説明

イソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体、それらの製造方法、および架橋ゴム

【課題】イソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体、それらの製造方法、および架橋ゴムを提供する。
【解決手段】イソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体の構造体を製造する。イソブテン、イソプレン、スチリルイソプレン及びフェニルイソプレンより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なイソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体、それらの製造方法、および架橋ゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電解コンデンサは、電極引き出し手段であるリード線を備えた電極箔を、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、駆動用電解液を含浸したコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納して、この外装ケースの開口部に封口体を装着し、その後、開口部を加締め加工によって封口して形成される。通常、この電解コンデンサ用封口体としては、イソプレン−イソブテン共重合体(式1)を樹脂架橋したゴム(特許文献1、2)やイソプレン−イソブテン−ジビニルベンゼン共重合体を過酸化物架橋したゴム(式2)(特許文献3、4、5)からなる封口ゴムが用いられる。
【0003】
【化1】

【0004】
【化2】

【0005】
このイソプレン−イソブテン共重合体を樹脂架橋したゴムは架橋に用いた残存樹脂の耐熱性が低いために、このゴムを用いた封口ゴムの耐熱性もまた低いという課題を有している。さらに、イソプレン−イソブテン−ジビニルベンゼン共重合体を過酸化物架橋したゴムはジビニルベンゼンの共重合時にジビニルベンゼンのビニル基による部分架橋が生じ、そのことによって混練時に分散性が低下するおそれがあるという課題もある。
【0006】
そこで、出願人らは、国際特許出願PCT/JP2008/71834において耐熱性が高く、分散性がよいゴムとして、「イソブテン、イソプレン、及びスチリルイソプレンよりなる三元共重合体」を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−321441号公報
【特許文献2】特開平11−265840号公報
【特許文献3】特開昭55−15862号公報
【特許文献4】特開平8−321442号公報
【特許文献5】特開平11−265839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この種のゴムは架橋密度と引張強度に相関関係があり、引張強度を最適化するために、架橋密度を調製したいという要求がある。
【0009】
そこで、本発明は、イソブテン、イソプレン、及びスチリルイソプレンよりなる三元共重合体の架橋密度を調製することができる共重合体、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決する第1の発明のイソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体は、イソプレン−イソブテン共重合体の塩素化物または臭化物と、4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物とのスズキカップリング反応によって生成するスチリル化フェニル化四元ランダム共重合体(St,Ph−QC:Styrenated Phenyl Quarternary Copolymer)であり、また、四元ランダム共重合体が架橋されていてもよい。
【0011】
また、前記の課題を解決すべく、第2の発明であるイソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体の製造方法は、Pd(PPh:テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、またはビス[ミュー−クロロ[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム]のいずれか少なくとも一つを含む触媒を用いて請求項1に記載のイソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体を製造する方法である。さらに、本発明のスチリル化フェニル化四元ランダム共重合体は、四元ランダム共重合体が架橋することで製造される。
【0012】
さらに、前記の課題を解決すべく、第3の発明である架橋ゴムは、これらのイソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体を含有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に示されるように、本発明の素材により耐熱性が高く、分散性がよいゴムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るグラフト重合体の合成方法を示す概略図である。
【図2】本発明に係るイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)および、イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物とパラジウム触媒であるビス[ミュー−クロロ[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム]とテトラヒドロフラン(THF)に加え撹拌し、ついで4−ビニルフェニルボロン酸とテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、水酸化カリウム水溶液(KOH/HO)を加えて得られた反応生成物(St−IIR)のSEC分析結果を示すグラフである。
【図3】本発明に係るイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)とパラジウム触媒であるビス[ミュー−クロロ[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム]をテトラヒドロフラン(THF)に加え撹拌し、ついで4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸を所定量に調製した混合物とテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、水酸化カリウム水溶液(KOH/HO)を加えて反応溶媒THFの還流温度下(80℃)で15時間反応し得られた反応生成物(St,Ph−IIR)のH−NMR分析結果を示すグラフである。
【図4】本発明に係るイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)とパラジウム触媒であるビス[ミュー−クロロ[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム]をテトラヒドロフラン(THF)に加え撹拌し、ついで4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸を所定量に調製した混合物とテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、水酸化カリウム水溶液(KOH/HO)を加えて、反応溶媒THFの還流温度下(80℃)で15時間反応し得られた反応生成物(St,Ph−IIR)とジクミルパーオキサイドによるレオメータ測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
イソプレン−イソブテン共重合体のハロゲン化物(X−IIR、X=Br,Cl)に対して、パラジウム触媒ビス[ミュー−クロロ[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム]とテトラヒドロフラン(THF)を加えて攪拌し、4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸とボロン酸との混合物を調製してスチリル化フェニル化四元ランダム共重合体が得られる。この際の反応式を式(3)に示す。
【0016】
【化3】

【実施例】
【0017】
次に、同様に、式(4)(5)、図1に示すように、イソプレン−イソブテン共重合体のハロゲン化物(X−IIR,X=Br、Cl)として、JSR(株)社のJSRBROMOBUTYL2244臭素含量2%のイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)を4.5グラム用い、パラジウム触媒であるビス[ミュー−クロロ[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム]を0.0049グラム(イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して0.01当量)とテトラヒドロフラン(THF)を350ml加えて攪拌し、ついでボロン酸成分として4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の総量はイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して1.5当量として、4−ビニルフェニルボロン酸を75%とフェニルボロン酸を25%の混合物を調製した。4−ビニルフェニルボロン酸を0.28グラム(イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して1.125当量(1.5当量の75%))、フェニルボロン酸を0.077グラム(イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して0.375当量(1.5当量の25%)) とテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を0.27グラム(イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して0.5当量)、水酸化カリウム水溶液(KOH/HO)をKOH0.19グラム/HO2.0ml(イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対してKOH2当量)加えて、反応溶媒THF還流下(80℃)で15時間攪拌した。
【0018】
【化4】

【0019】
この際の反応式を式(5)に示す。但し、式(5)に示す共重合体の構造は主な構造であり、これに限定されるものではなく、異性体構造を有している。
【0020】
【化5】

【0021】
次に、同様に、イソプレン−イソブテン共重合体のハロゲン化物(X−IIR,X=Br、Cl)として、JSR(株)社のJSRBROMOBUTYL2244臭素含量2%のイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)を4.5グラム用い、パラジウム触媒であるビス[ミュー−クロロ[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム]を0.0049グラム(イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して0.01当量)とテトラヒドロフラン(THF)を350ml加えて攪拌し、ついでボロン酸成分として4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の総量はイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して1.5当量として、4−ビニルフェニルボロン酸を50%とフェニルボロン酸を50%の混合物を調製した。4−ビニルフェニルボロン酸を0.186グラム(イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して0.75当量(1.5当量の50%))、フェニルボロン酸を0.154グラム(イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して0.75当量(1.5当量の50%))とテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を0.27グラム(イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して0.5当量)、水酸化カリウム水溶液(KOH/HO)をKOH0.19グラム/HO2.0ml(イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対してKOH2当量)加えて反応溶媒THF還流下(80℃)で15時間攪拌した。
【0022】
また、ボロン酸成分として4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の総量はイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して1.5当量として、4−ビニルフェニルボロン酸を25%とフェニルボロン酸を75%、および4−ビニルフェニルボロン酸を0%とフェニルボロン酸を100%の混合物を調製し、同様に反応を行った。また4−ビニルフェニルボロン酸を100%とフェニルボロン酸を0%の混合物を調製し、同様に反応を行った。
【0023】
パラジウム触媒の使用量は、イソプレン−イソブテン共重合体のハロゲン化物(X−IIR,X=Br,Cl)のハロゲン濃度に対して、0.0001倍〜5倍、好ましくは、0.001倍〜1倍である。パラジウム触媒は、Pd(PPh:テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ビス[ミュー−クロロ[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム]、2−[ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェノキシ)ホスフィノオキシ]−3,5−ジ(tert−ブチル)フェニル−パラジウム(II)クロリド、クロロ(η2−P,C−トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)(トリシクロヘキシルホスヒィン)パラジウム(II)、2−(2’−ジ−tert−ブチルホスヒィン)ビフェニルパラジウム(II)アセテート、ジ−η−クロロビス[5−クロロ−2−[(4−クロロフェニル)(ヒドロキシイミノ−kN)メチル]フェニル−kC]パラジウム、[1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体(1:1)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド、アリルパラジウム(II)クロリド、酢酸パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)などであり、好ましくはPd(PPh:テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ビス[ミュー−クロロ[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム]、更に好ましくはビス[ミュー−クロロ[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム]である。
【0024】
さらに添加剤としてリチウム塩である塩化リチウム(LiCl)または臭化リチウム(LiBr)を添加するとパラジウム触媒の使用量を少なくしてもスズキカップリング反応が進行する。このリチウム塩の使用量は、イソプレン−イソブテン共重合体のハロゲン化物(X−IIR,X=Br,Cl)のハロゲン濃度に対して、0.0001倍〜10倍、好ましくは0.001倍〜1倍である。
【0025】
また、ボロン酸成分として4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の総量は、イソプレン−イソブテン共重合体のハロゲン化物(X−IIR,X=Br,Cl)のハロゲン濃度に対して、1倍〜10倍、好ましくは1倍〜5倍である。
【0026】
さらに、塩基は、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの水酸化物や炭酸塩、リン酸塩あるいはアンモニア、アミン類など塩基性を示す物質を示し、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミンなどがあり、好ましくは水酸化カリウム、ジイソプロピルアミンである。この塩基の使用量は、イソプレン−イソブテン共重合体のハロゲン化物(X−IIR,X=Br,Cl)のハロゲン濃度に対して、1倍〜50倍、好ましくは、1倍〜10倍である。本発明の反応で使用される溶媒は、反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されないが、例えば、エーテル系溶媒(THF,1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジエチルエーテル、ジオキサンなど)、含酸素系溶媒、含窒素系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミト(DMF)、アセトニトリルなど)、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、アセトンなど)、脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。通常、これらの溶媒を単独或いは混合して使用することができる。また、共溶媒として、水等の溶媒も使用することができる。
【0027】
この反応生成物についてサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)のRI(Refractive Index示差屈折率)およびUV(Ultra Violet:紫外光)検出器を用いて、254nmでの測定を行った。ボロン酸成分として4−ビニルフェニルボロン酸を100%(イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して1.5当量)として反応を行った反応生成物(After(St−IIR))と出発材料としてイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Before(Br−IIR))との測定結果を図2に示す。図2に示すように、この反応生成物(St−IIR)はイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)と比較して、RI検出ピーク強度がほとんど変化しないのに対し、UV検出ピーク強度には大きな変化が現れた。このことから、この反応生成物には紫外線に吸収を持つスチリル基が導入されたことがわかり、イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物と4−ビニルフェニルボロン酸とのスズキカップリングによってスチリル化三元ランダム共重合体(式(6))(St−TC:Styrenated Ternary Copolymer)が生成された。
【0028】
【化6】

【0029】
次にボロン酸成分として4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の総量はイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して1.5当量として、4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の比率を調製して反応を行った。4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合比率の違いによるSECのRI検出ピーク面積とUV検出ピーク面積の比の比較を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1より、4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の比率を調製してスズキカップリング反応を行うと、4−ビニルフェニルボロン酸の比率が多くなるにつれて、SECのRI検出ピーク面積とUV検出ピーク面積の比(SUV/SRI)が大きくなり、反応生成物のスチリル基の量が異なることが確認できた。
【0032】
[反応式]
式(8)で得られた反応生成物についてH−NMR分析結果を図3に示す。図3に示すように、ボロン酸成分として4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の総量はイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して1.5当量として、4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の比率を調製して反応を行った。4−ビニルフェニルボロン酸を75%とフェニルボロン酸を25%に調製して得られた反応生成物を実施例1、4−ビニルフェニルボロン酸を50%とフェニルボロン酸を50%に調製して得られた反応生成物を実施例2、4−ビニルフェニルボロン酸を25%とフェニルボロン酸を75%に調製して得られた反応生成物を実施例3、4−ビニルフェニルボロン酸を0%とフェニルボロン酸を100%に調製して得られた反応生成物を比較例1、4−ビニルフェニルボロン酸を100%とフェニルボロン酸を0%に調製して得られた反応生成物を比較例2とする。これらの反応生成物についてH−NMRのシグナルを比較すると、6.65、5.65、5.15ppm付近のスチリル基内のビニル基の水素に由来するシグナルが検出され、4−ビニルフェニルボロン酸の比率が多くなるにつれてピーク強度が大きくなっていくことが確認できた。また、スチリル基またはフェニル基が結合しているイソプレン基内のメチレンの水素に由来する3.4ppm付近のシグナルは、スチリル基内のビニル基の水素に由来するシグナルが変化してもピーク強度がほとんど変化していないことからフェニル基が結合していることが確認できた。ただし、フェニルボロン酸を100%に調製し反応させた比較例1では、イソプレン基内の臭素が結合していた炭素上のメチン水素に由来する4.3ppm付近のシグナルが残存し、同一条件では反応が変化することが確認できた。この分析結果から、4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の比率を調製して得られた反応生成物(St,Ph−IIR)にはスチリル基とフェニル基が導入されたことがわかり、イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物と4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸とのスズキカップリング反応によってスチリル化フェニル化四元ランダム共重合体(式(7))(St,Ph−QC)が生成されることがわかった。またボロン酸成分として4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の比率を調製することでイソプレン−イソブテン共重合体のスチリル化率を変化させることができることがわかった。
【0033】
次に、ボロン酸成分として4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の総量はイソプレン−イソブテン共重合体の臭化物(Br−IIR)の臭素1当量に対して1.5当量として、4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の比率を調製して反応を行った反応生成物についてジクルミルパーオキサイドを用いてレオメータでトルク特性を測定した結果を図4に示す。4−ビニルフェニルボロン酸を75%とフェニルボロン酸を25%に調製して得られた反応生成物を実施例1、4−ビニルフェニルボロン酸を50%とフェニルボロン酸を50%に調製して得られた反応生成物を実施例2、4−ビニルフェニルボロン酸を25%とフェニルボロン酸を75%に調製して得られた反応生成物を実施例3、4−ビニルフェニルボロン酸を0%とフェニルボロン酸を100%に調製して得られた反応生成物を比較例1、4−ビニルフェニルボロン酸を100%とフェニルボロン酸を0%に調製して得られた反応生成物を比較例2とする。最大トルクは実施例1が7.09dNm、実施例2が5.03dNm、実施例3が2.30dNm、比較例1はトルクの上昇が見られず、また試験後の試料が発泡しておりこの共重合体が過酸化物架橋しないことが確認された。比較例2は9.43dNmであった。硬度は実施例1が30度、実施例2が26度、実施例3はトルクの上昇があり過酸化物架橋が確認されたが気泡を含んでいたので測定せず、比較例1は架橋していないため測定不可、比較例2は35度であった。このことから、イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物と4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸とのスズキカップリングによってスチリル化フェニル化四元ランダム共重合体(式(7))(St,Ph−QC)が生成し、この共重合体が過酸化物架橋してスチリル化フェニル化四元ランダム共重合体を架橋してなるゴムの生成が確認された。またボロン酸成分として4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸の混合物の比率を調製することでイソプレン−イソブテン共重合体のスチリル化率を変化させることができ、これにより過酸化物架橋の調製ができる。
【0034】
また、イソプレン−イソブテン共重合体の臭化物に変えて、イソプレン−イソブテン共重合体の塩化物と4−ビニルフェニルボロン酸とフェニルボロン酸とのスズキカップリング反応によって得られたスチリル化フェニル化四元ランダム共重合体でも、この共重合体が過酸化物架橋してスチリル化フェニル化四元ランダム共重合体を架橋してなるゴムの生成が確認された。
【0035】
【化7】

【0036】
【化8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブテン、イソプレン、スチリルイソプレン及びフェニルイソプレンよりなるイソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体。
【請求項2】
共重合体が架橋されている請求項1に記載のイソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体。
【請求項3】
Pd(PPh:テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、またはビス[ミュー−クロロ[5−ヒドロキシ−2−[1−(ヒドロキシイミノ)エチル]フェニル]パラジウム]のいずれか少なくとも一つを含む触媒を用いて請求項1に記載のイソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体を製造する方法。
【請求項4】
共重合体が架橋されている請求項2に記載のイソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のイソプレン−イソブテン−スチリルイソプレン−フェニルイソプレン共重合体を含有する架橋ゴム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−270211(P2010−270211A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122601(P2009−122601)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【出願人】(000228578)日本ケミコン株式会社 (514)
【Fターム(参考)】