説明

インクカートリッジおよびインク袋ユニット

【課題】インク残量が少なくなった場合にも、残存するインクを口栓へ向けて集めることが可能なインクカートリッジを提供する。
【解決手段】インクカートリッジ1は、ケース2と、ケース2に収容されたインクパック7を含む。インクパック7は、インク袋71と、インク袋71に設けられた口栓72を含む。ケース2は、口栓72の軸線Xに対して斜めに配置された斜面部332と、口栓72の先端部を臨むように斜面部332に設けられた貫通部338を有する。インクパック7は、軸線Xを含み、且つ斜面部332と直角を成す仮想的な平面に対して、インク袋71を形成するシートの面が略平行に延びるように、ケース2に収容されている。口栓72の先端部は、斜面部332の外面よりもケース2の内側方向に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを収容するインク袋とインク袋を収容するケースとを備えたインクカートリッジ、およびインク袋を備えたインク袋ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)は、印字ヘッドにインクを供給するためのインクカートリッジを着脱可能に構成されている。一般的なインクカートリッジとして、内部にインクを収容する可撓性を有するインク袋と、インク袋に連結して設けられたインクを取り出すための口栓と、インク袋を収容する直方体形状のケースとを備えたインクカートリッジが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−240131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のインクカートリッジによれば、インク袋が可撓性を有するため、印字中にインクの残量が少なくなると、インク袋の内面同士が接してしまい、インクが分断されてしまうことがある。即ち、インクの一部は口栓まで到達せず、やはりインク収容パック内に残存してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、インク残量が少なくなった場合にも、残存するインクを口栓へ向けて集めることが可能なインクカートリッジおよびインク袋ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るインクカートリッジは、インク袋と、口栓と、ケースとを備えている。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する。前記ケースは、前記インク袋を収容し、前記口栓の軸方向に対して斜めに配置された面部である斜面部と、前記第2開口を臨むように前記斜面部に設けられた貫通部を有する。前記インク袋は、前記口栓の軸線を含み、且つ前記斜面部と直角を成す仮想的な平面に対して、前記2層のシートの各々のシート面が略平行に延びるように前記ケースに収容されている。前記口栓の前記第2開口の側の先端部は、前記斜面部の外面よりも前記ケースの内側方向に位置する。
【0007】
第1の態様に係るインクカートリッジでは、インク袋を収容するケースに、口栓の軸方向に対して斜めに配置された斜面部が設けられている。インク残量が少なくなった場合、ユーザは、斜面部が机上等の略水平な面と接するようにインクカートリッジを載置して保持する。すると、インクカートリッジは、安定して水平方向に対して傾斜した状態となる。口栓の第2開口の側の先端部は、斜面部の外面よりもケースの内側方向に位置するので、斜面部が面に接する際、干渉することがない。斜面部が略水平な場合、インク袋を形成する2層のシートのシート面は、ほぼ上下方向に沿って延びるように配置された状態となる。従って、インク袋中に残存するインクは、シート面を伝い、また、傾斜した端部に沿って口栓に向かって流れる。このように、残存するインクを口栓へ向けて集めることができる。しかも、斜面部を机上等に載置して容易に傾斜した状態で保持できるので、インクカートリッジを空中で傾斜させた状態で把持するよりも力が要らず、ユーザの利便性が高い。
【0008】
本発明の第2の態様に係るインクカートリッジは、インク袋と、口栓と、ケースとを備えている。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する。前記ケースは、前記インク袋を収容し、収容された前記インク袋の前記口栓の軸方向を長手方向とする。前記ケースは、前記口栓の前記軸方向に対して斜めに配置された面部である斜面部と、前記口栓の前記第2開口を臨むように前記斜面部に設けられた貫通部とを少なくとも備えている。前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記軸線に直交する方向における前記ケースの一端部寄りに位置し、且つ、前記軸線を含み、且つ前記斜面部と直角を成す仮想的な平面に対して、前記2層のシートの各々のシート面が略平行に延びるように前記ケースに収容されている。前記口栓の軸線と、前記ケースの前記一端部に向かう方向の前記斜面部とは鋭角を成す。前記口栓の前記第2開口の側の先端部は、前記斜面部の外面よりも前記ケースの内側方向に位置する。
【0009】
第2の態様に係るインクカートリッジでは、インク袋を収容するケースに、口栓の軸方向に対して斜めに配置された斜面部が設けられている。インク残量が少なくなった場合、ユーザは、斜面部が机上等の略水平な面と接するようにインクカートリッジを載置して保持する。すると、インクカートリッジは、安定して水平方向に対して傾斜した状態となる。口栓の第2開口の側の先端部は、斜面部の外面よりもケースの内側方向に位置するので、斜面部が面に接する際、干渉することがない。斜面部が略水平とされると、インク袋を形成する2層のシートのシート面は、ほぼ上下方向に沿って延びるように配置された状態となる。従って、インク袋中に残存するインクは、シート面を伝い、また、傾斜した端部に沿って口栓に向かって流れる。また、口栓の軸線は、軸線に直交する方向におけるケースの一端部寄りの位置にあり、且つ、軸線と、その一端部に向かう方向の斜面部とは鋭角を成すので、斜面部が略水平とされると、口栓は載置面により近い位置に配置される。従って、口栓の第1開口の近くにインクが集まりやすい。しかも、斜面部を机上等に載置して容易に傾斜した状態で保持できるので、インクカートリッジを空中で傾斜させた状態で把持するよりも力が要らず、ユーザの利便性が高い。
【0010】
第2の態様のインクカートリッジにおいて、前記口栓の前記軸線が、前記軸線に直交する方向における前記インク袋の一端部寄りの位置にあり、前記軸線を境として、前記ケースの前記一端部側の前記インク袋の幅が、前記ケースの他端側の前記インク袋の幅よりも狭くてもよい。この場合、斜面部を接触面としてインクカートリッジを置くと、前記軸線を境として、前記軸線方向に直交する方向に関し、口栓がある側のインク袋の幅が、反対側のインク袋の幅よりも狭いので、口栓の第1開口の近くにインクが集まりやすい。
【0011】
第1の態様および第2の態様のインクカートリッジにおいて、前記ケースは、前記斜面部に連続して形成された面部を少なくとも1つ備えてもよい。このように、斜面部に連続して1以上の面部を設けることで、ケース全体の強度を向上することができる。
【0012】
第1の態様および第2の態様のインクカートリッジにおいて、前記ケースは、前記斜面部に連続して形成された、前記口栓を前記斜面部に固定するための固定部を備えてもよい。この場合、斜面部に対する口栓の固定位置を調整する必要がなく、確実に正確な位置に固定できる。
【0013】
第1の態様および第2の態様のインクカートリッジにおいて、前記ケースは、前記口栓の前記軸方向を長手方向として前記斜面部に連続して形成された面部であって、前記ケースの外側方向に突出する部位である突起部を有する側面部を備えてもよい。そして、前記貫通部は、前記斜面部の前記突起部に連続する部分に設けられ、前記口栓は、前記突起部の内側に配置されていてもよい。この場合、斜面部を下にして傾斜した状態から、突起部を下にしてインクカートリッジが倒れても、突起部によって、倒れたインクカートリッジの下に隙間が生じ、ユーザがインクカートリッジを拾い上げやすい。また、突起部を上にしてインクカートリッジが倒れた場合、突起部を指でつまんだり、突起部に指を引っ掛けて移動したりでき、インクカートリッジの取扱いの自由度が向上する。
【0014】
第1の態様および第2の態様のインクカートリッジにおいて、前記ケースは、各々が前記口栓の前記軸方向を長手方向として前記斜面部に連続して形成され、且つ、互いに対向する一対の側面部を備えてもよい。そして、前記一対の側面部の互いに対向する位置に、一対の凹部が設けられていてもよい。ユーザは、一対の凹部に指を引っ掛けて滑り止めとすることができるので、インクカートリッジを安定して傾斜した状態で保持することができる。
【0015】
第1の態様および第2の態様のインクカートリッジにおいて、前記インクは、顔料を含有する顔料系インクであってもよい。顔料系インクは、インク中の顔料が沈殿する恐れがあるとして、インクカートリッジが振られ、インクが攪拌されると、インクがインク袋内の広範囲において点在してしまう。このような場合でも、斜面部を用いてインクカートリッジを傾斜した状態として残存するインクを口栓に向けて集められ、インクが無駄にされることが軽減される。
【0016】
更に、前記顔料系インクは、酸化チタンを含有していてもよい。顔料系インクの中でも特に、酸化チタンを含有する白インクでは、酸化チタンが沈殿しやすい。そのため、頻繁にインクカートリッジが振られて、インクが攪拌される恐れがある。その場合、斜面部を用いてインクカートリッジを傾斜した状態として残存するインクを口栓に向けて集められ、インクが無駄にされることが軽減される。
【0017】
第1の態様および第2の態様のインクカートリッジにおいて、前記インクは、エマルションを含有してもよい。エマルションを含有するインクは、エマルションを含有しないインクと比べた場合、粘度が高い。よって、インクカートリッジを傾斜させてもインクは移動しにくいので、インクを下方に集めるのに時間がかかる。机上等の面に斜面部を載置してインクカートリッジを傾斜した状態として容易に保持できるので、空中で長い時間もっている場合などに比べて、特に効果がある。
【0018】
更に、エマルションを含有する前記インクは、顔料を含有してもよい。顔料系インクは、インク中の顔料が沈殿する恐れがあるとして、インクカートリッジが振られ、インクが攪拌されると、インクがインク袋内の広範囲において点在してしまう。このような場合でも、斜面部を用いてインクカートリッジを傾斜した状態として残存するインクを口栓に向けて集められ、インクが無駄にされることが軽減される。
【0019】
本発明の第3の態様に係るインク袋ユニットは、インク袋と、口栓と、板状部材とを備えている。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する。前記板状部材は、第1面および前記第1面の裏面である第2面、ならびに鈍角を成す2つの辺を有し、前記第1面に前記インク袋の前記2層のシートの一方の外面が固定されている。また、前記インク袋は、前記2つの辺のうち一方である第1辺に対して前記口栓の軸線が略平行になるように、且つ、前記口栓の前記第2開口が前記2つの辺の他方である第2辺の近傍に位置するように、前記板状部材に固定されている。前記口栓の前記第2開口の側の先端部は、前記第2辺よりも前記板状部材の外方に突出しない。
【0020】
第3の態様のインク袋ユニットでは、鈍角を成す2つの辺(第1辺および第2辺)を有する板状部材の一面(第1面)に、第1辺に対して口栓の軸線が略平行になるように、且つ、口栓の第2開口が第2辺の近傍に位置するように、インク袋が固定されている。インク袋中にインク残量が少なくなった場合、ユーザは、インク袋ユニットの第2辺が机上等の略水平な面と接するように載置して保持する。インク袋ユニットは、安定して水平方向に対して傾斜した状態となるので、インク袋中に残存するインクは、口栓に向かって流れる。このように、残存するインクを口栓へ向けて集めることができる。しかも、第2辺を机上等に載置して容易に傾斜した状態で保持できるので、インク袋ユニットを空中で傾斜させた状態で把持するよりも力が要らず、ユーザの利便性が高い。
【0021】
第3の態様のインク袋ユニットにおいて、前記口栓の前記軸線は、前記軸線に直交する方向において前記板状部材の前記第1辺寄りに位置してもよい。この場合、口栓は、第1辺と第2辺が鈍角を成す角部寄りに配置されるので、口栓の第1開口の近くにインクが集まりやすい。
【0022】
第3の態様のインク袋ユニットは、前記板状部材の前記第2辺に接続し、前記インク袋が固定されている側に延びる面部と、前記インク袋の前記第2開口を臨むように前記面部に設けられた貫通部とを更に備えてもよい。そして、前記口栓の前記第2開口の側の前記先端部は、前記面部よりも外方に突出しないとよい。この場合、第2辺に接続する面部を略水平な面に載置して、より安定して水平方向に対して傾斜した状態でインク袋ユニットを保持することができる。
【0023】
第3の態様のインク袋ユニットは、前記第2辺に接続する前記面部と前記板状部材の前記第1面の少なくとも一部が鈍角をなしていてもよい。この場合、面部を略水平な面に載置すると、板状部材の第1面の少なくとも一部は斜め上方を向いて傾斜した状態となる。よって、インク袋が第1面に固定されていても、その固定部分に対する負荷が軽減され、固定部分が破損する可能性を低減することができる。
【0024】
本発明の第4の態様に係るインクカートリッジは、インク袋と、口栓と、第1面部と、第2面部と、第3面部とを備えている。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する。前記第1面部は、前記2層のシートのうち一方に対向し、前記口栓の軸線方向に沿って伸展する。前記第1面部の前記軸線方向における前記第2開口側の辺は、前記軸線方向において前記第2開口よりも前記第1開口から離間した位置から、前記第2開口よりも接近した位置に亘って形成されている。前記第2面部は、前記2層のシートのうち他方に対向するとともに前記インク袋を挟んで前記第1面部に対向し、前記軸線方向に沿って伸展する。前記第2面部の前記軸線方向における前記第2開口側の辺は、前記軸線方向において前記第2開口よりも前記第1開口から離間した位置から、前記第2開口よりも接近した位置に亘って形成されている。前記第3面部は、前記第1面部および前記2側面部よりも狭い面積を有し、前記第1面部の前記軸線方向の前記第2開口側の前記辺と、前記第2面部の前記軸線方向の前記第2開口側の前記辺に沿って、前記軸線方向に斜めに交差し、前記軸線方向において前記第2開口よりも前記第1開口から離間している。前記口栓の前記第2開口の側の先端部は、前記第3面部よりも外方に突出しない。
【0025】
第4の態様のインクカートリッジでは、口栓の軸線方向に沿って対向する第1面部と第2面部との間にインク袋が配置されている。第1面部と第2面部の軸線方向における第2開口側の辺は、夫々、軸線方向において口栓の第2開口よりも第1開口から離間した位置から、第2開口よりも接近した位置に亘って形成されている。そして、第3面部は、これらの辺に沿って、口栓の軸線方向に斜めに交差する。よって、インク残量が少なくなった場合、ユーザは、第3面部が机上等の略水平な面と接するようにインクカートリッジを載置して保持する。インクカートリッジは、安定して水平方向に対して傾斜した状態となるので、インク袋中に残存するインクは、口栓に向かって流れる。このように、残存するインクを口栓へ向けて集めることができる。しかも、第3面部を机上等に載置して容易に傾斜した状態で保持できるので、インクカートリッジを空中で傾斜させた状態で把持するよりも力が要らず、ユーザの利便性が高い。また、インク袋は第1面部と第2面部との間に配置されているので、インク袋の姿勢を安定した状態で保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】インクジェットプリンタ100の概略構成の模式図である。
【図2】第1実施形態に係るインクカートリッジ1を右後方から見た斜視図である。
【図3】ケース2の分解斜視図である。
【図4】蓋部4が取られた状態のインクカートリッジ1を左側面側から見た状態を示す説明図である。
【図5】インクカートリッジ1の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図6】インク供給時のインクカートリッジ1の口栓72周辺部の拡大部分断面図である。
【図7】インクカートリッジ1を傾斜させてインクを集める過程を示す説明図である。
【図8】インクカートリッジ1を傾斜させてインクを集める過程を示す別の説明図である。
【図9】インクカートリッジ1を傾斜させてインクを集める過程を示す更に別の説明図である。
【図10】固定部381、382が設けられたインクカートリッジ1の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図11】固定部383が設けられたインクカートリッジ1の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図12】変形例に係るインクカートリッジ11を右後方から見た斜視図である。
【図13】別の変形例に係るインクカートリッジ12を右後方から見た斜視図である。
【図14】インクカートリッジ12を左後方からみた斜視図である。
【図15】インクカートリッジ12の背面図90度面図である。
【図16】図15の矢視方向断面図である。
【図17】第2実施形態に係るインクパックユニット201を含むインクカートリッジ20の分解斜視図である。
【図18】支持板部材40の右側面図である。
【図19】インクパックユニット201を右側面側から見た状態を示す説明図である。
【図20】インクパックユニット201を傾斜させてインクを集める過程の説明図である。
【図21】変形例に係るインクパックユニット501を含むインクカートリッジ50の分解斜視図である。
【図22】インクパックユニット501を右側面側から見た状態を示す説明図である。
【図23】斜面部332を用いて傾斜させた状態の別の変形例に係るインクパックユニット601を正面側から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、単なる説明例である。
【0028】
<第1実施形態>
本実施形態では、Tシャツ等の布帛に印刷を行うインクジェットプリンタ100に使用されるインクカートリッジ1について説明する。まず、図1を参照して、インクジェットプリンタ100について説明する。インクジェットプリンタ100は、インクカートリッジ1から供給されたインクを用いて、印字ヘッド114により印刷媒体である布帛に印刷を行うことが可能な公知のプリンタである。よって、インクジェットプリンタ100の構成については簡単に説明する。なお、図1の上下方向、左右方向、および左下方向が、夫々、インクジェットプリンタ100の上下方向、左右方向および正面側、並びにインクカートリッジ1の上下方向、左右方向および正面側である。
【0029】
インクジェットプリンタ100は、矩形箱状の筐体101を有する。筐体101の内部の左右方向略中央下部に、一対のガイドレール102が前後方向に延びている。プラテン支持台103は、ガイドレール102により、ガイドレール102に沿って前後方向に移動可能に支持されている。プラテン支持台103上面の左右方向略中央には、取り換え可能なプラテン104が固定されている。プラテン104は、平面視略五角形の板体であり、その上面に、例えばTシャツなどの布帛を載置するためのものである。詳細は図示しないが、プラテン104が固定されたプラテン支持台103は、プラテン駆動モータやベルト伝達機構を含むプラテン駆動機構により、ガイドレール102に沿って前後方向に移動される。
【0030】
筐体101の前後方向略中央、且つ、プラテン104の上方には、一対のガイドレール112が左右方向に延びている。キャリッジ113は、ガイドレール112によって、ガイドレール112に沿って左右方向に移動可能に支持されている。キャリッジ113の下部には印字ヘッド114が固定されている。詳細は図示しないが、印字ヘッド114を備えたキャリッジ113は、キャリッジ駆動モータやベルト伝達機構を含むキャリッジ駆動機構によって、ガイドレール112に沿って左右方向に移動される。印字ヘッド114には、チューブ142(図6参照)を介して、筐体101内に設けられたカートリッジ装着部(図示略)にセットされたインクカートリッジ1からインクが供給される。印字ヘッド114の底面には複数個の微細なノズルが設けられており、圧電素子の駆動によりノズルから下向きにインクの液滴が吐出されることで、プラテン104上に載置された布帛に印刷が行われる。
【0031】
筐体101内のカートリッジ装着部には、8個のインクカートリッジ1がセット可能である。筐体101前面の右下部には、インクカートリッジ1をインク収容部に着脱するための開口であるカートリッジ挿入口120が8個設けられている。なお、本実施形態のインクジェットプリンタ100では、白インクのインクカートリッジ1が4個と、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの4色のインクカートリッジ1が1個ずつ使用される。インクカートリッジ1からインクジェットプリンタ100へのインク供給方法については後述する。
【0032】
図1〜図5を参照して、本実施形態のインクカートリッジ1の構成について説明する。図1〜図4に示すように、インクカートリッジ1は、前後方向に長い薄型略矩形箱状のケース2と、ケース2に収容されたインクパック7とを備えている。以下に、ケース2とインクパック7の詳細な構成について、順に説明する。なお、白、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの5色のインクカートリッジ1は、インクパック7に収容される液体のインクの色が異なるのみで、ケース2とインクパック7の構成は全て同じである。
【0033】
図3に示すように、ケース2は、本体部3および蓋部4を含む。本体部3は、ケース2の右側面、底面、上面、背面および前面を夫々形成する薄板状の右壁30、底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34を含む。右壁30は、インクカートリッジ1を側面視した場合、すなわち、右壁30の最大面積部(図3で示された面のうち最も広い面)に直交する方向から見て五角形状であり、前後方向に長い長方形の直角を成す4つの角のうち、後ろ側の下にある角を含む角部が斜めに切り取られたような形状を有する。つまり、右壁30は、側面視で、前後方向に延びる2つの平行に対向する長辺、上下方向に延びる2つの平行に対向する短辺、および、短い方の長辺と短い方の短辺とを繋ぐ斜辺とを有する。
【0034】
底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34は、夫々、右壁30に対して略垂直に、同一方向に同一の長さで延びている。底壁31は、右壁30の下端部、つまり一対の長辺のうち短い方に接続している。上壁32は、右壁30の上端部、つまり長い方の長辺に接続している。後壁33は、背面部331および斜面部332を含む。背面部331は、右壁30の後端部、つまり一対の短辺のうち短い方に接続する。斜面部332は、右壁30の斜辺に接続し、底壁31と背面部331とを繋ぐ。斜面部332には、斜面部332が底壁31と接続する端部の近傍に、斜面部332を貫通する開口である貫通部338が設けられている。前壁34は、右壁30の前端部、つまり長い方の短辺に接続し、底壁31と上壁32とを繋ぐ。
【0035】
上壁32と背面部331、上壁32と前壁34、および底壁31と前壁34とは、夫々、直角を成すように接続している。一方、斜面部332と底壁31とが成す角、および斜面部332と背面部331とが成す角は、夫々、鈍角である。以下では、底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34を総称する場合、周壁31〜34という。
【0036】
右壁30に対向し、ケース2の左側面を形成する蓋部4は、本体部3の右壁30に対応した形状を有する薄板状の部材である。つまり、蓋部4は、インクカートリッジ1を側面視した場合、すなわち、蓋部4の最大面積部(図3で示された面のうち最も広い面)に直交する方向から見て五角形状であり、前後方向に長い長方形の直角を成す4つの角のうち、後ろ側の下にある角を含む角部が斜めに切り取られたような形状を有する。蓋部4が本体部3に接合されて、ケース2が形成される。蓋部4を本体部3に接合する方法は特に限定されない。図示はしないが、例えば、本体部3と蓋部4に、夫々、係合孔と係合ピンとを設け、係合ピンを係合孔に挿入することで、蓋部4を本体部3に接合してもよい。係合ピンではなく、係合フックと係合孔を用いて接合してもよい。本体部3と蓋部4とを溶着により固定しても良い。
【0037】
図4に示すように、インクパック7は、ケース2内の周壁31〜34により囲まれた領域に収容される。インクパック7は、インク袋71と、インク袋71に設けられた口栓72を備えている。本実施形態のインク袋71は、可撓性を有する2枚の長方形状の樹脂性シートを、シートの一面同士が対向した状態で重ね合わせ、4辺に沿った周囲部716を熱溶着(熱シール)することで形成された袋状の容器である。インクは、周囲部716に囲まれた空間であるインク収容部717の内部に収容される。インク収納部717は、シート面、即ち、その最大面積部(図4で示された面のうち最も広い面)に略直交する方向から見て略長方形であり、ケース2の内面に沿って伸展している。
【0038】
なお、インク袋71は、対向配置された可撓性を有する2層のシートを含み、シート間にインクを収容可能な空間が形成された袋状の容器であればよい。よって、例えば、1枚の長方形状のシートを半分に折曲げて2層とし、折曲げ部以外の3辺に沿って2層を接合することでインク袋71を形成してもよい。また、対向する2枚のシートの3辺に沿って2枚を接合し、各シートの残る1辺を別のシートと接合して、底部を有するインク袋71としてもよい。対向する2枚のシートの4辺が、夫々、マチとなる別のシートと接合されたインク袋71であってもよい。更に、シートの接合方法は溶着に限られず、例えば、接着等の他の方法を用いてもよい。
【0039】
図4および図5に示すように、口栓72は、円筒状の本体部721と、本体部721の一端側において外周面から互いに反対方向に突出する2つの羽根状の連結部722とを備えている。口栓72は、本体部721(より詳細には、後述する中空部700)の軸線Xがインク袋71の長手方向と略平行になるように、インク袋71に設けられている。また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向(インク袋71の短手方向)におけるインク袋71の一端部寄りに位置する。本実施形態では、口栓72は、インク袋71の4つの角部のうち1つの近傍に設けられている。以下では、軸線X方向に直交する方向に位置するインク袋71の2つの端部のうち、軸線Xにより近い方を第1端部711、軸線Xからより遠い方を第2端部712という。また、軸線X方向(インク袋71の長手方向)に位置するインク袋71の2つの端部のうち、口栓72が設けられている方を第3端部713、他方を第4端部714というものとする。
【0040】
本実施形態では、口栓72は、連結部722を含む本体部721の一端部が、インク袋71を形成する2枚のシートの間に挿入され、周囲部716と一体的に溶着されることで、インク袋71に固定されている。周囲部716と溶着されていない本体部721の他端部は、インク袋71の第3端部713からインク袋71の外方へ突出している。
【0041】
本体部721は、外周に沿って設けられた2つのフランジ727、728を有する。また、本体部721は、その内部に中空部700を有する。中空部700は、インク袋71のインク収容部717に連通する第1開口701から、インク袋71の外部に開口する第2開口702まで通じている。中空部700の第2開口702側の端部には、円柱状のゴム栓723が挿入されており、第2開口702はゴム栓723で塞がれている。このように、インクは、密閉状態のインク収容部717内に収容されている。なお、口栓72は、中空部700によってインク収容部717と外部とが通じるようにインク袋71に設けられていればよく、その固定方法は溶着に限られない。よって、例えば、口栓72は、インク袋71と一体的に形成されていてもよい。
【0042】
図4および図5を参照して、ケース2とインクパック7との配置関係の詳細について説明する。図4に示すように、インクパック7は、口栓72の軸線Xがケース2の長手方向と略一致するように、ケース2に収容される。また、インクパック7は、口栓72の軸線Xを含み、且つ、斜面部332の外面333(図5参照)と直角を成す仮想的な平面に対して、インク袋71を形成する2層のシートが略平行に延びるように、ケース2に収容されている。よって、本実施形態では、2層のシートの外面は、夫々右壁30および蓋部4の内面に対向して延びる。インク収容部717を形成する2層のシートのうち一方の外面は、右壁30および蓋部4のうち対向する一方の内面に貼り付けられていてもよい。
【0043】
なお、インク袋71を形成するシートは可撓性を有するため、インク収容部717中に収容されたインクの残量が多ければ、2層のシートは互いに離れる方向に湾曲し、残量が少なければ、2層のシート間の距離が狭まって互いに接触する方向に撓む。つまり、シートは固定された平面ではないので、上記の仮想平面と厳密には平行にならない。よって、上記の仮想平面との関係でいう「略平行」とは、平面同士の厳密な平行関係のみならず、シートの撓みを許容した平行に近い状態をも含む。
【0044】
また、例えば、ケース2の本体部3、つまり、右壁30と周壁31〜34とが樹脂で一体成形される場合には、一般的に、金型のキャビティからの離型を容易にするために、所謂「抜き勾配」が設けられる。この場合、右壁30と周壁31〜34の各々とは、直角より2〜4度程度広い鈍角を成す。よって、前述のように、インク袋71のシートの外面が、右壁30の内面に貼り付けられた場合、上記の仮想平面とシートとは、厳密には平行にならない。しかし、上記の撓みの許容と同様に、抜き勾配程度の角度の差異がある場合も、上記仮想平面とシートとは「略平行」であるとみなすことができる。
【0045】
口栓72は、ケース2との関係では、軸線Xが、軸線Xに直交する方向におけるケース2の一端部寄りに位置するように設けられる。なお、以下では、軸線Xに直交する方向におけるケース2の端部のうち、口栓72が配置されている側の端部を、口栓側端部というものとする。本実施形態では、前述したように、軸線Xはケース2の長手方向と略一致し、ケース2の底壁31および上壁32に対して略平行である。よって、軸線Xに直交する方向におけるケース2の端部とは、底壁31側の端部および上壁32側の端部である。本実施形態では、図4に示すように、口栓72は、これらの端部のうち、底壁31側の端部近傍に配置されているので、底壁31側の端部が口栓側端部である。
【0046】
更に、ケース2の斜面部332(より詳細には、外面333)は、口栓72の軸線Xに対して斜めに配置されている。図5に示すように、ケース2内側で軸線Xと、口栓側端部に向かう外面333とが成す角θ1は、90度より小さい鋭角であり、ケース2内側で軸線Xと、口栓側端部とは反対方向に向かう外面333とが成す角θ2は、90度より大きい鈍角である。具体的には、軸線X上の1点(例えば、軸線Xと第2開口702の開口面との交点)を点P、軸線Xと斜面部332の外面との交点を点Q、点Qよりも口栓側端部にある外面333へ点Pから下ろした垂線が外面333と交わる点を点Rとする。このときの角PQRが、角θ1に相当する。図4に示すように、軸線Xを境として、ケース2の口栓側端部側(底壁31側)のインク袋71の幅W1(軸線Xと第1端部711との距離)は、反対側(上壁32側)のインク袋71の幅W2(軸線Xと第2端部712との距離)よりも狭い。
【0047】
また、図5に示すように、貫通部338は、斜面部332において口栓72の第2開口702を臨む位置に設けられている。つまり、貫通部338は、口栓72の軸線X上に位置する。よって、実際には、貫通部338があるために、軸線Xと斜面部332の外面333との交点Qは存在しないが、前述の軸線Xと外面333との角度の関係は、貫通部338がないと仮定して交点Qを規定するものである。また、前述したように、第2開口702はゴム栓723で塞がれているので、実際には、貫通部338はゴム栓723に臨むことになる。
【0048】
図5に示すように、ゴム栓723の先端部、すなわち、口栓72の第2開口702側の先端部724は、斜面部332の外面333よりもケース2の内側方向に位置する。先端部724は、斜面部332の内面(図5における右面)に対して軸線X方向において隙間をあけて位置し、斜面部332と先端部724の間(図5における先端部724の下方)を、インクが移動可能となっている。なお、本実施形態では、先端部724は斜面部332の内面よりも内側に位置するが、外面333よりもケース2の内側方向に位置していればよい。
【0049】
次に、図1および図6を参照して、インクカートリッジ1からインクジェットプリンタ100の印字ヘッド114へのインク供給方法について説明する。図1に示すように、印刷を行う場合、ユーザは、インクジェットプリンタ100のカートリッジ挿入口120からインクカートリッジ1を挿入する。このとき、ユーザは、インクカートリッジ1の底壁31を下側にして、第2開口702(ゴム栓723)を臨む貫通部338(図2参照)が設けられた後壁33側から、インクカートリッジ1を挿入する。
【0050】
図6に示すように、インクカートリッジ1は、底壁31がカートリッジ装着部の載置面130に載置されるようにセットされる。載置面130は、略水平方向に延びる平面である。つまり、インクカートリッジ1は、底壁31および口栓72の軸線Xが略水平に延びるように、インクジェットプリンタ100にセットされる。カートリッジ装着部の奥側には、インクカートリッジ1がセットされた際、貫通部338に対向する位置に、中空針141を有する接続部140が設けられている。接続部140には、インク袋71から導出されたインクを印字ヘッド114まで導くチューブ142が接続されている。インクカートリッジ1がカートリッジ装着部にセットされると、接続部140の中空針141が貫通部338を通してゴム栓723の中心部に刺さる。中空針141はゴム栓723を貫通し、その先端部が中空部700内に配置される。中空針141の先端部にはインクが流通する孔が設けられており、インク収容部717内のインクは、第1開口701、中空部700内部、中空針141、およびチューブ142を通って、印字ヘッド114に供給される。
【0051】
インクカートリッジ1の使用開始時には、インク袋71のインク収容部717にはインクが満量充填されているため、インク袋71を形成する2層のシートの内面は、間にインクを挟んで互いに離れた状態にある。印刷時には、布帛上に画像を形成するために、印字ヘッド114から少しずつインクが吐出される。インクが吐出されると、吐出量とほぼ同量のインクがインクカートリッジ1から吸引され、補充される。印刷でインクが消費されるのに伴い、インク収容部717に収容されたインクは徐々に減少し、インク袋71は萎んでいく。つまり、可撓性を有する2層のシートの内面は互いに近づいていく。
【0052】
インクの残量がある程度まで減少すると、インク袋71のあちこちでシートの内面同士が接触するようになる。その結果、インクは、インクの表面張力や重力の関係などにより、シートの内面同士が接触した部分により分断され、インク収容部717内に孤立したインク溜まりが複数存在する状態になる。また、底壁31が略水平な載置面130に載置された状態では、インク袋71の2層のシートは、その面がほぼ上下方向に沿って延びるように配置される。よって、インクは、重力により、ある程度はシートの内面を伝って下方向に流れ、インク収容部717内で第1端部711(図4参照)に沿って溜まる。しかし、インクが減って、中空針141の先端部の孔よりもインク面が下降すると、インク収容部717内にまだインクが残っていたとしても、印字ヘッド114の吸引力は弱いので、残りのインクを吸引することが難しくなる。
【0053】
本実施形態のインクカートリッジ1は、前述の構成により、このようにインクの吸引が難しくなった場合でも、インクジェットプリンタ100から取り外し、インク収容部717に残存するインクを、口栓72、より詳細には第1開口701に向けて、効率よく集めることができる。図7〜図9を参照して、この作用効果について説明する。ユーザは、図7に示すように、インク残量が減少し、且つ、第1端部711に沿ってインクがある程度溜まった状態のインクカートリッジ1の斜面部332を下側にし、斜面部332の外面333が、略水平な面である支持面9に支持されるようにインクカートリッジ1を載置する。即ち、インク収納部717の長手方向と略一致する軸線Xの方向が、インクジェットプリンタ100におけるインク供給時よりも垂直に近い状態となる。なお、支持面9は、机の上面等の平面であってもよいし、平面でなくてもよい。口栓72の第2開口702(図5参照)の側の先端部724は、斜面部332の外面333よりもケース2の内側方向に位置するので、斜面部332が支持面9に接する際、口栓72が支持面9と干渉することがない。
【0054】
インクカートリッジ1は、ケース2およびインク袋71の長手方向(口栓72の軸線X)が水平方向に対して傾斜し、口栓72の第2開口702が斜め下方向を向いた状態となる。インク袋71は、第1端部711が水平方向に対して傾斜するとともに、インク収容部717を形成する2層のシートが、底壁31が略水平な載置面130に載置された場合と同様、その面がほぼ上下方向に沿って延びるように配置された状態となる。インクカートリッジ1の姿勢を変更する際に加えられる力によって、インクの一部はインク収容部717内で移動する。インクカートリッジ1の姿勢が変更される前の、口栓72の軸線Xが略水平な状態(図4および図6参照)では、インク収容部717内に点在するインクは、シートの内面同士が接触しているために、それ以上移動できない状態であった。このとき、点在するインクに対する重力の作用方向は、口栓72の軸線Xに対して略垂直である。一方、図8に示すように姿勢が変更されると、点在するインクに対する重力の作用方向は、口栓72の軸線Xに対して斜め方向に変化する。
【0055】
このように姿勢を変更した後、ユーザがしばらくインクカートリッジ1を傾斜した状態で保持し続けると、図8に示すように、インク収容部717内のインクは、前述の姿勢変化に伴うインクの移動と重力により、シートの内面を伝って下方へ移動し始める。前述のように、シートの面がほぼ上下方向に沿って延びているので、インクは円滑に下方へ移動することができる。また、インク収容部717内で第1端部711に沿って溜まっていたインクは、第1端部711が水平方向に対して傾斜した状態とされたために、第1端部711に沿って、口栓72が近傍に設けられた第3端部713と第1端部711とが接続する角部に向かって流れる。また、複数の孤立したインク溜まりのうちいくつかは、重力によって下降し始める。そして、一部は下降の途中にある他のインク溜まりに合流し、更に大きなインク溜まりとなって下降し、第1端部711に沿って口栓72へ向けて流れていく。
【0056】
口栓72の軸線Xは、軸線Xに直交する方向におけるケースの一端部(底壁31側の端部)寄りの位置にあり、且つ、軸線Xと、底壁31側の端部に向かう方向の斜面部332(外面333)とはケース2内側で鋭角を成すので、斜面部332を略水平にしてインクカートリッジ1を傾斜させると、口栓72は支持面9により近い位置に配置される。従って、口栓72の第1開口701の近くにインクが集まりやすい。また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向におけるインク袋の一端部(第1端部711)寄りの位置にあり、軸線Xを境として、第1端部711側のインク袋71の幅が、反対側のインク袋71の幅よりも狭いので、斜面部332を略水平にしてインクカートリッジ1を傾斜させると、口栓72の第1開口701の近くにインクが集まりやすい。
【0057】
更にインクカートリッジ1が傾斜した状態が継続すると、図9に示すように、インク収容部717内のあちこちにインク溜まりとなって残存していたインクの大部分は、口栓72の第1開口701の周囲に集合する。インク袋71の長手方向において、口栓72が設けられたのとは反対側の第4端部714とその周囲では、シートの内面の大部分が、互いに接触した状態となる。
【0058】
ユーザは、このようにして第1開口701周辺にインクを集めた状態で、図6に示すように、底壁31を下側にしてインクカートリッジ1を再びインクジェットプリンタ100にセットする。図9に示すように、第1開口701の周囲には、図7に示す状態に比べ、多くのインクが集まっている。しかも、インク袋71の第4端部714とその周囲では2枚のシートの内面の大部分が互いに接触しているので、底壁31が載置面130に載置され、第1端部711が略水平にされても、インクが第1開口701の周囲から第4端部714の方向へ移動することがある程度妨げられる。よって、インク面をゴム栓723に刺された中空針141の先端部の孔よりも上にある状態で維持することができる。従って、残っていたインクを印字ヘッド114に供給することができる。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態のインクカートリッジ1は、インク袋71を収容するケース2に、口栓72の軸方向に対して斜めに配置された斜面部332が設けられている。インク残量が少なくなった場合、ユーザは、前述のように、斜面部332を利用して、インクカートリッジ1を安定して水平方向に対して傾斜した状態とすることができる。ユーザが空中でインクカートリッジ1を保持する場合、何らかの理由で手が滑り、インクカートリッジ1を落としてしまう可能性がある。このとき、インクカートリッジ1が、口栓72が上方に位置するような姿勢になってしまうと、インクが口栓72に向かう流れが妨げられてしまう。しかし、前述したように、インクカートリッジ1は、斜面部332を略水平な支持面9に載置するのに適しているため、斜面部332を支持面9に載置することで、重力によりインクが下方に向かう流れが安定し、インクに対して全く反対方向への力が加わる恐れが低下する。そのため、インク袋71中に残存するインクを口栓72へ向けて効率よく集めることができる。しかも、斜面部332を机上等の面に載置して容易に傾斜した状態で保持できるので、インクカートリッジを空中で傾斜させた状態で把持するよりも力が要らず、ユーザの利便性が高い。
【0060】
インクジェットプリンタ100用のインクには、顔料を含有する顔料系インクが使用されることが多い。つまり、インクカートリッジ1において、インク袋71には、顔料系インクが充填されることが多い。顔料系インクは、インク中の顔料が沈殿する恐れがあるとして、インクカートリッジ1が振られ、その中のインクが攪拌されると、インクがインク収容部717の広範囲において点在してしまう。このような場合でも、斜面部332を用いてインクカートリッジ1を傾斜した状態として残存するインクを口栓72に向けて集められ、インクが無駄にされることが軽減される。顔料系インクの中でも特に、酸化チタンを含有する白インクでは、酸化チタンが沈殿しやすい。しかし、本実施形態のインクカートリッジ1によれば、斜面部332を用いてインクカートリッジ1を傾斜した状態することで、水平方向に対して口栓72の軸方向が斜めになるため、軸線Xが垂直にされた場合に比べて、口栓72の第1開口701には顔料が沈殿しにくい。従って、第1開口701に顔料(特に酸化チタン)が沈殿して、インク組成が二分したような、印字に用いることが適切ではない状態になるのを防止することができる。
【0061】
また、インクジェットプリンタ100用のインクとして、エマルションを含有する所謂エマルションインクが使用されることも多い。エマルションインクは、エマルションを含有しないインクと比べた場合、粘度が高い。よって、インクカートリッジ1を傾斜させてもインクはより移動しにくいので、インクを下方に集めるのに時間がかかる。本実施形態のインクカートリッジ1によれば、机上等の載置面に斜面部332を載置し、インクカートリッジ1を傾斜した状態で容易に保持できるので、空中で長い時間もっている場合などに比べて、特に効果がある。更に、エマルションインクが顔料も含有する場合には、前述したように、口栓72の第1開口701に顔料が沈殿するのを防ぎながら、効率よくエマルションインクを集めることができる。
【0062】
また、ケース2に斜面部332を設けたことで、インクカートリッジ1が落下した時に口栓72が受ける衝撃を緩和することができる。具体的には、ケース2の斜面部332が底壁31と接続する角部は鈍角になる。この角部の近傍には、口栓72が配置されている。このような鈍角の角部は、直角の角部の場合に比べ、衝撃が加わったときに応力が集中しにくい。従って、直角の角部に比べて、角部に強い衝撃が加わって、近傍にある口栓72が破損したり、配置位置が大きくずれてしまったりする可能性を低減することができる。更に、例えば出荷時等には、インクカートリッジ1は、サイズがほぼ同じ直方体形状の箱に梱包されることが想定される。このような場合、斜面部332と箱との間に三角柱状の空間ができるので、箱が落下する等して衝撃を受けたとしても、この空間が緩衝材となって、口栓72が受ける衝撃は緩和される。
【0063】
さらに、図5に示すように、インクカートリッジ1の口栓72の軸線Xが略水平な状態では、斜面部332の上面(内面)が先端部724の下方を越えて先端部724の先端方向に張り出している。そのため、中空針141が口栓72から抜かれた際に、インクが先端部724から下方に落下しても、インクは斜面部332の上面に衝突する。インクは、斜面部332の傾斜に沿って、インクカートリッジ1の内側(第1開口701側)に向かって移動する。従って、インクカートリッジ1の周辺に対するインクによる汚染が防止される。
【0064】
この汚染防止の効果が期待できるのは、インクジェットプリンタ100へインクを供給するための中空針141が口栓72から抜かれる場合だけではない。例えば、インク袋71にインクを新規に充填、追加、もしくは、再充填するために用いる中空針が抜かれた場合にも、インクが落下する恐れがある。よって、このような場合にも、同様の効果が期待できる。図5のような状態において、中空針141の抜き差しに伴って、インクが先端部724に付着した場合、インクは先端部724の下側端部に位置することがある。そのインクの状態で、図9に示すようにインクカートリッジ12が傾けられた場合、図5に示す状態での先端部724の下側端部の下方に斜面部332の上面(内面)があるので、インクが先端部724から下方に落下しても、インクは斜面部332の上面に衝突する。従って、インクカートリッジ1の周囲がインクにより汚染されるのを軽減することができる。
【0065】
インクカートリッジ1において、口栓72をケース2の斜面部332に対して確実に正確な位置に配置するために、ケース2に口栓72の固定部を設けてもよい。図10および図11を参照して、インクカートリッジ1にこのような固定部を設けた変形例を説明する。図10に示すように、斜面部332の内面は、斜面部332と底壁31とが接続する角部と、貫通部338との間に位置する部分が、ケース2の内側方向に突出している。この突出部は、固定部381である。固定部381の、貫通部338側の面(上面)は、口栓72の本体部721の外周形状に沿った曲面である。固定部381の突出端は、本体部721の外周に設けられた2つのフランジ727、728のうち、先端部724側にあるフランジ727の先端部724側の側面に接する。また、右壁30からケース2の内側方向に突出する突出片である固定部382が、口栓72を挟んで固定部381と対向するように設けられている。固定部382の突出端も、先端部724側にあるフランジ727の先端部724側の側面に接する。先端部724は、斜面部332の内面(図10における右面)に対して軸線X方向において隙間をあけて位置する。図10における固定部381の左側からは斜面部332が貫通部338に向かって上方に張り出している。よって、斜面部332と先端部724の間に、インクが貯留することが可能となっている。
【0066】
従って、固定部381と固定部382とで口栓72を位置決めし、固定することができる。これにより、第2開口702が貫通部338に臨み、先端部724が斜面部332の外面333よりもケース2の内側方向に配置され、且つ、軸線Xが外面333に対して斜めになるように、ケース2に対して口栓72を確実に正確な位置に配置することができる。インクジェットプリンタ100からインクカートリッジ1を抜く際など底壁31を下に向けて配置された場合には、軸線X方向に略水平に延びる固定部381の上面によって、口栓72から伝い落ちたインクを受けることで、インクがケース2の外部に漏れ出る可能性を低減できる。
【0067】
図11に示すように、斜面部332のみに固定部を連続して形成してもよい。具体的には、斜面部332の内面に、貫通部338を囲むようにケース2の内側方向に突出する固定部383を設ければよい。そして、固定部383の内面側に、口栓72の本体部721の外形状に対応する円柱状の凹部384を、貫通部338と同軸上に設ければよい。凹部384の深さは、口栓72の先端部724から、先端部724側にあるフランジ727の先端部724側の側面までの長さと略同一とされればよい。この場合、口栓72の先端部724側の一部が固定部383の凹部384に嵌め込まれることによって、口栓72を位置決めし、固定することができる。これにより、第2開口702が貫通部338に臨み、先端部724が斜面部332の外面333よりもケース2の内側方向に配置され、且つ、軸線Xが外面333に対して斜めになるように、ケース2に対して口栓72を確実に正確な位置に配置することができる。
【0068】
先端部724は、固定部383に設けられた凹部384内に、外面333に対して軸線X方向において隙間をあけて位置する。よって、外面333と先端部724の間に、インクが貯留することが可能となっている。インクジェットプリンタ100からインクカートリッジ1を抜く際など底壁31を下に向けて配置された場合には、軸線X方向に略水平に延びる貫通部338の下側の固定部383によって、口栓72から伝い落ちたインクを受けることで、インクがケース2の外部に漏れ出る可能性を低減できる。先端部724は、固定部383の凹部384に対しても軸線X方向において隙間をあけて位置する。よって、凹部384と先端部724の間に、インクが貯留することが可能となっている。インクジェットプリンタ100からインクカートリッジ1を抜く際など底壁31を下に向けて配置された場合には、軸線X方向に略水平に延びる凹部384の下側の固定部383と先端部724の間の隙間によって、口栓72から伝い落ちたインクを受けることで、インクがケース2の外部に漏れ出る可能性を低減できる。
【0069】
インクカートリッジ1のケース2の形状は以上に説明したものに限られず、ケース2が斜面部332を備え、ケース2とインクパック7との配置関係を前述のように規定することができる限り、各種の変形が可能である。例えば、図12に示すインクカートリッジ11のように、ケース2の長手方向(前後方向)の長さを、図2に示すインクカートリッジ1よりも短くしてもよい。
【0070】
インクカートリッジ11におけるケース2とインクパック7との配置関係は、インクカートリッジ11のケース2の方が短い点以外、基本的に、図4に示すインクカートリッジ1と同様である。つまり、インクカートリッジ11においても、インクパック7は、口栓72の軸線Xを含み、且つ、斜面部332の外面333と直角を成す仮想的な平面に対して、インク袋71を形成する2層のシートが略平行に延びるように、ケース2に収容されている。また、口栓72が軸線Xに直交する方向におけるケース2の一端部寄りに配置され、且つ、軸線Xが斜面部332の外面333に対して斜めになるようにケース2に収容されている。また、口栓72の第2開口702が斜面部332に設けられた貫通部338に臨み、口栓72の先端部724が斜面部332の外面333よりもケース2の内側方向に配置されている。
【0071】
このような構成により、図12に示すインクカートリッジ11も、インクカートリッジ1と同様、インク残量が少なくなった場合に、斜面部332を用いて残存するインクを効率よく口栓72の第1開口701に向けて集めることができる。なお、図2に示すインクカートリッジ1は、図7に示すように、斜面部332を支持面9に載置して傾斜した姿勢とした場合、ケース2の寸法バランス上、ユーザが把持していなければ、傾斜した姿勢を保てずに倒れる。一方、図12に示すインクカートリッジ11は、長手方向の長さを短くすることで、斜面部332を支持面9に載置して傾斜した姿勢とした場合、ユーザが把持していなくても、そのまま傾斜した姿勢で自立した状態を保つことができる。
【0072】
また、図13〜図16は、更に別の形状のケース2を備えた変形例に係るインクカートリッジ12を示している。インクカートリッジ12は、図2のインクカートリッジ1と同様、薄型略矩形箱状のケース2を備えている。ケース2は、右壁30、周壁31〜34、および蓋部4を備えている。ただし、インクカートリッジ12のケース2では、背面部331および斜面部332を含む後壁33は、右壁30ではなく、蓋部4に連続して形成され、底壁31、上壁32、および前壁34は、右壁30に連続して形成されている。
【0073】
図13〜図16に示すように、蓋部4が斜面部332と接続する部分の中央部には、蓋部4を形成する板材を、ケース2の左側面から左方に突出するように形成した突起部35が設けられている。ケース2の長手方向における突起部35の長さは、口栓72の長さよりも僅かに長い程度である。本実施形態では、斜面部332は蓋部4と連続的に形成されているので、斜面部332の突起部35に連続する部分では、斜面部332の幅(ケース2の右側面と左側面との距離に相当)は他の部分より広くなる。貫通部338は、この幅の広い部分に設けられている。図14および図16に示すように、突起部35の中央には、矩形状の係合孔36が設けられている。また、図16に示すように、突起部35の内面からケース2の内側方向に突出する突出片である一対の固定部385が、口栓72を挟んで底壁31側と上壁32側に設けられている(図16では底壁31側の固定部385だけを図示)。なお、固定部385のうち底壁31側の固定部385は、斜面部332にも連続して形成されている。
【0074】
更に、図13および図14に示すように、ケース2の長手方向(前後方向)に沿って対向配置された底壁31および上壁32には、夫々、6つの凹部371および372が設けられている。6つの凹部371は、夫々、口栓72の軸線Xを挟んで、6つの凹部372と対向した位置にある。
【0075】
インクカートリッジ12におけるケース2とインクパック7との配置関係は、基本的に、図4に示すインクカートリッジ1と同様である。つまり、インクカートリッジ11においても、インクパック7は、インクパック7は、口栓72の軸線Xを含み、且つ、斜面部332の外面333と直角を成す仮想的な平面に対して、インク袋71を形成する2層のシートが略平行に延びるように、ケース2に収容されている。また、口栓72が軸線Xに直交する方向におけるケース2の一端部寄りに配置され、且つ、軸線Xが斜面部332の外面333に対して斜めになるようにケース2に収容されている。また、口栓72の第2開口702が斜面部332に設けられた貫通部338に臨み、口栓72の先端部724が斜面部332の外面333よりもケース2の内側方向に配置されている。なお、インクカートリッジ12では、貫通部338は斜面部332の略中央に設けられているが、ケース2全体で見ると、軸線Xに直交する方向において、口栓側端部(底壁31)寄りにある。
【0076】
図16に示すように、インクパック7の口栓72の外周面の一部には、周方向外側に突出する角柱状の係合突起725が設けられている。係合突起725が蓋部4の突起部35に設けられた係合孔36に嵌めこまれ、また、口栓72が前述の一対の固定部385に挟まれる。これにより、口栓72は、ケース2において突起部35の内側の位置で固定される。このように、インクカートリッジ12でも、ケース2に対して口栓72を確実に正確な位置に配置することができる。なお、インクカートリッジ12では、蓋部4が斜面部332を含み、口栓72が本体部3ではなく蓋部4に固定される関係上、インクパック7全体を蓋部4と一体的に扱えるように、インク袋71は蓋部4の内面に接着剤または両面粘着テープで貼り付けられていることが好ましい。
【0077】
以上に説明した構成により、インクカートリッジ12も、インクカートリッジ1と同様、インク残量が少なくなった場合に、斜面部332を用いて残存するインクを効率よく口栓72に向けて集めることができる。このとき、ユーザは、ケース2の対向する側面部である底壁31と上壁32に夫々設けられた一対の凹部371および372に指を引っ掛けて滑り止めとすることができるので、インクカートリッジ12を安定して傾斜した状態で保持することができる。なお、凹部371および372は、底壁31および上壁32を、夫々、蓋部4と接合するためのフックの一部であり、前述の例では6つずつ設けられている。しかしながら、凹部371および372は、底壁31および上壁32に夫々1つずつ、一対のみが設けられていてもよい。
【0078】
また、インクカートリッジ12では、蓋部4に突起部35を設けることで、ケース2の幅(右側面から左側面までの距離)をできる限り狭く保ちながら、口栓72が配置される部分のみ、口栓72の径に応じて幅を広げることができる。従って、ケース2全体をできる限り薄型でコンパクトな形状とすることができる。また、例えば、ユーザがインクカートリッジ12を地面に落とした場合、突起部35が下側にあれば、蓋部4と地面との間に隙間が生じる。よって、ユーザはインクカートリッジ12を拾い上げやすい。また、突起部35が上側にあれば、ユーザは突起部35を摘んだり、突起部35に指を引っ掛けて移動させたりできるので、インクカートリッジ12の取扱いの自由度が向上する。
【0079】
前述のインクカートリッジ1のケース2は、インクパック7の周囲が貫通部338以外の部分で右壁30、周壁31〜34、および蓋部4によって覆われている例である。しかし、ケース2は、このようにインクパック7の周囲を完全に覆う必要はない。具体的には、ケース2が斜面部332を備え、ケース2とインクパック7との配置関係を前述のように規定することができる範囲で、壁面の一部は省略することができる。
【0080】
例えば、ケース2は、上壁32を備えず、右壁30、底壁31、後壁33(背面部331および斜面部332)、前壁34、および蓋部4のみを備えてもよい。上壁32がなくても、ユーザが斜面部332の外面333を支持面9に載置し保持することで、インクカートリッジを支持面9に対して傾斜した状態にできるので、第1実施形態のインクカートリッジ1と同様の効果を奏することができる。
【0081】
右壁30、底壁31、背面部331、前壁34、および蓋部4についても、同様に、これらのうち1つまたはいくつかを省略することが可能である。ただし、ケース2の強度確保およびインクパック7の保護の観点からは、ケース2には、斜面部332に連続する面部が少なくとも1つあることが好ましい。例えば、斜面部332に右壁30および蓋部4が接続されたケース2としてもよい。この場合も、前述の実施形態と同様に、斜面部332を用いて残存するインクを効率よく口栓72に向けて集めることができる。そして、インク袋71は、斜面部332よりも面積の広い右壁30と蓋部4との間に挟まれて配置されているので、傾斜した状態でも、インク袋71の姿勢を安定した状態で保つことができる。なお、上記の例のように壁面の一部を省略する場合にも、図7および図8に示すように、ケース2に口栓72の固定部が設けられてもよい。
【0082】
前述の実施形態では、後壁33が、上壁32と直角を成す背面部331と、背面部331および底壁31に接続し、夫々と鈍角を成す斜面部332とを含む例について説明している。この場合、インクを効率的に集めるための斜面部332を設けながら、ケース2が長手方向に無用に長くなるのを防止できる。つまり、ケース2内で使用されない無駄な空間を低減することができる。しかしながら、後壁33を、斜面部332のみを含み、背面部331を含まない構成としてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、斜面部332の外面333が平面である例を説明しているが、外面333は必ずしも平面である必要はなく、2点以上の点、線、または面で、平面に接触可能な面であればよい。例えば、外面333は、軸線Xに対して斜めに延びる曲面、波形面等であってもよい。この場合、口栓72の軸線Xと外面333とが成す角θ1、θ2は、軸線Xと、外面333に接する平面として特定される仮想的な平面とが成す角で表されればよい。
【0084】
前述の実施形態では、貫通部338の開口径が口栓72の第2開口702の径と略等しい例を挙げているが、貫通部338は、第2開口702に対向した位置に設けられていればよく、最低限、口栓72のゴム栓723に接続部140の中空針141を刺すことができる径が確保されていればよい。よって、貫通部338の開口径は口栓72の第2開口702の径よりも小さくてもよい。反対に、貫通部338の開口径は、第2開口702の径よりも大きくてもよい。
【0085】
<第2実施形態>
第1実施形態で例示したインクカートリッジ1とその変形例に係るインクカートリッジ11および12(図2、図12および図13参照)は、そのままインクジェットプリンタ100にセット可能なインク供給部品である。インクパック7に収容されたインクが消費され、前述のように、斜面部332を利用してインクを口栓72の周囲に集めても中空針141でインクを吸引できないほどインクが減ってしまうと、インクカートリッジ1、11、12は新しいものに交換される。しかしながら、印刷によってインクパック7のインクは消費されてしまうが、ケース2自体が特に消耗するわけではない。従って、環境保護の観点からは、ケース2はある程度再利用できることが望ましい。そこで、第2実施形態では、インクカートリッジ用の交換部品であるインクパックユニット201について説明する。
【0086】
図17〜図19を参照して、本実施形態のインクパックユニット201の構成について説明する。インクパックユニット201は、図3に示す第1実施形態のインクカートリッジ1の蓋部4にインクパック7を固定したものに相当し、図17に示すように、インクパック7と、インクパック7を支持する支持板部材40とを備えている。詳細は図示しないが、インクパックユニット201は、例えば、係合ピンと係合孔によってケース本体202と接合されることで、インクカートリッジ20を形成する。ケース本体202は、図3に示す第1実施形態のインクカートリッジ1の本体部3に相当し、右壁30および周壁31〜34を備えている。後壁33は、背面部331と斜面部332を含み、斜面部332に貫通部338が設けられている点も、本体部3と同様である。
【0087】
このように、インクパックユニット201とケース本体202によって形成されるインクカートリッジ20は、第1実施形態のインクカートリッジ1と同様の構成となる。よって、インクカートリッジ20も、図1に示すインクジェットプリンタ100にセットして、印字ヘッド114にインクを供給することができる。インクが消費されると、ユーザは、インクパックユニット201をケース本体202から取り外し、新たなインクパックユニット201に交換する。よって、ケース本体202は、再利用することができる。
【0088】
図18および図19を参照して、インクパックユニット201の詳細について説明する。なお、インクパック7の構成は、第1実施形態のインクカートリッジ1のインクパック7と同一なので、以下での説明は省略する。
【0089】
図18に示すように、インクカートリッジ20の左側面を形成する支持板部材40は、インクカートリッジ1を側面視した場合、すなわち、支持板部材40の最大面積部(図18で示された面)に直交する方向から見て五角形状であり、前後方向に長い長方形の直角を成す4つの角のうち、後ろ側の下にある角を含む角部が斜めに切り取られたような形状を有する。つまり、支持板部材40は、側面視で、前後方向に延びる2つの平行に対向する長辺、上下方向に延びる2つの平行に対向する短辺、および、短い方の長辺と短い方の短辺とを繋ぐ斜辺とを有する。以下では、支持板部材40の下端部である短い方の長辺を第1端部41、上端部である長い方の長辺を第2端部42、後端部を第3端部43、前端部である長い方の短辺を第4端部44という。また、第3端部43のうち、短い方の短辺部分を垂直部431、垂直部431と第1端部41とを繋ぐ斜辺部分を斜辺部432という。第1端部41と斜辺部432とが成す角θ3は、90度より大きい鈍角である。
【0090】
図19に示すように、インクパック7は、インク収容部717を形成する2層のシートのうち一方の外面が、支持板部材40の右面(インクカートリッジ20の左側面を形成する面の裏面)に固定されている。インクパック7の固定方法は特に限定されないが、例えば、接着剤や両面テープ等で支持板部材40に貼り付けられればよい。
【0091】
支持板部材40に対するインクパック7の配置関係について説明する。インクパック7は、鈍角を成す第1端部41と斜辺部432のうち、長手方向に延びる第1端部41に対して口栓72の軸線Xが略平行になるように、且つ、口栓72の第2開口702が斜辺部432の近傍に位置するように、支持板部材40に固定される。更に、軸線Xは、軸線Xに直交する方向において、支持板部材40の第1端部41寄りに位置する。本実施形態では、口栓72は、鈍角を成す第1端部41と斜辺部432とが接続する角部近傍に設けられており、その先端部724は、支持板部材40の最大面積部(図18で示された面)に直交する方向から見て、斜辺部432よりも支持板部材40の外方には突出しない。即ち、その先端部724は、斜辺部432よりも支持板部材40の内側に位置する。
【0092】
また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向において、インク袋71の第1端部711寄りにある。よって、軸線Xを境として、第1端部41側のインク袋71の幅W1(軸線Xとインク袋71の第1端部711との距離)は、第2端部42側の幅W2(軸線Xと第2端部712との距離)よりも狭い。
【0093】
このような構成を有することで、本実施形態のインクパック7は、インク収容部717に残存するインクを、口栓72、より詳細には第1開口701に向けて、効率よく集めることができる。図20を参照して、この作用効果について説明する。ユーザは、図20に示すように、インク残量が減少し、且つ、第1端部711に沿ってインクがある程度溜まった状態のインクカートリッジ20から、インクパックユニット201を分離する。そして、斜辺部432を下側にして、斜辺部432が、略水平な面である支持面9に接するようにインクパックユニット201を載置する。口栓72の先端部724は、斜辺部432よりも外方に突出しない。即ち、その先端部724は、斜辺部432よりも支持板部材40の内側に位置するので、斜辺部432が載置面に接する際、口栓72が支持面9と干渉することがない。
【0094】
支持板部材40において、斜辺部432と第1端部41とは鈍角を成すので、口栓72の軸線Xに略平行な第1端部41は水平方向に対して傾斜し、口栓72の第2開口702が斜め下方向を向いた状態となる。インク袋71は、第1端部711が水平方向に対して傾斜するとともに、インク収容部717を形成する2層のシートの面がほぼ上下方向に沿って延びるように配置された状態となる。このように、ユーザは、支持板部材40の斜辺部432を利用して、インクパックユニット201を安定して傾斜した状態で保持することができる。この後のインク収容部717内でのインクの移動については、第1実施形態のインクカートリッジ1の場合と同様であるため、説明は省略する。
【0095】
インクパックユニット201においても、口栓72の軸線Xは、軸線Xに直交する方向における支持板部材40の一端部(第1端部41)寄りの位置にあり、且つ、この第1端部41と斜辺部432とは鈍角を成すので、斜辺部432を略水平にしてインクパックユニット201を傾斜させると、口栓72は支持面9により近い位置に配置される。従って、口栓72の第1開口701の近くにインクが集まりやすい。また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向におけるインク袋の一端部(第1端部711)寄りの位置にあり、軸線Xを境として、第1端部711側のインク袋71の幅が、反対側のインク袋71の幅よりも狭いので、斜辺部432を略水平にしてインクカートリッジ20を傾斜させると、口栓72の第1開口701の近くにインクが集まりやすい。
【0096】
このように、インクパックユニット201においても、第1実施形態のインクカートリッジ1と同様、インク収容部717に残存するインクを口栓72の第1開口701に向けて効率的に集めることができる。なお、インクパックユニット201がケース本体202と接合されたインクカートリッジ20(図17参照)は、インクカートリッジ1と同一構成を有するので、インク残量が少なくなった際、インクカートリッジ20をインクパックユニット201とケース本体202に分離しなくても、斜面部332を利用してインクを口栓72の第1開口701に向けて効率的に集めることができる。しかし、インクパックユニット201を分離して、前述のように斜辺部432を利用してインクを集めれば、ユーザはインクの流れが見えるので、インクが十分に第1開口701の周囲に集まったかどうかを確認することができる。また、ケース本体202を分離した分、インクカートリッジ20よりも重量が軽くなるので、傾斜した状態で長い時間保持する場合のユーザの負担を更に軽減することもできる。
【0097】
インクパックユニット201は、1枚の薄板状の支持板部材40にインクパック7を固定した例であるが、支持板部材40に、本実施形態でケース本体202に設けられている周壁31〜34の一部が連続して形成されていてもよい。このような変形例について、図21および図22を参照して説明する。図21および図22に示す変形例のインクパックユニット501は、図13に示す第1実施形態の変形例のインクカートリッジ12のように、後壁33(背面部331および斜面部332)が接続された蓋部4に、インクパック7が固定されたものに相当する。
【0098】
より詳細には、斜面部332は支持板部材40の斜辺部432に接続し、支持板部材40の右面側(インクカートリッジ50の内側方向)に延びている。背面部331は、垂直部431と斜面部332に接続する。そして、支持板部材40には、突起部35が設けられている。突起部35の内面からケース2の内側方向に突出する突出片である一対の固定部385が、口栓72を挟んで第1端部41側と第2端部42側に設けられている。なお、固定部385のうち第1端部41側の固定部385は、斜面部332にも連続して形成されている。斜面部332には、口栓72の第2開口702を臨む貫通部338が設けられている。
【0099】
インクパックユニット501における支持板部材40とインクパック7との配置関係は、基本的に、図19に示すインクパックユニット201と同様である。つまり、インクパック7は、鈍角を成す第1端部41と斜辺部432のうち、長手方向に延びる第1端部41に対して口栓72の軸線Xが略平行になるように、且つ、口栓72の第2開口702が斜辺部432の近傍に位置するように、支持板部材40に固定される。更に、軸線Xは、軸線Xに直交する方向において、支持板部材40の第1端部41寄りに位置する。本実施形態では、口栓72の第2開口702側の先端部724は、支持板部材40の最大面積部(図19で示された面)に直交する方向から見て、斜辺部432に接続する斜面部332の外面333から支持板部材40の外方に突出しない。即ち、その先端部724は、斜辺部432よりも支持板部材40の内側に位置する。
【0100】
以上に説明した構成により、インクパックユニット501は、インク残量が少なくなった場合、斜辺部432に接続する斜面部332を略水平な面に載置し、より安定して傾斜した状態を保ちながら、残存するインクを効率よく口栓72に向けて集めることができる。つまり、本変形例のインクパックユニット501は、前述のインクパックユニット201の効果に加え、図13に示す第1実施形態の変形例のインクカートリッジ12と同様の効果を奏することができる。
【0101】
図21および図22に示す変形例から、背面部331を省略してもよい。つまり、支持板部材40に、斜面部332のみを付加してもよい。この変形例でも、斜面部332により、インクパックユニット501と同様の効果を奏することができる。また、図23に示すように、支持板部材40に斜面部332のみを付加した変形例のインクパックユニット601において、斜面部332と支持板部材40の右面が鈍角を成すようにしてもよい。この場合、斜面部332を略水平な面に載置すると、支持板部材40の右面は斜め上方を向いて傾斜した状態となる。よって、インク袋71が支持板部材40の右面に固定されていても、その固定部分に対する負荷が軽減され、固定部分が破損する可能性を低減することができる。なお、図23では、斜面部332の図中上面と支持板部材40の右面全体が鈍角を成しているが、斜面部332と支持板部材40の右面の少なくとも一部が鈍角を成していればよい。
【0102】
図2における斜面部332は、ケース2として硬質な樹脂で形成する構成のほか、ケース2の端部に固定された可撓性を有するフィルム(例えば、粘着テープ)で構成してもかまわない。また、斜面部332としての部材を交換可能にしてもよい。
【0103】
前述のインクカートリッジ1のインクを口栓72に向けて集める作用の説明(図8〜10参照)では、ユーザが、略水平な支持面9に、斜面部332を接触させつつ、インクカートリッジ1を手で保持する例を挙げた。しかし、略水平な支持面9にインクカートリッジ1の斜面部332を接触させつつ、図7に一点鎖線Yで示す略垂直な面(例えば、壁)にインクカートリッジ1の前壁34の下端を接触させるようにして、ユーザが手でインクカートリッジ1を持たなくてもよい。
【0104】
上記変形例のほか、支持板部材40には、斜面部332と底壁31のみを付加したり、周壁31〜34の全てを付加したりしてもよい。つまり、支持板部材40には、適宜、周壁31〜34の一部または全部を付加可能である。なお、支持板部材40に周壁31〜34を全て付加する場合、図3に示す第1実施形態のインクカートリッジ1の本体部3に、インクパック7を固定した形態に相当する。
【符号の説明】
【0105】
1、11、12 インクカートリッジ
2 ケース
201、501、601 インクパックユニット
30 右壁
31 底壁
32 上壁
33 後壁
331 背面部
332 斜面部
333 外面
338 貫通部
34 前壁
371、372 凹部
381、383、385 固定部
4 蓋部
40 支持板部材
7 インクパック
71 インク袋
72 口栓
700 中空部
701 第1開口
702 第2開口
724 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する口栓と、
前記インク袋を収容し、前記口栓の軸方向に対して斜めに配置された面部である斜面部と、前記第2開口を臨むように前記斜面部に設けられた貫通部を有するケースとを備え、
前記インク袋は、前記口栓の軸線を含み、且つ前記斜面部と直角を成す仮想的な平面に対して、前記2層のシートの各々のシート面が略平行に延びるように前記ケースに収容され、
前記口栓の前記第2開口の側の先端部は、前記斜面部の外面よりも前記ケースの内側方向に位置することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する口栓と、
前記インク袋を収容し、収容された前記インク袋の前記口栓の軸方向を長手方向とするケースとを備え、
前記ケースは、
前記口栓の前記軸方向に対して斜めに配置された面部である斜面部と、
前記口栓の前記第2開口を臨むように前記斜面部に設けられた貫通部とを少なくとも備え、
前記インク袋は、
前記口栓の軸線が、前記軸線に直交する方向における前記ケースの一端部寄りに位置し、且つ、
前記軸線を含み、且つ前記斜面部と直角を成す仮想的な平面に対して、前記2層のシートの各々のシート面が略平行に延びるように前記ケースに収容され、
前記口栓の軸線と、前記ケースの前記一端部に向かう方向の前記斜面部とは鋭角を成し、
前記口栓の前記第2開口の側の先端部は、前記斜面部の外面よりも前記ケースの内側方向に位置することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項3】
前記口栓の前記軸線が、前記軸線に直交する方向における前記インク袋の一端部寄りの位置にあり、前記軸線を境として、前記ケースの前記一端部側の前記インク袋の幅が、前記ケースの他端側の前記インク袋の幅よりも狭いことを特徴とする請求項2に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記ケースは、前記斜面部に連続して形成された面部を少なくとも1つ備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記ケースは、前記斜面部に連続して形成された、前記口栓を前記斜面部に固定するための固定部を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
前記ケースは、前記口栓の前記軸方向を長手方向として前記斜面部に連続して形成された面部であって、前記ケースの外側方向に突出する部位である突起部を有する側面部を備え、
前記貫通部は、前記斜面部の前記突起部に連続する部分に設けられ、
前記口栓は、前記突起部の内側に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項7】
前記ケースは、各々が前記口栓の前記軸方向を長手方向として前記斜面部に連続して形成され、且つ、互いに対向する一対の側面部を備え、
前記一対の側面部の互いに対向する位置に、一対の凹部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項8】
前記インクは、顔料を含有する顔料系インクであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項9】
前記顔料系インクは、酸化チタンを含有することを特徴とする請求項8に記載のインクカートリッジ。
【請求項10】
前記インクは、エマルションを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項11】
前記インクは、顔料を含有することを特徴とする請求項10に記載のインクカートリッジ。
【請求項12】
対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する口栓と、
第1面および前記第1面の裏面である第2面、ならびに鈍角を成す2つの辺を有し、前記第1面に前記インク袋の前記2層のシートの一方の外面が固定された板状部材とを備え、
前記インク袋は、前記2つの辺のうち一方である第1辺に対して前記口栓の軸線が略平行になるように、且つ、前記口栓の前記第2開口が前記2つの辺の他方である第2辺の近傍に位置するように、前記板状部材に固定され、
前記口栓の前記第2開口の側の先端部は、前記第2辺よりも前記板状部材の外方に突出しないことを特徴とするインク袋ユニット。
【請求項13】
前記口栓の前記軸線は、前記軸線に直交する方向において前記板状部材の前記第1辺寄りに位置することを特徴とする請求項12に記載のインク袋ユニット。
【請求項14】
前記板状部材の前記第2辺に接続し、前記インク袋が固定されている側に延びる面部と、
前記インク袋の前記第2開口を臨むように前記面部に設けられた貫通部とを更に備え、
前記口栓の前記第2開口の側の前記先端部は、前記面部よりも外方に突出しないことを特徴とする請求項12または13に記載のインク袋ユニット。
【請求項15】
前記面部と前記板状部材の前記第1面の少なくとも一部が鈍角をなすことを特徴とする請求項14に記載のインク袋ユニット。
【請求項16】
対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する口栓と、
前記2層のシートのうち一方に対向し、前記口栓の軸線方向に沿って伸展し、前記軸線方向における前記第2開口側の辺が、前記軸線方向において前記第2開口よりも前記第1開口から離間した位置から、前記第2開口よりも接近した位置に亘って形成された第1面部と、
前記2層のシートのうち他方に対向するとともに前記インク袋を挟んで前記第1面部に対向し、前記軸線方向に沿って伸展し、前記軸線方向における前記第2開口側の辺が、前記軸線方向において前記第2開口よりも前記第1開口から離間した位置から、前記第2開口よりも接近した位置に亘って形成された第2面部と、
前記第1面部および前記2側面部よりも狭い面積を有し、前記第1面部の前記軸線方向の前記第2開口側の前記辺と、前記第2面部の前記軸線方向の前記第2開口側の前記辺に沿って、前記軸線方向に斜めに交差し、前記軸線方向において前記第2開口よりも前記第1開口から離間した第3面部とを有し、
前記口栓の前記第2開口の側の先端部は、前記第3面部よりも外方に突出しないことを特徴とするインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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