イグニッションスイッチ装置
【課題】製造コスト及び管理工数を低減させることができるイグニッションスイッチ装置を提供する。
【解決手段】イグニッションキーを挿抜可能なキー孔4aが形成されたロータ4を保持するシリンダボディ1と、キー孔4aを塞ぐ閉塞位置と当該キー孔4aを開放する開放位置との間で移動可能なシャッター2と、閉塞位置にあるシャッター2をロックするマグネット錠3とを具備したイグニッションスイッチ装置において、シリンダボディ1には、その上端部にシャッター2の動作を案内する案内部としてのボス部1bが一体形成されたものである。
【解決手段】イグニッションキーを挿抜可能なキー孔4aが形成されたロータ4を保持するシリンダボディ1と、キー孔4aを塞ぐ閉塞位置と当該キー孔4aを開放する開放位置との間で移動可能なシャッター2と、閉塞位置にあるシャッター2をロックするマグネット錠3とを具備したイグニッションスイッチ装置において、シリンダボディ1には、その上端部にシャッター2の動作を案内する案内部としてのボス部1bが一体形成されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車等に装備されるイグニッションスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車のイグニッションスイッチ装置は、通常、イグニッションキーを挿抜可能なキー孔が形成されたロータを保持するシリンダボディを有しており、当該キー孔にイグニッションキーを挿通しつつ所定方向に回転操作することにより、エンジンを始動可能とされている。然るに、従来より、第三者によるはさみやドライバ等の当該キー孔への差し込みでイグニッションスイッチ装置がいたずらされて破壊されるのを防止するために、例えば特許文献1で開示されたような保護装置が提案されている。
【0003】
かかる保護装置は、シリンダボディの上端部に取り付けられるもので、キー孔を閉状態とする閉塞位置と当該キー孔を開状態とする開放位置との間で移動可能なシャッターと、該シャッターを開放位置と閉塞位置との間で移動自在に保持するケースと、該ケースを覆って取り付けられてシャッターを収容するカバーと、シャッターを閉塞位置に保持することによりキー孔を閉塞して施錠するマグネット錠と、磁石の磁気によりマグネット錠を解錠するマグネットキーを具備していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−104426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のイグニッションスイッチ装置においては、キー孔を保護するための保護装置がシリンダボディの上端部に取り付けられるものであるため、当該シリンダボディとは別個の保護装置を必要とし、部品点数が増大して製造コストが嵩んでしまうという問題があった。また、従来においては、シリンダボディの上端部に対して別個の保護装置を取り付ける形態であるため、イグニッションスイッチ装置と保護装置とを別々に組み立てて管理する必要があり、管理工数が増大してしまう問題点もあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、製造コスト及び管理工数を低減させることができるイグニッションスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、イグニッションキーを挿抜可能なキー孔が形成されたロータを保持するシリンダボディと、前記キー孔を塞ぐ閉塞位置と当該キー孔を開放する開放位置との間で移動可能なシャッターと、前記閉塞位置にあるシャッターをロックするロック手段とを具備したイグニッションスイッチ装置において、前記シリンダボディには、その上端部に前記シャッターの動作を案内する案内部が一体形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のイグニッションスイッチ装置において、前記案内部は、前記シリンダボディの上端部に一体形成されたボス部から成り、当該ボス部を中心に前記シャッターが前記閉塞位置と開放位置との間を揺動可能とされたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のイグニッションスイッチ装置において、前記案内部は、前記シリンダボディの上端部に一体形成されたレール状部から成り、当該レール状部に沿って前記シャッターが前記閉塞位置と開放位置との間を摺動可能とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載のイグニッションスイッチ装置において、前記シリンダボディの上端部を覆いつつ前記シャッターを収容するカバー部材を具備するとともに、当該カバー部材の上部から当該シリンダボディの上端部に亘ってボルトを挿通して組付け可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜3の発明によれば、シリンダボディには、その上端部にシャッターの動作を案内する案内部が一体形成されたので、部品点数を削減して製造コストを低減させることができるとともに、イグニッションスイッチ装置と保護装置とを一連の工程で組立てることができるので、管理工数を低減することができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、シリンダボディの上端部を覆いつつシャッターを収容するカバー部材を具備するとともに、当該カバー部材の上部から当該シリンダボディの上端部に亘ってボルトを挿通して組付け可能とされたので、カバー部材のシリンダボディに対する組付け作業を容易に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るイグニッションスイッチ装置を示す斜視図
【図2】同イグニッションスイッチ装置を示す3面図(平面図、正面図及び側面図)
【図3】図2におけるIII−III線断面図
【図4】同イグニッションスイッチ装置を示す分解斜視図
【図5】同イグニッションスイッチ装置におけるシリンダボディを示す3面図(平面図、正面図及び側面図)
【図6】同イグニッションスイッチ装置におけるシャッターを示す3面図(正面図、平面図及び裏面図)
【図7】同イグニッションスイッチ装置におけるシャッターの節度のための凹部であって(a)開放位置用凹部(b)閉塞位置用凹部を示す断面図
【図8】同イグニッションスイッチ装置におけるシリンダボディに対するシャッターの取り付け過程を示す斜視図
【図9】同イグニッションスイッチ装置におけるシャッターであって(a)シャッターが開放位置にある状態(b)シャッターが閉塞位置にある状態を示す平面図
【図10】同イグニッションスイッチ装置におけるロック手段(マグネット錠)の作用を示す断面模式図
【図11】同イグニッションスイッチ装置におけるイグニッションキー及び解錠手段(マグネットキー)を示す模式図
【図12】本発明の他の実施形態に係るイグニッションスイッチ装置を示す平面図及び正面図
【図13】同イグニッションスイッチ装置におけるシャッターであって(a)シャッターが開放位置にある状態(b)シャッターが閉塞位置にある状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るイグニッションスイッチ装置は、二輪車等に装備されてイグニッションキーを挿抜可能なロータを具備したもので、図1〜9に示すように、取付部1a及びボス部1bが一体形成されたシリンダボディ1と、シャッター2と、ロック手段としてのマグネット錠3とから主に構成されている。
【0015】
シリンダボディ1は、本イグニッションスイッチ装置の筐体を成すもので、図4に示すように、イグニッションキーIK(図11参照)を挿抜可能なキー孔4aが形成されたロータ4を回転操作可能に保持するもので、例えば二輪車におけるハンドルバーの中央部に配設されるものである。さらに、本実施形態に係るシリンダボディ1は、ロータ4の他、ロックバーR及びイグニッションスイッチ部Dなどが内部に配設されている。
【0016】
より具体的には、ロータ4の下端部4bは、シリンダボディ1内で回動可能な回動部材5に形成された連結部5aと係止して連結されるとともに、当該回動部材5の回動に伴って摺動板材6が摺動し得るようになっている。すなわち、回動部材5から下方に向かってカム部5bが延設されるとともに、当該カム部5bに摺動板材6が連結されており、回動部材5が回動すると、カム部5bのカム作用によって摺動板材6がその面方向に摺動し得るのである。
【0017】
なお、図4中符号S1、S2は、ロータ4に対して上方に付勢力を付与し得るコイルスプリングを示しており、ロータ4がコイルスプリングS1、S2の付勢力に抗して押圧操作可能とされている。そして、摺動板材6は、ロータ4を押圧操作した状態を保持しつつ所定方向に回動操作したときに限り、その面方向に摺動可能とされている。この摺動板材6には、ロックバーRが係止されており、回動部材5の回動に伴って摺動部材6が摺動すると、ロックバーRの先端側がイグニッションスイッチ装置の側面から出没可能とされている。かかるロックバーRは、イグニッションスイッチ装置から突出した状態で、二輪車のハンドルバー(不図示)と係止され、当該ハンドルバーをロックし得るよう構成されている。
【0018】
イグニッションスイッチ部Dは、ロータ4の回動操作に伴って所定の電気回路を形成し、車両が搭載するエンジンを始動又は停止させるもので、基台11上に配設されたローラ部材8及び接点板10にて主に構成されており、カバー7により覆われて成る。カバー7は、その上面に摺動板材6の摺動案内部が形成された円筒状部材から成るとともに、シリンダボディ1の下部に組み付けられるよう構成されている。
【0019】
ローラ部材8は、カバー7内において回動可能に収容されたものであり、略中央部に十字状の係止孔8aが形成されている。そして、回動部材5におけるカム部5bの先端部5baが当該係止孔8aに係止して組み付けられるよう構成されており、ロータ4の回動操作に伴ってローラ部材8が回動し得るようになっている。また、ローラ部材8は、その下部に一対の可動接点9が取り付けられている。
【0020】
接点板10は、その表面(ローラ部材8と対向した面)における所定部位に固定接点(不図示)が形成されたもので、基台11上に固定されて組み付けられる。然るに、ロータ4の回動操作に伴ってローラ部材8が回動すると、可動接点9が接点板10上を摺動して固定接点に対して接触又は離間し得るよう構成されている。可動接点9と固定接点とが接触すると所定の電気回路が形成され、車両が搭載するエンジンを始動又は停止させ得るようになっている。
【0021】
シャッター2は、ロータ4のキー孔4aを塞ぐ閉塞位置(図9(b)参照)と当該キー孔4aを開放する開放位置(同図(a)参照)との間で移動(揺動)可能なもので、図6に示すように、閉塞部2aと、嵌合凹部2bと、開放位置用凹部2c及び閉塞位置用凹部2dと、嵌入孔2eとが形成されている。なお、嵌入孔2eは、取付凹部2f(後述するボス部1bと嵌合する部位)内における所定位置に複数形成されている。
【0022】
閉塞部2aは、図9(b)に示すように、シャッター2が閉塞位置にあるとき、シリンダボディ1の開口hの上方を覆う状態とされ、キー孔4aを塞いで保護し得る部位である。なお、シャッター2が開放位置にあるとき、同図(a)に示すように、閉塞部2aはシリンダボディ1における開口hの上方の位置から離間し、キー孔4aを外部に開放してイグニッションキーIKを挿通し得るようになっている。
【0023】
嵌合凹部2bは、マグネットキーMK(図11参照)を嵌合可能な凹部から成り、当該マグネットキーMKを嵌合しつつ所定方向に回転させると、シャッター2を同方向に揺動可能とされている。この嵌合凹部2bは、マグネットキーMKの外輪郭に倣った形状とされており、マグネットキーMKが予め設定された方向にて嵌合可能とされている。一方、マグネットキーMKは、図11に示すように、イグニッションキーIKの把持部(樹脂部品から成る所謂マスコット部)を所定形状に成形して成るもので、内部に複数の磁石Maがインサートされている。
【0024】
開放位置用凹部2c及び閉塞位置用凹部2dは、シャッター2が開放位置或いは閉塞位置にあるとき、節度手段としてのスチールボールb(図8参照)と嵌合して当該シャッター2に対して節度を付与するためのものである。なお、スチールボールbは、バネS3と共にシリンダボディ1の取付部1a(後で詳述する)に形成された孔1d内に挿入されて組み付けられており、バネS3により常時上方(シャッター2側)に付勢されている。
【0025】
開放位置用凹部2cは、シャッター2が開放位置にあるときスチールボールbが嵌入される位置に形成されており、図7(a)に示すように、深さt1の凹部から成るものである。一方、閉塞位置用凹部2dは、シャッター2が閉塞位置にあるときスチールボールbが嵌入される位置に形成されており、図7(b)に示すように、深さt2の凹部から成るものである。
【0026】
本実施形態においては、閉塞位置用凹部2dの深さt2の方が開放位置用凹部2cの深さt1より大きく設定されており、これによりシャッター2が閉塞位置にあるときの方が開放位置にあるときよりも大きな節度が付与されるようになっている。したがって、シャッター2に対する開放位置から閉塞位置に向かう操作性を良好とすることができるとともに、シャッター2を閉塞位置において確実に保持することができる。
【0027】
嵌入孔2eは、シャッター2が閉塞位置にあるとき、マグネット錠3を構成する磁石3aが嵌入可能な孔から成り、当該磁石3が嵌入孔2eに嵌入してシャッター2と係止することにより、当該シャッター2の動作(閉塞位置から開放位置に向かう動作)を規制するよう構成されている。すなわち、シャッター2を開放位置から閉塞位置まで揺動動作させると、複数の磁石3aの配設位置と嵌入孔2eとがそれぞれ合致し、図10(a)に示すように、バネ3bで上方に付勢された各磁石3aが各嵌入孔2eに嵌り込んで係止することによりシャッター2をロックするのである。
【0028】
ロック手段としてのマグネット錠3は、バネ3bで付勢された磁石3aから構成されたもので、上述したように、嵌入孔2eに磁石3aが嵌入してシャッター2を係止することにより、閉塞位置にあるシャッター2をロックするためのものである。かかる磁石3aは、マグネットキーMKに形成された磁石Maと対応する位置にそれぞれ配設されるとともに、それぞれ対応する磁石Maと磁石3aとは互いに異なる極(S極又はN極)が対向するようになっている。
【0029】
而して、マグネット錠3によるロックを解除するには、図10(b)に示すように、マグネットキーMKをシャッター2の嵌合凹部2bに嵌合させ、磁石Maと磁石3aとをそれぞれ対向させることにより、これら磁石Ma、3a間で磁力による反発力(異なる極同士の反発力)を生じさせ、磁石3aをバネ3bの付勢力に抗して下降させる。これにより、磁石3aが嵌入孔2eより下方に移動して係止が解かれるので、シャッター2のロックが解除されることとなる。このロックが解除された状態にてマグネット錠3を所定方向に回動させれば、シャッター2が閉塞位置から開放位置まで揺動操作される。
【0030】
ここで、本実施形態に係るシリンダボディ1には、図5に示すように、その上端部においてシャッター2を閉塞位置と開放位置との間で移動可能な状態で取り付け得る取付部1aが一体形成されているとともに、その取付部1aには、シャッター2の動作を案内する案内部としてのボス部1bが一体形成されている。すなわち、シリンダボディ1の成形時(具体的には鋳造時)に取付部1aとボス部1bとが一体として成形されているのである。
【0031】
かかる取付部1aは、シリンダボディ1の上端部において、ロータ4を上方に臨ませる開口hが形成されるとともに、一方向に張り出してオーバーハングして成るものである。この取付部1aの上面は、略平坦な取付面Fと、該取付面Fから上方に突出形成された円筒状のボス部1bとが形成されており、シャッター2が当該ボス部1bを中心として閉塞位置と開放位置との間で揺動可能とされている。
【0032】
ボス部1bは、取付部1aにおける一方向に張り出した部位(オーバーハング部)に一体形成された凸形状から成り、マグネット錠3(ロック手段)を構成する磁石3a及びバネ3bを収容可能な複数の収容孔1baが形成されている。このボス部1bは、シャッター2の取付凹部2fを挿通させ得る形状及び寸法とされており、当該シャッター2をボス部1bに嵌入させて取り付ける(図10(a)参照)ことにより、当該ボス部1bを中心にシャッター2が閉塞位置と開放位置との間で揺動可能とされている。
【0033】
シャッター2がボス部1bを中心に揺動すると、閉塞部2aが略平坦な取付面F上を摺動して、開口hに対応した位置と離間した位置との間で移動することにより、キー孔4aを塞いで保護し、或いはキー孔4aを外部に開放してイグニッションキーIKの挿通を可能とすることができる。すなわち、ボス部1bは、シャッター2の閉塞位置と開放位置との間の揺動動作を案内するよう構成されているのである。なお、ボス部1bとシャッター2の取付凹部2fとの間には、Oリング等のシール部材aが介装されており、磁石3aの配設部位に雨水や塵等が浸入するのを防止している。
【0034】
カバー部材12は、シリンダボディ1の上端部(即ち、取付部1a)を覆いつつシャッター2を収容する例えば円筒状部材から成るもので、シリンダボディ1の開口hを上方に臨ませる開口12aと、ボス部1bに取り付けられたシャッター2の嵌入凹部2bを上方に臨ませる開口12bと、シリンダボディ1の上端部(取付部1a)に形成されたネジ孔1cを上方に臨ませる開口12cとが形成されている。
【0035】
かかるカバー部材12は、図4に示すように、その側面にスプリングピンnを挿通させるとともに、開口12cを介してボルトBをネジ孔1cに挿通させる(図3参照)ことにより、シリンダボディ1との間で螺合させて組み付けられる。而して、カバー部材12の上部から当該シリンダボディ1の上端部(取付部1a)に亘ってボルトBを挿通して組付け可能とされている。なお、ボルトBによりカバー部材12を組み付けた後、当該カバー部材12の上部(上面)に操作内容等が記載されたシール部材13を貼着することで、ボルトBを隠すことができる。
【0036】
本実施形態によれば、シリンダボディ1には、その上端部においてシャッター2を閉塞位置と開放位置との間で移動可能な状態で取り付け得る取付部1aが一体形成されたので、別個の保護装置を取り付ける従来のものに比べ、製造コストを低減させることができるとともに、イグニッションスイッチ装置と保護装置とを一連の工程で組立てることができるので、管理工数を低減することができる。
【0037】
すなわち、別個の保護装置を取り付ける従来のものは、当該保護装置とイグニッションスイッチ装置とを別々の工程で組み立てた後に合体させていたので、管理工数がかかったのに対し、本実施形態においては、シャッター2の取付位置がシリンダボディ1に一体形成された取付部1aとされるため、保護装置とイグニッションスイッチ装置とを一連の工程で組立てることができ、管理工数を低減できるのである。
【0038】
また、シリンダボディ1の上端部を覆いつつシャッター2を収容するカバー部材12を具備するとともに、当該カバー部材12の上部(上面側)から当該シリンダボディ1の上端部(取付部1a)に亘ってボルトBを挿通して組付け可能とされたので、ボルトBを螺合させるための工具等がイグニッション装置近傍の構成要素に干渉してしまうのを回避でき、カバー部材12のシリンダボディ1に対する組付け作業を容易に行わせることができる。
【0039】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば揺動動作するシャッター2に代えて略直線状に摺動動作するシャッターを具備した他の実施形態としてもよい。かかる他の実施形態に係るイグニッションスイッチ装置は、図12、13に示すように、取付部1aを有したシリンダボディ1(上記実施形態と同様の構成)と、閉塞位置と開放位置との間を略直線状に摺動可能なシャッター14と、閉塞位置にあるシャッター14をロックするロック手段としてのマグネット錠15と、シリンダボディ1の上端部(取付部1a)を覆いつつシャッター14を収容するカバー部材16と、シャッター14の摺動動作を案内する案内部としてのレール状部Lとから主に構成されている。
【0040】
シャッター14は、開放位置にあるときカバー部材16から突出し、閉塞位置にあるとき当該カバー部材16に没入する操作部14aが形成されているとともに、バネS4にて常時開放方向に付勢されている。また、シャッター14には、閉塞位置にあるとき開口h(シリンダボディ1の取付部1aにおけるキー孔4aを上方に臨ませる開口)と合致して塞ぐための閉塞部14bが形成されている。
【0041】
レール状部L(案内部)は、シリンダボディ1の上端部(取付部1a)に一体形成されたレール状の部位から成り、当該レール状部Lに沿ってシャッター14が閉塞位置(図13(b)参照)と開放位置(同図(a)参照)との間を摺動可能とされている。すなわち、操作部14aを押圧操作すると、シャッター2は、レール状部Lにて案内されて略直線状に摺動し、閉塞位置に至ると閉塞部14bがキー孔4aを塞ぐとともに、マグネット錠15(ロック手段)にてロックされる(図13(b)参照)。一方、マグネットキーMKによってマグネット錠15(ロック手段)によるロックを解除すると、シャッター2は、バネS4による付勢力によってレール状部Lにて案内されて略直線状に摺動し、開放位置に至るようになっている。
【0042】
かかる他の実施形態によれば、シャッター14の案内部は、シリンダボディ1の上端部(取付部1a)に一体形成されたレール状部Lから成り、当該レール状部Lに沿ってシャッター14が閉塞位置と開放位置との間を摺動可能とされたので、当該シャッター14の動作をより確実に行うことができる。
【0043】
更に、本発明は、上記の如き実施形態に限定されず、案内部としてのボス部1b或いはレール状部Lがシリンダボディ1の上端部に一体形成されていれば足りる。また、本実施形態においては、取付部1aがシリンダボディ1に対して一方向に張り出されてオーバーハングしているが、例えばシリンダボディ1の周方向に亘って張り出して取付部1aが形成されるものとしてもよい。尚、本実施形態においては、二輪車に適用されているが、他の車両に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
シリンダボディには、その上端部にシャッターの動作を案内する案内部が一体形成されたイグニッションスイッチ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 シリンダボディ
1a 取付部
1b ボス部(案内部)
2 シャッター
3 マグネット錠(ロック手段)
4 ロータ
4a キー孔
5 回動部材
6 摺動板材
7 カバー
8 ローラ部材
9 可動接点
10 接点板
11 基台
12 カバー部材
13 シール部材
14 シャッター
15 マグネット錠(ロック手段)
16 カバー部材
L レール状部(案内部)
IK イグニッションキー
MK マグネットキー
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車等に装備されるイグニッションスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車のイグニッションスイッチ装置は、通常、イグニッションキーを挿抜可能なキー孔が形成されたロータを保持するシリンダボディを有しており、当該キー孔にイグニッションキーを挿通しつつ所定方向に回転操作することにより、エンジンを始動可能とされている。然るに、従来より、第三者によるはさみやドライバ等の当該キー孔への差し込みでイグニッションスイッチ装置がいたずらされて破壊されるのを防止するために、例えば特許文献1で開示されたような保護装置が提案されている。
【0003】
かかる保護装置は、シリンダボディの上端部に取り付けられるもので、キー孔を閉状態とする閉塞位置と当該キー孔を開状態とする開放位置との間で移動可能なシャッターと、該シャッターを開放位置と閉塞位置との間で移動自在に保持するケースと、該ケースを覆って取り付けられてシャッターを収容するカバーと、シャッターを閉塞位置に保持することによりキー孔を閉塞して施錠するマグネット錠と、磁石の磁気によりマグネット錠を解錠するマグネットキーを具備していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−104426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のイグニッションスイッチ装置においては、キー孔を保護するための保護装置がシリンダボディの上端部に取り付けられるものであるため、当該シリンダボディとは別個の保護装置を必要とし、部品点数が増大して製造コストが嵩んでしまうという問題があった。また、従来においては、シリンダボディの上端部に対して別個の保護装置を取り付ける形態であるため、イグニッションスイッチ装置と保護装置とを別々に組み立てて管理する必要があり、管理工数が増大してしまう問題点もあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、製造コスト及び管理工数を低減させることができるイグニッションスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、イグニッションキーを挿抜可能なキー孔が形成されたロータを保持するシリンダボディと、前記キー孔を塞ぐ閉塞位置と当該キー孔を開放する開放位置との間で移動可能なシャッターと、前記閉塞位置にあるシャッターをロックするロック手段とを具備したイグニッションスイッチ装置において、前記シリンダボディには、その上端部に前記シャッターの動作を案内する案内部が一体形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のイグニッションスイッチ装置において、前記案内部は、前記シリンダボディの上端部に一体形成されたボス部から成り、当該ボス部を中心に前記シャッターが前記閉塞位置と開放位置との間を揺動可能とされたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のイグニッションスイッチ装置において、前記案内部は、前記シリンダボディの上端部に一体形成されたレール状部から成り、当該レール状部に沿って前記シャッターが前記閉塞位置と開放位置との間を摺動可能とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載のイグニッションスイッチ装置において、前記シリンダボディの上端部を覆いつつ前記シャッターを収容するカバー部材を具備するとともに、当該カバー部材の上部から当該シリンダボディの上端部に亘ってボルトを挿通して組付け可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜3の発明によれば、シリンダボディには、その上端部にシャッターの動作を案内する案内部が一体形成されたので、部品点数を削減して製造コストを低減させることができるとともに、イグニッションスイッチ装置と保護装置とを一連の工程で組立てることができるので、管理工数を低減することができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、シリンダボディの上端部を覆いつつシャッターを収容するカバー部材を具備するとともに、当該カバー部材の上部から当該シリンダボディの上端部に亘ってボルトを挿通して組付け可能とされたので、カバー部材のシリンダボディに対する組付け作業を容易に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るイグニッションスイッチ装置を示す斜視図
【図2】同イグニッションスイッチ装置を示す3面図(平面図、正面図及び側面図)
【図3】図2におけるIII−III線断面図
【図4】同イグニッションスイッチ装置を示す分解斜視図
【図5】同イグニッションスイッチ装置におけるシリンダボディを示す3面図(平面図、正面図及び側面図)
【図6】同イグニッションスイッチ装置におけるシャッターを示す3面図(正面図、平面図及び裏面図)
【図7】同イグニッションスイッチ装置におけるシャッターの節度のための凹部であって(a)開放位置用凹部(b)閉塞位置用凹部を示す断面図
【図8】同イグニッションスイッチ装置におけるシリンダボディに対するシャッターの取り付け過程を示す斜視図
【図9】同イグニッションスイッチ装置におけるシャッターであって(a)シャッターが開放位置にある状態(b)シャッターが閉塞位置にある状態を示す平面図
【図10】同イグニッションスイッチ装置におけるロック手段(マグネット錠)の作用を示す断面模式図
【図11】同イグニッションスイッチ装置におけるイグニッションキー及び解錠手段(マグネットキー)を示す模式図
【図12】本発明の他の実施形態に係るイグニッションスイッチ装置を示す平面図及び正面図
【図13】同イグニッションスイッチ装置におけるシャッターであって(a)シャッターが開放位置にある状態(b)シャッターが閉塞位置にある状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るイグニッションスイッチ装置は、二輪車等に装備されてイグニッションキーを挿抜可能なロータを具備したもので、図1〜9に示すように、取付部1a及びボス部1bが一体形成されたシリンダボディ1と、シャッター2と、ロック手段としてのマグネット錠3とから主に構成されている。
【0015】
シリンダボディ1は、本イグニッションスイッチ装置の筐体を成すもので、図4に示すように、イグニッションキーIK(図11参照)を挿抜可能なキー孔4aが形成されたロータ4を回転操作可能に保持するもので、例えば二輪車におけるハンドルバーの中央部に配設されるものである。さらに、本実施形態に係るシリンダボディ1は、ロータ4の他、ロックバーR及びイグニッションスイッチ部Dなどが内部に配設されている。
【0016】
より具体的には、ロータ4の下端部4bは、シリンダボディ1内で回動可能な回動部材5に形成された連結部5aと係止して連結されるとともに、当該回動部材5の回動に伴って摺動板材6が摺動し得るようになっている。すなわち、回動部材5から下方に向かってカム部5bが延設されるとともに、当該カム部5bに摺動板材6が連結されており、回動部材5が回動すると、カム部5bのカム作用によって摺動板材6がその面方向に摺動し得るのである。
【0017】
なお、図4中符号S1、S2は、ロータ4に対して上方に付勢力を付与し得るコイルスプリングを示しており、ロータ4がコイルスプリングS1、S2の付勢力に抗して押圧操作可能とされている。そして、摺動板材6は、ロータ4を押圧操作した状態を保持しつつ所定方向に回動操作したときに限り、その面方向に摺動可能とされている。この摺動板材6には、ロックバーRが係止されており、回動部材5の回動に伴って摺動部材6が摺動すると、ロックバーRの先端側がイグニッションスイッチ装置の側面から出没可能とされている。かかるロックバーRは、イグニッションスイッチ装置から突出した状態で、二輪車のハンドルバー(不図示)と係止され、当該ハンドルバーをロックし得るよう構成されている。
【0018】
イグニッションスイッチ部Dは、ロータ4の回動操作に伴って所定の電気回路を形成し、車両が搭載するエンジンを始動又は停止させるもので、基台11上に配設されたローラ部材8及び接点板10にて主に構成されており、カバー7により覆われて成る。カバー7は、その上面に摺動板材6の摺動案内部が形成された円筒状部材から成るとともに、シリンダボディ1の下部に組み付けられるよう構成されている。
【0019】
ローラ部材8は、カバー7内において回動可能に収容されたものであり、略中央部に十字状の係止孔8aが形成されている。そして、回動部材5におけるカム部5bの先端部5baが当該係止孔8aに係止して組み付けられるよう構成されており、ロータ4の回動操作に伴ってローラ部材8が回動し得るようになっている。また、ローラ部材8は、その下部に一対の可動接点9が取り付けられている。
【0020】
接点板10は、その表面(ローラ部材8と対向した面)における所定部位に固定接点(不図示)が形成されたもので、基台11上に固定されて組み付けられる。然るに、ロータ4の回動操作に伴ってローラ部材8が回動すると、可動接点9が接点板10上を摺動して固定接点に対して接触又は離間し得るよう構成されている。可動接点9と固定接点とが接触すると所定の電気回路が形成され、車両が搭載するエンジンを始動又は停止させ得るようになっている。
【0021】
シャッター2は、ロータ4のキー孔4aを塞ぐ閉塞位置(図9(b)参照)と当該キー孔4aを開放する開放位置(同図(a)参照)との間で移動(揺動)可能なもので、図6に示すように、閉塞部2aと、嵌合凹部2bと、開放位置用凹部2c及び閉塞位置用凹部2dと、嵌入孔2eとが形成されている。なお、嵌入孔2eは、取付凹部2f(後述するボス部1bと嵌合する部位)内における所定位置に複数形成されている。
【0022】
閉塞部2aは、図9(b)に示すように、シャッター2が閉塞位置にあるとき、シリンダボディ1の開口hの上方を覆う状態とされ、キー孔4aを塞いで保護し得る部位である。なお、シャッター2が開放位置にあるとき、同図(a)に示すように、閉塞部2aはシリンダボディ1における開口hの上方の位置から離間し、キー孔4aを外部に開放してイグニッションキーIKを挿通し得るようになっている。
【0023】
嵌合凹部2bは、マグネットキーMK(図11参照)を嵌合可能な凹部から成り、当該マグネットキーMKを嵌合しつつ所定方向に回転させると、シャッター2を同方向に揺動可能とされている。この嵌合凹部2bは、マグネットキーMKの外輪郭に倣った形状とされており、マグネットキーMKが予め設定された方向にて嵌合可能とされている。一方、マグネットキーMKは、図11に示すように、イグニッションキーIKの把持部(樹脂部品から成る所謂マスコット部)を所定形状に成形して成るもので、内部に複数の磁石Maがインサートされている。
【0024】
開放位置用凹部2c及び閉塞位置用凹部2dは、シャッター2が開放位置或いは閉塞位置にあるとき、節度手段としてのスチールボールb(図8参照)と嵌合して当該シャッター2に対して節度を付与するためのものである。なお、スチールボールbは、バネS3と共にシリンダボディ1の取付部1a(後で詳述する)に形成された孔1d内に挿入されて組み付けられており、バネS3により常時上方(シャッター2側)に付勢されている。
【0025】
開放位置用凹部2cは、シャッター2が開放位置にあるときスチールボールbが嵌入される位置に形成されており、図7(a)に示すように、深さt1の凹部から成るものである。一方、閉塞位置用凹部2dは、シャッター2が閉塞位置にあるときスチールボールbが嵌入される位置に形成されており、図7(b)に示すように、深さt2の凹部から成るものである。
【0026】
本実施形態においては、閉塞位置用凹部2dの深さt2の方が開放位置用凹部2cの深さt1より大きく設定されており、これによりシャッター2が閉塞位置にあるときの方が開放位置にあるときよりも大きな節度が付与されるようになっている。したがって、シャッター2に対する開放位置から閉塞位置に向かう操作性を良好とすることができるとともに、シャッター2を閉塞位置において確実に保持することができる。
【0027】
嵌入孔2eは、シャッター2が閉塞位置にあるとき、マグネット錠3を構成する磁石3aが嵌入可能な孔から成り、当該磁石3が嵌入孔2eに嵌入してシャッター2と係止することにより、当該シャッター2の動作(閉塞位置から開放位置に向かう動作)を規制するよう構成されている。すなわち、シャッター2を開放位置から閉塞位置まで揺動動作させると、複数の磁石3aの配設位置と嵌入孔2eとがそれぞれ合致し、図10(a)に示すように、バネ3bで上方に付勢された各磁石3aが各嵌入孔2eに嵌り込んで係止することによりシャッター2をロックするのである。
【0028】
ロック手段としてのマグネット錠3は、バネ3bで付勢された磁石3aから構成されたもので、上述したように、嵌入孔2eに磁石3aが嵌入してシャッター2を係止することにより、閉塞位置にあるシャッター2をロックするためのものである。かかる磁石3aは、マグネットキーMKに形成された磁石Maと対応する位置にそれぞれ配設されるとともに、それぞれ対応する磁石Maと磁石3aとは互いに異なる極(S極又はN極)が対向するようになっている。
【0029】
而して、マグネット錠3によるロックを解除するには、図10(b)に示すように、マグネットキーMKをシャッター2の嵌合凹部2bに嵌合させ、磁石Maと磁石3aとをそれぞれ対向させることにより、これら磁石Ma、3a間で磁力による反発力(異なる極同士の反発力)を生じさせ、磁石3aをバネ3bの付勢力に抗して下降させる。これにより、磁石3aが嵌入孔2eより下方に移動して係止が解かれるので、シャッター2のロックが解除されることとなる。このロックが解除された状態にてマグネット錠3を所定方向に回動させれば、シャッター2が閉塞位置から開放位置まで揺動操作される。
【0030】
ここで、本実施形態に係るシリンダボディ1には、図5に示すように、その上端部においてシャッター2を閉塞位置と開放位置との間で移動可能な状態で取り付け得る取付部1aが一体形成されているとともに、その取付部1aには、シャッター2の動作を案内する案内部としてのボス部1bが一体形成されている。すなわち、シリンダボディ1の成形時(具体的には鋳造時)に取付部1aとボス部1bとが一体として成形されているのである。
【0031】
かかる取付部1aは、シリンダボディ1の上端部において、ロータ4を上方に臨ませる開口hが形成されるとともに、一方向に張り出してオーバーハングして成るものである。この取付部1aの上面は、略平坦な取付面Fと、該取付面Fから上方に突出形成された円筒状のボス部1bとが形成されており、シャッター2が当該ボス部1bを中心として閉塞位置と開放位置との間で揺動可能とされている。
【0032】
ボス部1bは、取付部1aにおける一方向に張り出した部位(オーバーハング部)に一体形成された凸形状から成り、マグネット錠3(ロック手段)を構成する磁石3a及びバネ3bを収容可能な複数の収容孔1baが形成されている。このボス部1bは、シャッター2の取付凹部2fを挿通させ得る形状及び寸法とされており、当該シャッター2をボス部1bに嵌入させて取り付ける(図10(a)参照)ことにより、当該ボス部1bを中心にシャッター2が閉塞位置と開放位置との間で揺動可能とされている。
【0033】
シャッター2がボス部1bを中心に揺動すると、閉塞部2aが略平坦な取付面F上を摺動して、開口hに対応した位置と離間した位置との間で移動することにより、キー孔4aを塞いで保護し、或いはキー孔4aを外部に開放してイグニッションキーIKの挿通を可能とすることができる。すなわち、ボス部1bは、シャッター2の閉塞位置と開放位置との間の揺動動作を案内するよう構成されているのである。なお、ボス部1bとシャッター2の取付凹部2fとの間には、Oリング等のシール部材aが介装されており、磁石3aの配設部位に雨水や塵等が浸入するのを防止している。
【0034】
カバー部材12は、シリンダボディ1の上端部(即ち、取付部1a)を覆いつつシャッター2を収容する例えば円筒状部材から成るもので、シリンダボディ1の開口hを上方に臨ませる開口12aと、ボス部1bに取り付けられたシャッター2の嵌入凹部2bを上方に臨ませる開口12bと、シリンダボディ1の上端部(取付部1a)に形成されたネジ孔1cを上方に臨ませる開口12cとが形成されている。
【0035】
かかるカバー部材12は、図4に示すように、その側面にスプリングピンnを挿通させるとともに、開口12cを介してボルトBをネジ孔1cに挿通させる(図3参照)ことにより、シリンダボディ1との間で螺合させて組み付けられる。而して、カバー部材12の上部から当該シリンダボディ1の上端部(取付部1a)に亘ってボルトBを挿通して組付け可能とされている。なお、ボルトBによりカバー部材12を組み付けた後、当該カバー部材12の上部(上面)に操作内容等が記載されたシール部材13を貼着することで、ボルトBを隠すことができる。
【0036】
本実施形態によれば、シリンダボディ1には、その上端部においてシャッター2を閉塞位置と開放位置との間で移動可能な状態で取り付け得る取付部1aが一体形成されたので、別個の保護装置を取り付ける従来のものに比べ、製造コストを低減させることができるとともに、イグニッションスイッチ装置と保護装置とを一連の工程で組立てることができるので、管理工数を低減することができる。
【0037】
すなわち、別個の保護装置を取り付ける従来のものは、当該保護装置とイグニッションスイッチ装置とを別々の工程で組み立てた後に合体させていたので、管理工数がかかったのに対し、本実施形態においては、シャッター2の取付位置がシリンダボディ1に一体形成された取付部1aとされるため、保護装置とイグニッションスイッチ装置とを一連の工程で組立てることができ、管理工数を低減できるのである。
【0038】
また、シリンダボディ1の上端部を覆いつつシャッター2を収容するカバー部材12を具備するとともに、当該カバー部材12の上部(上面側)から当該シリンダボディ1の上端部(取付部1a)に亘ってボルトBを挿通して組付け可能とされたので、ボルトBを螺合させるための工具等がイグニッション装置近傍の構成要素に干渉してしまうのを回避でき、カバー部材12のシリンダボディ1に対する組付け作業を容易に行わせることができる。
【0039】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば揺動動作するシャッター2に代えて略直線状に摺動動作するシャッターを具備した他の実施形態としてもよい。かかる他の実施形態に係るイグニッションスイッチ装置は、図12、13に示すように、取付部1aを有したシリンダボディ1(上記実施形態と同様の構成)と、閉塞位置と開放位置との間を略直線状に摺動可能なシャッター14と、閉塞位置にあるシャッター14をロックするロック手段としてのマグネット錠15と、シリンダボディ1の上端部(取付部1a)を覆いつつシャッター14を収容するカバー部材16と、シャッター14の摺動動作を案内する案内部としてのレール状部Lとから主に構成されている。
【0040】
シャッター14は、開放位置にあるときカバー部材16から突出し、閉塞位置にあるとき当該カバー部材16に没入する操作部14aが形成されているとともに、バネS4にて常時開放方向に付勢されている。また、シャッター14には、閉塞位置にあるとき開口h(シリンダボディ1の取付部1aにおけるキー孔4aを上方に臨ませる開口)と合致して塞ぐための閉塞部14bが形成されている。
【0041】
レール状部L(案内部)は、シリンダボディ1の上端部(取付部1a)に一体形成されたレール状の部位から成り、当該レール状部Lに沿ってシャッター14が閉塞位置(図13(b)参照)と開放位置(同図(a)参照)との間を摺動可能とされている。すなわち、操作部14aを押圧操作すると、シャッター2は、レール状部Lにて案内されて略直線状に摺動し、閉塞位置に至ると閉塞部14bがキー孔4aを塞ぐとともに、マグネット錠15(ロック手段)にてロックされる(図13(b)参照)。一方、マグネットキーMKによってマグネット錠15(ロック手段)によるロックを解除すると、シャッター2は、バネS4による付勢力によってレール状部Lにて案内されて略直線状に摺動し、開放位置に至るようになっている。
【0042】
かかる他の実施形態によれば、シャッター14の案内部は、シリンダボディ1の上端部(取付部1a)に一体形成されたレール状部Lから成り、当該レール状部Lに沿ってシャッター14が閉塞位置と開放位置との間を摺動可能とされたので、当該シャッター14の動作をより確実に行うことができる。
【0043】
更に、本発明は、上記の如き実施形態に限定されず、案内部としてのボス部1b或いはレール状部Lがシリンダボディ1の上端部に一体形成されていれば足りる。また、本実施形態においては、取付部1aがシリンダボディ1に対して一方向に張り出されてオーバーハングしているが、例えばシリンダボディ1の周方向に亘って張り出して取付部1aが形成されるものとしてもよい。尚、本実施形態においては、二輪車に適用されているが、他の車両に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
シリンダボディには、その上端部にシャッターの動作を案内する案内部が一体形成されたイグニッションスイッチ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 シリンダボディ
1a 取付部
1b ボス部(案内部)
2 シャッター
3 マグネット錠(ロック手段)
4 ロータ
4a キー孔
5 回動部材
6 摺動板材
7 カバー
8 ローラ部材
9 可動接点
10 接点板
11 基台
12 カバー部材
13 シール部材
14 シャッター
15 マグネット錠(ロック手段)
16 カバー部材
L レール状部(案内部)
IK イグニッションキー
MK マグネットキー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イグニッションキーを挿抜可能なキー孔が形成されたロータを保持するシリンダボディと、
前記キー孔を塞ぐ閉塞位置と当該キー孔を開放する開放位置との間で移動可能なシャッターと、
前記閉塞位置にあるシャッターをロックするロック手段と、
を具備したイグニッションスイッチ装置において、
前記シリンダボディには、その上端部に前記シャッターの動作を案内する案内部が一体形成されたことを特徴とするイグニッションスイッチ装置。
【請求項2】
前記案内部は、前記シリンダボディの上端部に一体形成されたボス部から成り、当該ボス部を中心に前記シャッターが前記閉塞位置と開放位置との間を揺動可能とされたことを特徴とする請求項1記載のイグニッションスイッチ装置。
【請求項3】
前記案内部は、前記シリンダボディの上端部に一体形成されたレール状部から成り、当該レール状部に沿って前記シャッターが前記閉塞位置と開放位置との間を摺動可能とされたことを特徴とする請求項1記載のイグニッションスイッチ装置。
【請求項4】
前記シリンダボディの上端部を覆いつつ前記シャッターを収容するカバー部材を具備するとともに、当該カバー部材の上部から当該シリンダボディの上端部に亘ってボルトを挿通して組付け可能とされたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のイグニッションスイッチ装置。
【請求項1】
イグニッションキーを挿抜可能なキー孔が形成されたロータを保持するシリンダボディと、
前記キー孔を塞ぐ閉塞位置と当該キー孔を開放する開放位置との間で移動可能なシャッターと、
前記閉塞位置にあるシャッターをロックするロック手段と、
を具備したイグニッションスイッチ装置において、
前記シリンダボディには、その上端部に前記シャッターの動作を案内する案内部が一体形成されたことを特徴とするイグニッションスイッチ装置。
【請求項2】
前記案内部は、前記シリンダボディの上端部に一体形成されたボス部から成り、当該ボス部を中心に前記シャッターが前記閉塞位置と開放位置との間を揺動可能とされたことを特徴とする請求項1記載のイグニッションスイッチ装置。
【請求項3】
前記案内部は、前記シリンダボディの上端部に一体形成されたレール状部から成り、当該レール状部に沿って前記シャッターが前記閉塞位置と開放位置との間を摺動可能とされたことを特徴とする請求項1記載のイグニッションスイッチ装置。
【請求項4】
前記シリンダボディの上端部を覆いつつ前記シャッターを収容するカバー部材を具備するとともに、当該カバー部材の上部から当該シリンダボディの上端部に亘ってボルトを挿通して組付け可能とされたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のイグニッションスイッチ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−188809(P2012−188809A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50721(P2011−50721)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】
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