説明

イオン風発生装置およびイオン風発生ユニット

イオン風発生ユニット(2)は、放電極(6)を有する放電部(4)と対向する一対の電極板(9)を有する対向電極部(5)とから成る。放電部(4)と対向電極部(5)とは隙間(15)が形成されるように連結される。放電部(4)には負の高電位とされる放電極(6)が設けられ、対向電極部(5)には電極板(9)と同様の接地電位に保持される空中放電防止電極(11)が設けられている。コロナ放電が発生すると、生成したマイナス荷電粒子が一対の電極板(9)により加速され、イオン風が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、遮蔽空間構築システムに用いられるイオン風発生装置、およびそのイオン風発生装置に搭載されるイオン風発生ユニットに関する。
【背景技術】
従来から知られている遮蔽空間構築システムとしては、一般的に、壁やカーテン等の遮蔽壁を用いる物理的遮蔽方式と、空気流による遮蔽領域を形成するエアーカーテン方式とがある。エアーカーテン方式では、ファンにより形成された幕状の空気流を遮蔽面として利用し、遮蔽面の一方の側の空間から他方の側の空間へ空気が移動するのを防止するようにしている。いずれの方式の場合も、遮蔽壁や遮蔽面で空間を仕切り、仕切られた遮蔽空間を局所排気装置等で排気して浄化する。
ところで、遮蔽空間とその外部との間で製品等の移動を行う場合、ベルトコンベア等の搬送装置を遮蔽空間と外部とに跨るように設置することが多い。物理的遮蔽方式では、遮蔽壁を貫通するように搬送装置を設ける必要がある。そのため、遮蔽壁の一部が欠け、遮蔽能力が低下してしまう。また、遮蔽空間が狭い場合には、作業時に遮蔽壁が邪魔になって作業能率が著しく低下することになる。
一方、エアーカーテン方式の場合には遮蔽壁を必要としないので上述したような問題は生じ難い。しかし、空気に送風圧をかけて空気流を発生させているため、空気流の後方に渦巻流が発生する。このような渦巻流が発生すると、遮蔽空間への異物の侵入を助長したり、異物の拡散現象を引き起こし、十分な遮蔽効果を挙げられないという欠点がある。
また、空気中の塵埃を除去する装置として、イオン風を発生し、イオン風で空中の塵にマイナス電荷を帯電させ、マイナス電荷に帯電した塵を陽極に集める除塵装置が知られている。この除塵装置では、イオン風の到達距離は30cm程度であり、イオン風は局所的な狭い空間に供給されているだけである。さらに、高湿度環境で使用するとイオン発生用電極に結露が生じて、動作が不安定になるという欠点があった。
【発明の開示】
本発明のイオン風発生装置は、直流電源と、直流電源により接地電位よりも低い電位に保持される複数の放電極と、直流電源により放電極の電位よりも低い電位または接地電位に保持され、互いに間隔を設けて配置された一対の電極板とを備え、コロナ放電により生じるマイナス荷電粒子を一対の電極板によって加速してイオン風を形成するものである。
本発明の他のイオン風発生装置は、直流電源と、直流電源により接地電位よりも低い電位に保持される放電極と、直流電源により接地電位に保持され、互いに間隔を設けて配置された一対の電極板と、放電極と一対の電極板との間に配置されるとともに、接地電位以下であって放電極の電位よりも高い電位に保持され、放電極と電極板との間の空中放電を防止する空中放電防止電極とを備え、コロナ放電により生じるマイナス荷電粒子を前記一対の電極板によって加速してイオン風を形成するものである。
本発明のさらに他のイオン風発生装置は、直流電源と、直流電源により接地電位よりも低い電位に保持される放電極と、直流電源により放電極の電位よりも低い電位または接地電位に保持され、互いに間隔を設けて配置された一対の電極板と、イオン風の流れに沿うように放電極に向けて送風する送風装置とを備え、コロナ放電により生じるマイナス荷電粒子を前記一対の電極板によって加速してイオン風を形成するものである。
なお、コロナ放電の放電電流値を検出する検出手段と、検出手段により検出された放電電流値が所定値以下となったときに送風装置を動作させる制御手段とを設けても良い。
本発明のイオン風発生ユニットはイオン風発生装置に用いられるものであって、接地電位よりも低い電位に保持される放電極と、放電極の電位よりも低い電位または接地電位に保持され、互いに間隔を設けて配置された一対の電極板と、イオン風発生装置に対してイオン風発生ユニットを着脱自在に支持する支持具とを備え、コロナ放電により生じるマイナス荷電粒子を一対の電極板によって加速してイオン風を形成するものである。
イオン風発生ユニットを、放電極が固定された第1の電極部と一対の電極板が固定された第2の電極部とに分割し、第1の電極部と第2の電極部との間に隙間を設けて連結するようにしても良い。
放電極と一対の電極板との間に配置されるとともに接地電位に保持され、放電極と電極板との間の空中放電を防止する空中放電防止電極を設けても良い。
放電極を複数に分割しても良い。
さらに、本発明のイオン発生装置は、上述のイオン風発生ユニットを複数備えるものである。
イオン風発生装置に、イオン風発生ユニットを覆い、イオン風発生ユニットで発生したイオン風を装置外へと導く開口を有するカバーを設け、そのカバーまたはカバーの表面を、プラスに帯電する帯電特性を有する物質で形成しても良い。
また、イオン風発生ユニットを覆い、イオン風発生ユニットで発生したイオン風を装置外へと導く開口を有するカバーを設け、イオン風発生ユニットのイオン風吹き出し口と開口との間の隙間を遮蔽する遮蔽部材を設けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明によるイオン風発生装置の外観斜視図である。
図2は、イオン風発生ユニット2の概略構成を示す図である。
図3は、イオン風発生の原理を説明する図である。
図4は、空中放電を説明する図である。
図5は、空中放電防止電極11を説明する図である。
図6は、空中放電防止電極の他の例を示す図である。
図7は、イオン風発生ユニット2と支持枠30との取り付け構造を説明する図である。
図8は、イオン風発生ユニット2を支持枠30から取り外す動作を説明する図である。
図9は、イオン風発生装置1を用いた遮蔽空間構築システムの一例を示す図である。
図10は、複数の放電極61〜63が設けられたイオン風発生ユニット2を示す図である。
図11は、換気ファン70を有するイオン風発生ユニット2を示す図である。
図12は、イオン風発生装置の他の例を示す図である。
図13は、イオン風の変化を調べる測定装置を示す図である。
図14は、帯電列の一例を示す図である。
図15は、イオン風吹き出しの乱れを説明する図である。
図16は、バリヤー83を有するイオン風発生装置を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明によるイオン風発生装置1の外観斜視図であり、一部を破断面とした。図1に示したイオン風発生装置1では、2組のイオン風発生ユニット2が直列配設されている。イオン風発生ユニット2により生成されたイオン風は、装置下面に設けられた吹き出し口1aから下方に向けて吹き出される。3は制御部であり、前面には電源スイッチなどが設けられている。イオン風発生ユニット2および制御部3は、装置1の外装31内に設けられた支持枠30に取り付けられている。なお、図1に示した装置1ではイオン風発生ユニット2を2つ設けたが、3つ以上設けても良い。
図2はイオン風発生ユニット2の概略構成を示す図であり、一部を破断面とした。イオン風発生ユニット2は、コロナ放電の生じる放電部4と、コロナ放電により発生した電子やマイナスイオンをユニット吹き出し口5aの方向に引き出すための対向電極部5とから成る。
放電部4には放電極6が設けられており、この放電極6には制御部3(図1参照)に設けられた電源によりマイナス電圧(例えば−20kV)が印加される。6aは放電極6に電源ラインを接続するための接続端子である。放電極6は金属製の板状部材であり、放電部4の長手方向に延びる放電極6の下側には鋭角突起6bが所定間隔で複数形成されている。なお、本実施の形態では放電極6に鋭角突起6bを形成したが、針状電極を形成しても良い。放電極6は電気絶縁性の支持部材7を介して枠部材8に固定されている。枠部材8は樹脂等の電気絶縁性の部材からなる。枠部材8の両側面にはイオン風発生ユニット2を装置の支持枠30(図1参照)に取り付けるための連結部13がそれぞれ設けられている。
一方、対向電極部5には、対向する一対の電極板9が設けられている。各電極板9は平面状の電極であって、放電極6の延在方向とほぼ平行となるように枠部材10の内表面に設けられている。枠部材10は電気絶縁性部材により形成されており、電極板9は接着やビス止め等により枠部材10に固定されている。電極板9は金属製の連結材25によって電気的に接続されており、それらは接地電位に保持される。9aは電極板9の一部を枠部材10を貫通して表面側に引き出したものであり、電極板9に接地ラインを接続するための端子である。
11は空中放電防止するための電極であり、金属製丸棒を成形したものである。以下では電極11のことを空中放電防止電極11と呼ぶことにする。空中放電防止電極11は各電極板9の上端部に接触するように設けられており、固定枠12によって枠部材10に固定されている。そのため、空中放電防止電極11は電極板9と同電位(接地電位)に保持されている。
放電部4と対向電極部5とは、それぞれの枠部材8,10に形成された連結部8a,10aをボルト14により締結することにより一体化される。このとき、枠部材8と枠部材10との間には隙間15が形成される。
図3はイオン風発生の原理を説明する図である。3aは放電極6にマイナスの電圧を印加する直流電源であり、プラス側は接地されている。図1に示した装置1では2組のイオン風発生ユニット2を有しており、各々直流電源3aに接続されている。直流電源3aにより放電極6に、例えば−20kV程度のマイナス電圧を印加すると、電界の強さが局部的に高くなる鋭角突起6bの先端付近に電離が強く生じ、コロナ放電が発生する。鋭角突起6bの近傍には、マイナスの荷電粒子(電子eやマイナスイオン21)とプラスの荷電粒子とによるプラズマ領域Pが形成される。このプラズマ領域のマイナス荷電粒子e,21は、放電電極6と空中放電防止電極11および電極板9との間に形成された電界により図示下方に引き出され加速される。
プラズマ領域Pから図示下方に引き出されたマイナス荷電粒子e,21の一部は空中放電防止電極11や電極板9に引き込まれるが、残りは対向する電極板9の間を通り抜けて枠部材10の開口10bから図示下方の空間に放出される。また、プラズマ領域Pから引き出されたマイナス荷電粒子e,21が気体分子22に付着すると気体分子22もマイナス電荷を帯び、電界により図示下方に加速されて開口10bから放出される。
例えば、開口10bの下方を塵埃23などの微粒子が左側から右側へと漂っていた場合、開口10bから吹き出されたマイナス荷電粒子e,21,22が塵埃23に衝突することになる。また、マイナス荷電粒子e,21,22が空間内の空気分子に衝突することによって、下方への空気の流れが生じる。その結果、塵埃23は図示下方へと移動することになり、塵埃23が左側の領域に移動するのを防止することができる。
また、電極間に絶縁体があると、絶縁体の表面に沿った放電(沿面放電)が発生することが知られている。しかし、本実施の形態では、絶縁材料で形成された枠部材8と枠部材10との間に隙間15を形成しているので、沿面放電の発生を抑制することができる。
上述したコロナ放電は、図4に示すように放電極6と電極板9とからなる電極構造でも発生する。ところで、電荷は突起部やエッジ部に集中しやすいという性質を有している。そのため、電極板9の上端エッジ部に電荷が集中して、上端エッジ部と放電極6との間で空中放電現象が発生しやすくなる。その結果、空中放電による騒音の発生や、コロナ放電の減少という問題が生じる。
本実施の形態では、曲率半径の比較的大きな表面形状を有する空中放電防止電極11を設けることによって、電極板9上における電荷の集中を緩和して空中放電現象の発生を防止するようにしている。そのため、丸棒状の空中放電防止電極11の直径は大きい方が好ましい。空中放電防止電極11の配設位置は、例えば図5の斜線領域で示すように、放電極6からの距離Aが放電極6と電極板9の上端部との距離Bより大きくなる領域であればいずれに配設しても良い。また、空中放電防止電極11を複数設けても良い。
もちろん、この場合には放電極6と空中放電防止電極11との間の電界によってコロナ放電が発生するので、B<Aを満足するとともに、コロナ放電発生に最適な距離となるようにBの値を設定しなければならない。また、空中放電防止電極11と電極板9との間で放電が生じないように、空中放電防止電極11の電位は電極板9の電位(接地電位)と等しくする。
また、空中放電防止電極11を電極板9と独立して設けるのではなく、図6に示すように電極板9の上端部9cを断面形状が略円形となるようにしてもよい。このような上端部9cを形成することにより空中放電を抑制することができる。
なお、図4の構成の場合、電極板9はコロナ放電を発生させるための陽極として機能するとともに、発生した電子やマイナスイオンを図示下方に加速するための加速用電極としても機能している。一方、図5の構成の場合には、コロナ放電は放電極6と空中放電防止電極11との間で発生し、電極板9は主として加速用電極として機能する。そのため、コロナ放電発生条件と荷電粒子加速条件とを個別に最適化することが可能となる。
図7は、イオン風発生ユニット2と支持枠30との取り付け構造を説明する図であり、図1のC方向から見た図である。支持枠30には、鍵穴形状の切り欠き300が図示左右方向に形成されている。すなわち、切り欠き300は、装置前方から後方に延在する直線状スリット301と、それに連なる円形孔302とから成る。図7に示すようにイオン風発生ユニット2が支持枠30に保持された状態では、イオン風発生ユニット2の連結部13に形成された連結軸130が円形孔302に係合している。連結軸130の幅寸法L1はスリット301の幅寸法L2よりやや小さめに設定され、上下の円弧面131aは円形孔302とほぼ同一直径を有する円の一部を形成している。
イオン風発生ユニット2を支持枠30から取り外す場合には、まず、図8の矢印R1で示すようにイオン風ユニット2を連結軸130を中心に90度だけ回転させる。その結果、連結軸130の長手方向とスリット301の延在方向とが一致する。次いで、矢印R2で示すように、イオン風ユニット2を装置前方に引き出すことにより、連結軸130が円形孔302からスリット301へと移動し、さらに、スリット301から装置前方へと引き出される。イオン風ユニット2を支持枠30に取り付ける場合には、取り外す場合と全く逆の動作をすれば良い。
なお、図7,8では図示していないが、連結部13と支持枠30との間にクリック機構を設けることにより、イオン風ユニット2自体の傾きをクリック機構により可能な所定の角度に変更することができる。その結果、イオン風の吹き出し方向を、図示下方だけでなく斜め方向とすることができる。また、上述した例では支持枠30を貫通するように円形孔302およびスリット301を形成したが、それぞれ貫通していなくてもよく、円形の凹部とそれに連なる溝であっても良い。
図9はイオン風発生装置1を用いた遮蔽空間構築システムの一例を示す図である。塵埃23が比較的多く存在する空間40とクリーン空間41との間(例えば出入り口など)にイオン風発生装置1を設置して、イオン風42を床43の方向に吹き出すようにする。塵埃23がクリーン空間41方向に移動してきても、図3で説明したように塵埃23はイオン風42により床方向へと移動させられ、クリーン空間41への浸入が阻止される。例えば、図9に示すように床面方向に移動した塵埃23を、床面に設けられた排気口42や局所排気装置等によって排気することにより、阻止された塵埃23を効果的に除去することができる。図9のように図示左側から図示右側に塵埃23が移動するのを防止する場合には、二点鎖線で示すようにイオン風発生ユニット2を左側に傾けて、イオン風の吹き出し方向をやや左側に傾けるのが好ましい。
また、イオン風発生装置1では荷電粒子の流れであるイオン風を形成して、荷電粒子の運動量を塵埃等の微粒子に与えることによって塵埃等をイオン風の流れ方向に導いている。そのため、エアーカーテン方式のように風圧による渦巻流が発生することがなく、渦巻流によって塵埃等がクリーン空間41に拡散するようなことがない。
上述したイオン風発生装置1によれば以下のような効果を奏することができる。第1は、空中放電防止電極11を設けたことにより空中放電を抑制することができ、コロナ放電の低下や、空中放電による騒音の発生を防止することができる。
第2の効果は、放電極6に結露が生じた場合の影響を抑制することができることである。一般的に、湿度の高い環境でイオン風発生装置1を使用した場合、先端が鋭角になっている放電極6に結露が生じやすい。このような結露が生じるとコロナ放電が発生し難くなり、動作が不安定となる。しかし、上述したイオン風発生装置1では複数のイオン風発生ユニット2を有しているので、結露によって一方のイオン風発生ユニット2のコロナ放電が停止しても、他方のイオン風発生ユニット2によるイオン風供給が停止するようなことがない。その結果、結露による影響を抑制することができる。さらに、図3に示すように枠部材8と枠部材10との間に隙間15を形成しているので、放電極6が配設される空間の換気性が良くなり、結露発生が抑制されたり、いったん生じた結露が解消しやすくなる。
第3の効果は、メンテナンス性が向上することである。通常、イオン風発生装置1を長時間使用すると、放電極6,電極板9や脇部材8,10に塵埃が付着し、クリーニングが必要となる。本実施の形態では、イオン発生部分を複数のイオン風発生ユニット2で構成するとともに、図7,8で示したようにイオン風発生ユニット2の連結軸130を円形孔302およびスリット301が形成された切り欠き300の挿脱するだけで、支持枠30へのイオン風発生ユニット2の着脱を容易にできるような構造とした。その結果、イオン風発生ユニット2をクリーニングする際の作業性を向上させることができた。
上述した実施の形態では、複数のイオン風発生ユニット2とすることにより結露の影響を低減するようにしたが、図10に示すようにイオン風発生ユニット2に設けられる放電極6を複数の放電極61,62,63に分割するようにしても良い。各放電極61〜63は直流電源3a(図3参照)に接続され、それぞれ真生いなす電圧が印加される。そのため、例えば、結露の影響で放電極61によるコロナ放電が停止してしまった場合でも、他の放電極62,63によるコロナ放電は継続される。放電極61の結露が解消されると放電極61によるコロナ放電が再び発生する。
さらに、図11に示すように換気ファン70を設けて、各放電極61〜63に対して図示上方から下方に送風することにより、結露し難くするようにしても良い。この場合、換気ファン70の風速を約3m/sec以下となるように小さめに設定する。このように風速を設定することにより、風圧による渦巻き流の発生を防止するとともに、マイナス荷電粒子の流れを損なうことなくイオン風圧を高めることができる。その結果、イオン風による遮蔽効果も向上させることができる。
また、換気ファン70を常時運転する代わりに、コロナ放電が低下した場合に結露と判断して換気ファン70を運転するようにしても良い。この場合、例えば、放電電流を監視して、放電電流値(直流電源3aの電流値)が基準値よりも低下したならば結露と判定する。図11において、3bは放電電流値を検出する電流計であり、その検出値はコントローラ3cに入力される。コントローラ3cは、検出値が基準値以下となった場合にスイッチSWをオンにし、ファン70をファン用電源3dにより駆動する。
図1に示したイオン風発生装置1では、装置右側に制御部3を設けているため、制御部下方に関してはイオン風の効果が少ない。そこで、図12に示すイオン風発生装置100では、制御部3をイオン風ユニット2の上部に設けることにより、装置100の設置幅全体にわたってイオン風が吹き出されるようにした。
ところで、イオン風発生装置1,100においては、イオン風ユニット2は支持枠30に取り付けられ、それらは外装31により覆われている。そのため、イオン風ユニット2で生成されて枠部材10の開口10b(図3参照)から放出されたイオン風は、装置下面に形成された吹き出し口1a(図1参照)から吹き出される。そして、外装31の材質やイオン風の吹き出し構造によって、イオン風の風量が変化することが解った。
まず、外装31の材質の影響であるが、生成されたマイナスイオンが樹脂や金属等で形成される外装31に吸着し、この吸着がイオン風の風量に影響を与えることが解った。図13はマイナスイオンが外装31に吸着することに起因するイオン風の変化を調べるための測定装置を示したものであり、この装置により種々の外装31を用いてイオン風の風量を測定した。80は微量電子天秤であり、秤量皿81がイオン風発生装置1の吹き出し口1aの直下となるように配設される。秤量皿81の面積は15cm×15cmであって、吹き出し口1aと秤量皿81との距離DはD=50cmとした。そして、イオン風42が秤量皿81におよぼす風圧を微量電子天秤80で測定した。
測定条件としては、(1a)外装31を外した状態、(1b)プラスチック製(材質は何でしょうか、追記してください)の外装31、(1c)金属製の外装31、(1d)ポリカーボネート製の外装31、(1e)樹脂をアルミ材で挟んだサンドイッチ構造の部材で外装31を構成した場合、の5種類とした。結果は下記の通りである。
(1a)65mg〜70mg
(1b)約30mg
(1c)約40mg
(1d)約65mg
(1e)約50mg
また、物質の帯電特性を表す指標として「帯電列」と呼ばれるものがある。帯電列は、異なった種類の物質同士を摩擦帯電させ、常に正に帯電するものから順に常に負に帯電する物質までを一列に並べたものである。図14は帯電列の一例を示したものであり、帯電列の図示上側にある物質ほど正に帯電しやすく、下側にある物質ほど負に帯電しやすい。すなわち、帯電列が正であるほどマイナスイオンが吸着しにくい。
上記測定結果と図14の帯電列とから、帯電列がよりプラス側にある材質を外装31の材料として用いた方が風圧が大きいことが解る。上記実験に用いた材料では、ポリカーボネートが外装31の材料として好ましい。その他の材料としては、正に帯電しやすいセラミックやシリコンゴムなども好ましく、例えば、樹脂材料をセラミックやシリコンゴムで挟んだサンドイッチ構造の材料を用いても良い。また、イオン風ユニット2の枠部材8,10に関しても、枠部材8,10にマイナスイオンが吸着するの抑制するために、外装31と同様に帯電列がより正である物質を用いるのが好ましい。
次に、イオン風の吹き出し構造について、図15、16を参照して説明する。図15に示すように、イオン風ユニット2により形成されたイオン風42は、開口10bおよび吹き出し口1aを介して外装31の外部に吹き出される。このイオン風42の吹き出しによって外装31の内部は圧力が低下する傾向になるため、それを抑制するために外装31の上面等には外部の空気を外装内に取り入れるための開口31aを形成する。
しかしながら、このような開口31aを形成しても、イオン風42が吹き出される吹き出し口1aと枠部材10の開口10bとの隙間82を通して外装31内に空気が吸い込まれる現象が発生する。このような空気の吸い込みがあると逆流する空気によってイオン風42の流れが乱され、風量の減少を招くことが解った。ここでは、(2a)外装31を外した場合、(2b)図15のように開口31aを設けた場合、(2c)開口31aにメッシュを設けた場合、(2d)吹き出し口1aにメッシュを設けた場合のそれぞれについて、図13に示した微量電子天秤80を用いて風圧を測定した。なお、メッシュは開口面積を減らす目的で設けたものである。また、距離Dは28cmとした。結果は次の通りであった。
(2a)650mg〜700mg
(2b)450mg〜550mg
(2c)350mg〜450mg
(2d)400mg〜500mg
この結果から、開口31aの面積をより大きくするほどイオン風42の風量が大きくなることが解った。また、結果(2c),(2d)を比較すると、イオン風42が吹き出される吹き出し口1aにメッシュを設けた方が風量が大きい。これは、(2d)では吹き出し口1aにおける空気の逆流が抑制されて、イオン風42の流れの乱れが小さくなることによるものと思われる。よって、開口31aをなるべく大きくするとともに、図16に示すようにイオン風ユニット2の下端部と吹き出し口1aとの間に空気逆流を防止するバリヤー83を設けることにより、発生したイオン風42を効果的に装置外へと吹き出させることが可能となる。例えば、バリヤー83を設けずに開口31aと吹き出し口1aとメッシュを配設した場合は、風圧が150mg〜250mgであったが、バリヤー83を設けた場合には風圧が350mg〜400mgに増加した。なお、バリヤー83も帯電列のより正とされる物質を用いるのが好ましい。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
前記直流電源により接地電位よりも低い電位に保持される複数の放電極と、
前記直流電源により前記放電極の電位よりも低い電位または接地電位に保持され、互いに間隔を設けて配置された一対の電極板とを備え、コロナ放電により生じるマイナス荷電粒子を前記一対の電極板によって加速してイオン風を形成するイオン風発生装置。
【請求項2】
直流電源と、
前記直流電源により接地電位よりも低い電位に保持される放電極と、
前記直流電源により接地電位に保持され、互いに間隔を設けて配置された一対の電極板と、
前記放電極と前記一対の電極板との間に配置されるとともに、接地電位以下であって前記放電極の電位よりも高い電位に保持され、前記放電極と前記電極板との間の空中放電を防止する空中放電防止電極とを備え、コロナ放電により生じるマイナス荷電粒子を前記一対の電極板によって加速してイオン風を形成するイオン風発生装置。
【請求項3】
イオン風を発生するイオン風発生装置において、
直流電源と、
前記直流電源により接地電位よりも低い電位に保持される放電極と、
前記直流電源により前記放電極の電位よりも低い電位または接地電位に保持され、互いに間隔を設けて配置された一対の電極板と、
前記イオン風の流れに沿うように前記放電極に向けて送風する送風装置とを備え、コロナ放電により生じるマイナス荷電粒子を前記一対の電極板によって加速してイオン風を形成するイオン風発生装置。
【請求項4】
請求項3に記載のイオン風発生装置において、
前記コロナ放電の放電電流値を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された放電電流値が所定値以下となったときに前記送風装置を動作させる制御手段とを設けたイオン風発生装置。
【請求項5】
イオン風を発生するイオン風発生装置に用いられるイオン風発生ユニットにおいて、
接地電位よりも低い電位に保持される放電極と、
前記放電極の電位よりも低い電位または接地電位に保持され、互いに間隔を設けて配置された一対の電極板と、
前記イオン風発生装置に対して前記イオン風発生ユニットを着脱自在に支持する支持具とを備え、コロナ放電により生じるマイナス荷電粒子を前記一対の電極板によって加速してイオン風を形成するイオン風発生ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のイオン風発生ユニットにおいて、
前記イオン風発生ユニットを、前記放電極が固定された第1の電極部と前記一対の電極板が固定された第2の電極部とに分割し、前記第1の電極部と前記第2の電極部との間に隙間を設けて連結したイオン風発生ユニット。
【請求項7】
請求項5または6に記載のイオン風発生ユニットにおいて、
前記放電極と前記一対の電極板との間に配置されるとともに接地電位に保持され、前記放電極と前記電極板との間の空中放電を防止する空中放電防止電極を設けたイオン風発生ユニット。
【請求項8】
請求項6または7に記載のイオン風発生ユニットにおいて、
前記放電極を複数に分割したイオン風発生ユニット。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載のイオン風発生ユニットを複数備えたイオン風発生装置。
【請求項10】
請求項9に記載のイオン風発生装置において、
前記イオン風発生ユニットを覆い、前記イオン風発生ユニットで発生したイオン風を装置外へと導く開口を有するカバーを備え、
前記カバーまたは前記カバーの表面を、プラスに帯電する帯電特性を有する物質で形成したことを特徴とするイオン風発生装置。
【請求項11】
請求項9に記載のイオン風発生装置において、
前記イオン風発生ユニットを覆い、前記イオン風発生ユニットで発生したイオン風を装置外へと導く開口を有するカバーと、
前記イオン風発生ユニットのイオン風吹き出し口と前記開口との間の隙間を遮蔽する遮蔽部材とを設けたことを特徴とするイオン風発生装置。

【国際公開番号】WO2005/033591
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−509317(P2005−509317)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012737
【国際出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【出願人】(506083925)Global ANY株式会社 (1)
【Fターム(参考)】