説明

インクカートリッジ、特にインクジェットプリンタ用のインクカートリッジ

インクカートリッジ(10)は、第一室(17)において自由インク体部(16)を画定し、第二室(18)において毛管体部(15)を画定するインク容器を備え、第二室にはインク排出口(21)が付帯しており、さらに、使用前に取り外し又は引き剥がし可能ないわゆる除去フィルム(25)によって封止されている吸気口(23,24)を介して、使用にあたっては外部環境と連通可能である。吸気口(23,24)は、除去フィルム(25)が引き剥がされたときに、常に毛管体部(15)を画定する室(18)が先に吸気されるように互いに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一室において自由インク体部(free-ink volume)を画定(delimit)し、第二室において毛管体部(capillary volume)を画定するインク容器を備え、第二室にはインク排出口(ink outlet)が付帯しており、さらに使用前に取り外し又は引き剥がし可能なフィルム、或いはいわゆる「除去フィルム」によって封止されている吸気口(air-admission opening)を介して、使用にあたっては両室が外部環境と連通可能であるインクカートリッジ、特にインクジェットプリンタ用のインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の二室型インクカートリッジは一般に知られている。一方の室には液体インクが、他方の室には例えばスポンジ等のインク貯蔵エレメントが充填されている。両室間は流体的に接続しており、当該貯蔵エレメントは、インクがほぼ完全に消費されるまで、付帯するインク排出口に充分なインクを常に供給することができる。インク排出口を通じてインクが排出される際にインクカートリッジ内部の圧力を確実に均一化するために、使用時には両室を外部環境と連通させなければならない。もちろん、インクカートリッジの充填後に、問題の吸気口を封止する必要がある。従来は、これをいわゆる除去フィルムによって行っている。このような除去フィルムは使用前に引き剥がされるが、両室への吸気を正しい順番で行うことが非常に重要である。なぜなら、通気口を開く際に不適切な取り扱いをすると、両室と外部環境との間の圧力が均一化されることが、予期しないインクの噴出を招くからである。
【0003】
従来、この問題は除去フィルムによって解決されてきた。つまり、前述したインクカートリッジの両室に夫々付帯した2つの吸気口まで除去フィルムを延長し、通常はこれらの吸気口をインクカートリッジの上面壁の上で前後に形成し、フィルムに印刷された矢印で除去フィルムの引き剥がし方向を示すことによって解決されてきた。引き剥がし方向が守れられれば、貯蔵室に付帯した吸気口が先に開き、続いて自由インク室に付帯した吸気口が開放される。従って、両室間の圧力均衡の一方で、他方では外部環境との間の圧力均衡が、貯蔵室、すなわち、いわゆる毛管体部を画定する室を介して最初に起こる。この室に貯蔵エレメントがあるために、圧力均衡が確立したときは、貯蔵室に付帯した吸気口からの予期しないインクの噴出を防いでいる。しかし、除去フィルムの引き剥がし方向が守られずに自由インク室に先に吸気されてしまうと、問題の吸気口から予期しないインクが噴出してしまうという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、冒頭に述べた種類のインクカートリッジであって、使用前の予期しないインクの噴出を確実に回避するインクカートリッジを提供するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載の特徴による発明によって解決され、有利な展開及び実施形態は従属項に記載される。
【0006】
本発明の重要な概念は、除去フィルムを引き剥がしたときに、常にインクカートリッジの毛管体部を画定する室が先に吸気されるように、自由インク体部に付帯した吸気口と毛管体部に付帯した吸気口とを互いに配置することである。それゆえ、ユーザが、印刷された矢印や類似の仕様(instruction)に応じて除去フィルムを引き剥がすように配慮する必要はもはやない。従って本発明によれば、引き剥がし方向に関係なく、毛管体部を画定する室に常に先に吸気させることを確実にすることを目的とする。
【0007】
除去フィルムの引き剥がしが一定又は好適な方向のみに許されるのであれば、自由インク体部に付帯した吸気口が毛管体部に付帯した2つの吸気口の間に配置されるように、構成・配置すればよい。なぜなら、インクカートリッジを使用する前に除去フィルムを左から右へ引き剥がすか、又は右から左へ引き剥がすかは重要なことではないからである。
【0008】
除去フィルムの引き剥がし方向に関係なく、必ず自由インク体部を画定する室より先に毛管体部を画定する室に確実に吸気するためは、吸気口の一方を他方の内側に配置して、自由インク体部に付帯した内側の吸気口と、その内側の吸気口を環状に取り囲み、毛管体部に付帯した外側の吸気口とを形成することが好ましい。この場合、毛管体部に付帯する室が圧力均衡のために常に先に開くことが確実になる。これに続く場合のみ、自由インク体部を画定する室へ吸気される。そして、除去フィルムを外す際に圧力が均一化されることによって後者からの予期しないインクの噴出を確実に防止する。
【0009】
取扱いに関しても製造に関しても特にシンプルな実施形態では、吸気口とインク排出口を共に除去フィルムによって封止することを特徴とする。この場合、これら全ての開口部分に必要な除去フィルムは一枚でよい。この特別な実施形態の場合、本発明に基づく吸気口の構成と配置は非常に重要である。なぜならば、除去フィルムが吸気口から引き剥がされるか、インク排出口から引き剥がされるかどうかが問題ではなくなるからである。いずれの場合であっても、毛管量を画定する室に確実に先に吸気される。
【0010】
インクカートリッジの好適な実施形態は、4つの側壁、1つの底面壁及び1つの上面壁を備え、インク排出口が底面壁又は側壁の底部近傍に配置されている。吸気口は上面壁に配置されるが、インク排出口からできるだけ短い間隔、すなわち、インク排出口がある方の側壁、又はインク排出口がある底面壁の面に隣接する側壁にできるだけ近接することが好ましい。
【0011】
以下、本発明に基づいて構成されたインクカートリッジの実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に基づいて構成したインクカートリッジの斜め上方からの斜視図である。
【図2】図1のインクカートリッジの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び2に概略的に記載されたインクカートリッジを符号10で示す。このインクカートリッジは4つの側壁、より詳細には互いに対向する2つの平面側壁11及び互いに対向する2つの端面側壁12と、同様に上面壁13及び底面壁14をそなえる。上面壁13は別個の蓋体によって形成され、この蓋体は、毛管体部15を画定するインク貯蔵エレメントがインクカートリッジ内に装着された後、インクカートリッジ側壁の上縁に接着又は溶着される。毛管体部15を画定するインク貯蔵エレメントは、開孔発泡材又は繊維材で構成される。このこと自体は周知の手段なので、ここでの詳細な説明は必要ではない。前述の毛管体部を画定する室18は、もう一つの室17と底部近傍の流路19を介して流体的に接続しており、その際に室17はいわゆる自由インク体部16を画定する。つまり、この室17が液体インクを含んでいる。2つの室17及び18はカートリッジの内部で隔壁20によって互いに隔てられており、さらに、隔壁20の下方端部、すなわち底部近傍の端部に前述の流路19が位置する。この流路19を通って、毛管体部15は室17からインクの供給を受ける。毛管体部15に付帯するインク排出口21が底面壁14に設けられている。このインク排出口21を通って、カートリッジからインクジェットプリンタのプリントヘッドにインクが供給される。
【0014】
図2の符号22に示される、いわゆる気泡発生器(bubble generator)が上面壁13から室17内部に向かって突き出している。
【0015】
以下、室17を第一室、室18を第二室と呼ぶこととする。
【0016】
両室17,18には、吸気口23,24が付帯しており、インクカートリッジ10の使用にあたって、これらの吸気口を介して外部環境との連通を果たしている。これにより、両室間の圧力が均一化されると同時に外部環境との間においても圧力が均一化されることによって、インク排出口21を通じて確実にインクを供給することが可能となる。使用前には、両吸気口は取り外し又は引き剥がし可能ないわゆる除去フィルム25によって封止されている。実施形態に記載の通り(図1参照)、両吸気口23,24は、その一方を他方の内側に配置して、自由インク体部16、すなわち第一室17に付帯する内側の吸気口23と、内側の吸気口23を環状に取り囲み、毛管体部15、すなわち第二室18に付帯する外側の吸気口24とを形成する。例えば図1のように、除去フィルム25が引き剥がされると、毛管体部15に付帯した吸気口24が確実に常に先に開放される。従って、毛管体部15を画定する第二室18に最初に吸気される。次いで、自由インク体部16を画定する室17への吸気だけが行われる。吸気口23を介して既に圧力が均一化されているので、この開口からの予期しないインクの噴出はもはやない。
【0017】
実施形態に示した通り、吸気口23,24及びインク排出口21は、共に除去フィルム25によって封止されている。これに関して、除去フィルムはいわば2つの機能を果たしている。
【0018】
既述の通り、吸気口23,24は、上面壁13に配設され、実施形態に示した通り、インク排出口21に略対向するように配設されている。
【0019】
当然ながら、吸気口23,24は上面壁13上に形成されたチャネル(channel)を介して前述の2つの室17,18と連通している。図1にこれらのチャネルを破線で示す。吸気口23は第一チャネル26及び開口27を介して第一室17に連通しており、この開口27は第一室17まで達している。一方で、吸気口24は第二チャネル28及び開口29を介して第二室18に連通しており、この開口29は第二室まで達している。
【0020】
その他には、前述の開口27は前述の気泡発生器の一部分であり、この気泡発生器を使って、自由インク体部16を画定する第一室17内の圧力の均一化が達成される。その際、外側から流れ込む空気が、気泡発生器22を介して気泡として(bubblewise)第一室17に取り込まれる。ここで、気泡発生器22の下端に対応する開口がスリット状に形成される。この開口は大変小さいものであって、気泡は自由インク内に入り込むが、自由インクは容易に外部に漏出することはない。
【0021】
対応するグリップタブ30を画定するために、除去フィルム25はまた、吸気口23,24上でさらに後方に折り畳まれる。従って、ユーザは、最初に前述のグリップタブで除去フィルムを摘み、その位置から引き剥がすと、それと同時に、上記に説明した方法によって吸気口23,24を開くことができる。これに引き続き、インク排出口21が開く。しかしながら、除去フィルム25をインク排出口21から引き剥がし始めることも同等に考えられ、実際上は除去フィルム25がインク排出口21を越えてわずかにはみだす。
【0022】
本出願書類に開示された全ての特徴は、それらが単独で新規である限り、又は先行技術に対して新規である限り、本発明にとって重要であることを主張する。
【符号の説明】
【0023】
10 インクカートリッジ
11 平面側壁
12 端面側壁
13 上面壁
14 底面壁
15 毛管体部
16 自由インク体部
17 第一室
18 第二室
19 流路
20 隔壁
21 インク排出口
22 気泡発生器
23 第一室(自由インク体部)用吸気口
24 第二室(毛管体部)用吸気口
25 除去フィルム
26 第一吸気チャネル
27 第一室17に流入する開口
28 第二吸気チャネル
29 第二室に流入する開口
30 グリップタブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一室(17)において自由インク体部(16)を画定し、第二室(18)において毛管体部(15)を画定するインク容器を備え、前記第二室にはインク排出口(21)が付帯しており、さらに使用前に取り外し又は引き剥がし可能ないわゆる除去フィルム(25)によって封止されている吸気口(23,24)を介して、使用にあたっては外部環境と連通可能であるインクカートリッジ、特にインクジェットプリンタ用のインクカートリッジであって、
前記吸気口(23,24)は、前記除去フィルム(25)が引き剥がされたときに、常に前記毛管体部(15)を画定する前記室(18)が先に吸気されるように互いに配置されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記吸気口(23,24)が、好適な引き剥がし方向に対して、前記自由インク体部(16)に付帯した吸気口が前記毛管体部(15)に付帯した2つの吸気口の間に配置されるように構成・配置されることを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記吸気口(23,24)はその一方を他方の内側に配置して、前記自由インク体部(16)に付帯した内側の吸気口(23)と、該内側の吸気口(23)を環状に取り囲み、前記毛管体部(15)に付帯した外側の吸気口(24)とを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記吸気口(23,24)及び前記インク排出口(21)は、前記除去フィルム(25)によって共に封止可能であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
4つの側壁(11,12)、1つの底面壁(14)及び1つの上面壁(13)を備え、
前記インク排出口(21)が底面壁(14)又は側壁(12)の底部近傍に配置され、前記吸気口(23,24)が、前記インク排出口(21)からできるだけ短い間隔で前記上面壁(13)上に配置されること特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のインクカートリッジ。















【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−502834(P2011−502834A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533611(P2010−533611)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065722
【国際公開番号】WO2009/065813
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(508236114)ペリカン ハードコピー プロダクション アーゲー (9)
【Fターム(参考)】