説明

インクカートリッジ

【課題】インクが導出される部分から垂れ落ちるインク滴を捕捉可能なインクカートリッジを提供すること。
【解決手段】インクカートリッジ3は、インクを貯留するインク貯留室を有するカートリッジ本体20と、カートリッジ本体20の前面から突出するように設けられ、インク貯留室内のインクを導出するインク導出部23とを備え、インク導出部23は、その突出端面23aにおいて開口し、且つ、インク貯留室と連通するインク導出口24を有する。さらに、カートリッジ本体20の前面の、インク導出部23から離れた位置に、コイルバネ40、41が設けられ、コイルバネ40、41は、インク導出部23の突出方向に沿って、インク導出口24よりもさらに外側の位置まで延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタにインクを供給するインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のインクカートリッジが並べて配置されるインクジェット式記録装置が開示されている。インクカートリッジの容器本体の一表面には、インク供給口(インク導出口)が形成されており、インクカートリッジの装着時には、そのインク供給口にインクジェット式記録装置に設けられたインク供給針が挿入されて、インクカートリッジ内のインクがインクジェット式記録装置に供給される。インクカートリッジの容器本体の内部には、インク袋が収納されており、そのインク袋の内側と外側は、シール供給蓋により連通が遮断されている。シール供給蓋の内側には、バネ座が設けられており、そのバネ座がバネにより外部側に付勢され、シール供給蓋とバネ座とが当接して連通が遮断されている。よって、インク供給針がインク供給口に挿入された場合には、バネ座が反付勢方向に押されてインクの流路が形成される。
【0003】
【特許文献1】特開2005−238815号公報(図1及び図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のインクジェット式記録装置においては、インク供給口からインクカートリッジ内に挿入されたインク供給針にはインクが付着している。そして、インクカートリッジを取り外す際にインク供給針のインクがインク供給口に付着し、インク供給口からインク滴が外部に垂れ落ちることがあった。このようにインク供給口からインク滴が垂れ落ちると、そのインクによって、インクジェット式記録装置の内部やその周囲が汚れたり、手が汚れたりするという問題点があった。
【0005】
特に、インク供給口の連通の遮断を、バネ付勢されたインク供給口を開閉する弁を有するバルブ機構で行う場合には、かかる汚れの問題がより深刻になる。これは、弁がバネの付勢力によりインク供給口を閉じる方向に移動するため、インク供給口付近に滞留するインクがインク供給口の外に向けて押されるからであり、最悪の場合には、多量のインク滴がインク供給口から外部に垂れ落ちてしまうという問題点があった。
【0006】
なお、特許文献1のインクカートリッジは、そのインクカートリッジの一表面にインク供給口が形成されているが、その他に、インクカートリッジの一の面から外方に突出するインク供給部を有し、そのインク供給部の突出先端にインク供給口が形成されたインクカートリッジもある。このようなインク供給部の突出先端にインク供給口が形成されるインクカートリッジであっても、上記のバルブ機構を備えている場合には、インク滴の垂れ落ちが発生する。即ち、バルブ機構を備えたインクカートリッジが装着されるインクジェット式記録装置では、インクカートリッジの形状に関わらず、インク滴の垂れ落ちが発生しやすいという問題点があった。
【0007】
本発明の目的は、インクが導出される部分から垂れ落ちるインク滴を捕捉可能なインクカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のインクカートリッジは、インクを貯留するインク貯留室を有するカートリッジ本体と、前記カートリッジ本体の一表面から突出するように設けられ、前記インク貯留室内のインクを導出するインク導出部とを備え、前記インク導出部は、その突出端面において開口し、且つ、前記インク貯留室と連通するインク導出口を有し、 前記カートリッジ本体の前記一表面の、前記インク導出部から離れた位置に、少なくとも1つのコイルバネが設けられ、前記コイルバネは、前記インク導出部の突出方向に沿って、前記インク導出口よりもさらに外側の位置まで延在していることを特徴とする。
【0009】
本発明のインクカートリッジにおいては、インク導出口の周囲に少なくとも1つのコイルバネが配置されており、このコイルバネは、インク導出部の先端のインク導出口よりも、突出方向に関してさらに外側まで延在している。よって、インクカートリッジを交換する際にインク導出口から垂れたインク滴をコイルバネで受け止めることができる。また、コイルバネは螺旋状に巻かれた線材により構成されるため、隣接する線材の間には毛管力を発生させることのできる程度の微小な間隙が存在する。そのため、コイルバネで受け止めたインクを毛管力で保持することができる。
【0010】
請求項2に記載のインクカートリッジは、請求項1において、プリンタのカートリッジ装着部に着脱自在に装着されるインクカートリッジであって、前記コイルバネが、前記カートリッジ装着部への装着姿勢にあるときの、前記インク導出部よりも下方の位置に設けられていることを特徴とする。これにより、インクカートリッジをカートリッジ装着部から取り外す際に、インク導出口から落下するインク滴を確実に捕捉できる。
【0011】
請求項3に記載のインクカートリッジは、請求項1又は2において、前記コイルバネは複数設けられており、互いに平行に延在していることを特徴とする。これにより、各コイルバネがその螺旋形状の作用によってインク滴を保持できるとともに、コイルバネが複数あることでそれらの共同作用によってもインク滴を保持することができるため、より沢山のインク滴を確実に捕捉できる。
【0012】
請求項4に記載のインクカートリッジは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記プリンタは、前記インクカートリッジ内のインクを検知するインク検知手段と、前記インク検知手段と電気的に接続されるとともに、前記カートリッジ装着部内に配置された2つの接点とを有するものであり、前記インクカートリッジは、導電性材料で形成されるとともに、互いに離間して配置された2つの前記コイルバネを有し、さらに、前記2つのコイルバネは、それぞれ、前記インク貯留室に貯留された導電性を有するインクと導通可能に構成され、前記カートリッジ装着部に装着された状態で、前記2つのコイルバネの先端が前記カートリッジ装着部内の2つの接点に接触することを特徴とする。
【0013】
インクカートリッジがカートリッジ装着部に装着されたときに、導電性材料からなる2本のコイルバネが、カートリッジ装着部の2つの接点にそれぞれ接触する。ここで、インクの残量がある場合とない場合では、2つの接点間の電気抵抗に違いが出る。そのため、この電気抵抗値からインク貯留室のインクの有無を検出できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インクカートリッジを交換する際にインク導出口から垂れたインク滴をコイルバネで受け止めることができる。また、受け止めたインクをコイルバネの螺旋巻きの間に発生する毛管力で保持することができる。従って、インク供給口から垂れ落ちたインク滴によって、インクジェット式記録装置の内部やその周囲が汚れたり、手が汚れたりする可能性を低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、記録用紙Pに対してインクを吐出するノズル2aを備えたインクジェットヘッド2と、インクカートリッジ3が装着される装着部4(カートリッジ装着部)と、インクジェットヘッド2を一方向(紙面に対して垂直方向)に直線的に往復移動させるキャリッジ5と、記録用紙Pをインクジェットヘッド2の移動方向に対して垂直で且つインクジェットヘッド2のインク吐出面に平行な方向に搬送する搬送機構6と、インクジェットヘッド2内のエアや高粘度化したインクを吸引するパージ機構7と、インクジェットプリンタ1の全体動作を制御する制御装置8(図5参照)等を備えている。
【0016】
このインクジェットプリンタ1においては、インクジェットヘッド2がキャリッジ5により図1の紙面垂直方向に往復駆動されつつ、記録用紙Pが搬送機構6により図1の左右方向に搬送される。これに連動して、インクカートリッジ3が装着された装着部4から供給チューブ10を介してインクジェットヘッド2のノズル2aにインクが供給されるとともに、記録用紙Pに向けてノズル2aからインクが吐出されて、記録用紙Pが印刷される。
【0017】
また、パージ機構7は、インク吐出面に対して接近及び離隔する方向に移動可能で且つインク吐出面を覆うようにインクジェットヘッド2に装着可能なパージキャップ7aと、ノズル2aからインクを吸引する吸引ポンプ7bとを備えている。そして、インクジェットヘッド2が記録用紙Pに印刷可能な印刷範囲外にあるときは、吸引ポンプ7bにより、インクジェットヘッド2内に混入したエアや水分が蒸発して高粘度化したインクをノズル2aから吸引することが可能である。
【0018】
また、図1に示すように、装着部4は、一方向(図1の右方)に向かって開口した凹形状を有する。この凹形状の開口側からインクカートリッジ3が図1の左方に向けて水平方向に挿入されることで、装着部4にインクカートリッジ3が装着される。一方、装着部4に装着されているインクカートリッジ3の右端部が右方に水平方向に引っ張られることで、装着部4からインクカートリッジ3が取り外される。なお、装着部4には装着されたインクカートリッジ3を適正な装着位置において位置決めするロック機構(図示せず)が設けられている。このロック機構は、例えば、装着部4の開口を開閉する回動扉のようなものが用いられる。
【0019】
次に、インクカートリッジ3とこのインクカートリッジ3が装着される装着部4について、図1〜図3を参照して説明する。
図1、図2に示すように、インクカートリッジ3は、インクを貯留するカートリッジ本体20と、カートリッジ本体内のインクをインクジェットヘッド2へ供給するためのインク導出部23とを備えている。尚、以下のインクカートリッジの説明において、装着方向に関する前方(図1の左方)を前方、装着方向に関する後方(図1の右方)を後方と定義して説明する。また、インク導出部23が前方に向いており、装着部4に装着されるときのインクカートリッジ3の姿勢(図1の姿勢)を装着姿勢と称する。
【0020】
図1に示すように、カートリッジ本体20は、合成樹脂材料により形成された、略直方体形状の外形をなす中空の容器である。カートリッジ本体20の内部には、インクが貯留されるインク貯留室21が形成されている。尚、インク貯留室21に充填されるインクは、水を主成分とし、染料や顔料を含有した導電性を有する液体である。
【0021】
カートリッジ本体20の後面20bの上側部分には、大気連通口22が設けられている。この大気連通口22は、使用前の状態において、図示しないシール材により封止されている。そして、インクカートリッジを使用する直前に、このシール材が剥離されることによって、インク貯留室21内に大気が導入される。
【0022】
図2に示すように、カートリッジ本体20の前面20aには、前後方向(装着方向)に沿って突出した円筒形状を有するインク導出部23が設けられている。インク導出部23の突出端面23aには、インク貯留室21から流れてくるインクが外部へ排出されるインク導出口24が中央に形成されている。つまり、突出端面23aはインク導出口24を取り囲む環状面となっている。
【0023】
図3(a)に示すように、インク導出部23の内部には、インク導出口24とインク貯留室21を連通させる貫通孔25が形成されている。この貫通部25がインクを外部に供給するインク供給流路を形成する。貫通孔25は、インク導出口24側が小径孔29に、インク貯留室21側が大径孔30に形成されている。
【0024】
小径孔29のインク導出口24側には、円筒状のシール部材26が設けられている。シール部材26は、ゴム等の弾性材料によって構成されており、後述するインク供給管17の外周側面と密着することで、装着部4にインクカートリッジ3が装着されている際、小径孔29とインク供給管17の外周側面との間からインクが外部に漏れ出すのを防ぐものである。
【0025】
大径孔30内のインク貯留室21側(図3右側)にコイルバネ28が配置される一方で、小径孔29側(図3左側)には弁体27が配置されている。弁体27は、大径孔30とほぼ同じ径を有しており、コイルバネ27によって、大径孔30の段差面31と当接するように付勢されている。これにより、インク貯留室21内のインクが外部に漏れ出すのを防いでいる。つまり、弁体27とコイルバネ28とが設けられていることで、インクカートリッジ3からインクが排出される状態とインクが排出されない状態とを切り換えることができる。なお、弁体27は、後述するようにインク供給管17に押し込まれることで、段差面31との当接が解除され、このときインク貯留室21内のインクがインク供給管17内に流れ込む。
【0026】
また、カートリッジ本体20の前面20aの、インク導出部23よりも、装着姿勢における下方に離れた位置には、金属材料(導電性材料)からなる同一形状の2つのコイルバネ40、41が設けられ、これら2つのコイルバネ40、41は前面20aから前方に突出している。2つのコイルバネ40、41は、インク導出口24から垂れ落ちたインクを受け止めて捕捉するためのものである。
【0027】
2つのコイルバネ40、41は、インクカートリッジ3の幅方向に離間した状態で、幅方向に並べて配置されており、前方へ平行に延在している。図2(b)に示すように、2つのコイルバネ40、41はインク導出部23よりもさらに前方へ突出している。つまり、それらの突出先端40a、41aが、インク導出部23の突出先端23aよりも外側に位置している。
【0028】
図6に示すように、本実施形態のコイルバネ40、41は、線材が螺旋状に巻かれたものであり、螺旋巻きの間(螺旋状に巻かれた線材におけるコイル軸方向において隣接する部分の間)に隙間D2が存在している。そして、インク導出口24から落下したインクがコイルバネ40、41に受け止められた後に、螺旋巻きの間においてインクに毛管力を作用させて、インクを保持することができるように、隙間D2は適切な値に設定される。設定される隙間D2の値は、落下が想定されるインクの液滴径にもよるが、例えば、0.5mm以下であることが好ましい。
【0029】
また、図2(a)に示すように、コイルバネ40、41は、インク導出口の中心を通る鉛直線に関して、幅方向に対称な2つの位置にそれぞれ配置されている。つまり、コイルバネ40、41の中心を結ぶ線分の中点は、インク導出口24の中心の鉛直下方に位置する。尚、コイルバネ40、41間の離間距離D1は、これら2つのコイルバネ40、41の間にも、受け止められたインクに毛管力を作用させて保持することができる程度の間隔に設定される。この間隔は、落下が想定されるインクの液滴径にもよるが、例えば、3mm以下であることが好ましい。
【0030】
コイルバネ40、41の突出先端40a、41aは、長さ方向と直角に1回以上巻かれている。つまり、コイルバネの端面が鉛直面と平行になっており、線材端が前後方向(装着方向)に突出しない。
【0031】
また、図3に示すように、コイルバネ40、41の基端部(突出先端40a、41aと反対側の端部)は、カートリッジ本体20に固定されている。この固定は、合成樹脂製のカートリッジ本体20への圧入することにより行うことができる。あるいは、カートリッジ本体20を射出成型で作製する際に、型にコイルバネ40、41の端部を挿入した上で型に樹脂材料を注入することによって行うこともできる。さらに、コイルバネ40、41の基端部には電極線50がそれぞれ接続されており、電極線50はインク貯留室21の底面に露出している。つまり、インク貯留室21内にインクが貯留されている状態では、2つのコイルバネ40、41は、電極線50を介してインクと導通している。尚、コイルバネ40、41とインクとを導通させる構成としては、コイルバネ40、41の基端部をインク貯留室21まで延在させて、コイルバネ40、41がインク貯留室21内のインクと直接接触する構成が採用されてもよい。
【0032】
次に、装着部4について説明する。装着部4の奥側の側面14(凹形状の底面)には、図3(a)に示すように、装着部4にインクカートリッジ3が装着された際、インク導出口24を通って貫通孔25に挿入される円筒状のインク供給管17が形成されている。さらに、側面14のインク供給管17を囲む領域には、装着部4にインクカートリッジ3が装着された際、インク導出部23と嵌合可能な環状溝16が形成されている。環状溝16は、表面20aからのインク導出部23の突出距離とほぼ同じ距離の深さ、あるいは若干大きな深さを有している。また、インク供給管17の先端面17aには、その先端面17aの一部を欠落させる図示しない切り欠きが設けられている。
【0033】
また、装着部4の外側側面13には、供給チューブ8の一端と接続される円筒状のジョイント部12が形成されている。そして、装着部4内部には、インク供給管17の内孔とジョイント部12の内孔を連通させる連通孔15が形成されている。
【0034】
装着部4の側面14には、装着部4にインクカートリッジ3が装着されたときにおいて、2つのコイルバネ40、41がそれぞれ挿入される凹形状の2つの挿入部18が形成されている。なお、図3は、図2(a)におけるIII-III線による部分断面を示しているため、1つの挿入部18しか示されていないが、側面14にはコイルバネ40、41とそれぞれ対向する2つの領域に2つの挿入部18が形成されている。また、挿入部18の内径は、コイルバネ40、41の外径とほぼ同じであり、挿入部18の奥行きは、コイルバネ40、41の表面20aからの突出長さと同じか、又は、わずかに小さい。
【0035】
2つの挿入部18内の奥部には、導電性材料からなる2つの電気接点19がそれぞれ設けられている。そして、図3(b)に示すように、カートリッジ装着部4にインクカートリッジ3が装着されたときに、2つの接点19に、挿入部18内に挿入されたコイルバネ40、41の先端面40a、41aと接触するように構成されている。従って、インク貯留室21内にインクが残っており、2つのコイルバネ40、41にインクが接触(導通)している場合と、インク貯留室21内にインクがほとんど残っておらず、2つのコイルバネ40、41にインクが接触(導通)していない場合では、2つの接点19間の電気抵抗値が異なることになる。従って、後述する制御装置8(図5参照)により、2つの接点19間の電気抵抗値に基づいて、インクの有無を判定することが可能となる。
【0036】
ここで、2つの接点19に接触する導電性部材として、弾性を有するコイルバネ40、41が用いられており、コイルバネ40、41自身の弾性によりそれらの先端が接点19に確実に接触する。そのため、接点19に接触させる部材として剛直なものを使用した場合と比較して、インク検出の精度が高くなる。
【0037】
次に、制御装置8を中心とするインクジェットプリンタ1の電気的構成について触れておく。図5は、インクジェットプリンタ1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【0038】
インクジェットプリンタ1の制御装置8は、CPU、RAM、ROMにより構成されている。CPUは、あらかじめ設定されたプログラム等の制御手順を実行して各種制御を行うものである。ROMは、CPUが動作するためのプログラム等を格納している。RAMは、CPUの制御手順実行時におけるワークエリアとして用いられるものである。
【0039】
制御装置8は、コンピューター等の入力装置101から入力された画像データに基づいて、インクジェットヘッド2、キャリッジ5、搬送機構6等を制御して、インクジェットヘッド2による記録動作を制御する記録制御部110等を備えている。
【0040】
さらに、制御装置8は、装着部4に設けられた2つの接点19と電気的に接続されている。そして、制御装置8は、2つの接点19間の電気抵抗値を検出し、この電気抵抗値に基づいてインクの有無を判定する、判定部111を備えている。具体的には、判定部111は、2つの接点19間の電気抵抗値が所定の閾値よりも低い場合には、インク貯留室21内にインクが残っていると判定し、所定の閾値よりも高い場合には、インクが残っていないと判定する。さらに、判定部111は、インクの有無に関する判定結果を、表示パネル9に表示する。例えば、液晶ディスプレイ等にメッセージを表示する、あるいは、警告ランプの点灯を行う。尚、制御装置8の判定部111と、装着部4に設けられた2つの接点19が、本願発明のインク検出手段に相当する。
【0041】
次に、装着部4にインクカートリッジ3を交換するときの作用について、図3(a)、(b)を参照して説明する。
装着部4にインクカートリッジ3が装着されたとき、すなわち、図3(a)の位置から図3(b)の位置までインクカートリッジ3が移動したときに、インク供給管17の先端面17aにより弁体27がバネ28に抗する方向に押しこまれ、段差面31との当接が解除される。このとき、先端面17aに設けられた切り欠き(図示省略)からインク供給管17内にインクが流れ込む。そして、インク供給管17内に流れ込んだインクが、連通孔15及びジョイント部12内を介して供給チューブ10内に流れ、インクジェットヘッド2に供給される。
【0042】
一方、インクカートリッジ3が装着部4から取り外されるとき、すなわち、図3(b)の位置から図3(a)の位置までインクカートリッジ3が移動したとき、インク供給管17が大径孔30から引き抜かれ、弁体27がコイルバネに付勢され段差面31と当接する。このとき、弁体27によりインク流路が遮断され、インクが排出されなくなる。
【0043】
このとき、弁体27が段差面31と当接する位置に戻るように移動することにより、大径孔30内のインクがインク導出口24に向けて押し出される場合がある、また、インク供給管17の先端に纏わり付いたインクが、インク供給管17がインク導出口24から抜け出す際にそのインク導出口24に付着する場合がある。つまり、インクカートリッジ3を装着部4から取り外す際、インク導出口24からインクが垂れ落ちる場合がある。
【0044】
しかし、本実施形態のインクカートリッジ3においては、インク導出口24よりも下方の位置に2つのコイルバネ40、41が設けられている。そのため、インク導出口24から落下したインク滴は、コイルバネ40、41の螺旋巻きの間の隙間に毛管力によって保持される。さらに、コイルバネ40、41がある離間距離をあけて離間していることから、2つのコイルバネ40、41の間にも毛管力を生じさせることができる。つまり、2つのコイルバネ40、41は、それぞれ単独でその螺旋巻きの間にインクを保持できるのに加えて、さらに、それらの共同作用、すなわち、コイルバネ40、41の間に生じる毛管力によってもインク滴を保持することができるため、多量のインク滴を保持することができる。
【0045】
例えば、インク導出口24からインク滴が鉛直下方に落下した場合には、このインク滴は、コイルバネ40、41の内側部分にほぼ同時に接触する。そして、インク滴は、コイルバネ40、41のそれぞれの螺旋巻きの間と、コイルバネ40、41間によって確実に保持される。
【0046】
また、2つのコイルバネ40、41は弾性を有するため、装着部4から取り外されたインクカートリッジ3を誤って落下させた場合に、緩衝材としての役割も果たす。つまり、インクカートリッジ3が前面から落下した場合に、その落下の衝撃をコイルバネ40、41で吸収させて、インクカートリッジ3の破損の防止又は軽減することが可能である。
【0047】
次に、前記実施形態に変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]図7に示すように、第1変更例によるインクカートリッジに用いられるコイルバネは、密着した螺旋巻きを形成する密着コイルバネ140であってもよい。この場合、螺旋巻きの間には鋭角的に凹んだ凹部140bが存在する。そして、この鋭角的な凹部140bにインク滴が付着したときにインク滴に作用する毛管力によって、インク滴を保持することが可能である。尚、密着コイルバネの場合は、線材の直径が大きいほど、凹部140bの深さが大きくなるので、より多量のインクを保持することができる。
【0048】
2]本体20の前面20aに設けられた2つのコイルバネが密着していてもよい。例えば、図8に示すように、第2変更例によるインクカートリッジ204は、インク導出部23の下方に、2つのコイルバネ240、241が水平方向に並びつつ、互いに密着して設けられている。この場合には、コイルバネ240、241のそれぞれについて、コイルバネの螺旋巻きの間でインク滴が保持される。さらに、2つのコイルバネ240、241が図7に示した密着コイルバネである場合には、これらの外周側面を密着させることによって、インク導出部23から落下するインク滴を受け止められる隙間のないインク受け部を構成することができ、インク導出部23から落下するインク滴をより多く受け止めることができる。
【0049】
3]本体20の前面20aに設けられたコイルバネの数は2つに限られるものではなく、適宜変更可能である。例えば、図9に示すように、第3変更例によるインクカートリッジ303は、インク導出部23の鉛直下方に、1つのコイルバネ340が設けられている。この場合には、インク導出部23から垂れ落ちたインク滴は、コイルバネの螺旋巻きの間で毛管力により保持される。従って、上述のインクカートリッジ3よりも簡単な構成により、インク滴が垂れ落ちるのを防ぐことができる。
【0050】
4]また、本体20の表面20aに設けられたコイルバネの数は3つであってよい。例えば、図10に示すように、第4変更例によるインクカートリッジ403は、インク導出部23の下方に設けられた2つのコイルバネ440、441の下方にコイルバネ442が設けられている。コイルバネ442の中心は、インク導出部23の鉛直下方に位置する。さらに、コイルバネ440、441、442のそれぞれの離隔距離D3は等しい。即ち、3つのコイルバネ440、441、442は等間隔で離れている。この場合には、インク導出口24から垂れ落ちたインク滴は、コイルバネ440、441、442のそれぞれの螺旋巻きの間に保持されるとともに、コイルバネ440、441、442の間でも保持される。従って、上述のインクカートリッジ3よりも多くのインク滴を保持することが出来る。
【0051】
5]さらに、本体20の表面20aに設けられたコイルバネは、装着姿勢におけるインク導出部23の下方に配置されている必要は必ずしもない。例えば、図11に示すように、第5変更例によるインクカートリッジ503は、インク導出部23の下方にコイルバネ540が設けられるとともに、インク導出部23の上方にもコイルバネ541が設けられている。この場合には、インクカートリッジ503を装着部4から取り外すときにインク導出部23から垂れ落ちたインク滴は、コイルバネ540により保持される。また、インクカートリッジ503を取り外した後に、ユーザがインクカートリッジ503を180°回転させたときに、インク導出部23からインクが垂れ落ちたとしても、そのインクをコイルバネ541で捕捉し且つ保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態によるインクカートリッジが採用されたインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態によるインクカートリッジの(a)は正面図であり、(b)は部分側面図である。
【図3】図2(a)のIII-III線断面図であり、(a)はインクカートリッジの装着直前状態、(b)はインクカートリッジの装着完了状態をそれぞれ示す。
【図4】インクの有無の検出原理を説明する図であり、(a)はインク残量が多い状態、(b)はインク残量がすくない状態をそれぞれ示す。
【図5】本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの電気的な概略構成を示すブロック図である。
【図6】コイルバネの側面図である。
【図7】第1変形例のコイルバネの側面図である。
【図8】第2変形例におけるインクカートリッジの側面図ある。
【図9】第3変形例におけるインクカートリッジの側面図である。
【図10】第4変形例におけるインクカートリッジの側面図である。
【図11】第5変形例におけるインクカートリッジの側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 インクジェットプリンタ
3、103、203、303、404 インクカートリッジ
4 装着部(カートリッジ装着部)
19 接点
21 インク貯溜室
23 インク導出部
24 インク導出口
23a 突出端面
40、41、140、240、241、340、440、441、442、540、541 コイルバネ
40a、41a 先端
111 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留するインク貯留室を有するカートリッジ本体と、
前記カートリッジ本体の一表面から突出するように設けられ、前記インク貯留室内のインクを導出するインク導出部とを備え、
前記インク導出部は、その突出端面において開口し、且つ、前記インク貯留室と連通するインク導出口を有し、
前記カートリッジ本体の前記一表面の、前記インク導出部から離れた位置に、少なくとも1つのコイルバネが設けられ、
前記コイルバネは、前記インク導出部の突出方向に沿って、前記インク導出口よりもさらに外側の位置まで延在していることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
プリンタのカートリッジ装着部に着脱自在に装着されるインクカートリッジであって、
前記コイルバネが、前記カートリッジ装着部への装着姿勢にあるときの、前記インク導出部よりも下方の位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記コイルバネは複数設けられており、互いに平行に延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記プリンタは、前記インクカートリッジ内のインクを検知するインク検知手段と、前記インク検知手段と電気的に接続されるとともに、前記カートリッジ装着部内に配置された2つの接点とを有するものであり、
前記インクカートリッジは、導電性材料で形成されるとともに、互いに離間して配置された2つの前記コイルバネを有し、
さらに、前記2つのコイルバネは、それぞれ、前記インク貯留室に貯留された導電性を有するインクと導通可能に構成され、
前記カートリッジ装着部に装着された状態で、前記2つのコイルバネの先端が前記カートリッジ装着部内の2つの接点に接触することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−200932(P2008−200932A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37848(P2007−37848)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】