説明

インクジェットプリンタ、インクジェットプリンタの制御方法及び制御プログラム

【課題】ホストから複数枚のクーポン(ページ)のデータが1ジョブとして送信された場合に、インクショット数や正常に印刷されたか否かの情報を、複数枚のクーポンの個々の情報として、ホストへ提供する。
【解決手段】ホストコンピュータから送信される、1ページ以上の印刷に必要な各種動作を指示するコマンドと印刷すべき各ページの画像に応じたデータとを含む印刷ジョブに応じて印刷を実行するインクジェットプリンタであって、印刷ジョブの印刷結果に係るジョブ状態と、該印刷ジョブに対応する印刷に使用されたインクショット数であるジョブショット数と、をジョブ情報記憶部に記憶させて管理するジョブ情報管理部と、印刷ジョブに含まれる印刷ページ毎の印刷結果に係るページ状態と、該印刷ページ毎の印刷に使用されたインクショット数であるページショット数と、をページ毎にページ情報記憶部に記憶させて管理するページ情報管理部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ、インクジェットプリンタの制御方法及び制御プログラムに係り、特に、1つのジョブで複数のページを印刷することが可能なインクジェットプリンタ、インクジェットプリンタの制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタは、近年、高機能化・小型化が伸展し、個人用または業務用の汎用プリンタ以外にも、装置やシステムに組み込んで使用する専用のプリンタも各種開発されている。その中には、例えば、店舗のレジにおいてレシートや販売促進用のクーポンなどを印刷するプリンタなどがある。プリンタは、ホストコンピュータと接続され、送信されるコマンドに基づいて印刷動作を行う。
【0003】
また、上記プリンタは、クーポンの印刷量等に応じて課金を行うことができるように、印刷に係る情報をホストコンピュータへフィードバックするプリンタも提案されている(例えば、特許文献1を参照)。印刷に係る情報とは、例えば、クーポン1枚の印刷に使用したインクショット数や、紙詰まりなどをおこさずにクーポンが正常に印刷されたか否かの情報などである。
【0004】
【特許文献1】特開2007−223300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、上記のような、店舗のレジなどにおいてレシートとともに販売促進用のクーポンなどを印刷するプリンタは、クーポン印刷時のインクショット数や、クーポンが正常に印刷されたか否かの情報をホストコンピュータへフィードバックする。このため、クーポンを印刷する際には、ホストコンピュータは、1ジョブに1クーポン分の印刷データを割り当てて、プリンタに印刷データを送信している。そして、このプリンタは、1つのジョブが完了する毎にインクショット数や、クーポンが正常に印刷されたか否かの情報をホストコンピュータへ送信していた。
【0006】
ところが、レジで会計を行う1人の顧客に対して、複数枚のクーポンを発券(印刷)して渡す場合もある。この場合、図9(a)に示すように、1つのジョブで1クーポン(ページ)の印刷データを連続で印刷する場合、ジョブの印刷終了から次のジョブの印刷開始までの間(以降、「ジョブ間」と称する)、プリンタは多数のコマンド(次のジョブの各種設定コマンドなど)を解析し、コマンドに応じた処理を実行する。この処理に時間を要するため、複数枚のクーポンの発券に時間がかかり、顧客の待ち時間が長くなるという問題がある。
【0007】
このクーポンの発券に時間がかかるという問題を解消するには、図9(b)に示すような、ホストコンピュータから複数枚のクーポン(ページ)のデータを1ジョブとしてプリンタへ送信する方法が考えられる。
【0008】
しかしながら、印刷時のインクショット数や、正常に印刷されたか否かの情報はジョブ単位で、ホストコンピュータへ送信されるので、複数枚のクーポンの個々に関する情報はわからない。このため、クーポンの種類毎の発券枚数や印刷経費を把握し管理することができなくなってしまう。クーポンの種類によって課金請求先が異なることもあり問題である。
【0009】
本発明の目的は上記課題を解消することに係り、ホストコンピュータから複数枚のクーポン(ページ)のデータが1ジョブとして送信された場合に、インクショット数や正常に印刷されたか否かの情報を、複数枚のクーポン(ページ)の個々の情報として、ホストコンピュータへ提供できるインクジェットプリンタ、インクジェットプリンタの制御方法及び制御プログラムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るインクジェットプリンタは、ホストコンピュータと通信可能に接続され、前記ホストコンピュータから送信される、1ページ以上の印刷に必要な各種動作を指示するコマンドと印刷すべき各ページの画像に応じたデータとを含む印刷ジョブに応じて印刷を実行するインクジェットプリンタであって、
前記印刷ジョブの印刷結果に係るジョブ状態と、該印刷ジョブに対応する印刷に使用されたインクショット数であるジョブショット数と、をジョブ情報記憶部に記憶させて管理するジョブ情報管理部と、
前記印刷ジョブに含まれる印刷ページ毎の印刷結果に係るページ状態と、該印刷ページ毎の印刷に使用されたインクショット数であるページショット数と、をページ毎にページ情報記憶部に記憶させて管理するページ情報管理部と、
を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、1ジョブで複数のページを印刷する印刷ジョブを受信した際、インクショット数や印刷の成否に係る情報をページごとに記憶、管理することができる。したがって、インクジェットプリンタの使用者は、必要に応じてインクジェットプリンタ内部の記録を参照することにより、印刷に用いられるインクショット数や印刷の成否をページごとに把握することができる。
また好ましくは、前記ページ情報管理部は、
前記印刷ジョブの実行により印刷したページの区切りと、前記印刷ジョブに含まれる全てのページの印刷終了後に、前記ページ状態と前記ページショット数とを前記ページ情報記憶部に登録することを特徴とする。
上記構成によれば、印刷ジョブに含まれるページ毎のページ情報をページ情報記憶部にそれぞれ登録することができる。
また好ましくは、前記ジョブ情報管理部は、
前記ジョブ状態と前記ジョブショット数の初期値を印刷開始前に前記ジョブ情報記憶部に登録する登録部と、
前記ページ状態と前記ジョブ状態の論理和をとり、前記ページショット数を前記ジョブショット数に加算して、それぞれ更新する更新部と、
を有することを特徴とする。
上記構成によれば、印刷開始前にジョブ情報記憶部にジョブ状態とジョブショット数を初期値(例えば「0」)として登録しておき、登録したジョブ状態を各ページ状態の論理和をとり更新し、ページショット数をジョブショット数に加算して更新することにより、印刷ジョブに含まれる全てのページの印刷が終了したときに、ジョブ全体の印刷結果及びジョブ全体のインクショット数が記録されることになる。
また好ましくは、前記ジョブ情報記憶部は、所定のジョブアドレスに、前記印刷ジョブを識別するジョブIDと、該印刷ジョブのジョブ名と、前記ジョブ状態と、前記ジョブショット数と、該印刷ジョブに含まれるページ数と、が関連づけて記憶され、
前記ページ情報記憶部は、該ページが含まれるジョブ情報が格納されるジョブアドレスと、前記ページショット数と、前記ページ状態と、該ページのページ番号と、が関連づけてそれぞれ記憶されることを特徴とする。
上記構成によれば、ジョブ情報記憶部の所定のジョブと、ページ情報記憶部内の該所定ジョブの各印刷ページの各情報(ページの印刷に使用されたインクショット数、ページ状態、ページ番号)と、がジョブアドレスを介して対応付けされて記憶される。
また好ましくは、前記ジョブIDと前記ジョブ名とに基づいて前記ジョブ情報記憶部を検索し、該当する印刷ジョブが存在する場合、該印刷ジョブのジョブアドレスを基に、該印刷ジョブに含まれるページ情報を検索する検索部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、ホストコンピュータから送信された情報送信命令を受けて、検索部によって情報送信命令で指定されたジョブ情報及び該ジョブに含まれるページ情報を検索し、ジョブ情報及びページ情報をホストコンピュータに送信することができる。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るインクジェットプリンタの制御方法は、ホストコンピュータと通信可能に接続され、前記ホストコンピュータから送信される、1ページ以上の印刷に必要な各種動作を指示するコマンドと印刷すべき各ページの画像に応じたデータとを含む印刷ジョブに応じて印刷を実行するインクジェットプリンタの制御方法であって、
前記ホストコンピュータから前記印刷ジョブを受信するステップと、
前記印刷ジョブの印刷結果に係るジョブ状態と、該印刷ジョブに対応する印刷に使用されたインクショット数であるジョブショット数の初期値を、印刷開始前に前記ジョブ情報記憶部に登録するステップと、
前記印刷ジョブにしたがって用紙上に印刷を実行するステップと、
前記印刷ジョブに対応する印刷に使用されたインクショット数をページ毎に算出するステップと、
前記印刷ジョブの実行により印刷したページの区切りと、前記印刷ジョブに含まれる全てのページの印刷終了後に、前記印刷ジョブに含まれる印刷ページ毎の印刷結果に係るページ状態と、該印刷ページ毎の印刷に使用されたインクショット数であるページショット数を前記ページ情報記憶部に登録するステップと、
前記ページ状態と前記ジョブ状態の論理和をとり、前記ページショット数を前記ジョブショット数に加算して、それぞれ更新するステップと、
を含むことを特徴とする。
上記制御方法によれば、1ジョブで複数のページを印刷する印刷ジョブを受信した際、インクショット数や印刷の成否に係る情報をページごとに記憶、管理することができる。したがって、インクジェットプリンタの使用者は、必要に応じてインクジェットプリンタ内部の記録を参照することにより、印刷に用いられるインクショット数や印刷の成否をページごとに把握することができる。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るインクジェットプリンタの制御プログラムは、上記インクジェットプリンタの制御方法の各手順を、前記インクジェットプリンタに搭載されたコンピュータに実行させることを特徴とする。
上記制御プログラムを前記インクジェットプリンタに搭載されたコンピュータに実行させることにより、1ジョブで複数のページを印刷する印刷ジョブを受信した際、インクショット数や印刷の成否に係る情報をページごとに記憶、管理することができる。したがって、インクジェットプリンタの使用者は、必要に応じてインクジェットプリンタ内部の記録を参照することにより、印刷に用いられるインクショット数や印刷の成否をページごとに把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタ、インクジェットプリンタの制御方法及び制御プログラムの実施形態を説明する。
【0014】
図1は、実施形態1のインクジェットプリンタの概略構成を説明するブロック図である。インクジェットプリンタ100は、シリアル、パラレル、USBといった各種インタフェースを介して、ホストコンピュータ300と通信可能に接続されており、ホストコンピュータ300から送信される各種コマンドに応じて動作する。印刷にあたっては、ホストコンピュータ300は、1ページ以上の印刷に必要な各種動作を指示するコマンドと印刷すべき各ページの画像に応じたデータとを含む印刷ジョブを送信する。
【0015】
また、各印刷ジョブには他の印刷ジョブと識別するためのジョブIDが付与されている。インクジェットプリンタ100は、印刷ジョブに応じて動作することにより印刷を実行し、各ページに例えばクーポンの画像を印刷して、そのクーポンを発券することができる。
【0016】
具体的に、インクジェットプリンタ100は、主として、ホストコンピュータ300から送信される各種コマンドや印刷データを受信する受信部110と、受信部110が受信した各種コマンドや印刷データを一時的に保持する受信バッファ120が設けられている。受信バッファ120によって受信されたデータは、コマンド解析部130に順次読み出されて解析され、制御コマンドの場合はメカ制御部160に送られ、印刷データの場合にはDMA転送等により転送され印刷バッファ140に一時保存される。
【0017】
印刷バッファ140に一時保存された印刷データは、印刷制御部150によってデータ展開処理が行われて印刷イメージデータが生成されて印刷バッファ140に記憶される。
【0018】
印刷制御部150は、この印刷バッファ140に記憶された印刷イメージデータを基に印刷ヘッドを駆動して、ロール紙上にクーポン等の画像を印刷する。
【0019】
一方、メカ制御部160によって読み出された各種コマンドについては、その指示する内容に応じて紙送りや用紙カットなどの各種処理が実行される。
【0020】
次に、インクショット数算出部170について説明する。
インクショット数算出部170は、印刷ジョブのなかに含まれる各ページの印刷が行われる毎に、印刷ヘッドから吐出されるインク滴のショット数(すなわち、インクショット数)をカウントする。インクショット数算出部170が算出したインクショット数は、後述するジョブ情報記憶部190およびページ情報記憶部210に記憶される。なお、カラー印刷の場合は、インクの色毎に分けてインクショット数をカウントしてもよい。
【0021】
印刷結果判断部175は、ある一つの印刷ジョブのなかに含まれる各ページに対応する印刷がそれぞれ成功したかまたは失敗したかについて判断する判断部である。印刷結果判断部175が判断した印刷結果は、後述するジョブ情報記憶部190およびページ情報記憶部210に記憶される。
【0022】
ここで、印刷が成功するとは、印刷ジョブを開始する印刷ジョブ開始コマンドを受信してから印刷ジョブ終了コマンドを受信するまでの間、または印刷ジョブのなかに含まれる複数のページの1ページ分の印刷が終了するまでの間のコマンドが全て正常に処理され、印刷ジョブまたは印刷ジョブのなかに含まれる各ページに対応した画像が全てロール紙上に形成され、正しくクーポン等が印刷される状態を指す。一方、印刷が失敗するとは、ロール紙(用紙)切れ、インク切れ、各種カバー開、その他致命的なエラー等により、印刷ジョブを開始する印刷ジョブ開始コマンドを受信してから印刷ジョブ終了コマンドを受信するまでの間、または印刷ジョブのなかに含まれる複数のページの1ページ分の印刷が終了するまでの間、コマンドが全く処理されないかまたは処理が途中で中断することにより、印刷が実行できないかまたは中断してしまう状態を指す。
【0023】
インクショット数算出部170と印刷結果判断部175との関係について説明すると、インクショット数算出部170は、ロール紙上に吐出されたインクショット数をカウントするものであるため、印刷ジョブまたは印刷ジョブのなかに含まれる複数のページの1ページ分に対応する印刷が最後まで完全に行われない場合でも、インクショット数をカウントする。したがって、インクショット数算出部170が算出したインクショット数をみただけでは、ある印刷ジョブに対応する印刷が正常に終了し、クーポン等の確実な印刷にインクの消費が寄与しているのかどうかがわからない。
したがって、本実施形態では、印刷結果判断部175により、インクショット数算出部170によって使用されたインクによって印刷結果が正常に得られていることを保証するよう構成されている。
【0024】
次に、ジョブ情報管理部180について説明する。ジョブ情報管理部180は、ホストコンピュータ300から送信される各印刷ジョブと、各印刷ジョブに対応して行われた印刷において使用されたインクショット数および印刷の成否に係る情報を印刷ジョブ情報としてジョブ情報記憶部190に記録及び管理する。ホストコンピュータ300から送信されるのは、1ジョブで1ページ以上の印刷を実行する印刷ジョブであるため、各ジョブに含まれるページ数も関連付けて記録及び管理する。ジョブ情報管理部180は、印刷ジョブ情報を登録するための登録部181と、それを更新するための更新部182とを有する。ジョブ情報記憶部190は、ジョブ情報管理部180が印刷ジョブ情報を記録してジョブ情報履歴を形成する記憶領域である。
【0025】
図2は、ジョブ情報記憶部190に記憶される印刷ジョブ情報を示す表である。ジョブ情報管理部180は、少なくとも各印刷ジョブに含まれる「ジョブID」と、印刷ジョブの「ジョブ名」(ジョブを送信したホストコンピュータを一意に表すMACアドレスなど)、その印刷ジョブに対応して使用されたインクショット数を表す「ジョブショット数」、印刷ジョブに対応する印刷の印刷結果を表す「ジョブ状態」、その印刷ジョブに含まれる「ページ数」、を関連づけて記録する。このように、印刷ジョブ毎に記録された情報はジョブ情報記憶部190の記憶領域の「ジョブアドレス」が付けられる。
【0026】
なお、「ジョブ名」は、図2の例では、ホストコンピュータのMACアドレスを用いているが、LANなどで端末(ホストコンピュータ)を識別するホストネームや、印刷する文書・画像の名前(ドキュメント名)や、印刷を行うユーザ名(ホストコンピュータにログインしたユーザ名)などを用いてもよい。
【0027】
また、印刷の成否に係る結果の情報を表す「ジョブ状態」は、各ジョブIDに関連づけて記録されるものであり、たとえば図2の場合では、成功した場合にはフラグとして「0」を、そして失敗した場合には「1」を付して示すことができる。図2からわかるように、ジョブ情報記憶部190を参照することにより、各印刷ジョブに対してどの程度のインクが消費されたのかを「ジョブショット数」を基準として把握するとともに、その印刷ジョブが正しく終了しクーポン等が正しく印刷されたか否かを確認することができる。
【0028】
次に、ページ情報管理部200及びページ情報記憶部210について説明する。ページ情報管理部200は、任意の印刷ジョブで行われる複数ページの印刷において使用されたインクショット数及び印刷結果をページごとに関連づけ、ページ情報として記録及び管理する。ページ情報記憶部210は、ページ情報管理部200がページ情報を記録してページ情報履歴を形成する記憶領域である。検索部220は、ホストコンピュータ300から送信された情報送信命令を受けて、指定されたジョブ情報及び該ジョブに含まれるページ情報を検索する。
【0029】
図3は、ページ情報記憶部210に記憶されるページ情報を模式的に示す表である。ページ情報管理部200は、各印刷ジョブの情報が記録されたジョブ情報記憶部190の格納領域を示す「ジョブアドレス」と、各印刷ジョブの各ページの印刷に対応して使用されたインクショット数を表す「ページショット数」、そのページに対応する印刷の印刷結果を表す「ページ状態」、該当する「ページ番号」、を関連づけてページ情報記憶部210に記録する。
【0030】
図3における各ページの印刷の成否に係る結果の情報を表す「ページ状態」は、図2の「ジョブ状態」と同じく、成功した場合にはフラグとして「0」を、そして失敗した場合には「1」を付して示すことができる。
【0031】
図3からわかるように、ページ情報記憶部210を参照することにより、各ページの印刷に対してどの程度のインクが消費されたのかを「ページショット数」を基準として把握するとともに、そのページの印刷が正しく終了したか否かを確認することができる。
【0032】
次に、本実施形態のインクジェットプリンタの制御方法について説明する。
図4は本実施形態のインクジェットプリンタにおける情報および処理の流れの概要をまとめた模式図、図5は本実施形態のインクジェットプリンタにおける印刷ジョブ情報およびページ情報の記録処理の流れを示すフローチャート、図6は本実施形態のインクジェットプリンタにおける情報送信命令に基づく情報送信処理の流れを示すフローチャートである。
【0033】
はじめに、図4及び図5を参照して、印刷ジョブ情報およびページ情報の記録処理について説明する。
ホストコンピュータ300は、インクジェットプリンタ100に印刷データを送信するとき、必要に応じて複数のページを1ジョブにまとめて送信する。ジョブには、ジョブを識別するジョブID、ホストコンピュータやユーザや印刷文書・画像等を識別可能なジョブ名、複数ページ分の印刷データが付加されている。インクジェットプリンタ100は、ホストコンピュータ300から送信される印刷ジョブを受信部110が受信するまで待機する(ステップS11)。
【0034】
インクジェットプリンタ100は、1ジョブの印刷データを受信すると、印刷、ジョブ情報管理、ページ情報管理の処理を行う。ジョブ情報管理部180は、印刷開始前にジョブ情報をジョブ情報記憶部190に登録する(ステップS12)。
ジョブ情報は、ジョブアドレス、ジョブID、ジョブ名、ジョブショット数(インクの総ショット数)、ジョブ状態(ジョブの印刷結果)、ジョブに含まれる総ページ数の情報で1履歴とし、ジョブ情報記憶部190に複数のジョブ情報履歴が保持される。ジョブショット数とジョブ状態は、登録時に初期値「0」が登録される。
【0035】
印刷開始の際、印刷制御部150は、受信した印刷ジョブを基に最初のクーポン1ページ分の印刷イメージデータを印刷バッファ140に生成する(ステップS13)。
その後、印刷制御部150は、この生成された印刷イメージデータに応じて、印刷ヘッドを駆動しロール紙上への印刷処理(画像形成)を当該ページについて実行し、インクショット数算出部170は、当該ページの印刷に伴って使用されるインクショット数を算出する(ステップS14)。
また、印刷結果判定部175は、この印刷ジョブを参照しつつ印刷処理を監視し、印刷ジョブがこのページについて正しく処理されたか否かを判断する(ステップS15)。
【0036】
ページ情報管理部200は、ページ情報をページの区切りで登録する。
ページ情報は、当該ページが含まれるジョブアドレス、ページショット数(当該ページのインクショット数)、ページ状態(当該ページの印刷結果)、ページ番号の情報で1履歴とし、ページ情報記憶部210に複数のページ情報履歴が保持される。
【0037】
ステップS15において、印刷ジョブが正しく処理されたと判断された場合、ページ情報管理部200は、受信した印刷ジョブに対応する該当ページに、「ページ状態」に印刷成功を示すフラグ「0」を付し、算出されたインクショット数とともにページ情報としてページ情報記憶部210に記憶する(ステップS16)。
【0038】
一方、ステップS15において、印刷ジョブが正しく処理されなかったと判断された場合には、ページ情報管理部200は、受信した印刷ジョブのジョブアドレスに対応する該当ページに、「ページ状態」に印刷失敗を示すフラグ「1」を付し、算出されたインクショット数(ページショット数)とともにページ情報としてページ情報記憶部210に記憶する(ステップS17)。
【0039】
次に、1ページ分のページ情報が記憶されると、ジョブ情報管理部180の更新部182は、ジョブ情報記憶部190に記憶されるジョブ情報のページ数の数値(図2参照)を、クーポンが1ページ分印刷されるごとに1ずつインクリメントする。また、算出された当該ページのページショット数をジョブショット数に加算して、ジョブショット数を更新する。また、「ページ状態」と「ジョブ状態」の論理和をとり、この結果を新たな「ジョブ状態」として更新する(ステップS18)。
【0040】
次に、ジョブ情報管理部180は、同一ジョブ内で次のページに係る印刷データの有無を判断し(ステップS19)、次の印刷データがある場合、ステップS13へ戻り、上記手順を繰り返す。ページ情報の記憶は、ジョブ内のページの区切りがなくなるまで、即ち、ジョブに含まれるすべてのページが印刷されるまで実行される。
【0041】
すべてのページが印刷された場合(ステップS19:NO)、1つの印刷ジョブに対する印刷ジョブ情報およびページ情報の記録処理を終了する。なお、ステップS18の更新処理の際に、「ページ状態」と「ジョブ状態」の論理和をとって、「ジョブ状態」を更新しているので、1ページでも「ページ状態」に印刷失敗を示すフラグ「1」がたっていれば、「ジョブ状態」は「1」となる。すなわち、全てのページの印刷が成功した場合のみ「ジョブ状態」は「0」となる。
【0042】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタ100では、複数ページの印刷を行う印刷ジョブにおいて、1ページの印刷が行われる毎に、使用したインク量(ページショット数)と対応する印刷結果(ページ状態)とが記録され、全てページの印刷が終了した時点で印刷ジョブで使用したインク量(ジョブショット数)とジョブの印刷結果(ジョブ状態)とが記録される。
【0043】
そして、ページ毎に「ページ状態」が記録されることにより、どのページまでの印刷が成功したか把握することができるので、失敗したページ(クーポン)を再印刷する場合は、ホストコンピュータ300は前回の印刷ジョブにおいて失敗したページ(クーポン)のみを印刷する印刷ジョブを新たに作成してインクジェットプリンタ100に送信することができる。例えば、図2及び図3において、ジョブID1051の印刷ジョブ実行中に、3ページ目が失敗し、ホストコンピュータ300は、ジョブID1051で失敗した3ページ目のみを印刷するジョブID1052の印刷ジョブを新たに作成し実行できる。これによって、既に印刷されたクーポンを再度印刷してしまうという無駄を省くことができる。
【0044】
次に、情報送信命令に基づく情報送信処理について図4及び図6を参照して説明する。
ホストコンピュータは特定ジョブの特定ページのページ情報を取得する場合、「ジョブID」と「ジョブ名」と「ページ番号」を付加したコマンドをインクジェットプリンタ100へ送信する。インクジェットプリンタ100は、ホストコンピュータ300から送信される情報送信命令を受信部110が受信するまで待機する(ステップS201)。
【0045】
情報送信命令を受信すると、インクジェットプリンタ100の検索部220は、「ジョブID」と「ジョブ名」に基づいてジョブ情報を検索し、該当するジョブ情報が有るか否かを判定する(ステップS202)。該当するジョブ情報が履歴に存在する場合(S202:YES)、検索部220は、次に、当該ジョブ情報が格納されるジョブアドレスをもとにページ情報を検索する(ステップS203)。
【0046】
ジョブ情報管理部180は、指定されたジョブアドレスにおける各ページの「ページショット数」、「ページ状態」及び当該ジョブの「ジョブショット数」、「ジョブ状態」に係る文字列を作成し、送信部230を介してホストコンピュータ100へ送信する(ステップS204)。一方、該当するジョブ情報が履歴に存在しない場合(S202:NO)は、「履歴に存在しない」旨をポストコンピュータに送信して通知する(S205)。
【0047】
なお、インクジェットプリンタ100は、送信したジョブ情報およびページ情報に対応するデータを、ジョブ情報記憶部190およびページ情報記憶部210から削除してもよいし、そのまま保存しておきジョブ情報記憶部190、ページ情報記憶部210の記憶容量の限界に近づいたら古いものから順に上書きするようにしてもよい。
【0048】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタ100では、情報送信命令の受信に応じて、指定するジョブおよびページに対応したインクショット数及び印刷結果がインクジェットプリンタからホストコンピュータへ送信される。なお、情報送信命令を送信したとき、検索部がジョブ情報を検索した際にインクジェットプリンタ100が印刷処理を実行中であった場合、「印刷中」である旨をホストコンピュータ300に通知することもできる。
【0049】
以上、詳述した本実施形態のインクジェットプリンタ100及びその制御方法によれば、1ジョブで複数のページを印刷する印刷ジョブを受信した際、インクショット数や印刷の成否に係る情報をページごとに記憶、管理することができる。したがって、インクジェットプリンタ100の使用者は、必要に応じてインクジェットプリンタ100内部の記録を参照することにより、印刷に用いられるインクショット数や印刷の成否をページごとに把握することができる。
【0050】
これにより、ホストコンピュータ300から送信された情報送信命令を受けて、検索部220によって情報送信命令で指定されたジョブ情報及び該ジョブに含まれるページ情報を検索し、ジョブ情報及びページ情報をホストコンピュータに送信することができるので、例えば1ページに1枚のクーポン券の印刷をする場合、各クーポン券がどの程度のインクを使用するのかを把握し、各クーポン券の発券コストをそれぞれ個別に正確に把握することができる。
【0051】
本実施形態のインクジェットプリンタ100は、例えば、図7に示すスーパーマーケットチェーンのシステム例のように、各店舗におけるホストコンピュータに複数のプリンタ100が接続され、本部のサーバにネットワーク等を介して接続されているシステムなどで利用可能である。図7に示すようなシステムにおいて、本部のサーバは各店舗から収集したデータを集計することにより、クーポンの種類毎の発券枚数や印刷経費を把握し管理することができるので、クーポンの印刷量等に応じて課金を行うことができる。
【0052】
なお、上記実施形態では、インクジェットプリンタ100が1つのホストコンピュータ300と通信可能に接続された状況において説明を行ったが、インクジェットプリンタ100は、LAN等のネットワークを介して、複数のホストコンピュータと接続されている状況でも利用可能である。
【0053】
また、図8に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ100では、1枚のクーポンであってもその中に解像度が異なる領域を作成したい場合などに、それらの1領域を1ページとして割り当て、1ジョブ複数ページの印刷データとして作成するようにしてもよい。これにより、1枚のクーポンのうちの各領域のインクショット数を個別に把握することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタのジョブ情報記憶部に記憶される印刷ジョブ情報を模式的に示す表である。
【図3】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタのページ情報記憶部に記憶されるページ情報を模式的に示す表である。
【図4】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタにおける情報および処理の流れの概要をまとめた模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタにおける印刷ジョブ情報およびページ情報の記録処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタにおける情報送信命令に基づく情報送信処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタを利用したシステム構成例を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタにおいて、1枚のクーポンに画像解像度が異なる領域を作成する場合のページ構成例を示す模式図である。
【図9】(a)1つのジョブで1クーポン(ページ)の印刷データを連続で印刷する場合、(b)複数枚のクーポン(ページ)のデータを1ジョブとして印刷する場合の違いを説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0055】
100…インクジェットプリンタ、110…受信部、120…受信バッファ、130…コマンド解析部、140…印刷バッファ、150…印刷制御部、160…メカ制御部、170…インクショット数算出部、175…印刷結果判断部、180…ジョブ情報管理部、181…登録部、182…更新部、190…ジョブ情報記憶部、200…ページ情報管理部、210…ページ情報記憶部、220…検索部、230…送信部、300…ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピュータと通信可能に接続され、前記ホストコンピュータから送信される、1ページ以上の印刷に必要な各種動作を指示するコマンドと印刷すべき各ページの画像に応じたデータとを含む印刷ジョブに応じて印刷を実行するインクジェットプリンタであって、
前記印刷ジョブの印刷結果に係るジョブ状態と、該印刷ジョブに対応する印刷に使用されたインクショット数であるジョブショット数と、をジョブ情報記憶部に記憶させて管理するジョブ情報管理部と、
前記印刷ジョブに含まれる印刷ページ毎の印刷結果に係るページ状態と、該印刷ページ毎の印刷に使用されたインクショット数であるページショット数と、をページ毎にページ情報記憶部に記憶させて管理するページ情報管理部と、
を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記ページ情報管理部は、
前記印刷ジョブの実行により印刷したページの区切りと、前記印刷ジョブに含まれる全てのページの印刷終了後に、前記ページ状態と前記ページショット数とを前記ページ情報記憶部に登録することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記ジョブ情報管理部は、
前記ジョブ状態と前記ジョブショット数の初期値を印刷開始前に前記ジョブ情報記憶部に登録する登録部と、
前記ページ状態と前記ジョブ状態の論理和をとり、前記ページショット数を前記ジョブショット数に加算して、それぞれ更新する更新部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記ジョブ情報記憶部は、所定のジョブアドレスに、前記印刷ジョブを識別するジョブIDと、該印刷ジョブのジョブ名と、前記ジョブ状態と、前記ジョブショット数と、該印刷ジョブに含まれるページ数と、が関連づけて記憶され、
前記ページ情報記憶部は、該ページが含まれるジョブ情報が格納されるジョブアドレスと、前記ページショット数と、前記ページ状態と、該ページのページ番号と、が関連づけてそれぞれ記憶されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記ジョブIDと前記ジョブ名とに基づいて前記ジョブ情報記憶部を検索し、該当する印刷ジョブが存在する場合、該印刷ジョブのジョブアドレスを基に、該印刷ジョブに含まれるページ情報を検索する検索部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
ホストコンピュータと通信可能に接続され、前記ホストコンピュータから送信される、1ページ以上の印刷に必要な各種動作を指示するコマンドと印刷すべき各ページの画像に応じたデータとを含む印刷ジョブに応じて印刷を実行するインクジェットプリンタの制御方法であって、
前記ホストコンピュータから前記印刷ジョブを受信するステップと、
前記印刷ジョブの印刷結果に係るジョブ状態と、該印刷ジョブに対応する印刷に使用されたインクショット数であるジョブショット数の初期値を、印刷開始前に前記ジョブ情報記憶部に登録するステップと、
前記印刷ジョブにしたがって用紙上に印刷を実行するステップと、
前記印刷ジョブに対応する印刷に使用されたインクショット数をページ毎に算出するステップと、
前記印刷ジョブの実行により印刷したページの区切りと、前記印刷ジョブに含まれる全てのページの印刷終了後に、前記印刷ジョブに含まれる印刷ページ毎の印刷結果に係るページ状態と、該印刷ページ毎の印刷に使用されたインクショット数であるページショット数を前記ページ情報記憶部に登録するステップと、
前記ページ状態と前記ジョブ状態の論理和をとり、前記ページショット数を前記ジョブショット数に加算して、それぞれ更新するステップと、
を含むことを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載されたインクジェットプリンタの制御方法の各手順を、前記インクジェットプリンタに搭載されたコンピュータに実行させることを特徴とするインクジェットプリンタの制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−105287(P2010−105287A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280145(P2008−280145)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】