説明

インクジェットインク及びインクジェット印刷方法

本発明は、少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)を含み、さらにフリーラジカル光開始剤を含み、揮発性化合物をほとんど含まない放射線硬化型インクジェットインクに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットインク、特に紫外線硬化性インクジェットインク、及びインクジェット印刷の方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルインクジェットは、グラフィックディスプレイ及び他の製品上の剛体基材上及びフレキシブル基材上の両方にフルカラー画像を生成するための確立した技術となっている。商業的圧力により、より速い製品印刷速度が頻繁に求められ、より急速に硬化することのできる紫外線ジェットインクを必要とする。市販のジェットインクのほとんどはフリーラジカルメカニズムによって硬化するが、現在ではいくつかのカチオン硬化性ジェットインクが出現している。
【0003】
フリーラジカルインク及びカチオン硬化性インクの限界は、これらのインクに使用されている原料、特にモノマーの臭気レベルが高いことである。このことは、より高い揮発性、より臭気性であることの多い単官能紫外線硬化型モノマーが含まれていることの多い、フレキシブル基材に使用される紫外線硬化型ジェットインクに特に当てはまる。これらのモノマーからの臭気は、インク膜の硬化後も続くことがあり、印刷物のエンドユーザーによって知覚され得る。一部の用途、例えば屋外用グラフィクスディスプレイについては、このような臭気は特に害にはならないが、他の用途では、紫外線硬化型ジェットインク印刷物の使用を制限する。臭気を香料で隠したり、インクに脱臭成分を含める試みが行われてきたが、これらの方法は、紫外線硬化型インクジェットインクには広く使用されるに至らなかった。
【0004】
水性のドロップオンデマンドジェットインクでは、水を高分子量樹脂と組み合わせた媒剤として使用することによって、一般に臭気を低く保っている。しかし、このような水性インクジェットは一般に、紙などの多孔質基材上の印刷に限られる。
【0005】
溶剤型ドロップオンデマンド及び連続インクジェットインクは、揮発性溶剤がインクから蒸発するので、印刷段階及び乾燥段階で強い臭気を発し得る。しかし、これらの溶剤は比較的急速に蒸発し、従って、最終的なエンドユーザーは印刷物から強い臭気を感じることはない。とは言え、揮発性有機溶剤の使用は健康や安全、及び環境問題に係わる。油性ドロップオンデマンドジェットインクでは、使用される油の臭気は比較的低いが、これらのインクは無孔性基材上での使用には適していない。
【0006】
揮発性成分がないため、ホットメルト(熱溶融性)ドロップオンデマンドジェットインクも低臭気であるが、これらは無孔性基材上で優れた粘着性及びロバスト性を達成するのに適していない。
【0007】
近年利用されるようになったカチオン硬化性紫外線硬化性インクジェットインクの一部は、使用される光開始剤は強い臭気を発し得るが、インクの硬化後にも比較的低臭気である。しかし、それらの顔料及びプリントヘッドの安定特性はまだ確立されておらず、従って一般に、これらは無孔性基材上に良好な粘着性で印刷する必要性に対する解決策を提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
許容できる粘着性及び硬化速度を有し、印刷段階及びエンドユーザーによって使用される際に共に低臭気のジェットインクを提供する必要性が残る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)及びフリーラジカル光開始剤を含み、揮発性有機化合物をほとんど含まない放射線硬化性インクジェットインクを提供する。
【0010】
CTFAはインクジェットインク中に使用されることで知られてきたが、その使用は知覚される比較的高い粘度のために制限されてきた。このことは、高い官能性を有し、従って向上した硬化速度及びロバスト性を提供することができるが、必然的に高粘度であるインクモノマーにも含める要望と結び付いて、インクジェット印刷におけるCTFAの用途を制限してきた。しかし、本発明の発明者は驚くことに、インクジェット印刷の要求事項を満たすのに十分低い粘度を有し、許容できる速度で硬化し、水性インクとしても、そして硬化後も低い臭気を有するインクを配合することができることを発見した。また、硬化したインクも一般に、許容できる性能、特に許容できるフレキシビリティ及び粘着性を有することも判明した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
このインクは、少なくとも60%、好適には少なくとも70%、より好適には少なくとも80%、そして場合によっては少なくとも85重量%のCTFAを含むことが好ましい。一実施形態では、このインクは95重量%以下、随意的に90重量%以下のCTFAを含む。
【0012】
本発明のインクジェットインクは、揮発性有機化合物をほとんど含まない、つまり、インクは1重量%未満の揮発性有機化合物を含み、好適には0.5%未満、特に好適には0.25重量%未満の揮発性有機化合物を含む。本明細書で使用する「揮発性有機化合物」という用語は、印刷及び硬化中または後に液体インクフィルムまたは硬化インクフィルムの何れかから蒸発しやすいあらゆる化合物を称する。従ってこの用語は、メタノール、エタノール及びプロパノール、ジエチルエーテル、ハロカーボンのような、より低級のアルコールを含む一般的な揮発性有機溶剤を含む。本発明の一実施形態によるインクは、大気圧で170℃未満の沸点を有する1重量%未満の有機化合物を含む。
【0013】
本明細書で使用する「多官能性モノマー」という用語は、例えば、アクリレートまたはメタクリレート基のインクの硬化反応に加わることのできる、2つ以上の官能性基を有するエチレン性不飽和モノマーを称する。「3官能以上」とは、例えば、アクリレートまたはメタクリレート基の放射線誘導性硬化反応に加わることのできる、3つ以上の官能性基を有するモノマーを称すると理解されたい。
【0014】
紫外線硬化性インクジェットインクは、通常少なくとも1つの2官能以上のモノマーを含む。2官能以上のモノマーは、硬化膜中のポリマー鎖間の架橋を提供し、従って、硬化インクのロバスト性及び強度を増加させる。2官能以上のモノマーは、インクの硬化速度も増加させる。一般に、モノマーの官能性が高いほど、架橋結合の度合い及び硬化速度をより効果的に増加させる。しかし、多官能性モノマーは、硬化時のインクの収縮の増加にも関連し、そのようにして、基材への粘着性を減少させるか、基材に歪みを生じさせ得る。
【0015】
本発明の発明者は、2官能以上のモノマーがないか比較的少なくても、許容できる速度で硬化して、許容できるロバスト性を有することのできる硬化インク膜を生成する高レベルのCFTAを含むインクを配合することができることを発見した。従って、他の態様では、本発明は少なくとも50重量%のCTFA及びフリーラジカル光開始剤を含み、全体で5重量%以下の2官能以上のモノマーを含む放射線硬化型インクジェットインクを提供する。この態様では、インクは3重量%以下の2官能以上のモノマーを含むことが好ましく、例えば、1重量%未満といった、2官能以上のモノマーをほとんど含まないことがより好ましい。この態様では、インクは、揮発性化合物もほとんど含まないことが好ましく、例えば、インクは1重量%未満の揮発性化合物を含む。
【0016】
別の実施形態では、インクは非常に大量の1つ以上の2官能以上のモノマーを含む。特に、インクは1つ以上の2官能モノマーも含むことができる。インクは少なくとも1つの3官能以上のモノマーを含むことができる。インクは5または6官能のモノマーを含むことができる。この実施形態では、インクは25%以下の2官能以上のモノマーを含むことが好ましい。随意的に、インクは少なくとも1重量%の、より好適には5〜25重量%の、そして特に好適には5〜10重量%の3官能以上のモノマーを含む。好適には、インクは10重量%以下の5または6官能モノマーを含む。場合によっては、インクは最大20重量%の樹枝状の多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む。
【0017】
インクは、CTFAに加えて1つ以上の単官能モノマーを含むこともできる。しかし、これらの他の単官能モノマーは、存在する場合には、40重量%以下のインクを含むことが好ましく、そして30重量%未満のインクを含むことが好ましい。
【0018】
本発明のインクは、インクのフリーラジカル媒介硬化を開始する光開始剤を含む。フリーラジカルメカニズムによって硬化することのできる適切な成分は、アクリレートモノマー及びオリゴマーなどのエチレン性不飽和モノマー及びオリゴマー、Nビニルピロリドン、Nビニルカプロラクタム、ビニルエーテル、スチレンなどのビニル成分を含む。インクの硬化可能な成分の全てが、フリーラジカルメカニズムによって硬化することが好ましいが、本発明は、少量のカチオン硬化性成分をカチオン開始系と共に含むインクにも及ぶ。
【0019】
適切な2官能性アクリレートモノマーは、ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート)、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及びプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートを含む。
【0020】
適切な3官能性アクリレートモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート、 ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリ(プロピレングリコール)トリアクリレート、及びエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートを含む。
【0021】
ビス(ペンタエリトリトール)ヘキサアクリレートは、適切な6官能性アクリレートモノマーである。
【0022】
CTFAに加えて、本発明のインクに使用することのできる単官能アクリレートモノマーには、例えば、オクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、デシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレートが含まれる。トリデシルアクリレートは特に好適である。
【0023】
他の多くの適切な単官能性モノマーと多官能性モノマーが当業者に知られている。
【0024】
より高いアルキル基を有するモノマーをジェットインクに含めることは、より高いアルキル基を有するモノマーを含まない同様のインクに比べて、改善された耐候性を提供することで知られている。本明細書で使用される「より高いアルキル基」という用語は、6以上の炭素原子(アルキル基の一部ではないモノマー中に存在する炭素原子は含まない)を含む線状または枝状のあらゆるアルキル基を称する。芳香族基を含むモノマー(本明細書では「芳香族モノマー」と称する)を含めることは、耐候性を大幅に改善することが判明している。エトキシ化ノニフェノールアクリレート、Actilane410(芳香族単官能アクリレート)、2−フェノキシエチルアクリレートは、適切な芳香族モノマーである。随意的に、インクは5〜25%、より好適には10から25%、そして随意的に15〜25%の芳香族モノマーを含む。
【0025】
基材とジェットインクの組成は、ジェットインクによって基材が膨潤可能であることが有利である。インクジェットインクとの接触時の基材の膨潤は、乾燥または硬化したインクジェットインクの基材への粘着を促進すると考えられている。
【0026】
ジェットインクが基材の膨潤に適しているか否かの評価は、次のように行うことができる:i)カラージェットインクの層を基材上に塗布する;ii)一定期間(例えば60秒)全体を放置する;iii)インクを拭き取る。インクと触れた部分が変色を示した場合は、ジェットインクが基材を膨潤させている。
【0027】
ある基材の膨潤に適したインクの組成は、その基材を膨潤させる1つ以上のモノマーをインクに含ませることによって達成することができ、従って、インクは基材の膨潤に適したモノマーを含むことが好ましい。塩化ビニルの膨潤に適したモノマーは、テトラヒドロフルフリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、N−ビニル−2−カプロラクタム並びにCTFAを含む。随意的に、インクはCTFA以外に、5〜25重量%の、例えば10〜25重量%の基材膨潤モノマーを含む。
【0028】
一実施形態では、インクは20%以下の、より好適には5重量%未満の高Tgモノマーを含む。「高Tgモノマー」という用語は、そのモノマーのホモポリマーが、少なくとも50℃のTg(ガラス転移温度)を有するモノマーを称する。そのような高Tgモノマーの存在は、硬化インクのフレキシビリティを低下させると考えられている。随意的に、インクは10重量%未満、好適には5重量%未満の高Tg単官能モノマーを含む。
【0029】
本発明のインクは、例えば上塗り塗装、ワニスまたは他の無色塗装に使用することのできる無色インクとすることができる。代案実施形態では、インクは着色料を含み、これらは染料または顔料とすることができる。
【0030】
この着色料は顔料であることが好ましい。この顔料は有機でも無機でもよい。インクは随意的に、0.1〜20重量%の、好適には1〜8重量%の、より好適には3〜6重量%の有機顔料、例えばアゾ系顔料を含む。インクは随意的に、1〜20重量%の、好適には5〜18重量%の無機顔料、例えば金属酸化物顔料を含む。
【0031】
フレキシビリティの高いインクを配合する1つの周知の方法は、インクにフタル酸エステルのような可塑剤を含めることである。 本発明の発明者は、可塑剤を使わないか少ししか使わずに、本発明による良好なフレキシビリティを有するインクを配合することができることを発見した。従って、一実施形態では、インクは5重量%以下、好適には2重量%以下の可塑剤を含み、随意的に可塑剤をほとんど含まない。
【0032】
本発明の他の態様では、少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)、フリーラジカル光開始剤、及び5重量%以下の可塑剤を含む放射線硬化性インクジェットインクを提供する。
【0033】
本発明のインクは1つ以上のフリーラジカル光開始剤を含む。一実施形態では、インクは紫外線硬化性インクであり、0.1〜20重量%の、より好適には0.1〜15重量%の、特に好適には0.1〜13重量%のフリーラジカル光開始剤を含む。「フリーラジカル」光開始剤という用語は、適切なモノマーのフリーラジカル媒介重合を開始するフリーラジカルを提供する光開始剤を称する。例えば、適切なベンゾフェノン、チオキサントン、ホスフィンオキシド、α−ヒドロキシケトン、α−ヒドロキシアミノケトンなどのあらゆる適切なフリーラジカル光開始剤を使用することができる。多くの適切なフリーラジカル光開始剤が当業者に知られている。
【0034】
インクは、400mJ/cm−2未満、より好適には250mJ/cm−2未満、そして随意的に100mJ/cm−2未満の線量を厚さ8μmの層に供給する紫外線源によって、使用時にほぼ完全に硬化することが好ましい。
【0035】
インクジェット印刷は低粘度のインクを必要とする。本発明のインクジェットインクは、50℃で30mPas未満、より好適には50℃で20mPas未満、任意選択で50℃で10mPas未満の粘度を有することが好ましい。
【0036】
本発明は、i)本発明によるインクを基材上にインクジェット印刷するステップと、ii)インクを紫外線放射で露光してインクを硬化させるステップとを含むインクジェット印刷の方法も提供する。
【0037】
基材の厚さは、少なくとも0.2mmであることが有利である。
【0038】
基材の厚さは、2mm未満であることが有利である。
【0039】
基材は、フレキシブル基材であることが有利である。本明細書で使用する「フレキシブル基材」という用語は、ひび割れ(クラック)なしに(基材の表面上のインクのひび割れはあっても)そして永久変形を示すことなしに、原料の両面が折り畳み線から3mmのところで向き合うように180度に折り畳み、そして挟み込むことのできる基材である。
【0040】
基材は剛体基材とすることができ、上記方法は、基材、少なくとも部分的に硬化された画像を、例えば真空成形で変形させるステップをさらに含むことができる。このようなステップによって作製した製品は、ポイントオブセール(販売時点)のディスプレイ及び広告アイテムを含む。
【0041】
プリンタヘッドの温度は60℃以下、より好適には50℃以下であることが有利である。
【0042】
本発明は、本発明によるインクを含むインクジェットプリンタも提供する。
【0043】
本発明は、少なくとも1つの表面に、本発明によるインクの硬化物を少なくとも一面上に有する基材を含む印刷物も提供する。
【0044】
本明細書で使用する全てのパーセント比率は、文脈から他の意味が明らかでなければ、インクの全重量に基づく重量である。
【0045】
以下、本発明の例を例示目的のみで説明する。
【0046】
(硬化速度)
硬化速度は次のように評価した:
【0047】
120mm×80mmサイズの低臭気ポリエステル基材であるFolanorm(登録商標)(英国のFolex社より得られる)のサンプル上にドローダウンを行った。このドローダウンは、No.3K−Bar(定格12μm)で、RK Printcoat社のKCC101自動ドローダウンリグ上で行った。
【0048】
そして、これらのドローダウンを即座に、中圧水銀ランプ(120W/cm)を取り付けたF300Sランプシステムを有するFusion社のLC6Eラボラトリーコンベヤ(登録商標)に通した。このドローダウンは、100mJ/cmの単一線量を受け、そして硬化膜は100mJ/cm毎に硬化したか否かを確かめて評価した(線量はInternational Light社のIL 390C UV線量計で測定した)。インク層がもはや湿っておらず、そして手袋をした人差し指の腹で表面を5回こすってもインク膜が基材まで破けなければ、膜は硬化したと考えた。
【0049】
受けとった全体の量を、個々の線量を加算して計算した。100mJ/cmより大きい1回の線量が必要である場合は、表3の100mJ/cmの許容硬化速度への回答を「いいえ」として記録した。
【0050】
(フレキシビリティ)
フレキシビリティは次のように評価した:
【0051】
120mm×80mmサイズのフレキシブル強化ビニル基材であるDickson社のDickson Jet 620上にドローダウンを行った。No.3K−Bar(定格12μm)で、RK Print Coat社のKCC101自動ドローダウンリグ上でドローダウンを行った。
【0052】
そして、これらのドローダウンを即座に、中圧水銀ランプ(120W/cm)を取り付けたF300Sランプシステムを有するFusion社のLC6E ラボラトリーコンベヤ(登録商標)に通した。これらのドローダウンは、300mJ/cmの硬化線量を受けた。次に、上述したのと同じドローダウン及び硬化手順を用いて、第2のインク層を第1の硬化層上でドローダウンした。そして、ドローダウンを30分放置した。
【0053】
次に、この「二重層」を、フレキシビリティについて評価した。強化ビニル基材上で、印刷した長方形の対向する角をとり、インク層を外側にして折り畳んで元の半分の大きさの長方形にし、内側の面が折り畳み線から3mmまたはそれ以上の距離で互いに接触するまで、折り畳み線からの距離を減少させながら、2つの内側の面を指圧で互いに接触させた。
【0054】
次に、折り畳んだビニルシートを、この位置で5秒間保持した。そして、この折り畳み上のインクのひび割れレベルを(折り畳んだ状態を保持しながら)目視で評価した。下にある基材を示す白い領域のレベルを、ひび割れレベルの尺度として用いた。より小さい白色領域が、ひび割れがより小さいことを示した。白色領域の有無を記録した。
【0055】
折り畳み/曲げ部分上にひび割れが見られない場合、合格とした記録した。下にある基材を示す白色領域が見えた場合は、不合格として記録した。
【0056】
(粘着性)
接着性は次のように評価した:
【0057】
120mm×80mmサイズの自己粘着性ビニル基材であるAvery社のFascal 900上にドローダウンを行った。No.3K−Bar(定格12μm)で、RK Print Coat社のKCC101自動ドローダウンリグ上でドローダウンを行った。
【0058】
そして、これらのドローダウンを即座に、中圧水銀ランプ(120W/cm)を取り付けたF300Sランプシステムを有するFusion社のLC6E ラボラトリーコンベヤ(登録商標)に通した。これらのドローダウンは、300mJ/cmの硬化線量を受けた。そして、これらのドローダウンを30分間放置した。
【0059】
次に、メス及び粘着性の強いテストテープを用いてクロスハッチ粘着性テスト(ASTM D 3359)を行った。(セルローススプライステープ 赤 No.139、コードNo.1112、サイズ25mm×66mmの3インチコア、Scapa Tapes社のSwiss Quality(登録商標))。ASTM 3359評価プロトコルを参照して、テープによるインク除去レベルを記録した。
【0060】
(比較例1.現在市販されている紫外線硬化性ジェットインクの硬化膜の臭気レベル)
市販されている3つのインクをテストして、それらの臭気レベルを評価した。
【0061】
120mm×80mmサイズの低臭気ポリエステル基材であるFolanorm(英国のFolex社より得られる)のサンプル上にドローダウンを行った。No.3K−Bar(定格12μm)で、RK Print Coat社のKCC101自動ドローダウンリグ上でドローダウンを行った。そして、これらのドローダウンを即座に、中圧水銀ランプ(120W/cm)を取り付けたF300Sランプシステムを有するFusion社のLC6E ラボラトリーコンベヤ(登録商標)に通した。これらのドローダウンは、International Light社のIL390 C紫外線線量計で測定した、300mJ/cmの紫外線放射を受けた。制御として、同じ線量を、インク層を有しないFolanorm(登録商標)基材のサンプルに与えた。
【0062】
硬化の10秒後に、硬化したドローダウンの各々を、120mm×40mmの大きさに切断し、直径60mm、深さ60mmの清潔なガラスジャー内に配置してネジ止めした。硬化インク毎に、これらの臭気テストジャーを6つ用意し、コーティングしていないFolanorm(登録商標)用にも6つ用意し、全てが完了すると、これらのガラスジャーを40℃のオーブン内に16時間置いた。
【0063】
そして、次の臭気テストを実行した。
【0064】
日常業務でインクジェット原料に触れることのない6人で臭気テストパネルを組んだ。
【0065】
そして、各被験者に一組のジャーを与え、これらは、各硬化サンプルの1つ、またはむき出しのFolanormをランダムな順序で含む。被験者は蓋を外してジャー内の空気を嗅いだ。そして被験者に、次のスケールで臭気レベルを評価するように頼んだ。
臭気レベル スコア
非常に強い 6
強い 5
普通 4
感じる 3
ほとんど感じない 2
感じない 1
【0066】
次に、その人は、上記一組中の他のジャー内のインク・ドローダウンの臭気評価を反復した。
【0067】
次の人は、他のジャーに対する臭気評価を反復した。このプロセスを、上記パネルの6人に対して反復し、結果を記録した。そしてこれらの6つのスコアは、インク/照射した基材毎に平均をとった。その結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
(例2.低臭気紫外線ジェットインクの配合)
【0070】
【表2】

【0071】
(実験)
上記形成のために、インクA〜Gを用意した(上記顔料は、分散剤及び20%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートでビーズミルを行った)。Brookfield LV DV−III粘度計をウォータージャケット及びNo.18スピンドルと共に用いて、粘度を測定した。
【0072】
比較例1で述べたように臭気テストを実行した。次に、硬化速度、フレキシビリティ、粘着性テストを行った。その結果を表3に示す。
【0073】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)を含み、さらにフリーラジカル光開始剤を含み、揮発性化合物をほとんど含まない放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項2】
少なくとも60重量%のCTFAを含む、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
少なくとも70重量%のCTFAを含む、請求項2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
25重量%以下の3官能以上のモノマーも含む、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項5】
10重量%以下の5官能または6官能モノマーを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項6】
5重量%以下の2官能以上のモノマーを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項7】
0.1〜25重量%の着色剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項8】
0.1〜20重量%の紫外線フリーラジカル光開始剤を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項9】
50℃で30mPas未満の粘度を有する、請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項10】
少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)を含み、フリーラジカル光開始剤も含み、2官能以上のモノマーが存在する場合は、その総量がインクの5重量%以下である放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項11】
少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)を含み、フリーラジカル光開始剤も含み、可塑剤が存在する場合は、その総量がインクの5重量%以下である放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項12】
少なくとも50重量%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)と、少なくとも1つの2官能以上のモノマーと、フリーラジカル光開始剤とを含む放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項13】
1重量%未満の揮発性化合物を含む、請求項12に記載のインクジェットインク。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のインクを含むインクジェットプリンタ
【請求項15】
基材を含み、この基材の少なくとも1つの表面上に、請求項1〜13のいずれかに記載のインクの硬化物を有する印刷物。
【請求項16】
i)請求項1〜13のいずれかに記載のインクを、基材上にインクジェット印刷するステップと、
ii)前記インクを紫外線放射で露光して、前記インクを硬化させるステップと
を含むインクジェット印刷方法。
【請求項17】
前記基材が無孔性である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材がフレキシブル基材である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
硬化線量が400mJ/cm−2以下である、請求項16〜18のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2010−540751(P2010−540751A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528023(P2010−528023)
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/076374
【国際公開番号】WO2009/045703
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(507385165)サン ケミカル コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】