説明

イブプロフェン含有医薬組成物

【課題】
イブプロフェンを起因とする胃粘膜障害を軽減したイブプロフェン含有医薬組成物の提供。
【解決手段】
イブプロフェンとマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖とを含有することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減したイブプロフェン含有医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種糖類を至適量含有することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害が軽減されたイブプロフェン含有医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
イブプロフェン等、非ステロイド解熱消炎鎮痛剤(NSAID)は解熱鎮痛剤として広範囲に使用され、感冒などの症状にも広く処方されている。しかし、NSAIDはシクロオキシゲナーゼを阻害し、胃粘膜保護因子であるプロスタグランジンの生合成を抑制する薬理作用機序を有するため、必然的に胃粘膜障害という副作用を引き起こすことが知られている。最近では、この機構だけではNSAIDによる潰瘍の発症を充分説明できないことから、NSAIDの細胞膜への直接傷害作用説が提唱されてきている(非特許文献1参照)。
【0003】
一方、エリスリトールは、矯味剤として、キシリトールは、安定剤、甘味剤、矯味剤、等張化剤又は賦形剤として、グルコース(ブドウ糖)は、安定剤、緩衝剤、甘味剤、矯味剤、結合剤、コーティング剤、等張化剤、賦形剤又は溶解剤として、スクロース(精製白糖)は、安定剤、基剤、甘味剤、矯味剤、結合剤、光沢化剤、コーティング剤、糖衣剤、賦形剤又は崩壊剤として、ソルビトールは、安定剤、可塑剤、甘味剤、矯味剤、結合剤、懸濁化剤、剤皮、コーティング剤、等張化剤、乳化剤、賦形剤、分散剤、保存剤又は溶解補助剤として、フルクトース(果糖)は、安定剤、甘味剤、矯味剤、結合剤、等張化剤又は賦形剤として、マルチトールは、甘味剤又は賦形剤として、マルトースは、甘味剤又は賦形剤として、ラクチトールは、甘味剤又は賦形剤として配合される医薬添加物である(非特許文献2及び非特許文献3参照)。また、トレハロースは、甘味剤として用いられる添加物として知られている。
【0004】
イブプロフェンに上記糖類を添加した例として、
1)イブプロフェンにエリスリトールを含有する速崩壊錠の製剤例(特許文献1)、
2)イブプロフェンにエリスリトールを含有するフィルムコーティング製剤例(特許文献2)、
3)ウイスカーを発生する薬物の素錠に、糖質、賦形剤及び結合剤を含有する糖衣層により保護することでウイスカーを防止した薄層糖衣錠(特許文献3)、
4)イブプロフェン含有粒状物を糖アルコール又は糖類で被覆した粒剤(特許文献4)、
5)アルミニウムイブプロフェンにフルクトースを添加した懸濁剤(特許文献5)、
6)イブプロフェンとキシリトールとを含有した製剤(特許文献3及び特許文献6)、
この他にも、イブプロフェンに、スクロース又はソルビトールを含有させた懸濁液剤、ゲル剤、錠剤等の製剤例や、イブプロフェンとマルトース又はグルコースの組み合わせを示唆した文献が挙げられる(多数報告あり)。
【0005】
上記先行技術は、いずれも、イブプロフェンに糖類を添加した製剤例を提示又は暗示したものであり、胃粘膜障害に関する記載はなく、示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第00/54752号パンフレット、表13及び14
【特許文献2】特開2001−139495号公報、実施例1、3及び4
【特許文献3】特開2002−179559号公報、特許請求の範囲請求項3
【特許文献4】特開平7−173057号公報、特許請求の範囲請求項1
【特許文献5】特開昭57−31610号公報、特許請求の範囲請求項2
【特許文献6】特開平10−59842号公報、特許請求の範囲請求項3
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】生体膜と薬物の相互作用シンポジウム講演要旨集 Vol.25th 2003 p.210
【非特許文献2】日本医薬品添加剤協会編、医薬品添加物辞典、2000、薬事日報社
【非特許文献3】日本医薬品添加剤協会訳編、医薬品添加物ハンドブック、2001、薬事日報社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、医薬添加物に使用され得る各種糖類の添加が、イブプロフェンの胃粘膜障害にどのような影響を与えるかについて鋭意研究を行なった結果、意外にも、糖によって、又、その添加量によって、イブプロフェンの胃粘膜障害に対する作用が非常に異なることを見出し、更に、それぞれの糖に対して、イブプロフェンの胃粘膜障害を抑制する至適含有量を見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、各種糖類を含有することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害が軽減されたイブプロフェン含有医薬組成物を提供することである。
【0010】
本発明は、
(1) イブプロフェンとマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖とを含有することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減したイブプロフェン含有医薬組成物、
(2) 糖がマルトース、トレハロース及びマルチトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上である上記(1)に記載のイブプロフェン含有医薬組成物、
(3) 糖がマルトースである上記(1)乃至(2)に記載のイブプロフェン含有医薬組成物、
(4) 糖がトレハロースである上記(1)乃至(2)に記載のイブプロフェン含有医薬組成物、
(5) 糖がマルチトールである上記(1)乃至(2)に記載のイブプロフェン含有医薬組成物、
(6) イブプロフェン1重量部に対し、グルコースを0.7重量部乃至3.0重量部又は6.2重量部以上含有する上記(1)に記載のイブプロフェン含有医薬組成物、
(7) イブプロフェン1重量部に対し、エリスリトールを0.1重量部乃至7.9重量部含有する上記(1)に記載のイブプロフェン含有医薬組成物、
(8) イブプロフェン1重量部に対し、スクロースを0.55重量部乃至1.65重量部又は5.0重量部以上含有する上記(1)に記載のイブプロフェン含有医薬組成物、
(9) イブプロフェン1重量部に対し、ラクチトールを0.8重量部乃至4.1重量部含有する上記(1)に記載のイブプロフェン含有医薬組成物、
(10) イブプロフェン1重量部に対し、フルクトースを0.9重量部以上含有する上記(1)に記載のイブプロフェン含有医薬組成物、
(11) イブプロフェン1重量部に対し、ソルビトールを0.75重量部以上含有する上記(1)に記載のイブプロフェン含有医薬組成物、
(12) イブプロフェン1重量部に対し、キシリトールを0.1重量部乃至0.7重量部又は1.8重量部以上含有する上記(1)に記載のイブプロフェン含有医薬組成物。
(13) イブプロフェンとマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖とを含有することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減した解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤及び
(14) イブプロフェンとマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖とを同時に、別々に若しくは隔時に投与するための、イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減した解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤を提供する。
【0011】
更に本発明は、
イブプロフェンとマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖とを同時に、別々に若しくは隔時に投与することを特徴とする解熱方法、鎮痛方法、炎症治療方法又は感冒治療方法も提供する。
【0012】
本発明において、「イブプロフェン」とは、イブプロフェン又はその薬理上許容される塩である。
【0013】
本発明において、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、ソルビトール及びキシリトールは、糖を還元して得られる糖アルコールである。
【0014】
グルコース(ブドウ糖)及びフルクトース(果糖)は果実中に含まれる単糖である。
【0015】
スクロース(蔗糖)はグルコースとフルクトースが結合した二糖類であり、マルトース(麦芽糖)及びトレハロースは二つのグルコースが結合した二糖類である。
【0016】
本発明において、「胃粘膜障害」とは、急性及び慢性胃炎からくる胃粘膜病変(糜爛、出血、浮腫)及び胃潰瘍、並びに胃部の近接部位である十二指腸を含む上部消化管の障害のことである。
【0017】
本発明の「イブプロフェンとマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖とを同時に、別々に若しくは隔時に投与することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減した解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤」は、イブプロフェンとマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖とを同時に、別々に若しくは隔時に投与するための解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤である。本発明によれば、イブプロフェンとマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖とは、それらが併用されることにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減することができる。
【0018】
上記のイブプロフェンとマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖とは、配合剤の形態で投与することができる。製剤技術上、両製剤を物理的に同時に混合することが好ましくない場合は、イブプロフェンとマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖とを、それぞれ単剤として同時に投与することもできる。また、同時に投与しなくても、それぞれの単剤を適当な間隔をおいて相前後して投与することもできる。
【0019】
すなわち、本発明において、同時に投与するとは、ほぼ同じ時間に投与できる投与形態であれば特に限定はない。また、時間をおいて別々に投与するとは、異なった時間に別々に投与できる投与形態であれば特に限定はなく、好適には、最初にマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖を投与し、次いで、決められた時間後に、イブプロフェンを投与することであり、又、最初に、イブプロフェンを投与し、次いで、決められた時間後に、マルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖を投与することもできる。
【0020】
また、イブプロフェンとマルトース、トレハロース、マルチトール、グルコース、エリスリトール、スクロース、ラクチトール、フルクトース、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の糖とは、両者を単一の投与単位形態に含有させてこれを投与することができ、更に、それぞれについて調整した製剤を同時に若しくは時間をおいて投与することもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のイブプロフェン含有医薬組成物は、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、ソルビトール又はキシリトールを、特定の添加範囲で含有することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害が軽減され、解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対するグルコース 及びマルトースの含有比(各々、グルコース/イブプロフェン、マルトース/イブプ ロフェンである)を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【図2】図2は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対するトレハロー ス及びマルチトールの含有比(各々、トレハロース/イブプロフェン、マルトール/ イブプロフェンである)を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【図3】図3は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対するスクロース 及びエリスリトールの含有比(各々、スクロース/イブプロフェン、エリスリトール /イブプロフェンである)を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【図4】図4は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対するラクチトー ル及びフルクトースの含有比(各々、ラクチトール/イブプロフェン、フルクトース /イブプロフェンである)を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【図5】図5は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対するキシリトー ル及びソルビトールの含有比(各々、キシリトール/イブプロフェン、ソルビトール /イブプロフェンである)を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
イブプロフェン、グルコース(ブドウ糖)、スクロース(蔗糖)、フルクトース(果糖)、ソルビトール及びキシリトールは日本薬局方XIVに収載されており、エリスリトールは医薬品添加物規格2003に収載されている。
【0024】
また、マルトース、マルチトール及びラクチトールは医薬品添加物ハンドブック2001に掲載されており、トレハロースは既存添加物名簿(平成8年)に収載されている。
【0025】
イブプロフェンの1回投与量は適応症や年齢により異なるが通常、50mg乃至250mg、好適には、60mgないし200mgであり、これを1日に2乃至3回投与する。
【0026】
本発明のイブプロフェン含有医薬組成物が固形製剤の場合において含有されるイブプロフェンの含有量は通常、20mg乃至800mgであり、好適には、30mg乃至400mgである。
【0027】
本発明のイブプロフェン含有医薬組成物において、各糖類の含有量は、イブプロフェン1重量部に対し、好適には、
1)マルトース、トレハロース及びマルチトールを、0.01重量部以上、更に好適には、0.1重量部以上、
2)グルコースを、0.7重量部乃至3.0重量部又は6.2重量部以上、更に好適には、0.8重量部乃至2.6重量部又は7.0以上、
3)エリスリトールを、0.01重量部乃至7.9重量部、更に好適には、0.1重量部乃至7.5重量部、
4)スクロースを、0.55重量部乃至1.65重量部又は5.0重量部以上、更に好適には、0.6重量部乃至1.5重量部、
5)ラクチトールを、0.8重量部乃至4.1重量部、更に好適には、0.9重量部乃至3.5重量部、
6)フルクトースを、0.9重量部以上、更に好適には、1.0重量部以上、
7)ソルビトールを、0.75重量部以上、更に好適には、3.0重量部以上、
8)キシリトールを、0.01重量部乃至0.7重量部又は1.8重量部以上、更に好適には、0.1重量部乃至0.65重量部又は2.0重量部以上である。
【0028】
本発明においては、上記有効成分の他、必要に応じて制酸剤、鎮咳薬、去痰薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、交感神経興奮薬、副交感神経遮断薬、消炎酵素類、ビタミン類又は生薬類等を本発明の効果を損なわない範囲で含有するイブプロフェン含有医薬組成物を解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤とすることができる。
【0029】
本発明のイブプロフェン含有医薬組成物の具体的な剤形としては、例えば、錠剤、細粒剤(散剤を含む)、カプセル剤又は坐剤等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基剤を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
【0030】
上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。
【0031】
例えば、錠剤の場合、結晶セルロース等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等を安定化剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等をコーテイング剤として、ステアリン酸マグネシウム等を滑沢剤として、使用することができ、 細粒剤及びカプセル剤の場合、精製白糖等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等を安定化剤として、トウモロコシデンプン等を吸着剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等を結合剤として、使用することができる。
【0032】
上記各剤形において、必要に応じ、クロスポビドン等の崩壊剤;ポリソルベート等の界面活性剤;ケイ酸カルシウム等の吸着剤;三二酸化鉄、カラメル等の着色剤;安息香酸ナトリウム等の安定剤;pH調節剤;香料;等を添加することもできる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例等を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)錠剤
(1)成分
(表1−1)
1錠中(mg) 2錠中(mg) 6錠中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200 200
グルコース、マルトース
又はスクロース 200 − −
グルコース − 400 −
マルトース − − 1600
ヒドロキシプロピルセルロース 50 100 250
ステアリン酸マグネシウム 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0035】
(表1−2)
2錠中(mg) 3錠中(mg) 6錠中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200 200
トレハロース、フルクトース
又はラクチトール 400 − −
マルチトール又はエリスリトール − 800 −
ソルビトール又はキシリトール − − 1600
ヒドロキシプロピルセルロース 50 150 250
ステアリン酸マグネシウム 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0036】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。
【0037】
(実施例2)細粒剤
(1)成分
(表2−1)
1包中(mg) 1包中(mg) 1包中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200 200
グルコース、マルトース
又はスクロース 200 − −
グルコース − 400 −
マルトース − − 1600
ヒドロキシプロピルセルロース 50 100 250
ステアリン酸マグネシウム 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0038】
(表2−2)
1包中(mg) 1包中(mg) 1包中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200 200
トレハロース、フルクトース
又はラクチトール 400 − −
マルチトール又はエリスリトール − 800 −
ソルビトール又はキシリトール − − 1600
ヒドロキシプロピルセルロース 50 150 250
ステアリン酸マグネシウム 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0039】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造する。
【0040】
(実施例3)カプセル剤
(1)成分
(表3−1)
2Cap中(mg) 2Cap中(mg) 4Cap中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200 200
グルコース、マルトース
又はスクロース 200 − −
グルコース − 400 −
マルトース − − 1600
ステアリン酸マグネシウム 10 20 40
ポリソルベート80 20 30 50
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0041】
(表3−2)
2Cap中(mg) 2Cap中(mg) 4Cap中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン 200 200 200
トレハロース、フルクトース
又はラクチトール 400 − −
マルチトール又はエリスリトール − 800 −
ソルビトール又はキシリトール − − 1600
ステアリン酸マグネシウム 10 20 40
ポリソルベート80 20 30 50
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0042】
表3−1及び表3−2中、Capはカプセルを示す。
【0043】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製した後、カプセルに充てんして硬カプセル剤を製造する。
【0044】
(試験例)
イブプロフェンの胃粘膜障害に対する各糖類の抑制効果
(1)被験物質
イブプロフェンはSigma Chemical製のものを、トレハロースは林原製のものを、グルコースは関東化学製のものを使用した。
また、スクロース、フルクトース、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール及びマルトースはいずれも和光純薬工業製のものを使用した。
各被験物質は、試験当日に0.5%トラガント液に懸濁若しくは溶解して調製した。投与液量は、体重1Kgあたり5mLを経口投与し、対照群には同量の0.5%トラガント液を投与した。
【0045】
(2)動物
Wistar−Imamichi雄性ラット(動物繁殖研究所)5週齢を購入し、温度20乃至26℃、湿度30乃至70%、照明時間7時乃至19時に制御された環境制御飼育装置(日本クレア製)内で、ステンレス製ラット飼育ゲージに5又は6匹入れ、飼料(マウス・ラット飼育用F−2、船橋農場製)及び水フィルターを通した水道水を自由に摂取させて飼育した。8日間の予備飼育後、試験前日に肉眼的に健康状態を観察し良好な動物を選別後、無作為に1群5匹に群分けして用いた。
【0046】
(3)方法
予め、イブプロフェン単剤における100%胃粘膜障害発現用量(潰瘍が発現しないラットは1匹も存在せずに、確実に潰瘍が発生する用量)を求め、その用量に基づいて以下の試験を行った。
試験前日16時より絶食した動物に被験物質を経口投与して3.5時間後、エーテル麻酔下で頚動脈放血死させて胃を摘出した。胃を大弯沿いに切り開き、生理食塩液で軽く洗浄後、実体顕微鏡(オリンパス製10×10倍)下で出血斑の有無を観察した。
潰瘍指数として、出血斑の長径を0.5mm単位で測定して各動物の合計を求めた。イブプロフェン単独投与群の潰瘍指数と、各糖類の併用群における潰瘍指数とを基に、潰瘍抑制率を次式より求めた。
【0047】
【数1】

A:イブプロフェン単独投与群の潰瘍指数
B:併用群の潰瘍指数
【0048】
(4)試験結果
得られた結果を表4乃至8、図1乃至5に示す。なお、各値とも1群5匹の平均値である。
【0049】
(表4)
被験物質(mg/Kg) 含有比 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+グルコース(25) 0.25 −27
イブプロフェン(100)+グルコース(50) 0.5 −36
イブプロフェン(100)+グルコース(100) 1 37
イブプロフェン(100)+グルコース(200) 2 34
イブプロフェン(100)+グルコース(400) 4 −16
イブプロフェン(100)+グルコース(800) 8 19
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+マルトース(25) 0.25 27
イブプロフェン(100)+マルトース(50) 0.5 3
イブプロフェン(100)+マルトース(100) 1 24
イブプロフェン(100)+マルトース(200) 2 20
イブプロフェン(100)+マルトース(400) 4 1
イブプロフェン(100)+マルトース(800) 8 23
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0050】
図1は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対するグルコース及びマルトースの含有比(各々、グルコース/イブプロフェン、マルトース/イブプロフェンである)を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【0051】
表4及び図1に示すように、イブプロフェンにマルトースを添加した場合、含有比によって程度の違いはあるものの、いずれの含有比においてもイブプロフェンの胃粘膜障害を軽減した。また、イブプロフェンにグルコースを添加した場合、含有比0.7乃至3.0又は6.2以上において、イブプロフェンの胃粘膜障害を軽減した。
【0052】
(表5)
被験物質(mg/Kg) 含有比 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+トレハロース(25) 0.25 14
イブプロフェン(100)+トレハロース(50) 0.5 4
イブプロフェン(100)+トレハロース(100) 1 18
イブプロフェン(100)+トレハロース(200) 2 42
イブプロフェン(100)+トレハロース(400) 4 31
イブプロフェン(100)+トレハロース(800) 8 17
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+マルチトール(25) 0.25 44
イブプロフェン(100)+マルチトール(50) 0.5 19
イブプロフェン(100)+マルチトール(100) 1 20
イブプロフェン(100)+マルチトール(200) 2 0
イブプロフェン(100)+マルチトール(400) 4 24
イブプロフェン(100)+マルチトール(800) 8 20
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0053】
図2は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対するトレハロース及びマルチトールの含有比(各々、トレハロース/イブプロフェン、マルトール/イブプロフェンである)を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【0054】
表5及び図2に示すように、イブプロフェンにトレハロース又はマルチトールを添加した場合、含有比によって程度の違いはあるものの、いずれの含有比においてもイブプロフェンの胃粘膜障害を軽減した。
【0055】
(表6)
被験物質(mg/Kg) 含有比 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+スクロース(25) 0.25 −1
イブプロフェン(100)+スクロース(50) 0.5 −3
イブプロフェン(100)+スクロース(100) 1 46
イブプロフェン(100)+スクロース(200) 2 −13
イブプロフェン(100)+スクロース(400) 4 −2
イブプロフェン(100)+スクロース(800) 8 3
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+エリスリトール(25) 0.25 45
イブプロフェン(100)+エリスリトール(50) 0.5 84
イブプロフェン(100)+エリスリトール(100) 1 9
イブプロフェン(100)+エリスリトール(200) 2 20
イブプロフェン(100)+エリスリトール(400) 4 55
イブプロフェン(100)+エリスリトール(800) 8 −1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0056】
図3は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対するスクロース及びエリスリトールの含有比(各々、スクロース/イブプロフェン、エリスリトール/イブプロフェンである)を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【0057】
表6及び図3に示すように、イブプロフェンにエリスリトールを添加した場合、含有比によって程度の違いはあるものの、含有比8未満ではイブプロフェンの胃粘膜障害を軽減した。また、イブプロフェンにスクロースを添加した場合、含有比0.55乃至1.65又は5以上において、イブプロフェンの胃粘膜障害を軽減した。
【0058】
(表7)
被験物質(mg/Kg) 含有比 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+ラクチトール(50) 0.5 −77
イブプロフェン(100)+ラクチトール(100) 1 28
イブプロフェン(100)+ラクチトール(200) 2 48
イブプロフェン(100)+ラクチトール(400) 4 1
イブプロフェン(100)+ラクチトール(800) 8 −10
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+フルクトース(25) 0.25 −1
イブプロフェン(100)+フルクトース(50) 0.5 −24
イブプロフェン(100)+フルクトース(100) 1 7
イブプロフェン(100)+フルクトース(200) 2 33
イブプロフェン(100)+フルクトース(400) 4 22
イブプロフェン(100)+フルクトース(800) 8 48
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0059】
図4は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対するラクチトール及びフルクトースの含有比(各々、ラクチトール/イブプロフェン、フルクトース/イブプロフェンである)を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【0060】
表7及び図4に示すように、イブプロフェンにラクチトールを添加した場合、含有比0.8乃至4.1において、イブプロフェンの胃粘膜障害を軽減した。また、イブプロフェンにフルクトースを添加した場合、含有比0.9以上において、イブプロフェンの胃粘膜障害を軽減した。
【0061】
(表8)
被験物質(mg/Kg) 含有比 潰瘍抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+キシリトール(20) 0.25 27
イブプロフェン(100)+キシリトール(50) 0.5 39
イブプロフェン(100)+キシリトール(100) 1 −31
イブプロフェン(100)+キシリトール(200) 2 6
イブプロフェン(100)+キシリトール(400) 4 11
イブプロフェン(100)+キシリトール(800) 8 48
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イブプロフェン(100)+ソルビトール(25) 0.25 24
イブプロフェン(100)+ソルビトール(50) 0.5 −28
イブプロフェン(100)+ソルビトール(100) 1 26
イブプロフェン(100)+ソルビトール(200) 2 3
イブプロフェン(100)+ソルビトール(400) 4 34
イブプロフェン(100)+ソルビトール(800) 8 66
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0062】
図5は、胃潰瘍抑制率(%)を縦軸に、イブプロフェンに対するキシリトール及びソルビトールの含有比(各々、キシリトール/イブプロフェン、ソルビトール/イブプロフェンである)を横軸にとって、プロットしたグラフである。
【0063】
表8及び図5に示すように、イブプロフェンにソルビトールを添加した場合、含有比0.75以上においてイブプロフェンの胃粘膜障害を軽減した。また、イブプロフェンにキシリトールを添加した場合、含有比0.7以下又は1.8以上において、イブプロフェンの胃粘膜障害を軽減した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イブプロフェン1重量部に対し、マルチトールを2.0重量部乃至8.0重量部含有することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減したイブプロフェン含有医薬組成物。
【請求項2】
イブプロフェン1重量部に対し、ラクチトールを2.0重量部乃至4.0重量部含有することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減したイブプロフェン含有医薬組成物。
【請求項3】
イブプロフェン1重量部に対し、フルクトースを2.0重量部乃至8.0重量部含有することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減したイブプロフェン含有医薬組成物。
【請求項4】
イブプロフェン1重量部に対し、キシリトールを2.0重量部乃至8.0重量部含有することにより、イブプロフェンによる胃粘膜障害を軽減したイブプロフェン含有医薬組成物。
【請求項5】
賦形剤として、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリソルベート80、及び、トウモロコシデンプンからなる群から選択される1種乃至3種を含有する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−46540(P2012−46540A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254727(P2011−254727)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【分割の表示】特願2005−119942(P2005−119942)の分割
【原出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】