説明

インクカートリッジの検査方法

【課題】記録ヘッド側で発生した負圧によって開弁する差圧弁について、インク注入前に作動圧を確認することができるインクカートリッジの検査方法を提供する。
【解決手段】インク供給用開口部を開放するとともに、インク注入用開口部からケース内に所定量・所定圧の圧力空気を供給することにより差圧弁を開弁し、次にケース内に供給する圧力空気の圧力を調整することにより差圧弁を閉弁し、この閉弁時における保持圧と規定値との比較結果に基づいて差圧弁の作動圧を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置用のヘッドにインクを供給するためのインクカートリッジの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式記録装置は、一般にキャリッジ上に搭載されて記録用紙の幅方向に移動する記録ヘッドと、この記録ヘッドの移動方向と直交する方向に記録用紙を相対的に移動させる紙送り手段とを備えている。
【0003】
このようなインクジェット式記録装置において、記録用紙に対する印刷は、印刷データに基づいて記録ヘッドからインク滴を吐出させることにより行われる。
【0004】
そして、キャリッジ上に例えばブラック,イエロー,シアンおよびマゼンタの各インクカートリッジおよび記録ヘッドを搭載し、ブラックインクによるテキスト印刷ばかりでなく、各インクの吐出割合を変えることにより、フルカラー印刷を可能としている。
【0005】
通常のインクジェット式記録装置にあっては、前記したように、ブラック,イエロー,シアンおよびマゼンタのインクが貯留された各インクカートリッジがキャリッジ上に載置され、キャリッジと共に移動する。
【0006】
最近の記録装置においては、記録速度の向上を図る目的から、キャリッジの移動を高速で行うようになってきている。
【0007】
このような記録装置においては、キャリッジの加減速に伴うインク供給チューブの伸張・屈曲によってその内部インクに圧力変動が生じてしまい、記録ヘッドからのインク滴の吐出を不安定にする。
【0008】
このため、大気側に空気流路を介して開放されるインクタンク室およびこのインクタンク室にインク流路を介して接続するヘッド接続用のインクエンド室を有するカートリッジ本体と、このカートリッジ本体のインクエンド室とヘッド供給口とを結ぶ経路途中に差圧弁とを備えたインクカートリッジが提案されている。
【0009】
これによれば、負圧発生手段によってヘッド側に負圧が発生し、これに伴い差圧弁が開弁して記録ヘッドにインクを供給するため、前記した圧力変動によるインクへの悪影響が少なくなり、記録ヘッドへのインクの供給を最適な水頭差で行うことができる。
【0010】
【特許文献1】国際公開第2000/3877号パンフレット
【特許文献2】特開2001−1536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記したインクカートリッジにおいては、カートリッジ本体にカバーフィルムおよび差圧弁の一部を取り付けることにより、インク流路および空気流路が形成され、またこれら両流路を結ぶ経路を大気バルブによって開閉している。
【0012】
そのため、カートリッジ本体に対するカバーフィルム等の取付箇所に不良箇所があると、インク流路および空気流路の封止(シール)が不十分となり、空気漏れが発生するばかりか、インク注入後にはインク漏れが発生する。一方、大気バルブの作動・封止に不良があると、良好なバルブ開閉状態を得ることができず、インク供給上の信頼性が低下する。
【0013】
このため、カートリッジ本体からの空気・インク漏れおよびインク供給上の信頼性低下の発生を未然に防止すべく、インク注入前にインク・空気流路のリーク有無および大気バルブの作動有無・封止良否を確認することができるインクカートリッジの検査方法の提供が要望されていた。
【0014】
また、前記したインクカートリッジの差圧弁においては、記録ヘッド側に発生した負圧によって開弁するものであるため、その作動圧(開弁時の圧力)を所定の圧力に設定することが重要となる。
【0015】
このため、インク注入前に差圧弁における作動圧を確認することができるインクカートリッジの検査方法の提供も要望されていた。
【0016】
本発明は、このような要望に応えるべくなされたもので、インク・空気流路のリーク確認および大気バルブの作動・封止確認を行うことができるインクカートリッジの検査方法を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、インク注入前に差圧弁における作動圧の確認を行うことができるインクカートリッジの検査方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記した目的を達成するためになされた本発明に係るインクカートリッジの検査方法は、記録装置用のヘッドに着脱可能なインク供給用開口部およびインク・空気流通部を形成するための複数の凹部を有するカートリッジ本体と、このカートリッジ本体に取り付けられ、前記凹部を封止して前記インク・空気流通部を形成するためのカバーフィルムと、このカバーフィルムと前記カートリッジ本体との間に収容され、前記凹部のうち前記インク供給用開口部に連通する凹部の上流側に位置する差圧弁とを備え、前記カートリッジ本体は、前記ヘッドへの着脱による大気バルブの開弁・閉弁によって大気中と連通・連通遮断するインクタンク室と、このインクタンク室に連通し、かつ前記インク供給用開口部に前記差圧弁を経て至るインクエンド室とを有するケースによって形成され、このケースに、前記インクタンク室に連通する大気導通用開口部および前記インクエンド室に連通するインク注入用開口部を設けてなるインクカートリッジの検査方法であって、前記開口部のうちインク供給用開口部を開放するとともに、インク注入用開口部から前記ケース内に所定圧の圧力空気を供給することにより前記差圧弁を開弁し、次に、前記ケース内に供給する圧力空気の圧力を調整することにより前記差圧弁を閉弁し、この差圧弁の閉弁時における保持圧を測定した後、この測定値と予め設定された規定値とを比較し、この比較結果に基づいて前記差圧弁の作動圧を検査することを特徴とする。
【0019】
このような方法であるため、差圧弁の閉弁時における保持圧を測定した値と規定値とを比較した結果に基づいて、差圧弁における保持圧の適否が検出されるため、インク注入前に差圧弁の作動圧を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明が適用されたインクカートリッジの検査方法につき、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0021】
本検査方法を説明するに先立ち、この方法の実施に用いられるインクカートリッジにつき、図1〜図9を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの全体を分解して示す斜視図である。図2(a)および(b)は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの外観を示す斜視図である。図3および図4は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を斜め上方と斜め下方から見た斜視図である。図5および図6は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を示す正面図と背面図である。図7および図8は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの差圧弁収容室とバルブ収容室を拡大して示す断面図である。図9は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジのカートリッジホルダに対する接続状態を示す正面図である。
【0022】
図2(a)および(b)に示すインクカートリッジ1は、一方側に開口する平面ほぼ矩形状の容器本体(下ケース)2と、この容器本体2の開口部を封止する蓋体(上ケース)3とを有し、その内部がインク流路系および空気流路系(共に後述)から大略構成されている。
【0023】
前記容器本体2の下方部には、記録ヘッド112のインク供給針72(共に図9に図示)に接続可能なインク供給口4およびこのインク供給口4の側方に並列する第一開口部(開放孔)85,第二開口部86(共に図4および図5に図示)が設けられている。前記インク供給口4は後述するインクエンド室に連通され、前記第一開口部85は第一インク収容室(インクタンク室)11に連通されている。
【0024】
前記インク供給口4内には、図1に示すように、ゴム等からなる略円柱状のシール部材200が装着されている。このシール部材200の中央部には、軸線方向に開口する貫通孔200aが設けられている。また、前記インク供給口4内には、前記インク供給針72の挿抜によって前記貫通孔200aを開閉するスプリング受け(弁体)201が配設され、さらにこのスプリング受け201を前記シール部材200に付勢する圧縮コイルスプリング202が弾装されている。
【0025】
前記容器本体2の上方側部にはカートリッジホルダに着脱可能な係止部材5,6が一体に設けられている。そして、図2(a)に示すように一方の係止部材5の下方部には回路基板(IC基板)7が配設され、他方の係止部材6の下方部には同図(a)および(b)に示すようにバルブ収容室8が配設されている。
【0026】
なお、前記回路基板7は、インクに関する情報データ、例えば色種,顔料/染料系インクの種別,インク残量,シリアル番号,有効期限および対象機種等のデータを書き込み可能に保存した記憶素子を有している。
【0027】
前記バルブ収容室8は、図8に示すように、カートリッジ挿入側(下側)に開口する内部空間を有し、その内部空間中を前記インクカートリッジ1に適合する記録装置側の識別片73(図9に図示)およびバルブ作動杆70が進退する。そして前記内部空間の上部には、前記バルブ作動杆70の進退によって回動する識別用のブロック87の操作アーム66が収容されている。また前記内部空間の下部には、記録装置に対する適否を判断するための識別用凸部68が設けられている。そして、この識別用凸部68は、記録装置側のインク供給針72(図9に図示)をインク供給口4に連通させる以前(後述する大気開放弁が開弁する以前)において、カートリッジホルダ71(図9に図示)の識別片73による判定を可能にする位置に配置されている。
【0028】
また、バルブ収容室8(大気開放室501)の室壁8aには、図8に示すように、大気開放弁601の開閉動作によって開閉する大気導通孔としての貫通孔60が設けられている。この貫通孔60の一方開口部側には前記操作アーム66が配置されており、他方開口部側には前記大気開放弁601が配置されている。前記操作アーム66は、加圧フィルム(伸縮性フィルム)61を押圧する操作部66bを有し、前記バルブ作動杆70の進路に斜め上方に突出して配置され、かつ回動支点66aを介して前記容器本体2に固定されている。
【0029】
前記加圧フィルム61は、前記貫通孔60を閉塞するように前記室壁8aに取り付けられており、全体がゴム等の弾性シール部材によって形成されている。そして、この加圧フィルム61と前記貫通孔60の開口周縁との間に形成された内部空間は、第一インク収容室11(図5に図示)に連通する貫通孔67(図6に図示)に開口されている。
【0030】
前記大気開放弁601は、図8に示すように、前記貫通孔60を開閉する弁体65およびこの弁体65を前記貫通孔60の開口周縁に常時付勢する弾性部材(板ばね)62を有している。このうち弾性部材62の上方端部には貫通孔62bが設けられ、この貫通孔62bに突起64が挿入され、前記突起64によって移動規制(案内)される。一方、その下端部は前記容器本体2上に突起63を介して固定されている。
【0031】
なお、図1において、符号88は前記容器本体2の上面部に前記ブロック87に対応して貼付される識別用のラベル、89は前記インク供給口4(貫通孔200a)を封止するためのフィルム、90は前記第一開口部85,第二開口部86を封止するためのフィルムである。また、91はインク充填済みのインクカートリッジ1を包むためのパックである。
【0032】
次に、前記した容器本体2内の「インク流路系」と「空気流路系」につき、図1〜図9を用いて説明する。
【0033】
「インク流路系」
前記インクカートリッジ1には、図1に示すように、前記容器本体2の正面側に内フィルム(遮気性フィルム)56,502を介して前記蓋体3を接合することにより、また前記容器本体2の背面側に外フィルム(遮気性フィルム)57を介して保護ラベル83を接合することにより内部空間が形成されている。この内部空間は、図3〜図5に示すように、前記記録ヘッド112(図9に図示)に対するインク供給口側が若干下方となるように延在する仕切壁10によって上下に分割形成されている。この内部空間の下部領域は、前記記録ヘッド112の接続状態において大気中に開放するインク収容室11とされている。
【0034】
前記第一インク収容室11には、各高さ位置が互いに異なる二つの中間壁300,301が配設されている。一方の中間壁300は、前記第一インク収容室11の片側側面部と所定の間隔をもって配置されている。他方の中間壁301は、前記インク収容室11の底面部に対向し、前記中間壁300のインク供給口側に配置されている。この中間壁301は、インク注入方向(上下)に並列する二つの空間部11a,11bに前記第一インク収容室11を隔成している。また、この中間壁301には、前記第一開口部85の軸線と同一の軸線をもつ貫通孔301aが設けられている。
【0035】
一方、前記内部空間の上部領域は、前記仕切壁10を底面部とする枠部14によって区画されている。前記枠部14の内部空間は、前記記録ヘッド112に接続するインクエンド室(一部)を構成し、このインクエンド室の正面側が連通口15aを有する垂直壁15によって左右に分割形成されている。この分割形成された内部空間の一方側領域は第二インク収容室16とされ、また他方側領域は第三インク収容室17とされている。
【0036】
前記第二インク収容室16には、前記第一インク収容室11に連通する連通流路18が接続されている。この連通流路18は、上下位置に連通口18a,18bを有している。そして、この連通流路18は、前記容器本体2の背面に開口して上下方向に延在する凹部18c(図6に図示)およびこの凹部18cの開口を閉塞して封止する遮気性フィルム(外フィルム57)によって形成されている。
【0037】
また、この連通流路18の上流側には、前記第一インク収容室11内に連通する上下二つの連通口19a,19bを有する隔壁19が設けられている。一方の連通口19aは、前記第一インク収容室11内の下方領域に開口する位置に配置されている。他方の連通口19bは、前記第一インク収容室11内の上方領域に開口する位置に配置されている。
【0038】
一方、前記第三インク収容室17側には、横長の仕切壁22および環状の仕切壁24によって、図7に示すフィルタ55(不織布フィルタ)を収容するフィルタ室34(図5に図示)が形成され、フィルタ室34の裏面には、図7に示す差圧弁52(膜弁)を収容する差圧弁収容室33(図6に図示)が形成されている。前記仕切壁25には、前記フィルタ55を通過したインクを前記フィルタ室34から前記差圧弁収容室33に導く貫通孔25aが設けられている。
【0039】
前記仕切壁24の下部には前記仕切壁10との間に連通口26aを有する仕切壁26が、またその側方には前記枠部14との間に連通口27aを有する仕切壁27が設けられている。そして、前記仕切壁27と前記枠部14との間には、前記連通口27aに連通し、かつ上下方向に延在する連通路28が設けられている。この連通路28の上方部には、前記フィルタ室34に前記連通口24aおよび領域31を介して連通する貫通孔29が連設されている。
【0040】
前記貫通孔29は、前記仕切壁27に連続する仕切壁(環状壁)30によって形成されている。
【0041】
前記領域31は、前記仕切壁22,24,30および仕切壁30a(図6に図示)によって形成されている。この領域31は、前記容器本体2の一方端部(前記貫通孔29に連通する部分)が深く、他方端部(前記フィルタ室34に連通する部分)が浅く形成されている。
【0042】
前記差圧弁収容室33には、図7に示すように、エラストマー等の弾性変形可能な差圧弁としての膜弁52が収容されている。この膜弁52は、貫通孔52cを有し、圧縮コイルスプリング50によってフィルタ室側に付勢され、かつその外周縁が環状の厚肉部52aを介して容器本体2に超音波溶着によって固定されている。前記圧縮コイルスプリング50は、一方端部が前記膜弁52のスプリング受け52bに、他方端部が前記差圧弁収容室33内のスプリング受け203に支持されている。この圧縮コイルスプリング50と前記膜弁52の位置精度は、この差圧弁で差圧を制御する場合に重要な要素であり、図7に示すように、曲がりや位置ずれ等がなく、圧縮コイルスプリング50で膜弁52の凸部を配置する必要がある。
【0043】
なお、図中符号54は、前記膜弁52の厚肉部52aに一体に成形された枠部を示す。
【0044】
前記フィルタ室34には、図7に示すように、インクを通過させ、かつ塵埃等を捕捉する前記フィルタ55が配置されている。このフィルタ室34の開口部は前記内フィルム56によって、また前記差圧弁収容室33の開口部は前記外フィルム57によって封止されている。そして、インク供給口4内の圧力が低下すると、膜弁52が圧縮コイルスプリング50の付勢力に抗して弁座部25bから離れる(貫通孔52cが開口する)ため、フィルタ55を通過したインクは貫通孔52cを通過し、凹部35によって形成された流路を経てインク供給口4に流れ込むように構成されている。また、インク供給口4内のインク圧力が所定の値に上昇すると、膜弁52が圧縮コイルスプリング50の付勢力によって弁座部25bに着座し、インクの流通を遮断するように構成されている。このような動作を繰り返すことにより、一定の負圧を維持しながらインクがインク供給口4に供給される。
【0045】
「空気流路系」
前記容器本体2の背面部には、図6に示すように、流路抵抗を高くする蛇行溝36および大気中に開口する幅広な凹溝37(斜線部)が、さらには前記第一インク収容室11(図5に図示)に至る平面ほぼ矩形状の凹部38(空間部)が設けられている。前記凹部38内には枠部39およびリブ40が設けられ、これらに通気性フィルム84を張設して大気通気室が形成されている。また、前記凹部38の底面部(壁部)には貫通孔41が設けられ、前記第二インク収容室16の仕切壁42(図5に図示)によって区画された細長い領域43に連通されている。この領域43は貫通孔44を有し、仕切壁603によって区画された連通溝45およびこの連通溝45に開口する貫通孔46を介して大気開放室501(図8に図示)に連通されている。この大気開放室501の開口部は、図1に示す前記内フィルム(遮気性フィルム)502によって封止されている。
【0046】
以上の構成により、図9に示すようにカートリッジホルダ71にインクカートリッジ1が装着されると、カートリッジホルダ71のバルブ作動杆70が図8に示す操作アーム66に当接して凸部66b(加圧フィルム61)を弁体側に移動させる。これにより、弁体65が貫通孔60の開口周縁から離間し、図5に示すインク収容室11が貫通孔67,貫通孔60,貫通孔46,溝45,貫通孔44,領域43および貫通孔41等を介して図6に示す凹部38(大気中)に開放する。また、インク供給口4内の弁体201がインク供給針72の挿入によって開弁する。
【0047】
そして、インク供給口4内の弁体201が開弁し、記録ヘッド112によってインクが消費されると、インク供給口4の圧力が規定値以下に低下するため、図7に示す差圧弁収容室33内の膜弁52が開弁し(インク供給口4の圧力が規定値以上に上昇すると、膜弁52が閉弁する)、差圧弁収容室33内のインクがインク供給口4を介して記録ヘッド112に流れ込む。
【0048】
さらに、記録ヘッド112でのインクの消費が進行すると、第一インク収容室11のインクが図4に示す連通流路18を介して第二インク収容室16に流れ込む。
【0049】
一方、インク消費に伴い、大気と連通した貫通孔67(図5に図示)から空気が流入し、第一インク収容室11のインク液面が下がる。さらに、インクが消費され、インク液面が連通口19aに達すると、第二インク収容室16内に第一インク収容室11(インク供給時に貫通孔67を介して大気中に開放)からのインクが連通流路18を経由して空気と共に流れ込む。そして、気泡が浮力によって上昇するため、インクだけが垂直壁15下部の連通口15aを経て第三インク収容室17に流れ込み、この第三インク収容室17から仕切壁26の連通口26aを通過して連通路28を上昇し、連通路28から領域31および連通口24aを介してフィルタ室34の上部に流れ込む。
【0050】
この後、フィルタ室34内のインクが図7に示すフィルタ55を通過して貫通孔25aから差圧弁収容室33に流れ込み、さらに弁座部25bから離間する膜弁52の貫通孔52cを通過してから、図6に示す凹部35内を下降してインク供給口4に流れ込む。
【0051】
このようにして、インクカートリッジ1から記録ヘッド112にインクが供給される。
【0052】
なお、異種のインクカートリッジ1がカートリッジホルダ71に装着される場合には、インク供給口4がインク供給針72に到達する以前に、識別用凸部68(図8に示す)がカートリッジホルダ71の識別片73(図9に図示)に当接し、バルブ作用杆70の進入が阻止される。したがって、異種インクカートリッジの装着による不具合の発生を防止することができる。また、この状態では、バルブ作動杆70が操作アーム66にも到達しないため、弁体65が閉弁状態を維持して、放置によるインク収容室11内のインク溶媒の蒸発が防止される。
【0053】
一方、インクカートリッジ1がカートリッジホルダ71の装着位置から引き抜かれた場合には、操作アーム66が作動杆70による支持を失って弾性復帰し、これに伴い弁体65が弾性復帰して貫通孔60を閉塞するため、凹部38とインク収容室11との連通が遮断される。
【0054】
次に、本実施形態に係るインクカートリッジ1の検査方法につき、図3〜図8および図10に基づいて説明する。図10は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの検査方法を説明するために示す背面図である。
【0055】
なお、本検査方法は、インク・空気流路のリーク確認および大気バルブの作動・封止確認とを行うプロセスからなるため、これら「インク流路のリーク確認」および「空気流路のリーク確認」と「大気バルブの作動確認」と「大気バルブの封止確認」との各プロセスに分けて説明する。
【0056】
各プロセスを実施する場合、図10に示すように、インク供給口4が上側になるような姿勢にインクカートリッジ1を配置する。そして、インクカートリッジ1の各開口部(大気導通用開口部としての第一開口部85,インク注入用開口部としての第二開口部86,インク供給用開口部としてのインク供給口4)には、バルブ400a〜400fを有する第一流体回路400を接続する。この第一流体回路400におけるバルブ400a〜400cのカートリッジ接続側と反対側にリークテスタ400gを接続し、バルブ400d〜400fのカートリッジ接続側と反対側に圧力空気供給機400h〜400jを接続する。また、インクカートリッジ1の凹溝(空気流路)37には、バルブ401aを有する第二流体回路401を接続する。
【0057】
「インク流路のリーク確認」
インク流路のリーク確認は、(イ)〜(ハ)に示すリークテストを実施することによりなされる。
【0058】
(イ)先ず、バルブ400b,400d,400fを開弁するとともに、バルブ400a,400c,400eおよび大気開放弁601を閉弁する。この場合、バルブ400d,400fの開弁およびバルブ400a,400cの閉弁によってインク供給口4および第二開口部86が圧力空気供給機400h,400jに接続されるとともに、バルブ400bの開弁およびバルブ400eの閉弁によって第一開口部85がリークテスタ400gに接続される。また、大気開放弁601の閉弁によって第一インク収容室11の大気中への連通が遮断される。
【0059】
次いで、圧力空気供給機400h,400jからインク供給口4と第二開口部86を介して所定量・所定圧(同一圧)の圧力空気をインクカートリッジ1内に供給し、第一開口部85から流出する圧力空気の流出量をリークテスタ400gによって読み取る。
【0060】
しかる後、リークテスタ400gにおける読取値(測定値)と予め設定された規定値とを比較し、この比較結果に基づいてインクカートリッジ1のリークを検査する。
【0061】
このような方法により、容器本体2の背面部における外フィルム57(フィルム一部)の取付(封止)良否が判定され、また容器本体2の正面部における内フィルム56(フィルム外周部)の取付(封止)良否が判定される。
【0062】
先ず、外フィルム57による封止良否の判定について説明する。
【0063】
すなわち、外フィルム57による封止が<良好>と判定される場合は、インク供給口4から供給した圧力空気が凹部35から、また第二開口部86から供給した圧力空気が連通流路18から共に外部に漏洩することがない。このため、各圧力空気が容器本体2内の各インク流路を流動して差圧弁52に到達し、差圧弁52を互いに反対の方向から同一の作用力で押圧すると、差圧弁52の閉弁状態が保持される。これにより、インク供給口4から供給した圧力空気が第一開口部85に到達せず、第二開口部86から供給した圧力空気が第一開口部85を介して第一流体回路400に流出する。よって、リークテスタ400gにおいて規定量の圧力空気が検出される。
【0064】
一方、外フィルム57による封止が<不良>と判定される場合は、次の(1)〜(3)に示す三通りである。
【0065】
(1) 凹部35の封止が十分であるが、連通流路18の封止が不十分である場合である。この場合、インク供給口4から供給した圧力空気が凹部35から外部に漏洩せず、これに対して第二開口部86から供給した圧力空気が連通流路18から外部に漏洩する。このため、凹部35を流動する圧力空気が連通流路18を流動する圧力空気より大きい作用力で差圧弁52を押圧するが、差圧弁52の閉弁状態が保持される。これにより、インク供給口4から供給した圧力空気が第一開口部85に到達せず、第一開口部85から第一流体回路400に流出する圧力空気が規定量より少なくなる。よって、リークテスタ400gにおいて規定量より少ない流出量の圧力空気が検出される。
【0066】
(2) 連通流路18の封止が十分であるが、凹部35の封止が不十分である場である。この場合、第二開口部86から供給した圧力空気が連通流路18から外部に漏洩せず、これに対してインク供給口4から供給した圧力空気が凹部35から外部に漏洩する。このため、連通流路18を流動する圧力空気が凹部35を流動する圧力空気より大きい作用力で差圧弁52を押圧し、差圧弁52が閉弁状態から開弁する。これにより、インク供給口4から供給した圧力空気が第一開口部85に到達せず、第二開口部86から供給した圧力空気の一部が差圧弁52を通過して凹部35から外部に漏洩し、第一開口部85を介して第一流体回路400に流出する圧力空気が規定量より少なくなる。よって、リークテスタ400gにおいて規定量より少ない流出量の圧力空気が検出される。
【0067】
(3) 凹部35および連通流路18の封止が共に不十分である場合である。この場合、インク供給口4から供給した圧力空気が凹部35から、また第二開口部86から供給した圧力空気が連通流路18から共に外部に漏洩する。このため、差圧弁52の閉弁状態が保持され、インク供給口4から供給した圧力空気が第一開口部85に到達することがない。これにより、第一開口部85から第一流体回路400に流出する圧力空気が規定量より少なくなる。よって、リークテスタ400gにおいて規定量より少ない流出量の圧力空気が検出される。
【0068】
次に、内フィルム56による封止良否の判定について説明する。
【0069】
すなわち、内フィルム56による封止が<良好>と判定される場合は、第二開口部85から供給した圧力空気が容器本体2の正面部から外部に漏洩することがない。このため、各圧力空気が容器本体2の各インク流路を流動して差圧弁52に到達し、差圧弁52を互いに反対の方向から同一の作用力で押圧すると、差圧弁52の閉弁状態が保持される。これにより、インク供給口4から供給した圧力空気が第一開口部85に到達せず、第二開口部86から供給した圧力空気が第一開口部85を介して第一流体回路400に流出する。よって、リークテスタ400gにおいて規定量の圧力空気が検出される。
【0070】
一方、内フィルム56による封止が<不良>と判定される場合は、第二開口部86から供給した圧力空気が容器本体2の正面部から外部に漏洩する。このため、差圧弁52の閉弁状態が保持され、インク供給口4から供給した圧力空気が第一開口部85に到達することがない。これにより、第一開口部85から第一流体回路400に流出する圧力空気が規定量より少なくなる。よって、リークテスタ400gにおいて規定量より少ない流出量の圧力空気が検出される。
【0071】
(ロ)また、バルブ400a,400c,400eを開弁するとともに、バルブ400b,400d,400fおよび大気開放弁601を閉弁する。この場合、バルブ400a,400cの開弁およびバルブ400d,400fの閉弁によってインク供給口4および第二開口部86がリークテスタ400gに接続されるとともに、バルブ400eの開弁およびバルブ400bの閉弁によって第一開口部85が圧力空気供給機400iに接続される。また、大気開放弁601の閉弁によって第一インク収容室11の大気中への連通が遮断される。
【0072】
そして、圧力空気供給機400iから第一開口部85を介して所定量・所定圧の圧力空気をインクカートリッジ1内に供給し、インク供給口4および第二開口部86から流出する圧力空気の流出量をリークテスタ400gによって読み取る。
【0073】
しかる後、リークテスタ400gにおける読取値(測定値)と予め設定された規定値とを比較し、この比較結果に基づいてインクカートリッジ1のリークを検査する。
【0074】
このような方法により、容器本体2の背面部(加圧フィルム61の取付部)における加圧フィルム61の取付(封止)良否が判定される。
【0075】
すなわち、容器本体2における加圧フィルム61による封止が<良好>と判定される場合は、第一開口部85から供給した圧力空気が容器本体2の背面部から外部に漏洩することがない。このため、圧力空気が容器本体2内のインク流路を経て差圧弁52に到達し、差圧弁52を開弁する方向に押圧すると、差圧弁52が閉弁状態から開弁する。これにより、第一開口部85から供給した圧力空気が差圧弁52を経て凹部35に流動し、さらに凹部35を経てインク供給口4から第一流体回路400に流出する。また、第一開口部85から供給した圧力空気が第二開口部86を介して第一流体回路400に流出する。よって、リークテスタ400gにおいて規定量の圧力空気が検出される。
【0076】
一方、容器本体2における加圧フィルム61による封止が<不良>と判定される場合は、第一開口部85から供給した圧力空気が容器本体2の背面部から外部に漏洩する。このため、インク供給口4および第二開口部86から第一回路400gに流出する圧力空気が規定量より少なくなる。よって、リークテスタ400gにおいて規定量より少ない流出量の圧力空気が検出される。
【0077】
(ハ)更に、バルブ400b,400c,400dを開弁するとともに、バルブ400a,400e,400fおよび大気開放弁601を閉弁する。この場合、バルブ400b,400cの開弁およびバルブ400e,400fの閉弁によって第一開口部85および第二開口部86がリークテスタ400gに接続されるとともに、バルブ400dの開弁およびバルブ400aの閉弁によってインク供給口4が圧力空気供給機400hに接続される。また、大気開放弁601の閉弁によって第一インク収容室11の大気中への連通が遮断される。
【0078】
次いで、圧力空気供給機400hからインク供給口4を介して所定量・所定圧の圧力空気をインクカートリッジ1内に供給し、第一開口部85および第二開口部86から流出する圧力空気の流出量をリークテスタ400gによって読み取る。
【0079】
しかる後、リークテスタ400gにおける読取値(測定値)と予め設定された規定値とを比較し、この比較結果に基づいてインクカートリッジ1のリークを検査する。
【0080】
このような方法により、容器本体2の背面部(差圧弁収容室33)における差圧弁52の取付(封止)良否が判定される。
【0081】
すなわち、容器本体2における差圧弁52による封止が<良好>と判定される場合は、インク供給口4から供給した圧力空気が差圧弁52の取付部における空隙を通過することがない。このため、圧力空気が凹部35を経て差圧弁52に到達し、差圧弁52を押圧しても、差圧弁52の閉弁状態が維持される。これにより、インク供給口4から供給した圧力空気が差圧弁52を経て第一開口部85および第二開口部86から流出することはない。よって、リークテスタ400gにおいて圧力空気が検出されない。
【0082】
一方、差圧弁52による封止が<不良>と判定される場合は、インク供給口4から供給した圧力空気が差圧弁52の取付部における空隙を通過する。このため、圧力空気が凹部35等のインク流路を経て第一開口部85および第二開口部86に到達すると、これら開口部85,86を介して第一流体回路400に流出する。よって、リークテスタ400gにおいて圧力空気が検出される。
【0083】
したがって、(イ)〜(ハ)に示すリークテストによると、容器本体2におけるカバーフィルム(外フィルム57,内フィルム56,加圧フィルム61)および差圧弁52の取付(封止)良否を判定することができ、インク注入前において「インク流路のリーク確認」を行うことができる。
【0084】
「空気流路のリーク確認」
空気流路のリーク確認は、次に示すようにして行われる。
【0085】
先ず、バルブ400a,400c,400e,401aおよび大気開放弁601を開弁するとともに、バルブ400b,400d,400fを閉弁する。この場合、バルブ400a,400cの開弁およびバルブ400d,400fの閉弁によってインク供給口4および第二開口部86がリークテスタ400gに接続されるとともに、バルブ400eの開弁およびバルブ400bの閉弁によって第一開口部85が圧力空気供給機400iに接続される。また、バルブ401aおよび大気開放弁601の開弁によって第一インク収容室11が空気流路(蛇行溝36等)を介して大気中に連通する。
【0086】
次いで、圧力空気供給機400iから第一開口部85を介して所定量・所定圧の圧力空気をインクカートリッジ1内に供給し、インク供給口4および第二開口部86から流出する圧力空気の流出量をリークテスタ400gによって読み取る。
【0087】
しかる後、リークテスタ400gにおける読取値(測定値)と予め設定された規定値とを比較し、この比較結果に基づいてインクカートリッジ1のリークを検査する。
【0088】
このような方法により、空気流路(凹溝37等)における流通性の良否が判定される。
【0089】
すなわち、空気流路の流通性が<良好>と判定される場合は、第一開口部85から供給した圧力空気が第二開口部86およびインク供給口4を介して第一流体回路400に流出するとともに、第一インク収容室11および空気流路(蛇行溝36等)を経て大気中に流出する。このため、第一開口部85から供給した圧力空気の一部が第二開口部86およびインク供給孔4を介して第一流体回路400に流出する。よって、リークテスタ400gにおいて規定量より少ない流出量の圧力空気が検出される。
【0090】
一方、空気流路の流通性が<不良>と判定される場合は、第一開口部85から供給した圧力空気が第二開口部86およびインク供給口4から流出するが、インクタンク室11および空気流路を経て大気中に流出することがない。このため、第一開口部85から供給した圧力空気が第二開口部86およびインク供給孔4を介して第一流体回路400に流出する。よって、リークテスタ400gにおいて規定量の圧力空気が検出される。
【0091】
したがって、空気流路における流通性の良否を検出することができ、インク注入前において「空気流路のリーク確認」を行うことができる。
【0092】
なお、圧力空気のインク供給口4からの流出は、第一開口部85から供給した圧力空気が差圧弁52を開弁して通過し、さらに凹部35を流動することにより行われる。
【0093】
「大気バルブの作動(有無)確認」
大気バルブの作動確認は、次に示すようにして行われる。 先ず、バルブ400a,400c,400e,401aを開弁するとともに、バルブ400b,400d,400fおよび大気開放弁601を閉弁する。この場合、バルブ400a,400cの開弁およびバルブ400d,400fの閉弁によってインク供給口4および第二開口部86がリークテスタ400gに接続されるとともに、バルブ400eの開弁およびバルブ400bの閉弁によって第一開口部85が圧力空気供給機400iに接続される。
【0094】
次いで、圧力空気供給機400iから第一開口部85を介して所定量・所定圧の圧力空気をインクカートリッジ1内に供給し、インク供給口4および第二開口部86から流出する圧力空気の流出量をリークテスタ400gによって読み取る。
【0095】
しかる後、大気開放弁601を開弁してから、圧力空気供給機400iから第一開口部85を介して所定量・所定圧の圧力空気をインクカートリッジ1内に供給し、インク供給口4および第二開口部86から流出する圧力空気の流出量をリークテスタ400gによって読み取る。
【0096】
そして、リークテスタ400gにおけるバルブ開弁・閉弁時の各読取値(測定値)を比較し、この比較結果に基づいてインクカートリッジ1を検査する。
【0097】
このような方法により、インクカートリッジ1における大気開放弁601の作動有無が判定される。
【0098】
すなわち、大気開放弁601の作動が<有り>と判定される場合は、大気開放弁601が閉弁状態から作動(開弁)すると、第一インク収容室11が大気中に連通するため、第一開口部85から供給した圧力空気が大気中に一部流出する。このため、第二開口部86およびインク供給口4を介して第一流体回路400に流出する圧力空気の流出量が規定量より少なくなる。よって、リークテスタ400gにおいて規定量より少ない流出量の圧力空気が検出される。
【0099】
一方、大気開放弁601の作動が<無し>と判定される場合は、大気開放弁601が閉弁状態のままであるため、第一開口部85から供給した圧力空気が大気中に流出せず、第二開口部86およびインク供給口4を介して第一流体回路400に規定量の圧力空気が流出する。よって、リークテスタ400gにおいて規定量の圧力空気が検出される。
【0100】
したがって、インクカートリッジ1における大気開放弁601の作動有無を判定することができ、インク注入前において「大気開放弁の作動確認」を行うことができる。
【0101】
なお、本実施形態における作動圧の確認は、大気開放弁601を閉弁後に開弁することにより行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、大気開放弁601を開弁後に閉弁することにより行うこともできる。
【0102】
また、圧力空気のインク供給口4からの流出は、前記した場合と同様に、第一開口部85から供給した圧力空気が差圧弁52を開弁して通過し、さらに凹部35を流動することにより行われる。
【0103】
「大気バルブの封止確認」
大気バルブの封止確認は、次に示すようにして行われる。
【0104】
先ず、バルブ400a,400c,400e,401aを開弁するとともに、バルブ400b,400d,400fおよび大気開放弁601を閉弁する。この場合、バルブ400a,400cの開弁およびバルブ400d,400fの閉弁によってインク供給口4および第二開口部86がリークテスタ400gに接続されるとともに、バルブ400eの開弁およびバルブ400bの閉弁によって第一開口部85が圧力空気供給機400iに接続される。また、大気開放弁601の閉弁によって第一インク収容室11の大気中への連通が遮断される。
【0105】
次いで、圧力空気供給機400iから第一開口部85を介して所定量・所定圧の圧力空気をインクカートリッジ1内に供給し、インク供給口4および第二開口部86から流出する圧力空気の流出量をリークテスタ400gによって読み取る。
【0106】
しかる後、リークテスタ400gにおける読取値(測定値)と予め設定された規定値とを比較し、この比較結果に基づいてインクカートリッジ1のリークを検査する。
【0107】
このような方法により、インクカートリッジ1における大気開放弁601による封止良否が判定される。
【0108】
すなわち、大気開放弁601の封止が<良好>と判定される場合は、第一開口部85から供給した圧力空気が第一インク収容室11および空気流路(蛇行溝36等)を介して大気中に流出せず、第二開口部86およびインク供給口4を介して規定量の圧力空気が第一流体回路400に流出する。よって、リークテスタ400gにおいて規定量の圧力空気が検出される。
【0109】
一方、大気開放弁601の封止が<不良>と判定される場合は、第一開口部85から供給した圧力空気が第二開口部86およびインク供給口4から流出するとともに、第一インク収容室11および空気流路を経て大気中に流出する。よって、リークテスタ400gにおいて規定量より少ない流出量の圧力空気が検出される。
【0110】
したがって、インクカートリッジ1における大気開放弁601による封止良否を判定することができ、インク注入前において「大気開放弁の封止確認」を行うことができる。
【0111】
なお、圧力空気のインク供給口4からの流出が、第一開口部85から供給した圧力空気が差圧弁52を開弁して通過し、さらに凹部35を流動することにより行われることは、前記した場合と同様である。
【0112】
次に、本発明の別の発明に係るインクカートリッジ1の検査方法(差圧弁の作動圧の検査方法)につき、図3〜図8および図11とに基づいて説明する。図11は、本発明の別の発明に係るインクカートリッジの検査方法を説明するために示す背面図である。
【0113】
なお、本検査方法を実施する場合、図11に示すように、インク供給口4が上側になるような姿勢にインクカートリッジ1を配置する。そして、インクカートリッジ1のインク供給口4にリークテスタ400mを接続するとともに、第二開口部86に圧力空気供給機400kを接続する。また、インクカートリッジ1内に第二開口部86から供給する圧力空気の圧力を測定する圧力計701を圧力空気供給機400kに接続する。
【0114】
本検査方法は、次に示すようにして行われる。なお、第一開口部85が閉塞され、大気開放弁601が閉弁されているものとする。
【0115】
先ず、圧力空気供給機400kから第二開口部86を介してインクカートリッジ1内に所定圧・所定量の圧力空気を供給する。この場合、第二開口部86からインクカートリッジ1内に圧力空気が供給されると、連通流路18およびインクタンク室(第二インク収容室16および第三インク収容室17)を経て差圧弁52に到達し、この差圧弁52を開弁する方向に押圧する。このため、差圧弁52が開弁し、第二開口部86からの圧力空気が差圧弁52を経て凹部35を流動し、インク供給口4からインクカートリッジ1外に流出する。
【0116】
次いで、圧力空気供給機400kによって圧力空気の圧力を差圧弁52が閉弁する(インク供給口4から流出する圧力空気の流出量が「0」に到達する)まで調整し、この閉弁時において第二開口部86から供給する圧力空気の圧力(差圧弁52の保持圧)を圧力計701によって読み取る。
【0117】
しかる後、圧力計701における読取値(測定値)と予め設定された規定値とを比較し、この比較結果に基づいてインクカートリッジ1における差圧弁52の作動圧を検査する。
【0118】
このような方法により、差圧弁52の作動圧が<良好>と判定される場合は、第二開口部86から供給される圧力空気の初期圧力を5〜10kPaとすると、閉弁時における差圧弁52の保持圧が圧力計701において0.75〜1.3kPaの測定値を示す。
【0119】
一方、差圧弁52の作動圧が<不良>と判定される場合は、閉弁時における差圧弁52の作動圧が圧力計701において0.75〜1.3kPa外の測定値を示す。
【0120】
このようにして、圧力空気の圧力を測定した値と規定値とを比較し、この比較結果に基づき差圧弁52における作動圧の適否を判定することができ、インク注入前にインクカートリッジ1における「差圧弁における作動圧の確認」を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの全体を分解して示す斜視図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの外観を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を斜め上方から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を斜め下方から見た斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を示す正面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を示す背面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの負圧発生手段収容室を拡大して示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るインクカートリッジのバルブ収容室を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係るインクカートリッジのカートリッジホルダに対する接続状態を示す正面図である。
【図10】本発明に係るインクカートリッジの検査方法を説明するために示す背面図である。
【図11】本発明の別の発明に係るインクカートリッジの検査方法を説明するために示す背面図である。
【符号の説明】
【0122】
1 インクカートリッジ
2 容器本体
3 蓋体
4 インク供給口
8 バルブ収容室
11 第一インク収容室
15 垂直壁
15a 連通口
16 第二インク収容室
17 第三インク収容室
18 連通流路
18a,18b 連通口
18c 凹部
19 隔壁
19a,19b 連通口
25 仕切壁
25a 貫通孔
25b 弁座部
26 仕切壁
26a 連通口
28 連通路
29 貫通孔
31 領域
33 差圧弁収容室
34 フィルタ室
35,38 凹部
52 膜弁(差圧弁)
55 フィルタ
56 内フィルム
57 外フィルム
85 第一開口部
86 第二開口部
400 第一流体回路
400a〜400f バルブ
400h〜400k 圧力空気供給機
400m リークテスタ
401 第二流体回路
401a バルブ
701 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録装置用のヘッドに着脱可能なインク供給用開口部およびインク・空気流通部を形成するための複数の凹部を有するカートリッジ本体と、
このカートリッジ本体に取り付けられ、前記凹部を封止して前記インク・空気流通部を形成するためのカバーフィルムと、
このカバーフィルムと前記カートリッジ本体との間に収容され、前記凹部のうち前記インク供給用開口部に連通する凹部の上流側に位置する差圧弁とを備え、
前記カートリッジ本体は、前記ヘッドへの着脱による大気バルブの開弁・閉弁によって大気中と連通・連通遮断するインクタンク室と、
このインクタンク室に連通し、かつ前記差圧弁を経て前記インク供給用開口部に至るインクエンド室とを有するケースによって形成され、
このケースに、前記インクタンク室に連通する大気導通用開口部および前記インクエンド室に連通するインク注入用開口部を設けてなる
インクカートリッジの検査方法であって、
前記開口部のうちインク供給用開口部を開放するとともに、
インク注入用開口部から前記ケース内に所定量・所定圧の圧力空気を供給することにより前記差圧弁を開弁し、
次に、前記ケース内に供給する圧力空気の圧力を調整することにより前記差圧弁を閉弁し、この差圧弁の閉弁時における保持圧を測定した後、
この測定値と予め設定された規定値とを比較し、
この比較結果に基づいて前記差圧弁の作動圧を検査する
ことを特徴とするインクカートリッジの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−51830(P2006−51830A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315845(P2005−315845)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【分割の表示】特願2001−320732(P2001−320732)の分割
【原出願日】平成13年10月18日(2001.10.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】