説明

イミダゾール化合物、イミダゾール系化合物、有機金属錯体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置

【課題】発光スペクトルが鋭く短波長側で発光可能な発光材料として使用できるイミダゾール化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)において、Rが立体パラメータ(Es)値で−2.0以下の置換基を表すイミダゾール化合物。


(一般式(1)中、Zは炭化水素環基又は複素環基の原子群を表し、ZはC−Cと共に5員若しくは6員の炭化水素環又は複素環の原子群を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミダゾール化合物、イミダゾール系化合物、有機金属錯体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イミダゾール化合物は、様々な用途で用いられているが、近年、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料としても用いられるようになっている。例えば、金属錯体の配位子としてイミダゾール化合物が用いられている。
特許文献1や特許文献2には、N−フェニル−2−フェニルイミダゾール誘導体であって、N位のフェニル基の2位、及び6位に置換基を導入したものが記載されている。この置換基としては、メチル基、イソプロピル基、フェニル基、4−イソプロピルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基などが例示されている。特許文献2では、この置換基の嵩高さが立体パラメータ(Es値)によって規定されている。
そして、特許文献1や特許文献2は、当該N位のフェニル基の2位、及び6位に嵩高い置換基を導入したイミダゾール化合物を配位子とした金属錯体は、その発光波長が短波長側にシフトし、発光スペクトルが鋭くなるため、色純度の優れた青色発光材料として有用であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−542203号公報
【特許文献2】特開2008−303150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示された合成方法では、イミダゾール化合物の当該置換基の嵩高さが増すほど(Es値が小さくなるほど)収率が低くなり、さらには合成できない。例えば、当該置換基がメチル基であれば、合成可能であるが、イソプロピル基やフェニル基を有するイミダゾール化合物の収率は、非常に低くて実用レベルではなく、より嵩高い置換基であるカルバゾール基を有するイミダゾール化合物は、合成できない。また、特許文献1や特許文献2には、イソプロピル基やフェニル基を有するイミダゾール化合物の合成例が開示されるが、それよりも嵩高い置換基を有するイミダゾール化合物の合成例が開示されていないことからも、実用レベルで提供することができていないといえる。
【0005】
このような事情の下、より発光スペクトルが鋭く短波長側で発光可能な発光材料を得るべく、前記N位のフェニル基の2位、及び6位に嵩高い置換基を導入したイミダゾール化合物が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、発光スペクトルが鋭く短波長側で発光可能な発光材料を得るにあたって有用なイミダゾール化合物、このイミダゾール化合物を部分構造として有するイミダゾール系化合物、及び有機金属錯体、これらを含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、この有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いる有機エレクトロルミネッセンス素子、並びにこの有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置、及び照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のイミダゾール化合物は、下記一般式(1)において、Rが立体パラメータ(Es)値で−2.0以下の置換基を表すことを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
(ただし、前記一般式(1)において、
は、炭化水素環基または複素環基を形成するのに必要な原子群を表し、前記Zにて形成される前記炭化水素環基または前記複素環基が、前記Rを1以上有し、
、及びRは、結合手、水素原子または芳香族炭化水素基を表し、互いに結合して5員の炭化水素環、6員の炭化水素環、5員の複素環または6員の複素環を形成してもよく、さらにこれらの環が置換基を有してもよく、
は、C−Cと共に5員の炭化水素環、6員の炭化水素環、5員の複素環または6員の複素環を形成するのに必要な原子群を表し、
は、水素原子または置換基を表し、
mは、1〜5の整数を表す。)
【0010】
本発明のイミダゾール化合物において、
前記Rは、立体パラメータ(Es)値で−2.5以下の置換基を表す
ことが好ましい。
【0011】
本発明のイミダゾール化合物において、
前記Rは、立体パラメータ(Es)値で−3.0以下の置換基を表す
ことが好ましい。
【0012】
本発明のイミダゾール化合物において、
前記Rは、立体パラメータ(Es)値で−5.0以下の置換基を表す
ことが好ましい。
【0013】
本発明のイミダゾール化合物において、
前記Rは、分子量が42以上の置換基を表す
ことが好ましい。
【0014】
本発明のイミダゾール化合物において、
前記Rは、分子量が76以上の置換基を表す
ことが好ましい。
【0015】
本発明のイミダゾール化合物において、
前記Rは、分子量が115以上の置換基を表す
ことが好ましい。
【0016】
本発明のイミダゾール化合物において、
前記Rは、分子量が166以上の置換基を表す
ことが好ましい。
【0017】
本発明のイミダゾール系化合物は、
前記本発明のイミダゾール化合物を部分構造として有する
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の有機金属錯体は、
前記本発明のイミダゾール化合物を部分構造として有する
ことを特徴とする。
【0019】
本発明の有機金属錯体において、
周期律表の第8族から第11族までの金属元素の中から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む
ことが好ましい。
【0020】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、
前記本発明のイミダゾール化合物、前記本発明のイミダゾール系化合物、及び前記本発明の有機金属錯体のうち少なくとも一つを含む
ことを特徴とする。
【0021】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、
陽極と陰極との間に発光層を含む複数の有機化合物層を有し、
前記有機化合物層のうち少なくとも1層が前記本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む
ことを特徴とする。
【0022】
本発明の表示装置は、
前記本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える
ことを特徴とする。
【0023】
本発明の照明装置は、
前記本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発光スペクトルが鋭く短波長側で発光可能な発光材料を得るにあたって有用なイミダゾール化合物、このイミダゾール化合物を部分構造として有するイミダゾール系化合物、及び有機金属錯体、これらを含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、この有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いる有機エレクトロルミネッセンス素子、並びにこの有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置、及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】イミダゾール化合物の1H−NMRスペクトルを示す図。
【図2】図1の1H−NMRスペクトルの一部を拡大した図。
【図3】高速液体クロマトグラフィー分析結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔イミダゾール化合物〕
本発明のイミダゾール化合物は、前記一般式(1)で表される。
一般式(1)において、Zは、炭化水素環基または複素環基を形成するのに必要な原子群を表す。これらの炭化水素環基または複素環基は、次に説明するRで表される置換基を1以上有する。その数は、好ましくは1,2,3,4,5のいずれかである。Rの数が複数であるとき、互いのRは、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、前記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物のうち、これらの炭化水素環基または複素環基のオルト位にそれぞれRを有するイミダゾール化合物が好ましい。
【0027】
一般式(1)において、Rは、立体パラメータ(Es)値で−2.0以下の置換基を表す。好ましくは、Es値が−2.5以下の置換基であり、より好ましくは、Es値が−3.0以下の置換基であり、よりさらに好ましくは、Es値が−5.0以下の置換基である。
Es値とは化学反応性より誘導された立体パラメータであり、この値が小さいほど立体的に嵩高い置換基ということができる。そのため、Es値が小さいほど好ましい。
Es値に関しては、例えば、構造活性懇話会編 「薬物の構造活性相関 ドラッグデザインと作用機作研究への指針(化学の領域 増刊122号)」(南江堂 1979年刊)p124−126、Unger,S.H.,Hansch,C.,Prog.Phys.Org.Chem.,12,91(1976)、「American Chemical Society Professional Reference Book,’Exploring QSAR’p.81 Table 3−3」に記載されている。
【0028】
本発明におけるEs値は、水素原子のEs値を0として表される値である。
Es値が−2.0以下の置換基としては、例えば、−CF(トリフルオロメチル基)、9−H−フルオレン基(Es値=−2.34)やカルバゾリル基が挙げられ、Es値が−2.5以下の置換基としては、例えば、−t−C(tert−ブチル基)が挙げられ、Es値が−3.0以下の置換基としては、例えば、−CH(C(3−(n−ペンチル)基)、−CHBr(ジブロモメチル基)、−CCl(トリクロロメチル基)、−CBr(トリブロモメチル基)が挙げられ、Es値が−5.0以下の置換基としては、例えば、−C(C(トリフェニルメチル基)が挙げられる。これらの置換基に対して後述の置換基Yがさらに置換されていてもよい。なお、カルバゾリル基のEs値は、9−H−フルオレン基とカルバゾリル基とが構造において類似しているため、−2.0〜−2.5の範囲に含まれると推測される。
【0029】
一般式(1)において、Rは、前記Es値の範囲を満たすと共に、分子量が43以上の置換基であることが好ましく、分子量が77以上の置換基であることがより好ましく、分子量が116以上の置換基であることがより好ましく、分子量が127以上の置換基であることがより好ましく、分子量が166以上の置換基であることがより好ましい。分子量が43以上の置換基としては、例えば、イソプロピル基(分子量:43)が挙げられ、分子量が77以上の置換基としては、例えば、フェニル基(分子量:77)が挙げられ、分子量が116以上の置換基としては、例えば、インドール基(分子量:116)が挙げられ、分子量が127以上の置換基としては、例えば、ナフチル基(分子量:127)が挙げられ、分子量が166以上の置換基としては、例えば、カルバゾール基(分子量:166)が挙げられる。
【0030】
・炭化水素環基
上述のとおり、一般式(1)において、Zは、炭化水素環基を形成するのに必要な原子群を表すものであり、この炭化水素環基としては、シクロアルキル基またはアリール基(芳香族環基)が挙げられる。これらの基は、後述する置換基Yを有していてもよい。
【0031】
・シクロアルキル基
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基等が挙げられる。該シクロアルキル基は、好ましくは、炭素数5以上10以下であり、さらに好ましくは、炭素数5以上7以下である。
【0032】
・アリール基
アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、ビフェニル−2−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニル−4−イル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、フルオレニル基等が挙げられる。該アリール基は、好ましくは、炭素数6以上18以下であり、さらに好ましくは、炭素数6以上12以下である。
【0033】
・複素環基
上述のとおり、一般式(1)において、Zは、複素環基を形成するのに必要な原子群も表すものであり、複素環基としては、脂肪族複素環基、芳香族複素環基等が挙げられる。
【0034】
・脂肪族複素環基
脂肪族複素環基としては、エポキシ環、アジリジン環、チイラン環、オキセタン環、アゼチジン環、チエタン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、オキサゾリジン環、テトラヒドロチオフェン環、スルホラン環、チアゾリジン環、ε−カプロラクトン環、ε−カプロラクタム環、ピペリジン環、ヘキサヒドロピリダジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピラン環、1,3−ジオキサン環、1,4−ジオキサン環、トリオキサン環、テトラヒドロチオピラン環、チオモルホリン環、チオモルホリン−1、1−ジオキシド環、ピラノース環、ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン環等の脂肪族複素環由来のものを挙げることができる。該脂肪族複素環基は、好ましくは、環構成原子数5以上10以下であり、さらに好ましくは、環構成原子数5以上7以下である。
【0035】
・芳香族複素環基
芳香族複素環基としては、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が挙げられる。該芳香族複素環基は、好ましくは、環構成原子数5以上18以下であり、さらに好ましくは、環構成原子数5以上13以下である。
【0036】
これらの炭化水素環基または複素環基は、Rで表される置換基の他にさらに置換基を有していてもよい。以下、この置換基を置換基Yと称する。
この置換基Yの例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭化水素環基、芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
【0037】
一般式(1)において、R、及びRは、結合手、水素原子または芳香族炭化水素基を表し、互いに結合して5員の炭化水素環、6員の炭化水素環、5員の複素環または6員の複素環を形成してもよい。さらに、これらの環が前記置換基Yを有してもよい。
5員または6員の炭化水素環としては、シクロペンタン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキサン環、シクロヘキサジエン環、ベンゼン環等が挙げられる。
また、5員または6員の複素環としては、5員または6員の芳香族複素環(例えば、オキサゾール環、オキサジアゾール環、オキサトリアゾール環、イソオキサゾール環、テトラゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、イソチアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環)、5員〜6員の非芳香族複素環(例えば、ピロリジン環、ピペラジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、イソオキサゾリジン環、イソチアゾリジン環)が挙げられる。
【0038】
一般式(1)において、Zは、C−Cと共に5員の炭化水素環、6員の炭化水素環、5員の複素環または6員の複素環を形成するのに必要な原子群を表す。
5員の炭化水素環、6員の炭化水素環、5員の複素環または6員の複素環は、前記R、及びRにて説明したものと同様である。
【0039】
一般式(1)において、Rは、水素原子または置換基を表す。この置換基としては、前記置換基Yが挙げられる。
一般式(1)において、mは、1以上5以下の整数を表す。Rの数が2以上のとき、互いのRは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
一般式(1)において、Zによって形成される炭化水素環基は、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
さらに、このフェニル基の2位および6位にRが置換されていることが好ましい。
【0041】
本発明のイミダゾール化合物の具体的な構造としては、例えば、次のようなものが挙げられる。但し、本発明は、これらの構造のイミダゾール化合物に限定されない。
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

【0046】
〔イミダゾール化合物の製造方法〕
本発明の前記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物は、以下に説明する方法によって製造される。
一般式(1)で表されるイミダゾール化合物は、下記一般式(2)、及び(3)で表される化合物を、必要に応じて無機塩基性化合物、及び有機塩基性化合物の少なくともいずれかの共存下において、かつ、金属触媒存在下において有機溶媒中で反応させることで製造できる(以下、この反応を反応1と称する。)。
【0047】
【化6】

【0048】
一般式(2)において、Xは、ハロゲン原子を表し、Z、R、及びmは、一般式(1)と各々同義である。
【0049】
【化7】

【0050】
一般式(3)において、Mは、置換基を有してもよいホウ素原子、マグネシウム原子、シリコン原子、スズ原子、亜鉛原子を表し、Z、R、R、及びRは、一般式(1)と各々同義である。
【0051】
反応1の際に必要に応じて用いられる無機塩基性化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウムなどが挙げられる。
反応1の際に必要に応じて用いられる有機塩基性化合物としては酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。
【0052】
反応1の際に用いられる金属触媒としては、パラジウム触媒、ニッケル触媒等が好適に用いられる。
パラジウム触媒としては、ホスフィン配位子を有するパラジウム化合物が好適に用いられ、Pd(PPh、PdCl(PPh等が挙げられる
また、Pd(OAc)、Pd(dba)、Pd(dba)等のホスフィン配位子を含まないパラジウム化合物と、PPh、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、dppe、dppp、dppf等のホスフィン配位子とを反応系中で混合させることで、当該反応系中でホスフィン配位子を有するパラジウム化合物を調製することも出来る。
また、これら以外にも、当業者に公知の炭素−炭素(C−C)結合形成に用いられるパラジウム触媒が好適に用いられる。
ニッケル触媒としては、ホスフィン配位子を有するニッケル化合物が好適に用いられ、例えば、NiCl(dppe)、NiCl(dppf)、NiCl(PPhが挙げられる。また、これら以外にも当業者に公知のC−C結合形成に用いられるニッケル触媒が好適に用いられる。
【0053】
反応1の際に用いられる有機溶媒としては、エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等が好適に用いられる。
反応1の反応系において、炭素数5以下のエーテル溶媒量が少ない方が好ましい。具体的には、反応1を行なうにあたって、反応系中の前記一般式(2)で表される化合物のモル数Nf2[モル]と炭素数5以下のエーテル溶媒の合計容積V[リットル]とが、下記数式(1)の関係を満たすことが好ましく、下記数式(2)の関係を満たすことがより好ましく、下記数式(3)の関係を満たすことがさらに好ましい。Vは、反応系中に炭素数5以下のエーテル溶媒が複数種類含まれるときは、これらの合計である。
【0054】
[数1]
/Nf2≦3 …(1)
【0055】
[数2]
/Nf2≦2 …(2)
【0056】
[数3]
/Nf2≦1 …(3)
【0057】
前記数式(1)〜(3)のいずれかの関係を満たすには、反応1の仕込み時に加える炭素数5以下のエーテル溶媒の量で調整できる。また、反応1に用いる試薬の溶解性や反応1を実施する前の工程の都合などにより、反応1を行う前の時点で下記数式(4)の関係となっている場合には、反応系に対して溶媒除去処理を行い、前記数式(1)〜(3)のいずれかの関係を満たすように炭素数5以下のエーテル溶媒の量を調整する。
【0058】
[数4]
/Nf2>3 …(4)
【0059】
炭素数5以下のエーテル溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンが挙げられる。
溶媒除去処理の方法としては、各種の冷却システムにより冷却された溶媒トラップ容器と各種の真空ポンプを用いて減圧下において溶媒を除去する減圧蒸留法や、Dean−Starkトラップを用いて常圧下で溶媒を除去する常圧蒸留法を用いることが出来る。
【0060】
また、反応系中に炭素数6以上のエーテル溶媒、炭素数7以上の脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒から選ばれる少なくとも1つの溶媒が含まれていると、炭素数5以下のエーテル溶媒のみで行う場合よりもさらに好ましい。
この場合、反応1を行うにあたって、反応系中の炭素数6以上のエーテル溶媒、炭素数7以上の脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒から選ばれる少なくとも1つの溶媒の合計容積V[リットル]と前記一般式(2)で表される化合物のモル数Nf2[モル]とが下記数式(5)の関係を満たすことが好ましく、下記数式(6)の関係を満たすことがより好ましい。
【0061】
[数5]
/Nf2≧0.1 …(5)
【0062】
[数6]
10≧V/Nf2≧0.1 …(6)
【0063】
炭素数6以上のエーテル溶媒としては、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、メチルアニソール、エチルアニソール、ジメトキシベンゼン、メトキシエトキシベンゼンが好ましい例として挙げられる。
炭素数7以上の脂肪族炭化水素溶媒としては、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカンが好ましい例として挙げられる。
芳香族炭化水素溶媒としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素溶媒から選ばれると好ましく、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼンが好ましい例として挙げられる。
【0064】
このような条件の下で反応1を行うことで、従来技術で開示される合成方法で合成不可能であった、嵩高い置換基であるRが、Zにて形成される炭化水素環基または複素環基に存在するイミダゾール化合物を合成できる。
【0065】
〔イミダゾール系化合物〕
本発明のイミダゾール系化合物は、前記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物を部分構造として有する。つまり、化合物が部分的にでも前記一般式(1)で表される構造を有すれば、本発明のイミダゾール系化合物に該当する。そのため、例えば、イミダゾール化合物として例示した、L−76〜L−91のような多置換の化合物も本発明のイミダゾール系化合物に該当する。
本発明のイミダゾール系化合物について、具体例をさらに追加して次に示すが、これらに限定されない。
【0066】
【化8】

【0067】
〔有機金属錯体〕
本発明の有機金属錯体は、前記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物を部分構造として有する。
本発明の有機金属錯体は、周期律表の第8族から第11族までの金属元素の中から選ばれる少なくとも一つの金属を含むことが好ましい。金属としては、白金またはイリジウムであることが好ましい。
本発明の有機金属錯体としては、例えば、周期律表の第8族から第11族までの金属元素に対して一般式(1)で表されるイミダゾール化合物を配位子としたものが挙げられる。本発明の有機金属錯体は、公知の方法で合成され得る。
本発明の有機金属錯体は、一般式(1)で表されるイミダゾール化合物を配位子として有することにより、発光スペクトルが鋭く短波長側で発光可能な発光材料として利用できる。そのため、特に青色発光の有機EL素子用材料として有用である。
【0068】
本発明のイミダゾール化合物を部分構造に有する有機金属錯体について、具体例を次に示すが、これらに限定されない。
【0069】
【化9】

【0070】
〔有機エレクトロルミネッセンス素子用材料〕
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、前記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物、前記有機化合物および前記有機金属錯体のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。なお、以下、有機エレクトロルミネッセンス素子を有機EL素子と称し、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を有機EL素子用材料と称する。
【0071】
〔有機EL素子、表示装置、照明装置〕
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極との間に、有機化合物層を有し、有機化合物層は、有機化合物で構成される層を少なくとも一層含む。なお、有機化合物層は、無機化合物を含んでいてもよい。
本発明の有機EL素子において、有機化合物層のうち少なくとも1層が前記有機EL素子用材料を含む。この有機化合物層は、少なくとも一つの発光層を有する。そのため、有機化合物層は、例えば、一層の発光層で構成されていてもよいし、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、及び電子輸送層等の公知の有機EL素子で採用される層が発光層を介して積層構成されていてもよい。
多層型の有機EL素子の構造としては、例えば、
(a)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/陰極、
(b)陽極/発光層/電子注入・輸送層/陰極、
(c)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極、
(d)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/正孔障壁層/電子注入・輸送層/陰極、
の多層構成で積層したものが挙げられる。
なお、前記「正孔注入・輸送層」は「正孔注入層および正孔輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味し、「電子注入・輸送層」は「電子注入層および電子輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味する。
【0072】
本発明のイミダゾール化合物や本発明のイミダゾール系化合物を含む有機EL素子用材料を発光層のホストとして用いることもできるし、本発明の有機金属錯体を含む有機EL素子用材料を発光層のドーパントとして用いることもできる。
後者の場合、本発明の有機金属錯体は、前記のとおり発光スペクトルが鋭く短波長側で発光するため、特に青色発光層の形成に特に有用である。
青色発光層を有する有機EL素子だけでなく、赤色発光層を有する有機EL素子および緑色発光層を有する有機EL素子を並べて配置してカラー表示可能な表示装置や照明装置を構成することもできる。
また、青色発光層に対して別途赤色発光層および緑色発光層を積層させて、白色発光の有機EL素子を構成することもできる。この場合、いわゆるタンデム型の素子構造とするのが好ましい。白色発光する有機EL素子も、表示装置および照明装置に好適に用いることができる。
【0073】
本発明の有機EL素子において、本発明の前記有機EL素子用材料の他には、従来の有機EL素子において使用される公知のものの中から任意の材料を選択して用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明に係る実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0075】
〔実施例1〕イミダゾール化合物の合成
(合成例1) 化合物1(2-Fluoro-1,3-diiodobenzene)の合成
【0076】
【化10】

【0077】
窒素雰囲気下、三口フラスコに2-Fluoroiodobenzene(75.0g,338mmol)、及びテトラヒドロフラン(676ml)を入れて−70℃に冷却し、そこへ予めジイソプロピルアミン (41.0g, 405.6mmol)、n-BuLiヘキサン溶液(228.1ml, 溶液中のn-BuLiのモル数:371.8mmol, モル濃度(n-BuLiモル数/溶液量):1.63M)、及びテトラヒドロフラン(300ml)から調製したリチウムジイソプロピルアミド/テトラヒドロフラン溶液を20分かけて滴下した。−70℃で1時間撹拌した後、ヨウ素(94.4g, 371.8mmol)を加え、ゆっくりと室温に戻し、12時間撹拌した。
反応終了後、少量の水を加えて失活した後、エバポレータで濃縮した。チオ硫酸ナトリウム/水酸化ナトリウム水溶液を加えて残存ヨウ素を失活し、試料を分液ロートに移して、ジクロロメタンで3回抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、濃縮した。これをシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、ヘキサン(150ml)から−10℃で再結晶を行い、白色の固体(化合物1。2-Fluoro-1,3-diiodobenzene)を得た。
この化合物1の同定は1H-NMRとFD-MSにて行った。
収量 62.0g
収率 53%
【0078】
(合成例2) 化合物2の合成
【0079】
【化11】

【0080】
窒素雰囲気下、三口フラスコに2-Fluoro-1,3-diiodobenzene(61.9g, 178mmol)、カルバゾール(71.4g, 427.2mmol)、K3PO4(151.14g, 712mmol)、CuI(6.78g, 35.6mmol)、trans-1,2-diaminocyclohexane(12.8ml, 106.8mmol)、及び1,4-ジオキサン(178ml)を入れ、16時間還流させた。
反応終了後、室温まで冷却した後、試料をトルエン(500ml)に溶解させセライトを用いてろ過して無機塩をろ別し、ろ液を濃縮した。このろ液にメタノールを加えて試料を析出させ、分散洗浄を行い、試料をろ取して、真空乾燥(50℃、8時間)して白色の固体(化合物2)を得た。
化合物2の同定は、1H−NMR、及びFD−MSにて行った。
収量 42.57g
収率 56%
【0081】
(合成例3) 化合物3の合成
【0082】
【化12】

【0083】
窒素雰囲気下、三口フラスコに水素化カリウム(3.0g, 75mmol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(50ml)を入れ、0℃に冷却しておき、そこへN,N-ジメチルホルムアミド(50ml)に溶解させたイミダゾール(6.81g, 100mmol)の溶液を水素ガスの発生速度に注意しながら20分かけて加え、その後、室温で1時間撹拌した。次いで、化合物2(21.32g, 50mmol)を加えて6時間還流させた。
反応終了後、水(200ml)を加えて析出試料をろ取した。試料をジクロロメタンに溶解させ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、濃縮した。これをシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=9:1(容積比))で精製し、その後ヘキサンで分散洗浄し、ろ取、真空乾燥(50℃、8時間)して白色の固体(化合物3)を得た。
化合物3の同定は、1H−NMR、及びFD−MSにて行った。
収量 17.79g
収率 75%
【0084】
(合成例4) 化合物4の合成
【0085】
【化13】

【0086】
窒素雰囲気下、三口フラスコに化合物3(5.69g, 12mmol)、及びテトラヒドロフラン(72ml)を入れ、次いで、室温でn-BuLiヘキサン溶液(7.2ml, 溶液中のn-BuLiのモル数:12mmol, モル濃度(n-BuLiモル数/溶液量):1.67M)を加え、30分間撹拌した。次にテトラヒドロフラン(15ml)に溶解させた塩化亜鉛 (2.04g, 15mmol)の溶液を5分かけて加えた。n-BuLiヘキサン溶液の溶媒には、n−ヘキサンを用いた。後に説明する比較例においても同様である。
化合物4については、精製等を行わずに次の反応にそのまま用いた。
【0087】
(合成例5) 化合物5の合成
【0088】
【化14】

【0089】
合成例4で化合物4を合成した後、そのまま、この化合物4が入った三口フラスコに、ドライアイス/アセトンの冷媒を用いて冷却した溶媒トラップを介して油回転ポンプを接続し、減圧下にて三口フラスコを40℃程度に加熱して反応系から溶媒(90ml)を除去した(溶媒除去工程)。ここで溶媒の除去量は溶媒トラップに捕集された量である。
この後、室温に冷却した後、系内に窒素を入れて常圧に戻し、トルエン(30ml)を加え(トルエン添加)、次いでヨードベンゼン(2.04g, 10mmol)、及びPd(PPh3)4(231mg, 0.2mmol)を加え、窒素雰囲気下にて120℃で16時間反応させた。
【0090】
ここで、合成例5における反応系の溶媒量の関係を表1にまとめた。
なお、n−ブタンは、合成例4の反応によりn-BuLi(分子量MW=64.06)が変化したものである。具体的には、n-BuLi(12mmol)がn-ブタン(分子量MW=58.12, n-ブタンのモル数:12mmol,n-ブタンの質量:0.697g,n-ブタンの比重:0.60)1.2mlに変化した。
また、n−ヘキサンの容積は、n-BuLiヘキサン溶液の比重(0.68)から溶液質量(4.896g)を算出し、溶液質量からn-BuLiの質量(0.769g)を引いてn−ヘキサンの質量(4.127g)を算出し、n−ヘキサンの比重(0.66)で容積に換算して求めた。以下の場合においても同様である。
【0091】
【表1】

【0092】
表1に示すように、溶媒除去工程後にフラスコ内に残っていた全ての溶媒量が4.4mlであったため、炭素数5以下のエーテル溶媒であるテトラヒドロフランの合計容積V[リットル]は、4.4ml以下であったといえる。
よって、炭素数5以下のエーテル溶媒であるテトラヒドロフランの合計容積V[リットル]と、ヨードベンゼンのモル数Nf2[モル]との関係は表1に示したように、
/Nf2≦0.44
となり、前記数式(3)の関係を満たしていた。
さらに、炭素数が7の芳香族炭化水素溶媒であるトルエンの容積V[リットル]と、ヨードベンゼンのモル数Nf2[モル]との関係は表1に示したように、
/Nf2=3.0
となり、前記数式(6)の関係を満たしていた。
なお、合成例5における反応系には、溶媒除去工程後であっても炭素数が6の脂肪族炭化水素溶媒であるn−ヘキサンが含まれている可能性もある。しかし、溶媒除去工程後のn−ヘキサンの容積は、その後に添加したトルエンの容積に比べて小さいため、n−ヘキサンを考慮したとしても、前記数式(6)の関係は依然として満たされる。この点については、後述する参考例2、及び実施例3においても同様である。
したがって、合成例5の反応条件は、数式(3)且つ数式(6)の関係を満たす条件で実施された。
【0093】
反応終了後、試料に少量の水を加えて反応を失活した。これをジクロロメタン(200ml)で希釈し、これにエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム二水和物(8.32g, 20mmol)の水溶液を加え、分液ロート中でよく振り、さらに水相のpHが10以上になるよう水酸化ナトリウム水溶液を加えて調整した。ジクロロメタン相を回収し、さらに水相からジクロロメタンで数回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、乾固した。これをシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=90:10(容積比))で精製し、その後メタノールで分散洗浄を行い、白色の固体(化合物5)を得た。
化合物5の同定は、1H−NMR、及びFD−MSにて行った。図1、及び図2に、化合物5の1H−NMRスペクトルを示す。
収量 2.3g
収率 42%
【0094】
〔比較例1〕
(合成例6)化合物5の合成
【0095】
【化15】

【0096】
合成例4と同様にして、化合物3(5.69g, 12mmol)と、テトラヒドロフラン(72ml)と、n-BuLiヘキサン溶液(7.2ml, 溶液中のn-BuLiのモル数:12mmol, モル濃度(n-BuLiモル数/溶液量):1.67M)と、テトラヒドロフラン(15ml)に溶解させた塩化亜鉛(2.04g, 15mmol)とを含む溶液から化合物4を調製した。調製後、そのまま、化合物4が入った三口フラスコにヨードベンゼン(2.04g, 10mmol)、及びPd(PPh3)4(231mg, 0.2mmol)を加え、窒素雰囲気下にて16時間還流させた。つまり、比較例1では、溶媒除去工程を実施せず、トルエンも添加しなかった。
【0097】
合成例6における反応系の溶媒量の関係を表1にまとめた。
表1に示すように、炭素数5以下のエーテル溶媒であるテトラヒドロフランの合計容積V[リットル]と、ヨードベンゼンのモル数Nf2[モル]との関係は、合成例5と同様の計算により、
/Nf2=(72+15)×10−3/10×10−3=8.7
となり、前記数式(1)の関係を満たしていなかった。
【0098】
反応終了後、試料に少量の水を加えて反応を失活した。これをジクロロメタン(200ml)で希釈し、これにエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム二水和物(8.32g, 20mmol)の水溶液を加え、分液ロート中でよく振り、さらに水相のpHが10以上になるよう水酸化ナトリウム水溶液を加えて調整した。ジクロロメタン相を回収し、さらに水相からジクロロメタンで数回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。後述する高速液体クロマトグラフィー分析の結果から、合成例14では、化合物5が確認されなかった。
【0099】
〔液体クロマトグラフィー分析〕
シリカゲルクロマトグラフィー精製前に、実施例1、及び比較例1の化合物5の合成において得られた試料をそれぞれ、100mlのメスシリンダーを用いて100mlのテトラヒドロフラン溶液に調製し、その後、10分の1の濃度に希釈する工程(具体的には溶液を1ml抜き取り、10mlのメスシリンダーを用いて10mlのテトラヒドロフラン溶液に調製する工程)を3回繰り返し、実質的には試料が100Lのテトラヒドロフラン中に溶解しているのに相当する濃度の溶液を10ml調製した。
この溶液を用いて高速液体クロマトグラフィー分析を行った結果を図3に示す。
・高速液体クロマトグラフィー分析条件
高速液体クロマトグラフィー装置はAgilent Technologies社製 Agilent 1100シリーズ(型式:バイナリポンプ G1312A)を用い、以下の条件にて測定した。
カラム:Inertsil ODS3V(φ4.6mm×250mm、5μm)
移動相:0.1質量%HCOOH+0.1質量%HCOONH4水溶液/アセトニトリル=30/70(v/v) (容積比)
流速:1000μl/min
注入量:5.0μl
UV検出波長:254nm
【0100】
〔質量分析〕
また、質量分析も行い、チャート上の各ピーク成分について、原料である化合物3、目的物である化合物5であることを確認した。
【0101】
実施例、及び比較例における化合物5の収率を表2に示す。
表2の収率、高速液体クロマトグラフィー分析、及び質量分析の結果から、嵩高い置換基を備える化合物5が比較的良好な収率で合成可能であり、比較例で示すように従来技術の方法では化合物5が合成不可能であることが分かる。
【0102】
【表2】

【0103】
〔参考例〕
また、一般式(1)におけるRのEs値が、−2.0よりも大きいイソプロピル基(Es値:−1.71)を有する化合物の合成例、及び収率について、参考例として以下に示す。
【0104】
〔参考例1〕イミダゾール化合物(化合物8)の合成
(合成例7)化合物6の合成
【0105】
【化16】

【0106】
三口フラスコにメタノール(100ml)、グリオキサール水溶液(40質量%)(11.4ml,100mmol)、及び2,6−ジイソプロピルアニリン(17.73g,100mmol)を入れ、室温で16時間撹拌した。その後、メタノール(400ml)、塩化アンモニウム(6.42g,120mmol)、及びホルムアルデヒド水溶液(37質量%)(16.2ml,200mmol)を加え8時間還流させた。
反応終了後、エバポレータで濃縮し、水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整した。試料を分液ロートに移し、ジクロロメタンで抽出を行い、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、濃縮を行った。これをシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=9:1(容積比))で精製し、さらにヘキサンから再結晶して白色の固体(化合物6)を得た。
化合物6の同定は、1H−NMR、及びFD−MSにて行った。
収量 9.2g
収率 40%
【0107】
(合成例8)化合物7の合成
【0108】
【化17】

【0109】
窒素雰囲気下、三口フラスコに化合物5(27.4g,60mmol)、及びテトラヒドロフラン(60ml)を入れ、溶解させた。溶液を0℃に冷却し、n-BuLiヘキサン溶液(35.9ml,溶液中のn-BuLiのモル数:60mmol,モル濃度(n-BuLiモル数/溶液量):1.67M)を10分かけて加え、0℃で30分撹拌した。次にテトラヒドロフラン(100ml)に溶解させた塩化亜鉛(13.6g, 100mmol)の溶液を10分かけて加えた。その後、溶液を室温まで戻した。n-BuLiヘキサン溶液の溶媒には、n−ヘキサンを用いた。後に説明する他の実施例、及び比較例においても同様である。
化合物7については、精製等を行わずに、次の反応にそのまま用いた。
【0110】
(合成例9)化合物8の合成
【0111】
【化18】

【0112】
合成例8で化合物7を調製した後、そのまま、この化合物7が入った三口フラスコに、ドライアイス/アセトンの冷媒を用いて冷却した溶媒トラップを介して油回転ポンプを接続し、減圧下にて三口フラスコを40℃程度に加熱して反応系から溶媒(150ml)を除去した(溶媒除去工程)。ここで溶媒の除去量は溶媒トラップに捕集された量である。
この後、系内に窒素を入れて常圧に戻し、反応系中に2-tert-butyl-5-Bromopyrimidine(10.8g,50mmol)、及びPd(PPh3)4(2.89g,2.5mmol)を加え、窒素雰囲気下にて90℃で16時間反応させた。
【0113】
合成例9における反応系の溶媒量の関係を表1にまとめた。
なお、n−ブタンは、合成例8の反応によりn-BuLi(分子量MW=64.06)が変化して生成した。具体的には、n-BuLi(60mmol)がn-ブタン(60mmol,5.8ml)に変化した。なお、n-ブタンの容積は、n-ブタンの分子量(MW=58.12)、及びn-ブタンの比重(0.60)に基づいて算出した。
また、n−ヘキサンの容積は、次のようにして求めた。まず、n-BuLiヘキサン溶液の比重(0.68)から溶液質量(24.4g)を算出し、次に溶液質量からn-BuLi(3.84g)の質量を引いてn−ヘキサンの質量(20.56g)を算出し、n−ヘキサンの比重(0.66)で容積に換算して求めた。
これらの計算は、以下の参考例においても同様である。
【0114】
表1に示すように、溶媒除去工程後にフラスコ内に残っていた全ての溶媒量が47.0mlであったため、炭素数5以下のエーテル溶媒であるテトラヒドロフランの合計容積V[リットル]は、47.0ml以下であったといえる。
よって、炭素数5以下のエーテル溶媒であるテトラヒドロフランの合計容積V[リットル]と、2-tert-butyl-5-Bromopyrimidineのモル数Nf2[モル]との関係は表1に示したように、
/Nf2≦0.94
となり、前記数式(3)の関係を満たしていた。
【0115】
反応終了後、試料に少量の水を加えて反応を失活した。これをジクロロメタン(200ml)で希釈し、これにエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム二水和物(62.43g,150mmol)の水溶液を加え、分液ロート中でよく振り、さらに水相のpHが10以上になるよう水酸化ナトリウム水溶液を加えて調整した。ジクロロメタン相を回収し、さらに水相からジクロロメタンで数回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。これをシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン=95:5(容積比))で精製し、その後、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒から再結晶を行い、白色の固体(化合物8)を得た。
化合物8の同定は、1H−NMR、及びFD−MSにて行った。
収量 15.2g
収率 84%
【0116】
〔参考例2〕イミダゾール化合物(化合物9)の合成
(合成例10)化合物9の合成
【0117】
【化19】

【0118】
合成例8と同様の工程で、化合物6(28.5g,125mmol)と、テトラヒドロフラン(125ml)と、n-BuLiヘキサン溶液(74.9ml,溶液中のn-BuLiのモル数:125mmol,モル濃度(n-BuLiモル数/溶液量):1.67M)と、テトラヒドロフラン(208ml)に溶解させた塩化亜鉛(28.4g,208mmol)とを含む溶液から化合物7を調製した。調製後、そのまま、化合物7が入った三口フラスコにドライアイス/アセトンの冷媒を用いて冷却した溶媒トラップを介して油回転ポンプを接続し、減圧下にて三口フラスコを40℃程度に加熱して反応系から溶媒(310ml)を除去した(溶媒除去工程)。ここで溶媒の除去量は溶媒トラップに捕集された量である。
この後、系内に窒素を入れて常圧に戻し、反応系中にトルエン(104ml)を加え(トルエン添加)、次いでヨードベンゼン(21.3g,104mmol)、及びPd(PPh3)4(2.89g,2.5mmol)を加え、窒素雰囲気下にて120℃で16時間反応させた。
【0119】
合成例10における反応系の溶媒量の関係を表1にまとめた。
このとき、炭素数5以下のエーテル溶媒であるテトラヒドロフランの合計容積V[リットル]と、ヨードベンゼンのモル数Nf2[モル]との関係は、(合成例5)と同様の計算により、表1に示したように、
/Nf2≦0.96
となり、前記数式(3)の関係を満たしていた。
さらに、トルエンの容積V[リットル]と、ヨードベンゼンのモル数Nf2[モル]との関係は、表1に示したように、
/Nf2=1
となり、前記数式(6)の関係を満たしていた。
したがって、合成例10の反応は、数式(3)且つ数式(6)の関係を満たす条件で実施された。
【0120】
反応終了後、試料に少量の水を加えて反応を失活した。これをジクロロメタン(300ml)で希釈し、これにエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム二水和物(129.9g, 312mmol)の水溶液を加え、分液ロート中でよく振り、さらに水相のpHが10以上になるよう水酸化ナトリウム水溶液を加えて調整した。ジクロロメタン相を回収し、さらに水相からジクロロメタンで数回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。これをシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=95:5(容積比))で精製し、その後、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒から再結晶を行い、白色の固体(化合物9)を得た。
化合物9の同定は、1H−NMR、及びFD−MSにて行った。
収量 24.7g
収率 78%
【0121】
〔参考例3〕イミダゾール化合物(化合物10)の合成
(合成例11)化合物10の合成
【0122】
【化20】

【0123】
合成例8と同様の工程で、化合物6(15.98g, 70mmol)と、テトラヒドロフラン(140ml)と、n-BuLiヘキサン溶液(41.9ml, 溶液中のn-BuLiのモル数:70mmol, モル濃度(n-BuLiモル数/溶液量):1.67M)と、テトラヒドロフラン(100ml)に溶解させた塩化亜鉛(13.6g, 100mmol)とを含む溶液から化合物7を調製した。調製後、そのまま、化合物7が入った三口フラスコにドライアイス/アセトンの冷媒を用いて冷却した溶媒トラップを介して油回転ポンプを接続し、減圧下にて三口フラスコを40℃程度に加熱して反応系から溶媒(250ml)を除去した(溶媒除去工程)。ここで溶媒の除去量は溶媒トラップに捕集された量である。
この後、系内に窒素を入れて常圧に戻し、反応系中にトルエン(50ml)を加え(トルエン添加)、次いで2-Bromodibenzofuran(12.35g, 50mmol)、及びPd(PPh3)4(2.89g, 2.5mmol)を加え、窒素雰囲気下にて120℃で18時間反応させた。
【0124】
合成例11における反応系の溶媒量の関係を表1にまとめた。
表1に示したように、炭素数5以下のエーテル溶媒であるテトラヒドロフランの合計容積V[リットル]と、2-Bromodibenzofuranのモル数Nf2[モル]との関係は、合成例5と同様の計算により、
/Nf2≦0.66
となり、前記数式(3)の関係を満たしていた。
さらに、トルエンの容積V[リットル]と、2-Bromodibenzofuranのモル数Nf2[モル]との関係は、表1に示したように、
/Nf2=1
となり、前記数式(6)の関係を満たしていた。
したがって、合成例11の反応は、数式(3)且つ数式(6)の関係を満たす条件で実施された。
【0125】
反応終了後、試料に少量の水を加えて反応を失活した。これをジクロロメタン(300ml)で希釈し、これにエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム二水和物(62.4g, 150mmol)の水溶液を加え、分液ロート中でよく振り、さらに水相のpHが10以上になるよう水酸化ナトリウム水溶液を加えて調整した。ジクロロメタン相を回収し、さらに水相からジクロロメタンで数回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。これをシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=95:5(容積比))で精製し、その後、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒から再結晶を行い、白色の固体(化合物10)を得た。
化合物10の同定は、1H−NMR、及びFD−MSにて行った。
収量 15.8g
収率 80%
【0126】
〔参考例4〕イミダゾール化合物(化合物7)の合成
(合成例12)
【0127】
【化21】

【0128】
合成例8と同様の工程で、化合物6(27.4g, 60mmol)と、テトラヒドロフラン(60ml)と、n-BuLiヘキサン溶液(35.9ml, 溶液中のn-BuLiのモル数:60mmol,モル濃度(n-BuLiモル数/溶液量):1.67M)と、テトラヒドロフラン(100ml)に溶解させた塩化亜鉛(13.6g, 100mmol)とを含む溶液から化合物7を調製した。調製後、そのまま、化合物7が入った三口フラスコに2-tert-butyl-5-Bromopyrimidine(10.8g, 50mmol)、及びPd(PPh3)4(2.89g, 2.5mmol)を加え、窒素雰囲気下にて90℃で16時間反応させた。つまり、参考例4では、溶媒除去工程を実施せず、トルエンも添加しなかった。
【0129】
合成例12における反応系の溶媒量の関係を表1にまとめた。
表1に示すように、炭素数5以下のエーテル溶媒であるテトラヒドロフランの合計容積V[リットル]と、2-tert-butyl-5-Bromopyrimidineのモル数Nf2[モル]との関係は、合成例5と同様の計算により、
/Nf2=3.2
となり、前記数式(1)の関係を満たしていなかった。
【0130】
反応終了後、試料に少量の水を加えて反応を失活した。これをジクロロメタン(200ml)で希釈し、これにエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム二水和物(62.43g, 150mmol)の水溶液を加え、分液ロート中でよく振り、さらに水相のpHが10以上になるよう水酸化ナトリウム水溶液を加えて調整した。ジクロロメタン相を回収し、さらに水相からジクロロメタンで数回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。これをシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン=95:5(容積比))で精製し、白色の固体(化合物8)を得た。
化合物8の同定は、1H−NMR、及びFD−MSにて行った。
収量 0.72g
収率 4%
【0131】
〔参考例5〕イミダゾール化合物(化合物9)の合成
(合成例13)
【0132】
【化22】

【0133】
合成例8と同様の工程で、化合物6(28.5g, 125mmol)と、テトラヒドロフラン(125ml)と、n-BuLiヘキサン溶液(74.9ml, 溶液中のn-BuLiのモル数:125mmol, モル濃度(n-BuLiモル数/溶液量):1.67M)と、テトラヒドロフラン(208ml)に溶解させた塩化亜鉛(28.4g, 208mmol)とを含む溶液から化合物7を調製した。調製後、そのまま、化合物7が入った三口フラスコにヨードベンゼン(21.3g, 104mmol)、及びPd(PPh3)4(2.89g, 2.5mmol)を加え、窒素雰囲気下にて16時間還流させた。つまり、参考例5では、溶媒除去工程を実施せず、トルエンも添加しなかった。
【0134】
合成例12における反応系の溶媒量の関係を表1にまとめた。
表1に示すように、炭素数5以下のエーテル溶媒であるテトラヒドロフランの合計容積V[リットル]と、ヨードベンゼンのモル数Nf2[モル]との関係は、合成例5と同様の計算により、
/Nf2=3.2
となり、前記数式(1)の関係を満たしていなかった。
【0135】
反応終了後、試料に少量の水を加えて反応を失活した。これをジクロロメタン(300ml)で希釈し、これにエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム二水和物(129.9g, 312mmol)の水溶液を加え、分液ロート中でよく振り、さらに水相のpHが10以上になるよう水酸化ナトリウム水溶液を加えて調整した。ジクロロメタン相を回収し、さらに水相からジクロロメタンで数回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。しかし、薄層クロマトグラフィーによって目的物の存在は確認できなかった。
【0136】
〔参考例6〕イミダゾール化合物(化合物10)の合成
(合成例14)
【0137】
【化23】

【0138】
合成例8と同様の工程で、化合物6(15.98g, 70mmol)と、テトラヒドロフラン(140ml)と、n-BuLiヘキサン溶液(41.9ml, 溶液中のn-BuLiのモル数:70mmol, モル濃度(n-BuLiモル数/溶液量):1.67M)と、テトラヒドロフラン(100ml)に溶解させた塩化亜鉛(13.6g, 100mmol)とを含む溶液から化合物7を調製した。調製後、そのまま、化合物7が入った三口フラスコに2-Bromodibenzofuran(12.35g, 50mmol)、及びPd(PPh3)4(2.89g, 2.5mmol)を加え、窒素雰囲気下にて18時間還流させた。つまり、参考例6では、溶媒除去工程を実施せず、トルエンも添加しなかった。
【0139】
合成例13における反応系の溶媒量の関係を表1にまとめた。
表1に示すように、炭素数5以下のエーテル溶媒であるテトラヒドロフランの合計容積V[リットル]と、2-Bromodibenzofuranのモル数Nf2[モル]との関係は、合成例5と同様の計算により、
/Nf2=4.8
となり、前記数式(1)の関係を満たしていなかった。
【0140】
反応終了後、試料に少量の水を加えて反応を失活した。これをジクロロメタン(300ml)で希釈し、これにエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム二水和物(62.4g, 150mmol)の水溶液を加え、分液ロート中でよく振り、さらに水相のpHが10以上になるよう水酸化ナトリウム水溶液を加えて調整した。ジクロロメタン相を回収し、さらに水相からジクロロメタンで数回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。しかし、薄層クロマトグラフィーによって目的物の存在は確認できなかった。
【0141】
上記参考例1〜6で合成した化合物8〜10の収率を対比して表3に示す。
【0142】
【表3】

【0143】
表3の参考例1〜3の収率が示すように、同じ目的化合物であっても、溶媒除去工程を行って炭素数5以下のエーテル溶媒であるテトラヒドロフランの合計容積を少なくし、さらに炭素数7の芳香族炭化水素溶媒であるトルエンを添加することで、目的化合物を高い収率で合成できる。一方、参考例4〜6の合成方法では、目的化合物の収率が極めて低いか、若しくは合成できない。
【0144】
〔本発明と従来技術との関係〕
以上のように、本発明は、従来技術の方法では合成不可能なイミダゾール化合物を提供できる。
なお、特許文献1や特許文献2に開示された合成方法では合成できない当該イミダゾール化合物については、当業者が本願出願時の技術常識を参酌しても、製造できることが明らかであるように記載されていないため、特許文献1や特許文献2に記載された合成できない当該イミダゾール化合物は、本発明に対する「引用発明」とはなり得ない。
また、裁判例(平成11(行ケ)285)によれば、『・・・当該発明が、未完成であったり、何らかの理由で実施不可能であったりすれば、これを既に存在するものとして新規性判断の基準とすることができないのは当然というべきであるから、その意味で、「頒布された刊行物に記載された発明」となるためには、当該発明が当業者にとって実施され得るものであることを要する、ということはできる。・・・』と判断がなされている。この裁判例に基づいて考えても、特許文献1や特許文献2記載された合成できない当該イミダゾール化合物は、「引用発明」とはなり得ない。
なお、米国においても同様の判断が存在し(In re WIGGINS, CCPA 1973)、欧州においても同様の判断が存在する(T206/83(0J1987,5))。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)において、Rが立体パラメータ(Es)値で−2.0以下の置換基を表すことを特徴とするイミダゾール化合物。
【化1】


(ただし、前記一般式(1)において、
は、炭化水素環基または複素環基を形成するのに必要な原子群を表し、前記Zにて形成される前記炭化水素環基または前記複素環基が、前記Rを1以上有し、
、及びRは、結合手、水素原子または芳香族炭化水素基を表し、互いに結合して5員の炭化水素環、6員の炭化水素環、5員の複素環または6員の複素環を形成してもよく、さらにこれらの環が置換基を有してもよく、
は、C−Cと共に5員の炭化水素環、6員の炭化水素環、5員の複素環または6員の複素環を形成するのに必要な原子群を表し、
は、水素原子または置換基を表し、
mは、1〜5の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のイミダゾール化合物において、
前記Rは、立体パラメータ(Es)値で−2.5以下の置換基を表す
ことを特徴とするイミダゾール化合物。
【請求項3】
請求項1に記載のイミダゾール化合物において、
前記Rは、立体パラメータ(Es)値で−3.0以下の置換基を表す
ことを特徴とするイミダゾール化合物。
【請求項4】
請求項1に記載のイミダゾール化合物において、
前記Rは、立体パラメータ(Es)値で−5.0以下の置換基を表す
ことを特徴とするイミダゾール化合物。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のイミダゾール化合物において、
前記Rは、分子量が43以上の置換基を表す
ことを特徴とするイミダゾール化合物。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のイミダゾール化合物において、
前記Rは、分子量が77以上の置換基を表す
ことを特徴とするイミダゾール化合物。
【請求項7】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のイミダゾール化合物において、
前記Rは、分子量が116以上の置換基を表す
ことを特徴とするイミダゾール化合物。
【請求項8】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のイミダゾール化合物において、
前記Rは、分子量が166以上の置換基を表す
ことを特徴とするイミダゾール化合物。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のイミダゾール化合物を部分構造として有する
ことを特徴とするイミダゾール系化合物。
【請求項10】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のイミダゾール化合物を部分構造として有する
ことを特徴とする有機金属錯体。
【請求項11】
請求項10に記載の有機金属錯体において、
周期律表の第8族から第11族までの金属元素の中から選ばれる少なくとも一つの金属元素を含む
ことを特徴とする有機金属錯体。
【請求項12】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のイミダゾール化合物、請求項9に記載のイミダゾール系化合物、及び請求項10または請求項11に記載の有機金属錯体のうち少なくとも一つを含む
ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項13】
陽極と陰極との間に発光層を含む複数の有機化合物層を有し、
前記有機化合物層のうち少なくとも1層が請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む
ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える
ことを特徴とする表示装置。
【請求項15】
請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える
ことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−144454(P2012−144454A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2083(P2011−2083)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発」プロジェクトの委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】