を通過する。このとき、転写ローラ63の働きで感光ドラム58からプリント用紙にトナーの可視像が転写される。その後、筐体57内では感光ドラム58の円筒表面に残存するトナーが拭い去られる。
【0029】
ハウジング52の収容空間には熱ローラ64およびプレッシャーローラ65が配置される。熱ローラ64およびプレッシャーローラ65は感光ドラム58の回転軸に平行な回転軸回りで回転する。熱ローラ64およびプレッシャーローラ65の間には可視像の転写後のプリント用紙が挟み込まれる。熱ローラ64およびプレッシャーローラ65の回転に基づき熱ローラ64はプリント用紙上のトナーを溶融させる。プレッシャーローラ65はプリント用紙に圧力を加える。こうしてトナーはプリント用紙に染み込む。トナーの可視像はプリント用紙に定着する。
【0030】
熱ローラ64およびプレッシャーローラ65と排紙口55との間には本発明の第2実施形態に係るイオン発生器35aが配置される。ここでは、プリント用紙の幅方向に並列に複数台のイオン発生器35aが配置されればよい。各イオン発生器35aは、熱ローラ64およびプレッシャーローラ65から排紙口55に向かって案内されるプリント用紙に向かってイオンを照射する。照射されるイオンの働きでプリント用紙では静電気の発生は回避される。プリント用紙同士の吸着は回避される。プリント用紙は排紙受け54上に整然と積み重ねられることができる。
【0031】
図6は本発明の第2実施形態に係るイオン発生器35aの構造を概略的に示す。このイオン発生器35aでは、第2電極42の表面は、第1電極41の基端周りに広がる湾曲面で規定される。第2電極42の表面は第1電極41の基端に向かって膨らむ。すなわち、第2電極42の表面は第1電極41の基端から遠ざかるにつれて後退する。前述のレーザプリンタ51では複数のイオン発生器35aに対して共通の高電圧発生回路43が接続されればよい。その他、前述のイオン発生器35と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0032】
こうしたイオン発生器35aでは、図7に示されるように、第2電極42の表面の法線は、第1電極41の基端から遠ざかるにつれて第1電極41に対して傾斜する。こうした第2電極42の表面の法線に沿って電界47が生成される。その結果、第2電極42の表面が平面で規定される場合に比べて、プラスイオン45は広い範囲に飛散することができる。イオン発生器35aは例えばプリント用紙といった比較的に大きな対象の帯電を防止することができる。なお、イオン発生器35aはATM11に組み込まれてもよく、前述のイオン発生器35がレーザプリンタ51に組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る電子機器の一具体例すなわち現金自動預け払い機の外観を概略的に示す斜視図である。
【図2】現金自動預け払い機の内部構造を概略的に示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るイオン発生器の構造を概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るイオン発生器の構造を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明に係る電子機器の一具体例すなわちレーザプリンタの構造を概略的に示す部分透視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るイオン発生器の構造を概略的に示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るイオン発生器の構造を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
11 電子機器(現金自動預け払い機)、35、35a イオン発生器、41 第1電極、42 第2電極、45 イオン(プラスイオン)、46 イオン(マイナスイオン)、47 電界、51 電子機器(レーザプリンタ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端でイオンを発生させる針状の第1電極と、
前記第1電極の基端を支持しつつ前記第1電極周りに広がり、第1電極に沿って電界を発生させる板状の第2電極とを備えることを特徴とするイオン発生器。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン発生器において、前記第2電極の表面は、前記第1電極に直交する仮想平面に沿って広がることを特徴とするイオン発生器。
【請求項3】
請求項1に記載のイオン発生器において、前記第2電極の表面は、前記第1電極周りに広がる湾曲面で規定されることを特徴とするイオン発生器。
【請求項4】
請求項2または3に記載のイオン発生器において、前記第1電極は前記第2電極の表面の法線に沿って前記第2電極の表面から直立することを特徴とするイオン発生器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のイオン発生器を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−230891(P2009−230891A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71565(P2008−71565)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】