説明

インクカートリッジ

【課題】インクカートリッジをプリンタ本体のカートリッジホルダから取り外す際に接続部に溜まっているインクが外部に飛び散ることのないインクカートリッジを提供する。
【解決手段】第1の接続部15の第1の筒状部16に第2の接続部11の第2の筒状部38が接続のため押し込まれるとき、第1の接続部15の滑動部材23の内周突起部36が軸部材18の外周溝32に係合して摺動し、滑動部材23が回転して、移動開口22が上部の第1の位置から下部の第2の位置に移動し、第1の接続部15の第1のインク経路25と、第2の接続部11の第2のインク経路42とを連通させる。接続解除のため第1の筒状部16から第2の筒状部38が引き出されるときは滑動部材23が軸部材18に沿って上記とは逆方向に移動することにより、移動開口22が第2の位置から第1の位置に移動して第1のインク経路25と第2のインク経路42とを遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続機構及びこれを備えたインク供給装置に関し、より詳細には、インクジェットプリンタにおけるインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、簡便且つ安価に画像記録する画像記録装置として、インクジェット方式の記録ヘッドを用いるインクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタには、記録ヘッドにインクを供給するインク供給装置が設けられている。
【0003】
一般的なインク供給装置は、プリンタに着脱自在に装着されるインクカートリッジと、記録ヘッドまでインクを供給するインク経路に接続されたカートリッジホルダ部とを備えている。
【0004】
そして、インクカートリッジがカートリッジホルダ部に装着される際には、カートリッジホルダ部の接続部がインクカートリッジの接続部と係合し、インクカートリッジの装着完了後には、インクカートリッジ内のインクが記録ヘッドへと供給される。
【0005】
ところで、インク使用済みでインクが空になったインクカートリッジを新しいインクカートリッジに交換する時などのインクカートリッジの着脱時には、接続部分からインクが外部に流出したり、接続部分からインク流路の内部へ空気が混入することがある。
【0006】
そこで、このような接続部分からのインクの流出や空気の混入を極力防止することのできるインク供給装置が特許文献1において開示されている。
特許文献1では、インクカートリッジの未装着状態では、インク供給管のインク流入口が弁により閉止されるとともに、インクカートリッジのインク供給口がピストンにより閉止されており、インクの流出やエアーの混入等が防止されている。
【0007】
そして、インクカートリッジの装着時には、インク供給管の先端部がインクカートリッジの内部に挿入される。このとき、インクカートリッジ側のピストンの先端部によりインク供給管のインク流入口を閉止している弁が押圧され、弁が内側へ退避してインク流入口が開放される。
【0008】
次に、退避した弁が弁ストッパーに当接して、弁のそれ以上の移動が規制されるようになると、弁ストッパーから受ける反力によりピストンが復帰バネの付勢力に抗して後退し、インクカートリッジのインク供給口が開放される。そして、インクカートリッジ内のインクがインク供給管を介して記録ヘッドへ供給されるようになっている。
【特許文献1】特開2007−175998号公報(図2、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術では、インクカートリッジとカートリッジホルダの接続を解除するとき、両者の弁体は開口を塞ぐためにそれぞれ移動するが、この移動は挿抜方向に滑動するだけなので、インクカートリッジを早く引き抜いた場合には、両者の接続部の空間に溜まっていたインクが押し出されて外側に流出又は飛散することが多い。
【0010】
このように外部に流出又は飛散したインクはプリンタ機内に汚れを発生させ、このようなプリンタ機内の汚れは、ときには記録媒体に記録された画像にも汚染を発生させるので問題があった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、インクカートリッジをプリンタ本体のカートリッジホルダから取り外す際に、インクカートリッジの接続部とカートリッジホルダの接続部に溜まっているインクが外部に飛び散ることのない接続機構を備えたインクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のインクカートリッジは、画像記録装置に設けられ、第1の開口を有する第1の液体経路に対して移動する移動開口を有する第1の移動部材を備える第1の接続部に対して、着脱可能に構成される第2の接続部を備えるインクカートリッジであって、該インクカートリッジにおいて第2の接続部に形成された第2の開口に対向する位置に形成される第2の液体経路が形成された第2の移動部材と、第1の接続部に第2の接続部を押し込むことで、第1の移動部材は、移動開口の位置が第1の開口及び第2の開口と非連通状態である第1の位置から第1の開口及び第2の開口と連通状態である第2の位置まで移動し、第2の移動部材は、インクカートリッジ内のインクと非連通状態である第3の位置からインクカートリッジ内のインクと連通状態である第4の位置まで移動し、第1の液体経路と第2の液体経路とを連通させるように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インクカートリッジをプリンタ本体のカートリッジホルダから取り外す際に、インクカートリッジの接続部とカートリッジホルダの接続部に溜まっているインクが外部に飛び散ることのない接続機構を備えたインクカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態における接続機構を有するインク供給装置を備えた画像記録装置を示す概略的な側面図である。
【図2】(a) は第1の実施の形態における接続機構を構成する第1の接続部と第2の接続部の内部構成を示す断面図、(b) は第1の接続部の軸部材のみを取り出して示す図、(c) は第1の接続部の滑動部材のみを取り出して示す図である。
【図3】(a) 〜(d) は第1の実施の形態における接続機構の接続時の動作状態を説明する図である。
【図4】(a),(b) は第1の実施の形態における接続機構の接続解除時の動作状態を説明する図である。
【図5】(a) は第2の実施の形態における第1の接続部の構成を示す断面図、(b) は第1の接続部の滑動部材の構成を示す斜視図である。
【図6】(a) は第3の実施の形態における第1の接続部の構成を示す断面図、(b) は第1の接続部の滑動部材の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態における接続機構を有するインク供給装置を備えた画像記録装置を示す概略的な側面図である。なお、図1において、鉛直方向(紙面上下方向)をY方向とし、Y方向に直交する方向(紙面左右方向)をX方向とする。
【0016】
図1に示すように、画像記録装置1は、画像が記録される例えば紙、フィルム等の記録媒体2を搬送する搬送機構3、記録媒体2に対してインクを吐出する記録部4、供給チューブ5を介して記録部4に所定の色のインクを供給するインク供給装置6等を備えている。
【0017】
そして、この画像記録装置1は、搬送機構3によって搬送される記録媒体2に対して記録部4がインクを吐出することにより、記録媒体2に所望の画像を記録する。なお、本実施の形態における記録部4は、ラインタイプのものであってもよいし、シリアルタイプのものであっても、どちらでもよい。
【0018】
次に、インク供給装置6について説明する。インク供給装置6は、インクカートリッジ7と、インクカートリッジ7が装着されるカートリッジホルダ部8(以後、ホルダ部8という)を有している。
【0019】
なお、図1では、インクカートリッジ7は1つのみ図示されているが、実際には使用する色の数に対応した数のインクカートリッジ7を有しているが、それらの図示は省略されている。
【0020】
インク供給装置6のインクカートリッジ7は、インクを収容するインク収容部9と、ホルダ部8のインク流路に接続するための、接続機構10の一方の接続部である第2の接続部11と、大気連通部12とから構成されている。
【0021】
本実施例では、インクカートリッジ7は、略直方体形状となっており、その底面7aは平面に形成されている。このインクカートリッジ7は、ホルダ部8の底部8aに載置された際には、インクカートリッジ7の直方体形状の長手方向がX方向と平行に配置される。
【0022】
そして、ホルダ部8に対して矢印Aで示すようにX方向(水平方向)に沿って着脱可能となっている。
インクカートリッジ7のインク収容部9は、所定色のインクを貯留し、外部からは大気連通部12を除いて封止されている。このインク収容部9の底部9aは、インクカートリッジ7の側部7bの下端に設けられている第2の接続部11に向かって下さがりに傾斜している。
【0023】
また、インク収容部9には、インクカートリッジ7をホルダ部8に載置した際に、Y方向つまり重力方向の上方に空気室13が形成されている。この空気室13と連通する箇所に上記の大気連通部12が設けられている。
【0024】
大気連通部12は、インク収容部9を外部から封止するための公知の弁機構を有し、この弁機構を開放させることでインク収容部9中に空気を流通させる通気装置である。つまり、インクカートリッジ7がホルダ部8に装着されて大気連通部12とホルダ部8に設けられた大気接続部14とが接続されると、弁機構が開放し、インク収容部9が大気開放される。
【0025】
この大気連通部12は、軸心がインクカートリッジ7の側部7bと直交する方向に延びるように、側部7bに設けられている。即ち、大気連通部12の軸心は、インクカートリッジ7の長手方向の軸心と略平行に配置されている。なお、本実施の形態において、大気連通部12は、Y方向において、インクカートリッジ7の側部7bの上端に設けられている。
【0026】
インク供給装置6の他方のホルダ部8は、水平方向(図中X方向)に延びる底面8aと、この底部8aと直交するY方向に延びる側部8bとを有している。底部8aは、インクカートリッジ7がホルダ部8に装着された際にインクカートリッジ7の底面7aと接触してインクカートリッジ7を保持する。
【0027】
側部8bには、詳しくは後述する第1の接続部15と、大気接続部14とが固設されている。第1の接続部15は、インクカートリッジ7側の第2の接続部11と接続し、大気接続部14は、インクカートリッジ7側の大気連通部12と接続するように構成されている。
【0028】
この大気接続部14は、一方の通気装置であるインクカートリッジ7の大気連通部12と接続されることにより、インクカートリッジ7と外部との空気の流通を可能にする他方の通気装置である。
【0029】
この大気接続部14は、一端部は、その軸心がX方向に沿って延び、他端部は、その軸心がY方向に沿って延び、略L字形状を有している。また、この大気接続部14は、一端部から他端部まで通じる貫通孔を有している。この貫通孔の両端は開口している。
【0030】
図2(a) は接続機構10を構成する第1の接続部15と第2の接続部11の内部構成を示す断面図であり、図2(b) は第1の接続部15の軸部材のみを取り出して示す図、図2(c) は第1の接続部15の滑動部材のみを取り出して示す図である。
【0031】
なお、インクカートリッジ7そのものは本発明の主要部ではないので、図2(a) には、インクカートリッジ7を簡略に示している。
接続機構10の他方の接続部を形成する第1の接続部15は、図2(a),(b),(c) に示すように、接続端側が開口する第1の筒状部16と、この第1の筒状部16の底部17の中心に固設された軸部材18と、底部17の所定の位置に形成された記録部4へのインク供給路となる供給チューブ5と連通する第1の液体経路として第1のインク経路25を備えている。なお、第1のインク経路25の接続端側のインク受給口としての開口を第1の開口19とする。
【0032】
第1の接続部15は、更に、第1の筒状部16の内周面21に接して摺動可能で且つ後述する第1の位置と第2の位置とに移動可能な移動開口22を有する第1の移動部材としての滑動部材23と、滑動部材23を接続端側に付勢する付勢部材としての押圧バネ24を備えている。
【0033】
この第1の接続部15の接続端側にある開口26の縁部内側は、内面円周に沿って切り欠かれて断面が鉤型の段差部27が形成されている。この段差部27に、Oリング28が嵌り込んでいる。
【0034】
そして、開口26の縁部の輪状の外面と外周面を覆ってキャプ29が固定して設けられている。キャプ29は、その開口部の周囲内面で上記のOリング28を外側から押圧している。換言すれば、Oリング28は、段差部27とキャプ29により挟持されている。これにより、Oリング28が段差部27から脱落するのが防止されている。
【0035】
軸部材18は、第1の筒状部16の底部17の中心からインクカートリッジ7の挿抜方向に開口26の近傍まで延在して配置されている。
この軸部材18には、図2(b) に示されるように、その外周面18aに、螺旋状の溝31と、この螺旋状の溝31の両端において軸部材18の軸線に平行な直線状の溝31a及び31bとから成る外周溝32が形成されている。
【0036】
また、滑動部材23は、図2(c) に示されるように、一体に形成された筒部33とフランジ部34とで構成されている。この筒部33とフランジ部34(滑動部材23)には、軸部材18と嵌合するための嵌合孔35が形成されている。この嵌合孔35は、その内周面の一部に突設された内周突起部36を備えている。
【0037】
この滑動部材23は、図2(a) に示すように、嵌合孔35により軸部材18に嵌合したとき、内周突起部36が軸部材18の外周溝32に摺動自在に係合し、フランジ部34の外周面34aが、第1の筒状部16の内周面21に摺接する。
【0038】
そして、この滑動部材23のフランジ部34は、その縁部を、図2(a) に示すように第1の接続部15と第2の接続部11が非接続状態であるときには、内側から押圧バネ24により開口26方向へ付勢され、外側からはOリング28により押さえ込まれて、開口26の内側で固定され、第1の筒状部16の内部を外部から遮断している。
【0039】
接続機構10の一方の接続部を形成する第2の接続部11は、図2(a) に示すように、接続端側(図の左方端部側)を底部37とする第2の筒状部38と、この第2の筒状部38の内周面39に接して摺動可能な第2の移動部材としての円柱状部材41を備えている。
【0040】
この円柱状部材41には、外周面の所定の位置(図2(a) では最下部)に、インクカートリッジ7のインク収容部9内のインクを第1の接続部に供給するための第2の液体経路として第2のインク経路42が形成されている。また、円柱状部材41の後端部(図の右方端部)にはフランジ43が一体に形成されている。
【0041】
上記第2の筒状部38の後方(図の右方)は、第2の筒状部38の内径よりも大きな内径の大径筒状部44が一体に連設されている。この大径筒状部44は、インクカートリッジ7の接続保持部45に外嵌してインクカートリッジ7に接続されている。
【0042】
この大径筒状部44は、接続保持部45の図では見えない流通孔を介してインクカートリッジ7のインク収容部9に連通しており、大径筒状部44の空房44a内はインクで満たされている。
【0043】
また、第2の筒状部38と大径筒状部44との内周面境界部には斜めの段差部46が形成されている。大径筒状部44の内周面と円柱状部材41のフランジ43の外周面との間には、隙間が形成されている。
【0044】
円柱状部材41には、Oリング47がフランジ43に密着するようにして嵌合している。フランジ43と接続保持部45との間には、付勢部材として押圧バネ48が介装されている。
【0045】
これにより、図2(a) に示すように第1の接続部15と第2の接続部11が非接続状態であるときには、フランジ43が第2の接続部11の接続端側(図の左方)に付勢されていることにより、円柱状部材41の先端部(図の左方端部)は、第2の筒状部38の底部37に近接する位置まで押し出される。
【0046】
これにより、Oリング47がフランジ43と斜めの段差部46との間に挟持され、大径筒状部44の内部を第2の筒状部38から、つまり外部から、遮断する。すなわち、インクカートリッジ7のインク収容部9のインクを外部から封止している。
【0047】
また、第2の筒状部38の底部37には、第1の接続部15の軸部材18が滑接して進退する案内部となる嵌入孔49が形成され、第2のインク経路42に対向する位置に、インク供給口としての第2の開口51が形成されている。
【0048】
次に、上記構成の接続機構10の接続の動作を説明する。
図3(a) は、左に、図2(a) に示した第1の接続部15を示し、その滑動部材23を矢印B方向に見た図を右に示している。そして、図3(b) 〜(d) は、接続の動作状態を示している。
【0049】
なお、図3(a) 〜(d) には、図2(a),(b),(c) に示した構成と同一の構成部分については説明に必要な構成部分についてのみ図2(a),(b),(c) と同一の番号を付与している。
図2(a) に示すように第1の接続部15及び第2の接続部11が非接続状態においては、第1の接続部15の滑動部材23は、押圧バネ24によってフランジ部34がOリング28に圧接することにより、第1の筒状部16の開口26を外部から遮断している。このとき、滑動部材23の移動開口22は、第1の位置である最上部に位置している。この位置は、第1のインク経路25の第1の開口19に対して相対的に、第1の筒状部16の中心線16aに対して、ちょうど反対側の位置となっている。
【0050】
また、第2の接続部11の円柱状部材41は、押圧バネ48がフランジ43を押圧することでOリング47を段差部46に圧接し、インクカートリッジ7のインク収容部9のインクを外部から封止している。
【0051】
ここで、前述したように滑動部材23は、内周突起部36によって図2(b) に示す軸部材18の外周溝32と係合している。
そのため、第1の接続部15と第2の接続部11による接続の初期状態では、第2の接続部11の第2の筒状部38の底部37(第2の接続部11の先端部)が第1の接続部15の第1の筒状部16に嵌入されることで、滑動部材23は押圧バネ24の押し付勢力に抗して軸部材18に形成された外周溝32の直線状の溝31bに沿って軸部材18の軸方向に案内されながら押し込まれる。
【0052】
また、これと共に、第1の筒状部16の軸部材18の先端が、相対的に、第2の筒状部38の嵌入孔49に嵌入して第2の筒状部38内へ進入する。
更に第2の接続部11の第2の筒状部38の先端部を第1の接続部15の第1の筒状部16に押し込むことで内周突起部36が外周溝32の螺旋状の溝31に沿って移動するため、図3(b)に示すように、滑動部材23は、回転しながら軸部材18の軸方向に押し込まれる。なお、図3(b)では、滑動部材23は時計回り方向に回転している。
【0053】
そして、第1の筒状部16の内部において、図3(c) の右に示すように、滑動部材23は、移動開口22が第1の開口19と対向する位置、且つ移動開口22と第2の開口51とが連通する位置まで回転移動する。すなわち、外周溝32の螺旋状の溝31は、移動開口22と第1の開口19とが対向する位置(第2の位置)まで滑動部材23を回転させる溝形状となっている。この時、第1の筒状部16の底部17とフランジ部34との間には、間隙40が形成されている。
【0054】
他方、第2の筒状部38の内部では、第1の筒状部16の軸部材18の先端による第2の筒状部38内への進入が相対的に進行し、軸部材18の先端が第2の筒状部38内の円柱状部材41を押圧バネ48の押し付勢力に抗して大径筒状部44の空房44a方向へ押圧する。
【0055】
これにより、円柱状部材41は、図3(b) (図2(a) も同様)に示す非接続状態の初期位置(第3の位置)から図3(c)に示す大径筒状部44の空房44a方向へ後退する。ただし、この状態では第2のインク経路42の後端(図の右方)は、インクで満たされている大径筒状部44の空房44a内と連通していない。
【0056】
図3(c)の状態から更に第2の接続部11の第2の筒状部38の先端部を第1の接続部15の第1の筒状部16に押し込むと、内周突起部36は、直線状の溝31aに沿って軸部材18の軸方向に押し込まれる。すなわち、この状態では滑動部材23は回転せずに押し込まれる。そして、図3(d)に示すように、滑動部材23を第1の筒状部16の底部17とフランジ部34との間に形成された間隙40が閉塞される位置まで押し込む。これによって、第1のインク経路25の第1の開口19とフランジ部43の移動開口22と第2の開口51とが隙間なく連通した状態となる。この位置を連通位置とする。
【0057】
また、これと共に、軸部材18の先端が第2の筒状部38内の円柱状部材41を大径筒状部44の空房44a方向へ押圧することで、図3(d)に示すように、第2のインク経路42の後端(図の右方)がインクで満たされている大径筒状部44の空房44a内に連通する。なお、この状態における円柱状部材41の位置を第4の位置とする。これにより大径筒状部44内のインクは、矢印aで示すように第2のインク経路42を流れ、第2の筒状部38内に進入し、更に、矢印bで示すように第2の筒状部38の第2の開口51、滑動部材23の移動開口22及び第1の開口19を介して第1のインク経路25に流入する。そして、図1に示した供給チューブ5を介して記録部4に供給される。
【0058】
このように、本実施の形態においては、第1の接続部15と該第1の接続部15に対向配置される第2の接続部11とからなる接続機構10において、第1の接続部15は、接続端側が開口する第1の筒状部16と、この第1の筒状部16の底部17の中心に固設された軸部材18と、底部17の周辺部の所定の位置に形成され液体流動経路としての第1のインク経路25のインク受給口となる第1の開口19と、第1の筒状部16の内周面21に接して摺動可能で且つ第1の位置と第2の位置とに回転移動可能な移動開口22を有する滑動部材23とを備えている。
【0059】
また、第2の接続部11は、接続端側を底部37とする第2の筒状部38と、この第2の筒状部38内を第3の位置と第4の位置とに移動可能な第2のインク経路42を有する円柱状部材41とを備えている。
【0060】
そして、第1の接続部15と第2の接続部11が非接続状態であるときに、第1の接続部15の第1の筒状部16に第2の接続部11が押し込まれたとき、第1の接続部15において、滑動部材23が軸部材18の一方向に移動することにより、移動開口22が第1の位置から第2の位置に回転移動して第1の接続部15の第1のインク経路25の第1の開口19と第2の接続部11の第2のインク経路42が連通する。
【0061】
図4(a),(b) は、第1の接続部15と第2の接続部11との接続を切り離す接続解除時の動作状態を説明する図である。なお、図4(a) は図3(d) と同一の状態を示している。
図4(a) に示す第1の接続部15及び第2の接続部11が接続状態であるときにおいて、第1の接続部15の第1の筒状部16から第2の接続部11の第2の筒状部38が引き出されると、まず、第2の接続部11の円柱状部材41が押圧バネ48の付勢力により第2の筒状部38の底部37側へ移動する。これによりOリング47を段差部46に圧接し、第2のインク経路42と大径筒状部44内との連通が遮断される。これと共に、滑動部材23は、押圧バネ24の付勢力により直線状の溝31aに案内されて接続端側へ移動するため、移動開口22が第1の開口19と対向した状態、且つ移動開口22と第2の開口51とが連通した状態で間隙40が形成される。(図4(b))この時、第2の筒状部38の空房38a内に溜まったインクは、第2のインク経路42と大径筒状部44内との連通が遮断されるまでの過程で大径筒状部44内に戻るが、多少空房38aに残留する場合がある。この空房38a内に残留したインクは、円柱状部材41が押圧バネ48の付勢力により第2の筒状部38の底部37側へ移動することによって、第2の開口51及び移動開口22を介して間隙40へと流れ落ちる。そのため、間隙40は、残留したインクを許容できるだけの容積を備えているとよい。
【0062】
そして、更に第1の接続部15の第1の筒状部16から第2の接続部11の第2の筒状部38が引き出されると、滑動部材23は、螺旋状の溝31に案内されて移動するため、接続時とは逆方向に回転し、移動開口22が第2の位置から第1の位置へと回転移動する。(図4(c))つまり、移動開口22が第1の開口19及び第2の開口51よりも上方に移動していることにより、間隙40に流れ出たインクが、更に滑動部材23より外に流れ出ることはない。図4(c)の状態から更に引き出すことで接続の解除が完了する。
【0063】
このように、本実施の形態においては、第1の接続部15と該第1の接続部15に対向配置される第2の接続部11とからなる接続機構10において、第1の接続部15及び第2の接続部11が接続状態にあるときに、接続解除のために、第1の接続部15の第1の筒状部16から第2の接続部11の第2の筒状部38が引き出されたとき、移動開口22が第2の位置から第1の位置に移動して、第1の接続部15の第1のインク経路25と第2の接続部11の第2の開口51を遮断する。よって、装置を汚すことなく第1の接続部15と第2の接続部11との接続を解除することができる。
【0064】
なお、上述した第1の接続部15と第2の接続部11による非接続状態から接続状態への状態遷移、又は接続状態から非接続状態への状態遷移においては、第1の筒状部16の中心軸と第2の筒状部38の中心軸が同一軸線上にある状態で行われる。
(第2の実施の形態)
図5(a) は、第2の実施の形態における第1の接続部の構成を示す断面図であり、図5(b) は、第1の接続部の滑動部材の構成を示す斜視図である。なお、本実施の形態における第2の接続部の構成は、第1の実施の形態において示した第2の接続部11の構成と同一である。
【0065】
図5(a) に示すように、第2の実施の形態における第1の接続部52は、第1の筒状部53の内部の形態と、この内部に嵌合する図5(b) に示す滑動部材54の形態が異なる。なお、図5(a),(b) には、図2乃至図4に示した構成と同一の構成部分には、図2乃至図4に示した番号と同一の番号を付与して示している。
【0066】
図5(a) に示すように、第1の筒状部53は、その内周面55に、螺旋状の溝56aとその両端にそれぞれ連設して形成された直線状の溝56b及び56cからなる内周溝56を備えている。また、軸部材57は、その外周面に溝等は形成されておらず単なる滑面に形成されている。その他の構成である底部17、段差部27、Oリング28等の構成は、第1の実施の形態における図2(a) に示した構成と同一である。
【0067】
この第1の筒状部53内に嵌入する滑動部材54は、図5(b) に示すように、図2(c) に示した内周突起部36が無い代わりに、フランジ部34の外周面34aに外周突起部58を備えている。
【0068】
この構成において、滑動部材54が嵌合孔35により軸部材57に嵌合したとき外周突起部58は、第1の筒状部53の内周溝56に摺動自在に係合する。
これにより、第1の接続部52と第2の接続部11とが接続されるときには、第2の接続部11により滑動部材54が第1の筒状部53の奥へと押し込まれることにより、外周突起部58が内周溝56の螺旋状の溝56aに従って摺動して滑動部材54が回転する。
【0069】
これにより第1の実施の形態における場合と同様に、移動開口22は、第1の位置から第2の位置に移動し、第1の接続部52と第2の接続部11のインク流路を連通させるように機能する。
(第3の実施の形態)
図6(a) は、第3の実施の形態における第1の接続部の構成を示す断面図であり、図6(b) は、第1の接続部の滑動部材の構成を示す斜視図である。なお、本実施の形態における第2の接続部の構成は、第1の実施の形態において示した第2の接続部11の構成と同一である。
【0070】
また、図6(a),(b) には、図2乃至図5に示した構成又は機能と同一の構成又は機能部分には図2乃至図5に示した番号を付与して示している。
図6(a) に示すように、第3の実施の形態における第1の接続部60は、第1の筒状部61の内周面55の上部の面に突設された内周突起部62を備えている。
【0071】
そして、図6(b) に示す滑動部材63は、フランジ部34と一体に形成された円環部64を備えている。この円環部64の外周面64aには、第1の筒状部61の内周突起部62と係合する螺旋状の溝とその両端にそれぞれ連設して形成された直線状の溝からなる外周溝65が形成されている。
【0072】
この構成において、滑動部材63が嵌合孔35により軸部材57に嵌合したとき外周溝65が、第1の筒状部61の内周突起62に摺動自在に係合する。
本例における押圧バネ48の外径は、第1及び第2の実施の形態における押圧バネ48の外径よりも小径であり、これにより、滑動部材63との係合側端部は滑動部材63の円環部64の内部に入り込んでフランジ部34の内側に圧接している。この状態で押圧バネ48はフランジ部34を介して滑動部材63全体を内側から外方へ付勢している。
【0073】
この構成により、第1の接続部60と第2の接続部11とが接続されるときには、第2の接続部11により滑動部材63が第1の筒状部61の奥へと押し込まれることにより、螺旋状の外周溝65が第1の筒状部61の内周突起62に沿って摺動して滑動部材63が回転する。
【0074】
これにより第1及び第2の実施の形態における場合と同様に、移動開口22は、第1の位置から第2の位置に移動し、第1の接続部63と第2の接続部11のインク流路を連通させるように機能する。
【0075】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。
また、本発明の接続機構をインクジェットプリンタのインク流動経路接続機構として説明したが、これに限ることなく、本発明の接続機構は、如何なる液体流路の接続にも有効である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、インクカートリッジをプリンタ本体のカートリッジホルダから取り外す際に、インクカートリッジの接続部とカートリッジホルダの接続部に溜まっているインクが外部に飛び散ることのない接続機構を備えたインクカートリッジに利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 画像記録装置
2 記録媒体
3 搬送機構
4 記録部
5 供給チューブ
6 インク供給装置
7 インクカートリッジ
7a 底面
7b 側部
8 カートリッジホルダ部(ホルダ部)
8a 底部
8b 側部
9 インク収容部
9a 底部
10 接続機構
11 第2の接続部
12 大気連通部
13 空気室
14 大気接続部
15 第1の接続部
16 第1の筒状部
16a 中心線
16b 空房
17 底部
18 軸部材
18a 外周面
19 第1の開口
21 内周面
22 移動開口
23 滑動部材
24 押圧バネ
25 第1のインク経路
26 開口
27 段差部
28 Oリング
29 キャプ
31 螺旋状の溝
31a、31b 直線状の溝
32 外周溝
33 筒部
34 フランジ部
34a 外周面
35 嵌合孔
36 内周突起部
37 底部
38 第2の筒状部
39 内周面
40 間隙
41 円柱状部材
42 第2のインク経路
43 フランジ
44 大径筒状部
44a 空房
45 接続保持部
46 斜めの段差部
47 Oリング
48 押圧バネ
49 嵌入孔
51 第2の開口
52 第1の接続部
53 第1の筒状部
54 移動部材
55 内周面
56 内周溝
56a 螺旋状の溝
56b、56c 直線状の溝
57 軸部材
58 外周突起部
60 第1の接続部
61 第1の筒状部
62 内周突起部
63 滑動部材
64 円環部
64a 外周面
65 外周溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像記録装置に設けられ、第1の開口を有する第1の液体経路に対して移動する移動開口を有する第1の移動部材を備える第1の接続部に対して、着脱可能に構成される第2の接続部を備えるインクカートリッジであって、
該インクカートリッジにおいて前記第2の接続部に形成された第2の開口に対向する位置に形成される第2の液体経路が形成された第2の移動部材と、
前記第1の接続部に前記第2の接続部を押し込むことで、前記第1の移動部材は、前記移動開口の位置が前記第1の開口及び前記第2の開口と非連通状態である第1の位置から前記第1の開口及び前記第2の開口と連通状態である第2の位置まで移動し、
前記第2の移動部材は、前記インクカートリッジ内のインクと非連通状態である第3の位置から前記インクカートリッジ内のインクと連通状態である第4の位置まで移動し、前記第1の液体経路と前記第2の液体経路とを連通させるように構成される、
ことを特徴とするインクカートリッジ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−18293(P2013−18293A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−238556(P2012−238556)
【出願日】平成24年10月30日(2012.10.30)
【分割の表示】特願2008−174168(P2008−174168)の分割
【原出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】