説明

イソプレンを製造する方法及びシステム

イソプレンを製造する方法であって、第1のメタテシス反応器において、第1のメタテシス触媒の存在下、イソブチレン及び1-ブテン及び2-ペンテンの少なくとも1つを含んでなる混合C4メタテシス供給物ストリームを、混合C4供給物ストリームにおける新鮮な供給物のオレフィン含量を基準として少なくとも30質量%の2-メチル-2-ペンテン、及びエチレン及びプロピレンの少なくとも1つを含んでなる中間生成物ストリームを生成するに充分な条件下で反応させ、2-メチル-2-ペンテンを分離し、分離した2-メチル-2-ペンテンを熱分解に供して、イソプレンを含んでなる反応性生物ストリームを生成し、及び分別を使用してイソプレンを分離して、イソプレン生成物ストリームとすることを含んでなるイソプレンの製法が開示される。また、イソプレンの製造に使用されるシステムも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された具体例は、一般に、2-メチル-2-ペンタン及びイソプレンの製造に係り、さらに詳しくは、2-メチル-2-ペンタン(続いてイソプレンに転化される)を製造するための混合C4ストリームの使用に係る。
【背景技術】
【0002】
2-メチル-2-ペンタンは、水蒸気分解流出物において見られる低濃度の生成物である。沸点が近似するC5及びC6オレフィン異性体が共存しており、有意の容積で回収することが困難かつ高価になっている。
【0003】
米国特許第6,538,168号によれば、C4炭化水素ストリームからC5/C6オレフィンを製造することが知られている。C4オレフィンの初期メタテシス反応により、C2−C6オレフィン及びブタンの混合物が生成される。米国特許第6,538,168号に開示された1具体例では、多段階蒸留プロセスにおいて、C2−C6オレフィン混合物を分別して、C2−C4オレフィン及びブタン、又はC2−C3オレフィンを含有する低沸点のフラクションA、ブテン及びブタンを含有する、より高いがなお低沸点のフラクションB、ペンテン及びメチルブテンを含有する中間の沸点のフラクションC、及びヘキセン及びメチルペンテンを含有する高沸点のフラクションDを生成している。いくつかのケースでは、分別によって、C5及びC6オレフィンを相互に分離している。前記特許明細書に記載された実施例3では、生成物ストリームは3-ヘキセン99.5質量%を含有している。1-ブテンの転化率は91質量%であり、2-ブテンの転化率は50質量%である。メタテシス前にイソブチレンを除去し、これによって、メタテシス用の反応体ストリームは、わずかに2.0質量%のイソプレンを含有する。このケースにおける2-メチル-2-ペンテンの濃度は低い(<1%)。
【0004】
他の公知の方法では、プロピレンから2-メチル-2-ペンテンが製造される。プロピレンを二量化してメチルペンテン及びジメチルブテンを生成することを含むプロセスが米国特許第3,686,352号に開示されている。しかし、反応体としてプロピレンを使用して2-メチル-2-ペンテンを形成する場合、原料コストが高い。
【0005】
イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)は、1,4-ポリイソプレン(天然ゴムの合成バージョンである)への前駆体である。イソプレンは、一般に、ナフサ又は重質オイルの水蒸気分解流出物のC5フラクションから回収される。水蒸気分解装置からのC5ストリームを、代表的に溶媒としてアクリロニトリルを使用する溶媒抽出プロセスに送る。このルートは、シクロペンタジエン(溶媒によって選択的に除去される)が存在するため、煩雑である。
【0006】
1950年代及び1960年代において、Goodyear Tire and Rubber Companyが、2-メチル-2-ペンテンを、主にイソプレン、メタン、及びイソブチレンの炭化水素の範囲に転化する方法を開発した。Frechら, 「メチルペンテンの熱分解に影響を及ぼすファクター」, ACS Symposium Series, 1976に開示されているように、2-メチル-2-ペンテンは、続いて、熱分解反応器において熱分解されて、イソプレン及び他の生成物を生成できる。生成物は、メタン、エチレン、ブタジエン、イソプレン、ブテン、及びC6ジエンを含んでなる。反応は、温度600℃又はそれ以上において、イソプレンの重合を防ぐために高希釈度で行われる。Goodyearプロセスは、均質触媒としてHBr、又はH2S及びNH3の混合物を使用して、熱分解反応におけるイソプレンの選択率を増進している。HBrを使用したGoodyearのテストでは、2-メチル-2-ペンテンからのイソプレンのシングルパス収率が54.5モル%であることが示されている。ついで、抽出蒸留を使用することによって、この混合物からイソプレンを分離することができる。この研究は、Lloyd M. Elkin, Isoprene, Stanford Research Institute Process Economics Report No. 28 (p. 60), 1967において吟味されている。
【0007】
イソプレン製造の別ルートは、イソアミレン(メチルブテン)を脱水素化することである。脱水素化工程は、Catofinプロセスを使用し、Air Productsによって商業的に実施されている。イソアミレンは、一般的には、C5生成物ストリームを水蒸気分解することによって回収されている。しかし、これらのケースでは、プロセスは、シクロペンタジエンが存在するため煩雑である。C5生成物ストリームは、ジエン(脱水素化触媒を迅速に汚染する)を除去するために選択的水素化を必要とする。また、脱水素化工程は非常に高価であり、真空での操作を必要とし、設備費も高い。イソアミレンは、Ind. & Eng. Chemistry Prod. Res. Develop., Vol. 10, No. 1, 1071 pg. 46に開示されているように、ブテン及びプロピレンのメタテシスによっても形成される。これらのイソアミレンは、ついで、上述のようにイソプレンに脱水素化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高いブテンの転化率と組み合わせて、混合C4オレフィンストリームから2-メチル-2-ペンテンの高収率を達成できる方法を開発することは重要である。ついで、2-メチル-2-ペンテンはイソプレンを生成するために使用される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1具体例は、第1のメタテシス反応器において、第1のメタテシス触媒の存在下、イソブチレン及び1-ブテン及び2-ペンテンの少なくとも1つを含んでなる混合C4メタテシス供給物ストリームを、混合C4供給物ストリームにおける新鮮な供給物のオレフィン含量を基準として少なくとも30質量%の2-メチル-2-ペンテン、及びエチレン及びプロピレンの少なくとも1つを含んでなる中間生成物ストリームを生成するに充分な条件下で反応させ、2-メチル-2-ペンテンを分離し、分離した2-メチル-2-ペンテンを熱分解に供して、イソプレンを含んでなる反応生成物ストリームを生成し、及び分別を使用してイソプレンを分離して、イソプレン生成物ストリームとすることを含んでなる方法である。
【0010】
他の具体例は、第1のメタテシス触媒の存在下、イソブチレン及び1-ブテンを含んでなる混合C4メタテシス供給物ストリームを、2-メチル-2-ペンテン、及びエチレン及びプロピレンの少なくとも1つを含んでなる中間生成物ストリームを生成するに充分な条件下で反応させ、中間生成物ストリームを分別して、2-メチル-2-ペンテンストリーム、及びエチレンストリーム及びプロピレンストリームの少なくとも1つを形成し、分離した2-メチル-2-ペンテンストリームを熱分解に供して、イソプレンを含んでなる反応生成物ストリームを生成し、及び分別を使用してイソプレンを分離して、イソプレン生成物ストリームを形成することを含んでなる方法である。
【0011】
さらに他の具体例は、第1のメタテシス触媒の存在下、イソブチレン及び2-ペンテンを含んでなる混合C4メタテシス供給ストリームを、プロピレン、2-メチル-2-ペンテン、エチレン、2,3-ジメチルブテン及び2-ブテンを含んでなる中間生成物ストリームを生成するに充分な条件下で反応させ、多段階分別プロセスにおいて、中間生成物ストリームを分離して、2-メチル-2-ペンテンストリーム、エチレン及びプロピレンを含有する蒸留物ストリーム、及び2,3-ジメチル-2-ブテンストリームを形成し、分離した2-メチル-2-ペンテンストリームを熱分解に供して、イソプレンを含んでなる反応生成物ストリームを生成し、及び分別を使用してイソプレンを分離して、イソプレン生成物ストリームとすることを含んでなる方法である。
【0012】
さらに他の具体例は、第1のメタテシス反応器、第2の反応器、第1の多段階分別システム、熱分解ヒーター及び第2の多段階分別システムを含んでなるシステムにある。第1のメタテシス反応器は、イソブチレンを1-ブテン及び2-ペンテンの少なくとも1つと反応させて、2-メチル-2-ペンテンを生成するように設定されている。第2の反応器は、2-ブテンを異性化して1-ブテンを形成するように設定された異性化反応器、及び2-ブテンをエチレン及び1-ブテンの少なくとも1つと反応させて、プロピレンを生成するように設定されたメタテシス反応器の少なくとも1つを含んでなる。第1の多段階分別システムは、2-メチル-2-ペンテンストリーム及び2,3-ジメチル-2-ブテンストリームを生成するように設定されている。熱分解ヒーターは、2-メチル-2-ペンテンストリームを分解して、イソプレン及び他の炭化水素を生成するように設定されている。第2の多段階分別システムは、イソプレンを他の炭化水素から分離するように設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】以下に記載する第1の方法及びシステムによるフローシートである。
【図2】以下に記載する第2の方法及びシステムによるフローシートである。
【図3】以下に記載する第3の具体例によるフローシートである。
【図4】第4の具体例によるフローシートである
【発明を実施するための形態】
【0014】
反応体としてイソブチレンを使用して効率的にイソプレンを製造するシステム及び方法をここに記載する。この方法は、二量化を必要とするような高価なプロピレンを使用することなく、高濃度でイソへキセン物質を製造することを可能にする。ついで、熱クラッキングルート(イソアミレンが関与する触媒脱水素化よりもコストが低く及び収率が高い)を使用してイソプレンを製造するために、2-メチル-2-ペンテンを使用できる。いくつかの具体例では、エチレン及びプロピレンを含む他の各種の生成物ストリームが生成される。
【0015】
ここで使用するように、「転化率」は、生成物に転化された反応体のモル%に関する。ここで及び表1において使用する「実収率」は、競合する反応が生じないと仮定して、得られた生成物の実際の質量(パージストリーム及び分別による生成物の損失を差し引いている)/生成物の予測された質量に関する。「収率」は%で表示され、物質バランス全体に基づくものである。ここで使用するように、「選択率」は形成された特定の生成物の質量/形成された全ての生成物の質量(未転化の反応体を含まない)に関するものであり、百分率として表示される。選択率は物質バランス全体に基づくものである。
【0016】
ここに記載する方法は、メタテシス反応器において、反応体としてイソブチレンを使用する。1具体例では、2-ブテンを異性化して1-ブテンとし、ついで、メタテシス反応器に送り、ここで、イソブチレンと反応させて、エチレン及び2-メチル-2-ペンテンを形成する。他のケースでは、イソブチレン及び1-ブテンのメタテシス反応において生成したエチレンを、2-ブテン及びエチレンのメタテシス反応において使用して、追加の生成物としてプロピレンを生成する。他の具体例では、1つのメタテシス反応器において、1-ブテン及び2-ブテンを反応させてプロピレン及び2-ペンテンを生成し、ついで、2-ペンテンを、他のメタテシス反応器において、イソブチレンと反応させて、2-メチル-2-ペンテンを生成する。いずれのケースでも、所望の生成物ストリーム及び再循環ストリームを得るために、1セットの蒸留塔が使用される。
【0017】
メタテシス触媒は、担体に担持されたVIB族及びVIIB族の金属の酸化物を含む(ただし、これらに限定されない)各種の好適なメタテシス触媒である。非限定的な例としては、タングステン、モリブデン、及びレニウムの酸化物が含まれる。触媒担体は各種のタイプのものであり、アルミナ、シリカ、その混合物、ヒドロタルサイト、ジルコニア、及びゼオライトが含まれる。メタテシス触媒に加えて、メタテシス反応器における触媒として、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムのような二重結合異性化触媒が含まれる。メタテシス反応は、一般に、温度50−450℃、好ましくは300−400℃で行われる。
【0018】
2-ブテンを二重結合異性化して1ブテンを形成する方法は、米国特許第6,875,901号に記載されており、参照することによって、その内容を本明細書に含める。2-ブテンの1-ブテンへの異性化において使用される触媒の非限定的な例としては塩基性金属酸化物触媒がある。
【0019】
メタテシス反応において生成された2-メチル-2-ペンテンをクラッキングプロセスにおいてイソプレンに転化し、続いて、溶媒抽出又は液体吸着システムを使用することによってイソプレンを回収する。このタイプの代表的なプロセスでは、熱分解プロセスが、メタンガス、C2、C3及びC4炭化水素、イソプレン、シクロペンタジエン、メチルブテン、及びピペリレンを含むC5炭化水素、未転化2-メチル-2-ペンテン及び他のC6炭化水素、及び重質成分から全範囲の生成物を生成できる。ついで、混合物を苛性アルカリ溶液によってクエンチする。水を分離した後、混合物を蒸留/吸着セクションに送り、ここで、C6+液を使用してC5物質を吸着する。メタン及びC4又はより軽質の成分のいくらかをオーバーヘッドとして除去する。ボトム(C6+)を分別工程に送る。ついで、C5成分(主としてイソプレン)を重質のC6+液からストリップする。いくらかのシクロペンタジエンは二量化してジシクロペンタジエンとなり、このストリッピング塔のボトムから流出する。ついで、この第2の塔からのボトムストリームとしての2-メチル-2-ペンテンを第3の塔に送給し、ここで、2-メチル-2-ペンテンをオーバーヘッドとして蒸留して、クラッキング炉に再循環する。ボトムの重質液を溶媒として再循環する。ストリッピング塔からのC5パラフィン及びメチルブテンを含むモノオレフィンを、抽出蒸留塔において、溶媒から分離し、一方、イソプレンは溶媒中に残る。ストリッピング塔において、イソプレンを溶媒から分離し、水で洗浄して微量の溶媒を除去する。粗製のイソプレンを分別シーケンスに送給して、ここで、第1の蒸留塔において蒸留物としてアルキンを除去し、第2の蒸留塔においてボトムストリームとしてピペリレンを除去すると共に、イソプレンを蒸留物として集める。当業者には明らかであるように、クラッキング流出物からのイソプレンの分離には各種の可能なバリエーションがあり、上記のプロセスは非限定的な例である。
【0020】
ここに記載のプロセスの利点としては、下記のものが含まれる。
【0021】
1.2-メチル-2-ペンテンがC4ストリームから高濃度で生成される。上述のように、プロピレンから2-メチル-2-ペンテンを製造する一般的な方法では、プロピレンがブテンよりも高価であるため、原料が高コストである。
【化1】

これに対して、ここに記載の特定の具体例では:
【化2】

このように、ここに記載する方法は、高価なプロピレンを消費する代わりに、2-メチル-2-ペンテン+エチレン又はプロピレンのいずれか(いずれも高価なオレフィンである)を生成するために混合C4成分を使用するものである。この結果、製造された2-メチル-2-ペンテンの単位量当たりの原料のネットのコストを低減できる。
【0022】
2.ここに記載の方法は、他のプロセスを介する2-メチル-2-ペンテンの製造のために使用されるプロピレンの二量化用均質触媒の代わりに、固定床メタテシス触媒を使用する。これは、触媒の連続供給を必要としないため、操作コストを低減するものである。この発明におけるメタテシス反応の全てにおいて、同一の固定床触媒を使用できることは特筆すべきものである。他の2-メチル-2-ペンテン法はプロピレンの二量化を必要とし、イソブチレン及びホルムアルデヒドからのイソプレンの合成は均質触媒を使用するものである。
【0023】
3.2-メチル-2-ペンテン及びエチレン及び/又はプロピレンの合計に対するメタテシスの総選択率は少なくとも90%、又は少なくとも95%である。
【0024】
4.方法は、クラッキングユニットからの副生物として使用可能な混合C4ストリームを使用するものである。C4オレフィンのエチレン又はプロピレン及びイソプレンへの転化は、原料ストリームの価値を潜在的に高めることができる。競合する方法は、イソアミレンの脱水素化を含むものである。イソアミレンのための原料として水蒸気分解装置からのC5ストリームが使用される場合、シクロペンタジエンの高価な分離プロセスが必要となる。或いは、イソアミレンは、原料として高コストのプロピレンを含むプロピレン及びブテンのメタテシスによって製造される。
【0025】
5.方法のいくつかの具体例は、2-ブテンを1-ブテンに転化できる異性化反応器を使用するものであり、これは、方法を、各種のC4原料組成物に適合可能なものとする。
【0026】
6.方法は、プロピレン製造用のオレフィン転化技術(OCT)と一体化されるものであり、更なる効率化が達成される:
−方法は、一般的なメタテシス反応
【化3】

を介するプロピレンを製造するOCTプロセスにおけるエチレン原料要求の一部として使用されるエチレンを製造する。
−一体化された方法は、追加の反応のためにブテンパージをOCTプロセスに供給でき、この結果、ブテンの利用率がより高くなる。
−OCTでは、イソブチレンはメタテシスを介してエチレンとは反応せず、従って、一般的には除去され、LPGとして燃料に送給される。ここに記載の一体化された方法では、LPGに送給されるイソブチレンは、より高級なイソプレン及びエチレン又はプロピレンにアップグレードされる。
−OCTにおける望ましくない副反応として、プロピレン及び2-ペンテンを生成する1-ブテンと2-ブテンとの反応が含まれる。OCTからの2-ペンテン副生物は、2-メチル-2-ペンテンの製造用の原料として使用される。
−オーバーヘッド軽質ガス(エチレン及び/又はプロピレン)は、OCT分別装置において回収される。
−一体化によって、触媒が同一であるため、方法のために再生及び処理装置を共用できる。
【0027】
7.クラッキング流出物からの2メチル2ペンテンの回収によって、生成物の容量が小さくなり、イソプレンの製造能力を制限できる。2-メチル-2-ペンテンを製造することを目的とする方法は、より大きい容積及びより高い濃度となる。
【0028】
方法は、特に、1-ブテン5−50質量%又は10−30質量%、2-ブテン5−50質量%又は10−30質量%、イソブチレン5−70質量%又は10−60質量%及びブタン0−25質量%(1-ブテン、2-ブテン、イソブチレン及びブタンの総質量を100%として)を含有する混合C4供給物ストリームについて有用である。少量のブタジエン、C3化合物及びC5化合物が存在していてもよい。1具体例では、供給原料は、供給物ストリーム100部基準で、ブタジエン0.1−0.3部、C3化合物0−1部、及びC5化合物0−1部を含有する。
【0029】
ここに記載する方法は、新鮮な供給原料のC4オレフィン含量基準で、2-メチル-2-ペンテンの実収率少なくとも30質量%、又は少なくとも40質量%又は少なくとも50質量%を提供する。いくつかのケースでは、2-メチル-2-ペンテンの実収率は、30−70質量%、又は40−70質量%又は50−70質量%である。さらに、プロピレンの実収率少なくとも10質量%、又は少なくとも20質量%又は少なくとも30質量%が得られる。エチレンの実収率少なくとも5質量%、又は少なくとも10質量%又は少なくとも20質量%が得られる。エチレン及びプロピレンは、方法の特定の具体例において使用され及び/又は生成物として除去される。
【0030】
下記の実施例は、供給原料の組成に応じて異なる選択率及び転化率を有するいくつかのケースを含むものである。OCTとの一体化では、プロピレンへの選択性のため、プロピレンを高価な生成物として回収できる。
【0031】
[実施例1−4]
4オレフィンのメタテシス反応による2-メチル-2-ペンテンの製造に係る4つの方法を、Aspentech HYSYSにおいてシミュレートした。各方法を、イソブチレン50質量%、1-ブテン25質量%、及び2-ブテン25質量%からなる代表的な水蒸気分解装置ラフィネート1原料ブレンドを使用してシミュレートした。ついで、得られた2-メチル-2-ペンテンを使用してイソプレンを生成した。ラフィネート1は、ブタジエンを除去した混合C4供給物として定義される。ブタジエンは、選択的脱水素化を介して又は溶媒抽出によって除去される。メタテシス反応器において方法を実施するためは、ブタジエンを低レベルまで除去する必要がある。ラフィネート1は、イソブタン、イソブチレン、1-ブテン、c/t2-ブテン及び直鎖状ブタンの混合物を含んでなる。実施例において使用されるストリームの組成は、純粋なオレフィン供給物(イソブタン又は直鎖状ブタンパラフィンを含まない)に基づくものである。これらの組成は決して限定されるものではなく、本発明を説明するために使用されるものである。実際には、これらストリームからのパラフィンの除去は、追加の分別及び/又はパラフィンがメタテシス触媒上では反応しないため、再循環内に蓄積するパラフィン濃縮物として反応ループから除去することによって行われる。
【実施例1】
【0032】
接触蒸留−脱イソブチル化(CD-DIB)及び異性化ループを有するイソブチレン及び1-ブテンのメタテシス反応による2-メチル-2-ペンテンからのイソプレン及びエチレンの製造
初めに図1を参照すると、混合C4ストリームからイソプレンを製造する方法の全体が100として示されている。全体の方法は、2-メタン-2-ペンテンを製造するメタテシスプロセス101及びイソプレンを製造する熱分解及び分離プロセス103を含む。
【0033】
塔104において、イソブチレン50質量%、1-ブテン25質量%及び2-ブテン25質量%を含有するストリーム102の新鮮なラフィネート1を接触蒸留して、イソブチレン(トップストリーム106)をn-ブテン(ボトムストリーム108)から分離した。この操作における接触蒸留では、蒸留構造体において、分別が進行しているときに1-ブテンの2-ブテンへの異性化を行うことができるようにヒドロ異性化触媒を使用した。この異性化機能が存在しない場合、供給物中の1-ブテン及び2-ブテンはオーバーヘッドに運ばれ、オーバーヘッドイソブチレン生成物と混合される。異性化は、メタテシス反応に案内されるオーバーヘッドイソブチレン生成物における2-ブテンを最少量にするために行われる。ストリーム108は、主に、2-ブテンを含んでなる。ついで、ストリーム108を再循環ストリーム110と合わせてストリーム112とし、異性化反応器114に送り、ここでは、平衡の2-ブテン:1-ブテン比が維持される(350℃において約3.5:1)。反応生成物ストリーム116は1-ブテン及び2-ブテンを含有しており、これらを蒸留塔118において分離した。2-ブテンを含有するボトムストリームは再循環ストリーム110であり、異性化反応器114に再循環した。蒸留塔118からの蒸留された1-ブテンを含有するトップストリーム120を、塔104からのイソブチレン含有トップストリーム106及び再循環ストリーム122と混合してストリーム124を形成する。ストリーム124をメタテシス反応器126に送り、ここで、下記の反応を平衡となるまで行う:
【化4】

【0034】
反応器流出物128は、2-メチル-2-ペンテン25質量%、エチレン9質量%、2,3-ジメチル-2-ブテン6質量%、及び3-へキセン2質量%と共に、未反応の1-ブテン12質量%及び未反応のイソブチレン43質量%を含有していた。反応器流出物ストリーム128を蒸留塔130に送給し、ここで、エチレンをトップストリーム132における生成物として回収した。C3+を含有するボトム液体ストリーム134を蒸留塔136に送給し、ここでC3成分、3-へキセン及び未反応のイソブチレン及び1-ブテンを蒸留物ストリーム138として除去し、一方、ボトムストリーム140は2-メチル-2-ペンテン及び2,3-ジメチル-2-ブテンの混合物であった。このボトムストリーム140を蒸留塔142に送給し、ここで、所望の生成物である2-メチル-2-ペンテンを蒸留物ストリーム144として集めた。副生物である2,3-ジメチル-2-ブテンを含有するボトムストリーム146を、蒸留塔136からの蒸留物ストリーム138と合わせて再循環ストリーム122(メタテシス反応器126に供給されるストリーム124の一部を構成する)を形成した。この再循環ストリーム中の2,3-ジメチル-2-ブテン及び3-へキセンは、副生物が副反応を生ずることを阻止し、所望の生成物への選択率を増進する。プロセス全体の性能についてのデータ、すなわち、図1において入口ストリーム102から出口ストリーム144までのプロセス全体の供給物の転化率及び生成物の選択率を後述の表1に示す。「1通過(pass)当たりの」選択率又は転化率は、特別な反応器又はユニット、このケースでは反応器126の性能に関するものである。「全体の」及び「1通過当たりの」性能(特に転化率)は、プロセス内の再循環ストリームの配置に応じて変動する。
【0035】
イソプレンを得るための方法の残りの部分についてはシミュレートされていないが、ストリーム144(高濃度の2-メチル-2-ペンテンを含有する)からのイソプレンの製造を説明する。上述のように、熱分解及び分離プロセスを103として表示する。蒸留物ストリーム144を再循環ストリーム148と合わせて、ストリーム150(2-メチル-2-ペンテンを富有するストリーム(「2-メチル-2-ペンテンリッチストリーム」と表示する)である)。ストリーム150を熱クラッキング炉152に供給し、ここで、炭化水素類、主として、イソプレン、メタン、及びイソブチレンに転化する。炉流出物ストリーム154を蒸留塔156に送給し、ここで、メタン及びC4炭化水素を含む軽質ガスを蒸留物ストリーム158として除去する。イソプレン及びシクロペンタジエンを含有するボトムストリーム160を容器161に供給し、ここで、100℃に加熱して、シクロペンタジエンをジシクロペンタジエンに二量化する。容器161からの流出物ストリーム162を蒸留塔163に送給し、ここで、C5炭化水素をオーバーヘッドにおいてストリーム164として取り出す。一方、ジシクロペンタジエン及びC6+を、ボトムストリーム165において塔から除去する。このストリームを、任意に、塔159においてさらに分離して、ストリーム167においてジシクロペンタジエンを集め、一方、ストリーム148における残りのC6+炭化水素をクラッキング炉152に再循環するか、或いはストリーム165全体をストリーム148として再循環することもできる。
【0036】
イソプレンを含有するストリーム164を抽出蒸留容器166に供給し、ここで、ストリーム169からの溶媒と接触させる。パラフィン及びモノ-オレフィンがストリーム168として容器から排出され、一方、溶媒及び抽出物ストリーム170を溶媒ストリッピング塔172に供給する。この塔から、溶媒ストリーム176を、ストリーム169の一部として再循環するか、或いは溶媒再生システム(図示していない)に供給することもできる。イソプレン及びC5炭化水素を含有するストリーム174を水洗浄塔178に供給する。水ストリーム180を炭化水素と接触させ、極微量の溶媒をボトムストリーム182として除去する。このストリームを蒸留塔184に送給し、ここで、溶媒をストリーム186として分離し、ストリーム169の一部として抽出蒸留容器166に再循環する。水ストリーム180を塔178に再循環する。
【0037】
イソプレン及びC5炭化水素ストリーム181を水洗浄塔178から蒸留物として排出し、蒸留塔188に供給する。蒸留塔188において、アルキンストリーム190を蒸留物として分離し、イソプレンを含有するボトムストリーム192を蒸留塔194に供給する。イソプレン生成物ストリーム196を蒸留物として集め、ピペリレンを含有するボトムストリーム198を塔底から取り出す。
【0038】
上記熱分解及び分離プロセスを使用し、2-メチル-2-ペンテン96.7質量%及び2,3-ジメチル-2-ブテン1.8質量%を含有する、熱クラッキング炉への精製2-メチル-2-ペンテン供給物を使用することによって、C4オレフィン供給物100 kg当たりイソプレン少なくとも60kgが得られる。初期供給物ストリームのC4オレフィン含量基準で、供給物の60質量%がイソプレンに転化され、供給物の<1質量%がプロピレンに転化され、供給物の25質量%がエチレンに転化される。
【0039】
イソプレン生成物を得るために、上述の分離プロセスの代わりに、他の各種の分離プロセスを使用することもできる。一般に、分別プロセスは、複数個の蒸留塔を含み、任意に、溶媒抽出及び/又は抽出蒸留を含む。
【実施例2】
【0040】
プロピレンを生成するエチレン及び2-ブテンのメタテシス反応と組み合わせた、イソブチレン及び1-ブテンのメタテシス反応によって得られた2-メチル-2-ペンテンからのイソプレン及びプロピレンの製造
実施例2は、プロピレンが製造され、実施例1の直鎖状ブテンの異性化工程及び接触蒸留が排除された方法を説明するものである。
【0041】
図2を参照すると、ブテンからイソプレンを製造する方法が200として示されている。イソブチレン50質量%、1-ブテン25質量%及び2-ブテン25質量%を含有するストリーム202の新鮮なラフィネート1を、イソブチレン81質量%、1-ブテン9.5質量%及び2-ブテン8.5質量%を含有する再循環ストリーム204と、新鮮な供給物1kg当たり再循環1.5kgの割合で混合した。合わせたC4ストリーム206を一般的な蒸留塔208において蒸留して、イソブチレン及び1-ブテン(トップストリーム210)を2-ブテン(ボトムストリーム212)から分離した。イソブチレン81質量%及び1-ブテン19質量%を含有する蒸留物ストリーム210をメタテシス反応器213に送り、ここで、下記の反応を平衡となるまで行う:
【化4】

【0042】
塔208の操作パラメーターによって、メタテシス反応器213への供給物中の2-ブテンの濃度を制御した。オーバーヘッドストリーム210における2-ブテンの量は故意に制限されるが、塔は実施例1のような触媒を含んでいないため、いくらかの2-ブテンはオーバーヘッドに通過する。2-ブテンの大部分を、ボトムストリーム212として、塔208から除去した。
【0043】
反応器213への供給物に2-ブテンが存在することによって、2-ブテンの1-ブテン及びイソブチレンとの平衡反応が生ずる。
【化5】

【0044】
ストリーム214における反応器流出物は、未反応イソブチレン57質量%及び未反応1-ブテン7質量%を含有しており、これは、1通過当たり供給物の全転化率約37モル%に相当する。メタテシス反応器流出物ストリーム214は、2-メチル-2-ペンテン17質量%、エチレン9質量%、2,3-ジメチル-2-ブテン10質量%、及び3-へキセン0.5質量%も含有していた。メタテシス反応器流出物ストリーム214を、第2のメタテシス流出物ストリーム216と合わせて、ストリーム218を形成した。ストリーム218を蒸留塔220に送給し、ここで、エチレンをオーバーヘッドにおいて蒸留物ストリーム222として取り出した。蒸留物ストリーム222の一部を、生成物として、エチレンストリーム224において集め、一方、残部(再循環ストリーム226)を、2-ブテンを含有するボトムストリーム212と合わせて、ストリーム228を形成した。ストリーム228を第2のメタテシス反応器230に供給した。ストリーム228は、エチレン66%及び2-ブテン33%のモル組成(エチレン:ブテンの比2:1)を有している。第2のメタテシス反応器230では、主反応が平衡まで進行した。
【化6】

【0045】
反応器230からのストリーム216における流出物は、2-ブテン16質量%(転化率67モル%)、エチレン32質量%、及びエチレン生成物50質量%を含有していた。ストリーム216をストリーム214と合わせて、ストリーム218を形成し、上述のように、蒸留塔220に供給した。蒸留塔220からのボトムストリーム234を蒸留塔236に送給し、ここで、プロピレン生成物を蒸留物ストリーム238として除去した。プロピレンが、二量化を介して2-メチル-2-ペンテンを製造するために供給物として使用される従来公知の方法とは異なり、プロピレンストリーム238は価値のあるオレフィン製品である。
【0046】
蒸留塔236からのボトムストリーム240を蒸留塔242に送給し、ここで、イソブチレンリッチC4ストリームを蒸留物ストリーム244として除去した。蒸留物ストリーム244を、再循環ストリーム204(供給物ストリーム202と混合する)及び任意のパージストリーム246に分けた。塔242からのボトムストリーム248は、所望の2-メチル-2-ペンテン生成物62質量%及び2,3-ジメチル-2-ブテン19質量%を含有していた。これら2つの成分を、蒸留塔250において、各々に分離した。2-メチル-2-ペンテンをトップストリーム252において除去し、2,3-ジメチル-2-ブテンをボトムストリーム254において除去した。供給物の全転化率99.89%で、方法からの主生成物は、プロピレン37質量%、2-メチル-2-ペンテン35質量%、2,3-ジメチル-2-ブテン20質量%、エチレン6質量%、及び3-へキセン1質量%であった。
【0047】
イソプレンを得るための方法の残りの部分についてはシミュレートされていないが、ストリーム252における2-メチル-2-ペンテンからのイソプレンの製造プロセスを説明する。図2に示す多段階蒸留プロセスは、図1に関連して記載した抽出蒸留プロセスによって置き換えられる。さらに、図1及び図2に示すプロセスの代わりに、抽出を伴う又は伴わない分別を含む他のプロセスを使用することもできる。
【0048】
ストリーム252を再循環ストリーム258と合わせてストリーム260を形成する。ストリーム260を熱クラッキング炉262に供給し、ここで、炭化水素類、主として、イソプレン、メタン、及びイソブチレンに転化する。炉流出物ストリーム264を蒸留塔266に送給し、ここから、メタン蒸留物ストリーム268を除去する。多くのケースでは、このストリームはプロセスにおける加熱のために要求される燃料となる。ボトムストリーム270を蒸留塔272に送給する。塔272から、ストリーム274において粗製イソプレン蒸留物を除去する。ボトムストリーム258を、ストリーム260の一部として炉262に戻す。イソプレン蒸留物ストリーム274を蒸留塔286に供給する。2-メチル-1-ブテンを蒸留物ストリーム288において除去し、イソプレンをボトムストリーム290において除去する。ボトムストリーム290を蒸留塔292に供給する。高純度のイソプレンを蒸留物ストリーム294として除去し、2-メチル-2-ブテンをボトムストリーム296において除去する。
【0049】
図2の熱分解及び分離プロセスを使用し、熱クラッキング炉への供給物が、2-メチル-2-ペンテン96.7質量%及び2,3-ジメチル-2-ブテン1.8質量%を含有する精製2-メチル-2-ペンテンストリームである場合、C4オレフィン供給物100 kg当たりイソプレン少なくとも28kgが得られる。初期供給物ストリームのC4オレフィン含量基準で、供給物の28質量%がイソプレンに転化され、供給物の37質量%がプロピレンに転化され、供給物の7質量%がエチレンに転化される。イソプレンの実収率は、ストリーム260の2-メチル-2-ペンテン含量基準で50−65質量%である。
【0050】
蒸留塔250のボトムから2,3-ジメチル-2-ブテンを集めるための別法としては、ストリーム254の全部又は一部を、ストリーム256において、メタテシス反応器213に再循環してイソブチレン同士の反応を防止することができる。しかし、この場合、イソブチレンがC4再循環ループにおいて増加するため、より多くのイソブチレンをパージすることが必要である。イソブチレンの増大は、メタテシス反応器における1-ブテンの転化率が1通過当たり90%に増大するにつれて生じ、一方、反応器全体のC4の転化率は1通過当たり10モル%に低下する。生成物収率における無視できる程度の増大があるため、これは、本質的に、かなり大きい再循環比を犠牲にして、パージストリーム244又は254におけるイソブチレンの2,3-ジメチル-2-ブテンによる交換である。新鮮な供給物におけるイソブチレン:1-ブテンの比が1:1(この例では、2:1よりもむしろ)に近づくため、ストリーム254を反応器213へ再循環することはより有益になる。ここに例示する供給物組成物と一緒に、この代案が使用される見込みはないが、イソブチレン及び1-ブテンを比1:1で含有する供給物のような他の供給組成物については、この際循環ストリームが2-メチル-2-ペンテンへの選択率を改善するため有益であろう。
【実施例3】
【0051】
2-ブテン及びエチレンのメタセシス及び続くイソブチレン及び1-ブテンのメタテシスによる2-メチル-2-ペンテンからのイソプレン及びプロピレンの製造
実施例3は実施例2において使用された構成の変形である。実施例2では2-ブテン及びエチレンからプロピレンを製造するメタテシス反応器と「並列で」、イソブチレン及び1-ブテンから2-メチル-2-ペンテンを合成するためのメタテシス反応器が使用されているが、実施例では、これらのプロセスが「直列で」配置されている。
【0052】
実施例3の方法の全体が、図3において、300として示されている。イソブチレン50質量%、1-ブテン25質量%及び2-ブテン25質量%を含有するストリーム302の新鮮なラフィネート1をエチレンストリーム304と混合して供給物ストリーム308を形成した。ストリーム302における新鮮なC4:ストリーム304における再循環C2の比の値は2.0であった。ストリーム306をメタテシス反応器308に供給し、ここで、主反応が平衡まで進行した。
【0053】
【化6】

【0054】
エチレンの存在は、イソブチレン又は1-ブテンの自身との反応を阻害し、及びさらに、イソブチレン又は1-ブテンは、いずれも、エチレンとは反応しないであろう。反応器流出物ストリーム310は、2-ブテン2質量%、エチレン32質量%、イソブチレン27質量%、1-ブテン12質量%、及びプロピレン生成物19質量%を含有していた。反応器流出物ストリームは、イソブチレン及び1-ブテンの反応からの2-メチル-2-ペンテン4質量%、2-メチル-2-ブテン1.6質量%、2-ペンテン1.4質量%、2,3-ジメチル-2-ブテン0.6質量%、及び3-へキセン0.5質量%も含有していた。
【0055】
反応器流出物ストリーム310を、主としてエチレン(9.4質量%)、イソブチレン(71質量%)及び1-ブテン(8質量%)を含有する再循環ストリーム312と混合して、ストリーム314を形成した。ストリーム314を蒸留塔316に供給し、分別して、エチレンを含有するトップストリーム318を形成し、その約90%を、プロピレンの製造のため、ストリーム304においてメタテシス反応器308に再循環した。他の10%を、ストリーム320において、エチレン生成物として集めた。蒸留塔316からのボトムストリーム322は、プロピレン16質量%を含有しており、プロピレンを、蒸留塔326からのトップストリーム324において、蒸留物として集めた。プロピレンは高価なオレフィン生成物である。イソブチレン72質量%、1-ブテン15質量%、及び2-ブテン+C5+オレフィン13質量%を含有する蒸留塔326からのボトム生成物(ストリーム328)をメタテシス反応器330に供給し、ここでは、下記の反応が平衡まで進行した。
【0056】
【化7】

【0057】
反応器流出物ストリーム332は、未反応イソブチレン50質量%及び未反応1-ブテン6質量%、2-メチル-2-ペンテン18質量%、2,3-ジメチル-2-ブテン10質量%、エチレン7質量%、プロピレン4質量%、及び2-メチル-2-ブテン3質量%を含有していた。反応器流出物ストリーム332を塔334に送給し、ここで、2-メチル-2-ペンテン及び2,3-ジメチル-2-ブテンを、ボトムストリーム336において分離した。エチレン、C4成分及びC5成分をストリーム335において蒸留物として集め、ストリーム312において塔316に再循環し、ここで、上述のように、さらに分離した。ストリーム335からの少量のパージ(図3において337として示す)は、増大のため、システムから各種のパラフィンを除去するために必要である。ストリーム336における塔334からの2-メチル-2-ペンテン及び2,3-ジメチル-2-ブテンを、更なる分離のために、塔338に送給し、ここで、2-メチル-2-ペンテンをストリーム340において蒸留物として除去し、2,3-ジメチル-2-ブテンをボトムストリーム342として除去した。
【0058】
イソプレンを得るための方法の残りの部分についてはシミュレートされていないが、ストリーム340(2-メチル-2-ペンテンを高濃度で含有する)からのイソプレンの製造プロセスを説明する。2-メチル-2-ペンテンストリーム340を344において熱分解に供した。分解されたストリーム346を、348において、分離プロセスに供して、所望の純度レベルでイソプレンを単離した。代表的には、分離プロセスは、所望の純度のイソプレン生成物ストリーム354を提供するために、1以上の別々のストリーム(図3において350として示す)において、より軽質の物質、例えば、メタン及び軽質C4成分を、及びストリーム352において、より重質の副生物を除去する多段階蒸留を含む。抽出蒸留プロセスの一部として又は別個の工程として抽出も使用される。所望の純度のイソプレン生成物ストリームを達成する他のプロセスと同様に、実施例1及び2において記載した熱分解及び分離プロセスも好適である。実収率は、ストリーム340の2-メチル-2-ペンテン含量基準で50−65質量%である。
【0059】
実施例2及び3は全体の生成物組成において同様であるが、実施例3は、第1の反応器への導入前に2-ブテン及び1-ブテンからのイソブチレンの分離が行われないため、必要な蒸留塔の数が実施例2よりも1つ少ない。これらのケースのいずれにおいても、新鮮な供給物と一緒に入る少量のパラフィンの除去と共に、組成物を均衡化するために少量のパージストリームが要求される。
【実施例4】
【0060】
イソブチレン及び2-ペンテンのメタテシスによって得られた2-メチル-2-ペンテンからのイソプレン及びプロピレンの製造
実施例4のプロセスの全体が図4に示されており、一般に400で示されている。イソブチレン50質量%、1-ブテン25質量%及び2-ブテン25質量%を含有するストリーム402の新鮮なラフィネート1を、イソブチレン68質量%、1-ブテン2質量%及び2-ブテン30質量%を含有する再循環ストリーム404と混合して、供給物ストリーム406を形成した。ストリーム404の再循環供給物/ストリーム402の新鮮な供給物の比の値は2.1である。ストリーム406を蒸留塔408に供給し、ここで、イソブチレンをストリーム410において蒸留物として除去した。この塔は、オーバーヘッド生成物が比較的純粋なイソブチレンであり、直鎖状ブテンの大部分がボトム生成物として取り出される上述のケースとは異なるものである。ブテン-1及びブテン-2を含んでなるn-ブテンボトムストリーム412をメタテシス反応器414に送給し、ここで、下記のメタテシス反応が平衡まで進行しうる。
【化8】

【0061】
反応器414からの流出物ストリーム416は、未反応2-ブテン67質量%及び未反応1-ブテン2質量%、2-ペンテン18質量、プロピレン11質量%、及び3-へキセン1質量%を含有していた。
【0062】
塔408からのストリーム410のイソブチレン蒸留物を、2-ペンテン及び2-メチル-2-ブテンを含有する再循環ストリーム418と合わせて供給物ストリーム420を形成し、供給物ストリームを第2のメタテシス反応器422に供給した。供給物420は、イソブチレン同士の反応を防止するためにストリーム418の一部として蒸留シーケンス(後述する)から再循環される2,3-ジメチル-2-ブテン37質量%も含有する。メタテシス反応器422では、下記の反応が平衡まで進行する。
【化9】

【0063】
メタテシス反応器422からの流出物ストリーム424は、未反応イソブチレン42質量%、2-メチル-2-ペンテン9質量%、2-メチル-2-ブテン7質量%、2,3-ジメチル-2-ブテン37質量%、プロピレン2質量%、及びエチレン1質量%を含有していた。この反応器流出物ストリーム及び反応器流出物ストリーム424を合わせてストリーム426を形成し、ストリーム416を蒸留塔428に供給した。蒸留塔428から、蒸留物ストリーム430においてプロピレン及びエチレンを除去し、一方、ボトムストリーム432は、C4成分、C5成分及びC6オレフィンを含有していた。ボトムストリーム432を蒸留塔434に供給し、ここで、未反応C4成分を蒸留物ストリーム436として除去し、C5成分及びC6成分をボトムストリーム438において除去した。蒸留物ストリーム436を、パージストリーム440及び再循環ストリーム404に分離し、再循環ストリームをストリーム402の新鮮な供給物と合わせた。ボトムストリーム438を蒸留塔442に供給し、ここで、2-ペンテン及び2-メチル-2-ブテンを蒸留物ストリーム444において除去し、分枝状C6成分をボトムストリーム446において除去した。ボトムストリーム446を蒸留塔448に供給し、ここで、2-メチル-2-ペンテンを蒸留物ストリーム450において除去し、2,3-ジメチル-2-ブテンをボトムストリーム452において除去し、ボトムストリームをストリーム444と合わせて再循環ストリーム418を形成した。イソブチレン同士の反応を防止するために、2,3-ジメチル-2-ブテンを含有する再循環ストリーム418をストリーム410と合わせ、第2のメタテシス反応器422に供給した。
【0064】
イソプレンを得るための方法の残りの部分についてはシミュレートされていないが、ストリーム450(2-メチル-2-ペンテンを高濃度で含有する)からのイソプレンの製造について説明する。2-メチル-2-ペンテンストリーム450を454において熱分解に供した。分解されたストリーム456を、458において、分離プロセスに供して、所望の純度レベルでイソプレンを単離した。代表的には、分離プロセスは、所望の純度のイソプレン生成物ストリーム464を提供するために、1以上の別々のストリーム(図4において460として示す)において、より軽質の物質、例えば、メタン及び軽質C4成分及びストリーム462において、より重質の副生物を除去するための多段階蒸留を含む。抽出蒸留プロセスの一部として又は別個の工程として抽出も使用される。所望の純度のイソプレン生成物ストリームを達成する他のプロセスと同様に、実施例1及び2において記載した熱分解及び分離プロセスも好適である。実収率は、ストリーム450の2-メチル-2-ペンテン含量基準で50−65質量%である。
【0065】
4つのシミュレーションの結果を、全供給物のモル転化率、所望の2-メチル-2-ペンテン生成物への選択率及び収率として表1に示した。エチレン及びプロピレン副生物の選択率及び収率も示した。
【表1】

【0066】
実施例1の方法は、プロピレン生成物が望まれない場合及びC4オレフィンの所定の量からの2-メチル-2-ペンテン(イソプレン用)の量を最大とする場合に特に有用である。実施例2の方法は、Cオレフィンの量が所望の2-メチル-2-ペンテン(イソプレン用)を生成するために必要な量よりも過剰である場合に有利である。このようにして、高価なプロピレンが共-生成物として生成される。実施例3の方法は、異なった分別/反応を伴うケース2の変形である。得られる各生成物の量は、実施例2の結果に匹敵するものである。実施例3は、広い変動範囲のC4供給物組成にとって有用である。実施例4の方法は、2-メチル-2-ペンテン及びプロピレンの両方の中間体の製造が望まれる処理シーケンスを説明するものである。シーケンスは特定の製造能力計画に適合できる。
【0067】
上述の及び他の特徴及び機能、又はその一方は、望ましくは、多くの他の異なったシステム又は用途と組み合わされることが理解されるであろう。当業者であれば、特許請求の範囲に包含される現時点において予測可能な又は予測されない各種の交換、変更、変形又は改良をなすことができるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のメタテシス反応器において、第1のメタテシス触媒の存在下、イソブチレン及び1-ブテン及び2-ブテンの少なくとも1つを含んでなる混合C4メタテシス供給物ストリームを、混合物C4メタテシス供給物ストリームにおける新鮮な供給物のオレフィン含量を基準として2-メチル-2-ペンテン少なくとも30質量%、及びエチレン及びプロピレンの少なくとも1つを含んでなる中間生成物を生成するに充分な条件化で反応させ、
2-メチル-2-ペンテンを分離し、
分離した2-メチル-2-ペンテンを熱分解に供して、イソプレンを含んでなる反応生成物ストリームを生成し、及び
分別を使用してイソプレンを分離して、イソプレン生成物ストリームとする
ことを含んでなる、方法。
【請求項2】
混合C4メタテシス供給物ストリームが、イソブチレン、1-ブテン及び2-ブテンを含有する混合C4ストリームを得ること及び2-ブテンの少なくとも一部を除去すること、除去した部分を異性化反応器において異性化して、追加の1ブテンを得ること、及び追加の1ブテンをC4ストリームと合わせて、混合C4メタテシス供給物ストリームを形成することによって形成されたものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
熱分解前の2-メチル-2-ペンテンの実収率が、新鮮な供給物のC4オレフィン含量基準で30−70質量%である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
4メタテシス供給物ストリーム中の1-ブテンの少なくとも50質量%が、異性化反応器において2-ブテンを異性化することによって得られたものである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
異性化反応器から除去された2-ブテンを1-ブテンから分離して、異性化反応器に再循環する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
混合C4メタテシス供給物ストリームが、イソブチレン、1-ブテン及び2-ブテンを含有する混合C4ストリームを得ること及び混合C4ストリームを分離して、2-ブテンストリーム及び混合C4メタテシス供給物ストリームを形成することによって形成されたものである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
さらに、第2のメタテシス反応器において、2-ブテンストリーム及びエチレンを反応させて、プロピレンを生成することを含んでなる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
2-ブテンと反応させるエチレンが、中間体生成物ストリームから得られたものである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
未反応エチレンを回収し、再循環する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
混合C4メタテシス供給物ストリームが、第2のメタテシス反応器において、混合C4ストリーム及びエチレンを反応させて、エチレン、プロピレン、イソブチレン及び1-ブテンを含んでなるメタテシス生成物ストリームを得ること及びエチレン及びプロピレンの少なくとも一部を除去して、混合C4メタテシス供給物ストリームを形成することによって形成されたものである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
第1のメタテシス供給物ストリーム用のイソブチレンが、混合C4供給物ストリームを分離して、イソブチレン蒸留物及び1-ブテン及び2-ブテンを含んでなるボトムストリームを得ることによって得られたものである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
さらに、第2のメタテシス反応器においてボトムストリームを反応させて、2-ペンテン及びプロピレンを形成することを含んでなる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
さらに、2-ブテンを分離し、2-ペンテンを混合C4メタテシス供給物ストリームに再循環することを含んでなる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
第1のメタテシス反応器が固定床触媒を収容するものである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
イソブチレンの分離が、分別及び抽出の組み合わせを包含する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
中間生成物が、新鮮な供給物のオレフィン含量基準で2-メチル-2-ペンテン少なくとも40質量%を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
抽出蒸留を使用してイソプレンを分離する、請求項1記載の方法。
【請求項18】
第1のメタテシス触媒の存在下、イソブチレン及び1-ブテンを含んでなる混合C4メタテシス供給物ストリームを、2-メチル-2-ペンテン、及びエチレン及びプロピレンの少なくとも1つを含んでなる中間生成物ストリームを生成するに充分な条件化で反応させ、
中間生成物ストリームを分別して、2-メチル-2-ペンテンストリーム及びエチレンストリーム及びプロピレンストリームの少なくとも1つを形成し、
分離した2-メチル-2-ペンテンを熱分解に供して、イソプレンを含んでなる反応生成物ストリームを生成し、及び
分別を使用してイソプレンを分離して、イソプレン生成物ストリームを形成する
ことを含んでなる、方法。
【請求項19】
混合C4メタテシス供給物ストリームが、イソブチレン、1-ブテン及び2-ブテンを含有する混合C4ストリームを得ること及び2-ブテンの少なくとも一部を除去すること、除去した部分を異性化反応器において異性化して、追加の1-ブテンを得ること、及び追加の1-ブテンをC4ストリームと合わせて、混合C4メタテシス供給物ストリームを形成することによって形成されたものである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
熱分解前の2-メチル-2-ペンテンの実収率が、新鮮な供給物のC4オレフィン含量基準で30−70質量%である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
第1のメタテシス触媒の存在下、イソブチレン及び2-ペンテンを含んでなる混合C4メタテシス供給物ストリームを、プロピレン、2-メチル-2-ペンテン、エチレン、2,3-ジメチル-2-ブテン及び2-ブテンを含んでなる中間生成物ストリームを生成するに充分な条件化で反応させ、
多段階分別プロセスにおいて、中間生成物ストリームを分離して、2-メチル-2-ペンテンストリーム、エチレン及びプロピレンストリームを含有する蒸留物ストリーム、及び2,3-ジメチル-2-ブテンストリームを形成し、
分離した2-メチル-2-ペンテンストリームを熱分解に供して、イソプレンを含んでなる反応生成物ストリームを生成し、及び
分別を使用してイソプレンを分離して、イソプレン生成物ストリームとする
ことを含んでなる、方法。
【請求項22】
2-ペンテンと反応するイソブチレンが、混合C4供給物ストリームを分別して、イソブチレン蒸留物及び1-ブテン及び2-ブテンを含んでなるボトムストリームを形成することのよって得られたものである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
さらに、1-ブテン及び2-ブテンを含んでなるボトムストリームのメタテシス反応を行って、混合C4供給物ストリームを形成することを含んでなる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
抽出蒸留を使用してイソプレンを分離する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
イソブチレンを1-ブテン及び2-ブテンの少なくとも1つと反応させて、2-メチル-2-ペンテンを生成するよう設定された第1のメタテシス反応器、
2-ブテンを異性化して1-ブテンを形成するように設定された異性化反応器及び2-ブテンをエチレン及び1-ブテンの少なくとも1つと反応させて、プロピレンを生成するように設定されたメタテシス反応器の少なくとも1つを含んでなる第2の反応器、
2-メチル-2-ペンテンストリーム及び2,3-ジメチル-2-ブテンストリームを生成するように設定された第1の多段階分別システム、
2-メチル-2-ペンテンを分解して、イソプレン及び他の炭化水素を生成するように設定された熱分解ヒーター、及び
イソプレンを他の炭化水素から分離するように設定された第2の多段階分別システム
を含んでなる、システム。
【請求項26】
第2の反応器が異性化反応器であり、ここで形成された1-ブテンを第1のメタテシス反応器に供給する、請求項25記載のシステム。
【請求項27】
第2の反応器が、2-ブテンをエチレンと反応させ、プロピレンを生成するように設定されたメタテシス反応器である、請求項25記載のシステム。
【請求項28】
第2の反応器が、1-ブテンを自身及び2-ブテンと反応させて、エチレン、プロピレン及び2-ペンテンを形成し、及びここで生成されたエチレンの一部を2-ブテンと反応させてプロピレンを生成するように設定されたメタテシス反応器である、請求項25記載のシステム。
【請求項29】
多段階分別セクションが、少なくとも1つの抽出蒸留塔を含むものである、請求項25記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−501712(P2013−501712A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523600(P2012−523600)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/002115
【国際公開番号】WO2011/016842
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(391011227)ルマス テクノロジー インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】