説明

イタドリの皮剥装置

【課題】イタドリを食材として提供する際、その茎の表皮を剥ぎ取る必要があるが、これをなるだけ人手に頼ることなく機械的に処理できる装置を提供する。
【解決手段】両端が固定されたガイド用固定軸2と、それに並列し一端を固定した軸パイプ3を配し、その両軸に沿って移動する移動アタッチメント4及び移動受金具10、更に軸パイプ3に沿って移動するスライドスリーブ5、スプリング6、スプリング受7、分離羽根8、分離羽根用軸ピン9から構成したイタドリの皮剥装置を基本構成として提供する。ガイド用固定軸2に沿ってスライド移動する移動アタッチメント4及び移動受金具10は、それぞれ押用エアーシリンダー11と受用エアーシリンダー12で適切に制御された動きをするようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食の安心安全が求められる昨今において、自然の中で自生する山菜の中で、最も手軽で大量に産するイタドリ(虎杖)を食材として提供することを目的に、一番の難題である表皮の剥離作業の効率化を図り、コスト低減と作業環境の改善を実現して、我が国の食の安全と自給率向上を目指すものである。本来イタドリ(虎杖)は、一部地域において家庭料理の食材として利用されているが、一般的な食材としては普及していない。その一番の原因の一つとして、表皮の剥離作業が全て手作業で、かつその作業過程で酸による手の荒れなど作業環境にも問題があり大量生産ができない事にある。従って、これらの課題を解決し安価で安定的な供給態勢の確立をするうえで必要な、イタドリの表皮を剥離すること目的とした装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イタドリを食材として利用する場合、表皮は硬いため食には適さず除去する必要がある。従来はこれらの表皮を剥ぎ取る専用の道具や機械は皆無で、一本一本全て手作業で除去している。しかもイタドリは中空のため長時間放置すると萎れて張りを失い、表皮剥離が困難な状態になるため収穫後短時間のうちに処理する必要があり、大量に処理するとなると高速での剥ぎ取りが要求される。しかしながら、これらを解決する為の装置の提案はこれまで見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−229604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イタドリの皮剥ぎの現状は、一本のイタドリの端面の表皮の一部を爪等でめくり上げ、そのめくり上げた部分を指で強く挟み付けながら茎から引き剥がす方法で、これを円周方向に数回繰り返して一本の皮無しイタドリが出来上がる。
【0005】
この作業においては、イタドリが中空であり含有水分の減少に伴い個体が硬直性を失い、極端に剥ぎ難いと言う特徴から、大量に処理するためには迅速性が要求される。
【0006】
しかもこの作業においては、手袋等を装着すると作業性が極度に悪くなるため素手で行う事が多いが、この場合イタドリの酸により特に指先がひどく荒れる結果をまねく。
【0007】
従って、イタドリの個体を手袋をはめたままでもワンタッチでセットでき、前工程不要で全周の表皮を一度に素早く剥ぎ取る方法が望まれる。
【0008】
そこで本発明は、上記課題を解消するため、中空であるイタドリ端面全周で茎軸方向の一部をワンタッチで数等分に分割し、かつ茎軸方向に移動と共にその分割部分を反り返らせ、反り返った部分を圧着しながら更に茎軸方向に移動さす過程において、茎と全表皮を一度に順次引き剥がすことができる装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために、所定の長さの軸パイプを中心に配し、その軸パイプの外側を当該パイプに沿ってスライドするアタッチメントを設け、アタッチメント内にはイタドリ切り口をワンタッチで差し込むことで、その切り口から1から3センチ程度を
数等分に分割し、かつそのアタッチメントが軸パイプに沿って数センチ移動することで、分割されたイタドリの端1から2センチの部分を反り返らすと共に、最後にはそのままの状態で圧着する構造となっており、この状態を保持したままのアタッチメントは更に軸パイプに沿ってイタドリの長さまで移動を続け、その過程において軸パイプの先端で皮と茎を分離し、最後に表皮の無い茎だけが軸パイプの中から取り出せるよう一体化して配置し構成した、イタドリの皮剥装置を基本構成として提供する。
【0010】
具体的には、ほとんどのイタドリが内部を通過できる程度の内径で、所定の長さを持つ軸パイプの一端を固定し、他端にはこの軸パイプを中心にして、空気圧シリンダー等によりスライド移動するアタッチメントを配する構造としてある。
【0011】
このアタッチメントの内部には、先の尖った数枚の薄い板を円錐状に配し、この円錐体の先端からイタドリの切り口を差込み、イタドリ切り口から1から3センチ程度を数等分に分割し、更にこの状態を保持したままアタッチメントが軸パイプに沿って移動することにより、板で構成される円錐体が徐々に開くと同時に、イタドリ端の数等分された部分が反り返り、最後にはその部分がアタッチメント内で圧着される仕組みになっている。
【0012】
このイタドリの圧着部分を銜えたままのアタッチメントが、更に軸パイプに沿って移動してゆく事で、軸パイプの先端が刃物状になっておるため、この刃物部分で茎と表皮を分離しながら所定の長さまで移動し、最後は表皮が剥離された茎の部分だけが軸パイプから抜け出る。
【0013】
この構造からして、剥ぎ取られた表皮のほとんどは、アタッチメント外に残されるため、表皮の処分も容易となる。
【発明の効果】
【0014】
以上記載した本発明によれば、目的とするイタドリの全長にわたり表皮を剥離したい場合、イタドリの茎の根元切り口を当該装置の上部にワンタッチで差し込み、後はスイッチを押すだけで自動的に全長の全表皮を剥ぎ取り、表皮が剥ぎ取られたイタドリは下に抜け落ち排出されるため、ほとんど人手に頼ることなくイタドリの表皮剥離作業が可能である。
【0015】
従って、かなりの労力が軽減されると共に、イタドリが持つ独特の酸による指先などの肌荒れからも開放され、老若男女、素人玄人を問わず作業が簡単にできることとなり、イタドリを食材として提供する際の量産と大幅なコストダウンにつながり、イタドリが従来になく市場性を帯びて中山間地域の産業興しにも貢献すると同時に、全て自然で育ったイタドリ故、我が国の食材として最も安心安全を提供する手段ともなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるイタドリの皮剥装置に関する側面図で、稼動部の一部を断面表示し、更に動きを司る空気圧回路を併記。
【図2】図1で断面図化した部分の移動による動きの変化を、3段階に時系列的に表した側面図。
【図3】図1におけるA−A線に沿うB矢視の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を用いて、本発明にかかるイタドリの皮剥装置について具体的な実施形態を説明する。図1は、皮剥機として一体化したイタドリの皮剥装置の稼動部を一部断面図化した側面図であり、更に動きを説明するための空気圧回路も併記したもので、図2は、図1における断面図化した部分の、その動きに対する変化を3段階に時系列的に表した側面図
である。また図3は、図1におけるA−A線に沿うB矢視の平面図である。1は装置全体を支える固定フレーム、2は装置のスライド移動をガイドするガイド用固定軸、3は皮剥部分がスライド移動する軸パイプ、4はガイド用固定軸と軸パイプに沿って移動する移動アタッチメント、5は軸パイプに沿って移動するスライドスリーブ、6はスライドスリーブの外側に配置したスプリング、7はスプリング受、8はスプリング受に配置した分離羽根、9は分離羽根の揺動運動を支える分離羽根用軸ピン、10は皮剥部分を受けながらガイド用固定軸と軸パイプに沿って移動する移動受金具、11は押用エアーシリンダー、12は受用エアーシリンダー、13は空気圧源、14は空気方向切替弁、15は逆止弁付流量制御弁、16は背圧保持用逆止弁、17は逆止弁である。
【0018】
固定フレーム1にはガイド用固定軸2の上下端が取り付けられ、かつガイド用固定軸2に並列して軸パイプ3の下端が取り付けられている。
【0019】
ガイド用固定軸2の上部には押用エアーシリンダー11によりスライド移動する移動アタッチメント4が挿入され、下部には受用エアーシリンダー12により移動する移動受金具10が挿入されている。
【0020】
移動アタッチメント4と移動受金具10は、ガイド用固定軸2と並列する軸パイプ3をも同時にスライド移動する構造となっている。
【0021】
移動アタッチメント4と移動受金具10の間には、軸パイプ3に沿って移動するスライドスリーブ5とその外側にスプリング6、スプリング6の上部にスプリング受7を配している。
【0022】
スプリング受7の上面には、分離羽根用軸ピン9を軸に揺動運動する数枚の先が尖った分離羽根8が円錐状に配置してある。
【0023】
押用エアーシリンダー11には速度制御を司る逆止弁付流量制御弁15を配し、受用エアーシリンダー12にはクラッキング圧力を利用して背圧を保持するための背圧保持用逆止弁16と単なる逆止用の逆止弁17を配置してある。
【0024】
空気圧源13から空気圧流は空気方向切替弁14を通して押用エアーシリンダー11と受用エアーシリンダー12に導かれ、両シリンダーの上下運動を司る。
【0025】
従って、図1に示す移動アタッチメント4の軸パイプ3側の上部から、イタドリの元の方の切り口を下にして中空の部分を図2の1に示すようにイタドリの皮19を分離羽根8の尖端から突き刺し、イタドリの裾を広げながらイタドリの茎18から分離させる。
【0026】
次に空気方向切替弁14を操作して、移動アタッチメント4を下方に押し下げるが、このとき移動受金具10は受用エアーシリンダー12に配した背圧保持用逆止弁16のクラッキング圧力をスプリング6の反発力と比べて高くしてあるため下方には移動しない。
【0027】
従って、移動アタッチメント4はスプリング受7と共にスプリング6を縮めながらスライドスリーブ5に沿って下方に移動するが、これと同時に図3に示すようにスプリング受7に配した数枚の分離羽根8は、軸パイプ3とスライドスリーブ5の上部外側の円周部で押されるため分離羽根用軸ピン9を軸として揺動運動を開始し、図2の2から3に示すような状態へと変化して行く。
【0028】
続いて図2の3に示すように、イタドリの裾の分割されたイタドリの皮19の部分が移動アタッチメント4とスライドスリーブ5の間に完全に圧着された状態まで達すると、押
用エアーシリンダー11の押す力が高まり、受用エアーシリンダー12の背圧保持用逆止弁16のクラッキング圧力に打ち勝ち、それにつれて移動受金具10も移動アタッチメント4と共に下方に移動を始める。
【0029】
最後に図2の3に示した状態のまま、移動アタッチメント4と移動受金具10が同時に軸パイプ3に沿ってイタドリの長さ分だけ下方に移動することで、軸パイプ3の上部先端が刃物状になっているため、柔らかいイタドリの茎18の部分とイタドリの皮19の硬い部分が分離されて、イタドリの茎18は軸パイプ3の中から抜け落ち、イタドリの皮19は移動アタッチメントの上部に残される。
【0030】
なお剥ぎ取り時の移動速度については、押用エアーシリンダー11に配した逆止弁付流量制御弁15で理想的な速度を選択可能としてある。
【符号の説明】
【0031】
1…固定フレーム
2…ガイド用固定軸
3…軸パイプ
4…移動アタッチメント
5…スライドスリーブ
6…スプリング
7…スプリング受
8…分離羽根
9…分離羽根用軸ピン
10…移動受金具
11…押用エアーシリンダー
12…受用エアーシリンダー
13…空気圧源
14…空気方向切替弁
15…逆止弁付流量制御弁
16…背圧保持用逆止弁
17…逆止弁
18…イタドリの茎
19…イタドリの皮


【特許請求の範囲】
【請求項1】
全表皮を一度に茎軸方向にスライドさせながら剥離することを特徴とするイタドリの皮剥ぎ装置。
【請求項2】
茎軸端における円周上全ての表皮一部を固定しながら、一度に全表皮を剥離させる請求項1に記載のイタドリの皮剥ぎ装置。
【請求項3】
イタドリ本体をワンタッチでセットし、かつ全表皮を剥離可能とする請求項2に記載のイタドリの皮剥ぎ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−103849(P2011−103849A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264984(P2009−264984)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(300062821)パシフィックソフトウェア開発株式会社 (2)
【Fターム(参考)】