説明

インキ検知装置、インキ検知方法、インキ補給装置および印刷装置

【課題】周囲環境の変化や、経時変化によるインキの変質があっても、安定してインキの有無やインキ量を検出することができるインキ検知装置を提供する。
【解決手段】本発明は、インキを供給するインキ供給部材2と、インキ供給部材と所定の隙間を置いて配置されインキ供給部材上のインキ量を規制するインキ量規制部材3を備え、インキ供給部材とインキ量規制部材との間にインキ溜り4が形成されるインキ補給装置に設けられ、インキ溜りのインキを検知するインキ検知装置において、インキ溜り4と対向する位置に配置された検知電極5と、検知電極に貼り付けられた歪ゲージ6と、検知電極を円弧方向に回転可能な回転移動機構7を有する。検知時のみ検知電極5を回転移動させて検知電極5とインキ溜り4を接触させ、インキの有無やインキ量を検出するので、検出時以外はインキの流動性を阻害せず、印刷画像への影響を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置の版胴に設けられるインキ補給装置のインキ溜りのインキ量を検知するインキ検知装置とインキ検知方法、そのインキ検知装置を備えたインキ補給装置、前記インキ検知方法を用いたインキ補給装置、そのインキ補給装置を備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
版胴を用いた印刷装置、例えば製版されたマスタを版胴に巻装して印刷を行う孔版印刷装置では、版胴内に設けられたインキ溜り部に溜められているインキを版胴の外周面に巻き付けられたマスタの穿孔部分から滲み出させ、その滲み出たインキを印刷用紙に転移させることにより印刷を行っている。
また、版胴内のインキ溜り部へのインキの補給は、インキ溜り部内のインキ量が所定量まで減少したときに、それをインキ検知手段で検知し、インキポンプが駆動されて自動的に行われる。
【0003】
ここで、インキ溜り部内のインキの有無や、インキ量が所定量まで減少したことを検知するインキ検知手段としては、種々の方式が提案されている。
例えば特許文献1(特開2002−1916公報)では、温度や湿度などの周囲環境が変化した場合、インキ自体が経時変化した場合、インキの種類が異なる場合等において、インキ溜り部のインキ量を常に最適な量に維持することができるインキ補給装置を提供することを課題として、周囲環境を検出する手段を有し、環境情報に応じてインキの静電容量を検知する検知電極の位置を可変させる機構を有することを特徴とした検知方式が提案されている。
【0004】
特許文献2(特開平11−101680号公報)では、配線における浮遊容量、漏洩抵抗の影響を排除し、インク量変動による検出信号レベルの変動の比率を増大させて検出精度を向上させることを課題として、配線部の浮遊容量の影響を排除する為に、シールドドライブ回路を使用する方式が提案されている。
【0005】
特許文献3(特許第3662808号公報)では、製造コストが安く、またインクなどの液体の種類に拘わらず液量の微小変化を安定して検出することができる液体検出方法および装置を提供することを課題として、第1のコンデンサの容量に対応する積分時定数にしたがって第1の積分動作をさせるとともに、液体溜り部の液体に対向して該液体の溜り量が所定量以上となったときに先端部が該液体に浸り得るように設けられた検出電極に接続されたコンデンサの容量に対応する積分時定数にしたがって第2の積分動作をさせ、第1の積分動作の積分時間と第2の積分動作の積分時間とを比較することにより、検出電極の先端部が液体に浸っているのか否かを判定する方式が提案されている。
【0006】
特許文献4(特開2001−287341公報)では、1つのインキ量検知センサにより、インキ溜り部内のインキ量を所定範囲内に維持すべくインキの自動補給を行うためのインキ溜り部内のインキ量の検知と、インキ溜り部内のインキ量が異常増加したことの検知との、目的の異なる2種類のインキ量検知を行えるようにすることを課題として、インキ溜り部の異常増加を検出する手段として、通常量検知部(針部)と異常量検知部を同一電極に配置することが提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−1916公報
【特許文献2】特開平11−101680号公報
【特許文献3】特許第3662808号公報
【特許文献4】特開2001−287341公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の従来技術では、検知電極とインキが接触することにより、検知電極とフレーム間の静電容量が変化することを利用し、インキローラ上のインキを適正量になるように制御している。すなわち、インキの容量成分を用いた検知方式である。
しかしながら、使用環境や、インキの経時変化により、検知電極とフレーム間の静電容量の変化が少ない場合がある。
最悪の場合は、所定の静電容量が得られず、検知電極とインキが接触していても、インキ無しと判断され、インキローラ上からインキがオーバーフローし、印刷ドラム(版胴)の外部へインキが染み出し、印刷用紙や機器内部を汚損するという不具合が発生する。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、周囲環境の変化や、経時変化によるインキの変質があっても、安定してインキの有無やインキ量を検出することができるインキ検知装置及びインキ検知方法を提供することを目的とする。そして本発明では、そのインキ検知装置またはインキ検知方法を用い、安定したインキの補給を行うことができるインキ補給装置を提供することを目的とし、さらには、そのインキ補給装置を用いた印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明では以下のような手段を採っている。
本発明の第1の手段は、インキを供給するインキ供給部材と、該インキ供給部材と所定の隙間を置いて配置され、前記インキ供給部材上のインキ量を規制するインキ量規制部材とを備え、前記インキ供給部材と前記インキ量規制部材との間にインキ溜りが形成されるインキ補給装置に設けられ、前記インキ溜りのインキ量を検知するインキ検知装置において、前記インキ溜りと対向する位置に配置された検知電極と、該検知電極に貼り付けられた歪ゲージを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の手段は、第1の手段のインキ検知装置において、前記検知電極を円弧方向に回転可能な回転移動機構を有することを特徴とする。
また、本発明の第3の手段は、第2の手段のインキ検知装置において、前記回転移動機構により前記検知電極を回転移動させ、前記インキ溜りと接触させることにより、前記検知電極の変形または歪を利用し、前記インキ溜りの適正量を検知することを特徴とする。
さらに本発明の第4の手段は、第1乃至第3のいずれか1つの手段のインキ検知装置おいて、前記検知電極の先端形状がスプーン状または櫛歯状あるいは板状であることを特徴とする。
さらに本発明の第5の手段は、第2乃至第4のいずれか1つの手段のインキ検知装置おいて、前記回転移動機構は、前記検知電極の回転速度を可変可能な機構を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の手段は、インキを供給するインキ供給部材と、該インキ供給部材と所定の隙間を置いて配置され、前記インキ供給部材上のインキ量を規制するインキ量規制部材とを備え、前記インキ供給部材と前記インキ量規制部材との間にインキ溜りが形成されるインキ補給装置において、前記インキ溜りのインキ量を検知するインキ検知方法であって、前記インキ溜りと対向する位置に検知電極を配置し、該検知電極に歪ゲージを貼り付けて前記インキ溜りのインキの有無、またはインキ量を検知することを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の手段は、第6の手段のインキ検知方法において、前記検知電極を円弧方向に回転可能な回転移動機構を設けたことを特徴とする。
また、本発明の第8の手段は、第7の手段のインキ検知方法において、前記回転移動機構により前記検知電極を回転移動させ、前記インキ溜りと接触させることにより、前記検知電極の変形または歪を利用し、前記インキ溜りの適正量を検知することを特徴とする。
さらに本発明の第9の手段は、第6乃至第8のいずれか1つの手段のインキ検知方法おいて、前記検知電極の先端形状をスプーン状または櫛歯状あるいは板状とすることを特徴とする。
さらに本発明の第10の手段は、第7乃至第9のいずれか1つの手段のインキ検知方法おいて、前記回転移動機構により、前記検知電極の回転速度を可変可能とすることを特徴とする。
【0014】
本発明の第11の手段は、インキを供給するインキ供給部材と、該インキ供給部材と所定の隙間を置いて配置され、前記インキ供給部材上のインキ量を規制するインキ量規制部材とを備え、前記インキ供給部材と前記インキ量規制部材との間にインキ溜りが形成されるインキ補給装置において、前記インキ溜りのインキの有無またはインキ量を検知する手段として、第1乃至第5のいずれか1つの手段のインキ検知装置を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の第12の手段は、インキを供給するインキ供給部材と、該インキ供給部材と所定の隙間を置いて配置され、前記インキ供給部材上のインキ量を規制するインキ量規制部材とを備え、前記インキ供給部材と前記インキ量規制部材との間にインキ溜りが形成されるインキ補給装置において、前記インキ溜りのインキの有無またはインキ量を検知する手段として、第6乃至第10のいずれか1つの手段のインキ検知方法を用いたことを特徴とする。
【0016】
本発明の第13の手段は、製版されたマスタを巻装する版胴と、該版胴に設けられ版胴内にインキを補給するインキ補給手段と、前記版胴に対して用紙を押圧する押圧手段と、前記版胴と前記押圧手段とが対向する印刷部に用紙を給送する給紙手段とを備え、前記印刷部で前記版胴に巻装されたマスタから用紙にインキを転写して印刷画像を形成する印刷装置において、前記インキ補給手段として、第11または第12の手段のインキ補給装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のインキ検知装置及びインキ検知方法では、検知電極を回転移動させることで、検知時(検知タイミング)のみ検知電極とインキ溜りを接触させ、インキの有無やインキ量を検出するので、検出時以外はインキの流動性を阻害せず、インキ溜りが均一となり、印刷画像に対する影響を少なくすることができる。
また、検知電極とインキ溜りの接触の有無による歪ゲージの変形を監視することで、使用環境や、インキ自体の特性変化により、静電容量が小さくなった場合でも、検知を正確に実施することができる。
【0018】
印刷装置では、機種により使用するインキが異なるため、インキの粘度も異なるが、本発明のインキ検知装置及びインキ検知方法では、インキの粘度に応じて、最適な検知電極を使用することで、インキの流動性を阻害せず、かつ、より大きな歪ゲージの変化量を取り出すことが可能となり、検知システムとしての安定化が図れる。
例えば、粘度の小さいインキにおいては、検知電極の先端をスプーン状とし、検知電極の回転移動に対して、接触したインキの負荷をより大きなものとする。また、粘度の大きなインキにおいては、検知電極の先端を櫛歯状とし、接触したインキの負荷をより小さなものとする。このように、インキ粘度に対して最適な検知電極と歪ゲージの変化量とすることで、検知システムの安定化を図ることができる。
【0019】
さらに、本発明のインキ検知装置及びインキ検知方法では、インキ溜りへの検知電極の進入速度を制御することで、周囲へのインキ飛散を防止すると共に、最適な歪ゲージの変化量を取り出すことが可能となり、検知システムとしての安定化を図ることができる。また、インキ溜りとの非接触領域の回転速度を速めることで、検知に要する時間の短縮が可能となり、使用者の待ち時間を短縮することが可能である。
【0020】
このように、本発明のインキ検知装置及びインキ検知方法では、周囲環境の変化や、経時変化によるインキの変質があっても、安定してインキの有無やインキ量を検出することができる。そして本発明のインキ補給装置では、上記のインキ検知装置またはインキ検知方法を用いるので、安定してインキの有無やインキ量を検出することができ、安定したインキの補給を行うことができる。さらに、本発明の印刷装置では、そのインキ補給装置を用いるので、インキ溜りへのインキの過剰補給や補給不足が防止され、安定した画像品質の印刷を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の構成、動作及び作用を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す印刷装置の概略全体構成図である。同図において印刷装置は、製版や印刷を行う印刷装置本体100と、その印刷装置本体の上に設置され原稿画像を読取る画像読取部200と、該画像読取部200に原稿を搬送する自動原稿搬送装置(ADF)300とを備えている。
【0022】
画像読取部200では原稿の画像を図示しない撮像素子(CCD等のイメージセンサ)で読取り、読取られた原稿の画像データは、図示しない画像処理部のメモリに一旦格納された後、印刷装置本体100に送られる。印刷装置本体100には、画像データに基づいてマスタ22に製版を行い製版されたマスタ22を版胴1に給版する製版部20と、マスタ22が巻装される版胴1を有し印刷用紙Sに印刷を行う印刷部10と、印刷部10に印刷用紙Sを給紙する給紙部30と、印刷後の印刷用紙Sを排紙する排紙部50と、印刷済みのマスタ22を版胴1から剥離し排版する排版部60とを備えている。
【0023】
より詳しく説明すると、印刷装置本体100の筐体の上部には画像読取部200が配置されている。この画像読取部200には、図1に示すような自動原稿搬送装置(ADF)300が設けられており、このADF300は画像読取部200の図示しないコンタクガラスに対して接離自在に設けられている。なお、ADFを用いない場合には、圧板が画像読取部200の図示しないコンタクガラスに対して接離自在に設けられる。
【0024】
図示を省略しているが、図1に示す印刷装置の画像読取部200には、ADF300により搬送される原稿の原稿面を走査して画像を読取るための、蛍光灯と反射ミラーを有するキャリッジと、キャリッジにより走査された原稿画像を結像レンズで撮像素子(CCD等のイメージセンサ)に結像して光電変換し画像データを出力する画像読取ユニットなどを有する画像読取装置(スキャナ)が設けられている。そして、画像読取部200の撮像素子(CCD等のイメージセンサ)で読取られた原稿の画像データは、図示しない画像処理部のメモリに一旦格納された後、印刷装置本体100に送られる。
【0025】
印刷装置本体100の中央に配置された印刷部10は、版胴1、インキ補給手段(2,3)、プレスローラまたは圧胴等からなる印圧手段40を有している。版胴1はインキ供給パイプを兼ねた支軸1Aに回転自在に支持された図示しない一対のフランジの外周面に多孔性支持板を巻装して構成されており、図示しない版胴駆動手段によって、製版、印刷時は時計回り方向に回転駆動され、排版時には反時計回り方向に回転駆動される。支軸1Aはその先端部を印刷装置本体100の図示しない側板に支持されており、その表面にはインキ補給手段(2,3)にインキを供給するための複数の小さな孔が穿設されている。図示しない各フランジは図示しない軸受を介して支軸1Aに回転自在に支持されている。
【0026】
版胴1を構成するステンレスの薄板等で形成される多孔性支持板は、多数の開孔が穿設された開孔部と非開孔部とを有しており、開孔部の周方向長さは例えばB4サイズ(あるいはA3サイズ等)の用紙に対して印刷を行うことが可能な長さに形成されている。非開孔部には版胴1の一母線と平行な平面を有するステージ部が配置されており、ステージ部の上面にはマスタの先端を係止する開閉自在なクランパ1Bが配置されている。また、多孔性支持板の外側には、ポリエステルあるいはステンレスの細線等からなる図示しないメッシュスクリーンが1〜3層程度巻装されている。
【0027】
版胴1の内部であって支軸1Aの下方に位置する部分には、インキ補給手段として、インキ供給部材であるインキローラ2と、インキ量規制部材であるドクターローラ3等を有するインキ補給装置が配置されている。インキローラ2は、図示しない各フランジ間の支軸1A上に固着された図示しない一対の側板間にその支軸1Aを回転自在に支持されており、図示しない版胴駆動手段からの回転力をギヤやベルト等の回転力伝達手段によって伝達されて版胴1と同方向に回転する。ドクターローラ3は、その外周面とインキローラ2の外周面との間に僅かな隙間が生じる位置において側板間に回転自在に支持されており、図示しない版胴駆動手段からの回転力を図示しない回転力伝達手段によって伝達されてインキローラ2とは反対の方向に回転する。インキローラ2とドクターローラ3との近接部において、支軸1Aより供給されたインキによって楔状のインキ溜り4が形成されている。
【0028】
版胴1の下方には印圧手段40が配置されている。この印圧手段40は例えばプレスローラ41からなり、このプレスローラ41は、図示しない一対のプレスローラアーム間に回転自在に支持されており、各プレスローラアームは図示しない揺動手段によって一体的かつ揺動自在に支持されている。また、図示しない揺動手段の近傍には、プレスローラ41を版胴1の外周面より離間した状態で保持する図示しない係止手段が配置されている。
【0029】
印刷装置本体100の印刷部10の右上方には製版部20が配置されている。この製版部20は、マスタ貯容手段21、プラテンローラ23、サーマルヘッド24、切断手段25、マスタ搬送ローラ対26等を有している。マスタ貯容手段21は、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせたマスタ22をロール状に巻成したマスタロール21aを備え、そのマスタロール21aの芯部21bを回転自在かつ着脱自在に支持している。
【0030】
マスタ貯容手段21よりもマスタ搬送方向下流側には、プラテンローラ23及びサーマルヘッド24が配置されている。プラテンローラ23は印刷装置本体100の図示しない側板に回転自在に支持されており、図示しないステッピングモータによって回転駆動されている。
多数の発熱素子を有するサーマルヘッド24は印刷装置本体100の図示しない側板に取付けられており、図示しない付勢手段の付勢力によってプラテンローラ23に圧接されている。サーマルヘッド24は、マスタ22の熱可塑性樹脂フィルム面に接触しつつ発熱素子を選択的に発熱させ、マスタ22に対して熱溶融穿孔製版を行う。
【0031】
プラテンローラ23及びサーマルヘッド24よりもマスタ搬送方向下流側には切断手段25が配置されている。この切断手段25は固定刃と可動刃とからなり、印刷装置本体100の図示しない側板に固定された固定刃に対して可動刃が回動移動してマスタ22を切断する構成となっている。
【0032】
切断手段25のマスタ搬送方向下流側にはマスタ搬送ローラ対26及びガイド板27が配置されており、製版されたマスタ22を版胴1に給版する給版手段を構成している。
マスタ搬送ローラ対26は、図示しない駆動手段によって同期して回転駆動される駆動ローラと、図示しない付勢手段によって駆動ローラに圧接された従動ローラとから構成されている。
また、ガイド板27は印刷装置本体100の図示しない側板に固定されており、マスタ搬送ローラ対26によって搬送されるマスタ22をガイドし、マスタ22の先端を版胴1の外周面へと案内する。
版胴1の外周面に案内されたマスタ22の先端は、版胴1のクランパ1Bによって挟持され、また、製版部20からのマスタ22の供給に合わせて版胴1が回転し、マスタ22が版胴1の外周面に巻装される。
【0033】
印刷装置本体100の製版部20の下方には給紙部30が配置されている。この給紙部30は、シート状の印刷用紙Sを積載した給紙トレイ31、給紙ローラ32、レジストローラ対33等を有している。
給紙トレイ31の上方には、表面に高摩擦抵抗部材を有する給紙ローラ32が配置されている。給紙ローラ32は、給紙トレイ31上の印刷用紙Sと所定の圧力で圧接し、ギヤやベルト等の図示しない駆動力伝達手段を介してステッピングモータによって回転駆動される。なお、図示していないが、給紙ローラ32とレジストローラ対33の間で用紙先端の近傍には、印刷用紙Sを1枚ずつ給紙するための分離パッド及び分離ローラを設けてもよく、この場合は、分離パッドは所定の圧力で分離ローラに圧接されるように配置されている。そして、この分離ローラ及び分離パッドの用紙搬送方向下流側にレジストローラ対33が配置される。駆動ローラと従動ローラとからなるレジストローラ対33は、図示しない版胴駆動手段からの回転駆動力をギヤやカム等の駆動伝達手段で伝達されることにより、駆動ローラが版胴1の回転と同期した所定のタイミングで回転し、この駆動ローラに圧接された従動ローラによって印刷用紙Sを印刷部10の版胴1と印圧手段40の対向位置に向けて給送する。
【0034】
印刷装置本体100の印刷部10の左上方には排版部60が配置されている。この排版部60は、排版ローラ対61、排版ボックス62、圧縮部63等を有している。
排版ローラ対61は、印刷終了後に、使用済みのマスタ22を版胴1から剥離して排版ボックス62に運ぶ機能を有し、図示しない駆動手段の駆動力をギヤやベルト等の駆動伝達手段によって伝達されることで回転する。
内部に使用済みマスタを貯容する排版ボックス62は、印刷装置本体100に対して着脱自在に設けられている。排版ローラ対61によって版胴1から剥離され、運ばれた使用済みマスタを排版ボックス62の内部に押し込む圧縮板63は、図示しない昇降手段によって上下動自在に支持されている。
【0035】
印刷装置本体100の排版部60の下方には排紙部50が配置されている。この排紙部50は、図示しない剥離爪(あるいは剥離爪とエアーナイフ)、排紙搬送部材51、排紙トレイ53等を有している。版胴1の外周面より印刷済みの印刷用紙Sを剥離する図示しない剥離爪は、支軸によって印刷装置本体100の図示しない側板に揺動自在に支持されており、図示しない爪揺動手段によって、その先端が版胴1の外周面に近接する位置と、その先端が版胴1の回転によって移動するクランパ1B等の障害物と干渉しない位置とに選択的に揺動される。
【0036】
排紙搬送部材51は、駆動ローラ51bと従動ローラ51cに架設された無端ベルト51aと、吸引ファン52等を有している。駆動ローラ51bは印刷装置本体100の図示しない側板に回転自在に支持されており印刷部10の版胴1の回転によりベルト等の駆動伝達手段を介して回転駆動される。従動ローラ51cも同側板に回転自在に支持され、駆動ローラ51bと従動ローラ51cとには、無端ベルト51aが掛け渡されている。駆動ローラ51b、従動ローラ51c及び無端ベルト51aの下方には吸引ファン52が配置されており、排紙搬送部材51は、吸引ファン52の吸引力によって無端ベルト51a上に印刷用紙Sを吸着し、排紙トレイ53に向けて搬送する。
排紙搬送部材51によって搬送される印刷済みの印刷用紙Sをその上面に積載する排紙トレイ53は、用紙巾方向に移動自在な一対のサイドフェンス54と用紙搬送方向に移動自在な1つのエンドフェンス55とを有している。
【0037】
次に図1に示す印刷装置の動作を説明する。この印刷装置の動作は、図9に示すような制御系で実行される。
図9は印刷装置の制御系の一例を示すブロック図であり、この制御系は、図示しないCPU及びメモリからなるマイクロコンピュータ構成の制御部70を主要な構成要素として備え、この制御部70に、画像読取部200、印刷部10、製版部20、給紙部30、排紙部50、吸引ファン52、排版部60、メインスイッチ71、入力操作部である操作パネル72、周囲環境検知部(温度センサ、湿度センサ等)73、各種駆動モータ74等が接続されている。
【0038】
操作パネル72には、テンキーや各種のファンクションキー及び表示部などが設けられ、ファンクションキーやテンキーの操作により各種印刷条件の設定を行う。操作パネル72からの入力されたデータは、制御部70へ入力される。
周囲環境検知部73は、印刷装置が設置されている周囲の環境、例えば、温度や湿度などを検知する。周囲環境検知部73で検知された温度や湿度の環境情報は、制御部70へ入力される。
印刷部10内に設けられる後述のインキ検知装置は、版胴ユニット内のインキ溜りのインキの有無やインキ量を検知し、インキ検知装置で検知されたインキ情報は、制御部70へ入力される。
さらに、制御部70内のメモリの一部は、版胴1の外周面に巻き付けられているマスタの製版に用いられた画像データを記憶する画像データ記憶部として機能する。
そして、制御部70は、操作パネル72から入力されたデータに応じて各種駆動モータ74を駆動させ、製版部20、印刷部10、給紙部30、排紙部50、排版部60の駆動を以下のように制御する。
【0039】
図1、図9において、まず、メインスイッチ71がONの状態で、オペレータにより画像読取部200のコンタクトガラス上に原稿がセットされ、操作パネル72上の製版スタートキーが押下されると、画像読取部200の読取り動作が開始され、画像読取部200により原稿画像の読取動作が行われ、原稿面全体の読取りが行われる。
画像読取部200で読取られた画像は図示しない画像処理部で画像処理され、画像データ信号として順次出力され、制御部70内の画像メモリのページメモリ内に1ページ分の画像データが格納される。なお、この画像読取部200による読取動作が行われているときは、版胴1は停止したままであり、排版動作や、製版・給版動作は行われない。
【0040】
画像読取部200の画像読取動作の終了にタイミングを合わせて制御部70は印刷装置本体100の印刷部10及び排版部60を制御し、版胴1が回転を開始し、排版部60で版胴上からの使用済みマスタの排版動作が行われる。すなわち、排版部60の排版ローラ対61によって版胴1上から使用済みマスタが剥離され、剥離された使用済みマスタは、排版ボックス62内に廃棄された後に圧縮板63によって圧縮される。排版動作完了後、版胴1は再び回転して給版待機位置で停止し、クランパ1Bが開放されて印刷装置は給版待機状態となる。
【0041】
印刷装置が給版待機状態となると、制御部70は製版部20を制御し、製版部20のプラテンローラ23およびマスタ搬送ローラ対26が回転駆動され、マスタロール21aからマスタ22が引き出される。引き出されたマスタ22は、サーマルヘッド24の各発熱素子が画像メモリ(ページメモリ)に格納された画像データ信号に基づいて発熱することでその熱可塑性樹脂フィルム面が加熱穿孔され、製版画像が形成される。
マスタ22はサーマルヘッド24により製版されつつプラテンローラ23及びマスタ搬送ローラ対26によって搬送され、ガイド板27に案内されて、版胴1の開放されたクランパ1Bへと送られる。そして、ステッピングモータのステップ数によりマスタ22の先端がクランプ1Bに挟持される所定位置まで到達したと判断されると、図示しない開閉手段が作動してクランパ1Bが閉じられて版胴1の外周面に製版されたマスタ22の先端が保持される。
【0042】
その後、製版動作と並行して給版動作が開始され、版胴1がマスタ22の製版搬送速度と同じ周速度で図1の時計回り方向に回転駆動され、マスタ22の版胴1への巻装動作が行われる。そして、ステッピングモータのステップ数により1版分の製版が完了したと判断されると、プラテンローラ23及びマスタ搬送ローラ対26の回転が停止すると共に切断手段25の可動刃が回転移動してマスタ22が切断される。切断されたマスタ22は版胴1の回転によって製版部20から引出され、全ての製版済みマスタが版胴上に巻装されると、版胴1はホームポジションまで回転して停止し、給版、巻装動作が完了する。
【0043】
給版、巻装動作が完了すると、制御部70は印刷部10及び給紙部30を制御し、版胴1が低速で図1の時計回り方向に回転駆動されると共に、給紙部30の給紙トレイ31より1枚の印刷用紙Sが給紙ローラ32により給紙される。給紙部30から給紙された印刷用紙Sは、その先端をレジストローラ対33のニップ部に当接させた状態で一時停止される。一時停止させられた用紙Sは、版胴上に巻装された製版済みのマスタ22の画像領域先端部が印圧手段40のプレスローラ41と対応する位置に達する所定のタイミングでレジストローラ対33が回転駆動することにより、版胴1とプレスローラ41との間に向けて給送される。
【0044】
このレジストローラ対33の回転とほぼ同時に図示しない揺動手段が作動してプレスローラ41がその外周面を版胴1の外周面に圧接させ、レジストローラ対33によって給送された印刷用紙Sが版胴1に巻装されたマスタに押圧される。この押圧動作によりプレスローラ41と用紙Sとマスタ22が圧接し、インキローラ2によって版胴1の内周面に供給されたインキが版胴1の開孔部より滲出し、多孔性支持板、図示しないメッシュスクリーン、及びマスタ22の多孔性支持体に充填された後にマスタの穿孔部を介して印刷用紙Sに転写され、いわゆる版付けが行われる。
【0045】
版付けにより画像が転写された印刷用紙Sは、図示しない剥離爪によって版胴1の外周面より剥離されて下方へと落下し、排紙搬送部材51上へと送られる。排紙搬送部材51へと送られた印刷用紙Sは、吸引ファン52の吸引力によって無端ベルト51aの上面に引き付けられつつ左方へと搬送され、排紙トレイ53上に排出される。その後、版胴1が再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて印刷装置は印刷待機状態となる。
【0046】
版付け動作完了後、オペレータにより操作パネル72上で印刷条件が設定された後、オペレータによって操作パネル72上の試し刷りキーが押下されることにより、制御部70により印刷部10、給紙部30及び排紙部50が制御され、上記のような印刷動作により1枚の印刷用紙Sに画像が印刷される。
この試し刷りによって画像位置や画像濃度等が決定されると、オペレータにより操作パネル72上でこれらの印刷条件及び印刷枚数が設定された後に、オペレータによって操作パネル72上の試し刷りキーが押下されることにより、制御部70により印刷部10、給紙部30及び排紙部50が制御され、上記のような印刷動作により設定した印刷枚数の印刷が行われる。
【0047】
また、上記の印刷動作の終了後、オペレータにより操作パネル72上の連続キーが押下され、諸条件を設定した後に製版スタートキーが押下されると、次の原稿の画像読取動作、読取った画像データの画像メモリへの格納、排版動作、製版動作、給版動作、巻装動作、版付けが順次行なわれ、版付け終了後、連続して印刷動作となる。
【0048】
以上が本発明に係る印刷装置の構成及び動作の一例であるが、本発明に係る印刷装置では、版胴1の内部に設けられるインキ補給装置に、新規な構成及び検知方法を有するインキ検知装置を備えていることが特徴である。以下、本発明に係るインキ検知装置の構成及びインキ検知方法の具体的な実施例を説明する。
【実施例】
【0049】
図2は、図1に示す印刷装置の版胴と、その内部に設けられたインキ検知装置を有するインキ補給装置の構成例を示す概略断面図であり、図3は、そのインキ補給装置のインキローラとインキ検知装置の側面図である。
図2、図3に示すインキ補給装置は、インキを供給するインキ供給部材であるインキローラ2と、そのインキローラ2と所定の隙間を置いて配置され、インキローラ2上のインキ量を規制するインキ量規制部材であるドクターローラ3等とを備え、インキローラ2とドクターローラ3との間にインキ溜り4が形成されている。また、このインキ補給装置には、インキ溜り4のインキ量を検知するインキ検知装置が設けられており、このインキ検知装置は、インキ溜り4と対向する位置に配置された検知電極5と、検知電極5に貼り付けられた歪ゲージ6と、検知電極5を円弧方向に回転可能な回転移動機構7と、検知電極5の回転移動位置を検知する複数の位置センサ8(8a,8b,8c)とを有している。
【0050】
そして、このインキ検知装置では、回転移動機構7により検知電極5を回転移動させ、インキ溜り4と接触させることにより、検知電極5の変形または歪を利用し、インキ溜り4の適正量を検知する。
また、このインキ検知装置では、検知電極5の先端形状がスプーン状または櫛歯状あるいは板状になっている。
さらに、このインキ検知装置では、回転移動機構7は、検知電極5の回転速度を可変可能な機構を有している。
【0051】
より具体的に説明すると、図2、図3に示すように、インキ検知装置の検知手段として、版胴1内のインキ溜り4が形成される水平面上に検知電極5が配置され、この検知電極5は回転移動できる機構となっている。すなわち検知電極5は、回転移動機構の一例である回転速度を可変可能な回転機構モータ7の回転軸に取付けられている。そして、この回転機構モータ7を時計回り方向(CW)または反時計周り方向(CCW)に回転させることにより、検知電極5をインキ溜りに対して、垂直上方向に回転移動させる。
【0052】
ここで、図4(a)は、インキ溜り4のインキが少なく、非検知状態における検知電極5の初期待機位置(水平な状態)を示すものであり、同図(b)は、検知状態における検知電極の回転移動を示すものである。また、図5は、インキ溜り4に適正な量のインキが有る状態で、検知電極5回転移動し、接触した場合に検知電極が変形することを示す概略図である。
【0053】
検知電極5として薄い金属板を使用した場合において、図4に示すように、インキ溜り4のインキの量が少なく、インキ面が適正な位置にない場合は、回転機構モータ7によって検知電極5が図4(a)の初期待機位置(水平な状態)から図4(b)のように垂直な状態まで回転移動する間に、検知電極5とインキ溜り4が接触しないため、検知電極5は変形しない。
【0054】
これに対して、図5に示すように、インキ溜り4のインキ量が適正で、インキ面が適正位置にある場合は、回転機構モータ7によって検知電極5が回転移動する間に、検知電極5とインキ溜り4が接触し、検知電極5がモータの回転軸を支点として弾性変形する。そこで、この検知電極5の弾性変形を、検知電極5上に貼り付けられた歪ゲージ6で検知するとともに、検知電極5の回転移動の位置を位置センサ8(8a,8b,8c)で検出することにより、インキ溜り4のインキの有無及びインキ量を検知することができる。そして、この検知情報は前述の制御部70に送られる。
【0055】
なお、検知電極5に貼り付ける歪ゲージ6の一例を図7に示す。
金属(抵抗体)は、外力を加えて伸縮させると、ある範囲でその抵抗値も増減する。歪ゲージ(電気抵抗式)は、この抵抗変化により歪を測定するセンサである。
歪ゲージは、図7(a),(b)に示すように、薄い電機絶縁物のベースの上に格子状の抵抗線またはフォトエッチング加工した抵抗箔を形成し、引出し線(リード線)を付けたものである。この歪ゲージを、図7(c)に示すように、測定対象物(本発明では検知電極5)の表面に専用接着剤で接着して、その抵抗変化により測定対象物(検知電極5)の歪を検出する。
また、歪ゲージ6の抵抗変化は微小な値であるので、図8に示すようなホイートストンブリッジ回路を用いて電圧に変換する。本発明の図示しない検知基板では、図8の回路で電圧変換されたものを入力し、増幅したものを検知信号として使用する。
【0056】
次に図6は、本発明のインキ検知装置の検知動作の一実施例を示すタイミングチャートであり、この検知動作は前述の制御部70によって制御される。
図6において、<<STEP1>>のように、検知電極5が水平状態(位置センサ8aがON)の初期待機位置から回転機構モータ7によって検知電極5の回転移動を開始させる。
次に<<STEP2>>のように、検知電極5がインキ溜り4に接触しない領域では、回転機構モータ7の回転速度を速くし、検知電極5の回転移動を高速で実施することにより、検知に必要とされる時間を短縮させる。
【0057】
次に<<STEP3>>のように、検知電極5がインキ溜り4と接触する領域(位置センサ8bがON)を検知し、検知電極5の回転移動を適正な速度(図6では「低速回転」と記載)に変更する。
この低速回転で検知電極5がインキ溜り4に接触しながら回転移動することで、検知電極5が図5に示したように弾性変形し、検知電極上に貼り付けられた歪ゲージ6も変形する。この歪ゲージ6が変形したことにより、歪ゲージ6の抵抗値が変化するので、この抵抗値の変化を図8のような回路で電圧変換したものを図示しない検知基板へ入力し、増幅回路等で増幅して電気信号に変換し、制御部70に送信する。
【0058】
制御部70では、この<<STEP3>>で検知した電気信号と、<<STEP1>>〜<<STEP2>>までで検知した電気信号の電圧を比較することで、検知電極5とインキ溜り4の接触の有無を判定し、インキ溜り上のインキ量が適正であるかを判断する。
【0059】
次に<<STEP4>>のように、検知電極5がインキ溜り4と接触しない領域(位置センサ8cがON)を検知すると、回転機構モータ7が停止し、検知電極5の回転移動を停止する。
【0060】
次に<<STEP5>>は、<<STEP4>>の停止状態から回転機構モータ7を逆回転させ、検知電極5の回転移動方向を<<STEP3>>とは逆方向にしたものであり、検知動作は<<STEP3>>と同様である。
また、<<STEP6>>は、<<STEP2>>と同様に、検知電極5がインキ溜り4に接触しない領域(位置センサ8bがOFF)に達したときの状態で、検知電極5の回転移動方向を逆回転方向としたものであり、動作は<<STEP2>>と同様である。
さらに<<STEP7>>のように、検知電極5が水平状態となり、位置センサ8aがONし、ホーム位置に復帰したことを検知後、検知電極5の回転移動を停止する。
【0061】
なお、以上の図6に示した実施例では、検知電極5の回転移動位置を検知するための位置センサ8b、8cを配置しているが、回転移動機構7の駆動源としてステッピングモータを使用した場合は、ホーム位置からの回転移動量をステップ数で容易に管理することが可能であるので、ホーム位置以外のセンサの削除が可能である。
【0062】
以上、実施例に基づいて説明したように、本発明のインキ検知装置(インキ検知方法)では、検知電極5を回転移動させることで、検知時(検知タイミング)のみ検知電極5とインキ溜り4を接触させ、インキの有無やインキ量を検出するので、検出時以外はインキの流動性を阻害せず、インキ溜りが均一となり、印刷画像に対する影響を少なくすることができる。
また、検知電極5とインキ溜り4の接触の有無による歪ゲージ6の変形を監視することで、使用環境や、インキ自体の特性変化により、静電容量が小さくなった場合でも、検知を正確に実施することができる。
【0063】
さらに、本発明のインキ検知装置(インキ検知方法)では、インキの粘度に応じて、最適な検知電極5を使用することで、インキの流動性を阻害せず、かつ、より大きな歪ゲージ6の変化量を取り出すことが可能となり、検知システムとしての安定化が図れる。
例えば、粘度の小さいインキにおいては、検知電極5の先端をスプーン状とし、検知電極5の回転移動に対して、接触したインキの負荷をより大きなものとする。また、粘度の大きなインキにおいては、検知電極5の先端を櫛歯状とし、接触したインキの負荷をより小さなものとする。このように、インキの粘度に対して最適な検知電極と歪ゲージの変化量とすることで、検知システムの安定化を図ることができる。
【0064】
さらに、本発明のインキ検知装置(インキ検知方法)では、インキ溜り4への検知電極5の進入速度を制御することで、周囲へのインキ飛散を防止すると共に、最適な歪ゲージ6の変化量を取り出すことが可能となり、検知システムとしての安定化を図ることができる。また、インキ溜り4との非接触領域での回転速度を速めることで、検知に要する時間の短縮が可能となり、使用者の待ち時間を短縮することが可能である。
【0065】
このように、本発明のインキ検知装置(インキ検知方法)では、周囲環境の変化や、経時変化によるインキの変質があっても、安定してインキの有無やインキ量を検出することができる。そして本発明のインキ補給装置では、上記のインキ検知装置(インキ検知方法)を用いるので、安定してインキの有無やインキ量を検出することができ、安定したインキの補給を行うことができる。さらに、本発明の印刷装置では、そのインキ補給装置を用いるので、インキ溜りへのインキの過剰補給や補給不足が防止され、安定した画像品質の印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態を示す印刷装置の概略全体構成図である。
【図2】図1に示す印刷装置の版胴と、その内部に設けられたインキ検知装置を有するインキ補給装置の構成例を示す概略断面図である。
【図3】図2に示すインキ補給装置のインキローラとインキ検知装置の側面図である。
【図4】図3と同様のインキ補給装置のインキローラとインキ検知装置の側面図であり、(a)は、インキ溜りのインキが少なく、非検知状態における検知電極の初期待機位置(水平な状態)を示す図であり、(b)は、検知状態における検知電極の回転移動を示す図である。
【図5】図3と同様のインキ補給装置のインキローラとインキ検知装置の側面図であり、検知電極とインキ溜りが接触し、検知電極がモータの回転軸を支点として弾性変形した状態を示す図である。
【図6】本発明のインキ検知装置の検知動作の一実施例を示すタイミングチャートである。
【図7】図2、図3に示す構成のインキ検知装置の検知電極に貼り付ける歪ゲージの一例を示す図である。
【図8】歪ゲージの抵抗変化を電圧に変換する回路の一例を示す図である。
【図9】図1に示す印刷装置の制御系の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1:版胴(版胴ユニット)
1A:インキ供給パイプを兼ねた支軸
1B:クランパ
2:インキローラ(インキ供給部材)
3:ドクターローラ(インキ量規制部材)
4:インキ溜り
5:検知電極
6:歪ゲージ
7:回転機構モータ(回転移動機構)
8(8a,8b,8c):位置センサ
10:印刷部
20:製版部
22:マスタ
30:給紙部
40:印圧手段
41:プレスローラ
50:排紙部
60排版部
70:制御部
71:メインスイッチ
72:操作パネル
100:印刷装置本体
200:画像読取部
300:自動原稿搬送装置(ADF)
S:印刷用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキを供給するインキ供給部材と、該インキ供給部材と所定の隙間を置いて配置され、前記インキ供給部材上のインキ量を規制するインキ量規制部材とを備え、前記インキ供給部材と前記インキ量規制部材との間にインキ溜りが形成されるインキ補給装置に設けられ、前記インキ溜りのインキ量を検知するインキ検知装置において、
前記インキ溜りと対向する位置に配置された検知電極と、該検知電極に貼り付けられた歪ゲージを有することを特徴とするインキ検知装置。
【請求項2】
請求項1記載のインキ検知装置において、
前記検知電極を円弧方向に回転可能な回転移動機構を有することを特徴とするインキ検知装置。
【請求項3】
請求項2記載のインキ検知装置において、
前記回転移動機構により前記検知電極を回転移動させ、前記インキ溜りと接触させることにより、前記検知電極の変形または歪を利用し、前記インキ溜りの適正量を検知することを特徴とするインキ検知装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインキ検知装置おいて、
前記検知電極の先端形状がスプーン状または櫛歯状あるいは板状であることを特徴とするインキ検知装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載のインキ検知装置おいて、
前記回転移動機構は、前記検知電極の回転速度を可変可能な機構を有することを特徴とするインキ検知装置。
【請求項6】
インキを供給するインキ供給部材と、該インキ供給部材と所定の隙間を置いて配置され、前記インキ供給部材上のインキ量を規制するインキ量規制部材とを備え、前記インキ供給部材と前記インキ量規制部材との間にインキ溜りが形成されるインキ補給装置において、前記インキ溜りのインキ量を検知するインキ検知方法であって、
前記インキ溜りと対向する位置に検知電極を配置し、該検知電極に歪ゲージを貼り付けて前記インキ溜りのインキの有無、またはインキ量を検知することを特徴とするインキ検知方法。
【請求項7】
請求項6記載のインキ検知方法において、
前記検知電極を円弧方向に回転可能な回転移動機構を設けたことを特徴とするインキ検知方法。
【請求項8】
請求項7記載のインキ検知方法において、
前記回転移動機構により前記検知電極を回転移動させ、前記インキ溜りと接触させることにより、前記検知電極の変形または歪を利用し、前記インキ溜りの適正量を検知することを特徴とするインキ検知方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載のインキ検知方法おいて、
前記検知電極の先端形状をスプーン状または櫛歯状あるいは板状とすることを特徴とするインキ検知方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか1項に記載のインキ検知方法おいて、
前記回転移動機構により、前記検知電極の回転速度を可変可能とすることを特徴とするインキ検知方法。
【請求項11】
インキを供給するインキ供給部材と、該インキ供給部材と所定の隙間を置いて配置され、前記インキ供給部材上のインキ量を規制するインキ量規制部材とを備え、前記インキ供給部材と前記インキ量規制部材との間にインキ溜りが形成されるインキ補給装置において、
前記インキ溜りのインキの有無またはインキ量を検知する手段として、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインキ検知装置を備えたことを特徴とするインキ補給装置。
【請求項12】
インキを供給するインキ供給部材と、該インキ供給部材と所定の隙間を置いて配置され、前記インキ供給部材上のインキ量を規制するインキ量規制部材とを備え、前記インキ供給部材と前記インキ量規制部材との間にインキ溜りが形成されるインキ補給装置において、
前記インキ溜りのインキの有無またはインキ量を検知する手段として、請求項6乃至10のいずれか1項に記載のインキ検知方法を用いたことを特徴とするインキ補給装置。
【請求項13】
製版されたマスタを巻装する版胴と、該版胴に設けられ版胴内にインキを補給するインキ補給手段と、前記版胴に対して用紙を押圧する押圧手段と、前記版胴と前記押圧手段とが対向する印刷部に用紙を給送する給紙手段とを備え、前記印刷部で前記版胴に巻装されたマスタから用紙にインキを転写して印刷画像を形成する印刷装置において、
前記インキ補給手段として、請求項11または12に記載のインキ補給装置を備えたことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−126466(P2008−126466A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312675(P2006−312675)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】