説明

インクカートリッジ

【課題】簡単にインクカートリッジの再利用回数を増大することができる技術を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ10のケース11内には、インク収容体20が収容されている。インク収容体20は、インク収容部材21と、インク排出部材30を有している。インク排出部材30は、側壁部材40と、カバー部材50を有している。側壁部材40は、インク排出孔40aの一方側がインク収容空間21a内に配置されるように、インク収容部材21に取り付けられている。カバー部材50は、第1の弾性部材49がインク排出孔40aの他方側を塞ぐ位置に配置されている状態で、開口51aが形成されている端壁51の内面52と側壁部材40によって挟持されるように、側壁部材40に取り付けられている。端壁51の外面53には、第2の弾性部材60が剥離可能に接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクカートリッジに関し、特に、インクカートリッジを再利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写機等の印刷装置として、インクヘッドから紙等の印刷媒体にインクを吐出することによって印刷媒体に情報を印刷するインクジェット印刷装置が用いられている。インクジェット印刷装置は、インクヘッドとインクタンクを搭載し、本体に対して往復動可能に設けられたキャリッジと、本体に着脱自在に取り付けられ、キャリッジのインクタンクに供給するインクを収容したインクカートリッジを有している。インクカートリッジは、ケースと、ケースに収容されたインク収容体を備えている。インク収容体は、インク収容空間を形成するインク収容部材と、インク収容空間に収容されているインクを排出するインク排出部材を有している。インク排出部材は、インク排出孔を形成する側壁と、弾性部材を有している。インク排出部材は、インク排出孔の一方側の開口がインク収容空間内に配置されるように、インク収容部材に取り付けられている。弾性部材は、インク排出孔の他方側の開口を塞ぐように配置されている。インクカートリッジをインクジェット印刷装置の本体に取り付けると、本体に設けられているインク供給用針部材の先端部が、インク排出部材の弾性部材に差し込まれ、弾性部材を貫通してインク排出口まで達する。そして、インク供給ポンプによって、インク収容空間に収容されているインクが、インク排出孔、インク供給用針部材に形成されているインク流入穴およびインク流入孔、インク供給パイプを介してキャリッジのインクタンクに供給される。
このようなインクジェット印刷装置では、資源の有効利用を図るため、インクカートリッジが再利用(リサイクル)される。インクカートリッジを再利用する方法としては、インクカートリッジをインクジェット印刷装置の本体から取り外し、取り外したインクカートリッジのインク排出部材の弾性部材にインク補給用針部材の先端部を差し込み、インク補給用針部材に形成されているインク補給孔、インク補給穴を介して、インクカートリッジのインク収容空間にインクを補給する方法が用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−358802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のインクカートリッジの再利用方法は、インク排出部材の弾性部材にインク補給用針部材の先端部を差し込み、インク補給用針部材を介してインクカートリッジのインク収容空間にインクを補給する方法が用いられている。しかしながら、インクカートリッジの再利用回数(リサイクル回数)が増えると、インク排出部材の弾性部材の弾性特性が低下して、インク補給用針部材の差し込みにより弾性部材に生じた穴が塞がれなくなり、インク収容空間に収容されているインクが漏れるおそれがある。この場合、インク排出部材の弾性部材を交換することが考えられる。しかしながら、インク排出部材の弾性部材は強固に取り付けられているため、インク排出部材の弾性部材を交換するのが困難である。このため、インクカートリッジの再利用回数(リサイクル回数)には限界があった。
本発明は、このような問題点を解決するために創案されたものであり、簡単にインクカートリッジの再利用回数を増大することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のインクカートリッジは、好適には、インクジェット印刷装置に用いられるが、インクを吐出することによって印刷媒体に情報を印刷する種々の印刷装置に用いることができる。
本発明のインクカートリッジは、ケースと、ケース内に収容されるインク収容体を備えている。インク収容体は、インク収容部材と、インク排出部材を備えている。インク収容部材によって、インクを収容するインク収容空間が形成されている。また、インク排出部材は、インク収容部材に取り付けられている。インク収容部材は、好適には、可撓性を有するシート部材を袋状に形成することによって構成される。シート部材を袋状に形成する方法としては、種々の方法を用いることができるが、好適には、2つのシート部材を重ね、外周に沿って熱融着接合する方法が用いられる。
インク排出部材は、インク排出孔を形成する側壁と、開口が形成されている端壁と、第1の弾性部材と、第2の弾性部材を備えている。インク排出孔の一方側の開口は、インク収容空間に連通されている。側壁は、筒状に形成される。また、インク排出孔の他方側の開口は、インク収容空間およびインク排出孔が密閉状態となるように(インクが漏れないように)、第1の弾性部材によって塞がれている。また、開口が形成されている端壁は、第1の弾性部材よりインク排出孔と反対側に配置される。第2の弾性部材は、端壁に形成されている開口の面積より大きい面積を有している。そして、第2の弾性部材は、端壁の対向する面のうち第1の弾性部材と反対側の面(外面)に、端壁に形成されている開口を塞ぐ位置に着脱自在に取り付けられる。第2の弾性部材を端壁に着脱自在に取り付ける方法としては、剥離可能な接着力を有する接着剤により接着する方法等の種々の方法を用いることができる。好適には、第2の弾性部材が端壁に取り付けられた状態では、端壁に形成されている開口を含む、第1の弾性部材と第2の弾性部材の間に形成される空間が密閉されるように構成される。
第1の弾性部材は、ゴムや合成樹脂等により、針部材(インク供給用針部材やインク補給用針部材)が第1の弾性部材に差し込まれている時、あるいは、第1の弾性部材に差し込まれた針部材が第1の弾性部材から引き抜かれた時に、針部材の差し込みによって生じた穴を介してインクが漏れない弾性特性を有するように形成される。第2の弾性部材は、第1の弾性部材と同様に、ゴムや合成樹脂等により、針部材が第2の弾性部材に差し込まれている時、あるいは、第2の弾性部材に差し込まれた針部材が第2の弾性部材から引き抜かれた時に、針部材の差し込みによって生じた穴を介してインクが漏れない弾性特性を有するように形成される。第1の弾性部材と第2の弾性部材は、同じ材料によって形成されていてもよいし、異なる材料によって形成されていてもよい。
インク排出孔の内周形状や側壁の外周形状は、円形形状を含む種々の形状に形成することができる。また、端壁の外周形状や端壁に形成される開口の内周形状は、円形形状を含む種々の形状に形成することができる。また、第1の弾性部材や第2の弾性部材の形状は、インク排出孔の内周形状、端壁に形成される開口の内周形状や端壁の外周形状等に応じて種々の形状に形成することができる。例えば、第2の弾性部材は、対向する面の外周形状が円形である板状、すなわち、円盤状に形成される。第1の弾性部材および第2の弾性部材の厚さは、針部材の差し込みによって生じた穴を介してインクが漏れるのを防止することができ、また、針部材を容易に差し込むことができる厚さに設定される。例えば、外径が約1mmの針部材を用いる場合には、0.5m〜1.5mmの範囲に設定される。
側壁と端壁は、一体であってもよいし、別体であってもよい。
本発明のインクカートリッジが印刷装置に取り付けられると、印刷装置に設けられているインク供給用針部材の先端部が、第2の弾性部材および第1の弾性部材に差し込まれ、インク排出孔に達する。これにより、インク収容空間に収容されているインクが印刷装置のインクタンクに供給される。また、インクカートリッジを再利用(リサイクル)する際には、インク補給用針部材の先端部を、第2の弾性部材および第1弾性部材に差し込んでンインク排出孔の位置に配置してインク収容空間にインクを補給する。
本発明のインクカートリッジでは、第2の弾性部材が端壁に着脱自在に取り付けられているため、第2の弾性部材を容易に交換することができる。また、第2の弾性部材を交換することによって、第1の弾性部材の弾性特性が低下した場合でもインクの漏れを防止することができる。第2の弾性部材は、インクカートリッジを再利用(リサイクル)する毎や複数回再利用(リサイクル)する毎等の適宜のタイミングで交換される。これにより、簡単にインクカートリッジの再利用回数(リサイクル回数)を増大することができる。
本発明の異なる形態では、第2の弾性部材は、対向する面を有する弾性体と、弾性体の対向する面のうち一方に設けられた接着剤を有している。また、第2の弾性部材は、弾性体の一方の面に設けられている接着剤によって、端壁の対向する面のうち第1の弾性部材と反対側の面(外面)に剥離可能に接着される。弾性体(第1の弾性部材)は、好適には、対向する面の外周形状が円形である板状、すなわち、円盤状に形成される。そして、弾性体(第1の弾性部材)の対向する面の面積が、端壁に形成されている開口の面積より大きく設定される。
本形態のインクカートリッジでは、第2の弾性部材を容易に交換することができる。
本発明の他の異なる形態では、保持シートを備えている。保持シートによって、第2の弾性部材が端壁の外面に取り付けられている状態が保持される。保持シートは、典型的には、シート体と、シート体の対向する面の一方に設けられた接着剤を有している。そして、保持シートは、接着剤によって、第2の弾性部材と端壁に剥離可能に接着される。なお、インク排出部材が、側壁を有する側壁部材と、端壁を有するカバー部材を備えている場合において、「保持シートが第2の弾性部材とカバー部材に接着される」態様は、本形態の「保持シートが第2の弾性部材と側壁に接着される」態様に包含される。保持シートは、合成樹脂等によって、針部材(インク供給用針部材やインク補給用針部材)が差し込み可能に形成される。
本形態のインクカーリッジでは、搬送中等にインクが漏れるのを防止することができる。
本発明の更に異なる他の形態では、インク排出部材は、インク排出孔を形成する側壁を有する側壁部材と、開口が形成されている端壁を有するカバー部材を備えている。カバー部材は、側壁部材に取り付けられる。カバー部材が側壁部材に取り付けられている状態では、第1の弾性部材は、インク排出孔の他方側の開口を塞ぐ位置に、カバー部材の端壁と側壁部材によって挟持される。これにより、端壁の外面に取り付けられた第2の弾性部材と第1の弾性部材との間に形成される空間(端壁に形成されている開口)を密閉状態とすることができる。
本形態のインクカートリッジでは、容易に、インク排出孔の他方側の開口を第1の弾性部材によって塞ぐ(インク収容空間およびインク排出孔を密閉状態とする)ことができ、また、第1の弾性部材と第2の弾性部材の間に形成される空間を密閉状態とすることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のインクカートリッジでは、インク排出部材の端壁の面に着脱自在に取り付けられている第2の弾性部材を交換することで、簡単に再利用回数を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】インクカートリッジの一実施の形態の斜視図である。
【図2】インクカートリッジの一実施の形態で用いられるインク収容体の斜視図である。
【図3】インクカートリッジの一実施の形態で用いられるインク収容体の要部の断面図である。
【図4】インクカートリッジの一実施の形態をインクジェット印刷装置に取り付ける動作を説明する図である。
【図5】保持シートを取り付けたインクカートリッジの他の実施の形態の斜視図である。
【図6】保持シートの一例を示す図である。
【図7】インクカートリッジのさらに他の実施の形態の斜視図である。
【図8】インクカートリッジのさらに他の実施の形態で用いられるインク収容体の斜視図である。
【図9】インクカートリッジのさらに他の実施の形態で用いられるインク収容体の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜3に、一実施の形態のインクカートリッジ10が示されている。本実施の形態のインクカートリッジ10は、インクジェット印刷装置に用いられる。なお、図1は、インクカートリッジ10の斜視図である。また、図2は、インクカートリッジ10で用いられるインク収容体20の斜視図である。また、図3は、インクカートリッジ10で用いられるインク収容体20の要部の断面図である。
【0009】
本実施の形態のインクカートリッジ10は、図1に示されているように、ケース11と、インク収容体20により構成されている。
ケース11は、第1のケース部材11と第2のケース部材12により構成され、側面が略長方形を有する箱状に構成されている。ケース11には、インク収容体20を収容する収容空間が形成されている。第1のケース部材11および第2のケース部材12には、対向する箇所にそれぞれ切欠部11aおよび12aが形成されている。これにより、ケース11は、開口部10aを有している。そして、インク収容体20がケース11の収容空間に収容されている状態において、インク収容体20のインク排出部材30が開口部10aの箇所に配置されるように構成されている。なお、ケース11の形状は、適宜選択することができる。
【0010】
インク収容体20は、図2に示されているように、インク収容部材21と、インク排出部材30により構成されている。
インク収容部材21は、可撓性を有するシート部材によって、側面が略四角形を有する袋状に形成されている。本実施の形態では、可撓性を有する2枚のシート部材を重ね、インクを収容するインク収容空間21aが形成されるように、2枚のシート部材を外周に沿った接合部22によって接合している。インク収容部材21を構成するシート部材としては、インクの特性に影響を与えないシート部材、例えば、アルミラミネートシートが用いられる。2枚のシート部材を接合する方法としては、加熱することによって溶着する方法や接着剤によって接着する方法等を用いることができる。本実施の形態では、2枚のシート部材の外周に沿って熱可塑性樹脂を配置し、熱を加えて2枚のシート部材を接合部22で溶着する方法を用いている。インク収容部材21の形状は、適宜選択することができる。
【0011】
インク排出部材30は、インク収容部材21に取り付けられ、インク収容部材21により形成されているインク収容空間21aに収容されているインクを排出するために用いられる。インク排出部材30は、図2および図3に示されているように、側壁部材40と、カバー部材50と、第1の弾性部材49と、第2の弾性部材60により構成されている。
【0012】
側壁部材40は、例えば、インクの特性に影響を与えない合成樹脂等により形成される。側壁部材40は、インク排出孔40aを形成する側壁41と、第1の弾性部材49を取り付けるための取付壁42を有している。取付壁42には、開口42aが形成されている。なお、開口42aが形成されていない取付壁42を設け、最初に針部材が差し込まれた時に、針部材によって取付壁42に開口42aが形成されるように構成することもできる。側壁部材40は、インク排出孔40aの一方側(図3の右側)の開口がインク収容空間21aに連通されるように(インク収容空間21a内に配置されるように)、インク収容部材21に取り付けられる。側壁部材40をインク収容部材21に取り付ける方法としては、加熱することによって溶着する方法や接着剤によって接着する方法等を用いることができる。本実施の形態では、インク収容部材21を構成する2枚のシート部材の間に側壁41の一方側の端部を配置し、2枚のシート部材の外周に沿って熱を加えることによって、2枚のシート部材と側壁部材40を接合部22で溶着している。インク排出孔40aの内周形状や側壁41の外周形状は、適宜設定することができる。本実施の形態では、インク排出孔40aの内周形状および側壁41の外周形状は円形に形成されている。すなわち、側壁41は、円筒状に形成されている。なお、側壁41の形状は、筒状であればよく、円筒状に限定されない。
また、側壁部材40には、取付壁42と側壁41によって、取付壁42よりインク排出孔40aと反対側に凹部43が形成されている。この凹部43には、インク挿入空間40aの他方側(図3の左側)の開口を塞ぐための第1の弾性部材49が挿入される。本実施の形態では、取付壁42に形成されている開口41aあるいは針部材が差し込まれることによって取付壁42に形成される開口42aが、本発明の「インク排出孔の他方側の開口」に対応する。第1の弾性部材49は、例えば、インクの特性に影響を与えない合成樹脂やゴム等によって形成される。第1の弾性部材49の弾性特性は、針部材(インク供給用針部材90やインク補給用針部材)が差し込まれている時、あるいは、針部材が差し込まれた後引き抜かれた時に、針部材の差し込みによって生じた穴を介してインクが漏れないように(穴が塞がれるように)設定される。本実施の形態では、第1の弾性部材49は、対向する面を有する円盤状に形成されている。
また、側壁41には、段差部45が形成されている。
【0013】
カバー部材50は、例えば、インクの特性に影響を与えない金属等によって形成される。カバー部材50は、端壁51と、取付部54を有している。端壁51には、開口51aが形成されている。本実施の形態では、端壁51の外周形状や開口51aの内周形状は円形に形成されている。なお、端壁51の外周形状や開口51aの内周形状は、適宜設定することができる。
また、取付部54は、弾性を有しているとともに、先端側に係止部55が形成されている。これにより、取付部54の先端側を拡開した状態で、カバー部材50を側壁41の外周面に沿ってインク排出孔40aの方向(図3の右方向)に移動させると、取付部材54の係止部55が側壁41の段差部45に係止し、カバー部材50が側壁部材40(側壁41)に取り付けられる。本実施の形態では、カバー部材50が側壁部材40に取り付けられた状態において、第1の弾性部材49が、カバー部材50の端壁51の内面(インク挿入孔40a側の面)52と側壁部材40の取付壁42によって挟持され(押圧され)、インク排出孔40aの他方側の開口が塞がれて、インク収容空間21aおよびインク排出孔40aが密閉状態となるように構成されている。すなわち、第1の弾性部材49は、対向する面の外周形状が円形である円盤状を有している。そして、対向する面の面積が端壁51の開口51aの面積および取付壁42の開口42aの面積より大きくなるように形成されている。また、第1の弾性部材49は、対向する面の間の距離(厚さ)が、カバー部材50が側壁部材30に取り付けられた状態における端壁51と取付壁42の間の間隔より大きくなるように形成されている。
なお、端壁51の外周形状や開口51aの内周形状は、円形に限定されず種々の形状に設定することができる。また、第1の弾性部材49は、端壁51の開口51aおよび取付壁42の開口42aの面積より大きい面積を有していればよく、円形以外の種々の形状に形成することができる。また、第1の弾性部材49は、インク収容空間21aおよびインク排出孔40aを密閉状態とすることができればよく、端壁51の内面52に当接していなくてもよい。また、取付壁42は省略することもできる。
【0014】
第2の弾性部材60は、弾性体61を有している。弾性体61は、例えば、インクの特性に影響を与えない合成樹脂やゴム等によって形成される。弾性体61(第2の弾性部材60)は、針部材(インク供給用針部材90やインク補給用針部材)が差し込まれている時、あるいは、針部材が差し込まれた後引き抜かれた時に、針部材の差し込みによって生じた穴を介してインクが漏れないように(穴が塞がれるように)設定される。本実施の形態では、弾性体61は、対向する面62と63を有する円盤状に形成されている。対向する面62と63の面積は、端壁51に形成されている開口51aの面積より大きい面積を有するように設定されている。また、弾性体61の対向する面62と63の一方には、接着剤64が設けられている。そして、第2の弾性部材60は、接着剤64によって、端壁51の外面(インク排出孔40aと反対側の面)53に、端壁51に形成されている開口51aを塞ぐ位置に剥離可能に接着される。これにより、端壁51に形成されている開口51aを含む、第1の弾性部材49と第2の弾性部材60の間に形成される空間が密閉状態とされる。接着剤64としては、第2の弾性部材60を端壁の外面53に剥離可能に接着することができる種々の接着剤を用いることができる。
【0015】
なお、第1の弾性部材49、第2の弾性部材60(弾性体61)の厚さは、針部材(インク排出用針部材90やインク補給用針部材)が差し込まれた後引き抜かれた時に、針部材の差し込みによって生じた穴が第1の弾性部材49、第2の弾性部材60の弾性特性によって自然に塞がれる(封止される)ように、また、針部材を第1の弾性部材49、第2の弾性部材60に容易に差し込むことができるように設定する必要がある。ここで、外形が約1mmの針部材を用いる場合、第1の弾性部材49、第2の弾性部材60(弾性体61)の厚さが0.5mm未満であると、針部材を差し込んだ後引き抜いた時、針部材の差し込みによって生じた穴が自然に塞がれない。また、1.5mmを超えると、針部材を差し込むのが困難となる。このため、外形が約1mmの針部材を用いる場合には、第1の弾性部材49、第2の弾性部材60(弾性体61)の厚さを0.5mm〜1.5mmの範囲内に設定するのが好ましい。
【0016】
次に、本実施の形態のインクカートリッジをインクジェット印刷装置に取り付ける動作を、図4を参照して説明する。
インクジェット印刷装置は、インクヘッドとインクタンクを搭載し、本体に対して往復動可能に設けられたキャリッジ95と、インク供給用針部材90を備えている。インク供給用針部材90は、インク流入孔90aと、インク供給用針部材90の先端側の傾斜部に形成されたインク流入穴91を有している。インク流入穴91は、インク流入孔90aと連通している。そして、インク供給用針部材90とヘッド95の間には、インク供給用パイプ93が設けられている。また、インク供給用針部材90の先端部の周囲には、インク供給用針部材を保護する保護部材92が設けられている。
インクカートリッジ10をインクジェット印刷装置に設けられている取り付け部に取り付けると、インク供給用針部材90の先端部が、第2の弾性部材60、端壁51に形成されている開口51a、第1の弾性部材49に差し込まれ、インク排出孔40aに達する。すなわち、インク供給用針部材90のインク流入孔90aがインク収容空間21aに連通される。そして、この状態で、インク供給用ポンプを駆動することにより、インクカートリッジ10のインク収容空間21aに収容されているインクが、インク供給用針部材90のインク流入穴91およびインク流入管90a、インク供給用パイプ93を介して、キャリッジ95に搭載されているインクタンクに供給される。
【0017】
インクカートリッジ10のインク収容空間21aに収容されているインクの残量が少なくなると、インクカートリッジ10をインクジェット印刷装置に設けられている取り付け部から取り外す。これにより、インク供給用針部材90の先端部は、第1の弾性部材49、端壁51に形成されている開口51a、第2の弾性部材60から引き抜かれる。この時、第1の弾性部材49、第2の弾性部材60(弾性体61)の弾性特性によって、インク供給用針部材90を第1の弾性部材49、第2の弾性部材60に差し込むことによって生じた穴が塞がれ、インクの漏れが防止される。
次に、取り外したインクカートリッジ10のインク収容空間21aにインクを補給する。例えば、インク供給用針部材90と同様の構造を有するインク補給用針部材の先端部を、第2の弾性部材60、端壁51に形成されている開口51a、第1の弾性部材49に差し込み、インク排出孔40a内に配置する。そして、インク補給用ポンプを駆動することによって、インク補給用針部材を介してインクカートリッジ10のインク収容空間21aにインクを補給する。なお、インクカートリッジ10のインク収容空間21aにインクを補給する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。
ここで、第1の弾性部材49に針部材を差し込むことによって、第1の弾性部材49の弾性特性が低下することがある。第1の弾性部材49は、カバー部材50と側壁部材40によって強固に取り付けられているため、第1の弾性部材49を交換するのが困難である。本発明では、第2の弾性部材60を、端壁51の外面53に剥離可能に接着している。このため、第2の弾性部材60を容易に交換することができる。そこで、第1の弾性部材40の弾性特性が低下する前に、第2の弾性部材60を交換することによって、第1の弾性部材40の弾性特性が低下しても、インクの漏れを防止することができる。第2の弾性部材60は、適宜のタイミングで交換することができる。例えば、インクカートリッジ10のインク収容空間21aにインクを補給する毎(再利用する毎)、あるいは、設定回数インクカートリッジ10のインク収容空間21aにインクを補給する毎(設定回数再利用する毎)に交換することができる。
【0018】
ところで、第2の弾性部材60を、接着剤64によって端壁51の外面53に剥離可能に接着している。このため、インクカートリッジ10を搬送している時に、振動等によって、第2の弾性部材60が端壁51の外面53に対して移動し、あるいは、端壁51の外面53から剥離し、それによって端壁51に形成されている開口51aの一部が開放されるおそれがある。この場合、第1の弾性部材49の弾性特性が低下していると、針部材を第1の弾性部材49に差し込むことによって生じた穴、開放されている開口51aの部分を介してインクが漏れるおそれがある。
【0019】
第2の弾性部材60が端壁51の外面53に接着されている状態を保持するように構成した他の実施の形態が図5および図6に示されている。なお、図5は、他の実施の形態のインクカートリッジ10の斜視図である。また、図6(a)は、他の実施の形態のインクカートリッジ10で用いられる保持シート70の平面図であり、図6(b)は、図6(a9のA−A線断面図である。
本実施の形態のインクカートリッジ10は、保持シート70を除いて第1の実施の形態のインクカートリッジ10と同じ構成である。したがって、以下では、本実施の形態のインクカートリッジ10で用いられている保持シート70のみを説明する。
保持シート70は、図6に示されているように、シート体71と、シート体71の対向する面72、73のうち一方(図6では面73)に設けられている接着剤74を有している。シート体71は、合成樹脂等によって、針部材(インク排出用針部材90やインク補給用針部材)を容易に差し込むことができるように(差し込み可能な厚さや固さを有するように)形成される。また、接着剤74としては、第2の弾性部材60(弾性体61)、カバー部材60や側壁51に接着可能な接着剤が用いられる。好適には、シート体71は、透明な合成樹脂により形成され、接着剤74としては、透明な接着剤が用いられる。
保持シート70は、中央部70aと、中央部70aから両方向に延びる延在部70b、70cを有している。中央部70aの外周形状は、第2の弾性部材60の面(接着剤64が設けられていない側の面)62の外周形状に対応する形状(本実施の形態では、円形形状)を有し、第2の弾性部材60の面62の面積以下の面積に設定される。また、延在部70b、70cの長さは、中央部70aが第2の弾性部材60の面62に配置された時に延在部70b、70cの端部がカバー部材50の所望の位置に配置されるように設定される。なお、保持シート70は、第2の弾性部材60が端壁51の外面53に接着されている状態を保持することができればよく、図6に示されている構成に限定されない。また、保持シート70は、接着剤により接着する方法以外の方法を用いて第2の弾性部材60と側壁41に取り付けることができる。
そして、インク収容空間21aにインクが補給されたインクカートリッジ10の搬送時等に、第2の弾性部材60が端壁51の外面53に接着されている状態を保持するように、保持シート70が第2の弾性部材60とカバー部材50に接着される。例えば、保持シート70の中央部70aを第2の弾性部材60の面62に接着し、延在部70b、70cをカバー部材50(取付部54)の外周面に接着する。
保持シート70は、針部材を差し込むことができるように形成されている。したがって、インクカートリッジ10は、保持シート70が取り付けられた状態でインクジェット印刷装置の取り付け部に取り付けてもよいし、保持シート70を剥離した状態でインクジェット印刷装置の取り付け部に取り付けてもよい。
【0020】
以上の実施の形態では、インク排出部材70のみが設けられているインクカートリッジ10を用いたが、種々の構成のインクカートリッジを用いることができる。インクカートリッジのさらに他の実施の形態が図7〜図9に示されている。なお、図7は、本実施の形態のインクカートリッジ110の斜視図である。また、図8は、インクカートリッジ110で用いられるインク収容体120の斜視図である。また、図9は、インクカートリッジ110で用いられるインク収容体120の要部の断面図である。
本実施の形態のインクカートリッジ110は、インク排出部材130の構成が第1の実施の形態のインクカートリッジ10で用いられているインク排出部材30と異なっている。したがって、以下では、インク排出部材130のみ説明する。
インク排出部材130は、図8、図9に示されているように、基部131を有している。基部131には、連結部132、インク排出部材130の側壁部材140の側壁141、インク注入部材180の側壁181が一体に形成されている。基部131、連結部132、側壁141、側壁181は、例えば、インクの特性に影響を与えない合成樹脂等によって形成される。また、第1の実施の形態のインクカートリッジ10と同様に、第1の弾性部材149が、側壁部材140の取付壁142とカバー部材150の端壁151の内面(インク排出孔140a側の面)152によって挟持されている。なお、本実施の形態では、カバー部材150の取付部154には、内側に折り曲げられた係止片155が形成されている。そして、取付部154の係止片155の先端が、側壁141に形成されている段差部145に係止することによって、カバー部材150が側壁部材140に取り付けられる。第2の弾性部材160は、第1の実施の形態の第2の弾性部材60と同様の構成である。
また、本実施の形態では、側壁181によってインク注入孔180aが形成されている。インク注入孔180aは、最初にインク収容空間121aにインクを注入する際に用いられる。そして、インク収容空間121aへのインクの注入が完了すると、側壁181の所定箇所を両側から加熱して、インク注入孔180aを封止する封止部182を形成する。
【0021】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
カバー部材を側壁部材に取り付ける方法は、実施の形態で説明した方法に限定されない。
第2の弾性部材を端壁に着脱自在に取り付ける方法は、接着剤により接着する方法に限定されない。
ケース、インク収容部材、側壁部材、カバー部材、第1の弾性部材および第2の弾性部材の形状や材料は、種々変更することができる。
インク排出部材を、別体に形成した側壁部材とカバー部材により構成したが、側壁と端壁が一体に形成されている部材により構成することもできる。この場合、第1の弾性部材は、インク排出孔の他方側の開口を塞ぐようにインク排出部材に取り付けられる。
実施の形態で説明した各構成は単独で用いることもできるし、適宜選択した複数を組み合わせて用いることもできる。
インクを収容するインクカートリッジについて説明したが、インク等の液体を収容する液体カートリッジとして構成することもできる。
【符号の説明】
【0022】
10、110 インクカートリッジ
10a、120a 開口部
11、111 ケース
20、120 インク収容体
21、121 インク収容部材
21a、121a インク収容空間
22、122 接合部
30、130 インク排出部材
40、140 側壁部材
40a、140a インク排出孔
41、141 側壁
42、142 取付壁
42a、142a 開口
43、143 凹部
45、145 段差部
49、149 第1の弾性部材
50、150 カバー部材
51、151 端壁
51a、151a 開口
52、152 内面(インク排出孔側の面)
53、153 外面(インク排出孔と反対側の面)
54、154 取付部
55、155 係止部
60、160 第2の弾性部材
61、161 弾性体
64、164 接着剤
70 保持シート
71 シート体
74 接着剤
90 インク供給用針部材
93 インク供給用パイプ
95 キャリッジ
131 基部
132 連結部
180 インク注入部材
180a インク注入孔
181 側壁
182 封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク収容体と、前記インク収容体を収容するケースを備えるインクカートリッジであって、
前記インク収容体は、インクを収容するインク収容空間を形成するインク収容部材と、前記インク収容部材に取り付けられるインク排出部材を備えており、
前記インク排出部材は、インク排出孔を形成する側壁と、開口が形成されている端壁と、第1の弾性部材と、第2の弾性部材を備えており、
前記側壁により形成されるインク排出孔の一方側の開口は、前記インク収容空間に連通され、他方側の開口は、前記第1の弾性部材によって塞がれており、
前記端壁は、前記第1の弾性部材より前記インク排出孔と反対側に配置されており、
前記第2の弾性部材は、前記端壁に形成されている開口の面積より大きい面積を有し、前記端壁の対向する面のうち前記第1の弾性部材と反対側の面に、前記端壁に形成されている開口を塞ぐ位置に着脱自在に取り付けられていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクカートリッジであって、
前記第2の弾性部材は、対向する面を有する弾性体と、前記弾性体の対向する面のうち一方に設けられた接着剤を有しており、前記接着剤によって、前記端壁の対向する面のうち前記第1の弾性部材と反対側の面に剥離可能に接着されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクカートリッジであって、
前記インク排出部材は、前記第2の弾性部材を、前記端壁の対向する面のうち前記第1の弾性部材と反対側の面に取り付けた状態に保持する保持シートを有していることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のインクカートリッジであって、
前記インク排出部材は、前記インク排出孔を形成する側壁を有する側壁部材と、前記開口が形成されている端壁を有し、前記側壁部材に取り付けられるカバー部材を備え、
前記第1の弾性部材は、前記インク排出孔の他方側の開口を塞ぐ位置に、前記カバー部材の端壁と前記側壁部材によって挟持されていることを特徴とするインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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