説明

イヌ腎細胞の浮遊培養物においてウイルスを複製する方法

ウイルスが感染することができ、無血清培地等の動物由来成分を含まない培地において浮遊状態で増殖するように適合させた動物細胞が記載されている。これらの細胞を用いた細胞培養物におけるウイルス複製の方法、またこの方法によって得られるウイルスまたはその抗原部分を含有するワクチンがさらに記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスが感染することができ、無血清培地等の動物由来成分を含まない培地において浮遊状態で増殖するように適合させた動物細胞に関し、またこれらの細胞を用いた細胞培養物におけるウイルス複製の方法に関する。本発明はさらに、記載されている方法によって得られるウイルスおよびこの種類のウイルスまたはその構成要素を含むワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトおよび動物の治療のためのインフルエンザワクチン等、多くのワクチンは、発育鶏卵において複製された1種または複数のウイルス株からなる。これらのウイルスは、感染した鶏卵の尿膜腔液から単離され、これらウイルスの抗原は、無傷のウイルス粒子として、界面活性剤および/または溶媒によって分解されたウイルス粒子として、化学的もしくは物理的に不活化されたウイルスとして、またはサブユニットワクチンにおける単離され同定されたウイルスタンパク質としてワクチンに用いられる。ウイルスは多くの場合、当業者に知られた方法によって不活化される。実験的ワクチンにおいて検査がなされた弱毒化生ウイルスの複製もまた、発育鶏卵で行われる。
【0003】
ワクチン生産のための発育鶏卵の利用は、時間、労働および経費集約的である。獣医によって監視された健康的なニワトリの群れから得た卵は、感染前に通例12日間インキュベートされなければならない。感染前に卵は生きている胚に関して選別されなければならないが、これはこのような卵だけがウイルス複製に適しているからである。感染後、卵は通例2から3日間再度インキュベートされる。その時点ではまだ生きていた胚は、低温環境に付されることによって死滅し、続いてアスピレーションによってそれぞれの卵から尿膜腔液が得られる。煩雑な精製方法によって望ましくないワクチン副作用をもたらす鶏卵由来の物質がウイルスから分離され、ウイルスが濃縮される。卵は無菌(病原体フリー)ではないため、存在する可能性のある発熱物質およびあらゆる病原体を除去および/または不活化することが追加的に必要である。
【0004】
他のワクチンのウイルス、例えば狂犬病ウイルス、おたふく風邪、はしか、風疹、ポリオウイルス、Fruhsommer−Meningo Ecephalitis(FSME)ウイルス等のダニ媒介性脳炎ウイルス等は、細胞培養物において複製することができる。検査された細胞バンクに由来する細胞培養物は病原体を含まず、また鶏卵とは対照的に(理論的には)ほぼ無制限の量を利用できる確定されたウイルス複製システムであるため、細胞培養物は、インフルエンザウイルスの場合であっても、ある特定の環境下における経済的なウイルス複製を可能にする。さらに、卵におけるインフルエンザウイルスの単離および複製は、その大部分が臨床分離株とは異なる特定の表現型の選別をもたらす。継代依存的な選別が起こらない細胞培養物におけるウイルスの単離および複製は、これと対照的である(Oxford,J.S.ら、J.Gen.Virology、72(1991)、185−189;Robertson,J.S.ら、J.Gen.Virology、74(1993)2047−2051)。したがって、有効なワクチンのために、細胞培養物におけるウイルス複製が好ましい。
【0005】
インフルエンザウイルスは細胞培養物において複製できることが知られている。インフルエンザウイルスのインビトロ複製に適した細胞として、ニワトリ胚細胞やハムスター細胞(BHK21−FおよびHKCC)の他に、MDBKおよびMDCK細胞が報告されている(Kilbourne,E.D.、Influenza、89−110頁、Plenum Medical Book Company−ニューヨークおよびロンドン、1987年)。プロテアーゼは赤血球凝集素の前駆タンパク質[HA]を細胞外で開裂させて活性型赤血球凝集素[HAおよびHA]にするため、感染成功のための必要条件は、感染培地にプロテアーゼ、好ましくはトリプシンまたは同様のセリンプロテアーゼを添加することである。開裂した赤血球凝集素だけがインフルエンザウイルスの細胞上への吸着をもたらし、続いてウイルスを細胞内に同化させ(Tobita,K.ら、Med.Microbiol.Immunol.、162(1975)9−14;Lazarowitz,S.G.とChoppin,P.W.、Virology、68(1975)440−454;Klenk,H.−D.ら、Virology、68(1975)426−439)、その結果細胞培養物においてさらにウイルス複製サイクルをもたらす。
【0006】
その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国再発行特許第33,164号(米国特許第4,500,513号より)は、付着増殖型CLDK細胞(すなわち「aCLDK細胞」)の細胞培養物におけるインフルエンザウイルスの複製を説明している。これらの細胞の付着増殖における制約的な要件は増殖可能な細胞の収量に制限を課し、その結果ワクチン製剤のために回収可能なウイルスの収量にも制限を課す。
【0007】
さらに、付着(すなわち基質依存的)細胞におけるウイルス増殖は、細胞が浮遊状態で増殖できる場合には必要のないステップを要する。細胞増殖の後、栄養培地が除去されて新しい栄養培地が細胞に添加され、それと同時またはその直後に細胞のインフルエンザウイルス感染が行われる。感染から所定の時間を経た後、最適なウイルス複製を得るためにプロテアーゼ(例えばトリプシン)が添加される。ウイルスは回収、精製、加工されて不活化または弱毒化ワクチンが得られる。
【0008】
しかし、ワクチン生産のための必要条件としての経済的なインフルエンザウイルスの複製は、米国再発行特許第33,164号明細書に記載されている手順を用いて達成することはできない。その理由として、培地の交換とそれに続く感染とその後行われるトリプシンの添加は、各細胞培養容器の開放を何回も必要とし、したがって非常に労働集約的なためである。さらに、望ましくない微生物やウイルスによる細胞培養物のコンタミネーションの危険は、培養容器の操作毎に増加する。このシステムにおけるさらに別の不都合は、血清(ウシ胎仔血清、ウシ胎児血清(fbs)、ウシ新生児血清またはウシ血清を含むが、これらに限定されない)が細胞増殖に必要なことである。血清は、ウイルス収量の障害となるトリプシンインヒビターを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国再発行特許第33,164号明細書
【特許文献2】米国特許第4,500,513号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Oxford,J.S.ら、J.Gen.Virology、72(1991)185−189
【非特許文献2】Robertson,J.S.ら、J.Gen.Virology、74(1993)2047−2051
【非特許文献3】Kilbourne,E.D.、Influenza、89−110頁、Plenum Medical Book Company−ニューヨークおよびロンドン、1987年
【非特許文献4】Tobita,K.ら、Med.Microbiol.Immunol.、162(1975)9−14
【非特許文献5】Lazarowitz,S.G.とChoppin,P.W.、Virology、68(1975)440−454
【非特許文献6】Klenk,H.−D.ら、Virology、68(1975)426−439
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
より費用対効果の高い代替法は、細胞が培養容器またはマイクロキャリアの表面上に付着して増殖する必要のないシステムにおける細胞増殖である。その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,656,720号は、浮遊状態で増殖するMDCK細胞をインフルエンザウイルスに感染させる、このような一方法の例を提供する。しかし、効率を上げて総費用を下げるためのウイルス増殖の代替手段を提供する追加的な細胞系と手順が必要とされる。
【0012】
したがって、動物由来成分を含まない培地(例えば、無血清培地または動物性タンパク質を含まない培地)で培養され、動物の副産物(例えばウシ血清)の使用に伴うリスクを低減し、このような動物副産物の経費を削減することができる、追加的な細胞系の必要がある。さらに、基質依存的な増殖の必需品(例えば、T−フラスコ、ローラーボトルまたはマイクロキャリア)を省き、その代わりに浮遊培養を行う一般的な必要もある。浮遊培養は、コスト節減、より高い細胞密度、より多いウイルス収量等、基質依存的な増殖に優る多くの利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、a)sCLDK細胞の懸濁液にウイルスを接種し、これによりsCLDK細胞を感染させるステップ、b)感染sCLDK細胞においてウイルスを繁殖させるステップおよびc)sCLDK細胞の浮遊培養物からウイルスを回収するステップを含む、sCLDK細胞の培養物においてウイルスを複製する方法を対象とする。ウイルスは、ヒトインフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、馬インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、犬インフルエンザウイルスまたは猫インフルエンザウイルス等の、インフルエンザウイルスであってよい。限定されないが、インフルエンザウイルスは、H1型インフルエンザウイルス、H2型インフルエンザウイルス、H3型インフルエンザウイルス、H5型インフルエンザウイルスまたはH7型インフルエンザウイルスであってよい。限定されないが、インフルエンザウイルスは、H5N1型インフルエンザウイルス、H3N8型インフルエンザウイルス、H1N1型インフルエンザウイルス、H3N2型インフルエンザウイルス、H2N3型インフルエンザウイルス、H7N8型インフルエンザウイルスまたはH3N1型インフルエンザウイルスであってよい。本発明の一実施形態において、接種直前に、接種と同時に、または接種直後に、赤血球凝集素の前駆タンパク質を開裂させるためのプロテアーゼがsCLDK細胞の懸濁液に添加される。プロテアーゼはトリプシンであってよい。
【0014】
本発明はまた、a)血清代替物を含む培地に基質依存的なCLDK細胞のサンプルを接種するステップ、b)培地において浮遊状態で細胞を増殖させるステップ、c)CLDK細胞を新しいバッチの培地において浮遊状態で連続継代するステップおよびd)培地中の血清代替物の量をゼロまで減少させることによって、浮遊状態のCLDK細胞から血清代替物を断つステップを含む、基質依存的なCLDK細胞を浮遊状態で増殖するように適合させる方法も対象とする。この方法はまた、「適合方法」とも言う。培地は無血清であってよい。培地はまた、動物由来成分を全く含まなくてもよい。
【0015】
適合方法の一実施形態において、細胞は、ステップ(c)において、7日間の増殖係数が少なくとも約3から20、好ましくは約5より大きく、さらに好ましくは約7より大きく、最も好ましくは約10より大きくなるまで連続継代される。ステップ(c)の3から15連続継代の間の平均増殖係数がこのような値を達成した後、続く3から6継代にわたって浮遊状態のCLDK細胞は血清代替物を断つことができる。非限定的な例として、浮遊状態で少なくとも5−10継代の平均増殖係数が約5より大きくなるまでCLDK細胞は浮遊状態で連続継代され、この時点で細胞は続く6継代以内にわたって血清代替物を断たれる。好ましくは、浮遊状態で少なくとも10継代の平均増殖係数が約8より大きくなるまでCLDK細胞は浮遊状態で連続継代され、この時点で細胞は続く6継代以内にわたって血清代替物を断たれる。あるいは、浮遊状態で少なくとも5継代の平均増殖係数が約12より大きくなるまでCLDK細胞は浮遊状態で連続継代され、この時点で細胞は続く6継代以内にわたって血清代替物を断たれる。
【0016】
CLDK細胞は、適合方法において血清代替物を首尾よく断つことができ、ただし、最初の血清断ち継代の直前の継代における7日間の増殖係数は少なくとも5である。好ましくは、血清断ち継代の直前の最後の継代における7日間の増殖係数は、少なくとも7、より好ましくは少なくとも10、さらにより好ましくは少なくとも約13である。
【0017】
本発明はまた、a)培地にsCLDK細胞を接種するステップ、b)sCLDK細胞を浮遊状態で約4から10日の期間増殖させるステップ、c)(b)の培養物のサンプルを細胞を含まない新しい培地に移すステップおよびd)連続増殖の期間において(b)と(c)を繰り返すステップを含む、sCLDK細胞を浮遊状態で連続的に増殖させる方法も対象とする。培地は無血清であってよい。培地は動物性タンパク質を含まなくてもよい。サンプルは、前もってプロテアーゼを全く添加することなく細胞を含まない新しい培地に移すことができる。(c)に従ってサンプルを移した後の細胞密度は、少なくとも3×10細胞/mLであってよく、好ましくは少なくとも5×10細胞/mLであってもよい。sCLDK細胞は、4−10日の期間にわたる増殖係数が3より大きくてよく、4−10日の期間にわたって好ましくは増殖係数約5より大きくてよく、最も好ましくは約10より大きくてよい。
【0018】
本発明はまた、適合方法によって得られる、浮遊状態で増殖できるsCLDK細胞も対象とする。上述の通り、適合方法は、a)血清代替物を含む培地において基質依存的なCLDK細胞のサンプルを接種するステップ、b)培地において浮遊状態で細胞を増殖させるステップ、c)CLDK細胞を新しいバッチの培地において浮遊状態で連続継代するステップおよびd)培地中の血清代替物の量をゼロまで減少させることによって、浮遊状態のCLDK細胞から血清代替物を断つステップを含む、基質依存的なCLDK細胞を浮遊状態で増殖するように適合させる方法である。培地は無血清であってよい。血清代替物は動物性タンパク質を含まなくてもよい。本発明はまた、ウイルス複製のための、本方法によって得られるこのようなsCLDK細胞の使用も対象とする。本発明はまた、ワクチン製造における、本方法によって得られるこのようなsCLDK細胞において複製されたこのようなウイルスの使用も対象とする。
【0019】
本発明はまた、細胞培養培地およびsCLDK細胞を含む組成物も対象とする。
【0020】
本発明はまた、a)培地にsCLDK細胞を接種するステップ、b)培地において浮遊状態でsCLDK細胞を増殖させ、これによってsCLDK細胞の懸濁液を作製するステップ、c)sCLDK細胞の懸濁液をウイルスと共にインキュベートし、これによって感染sCLDK細胞の懸濁液を作製するステップ、d)ウイルスを感染sCLDK細胞内で繁殖させるステップ、e)ウイルスを回収または単離するステップおよびf)回収または単離されたウイルスを1種または複数の薬学的に許容される担体と混合し、これによってワクチンを作製するステップを含む、ワクチンの製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、細胞培養物における簡便で経済的なウイルス複製を可能にする、細胞および方法の提供に関する。したがって、本発明は、ウイルスが感染することができ、無血清または動物性タンパク質を含まない培地において浮遊状態で増殖するように適合させた動物細胞に関する。この種類の細胞を用いることによって、簡便で経済的な仕方で細胞培養物におけるウイルス複製が可能となることが判明した。細胞が浮遊状態で増殖するように適合されているため、製造バッチはより多数の細胞を、続いてより高力価のウイルスを生産する。ウイルスの収量が高くなれば、全製造コストが抑えられる。さらなる利点として、培地の消費が顕著に減少し、これによって全培地コストを抑えられることが挙げられる。同様に重要なことに、本発明の利点として、ウシ血清またはウシ胎児血清等の動物由来成分のいずれも含まない培地における細胞の増殖(およびそれに続くウイルス複製)があり、これによりTSE(感染性海綿状脳症)を限定することなく含む様々な病原体リスクの削減が挙げられる。
【0022】
さらに、本発明に係る細胞の使用によって、一方では血清除去のための感染前の培地交換を省略することができ、他方ではプロテアーゼの添加(必要であれば)を感染と同時に行うことができる。総合的には、培養容器をウイルス感染のために1回だけ開放することが必要であり、それによって細胞培養物のコンタミネーションの危険が大幅に低減される。培地交換、感染およびそれに続くプロテアーゼ添加に関連する労力の使用は、さらに減少する。
【0023】
本発明において使用されている細胞は、基質依存的カッターラボラトリー・イヌ腎(Cutter Laboratory Dog Kidney;CLDK)細胞に由来する。本明細書において、「基質依存的CLDK細胞」および類似の用語は、「付着型CLDK細胞」、「aCLDK細胞」または類似の用語と同義的に用いられている。aCLDK細胞は、浮遊型CLDK細胞とは異なる。前者が付着して増殖するのに対し、後者は使い捨てまたは非使い捨てバイオリアクタまたはバイオコンテナを限定することなく含む、シェーカーフラスコまたは他の大規模製造容器等において浮遊状態で増殖する。aCLDK細胞は、ローラーボトルの表面または培地に添加されたマイクロキャリアもしくはビーズ等、その上で増殖するための表面を必要とする。aCLDK細胞は浮遊状態では増殖しない。振動台上に置かれたシェーカーフラスコ内の培地に接種された場合、aCLDK細胞はある程度の生存率を維持することはできるが、増殖はしない。むしろaCLDK細胞は細胞塊を形成する傾向がある。
【0024】
浮遊型CLDK細胞はまた、「sCLDK」細胞または「sCLDK−SF」細胞とも言い、これら細胞が無血清培地で増殖することを示している。sCLDK細胞は、本明細書に記載されているように、無血清培地において浮遊状態で継代することによってaCLDK細胞から得られる。これらの特性およびウイルス複製のための宿主細胞として機能するその能力のために、sCLDK細胞は、簡便で費用対効果の高い方法の細胞培養物における経済的なウイルス複製に適している。aCLDK細胞とは対照的に、sCLDK細胞は振動台上に置かれたシェーカーフラスコまたは他の浮遊増殖手段で増殖する。sCLDK細胞はこのような浮遊増殖条件で生存率を維持するだけではなく、aCLDK細胞のように凝集または細胞塊を形成することなく細胞数を増やすことができる。
【0025】
さらに後述する通り、sCLDK細胞はaCLDK細胞に優る多くの利点を有する。第一に、aCLDK細胞とは異なり、sCLDK細胞は浮遊状態で増殖する。aCLDK細胞とは異なり、sCLDK細胞は、浮遊状態での増殖のために新しい培地に4−10日の期間で移された場合少なくとも3の増殖係数(3)を有する。本発明の一実施形態において、本明細書に記載されているsCLDK細胞は、4−10日の期間で3より大きく、好ましくは5より大きい係数で浮遊状態で増殖する。より好ましくは、本明細書に記載されているsCLDK細胞は、4−10日の期間で約6より大きく、最も好ましくは約10より大きい係数で浮遊状態で増殖する。
【0026】
aCLDK細胞とは異なり、sCLDK細胞はまた、浮遊状態で連続的に増殖することができる。sCLDK細胞は、4−10日毎に新しい培地に移された場合、3より大きく、好ましくは5より大きい係数で浮遊状態で連続的に増殖することができる。より好ましくは、本明細書に記載されているsCLDK細胞は、4−10日の期間毎に新しい培地に移された場合、約6より大きく、最も好ましくは約10より大きい係数で浮遊状態で連続的に増殖することができる。
【0027】
sCLDK細胞がaCLDK細胞に優る別の利点は、前者は血清または他の動物由来の培地サプリメントなしで増殖できることである。aCLDK細胞とは異なり、血清または他の動物由来の培地サプリメントを含まない新しい培地に4−10日の期間で移された場合、sCLDK細胞は平均して少なくとも3倍になる。本発明の一実施形態において、本明細書に記載されているsCLDK細胞は、血清または他の動物由来の培地サプリメントを含まない培地で、4−10日の期間で3より大きく、好ましくは5より大きい係数で増殖する。より好ましくは、本明細書に記載されているsCLDK細胞は、血清または他の動物由来の培地サプリメントを含まない新しい培地に移された場合、4−10日の期間で約6より大きく、最も好ましくは約10より大きい係数で増殖する。
【0028】
aCLDK細胞とは異なり、sCLDK細胞はまた、血清または他の動物由来成分を含まない培地で連続的に増殖することもできる。sCLDK細胞は、4−10日毎に新しい培地に移された場合、3より大きく、好ましくは5より大きい係数で、血清または他の動物由来成分を含まない培地で連続的に増殖することができる。より好ましくは、本明細書に記載されているsCLDK細胞は、4−10日毎に新しい培地に移された場合、約6より大きく、最も好ましくは約10より大きい係数で、血清または他の動物由来成分を含まない培地で連続的に増殖することができる。
【0029】
したがって、sCLDK細胞の利点は、血清または他の動物由来成分を含まない培地において浮遊状態で連続的に増殖するその能力である。sCLDK細胞は、4−10日毎に新しい培地に移された場合、3より大きく、好ましくは5より大きい係数で、血清または他の動物由来成分を含まない培地において浮遊状態で連続的に増殖することができる。より好ましくは、本明細書に記載されているsCLDK細胞は、4−10日の期間毎に新しい培地に移した場合、約6より大きく、最も好ましくは約10より大きい係数で、血清または他の動物由来成分を含まない培地において浮遊状態で連続的に増殖することができる。
【0030】
本明細書において、「増殖係数」または類似の用語は、それによって最初の細胞集団がある期間において増殖した乗数値を意味する。したがって、2または3の増殖係数は、細胞が新しい培地に移された(すなわち、接種または植え継がれた)出発時点の細胞密度と比べて細胞密度がそれぞれ2倍または3倍になったことを示す。10または20の増殖係数は、細胞密度が、細胞が新しい培地に移された出発時点の細胞密度に対してそれぞれ係数10または20を掛けたことを示す。1以下の増殖係数は、細胞密度が増加しなかったこと、または細胞集団が減少したことを示す。
【0031】
したがって、本発明はまた、本発明に係る細胞が使用されている細胞培養物におけるウイルス複製の方法にも関する。特に、次のステップ:i)上述の本発明に係る細胞の無血清培地における浮遊状態の増殖、ii)細胞のウイルスによる感染、iii)感染細胞の培養およびiv)複製されたウイルスの単離、を含む方法に関する。インフルエンザウイルスの場合のように力価が上昇し得る場合、感染の直前に、同時に、または直後にプロテアーゼが添加されてもよい。本発明の非限定的な一実施形態において、sCLDK細胞は無血清培地で増殖してインフルエンザウイルスを複製する。当業者であれば、本明細書に記載されているsCLDK細胞内で複製できる他のウイルスを知っており、これはインフルエンザウイルスの複製に限定されない。
【0032】
本発明はまた、a)sCLDK細胞の懸濁液にウイルスを接種し、これによってsCLDK細胞を感染させるステップ、b)感染sCLDK細胞内でウイルスを繁殖させるステップおよびc)sCLDK細胞の浮遊培養物からウイルスを回収するステップを含む、sCLDK細胞培養物においてウイルスを複製する方法も対象とする。ウイルスは、遠心分離、濾過または他の機械的もしくは生化学的な感染細胞懸濁液の分離手段によって、回収することができる。したがって、回収されたウイルスは、sCLDK細胞またはsCLDK細胞破片を含有したウイルスを含むことができる。回収されたウイルスはまた、sCLDK細胞またはsCLDK細胞破片を含有しないウイルスを含むこともできる。
【0033】
本発明に係る細胞は、好ましくは当業者に知られている動物由来成分を含まない培地(例えば、無血清培地、動物性タンパク質を含まない培地)で培養することができる。このような培地の非限定的な例として、イスコフ(Iscove)培地、ultra CHO培地(BioWhittaker)、EX−CELL(商標)MDCK無血清培地(JRH Biosciences、レネックサ、カンザス州)が挙げられる。本発明に従って用いることができる他の無血清培地は、EX−CELL(商標)520培地(JRH Biosciences、レネックサ、カンザス州)およびHyQ PF CHO培地(Hyclone、ローガン、ユタ州)を含む。本発明に従って用いることができる他の動物性タンパク質を含まない培地は、EX−CELL(商標)302培地(JRH Biosciences、レネックサ、カンザス州)、HyQ PF CHO MPS培地(Hyclone、ローガン、ユタ州)およびRencyte BHK培地(Medicult、ジリン、デンマーク)を含む。本発明に従って用いることができる他の大豆または酵母ベースの動物性タンパク質を含まない培地は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている次の全文献、米国特許第7,160,699号または米国特許出願公開第2003/0203448号、第2004/0077086号、第2004/0087020号、第2004/0171152号、第2005/0089968号、第2006/0094104号、第2006/0286668号、に記載されているものを含む。本発明に係る方法の過程で用いることができる適切な培養容器は、当業者に知られたあらゆる容器である。
【0034】
血清代替物が動物由来成分を含まない培地に添加されてもよい。このような代替物は、それ自身動物由来成分を全く含まないが、細胞で、好ましくは動物由来成分を含まない培地で培養した細胞で発現した組換え動物性タンパク質を含むことができる。血清代替物は、組換え成長因子、トランスフェリン代替物もしくは組換えトランスフェリン代替物、合成ホルモンおよび/または他の組換えタンパク質を含むことができる。組換えタンパク質成分は病原体を含まないまたはウイルスを含まない細胞において制御された環境で製造されるため、血清代替物は外来性ウイルスを全く含まない。したがって、血清代替物はウイルスまたはTSE(感染性海綿状脳症)リスクがない。血清代替物は、好ましくは付着型CLDK細胞を浮遊状態で増殖するように適合させる(すなわち、aCLDK細胞をsCLDK細胞に転換させる)ために用いられる。しかしこのような代替物はまた、本発明に係るウイルス増殖のためのsCLDK細胞の浮遊培養のためにも用いることができる。血清代替物の非限定的な例として、LIPUMIN(商標)血清代替物(PAA Laboratories GmbH、パシング、オーストリア)が挙げられる。
【0035】
インフルエンザウイルスの場合の感染前細胞増殖の温度は、好ましくは37℃である。細胞増殖のための培養は、例えば攪拌容器発酵槽等の灌流システムにおいて、例えば遠心分離、濾過、スピンフィルター等の当業者に知られた細胞保持システムを用いて、バッチ操作または当業者によく知られた他の技法を用いて行うことができる。
【0036】
この場合、細胞は好ましくは2から18日間、特に好ましくは3から11日間増殖される。培地交換は、この過程で1日当たり0から約1から3容量に増加させて行われる。細胞は、この仕方で非常に高い細胞密度、好ましくは約2×10細胞/mlになるまで増殖させる。灌流システムの培養における灌流量は、細胞計数および培地中のグルコース、グルタミンまたは乳酸塩の含有量の両方によって、ならびに当業者に知られた他のパラメーターによって調節することができる。インフルエンザウイルス感染の場合、発酵槽容量の約85%から99%、好ましくは93から97%が細胞と共にさらに別の発酵槽に移される。最初の発酵槽に残った細胞は次に培地と混合され、灌流システムでさらに複製することができる。この仕方で、ウイルス複製のための連続的な細胞培養が可能となる。
【0037】
本発明に係る方法の好ましい一実施形態において、用いられている培養培地のpHは培養中に調節されてもよく、それはpH6.6からpH7.8の範囲、好ましくはpH6.8からpH7.3の範囲である。
【0038】
さらにpO値は、有利には方法のこのステップで調節され、好ましくは25%−95%、特に35%−60%(空気飽和に基づく)である。本発明に従って、浮遊培養されている細胞の感染は、好ましくはバッチ法における細胞が灌流システムにおいて約8から25×10細胞/mlまたは約5から20×10細胞/mlの細胞密度を達成したときに行われる。
【0039】
さらに好ましい一実施形態において、インフルエンザウイルスの場合、細胞の感染は約0.0001から10、好ましくは0.002から0.5のm.o.i.(感染効率)で行われる。赤血球凝集素の前駆タンパク質[HA]の開裂とそれに続く細胞上のウイルス吸着をもたらすプロテアーゼの添加は、細胞にインフルエンザウイルスを感染させる直前に、同時にまたは直後に、本発明に従って行うことができる。添加が感染と同時に行われる場合、プロテアーゼは、感染される細胞培養物に直接添加されてもよいし、例えば濃縮物としてウイルス接種と共に添加されてもよい。プロテアーゼは、好ましくはセリンプロテアーゼ、特に好ましくはトリプシンである。
【0040】
好ましい一実施形態において、トリプシンは感染される細胞培養物に、培養培地において1から200μg/ml、好ましくは5から50μg/ml、特に好ましくは5−30μg/mlの最終濃度まで添加される。バッチ法の場合またはトリプシン溶液の連続的添加もしくは断続的添加による灌流システムの場合、本発明に係る感染細胞のさらなる培養の間にトリプシンを新たに添加することによってトリプシン再活性化を行うことができる。後者の場合、トリプシン濃度は好ましくは1μg/mlから80μg/mlの範囲である。
【0041】
感染の後、感染細胞培養物は、特に最大細胞変性効果または最大量のウイルス抗原が検出できるまでさらに培養されてウイルスを複製する。好ましくは、細胞の培養は、2から10日間、特に3から7日間行われる。培養は次に好ましくは灌流システムまたはバッチ法において行うことができる。
【0042】
さらに好ましい一実施形態において、細胞は、5−15%CO、最も好ましくは約10%COにセットされたインキュベーター内で30℃から37℃の温度で培養することができる。
【0043】
インフルエンザウイルスの場合のように、感染後の細胞培養は次に好ましくは調節されたpHおよびpOで行われる。この場合のpHは、好ましくは6.6から7.8、特に好ましくは6.8から7.2の範囲であり、pOは25%から150%、好ましくは30%から75%、特に好ましくは35%から60%(空気飽和に基づく)の範囲である。
【0044】
方法における細胞培養またはウイルス複製の間、抗原収量を最適化するために、細胞培養培地を新たに調製した培地、培地濃縮物またはアミノ酸、ビタミン、脂質画分、リン酸塩等の同定された構成要素に置換することも可能である。
【0045】
インフルエンザウイルスの場合のように、細胞は感染後、培地または培地濃縮物を数日間にわたってさらに添加することによって徐々に希釈されてもよいし、約1−3から0発酵槽容量/日に減らしながら培地または培地濃縮物でさらに灌流する間インキュベートされてもよい。次にこの場合、灌流量は細胞計数、グルコース、グルタミン、乳酸塩もしくは乳酸脱水素酵素の培地中の含有量または当業者に知られた他のパラメーターによって調節することができる。
【0046】
灌流システムと流加培養法の組み合わせがさらに可能である。この方法の好ましい一実施形態において、複製したウイルス(例えばインフルエンザウイルス)の回収と単離は、感染後2から10日以内、好ましくは3から7日以内に行われる。例えばこの回収を行うために、例えば遠心分離、分離器またはフィルター等、当業者に知られた方法によって、細胞または細胞残渣が培養培地から分離される。このようなステップの後に、培養培地中に存在しているウイルスの濃縮が、例えば勾配遠心分離、濾過、沈殿等、当業者に知られた方法によって行われる。
【0047】
本発明はさらに、本発明に係る方法によって得られるインフルエンザウイルスに関する。インフルエンザウイルスは公知の方法によって回収、製剤され、ヒトまたは動物に投与するためのワクチンを得ることができる。得られたインフルエンザウイルスを含むワクチンの免疫原性または有効性は、当業者に知られた方法、例えば負荷試験において付与された保護によってまたは中和抗体の抗体価として決定することができる。生産されたウイルスすなわち抗原の量の決定は、例えば当業者に知られた方法に従った赤血球凝集素量の決定によって行うことができる。例えば、開裂した赤血球凝集素は様々な種の赤血球、例えばニワトリ赤血球に結合することが知られている。これにより生産されたウイルスまたは形成された抗原の簡便で迅速な定量化が可能となる。
【0048】
したがって、本発明はまた、本発明に係る方法から得られるウイルスを含むワクチンに関する。この種類のワクチンは、場合によって通例ワクチン用である添加物、特に免疫応答を高める物質、すなわち例えば様々な金属の水酸化物、カルボマー、細菌細胞壁の構成要素、オイルまたはサポニン等のアジュバント、および通例の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。
【0049】
ウイルスは、無傷のウイルス粒子として、特に弱毒化生ウイルスとしてワクチン中に存在することができる。このため、ウイルス濃縮物は所望の力価に調整されて、凍結乾燥されるかまたは液体の形状で安定化させる。
【0050】
さらに別の一実施形態において、本発明に係るワクチンは、分解された、不活化されたまたは無傷だが不活化されたウイルスを含むことができる。このため、化学的および/または物理的方法(例えば、界面活性剤またはホルムアルデヒド)によってウイルスの感染力が失われる。続いてワクチンは所望の抗原量に調整され、可能であればアジュバントとの混合の後、または可能であればワクチン製剤の後、例えばリポソーム、ミクロスフィアまたは他の「徐放」製剤において調合される。
【0051】
さらに別の好ましい一実施形態において、本発明に係るワクチンは、最終的にサブユニットワクチンとして存在することができる。すなわち、ワクチンは、同定され、単離されたウイルス構成要素、好ましくはインフルエンザまたはその他のウイルスの単離タンパク質を含むことができる。これらの構成要素を、当業者に知られた方法によってウイルスから単離することができる。
【0052】
さらに、本発明に係る方法によって得られるインフルエンザまたはその他のウイルスを、診断目的に用いることができる。したがって、本発明はまた、適切であれば通例本分野の添加物および適切な検出剤と組み合わせた、本発明に係るインフルエンザもしくはその他のウイルスまたはこのようなウイルスの構成要素を含む診断用組成物に関する。
【0053】
次の実施例は単に例示的なものであり、決して本開示の残り部分を限定するものではない。
【実施例】
【0054】
実施例1A:血清または血清代替物を含まない浮遊増殖へのCLDK細胞の適合
カッターラボラトリー・イヌ腎(Cutter Laboratory Dog Kidney;CLDK)細胞は足場依存性であり、したがって増殖するための基質またはその表面を必要とする。適切な基質は、T−フラスコもしくはローラーボトル等の容器の内部表面、または培養容器に添加することができるビーズもしくはマイクロキャリアの表面上を含む。通常これらの細胞は基質上に単層を形成し、静置培養およびローラーボトルで増殖できる。これらの細胞は増殖に血清を必要とし、また形態学的には上皮細胞的である。
【0055】
2本のアンプルのカッターラボラトリーズaCLDK細胞を解凍し、続いて各チューブに1mLの解凍された材料が入るよう、2本の4mLクライオチューブに移した。1mLのサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地を各クライオチューブに添加した。本明細書における「サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地」は、L−グルタミン(200mM溶液20mL/培地1L)およびゲンタマイシン(培地1リットル当たり0.5mLの100g/mL溶液)を補充したEX−CELL(商標)MDCK無血清培地(SAFC Biosciences、レネックサ、カンザス州)の混合物を言う。2本のクライオチューブを3−5分間静置した後、全材料を2本の15mL遠心分離チューブに移した。約8mLのサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地を各15ml遠心分離チューブに加えた。次にこれら2本のチューブを3−5分間静置した後、10分間、約1,000rpm(500×g)で遠心分離した。培地上清を捨て、ペレット化した細胞を全容量20mLのサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地に再懸濁した。再懸濁された細胞を0.2μベントキャップを取り付けた125mLシェーカーフラスコ(Corning Inc.、コーニング、ニューヨーク州)に移し、そこへ追加のサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地を30mL加えて、全容量50mLを得た。これらの細胞は、下の表1の継代数1に対応し、これを10%CO供給下37℃ウォータージャケットインキュベーター内のロータリーシェーカープレート上に1週間置いた。
【0056】
浮遊状態におけるいくらかの増殖を求めるため、細胞を1週間基準で2回以上(表1の継代2および3)、血清または血清代替物なしでシェーカーフラスコに植え継いだ。しかし表1に示す通り、これらの条件のaCLDK細胞で記録された最も大きい増殖係数は、7日の期間当たり3未満であった。続く13継代は、培養培地に1%Pluronic(登録商標)F68界面活性剤(Invitrogen Corp.、カールズバッド、カリフォルニア州)も含んでいた。これらの期間、細胞は高い生存率を維持していたが、表1に示す通り増殖係数は7日の期間当たり(平均)2未満であり続けた。次の14継代は、培地に1%Lipumin(商標)ADCF(動物由来成分を含まない)血清代替物(PAA Laboratories GmbH、パシング、オーストリア)も含んでいた。これらの継代の間、平均増殖係数は(表1に示す通り)、12より大きく、細胞の生存率は>95%であった。次の継代では、細胞を0.5%Pluronic(登録商標)F68界面活性剤と0.5%Lipumin(商標)ADCF血清代替物で血清断ちさせた。その次の継代では、細胞を0.25%Pluronic(登録商標)F68界面活性剤と0.25%Lipumin(商標)ADCF血清代替物で血清断ちさせた。続く6継代は、細胞からPluronic(登録商標)F68界面活性剤とLipumin(商標)ADCF血清代替物を完全に断った。これら最後の6継代の間、細胞は平均17より大きい増殖係数を有し(表1に示す通り)、高い生存率を保持し続けた。
【0057】
表1は、本実施例に記載されている継代の履歴を示す。示されているように、サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地は、表示量のPluronic(登録商標)F68界面活性剤またはLipumin(商標)ADCF血清代替物と共に全容量50mLを継代毎に用いた。各継代は、1週間、10%CO供給下37℃のウォータージャケットインキュベーター内のロータリーシェーカープレートに置かれた、125mLシェーカーフラスコ中で行った。「細胞植え継ぎ密度」は、継代当初(すなわち、週の最初)の培地50mLにおける細胞濃度を言い、細胞/mLで提示される。1週間後、材料のサンプルから細胞を計数し、「細胞計数/mL」を決定した。「7日間の増殖係数」は、「細胞計数/mL」値を「細胞植え継ぎ密度」値で割ることによって決定した。
【0058】
【表1】


【0059】
38回目の継代の細胞から、10%DMSO(Sigma−Aldrich Co.、セントルイス、ミズーリ州)を含む少量の細胞ストック(15−20本のクライオバイアル)をアンプルに入れて凍結し、液体窒素(LN)中で保存した。名称をsCLDK−SFに変えたが、「s」は浮遊(suspension)、「−SF」はこの方法において無血清(serum free)であることを意味する。この細胞系の凍結に血清は利用しなかった。
【0060】
38回目の継代後のバイアルを凍結してから約5ヶ月後、凍結バイアルの内2本を解凍し、シェーカーフラスコ内に置いた。これらの細胞を125mLシェーカーフラスコ内で1週間増殖した(継代数39)。次いでこれらの細胞を、それぞれが0.2μベントキャップを取り付けた11個の1L Nalgeneシェーカーフラスコを用いて4400mLにスケールアップ(2以上の継代にわたって)した。継代数41の4日目(96時間)に、対数期(活発に増殖している)の細胞を回収し、10%DMSOを添加し、自動アンプル充填および、封止装置を用いてHEPA濾過空気下でガラス製アンプルに充填し、封をした。マスター細胞ストックバンクは、適切な封止であるか検査し、ラベルを貼り、液体窒素中で凍結した。数個の凍結サンプルを解凍し、生じ得るコンタミネーション(カビおよび細菌によるコンタミネーション)に関して選別した。選別によって、それぞれ28℃および37℃のトリプトン大豆ブロスおよびトリプトースリン酸ブロスにおいて21日後に、カビまたは細菌の増殖がないことが明らかになった。
【0061】
実施例1B:血清または血清代替物を含まない浮遊増殖へのaCLDK細胞の適合
次に上述のCLDK適合手順をより少ない継代で繰り返し、完了した。次表は、培養培地およびこの次の手順で観察された増殖についてまとめている。
【0062】
【表2】

【0063】
実施例1C:液体窒素保存からsCLDK−SF MCS細胞の回収と最適な成長増殖の手段
1Lのサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地を無菌法を用いて調製した。その後、実施例1Aにおける継代41の凍結アンプルから得られた細胞2−3mLを液体窒素から回収し、解凍した。解凍したアンプルに70%アルコールをスプレーし、乾かした。滅菌アンプルスナッパーを用いて全バイアルを割り開けた。その後、滅菌ピペットを用いて一アンプルの細胞を小容量の蓋つき滅菌チューブ(4.5mL滅菌クライオバイアルまたは同等品)に移した。このステップを第二、第三のアンプルに対して繰り返した。
【0064】
滅菌ピペットを用いて、1.0mLのサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地を各チューブに添加した。細胞−培地混合物を含むこれらのチューブを約3−5分間置いた後、滅菌ピペットを用いて細胞−培地混合物を1本の小容量滅菌チューブから15mL遠心分離チューブ(Falconまたは同等品)に移した。このステップを細胞−培地混合物を含む第二、第三の小容量チューブに対して繰り返した。約8.0mLのサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地を各チューブに添加した。それぞれ10mLの細胞−培地混合物を含む全15mL遠心分離チューブを5−10分間置いた後、チューブを約500×gで10分間遠心分離した。次に、ペレットを維持したまま培地を遠心分離チューブから注ぎ出した。滅菌ピペットを用いて約5mLのサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地を各遠心分離チューブに添加した。続いてペレットを遠心分離チューブ内で再懸濁した。全チューブの再懸濁した細胞−培地混合物を、0.2μlベントキャップを取り付けた125mLシェーカーフラスコ1本に移した。次に約40mLのサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地を125mLシェーカーフラスコに添加し、続いてフラスコを10%COにセットした37℃インキュベーター内のロータリーシェーカー(100−110RPM)上に置いた。細胞を4から7日間インキュベートした。7日間で、生存率が実質的に損なわれることなく最大の細胞増殖係数を得た。自動哺乳類細胞カウンターを用いて細胞および生存率の計数を行った。
【0065】
実施例1D:sCLDK−SF MCS細胞を成長増殖のために植え継ぐ手順
次の手順は、sCLDK−SF細胞の連続増殖のために最適化された。この方法は実施例1Cのように細胞を回収した後に始まり、7日毎に繰り返して連続的な細胞増殖を維持することができる。細胞は、サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地において増殖する。
【0066】
サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地中の生きたsCLDK−SF細胞を含むシェーカーフラスコをインキュベーターから回収した後、滅菌ピペットを用いて細胞サンプルをシェーカーフラスコからサンプルバイアルに移す。自動または手動の計数手段を用いて細胞および生存率の計数を行う。計数が行われた後、新しいシェーカーフラスコに細胞密度5.0×10細胞/mLの50mL(すなわち2.5×10細胞/125mLシェーカーフラスコ)で植え継ぐのに必要な細胞の全容量を算出する。
【0067】
算出された容量の細胞を、滅菌ピペットで新しい125mLシェーカーフラスコに移す。おおよその容量のサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地を全容量50mLになるように添加した後、シェーカーフラスコをロータリーシェーカー(100−110RPM)上に置く。10%COインキュベーター内37℃で7日間の期間、細胞をそのまま維持する。この方法を4−10日毎に1回繰り返して細胞を恒常的に維持することができる。次のデータは、連続的な細胞増殖のための連続継代を表している。継代1−16は1週間毎に行われ、継代17−34は4日毎に行われた。
【0068】
【表3】


【0069】
実施例2:sCLDK−SF細胞に対する比較のためのaCLDK細胞の別の無血清培地における浮遊状態の増殖
aCLDK細胞を液体窒素保存から取り出し、10%FBS含有イーグル(Eagle)最小必須培地(EMEM)を用いて75cmフラスコで約48時間増殖させた。次に細胞を5%ウシ胎児血清とEMEM培地を含む850cmローラーボトルに移した。次いでこのローラーはトリプシン処理された。細胞を回収し、5.0×10細胞/mLの細胞密度で2本の異なる125mlシェーカーフラスコに植え継いだ。これら2本のフラスコの内、1本のフラスコはサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地を含み、もう1本のフラスコはEMEM培地を含んだ。sCLDK−SF細胞を含む第三のフラスコ(利用可能な連続ストック)をサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地において細胞密度5.0×10細胞/mLで植え継いだ。続いて3本の懸濁フラスコを37℃のウォータージャケットインキュベーター内のロータリーシェーカーに置き、細胞および生存率の計数のために1日毎に標本抽出した(下の結果を参照)。
【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
本実験から、aCLDK細胞はEMEM培地において浮遊培養では増殖しないことが結論できる。このデータはまた、サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地におけるaCLDKが、生産のための生存能力のある代替物であると考慮するのに十分な速度で増殖しないことも示す。生産に有用であると考慮されるためには通常、少なくとも5の増殖係数が必要である。それどころか、これらの細胞は単に細胞密度と生存率を維持するだけであった。最後に、本実験は、サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地におけるsCLDK−SF細胞が、無血清浮遊状態において平均分割比10超で非常に良好に増殖し、高い(>99%)生存率を維持することを示す。
【0074】
実施例3:基質依存的CLDK細胞を別の血清含有培地での浮遊増殖に適合させる試み
aCLDK細胞のクライオバイアル2本を液体窒素タンクから取り出して解凍した。1本のバイアルの材料は、5%ウシ胎児血清(FBS)をさらに補充したサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地10mLに再懸濁した。もう1本のバイアルの材料は、補充添加ハンク(Hank)最小必須培地(MEMH)10mLに再懸濁した。サプリメント添加MEMH培地は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国再発行特許第33,164号(米国特許第4,500,513号より)に記載されている。本実施例に用いられているこの培地は、次のものを含んでいる。
ウシ胎児血清(FBS)、5%
非必須アミノ酸、10ml/培地1L
L−グルタミン、10mL/培地1L
硫酸ネオマイシン、(100mg/mLストック溶液を0.3mL)/培地1L
ポリミキシンB、30,000ユニット/培地1L
ナイスタチン、25,000ユニット/培地1L
50%ブドウ糖、2.6ml/培地1L
MEMビタミン、30mL/培地1L
【0075】
両方のバイアルを遠心分離し、上清を廃棄した。次に細胞ペレットを別々にそれぞれの培地10mLに再懸濁し、続いて別々の25mL組織培養フラスコに移してそれぞれの培地で全容量25mLにした(どちらの培地も5%FBSを含んでいた)。両方のフラスコを35℃インキュベーター内に置いた。
【0076】
翌日、両方の組織フラスコを顕微鏡下で観察したところ、90−100%コンフルエントであることが分かった。両方のフラスコをトリプシン処理し、細胞を約490cmローラーボトルに移して培地全容量150mL/ローラーボトルに置いた。両方のローラーを35℃インキュベーター内のローラーカート(0.3rpm)上に置いた。3日後、両方のローラーボトルの細胞を顕微鏡観察したところ、30%コンフルエントであることが分かった。さらに3日後、細胞および生存率計数を行った。MEMHにおける細胞は、生存率99.5%の1.02×10細胞/mLを含んでいることが分かった。5%FBS含有サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地における細胞は、生存率99.83%の1.09×10細胞/mLを含んでいることが分かった。両方のローラーボトルはトリプシン処理され、細胞を3.16×10細胞/mLの細胞密度で新しい490cmローラーボトルに移し、培地全容量150mL/ローラーボトルで置いた。両方のローラーボトルを35℃インキュベーター内に置いた。
【0077】
インキュベーターに入れてから4日後、細胞および生存率の計数を行った。Hanks MEMにおける材料は、細胞生存率99.5%の1.12×10細胞/mLを含むことが分かった。5%FBS含有サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地における材料は、細胞生存率89.69%の1.27×10細胞/mLを含むことが分かった。両方のローラーボトルをトリプシン処理し、細胞を3.16×10細胞/mLの細胞密度で新しい490cmローラーボトルに移し、培地全容量150mL/ローラーボトルに置いた。両方のローラーボトルを35℃インキュベーター内に置いた。
【0078】
インキュベーターに入れてから5日後、細胞および生存率の計数を再度行った。Hank’s MEMにおける材料は、細胞生存率99.9%の1.03×10細胞/mLを含んでいることが分かった。5%FBS含有サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地における材料は、細胞生存率91.91%の1.72×10細胞/mLを含んでいることが分かった。両方のローラーボトルをトリプシン処理し、細胞を3.16×10細胞/mLの細胞密度で新しい490cmローラーボトルに移して培地全容量150mL/ローラーボトルに置いた。両方のローラーを35℃インキュベーター内に戻し置いた。
【0079】
インキュベーターに入れてから4日後、細胞および生存率の計数を再度行った。Hanks MEMにおける材料は、細胞生存率99.2%の5.95×10細胞/mLを含むことが分かった。5%FBS含有サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地における材料は、細胞生存率85.84%の9.41×10細胞/mL含むことが分かった。両方のローラーボトルをトリプシン処理し、細胞を3.16×10細胞/mLの細胞密度で新しい125mLシェーカーフラスコに移し、培地全容量50mL/シェーカーフラスコで置いた。両方のシェーカーフラスコは、35℃インキュベーター内の100−110rpmのロータリーシェーカー上に置いた。
【0080】
インキュベーターに入れてから4日後、細胞および生存率の計数を再度行った。Hanks MEMにおける材料は、細胞生存率94.0%の2.15×10細胞/mLを含むことが分かった。5%FBS含有サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地における材料は、細胞生存率99.6%の1.38×10細胞/mLを含むことが分かった。両方のシェーカーフラスコを35℃インキュベーター内の100−110rpmのロータリーシェーカー上に戻し置いた。
【0081】
インキュベーターに入れてから3日後、細胞および生存率の計数を再度行った。Hanks MEMにおける材料は、細胞生存率95.0%の2.00×10細胞/mL(増殖係数0.63に相当する)を含むことが分かった。5%FBS含有サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地における材料は、細胞生存率99.8%の3.03×10細胞/mL(増殖係数9.58に相当する)を含むことが分かった。次に、5%FBS培地含有サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地におけるCLDK細胞を3.16×10細胞/mLの細胞密度で新しい125mLシェーカーフラスコに植え継ぎ、35℃インキュベーター内のロータリーシェーカー上に置いて細胞が増殖し続けるか否かを判断し、培地全容量50mL/シェーカーフラスコで置いた。
【0082】
インキュベーターに入れてから7日後、細胞および生存率の計数を再度行った。5%FBS培地含有サプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地におけるCLDK細胞は、1.5×10細胞/mL未満を含むことが分かった。値が非常に小さかったため、生存率の計数は核カウンターを用いて行うことができなかった。細胞は目に見えて非常に塊状であり、細胞培養物は廃棄した。
【0083】
上述の継代プロトコールを下表にまとめている。継代2から5は、通例基質依存細胞の培養のためのローラーボトルで行った。2重線より下の継代6および7は、シェーカーフラスコで行って細胞の浮遊増殖への適合を試みた。しかし表から明らかなように、シェーカーフラスコに1回だけ継代した後により長くインキュベートしたにも関わらず、細胞密度は急激に下がった。確かに、ハンクMEM培地における材料のためにシェーカーフラスコに1回だけ移した後、またサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地における材料のためにシェーカーフラスコに2回だけ移した後、細胞は実験を継続するのに十分には増殖しなかった。このデータは、これらの基質依存的CLDK細胞が浮遊状態では増殖しないことを示す。
【0084】
【表7】

【0085】
実施例4:sCLDK細胞のインフルエンザウイルスによる感染
sCLDK−SF細胞系を犬インフルエンザ(CIV、A/イヌ/マイアミ/05)、低温適応温度感受性H3N8型インフルエンザ(A/ウマ/2/ケンタッキー/1/91、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,177,082号に記載)および第三のH3N8型インフルエンザウイルス(KY02、ウマ/ケンタッキー/02)に感染させた。HAに対する選別の際、検査した3種類の回収されたウイルスの全てが陽性HA結果を返し、CIVおよびKY02は有意な力価の量を示した。検査した低温適応温度感受性H3N8型インフルエンザウイルスに対しては、力価データを収集しなかった。
【0086】
植え継ぎ前に、最も典型的には5−7日間、sCLDK−SF細胞をサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地において増殖させた。細胞をシェーカーフラスコから回収し、シェーカーフラスコ当たり(各ウイルスにつき1フラスコ)50.0mLのサプリメント添加EX−CELL(商標)MDCK無血清培地に所望の密度(1.0×10細胞/mL)で植え継ぎ、10%COのロータリーシェーカーで37℃インキュベートした。植え継ぎ1時間後、シェーカーを適切なウイルスと感染効率(MOI)で感染させた。下表参照。1リットル当たり1mL(50mL当たり50マイクロリットル)のトリプシンを添加する。CIVおよびKYO2を37℃で、Flu−Avertを34℃でインキュベートする。感染した(単数または複数の)シェーカーフラスコを毎日観察し、感染率をモニターして記録した。毎日サンプルを採取し、−70℃で凍結した後にHA力価に対して選別した。90−100%の細胞が感染したことを確認した後、細胞を回収して−70℃で凍結した。凍結サンプルを毎日採取し、HA検査を行った。
【0087】
【表8】

【0088】
上述の詳細な説明は、本発明の当業者にその本質およびその実際の適用を伝えることだけを目的とし、これにより当業者は本発明のその数多くの形態を特定の用途の要求に最も適切となることができるよう適合および適用することができる。したがって本発明は上述の実施形態には限定されず、様々に修正することができる。
【0089】
本明細書において記述されているあらゆる刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)sCLDK細胞の懸濁液にウイルスを接種し、これによりsCLDK細胞を感染させるステップ、
b)前記感染sCLDK細胞において前記ウイルスを繁殖させるステップおよび
c)sCLDK細胞の前記浮遊培養物から前記ウイルスを回収するステップ
を含む、sCLDK細胞の培養物においてウイルスを複製する方法。
【請求項2】
前記ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インフルエンザウイルスが、ヒトインフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、馬インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、犬インフルエンザウイルスおよび猫インフルエンザウイルスからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インフルエンザウイルスがH3型インフルエンザウイルス、H5型インフルエンザウイルスまたはH7型インフルエンザウイルスである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記インフルエンザウイルスがH5N1型インフルエンザウイルス、H3N8型インフルエンザウイルスおよびH3N1型インフルエンザウイルスからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
接種直前に、接種と同時に、または接種直後に、赤血球凝集素の前駆タンパク質を開裂させるためのプロテアーゼがsCLDK細胞の懸濁液に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プロテアーゼがトリプシンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記sCLDK細胞の培養物が無血清培地で増殖されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記sCLDK細胞の培養物が、動物成分由来の材料を全く含まない培地で増殖されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
a)1種または複数の血清代替物を含む培地に基質依存的なCLDK細胞のサンプルを接種するステップ、
b)前記培地において浮遊状態で前記細胞を増殖させるステップ、
c)前記CLDK細胞を新しいバッチの前記培地において浮遊状態で連続継代するステップおよび
d)前記培地中の前記血清代替物の量をゼロまで減少させることによって、浮遊状態の前記CLDK細胞から前記1種または複数の血清代替物を断つステップ
を含む、基質依存的なCLDK細胞を浮遊状態で増殖するように適合させる方法。
【請求項11】
前記培地が無血清である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記培地が動物由来成分を含まない、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
a)培地にsCLDK細胞を接種するステップ、
b)前記sCLDK細胞を浮遊状態で約4から10日の期間増殖させるステップ、
c)(b)の培養物のサンプルを細胞を含まない新しい培地に移すステップおよび
d)連続増殖の期間において(b)と(c)を繰り返すステップ
を含む、sCLDK細胞を浮遊状態で連続的に増殖させる方法。
【請求項14】
前記培地が無血清である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記培地が動物由来成分を含まない、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルが、前もってプロテアーゼを全く添加することなく前記細胞を含まない新しい培地に移される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
(c)に従ってサンプルを移した後の細胞密度が、少なくとも3×10細胞/mLである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記sCLDK細胞が4−10日間で約3より大きい増殖係数を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
請求項10の方法によって得られる、浮遊状態で増殖することができるsCLDK細胞。
【請求項20】
ウイルス複製のための、請求項10に記載の方法によって得られるsCLDK細胞の使用。
【請求項21】
ワクチンの製造における、請求項10に記載の方法によって得られるsCLDK細胞において複製されたウイルスの使用。
【請求項22】
細胞培養培地およびsCLDK細胞を含む組成物。

【公表番号】特表2011−524182(P2011−524182A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514697(P2011−514697)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/046721
【国際公開番号】WO2009/155168
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】