インクジェットプリンタのヘッド駆動装置及びインクジェットプリンタ
【課題】トランジスタの冷却用放熱板などを必要とせず、合わせて駆動信号の歪みを抑制防止可能なインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動波形信号発生回路70から出力されたアクチュエータ駆動制御のためのアナログ駆動波形信号WCOMを変調回路24で変調して変調信号とし、この変調信号をデジタル電力増幅器25で電力増幅し、この電力増幅された電力増幅変調信号を平滑フィルタ26で平滑化してアクチュエータへの駆動信号COMとする。デジタル電力増幅器25内のMOSFETはスイッチング素子として使用されるので電力損失が少なく、冷却用放熱板が不要となる。また、平滑フィルタ26及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタ特性を所定の周波数特性とする逆フィルタ23を設けることにより、アクチュエータに印加される駆動信号COMの歪みを抑制防止する。
【解決手段】駆動波形信号発生回路70から出力されたアクチュエータ駆動制御のためのアナログ駆動波形信号WCOMを変調回路24で変調して変調信号とし、この変調信号をデジタル電力増幅器25で電力増幅し、この電力増幅された電力増幅変調信号を平滑フィルタ26で平滑化してアクチュエータへの駆動信号COMとする。デジタル電力増幅器25内のMOSFETはスイッチング素子として使用されるので電力損失が少なく、冷却用放熱板が不要となる。また、平滑フィルタ26及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタ特性を所定の周波数特性とする逆フィルタ23を設けることにより、アクチュエータに印加される駆動信号COMの歪みを抑制防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数色の液体インクの微小なインク滴を複数のノズルから吐出してその微粒子(インクドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像を描画するようにしたインクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなインクジェットプリンタは、一般に安価で且つ高品質のカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このようなインクジェットプリンタは、一般に、インクカートリッジと印字ヘッドとが一体的に備えられたキャリッジなどと称される移動体が印刷媒体上をその搬送方向と交差する方向に往復しながらその印字ヘッドのノズルから液体インク滴を吐出(噴射)して印刷媒体上に微小なインクドットを形成することで、当該印刷媒体上に所定の文字や画像を描画して所望の印刷物を作成するようになっている。そして、このキャリッジに黒色(ブラック)を含めた4色(イエロー、マゼンタ、シアン)のインクカートリッジと各色毎の印字ヘッドを備えることで、モノクロ印刷のみならず、各色を組み合わせたフルカラー印刷も容易に行えるようになっている(更に、これらの各色に、ライトシアンやライトマゼンタなどを加えた6色や7色、或いは8色のものも実用化されている)。
【0003】
また、このようにキャリッジ上のインクジェットヘッドを印刷媒体の搬送方向と交差する方向に往復させながら印刷を実行するようにしたタイプのインクジェットプリンタでは、1頁全体をきれいに印刷するためにインクジェットヘッドを10回程度から数十回以上も往復運動させる必要があるため、他の方式の印刷装置、例えば電子写真技術を用いたレーザプリンタ、複写機などに比べて印刷時間がかかるといった欠点がある。
これに対し、印刷媒体の幅と同じ寸法の長尺のインクジェットヘッド(一体である必要はない)を配置してキャリッジを使用しないタイプのインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドを印刷媒体の幅方向に移動させる必要がなく、1パスでの印刷が可能となるため、レーザプリンタと同様な高速な印刷が可能となる。なお、前者方式のインクジェットプリンタを一般に「マルチパス(シリアル)型インクジェットプリンタ」、後者方式のインクジェットプリンタを一般に「ラインヘッド型インクジェットプリンタ」と呼んでいる。
【0004】
ところで、この種のインクジェットプリンタでは、より一層高い階調が要求されている。階調とは、インクドットで表される画素に含まれる各色の濃度の状態であり、各画素の色の濃度に応じたインクドットの大きさを階調度といい、インクドットで表現できる階調度の数を階調数と呼ぶ。高い階調とは、階調数が大きいことを意味する。階調度を変えるには、インクジェットヘッドに設けられたアクチュエータへの駆動パルスを変える必要がある。例えば、アクチュエータが圧電素子である場合には、圧電素子に印加される電圧値が大きくなると圧電素子(正確には振動板)の変位量(歪み)が大きくなるので、これを用いてインクドットの階調度を変えることができる。
【0005】
そこで、以下に挙げる特許文献1では、電圧波高値が異なる複数の駆動パルスを組み合わせて連結して駆動信号を生成し、これをインクジェットヘッドに設けられた同じ色のノズルの圧電素子に共通して出力しておき、この駆動信号から、形成すべきインクドットの階調度に応じた駆動パルスをノズル毎に選択し、その選択された駆動パルスを該当するノズルの圧電素子に供給してインク滴を吐出するようにすることで、要求されるインクドットの階調度を達成するようにしている。
【0006】
駆動信号(或いは駆動パルス)の生成方法は、下記特許文献2の図2に記載されている。即ち、駆動信号のデータが記憶されているメモリからデータを読出し、それをD/A変換器でアナログデータに変換し、電流増幅器を通してインクジェットヘッドに駆動信号を供給する。電流増幅器の回路構成は、同図3に示すように、プッシュプル接続されたトランジスタで構成され、リニア駆動によって駆動信号を増幅している。しかしながら、このような構成の電流増幅器では、トランジスタのリニア駆動そのものが低効率であり、トランジスタ自体の発熱対策として大型トランジスタを使用する必要がある上、トランジスタの冷却用放熱板が必要となるなど、回路規模が大きくなるという欠点があり、特に冷却用放熱板の大きさは、レイアウト上、大きな障害となる。
この欠点を克服するため、下記特許文献3に記載されるインクジェットプリンタでは、DC/DCコンバータのリファレンス電圧を制御して駆動信号を生成している。この場合、効率のよいDC/DCコンバータを使用しているので、冷却のための放熱手段が必要なく、またPWM信号を用いているので、D/A変換器も簡単なローパスフィルタで構成でき、これらにより回路規模を小型化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−81013号公報
【特許文献2】特開2004−306434号公報
【特許文献3】特開2005−35062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、DC/DCコンバータは、本来、定電圧を発生するために設計されたものであるから、このDC/DCコンバータを用いた前記特許文献3のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置では、インクジェットヘッドから良好にインク滴を吐出するのに必要な駆動信号の波形、例えば早い立ち上がりや立ち下がりを得ることができないという問題がある。勿論、プッシュプル接続されたトランジスタでアクチュエータ駆動信号の電流を増幅する前記特許文献2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置では、冷却用放熱板が大きすぎて、特にノズル数、つまりアクチュエータ数が多いラインヘッド型インクジェットプリンタでは実質的にレイアウトできないという問題がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、アクチュエータへの駆動信号の早い立ち上がり、立ち下がりを可能としながら冷却用放熱板などの冷却手段を必要とせず、合わせて駆動信号の歪みを抑制防止可能なインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[発明1]上記課題を解決するために、発明1のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、インクジェットヘッドに設けられた液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルに対応して設けられたアクチュエータと、前記アクチュエータに駆動信号を印加する駆動手段とを有し、前記駆動手段は、前記アクチュエータの駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号を生成する駆動波形信号発生手段と、前記駆動波形信号発生手段で生成された駆動波形信号をパルス変調する変調手段と、前記変調手段でパルス変調された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅器と、前記デジタル電力増幅器で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して前記アクチュエータに駆動信号として供給する平滑フィルタと、前記駆動波形信号発生手段の後段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所定の周波数特性にする逆フィルタとを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
この発明1に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、駆動波形信号発生手段でアクチュエータの駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号を生成し、この生成された駆動波形信号を変調手段でパルス変調し、このパルス変調された変調信号をデジタル電力増幅器で電力増幅し、この電力増幅された電力増幅変調信号を平滑フィルタで平滑化してアクチュエータに駆動信号として供給する構成としたため、平滑フィルタのフィルタ特性を電力増幅変調信号成分のみ十分に平滑化できるものとすることでアクチュエータへの駆動信号の早い立ち上がり、立ち下がりを可能としながら、電力増幅効率に優れたデジタル電力増幅器によって駆動信号を効率よく電力増幅できるので、冷却用放熱板などの冷却手段が不要となる。
また、少なくとも平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所定の周波数特性にする逆フィルタを駆動波形信号発生手段の後段に設けたことにより、駆動波形信号成分の中で、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタで変化する成分を強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータに印加される駆動信号の歪みを抑制防止することが可能となる。
【0011】
[発明2]発明2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記発明1のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記アクチュエータの数に応じて前記逆フィルタの周波数特性を設定することを特徴とするものである。
この発明2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、アクチュエータの数に応じて逆フィルタの周波数特性を設定する構成としたため、接続されるアクチュエータの数に応じて異なる変化成分を正確に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータに印加される駆動信号の歪みをより一層抑制防止することが可能となる。
【0012】
[発明3]発明3のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記発明2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記アクチュエータの数が所定値より多い場合には高域強調型のフィルタを用い、前記アクチュエータの数が所定値より少ない場合には低域通過型又は高域減衰型のフィルタを用いることを特徴とするものである。
この発明3のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、アクチュエータの数が所定値より多い場合には高域強調型のフィルタを用い、アクチュエータの数が所定値より少ない場合には低域通過型又は高域減衰型のフィルタを用いる構成としたため、駆動波形信号成分の中で、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタで変化する成分をより一層適切に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータに印加される駆動信号の歪みを適切に抑制防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を適用したラインヘッド型インクジェットプリンタの第1実施形態を示す概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタの制御装置のブロック構成図である。
【図3】図2の駆動波形信号発生回路のブロック構成図である。
【図4】図3の波形メモリの説明図である。
【図5】駆動波形信号生成の説明図である。
【図6】時系列的に連結された駆動波形信号又は駆動信号の説明図である。
【図7】駆動信号出力回路のブロック構成図である。
【図8】駆動信号をアクチュエータに接続する選択部のブロック図である。
【図9】図7の駆動信号出力回路の変調回路、デジタル電力増幅器、平滑フィルタの詳細を示すブロック図である。
【図10】図9の変調回路の作用の説明図である。
【図11】図9のデジタル電力増幅器の作用の説明図である。
【図12】接続されるアクチュエータによって構成されるローパスフィルタの説明図である。
【図13】図7の逆フィルタのブロック図である。
【図14】印字データからインク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数を求め、そのアクチュエータ数に応じて逆フィルタの時定数を設定する概念図である。
【図15】本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の他の実施形態を示すものであり、駆動波形信号発生手段及び変調手段のブロック図である。
【図16】接続されるアクチュエータ数の変化に伴って出力回路のゲインが減少する場合の説明図である。
【図17】図16の場合の逆フィルタの周波数特性の説明図である。
【図18】図17の逆フィルタから出力される駆動パルスの説明図である。
【図19】接続されるアクチュエータ数の変化に伴って出力回路のゲインが増加する場合の説明図である。
【図20】図19の場合の逆フィルタの周波数特性の説明図である。
【図21】図20の逆フィルタから出力される駆動パルスの説明図である。
【図22】本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の第2実施形態を示す逆フィルタのブロック図である。
【図23】図22の逆フィルタ中の1次ハイパスフィルタによるゲイン調整の説明図である。
【図24】図22の逆フィルタ中の1次ローパスフィルタによるゲイン調整の説明図である。
【図25】本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の他の実施形態を示す逆フィルタのブロック図である。
【図26】図25の逆フィルタ中の2次ローパスフィルタによるゲイン調整の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明のインクジェットプリンタの第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの概略構成図であり、図1aは、その平面図、図1bは正面図である。図1において、印刷媒体1は、図の右から左に向けて図の矢印方向に搬送され、その搬送途中の印字領域で印字される、ラインヘッド型インクジェットプリンタである。但し、本実施形態のインクジェットヘッドは一カ所だけでなく、二カ所に分けて配設されている。
図中の符号2は、印刷媒体1の搬送方向上流側に設けられた第1インクジェットヘッド、符号3は、同じく下流側に設けられた第2インクジェットヘッドであり、第1インクジェットヘッド2の下方には印刷媒体1を搬送するための第1搬送部4が設けられ、第2インクジェットヘッド3の下方には第2搬送部5が設けられている。第1搬送部4は、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向(以下、ノズル列方向とも称す)に所定の間隔をあけて配設された4本の第1搬送ベルト6で構成され、第2搬送部5は、同じく印刷媒体1の搬送方向と交差する方向(ノズル列方向)に所定の間隔をあけて配設された4本の第2搬送ベルト7で構成される。
【0015】
4本の第1搬送ベルト6と同じく4本の第2搬送ベルト7とは、互いに交互に隣り合うように配設されている。本実施形態では、これらの搬送ベルト6,7のうち、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7と、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7とを区分する。即ち、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7の重合部に右側駆動ローラ8Rが配設され、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7の重合部に左側駆動ローラ8Lが配設され、それより上流側に右側第1従動ローラ9R及び左側第1従動ローラ9Lが配設され、下流側に右側第2従動ローラ10R及び左側第2従動ローラ10Lが配設されている。これらのローラは、一連のように見られるが、実質的には図1aの中央部分で分断されている。そして、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6は右側駆動ローラ8R及び右側第1従動ローラ9Rに巻回され、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6は左側駆動ローラ8L及び左側第1従動ローラ9Lに巻回され、ノズル列方向右側2本の第2搬送ベルト7は右側駆動ローラ8R及び右側第2従動ローラ10Rに巻回され、ノズル列方向左側2本の第2搬送ベルト7は左側駆動ローラ8L及び左側第2従動ローラ10Lに巻回されており、右側駆動ローラ8Rには右側電動モータ11Rが接続され、左側駆動ローラ8Lには左側電動モータ11Lが接続されている。従って、右側電動モータ11Rによって右側駆動ローラ8Rを回転駆動すると、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6で構成される第1搬送部4及び同じくノズル列方向右側2本の第2搬送ベルト7で構成される第2搬送部5は、互いに同期し且つ同じ速度で移動し、左側電動モータ11Lによって左側駆動ローラ8Lを回転駆動すると、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6で構成される第1搬送部4及び同じくノズル列方向左側2本の第2搬送ベルト7で構成される第2搬送部5は、互いに同期し且つ同じ速度で移動する。但し、右側電動モータ11Rと左側電動モータ11Lの回転速度を異なるものとすると、ノズル列方向左右の搬送速度を変えることができ、具体的には右側電動モータ11Rの回転速度を左側電動モータ11Lの回転速度よりも大きくすると、ノズル列方向右側の搬送速度を左側よりも大きくすることができ、左側電動モータ11Lの回転速度を右側電動モータ11Rの回転速度よりも大きくすると、ノズル列方向左側の搬送速度を右側よりも大きくすることができる。
【0016】
第1インクジェットヘッド2及び第2インクジェットヘッド3は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の各色毎に、印刷媒体1の搬送方向にずらして配設されている。各インクジェットヘッド2,3には、図示しない各色のインクタンクからインク供給チューブを介してインクが供給される。各インクジェットヘッド2,3には、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向に、複数のノズルが形成されており(即ちノズル列方向)、それらのノズルから同時に必要箇所に必要量のインク滴を吐出することにより、印刷媒体1上に微小なインクドットを形成出力する。これを各色毎に行うことにより、第1搬送部4及び第2搬送部5で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、1パスによる印刷を行うことができる。即ち、これらのインクジェットヘッド2,3の配設領域が印字領域に相当する。
【0017】
インクジェットヘッドの各ノズルからインクを吐出出力する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰インクジェット方式などがある。静電方式は、アクチュエータである静電ギャップに駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。ピエゾ方式は、アクチュエータであるピエゾ素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。膜沸騰インクジェット方式は、キャビティ内に微小ヒータがあり、瞬間的に300℃以上に加熱されてインクが膜沸騰状態となって気泡が生成し、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。本発明は、何れのインク滴の吐出方法も適用可能であるが、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することでインク滴の吐出量を調整可能なピエゾ素子に特に好適である。
【0018】
第1インクジェットヘッド2のインク滴吐出用ノズルは第1搬送部4の4本の第1搬送ベルト6の間にだけ形成されており、第2インクジェットヘッド3のインク滴吐出用ノズルは第2搬送部5の4本の第2搬送ベルト7の間にだけ形成されている。これは、後述するクリーニング部によって各インクジェットヘッド2,3をクリーニングするためであるが、このようにすると、どちらか一方のインクジェットヘッドだけでは、ワンパスによる全面印刷を行うことができない。そのため、互いに印字できない部分を補うために第1インクジェットヘッド2と第2インクジェットヘッド3とを印刷媒体1の搬送方向にずらして配設しているのである。
【0019】
第1インクジェットヘッド2の下方に配設されているのが当該第1インクジェットヘッド2をクリーニングする第1クリーニングキャップ12、第2インクジェットヘッド3の下方に配設されているのが当該第2インクジェットヘッド3をクリーニングする第2クリーニングキャップ13である。各クリーニングキャップ12,13は、何れも第1搬送部4の4本の第1搬送ベルト6の間、及び第2搬送部5の4本の第2搬送ベルト7の間を通過できる大きさに形成してある。これらのクリーニングキャップ12,13は、インクジェットヘッド2,3の下面、即ちノズル面に形成されているノズルを覆い且つ当該ノズル面に密着可能な方形有底のキャップ体と、その底部に配設されたインク吸収体と、キャップ体の底部に接続されたチューブポンプと、キャップ体を昇降する昇降装置とで構成されている。そこで、昇降装置によってキャップ体を上昇してインクジェットヘッド2,3のノズル面に密着する。その状態で、チューブポンプによってキャップ体内を負圧にすると、インクジェットヘッド2,3のノズル面に開設されているノズルからインク滴や気泡が吸い出され、インクジェットヘッド2,3をクリーニングすることができる。クリーニングが終了したら、クリーニングキャップ12,13を下降する。
【0020】
第1従動ローラ9R,9Lの上流側には、給紙部15から供給される印刷媒体1の給紙タイミングを調整すると共に当該印刷媒体1のスキューを補正する、二個一対のゲートローラ14が設けられている。スキューとは、搬送方向に対する印刷媒体1の捻れである。また、給紙部15の上方には、印刷媒体1を供給するためのピックアップローラ16が設けられている。なお、図中の符号17は、ゲートローラ14を駆動するゲートローラモータである。
【0021】
駆動ローラ8R,8Lの下方にはベルト帯電装置19が配設されている。このベルト帯電装置19は、駆動ローラ8R,8Lを挟んで第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7に当接する帯電ローラ20と、帯電ローラ20を第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7に押し付けるスプリング21と、帯電ローラ20に電荷を付与する電源18とで構成されており、帯電ローラ20から第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7に電荷を付与してそれらを帯電する。一般に、これらのベルト類は、中・高抵抗体又は絶縁体で構成されているので、ベルト帯電装置19によって帯電すると、その表面に印加された電荷が、同じく高抵抗体又は絶縁体で構成される印刷媒体1に誘電分極を生じせしめ、その誘電分極によって発生する電荷とベルト表面の電荷との間に生じる静電気力でベルトに印刷媒体1を吸着することができる。なお、ベルト帯電装置19としては、電荷を降らせるコロトロンなどでもよい。
【0022】
従って、このインクジェットプリンタによれば、ベルト帯電装置19で第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7の表面を帯電し、その状態でゲートローラ14から印刷媒体1を給紙し、図示しない拍車やローラで構成される紙押えローラで印刷媒体1を第1搬送ベルト6に押し付けると、前述した誘電分極の作用によって印刷媒体1は第1搬送ベルト6の表面に吸着される。この状態で、電動モータ11R,11Lによって駆動ローラ8R,8Lを回転駆動すると、その回転駆動力が第1搬送ベルト6を介して第1従動ローラ9R,9Lに伝達される。
このようにして印刷媒体1を吸着した状態で第1搬送ベルト6を搬送方向下流側に移動し、印刷媒体1を第1インクジェットヘッド2の下方に移動し、当該第1インクジェットヘッド2に形成されているノズルからインク滴を吐出して印字を行う。この第1インクジェットヘッド2による印字が終了したら、印刷媒体1を搬送方向下流側に移動して第2搬送部5の第2搬送ベルト7に乗り移らせる。前述したように、第2搬送ベルト7もベルト帯電装置19によって表面が帯電しているので、前述した誘電分極の作用によって印刷媒体1は第2搬送ベルト7の表面に吸着される。
【0023】
この状態で、第2搬送ベルト7を搬送方向下流側に移動し、印刷媒体1を第2インクジェットヘッド3の下方に移動し、当該第2インクジェットヘッドに形成されているノズルからインク滴を吐出して印字を行う。この第2インクジェットヘッドによる印字が終了したら、印刷媒体1を更に搬送方向下流側に移動し、図示しない分離装置で印刷媒体1を第2搬送ベルト7の表面から分離しながら排紙部に排紙する。
また、第1及び第2インクジェットヘッド2,3のクリーニングが必要なときには、前述したように第1及び第2クリーニングキャップ12,13を上昇して第1及び第2インクジェットヘッド2,3のノズル面にキャップ体を密着し、その状態でキャップ体内を負圧にすることで第1及び第2インクジェットヘッド2,3のノズルからインク滴や気泡を吸い出してクリーニングし、然る後、第1及び第2クリーニングキャップ12,13を下降する。
【0024】
前記インクジェットプリンタ内には、自身を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、図2に示すように、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行うものである。そして、ホストコンピュータ60から入力された印刷データを受取る入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理を実行するマイクロコンピュータで構成される制御部62と、ゲートローラモータ17を駆動制御するゲートローラモータドライバ63と、ピックアップローラ16を駆動するためのピックアップローラモータ51を駆動制御するピックアップローラモータドライバ64と、インクジェットヘッド2、3を駆動制御するヘッドドライバ65と、右側電動モータ11Rを駆動制御する右側電動モータドライバ66Rと、左側電動モータ11Lを駆動制御する左側電動モータドライバ66Lと、各ドライバ63〜65、66R、66Lの出力信号を外部のゲートローラモータ17、ピックアップローラモータ51、インクジェットヘッド2、3、右側電動モータ11R、左側電動モータ11Lで使用する駆動信号に変換して出力するインタフェース67とを備えて構成される。
【0025】
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のアプリケーションプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れのノズルからインク滴を吐出するか或いはどの程度のインク滴を吐出するかという印字データ(駆動パルス選択データSI&SP)を出力し、この印字データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63〜65、66R、66Lに制御信号を出力する。各ドライバ63〜65、66R、66Lから制御信号が出力されると、これらがインタフェース67で駆動信号に変換されてインクジェットヘッドの複数のノズルに対応するアクチュエータ、ゲートローラモータ17、ピックアップローラモータ51、右側電動モータ11R、左側電動モータ11Lが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送、印刷媒体1の姿勢制御、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0026】
また、制御部62は、後述する駆動信号を形成するための波形形成用データDATAを後述する波形メモリ701に書込むために、書込みイネーブル信号DENと、書込みクロック信号WCLKと、書込みアドレスデータA0〜A3とを出力して、16ビットの波形形成用データDATAを波形メモリ701に書込むと共に、この波形メモリ701に記憶された波形形成用データDATAを読出すための読出しアドレスデータA0〜A3、波形メモリ701から読出した波形形成用データDATAをラッチするタイミングを設定する第1のクロック信号ACLK、ラッチした波形データを加算するためのタイミングを設定する第2のクロック信号BCLK及びラッチデータをクリアするクリア信号CLERをヘッドドライバ65に出力する。
【0027】
ヘッドドライバ65は、駆動波形信号WCOMを形成する駆動波形信号発生回路70と、クロック信号SCKを出力する発振回路71とを備えている。駆動波形信号発生回路70は、図3に示すように、制御部62から入力される駆動波形信号生成のための波形形成用データDATAを所定のアドレスに対応する記憶素子に記憶する波形メモリ701と、この波形メモリ701から読出された波形形成用データDATAを前述した第1のクロック信号ACLKによってラッチするラッチ回路702と、ラッチ回路702の出力と後述するラッチ回路704から出力される波形生成データWDATAとを加算する加算器703と、この加算器703の加算出力を前述した第2のクロック信号BCLKによってラッチするラッチ回路704と、このラッチ回路704から出力される波形生成データWDATAをアナログ信号に変換するD/A変換器705とを備えている。ここで、ラッチ回路702、704には制御部62から出力されるクリア信号CLERが入力され、このクリア信号CLERがオフ状態となったときに、ラッチデータがクリアされる。
【0028】
波形メモリ701は、図4に示すように、指示したアドレスに夫々数ビットずつのメモリ素子が配列され、アドレスA0〜A3と共に波形データDATAが記憶される。具体的には、制御部62から指示したアドレスA0〜A3に対して、クロック信号WCLKと共に波形データDATAが入力され、書込みイネーブル信号DENの入力のよってメモリ素子に波形データDATAが記憶される。
次に、この駆動波形信号発生回路70による駆動波形信号生成の原理について説明する。まず、前述したアドレスA0には単位時間当たりの電圧変化量として0となる波形データが書込まれている。同様に、アドレスA1には+ΔV1、アドレスA2には−ΔV2、アドレスA3には+ΔV3の波形データが書込まれている。また、クリア信号CLERによってラッチ回路702、704の保存データがクリアされる。また、駆動波形信号WCOMは、波形データによって中間電位(オフセット)まで立ち上げられている。
【0029】
この状態から、図5に示すようにアドレスA1の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に+ΔV1のデジタルデータが保存される。保存された+ΔV1のデジタルデータは加算器703を経てラッチ回路704に入力され、このラッチ回路704では、第2クロック信号BCLKの立ち上がりに同期して加算器703の出力を保存する。加算器703には、ラッチ回路704の出力も入力されるので、ラッチ回路704の出力、即ち駆動信号COMは、第2クロック信号BCLKの立ち上がりのタイミングで+ΔV1ずつ加算される。この例では、時間幅T1の間、アドレスA1の波形データが読込まれ、その結果、+ΔV1のデジタルデータが3倍になるまで加算されている。
【0030】
次いで、アドレスA0の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に保存されるデジタルデータは0に切替わる。この0のデジタルデータは、前述と同様に、加算器703を経て、第2クロック信号BCLKの立ち上がりのタイミングで加算されるが、デジタルデータが0であるので、実質的には、それ以前の値が保持される。この例では、時間幅T0の間、駆動信号COMが一定値に保持されている。
次いで、アドレスA2の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に保存されるデジタルデータは−ΔV2に切替わる。この−ΔV2のデジタルデータは、前述と同様に、加算器703を経て、第2クロック信号BCLKの立ち上がりのタイミングで加算されるが、デジタルデータが−ΔV2であるので、実質的には第2クロック信号に合わせて駆動信号COMは−ΔV2ずつ減算される。この例では、時間幅T2の間、−ΔV2のデジタルデータが6倍になるまで減算されている。
【0031】
このようにして生成されたデジタル信号をD/A変換器705でアナログ変換すると、図6に示すような駆動波形信号WCOMが得られる。これを図7に示す駆動信号出力回路で電力増幅してインクジェットヘッド2、3に駆動信号COMとして供給することで、各ノズルに設けられているピエゾ素子などのアクチュエータを駆動することが可能となり、各ノズルからインク滴を吐出することができる。この駆動信号出力回路は、駆動波形信号発生回路70で生成された駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路24と、変調回路24でパルス変調された変調(PWM)信号を電力増幅するデジタル電力増幅器25と、デジタル電力増幅器25で電力増幅された変調(PWM)信号を平滑化する平滑フィルタ26と、駆動波形信号発生回路70と変調回路24との間に介装された逆フィルタ23とを備えて構成される。
【0032】
この駆動信号COMの立ち上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大してインクを引込む(インクの吐出面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動信号COMの立ち下がり部分がキャビティの容積を縮小してインクを押出す(インクの吐出面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、インクを押出した結果、インク滴がノズルから吐出される。ちなみに、駆動信号COM又は駆動波形信号WCOMの波形は、前述からも容易に推察されるように、アドレスA0〜A3に書込まれる波形データ0、+ΔV1、−ΔV2、+ΔV3、第1クロック信号ACLK、第2クロック信号BCLKによって調整可能である。
【0033】
この電圧台形波からなる駆動信号COMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、インクの引込量や引込速度、インクの押出量や押出速度を変化させることができ、これによりインク滴の吐出量を変化させて異なるインクドットの大きさを得ることができる。従って、図6に示すように、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結させて駆動信号COMを生成し、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してピエゾ素子などのアクチュエータ22に供給し、インク滴を吐出したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してピエゾ素子などのアクチュエータ22に供給し、インク滴を複数回吐出したりすることで種々のインクドットの大きさを得ることができる。即ち、インクが乾かないうちに複数のインク滴を同じ位置に着弾すると、実質的に大きなインク滴を吐出するのと同じことになり、インクドットの大きさを大きくすることできるのである。このような技術の組み合わせによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図6の左端の駆動パルスPCOM1は、インクを引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、インク滴を吐出せずに、ノズルの乾燥を抑制防止したりするのに用いられる。
【0034】
これらの結果、インクジェットヘッド2、3には、駆動信号出力回路で生成された駆動信号COM、印刷データに基づいて吐出するノズルを選択すると共にピエゾ素子などのアクチュエータの駆動信号COMへの接続タイミングを決定する駆動パルス選択データSI&SP、全ノズルにノズル選択データが入力された後、駆動パルス選択データSI&SPに基づいて駆動信号COMとインクジェットヘッド2、3のアクチュエータとを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、駆動パルスデータSI&SPをシリアル信号としてインクジェットヘッド2、3に送信するためのクロック信号SCKが入力されている。
【0035】
次に、前記駆動信号出力回路から出力される駆動信号COMとピエゾ素子などのアクチュエータとを接続する構成について説明する。図8は、駆動信号COMとピエゾ素子などのアクチュエータとを接続する選択部のブロック図である。この選択部は、インク滴を吐出させるべきノズルに対応したピエゾ素子などのアクチュエータを指定するための駆動パルス選択データSI&SPを保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換するレベルシフタ213と、レベルシフタの出力に応じて駆動信号COMをピエゾ素子などのアクチュエータ22に接続する選択スイッチ201によって構成されている。
【0036】
シフトレジスタ211には、駆動パルス選択データSI&SPが順次入力されると共に、クロック信号SCKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の駆動パルス選択データSI&SPがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COMが、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられるピエゾ素子などのアクチュエータは駆動パルス選択データSI&SPの接続タイミングで駆動信号COMに接続される。また、シフトレジスタ211の駆動パルス選択データSI&SPがラッチ回路212に保存された後、次の印字情報をシフトレジスタ211に入力し、インク滴の吐出タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、ピエゾ素子などのアクチュエータのグランド端である。また、この選択スイッチ201によれば、ピエゾ素子などのアクチュエータを駆動信号COMから切り離した後も、当該アクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。
【0037】
図9には、前述した駆動信号出力回路の変調回路24から平滑フィルタ26までの具体的な構成を示す。駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路24には、一般的なパルス幅変調(PWM)回路を用いた。このパルス幅変調回路24は、周知の三角波発振器32と、この三角波発振器32から出力される三角波と駆動波形信号WCOMとを比較する比較器31とで構成される。このパルス幅変調回路24によれば、図10に示すように、駆動波形信号WCOMが三角波以上であるときにHi、駆動波形信号WCOMが三角波未満であるときにLoとなる変調(PWM)信号が出力される。なお、本実施形態では、パルス変調回路にパルス幅変調回路を用いたが、これに代えてパルス密度変調(PDM)回路を用いてもよい。
【0038】
デジタル電力増幅器25は、実質的に電力を増幅するための二つのMOSFETTrP、TrNからなるハーフブリッジドライバ段33と、パルス幅変調回路24からの変調(PWM)信号に基づいて、それらのMOSFETTrP、TrNのゲート−ソース間信号GP、GNを調整するためのゲートドライブ回路34とを備えて構成され、ハーフブリッジドライバ段33は、ハイサイド側MOSFETTrPとローサイド側MOSFETTrNをプッシュプル型に組み合わせたものである。このうち、ハイサイド側MOSFETTrPのゲート−ソース間信号をGP、ローサイド側MOSFETTrNのゲート−ソース間信号をGN、ハーフブリッジドライバ段33の出力をVaとしたとき、それらが変調(PWM)信号に応じてどのように変化するかを図11に示す。なお、各MOSFETTrP、TrNのゲート−ソース間信号GP、GNの電圧値Vgsは、それらのMOSFETTrP、TrNをONするのに十分な電圧値とする。
【0039】
変調(PWM)信号がHiレベルであるとき、ハイサイド側MOSFETTrPのゲート−ソース間信号GPはHiレベルとなり、ローサイド側MOSFETTrNのゲート−ソース間信号GNはLoレベルとなるので、ハイサイド側MOSFETTrPはON状態となり、ローサイド側MOSFETTrNはOFF状態となり、その結果、ハーフブリッジドライバ段33の出力Vaは、供給電力VDDとなる。一方、変調(PWM)信号がLoレベルであるとき、ハイサイド側MOSFETTrPのゲート−ソース間信号GPはLoレベルとなり、ローサイド側MOSFETTrNのゲート−ソース間信号GNはHiレベルとなるので、ハイサイド側MOSFETTrPはOFF状態となり、ローサイド側MOSFETTrNはON状態となり、その結果、ハーフブリッジドライバ段33の出力Vaは0となる。
【0040】
このデジタル電力増幅回路25のハーフブリッジドライバ段33の出力Vaが平滑フィルタ26を介して選択スイッチ201に駆動信号COMとして供給される。平滑フィルタ26は、一つの抵抗Rと一つのコンデンサCの組み合わせからなる一次RCローパス(低域通過)フィルタで構成される。このローパスフィルタからなる平滑フィルタ26は、デジタル電力増幅回路25のハーフブリッジドライバ段33の出力Vaの高周波成分、即ち電力増幅変調(PWM)のキャリア信号成分を十分に減衰し且つ駆動信号成分COM(若しくは駆動波形成分WCOM)を減衰しないように設計される。
【0041】
前述のようにデジタル電力増幅器25のMOSFETTrP、TrNが、デジタル駆動される場合には、MOSFETがスイッチ素子として作用するため、ON状態のMOSFETに電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、電力損失は殆ど発生しない。また、OFF状態のMOSFETには電流が流れないので電力損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅器25の電力損失は極めて小さく、小型のMOSFETを使用することができ、冷却用放熱板などの冷却手段も不要である。ちなみに、トランジスタをリニア駆動するときの効率が30%程度であるのに対し、デジタル電力増幅器の効率は90%以上である。また、トランジスタの冷却用放熱板は、トランジスタ一つに対して60mm角程度の大きさが必要になるので、こうした冷却用放熱板が不要になると、実際のレイアウト面で圧倒的に有利である。
【0042】
次に、図7の駆動信号出力回路に設けられた逆フィルタ23について説明する。前述したように平滑フィルタは電力増幅変調(PWM)信号のキャリア信号成分を十分減衰し、且つ駆動信号成分COM(若しくは駆動波形成分WCOM)を減衰しないように設計されるが、アクチュエータ22には静電容量Cnがあるため駆動すべきアクチュエータ数が変化すると、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタ遮断周波数が変化する。図12aに示す一次RCローパスフィルタからなる平滑フィルタ23の伝達関数G0(s)は下記1式で表される。
【0043】
【数1】
【0044】
この平滑フィルタ23に対して、ピエゾ素子などのアクチュエータ22が接続されるたびに、図12b、cのように静電容量Cnが次々に並列に接続され、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタの遮断周波数が変化する。例えば、選択スイッチ201が閉じられるピエゾ素子などのアクチュエータ22の数をNとしたとき、駆動回路全体の伝達関数Gt(s)は下記2式で表される。
【0045】
【数2】
【0046】
接続されるアクチュエータ22の数Nが1、つまり平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタの遮断周波数が最も高くなる場合でも電力増幅変調(PWM)信号のキャリア信号成分を十分減衰でき、また接続されるアクチュエータ22の数Nが最大、つまり平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタの遮断周波数が最も低くなる場合でも、駆動信号成分COM(若しくは駆動波形成分WCOM)が減衰しないようにすれば接続されるアクチュエータ22の数が変化しても駆動信号COMに歪みは生じない。しかしそのためにはPWMキャリア周波数を非常に高く設定する、若しくは平滑フィルタを高次にして減衰特性を急峻にする必要があるが、PWM周波数を高くした場合にはデジタル電力増幅器の発熱が増加し、平滑フィルタを高次にした場合には平滑フィルタが複雑化し、ヘッド駆動装置が大型化してしまう。
【0047】
そこで、本実施形態では、前述した図7に示すように駆動波形信号発生回路70の後段に、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタで減衰される成分を強調するための逆フィルタ23を介装する。即ち、逆フィルタ23を通過した駆動波形信号WCOMは、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で減衰される成分が強調されており、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で信号成分が減衰しても、各ピエゾ素子などのアクチュエータ22には本来の駆動信号COM又は駆動パルスPCOMが印加される。この逆フィルタ23の伝達関数GIF(s)は下記3式で表され、そのブロック図は図13のように示される。なお、式中のTは時定数に相当する。
【0048】
【数3】
【0049】
具体的には、逆フィルタ23をデジタルフィルタで構成する。ピエゾ素子などの個々のアクチュエータ22の静電容量Cnは予め分かっているので、駆動信号COMに接続されるピエゾ素子などのアクチュエータ22の数が分かれば、3式中或いは図13中の時定数Tが分かる。時定数Tが分かれば、デジタルフィルタの時定数成分を変更するだけで、駆動回路の周波数特性と逆の周波数特性が得られる。図14は、駆動パルス選択データSI&SPからインク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数を求め、そのアクチュエータ数に応じて逆フィルタ23の時定数を設定する概念図である。駆動パルス選択データSI&SPは、実際に駆動信号COMの駆動パルスPCOMを選択する1サイクル(第1駆動パルスPCOM1〜第4駆動パルスPCOM4による駆動信号COM)前に読込まれる。そこで、次のサイクルの駆動パルス選択データSI(1)&SP(1)を読込んだ時点でメモリに時定数T1(1)〜T4(1)を書込み、次のサイクルの第1〜第4駆動パルスPCOM1〜PCOM4が出力される直前に時定数T1(1)〜T4(1)をデジタルフィルタからなる逆フィルタ23に出力する。このようにすれば、逆フィルタ23の周波数特性を遅滞なく且つ確実に適切なものとして、各ノズルのピエゾ素子などのアクチュエータ22に本来の駆動信号COM又は駆動パルスPCOMを印加することができる。
【0050】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、駆動波形信号発生回路70で圧電素子などのアクチュエータの駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成し、この生成された駆動波形信号WCOMをパルス幅変調回路などの変調回路24でパルス変調し、このパルス変調された変調信号をデジタル電力増幅器25で電力増幅し、この電力増幅された電力増幅変調信号を平滑フィルタ26で平滑化してアクチュエータに駆動信号として供給することとしたため、平滑フィルタ26のフィルタ特性を電力増幅変調信号成分のみ十分に平滑化できるものとすることでアクチュエータへの駆動信号の早い立ち上がり、立ち下がりを可能としながら、電力増幅効率に優れたデジタル電力増幅器25によって駆動信号を効率よく電力増幅できるので、冷却用放熱板などの冷却手段が不要となる。
【0051】
また、少なくとも平滑フィルタ26及びアクチュエータ22の静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタの周波数特性と逆の周波数特性の逆フィルタ23を駆動波形信号発生回路70の後段に設けたことにより、駆動波形信号WCOM成分の中で平滑フィルタ26及びアクチュエータ22の静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタで減衰される成分を強調することができ、これにより実際にアクチュエータ22に印加される駆動信号COMの歪みを抑制防止することが可能となる。
また、インク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ22数に応じて逆フィルタ23の周波数特性を設定することにより、接続されるアクチュエータ数に応じて異なる低域通過(ローパス)フィルタ減衰成分を正確に強調することができ、これにより実際にアクチュエータ22に印加される駆動信号COMの歪みをより一層抑制防止することが可能となる。
【0052】
図15には、本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の駆動波形信号発生手段及び変調手段の他の実施形態を示す。図3の駆動波形信号発生回路70では、デジタル合成された駆動波形信号をD/A変換器705でアナログ変換して出力した。これに対し、図15では、メモリコントロール部41がメモリ部42からデジタル波形データを読出し、この読出されたデジタル波形データと三角波に相当する数値発生部43の数値とを比較部44で比較して変調(PWM)信号のHi、Loを決定し、それを変調(PWM)信号として出力する。この場合、変調(PWM)信号の出力までが全てデジタルで行われるので、メモリコントロール部41、メモリ部42、数値発生部43、比較部44をCPUやゲートアレイ内に組込むことができる。この場合、メモリコントロール部41、メモリ部42が本発明の駆動波形信号発生手段に相当し、数値発生部43、比較部44が変調手段を構成する。
【0053】
次に、本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の第2実施形態について説明する。前記第1実施形態で述べたように、インク滴を吐出すべきノズル数が増加すると、アクチュエータ22数に応じた静電容量が付加されるので、平滑フィルタ26を含む出力回路の周波数特性は、図16に二点鎖線で示す目標値に対して、実線のようにゲインが減少する。このような場合には、図17に示すような高域通過(ハイパス)型の逆フィルタ23が必要である。しかしながら、このような高域通過(ハイパス)型の逆フィルタ23を介して出力回路に供給される駆動パルスは、図18に二点鎖線で示す目標値に対して、実線で示すようにオーバシュートするような波形となるため、広いダイナミックレンジの電源が必要となる。
【0054】
そこで、全ノズル数の半分のアクチュエータを駆動する場合を想定し、その状態で出力回路のゲインが目標値に一致するように平滑フィルタ26を設定すると、インク滴を吐出すべきノズル数が想定駆動アクチュエータ数より減少したとき、出力回路の周波数特性は、図19に二点鎖線で示す目標値に対して、実線のようにゲインが増加する。このような場合には、図20に示すような低域通過(ローパス)型の逆フィルタ23が必要となる。そして、このような低域通過(ローパス)型の逆フィルタ23を介して出力回路に供給される駆動パルスは、図21に二点鎖線で示す目標値に対して、実線で示すようにアンダーシュート気味な波形となるので、電源のダイナミックレンジは狭くてよい。
そのため、本実施形態では、図22に示すように、前述の高域強調型のフィルタと1次の低域通過型或いは高域減衰型のフィルタとを並列に配設して逆フィルタ23を構成し、出力回路のゲインが減少する場合、即ちインク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数が所定値より多い場合には高域強調型のフィルタを、出力回路のゲインが増加する場合、即ちインク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数が所定値より少ない場合には低域通過型又は高域減衰型のフィルタを、夫々スイッチで選択して駆動パルスを出力する。
【0055】
このようにすれば、駆動波形信号成分の中で、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタで変化する成分を適切に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータに印加される駆動信号の歪みを抑制防止することが可能となる。また、インク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数に応じて逆フィルタの周波数特性を設定するようにすれば、接続されるアクチュエータ数に応じて異なる変化成分を正確に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータに印加される駆動信号の歪みをより一層抑制防止することが可能となる。
この逆フィルタにおける高域強調型のフィルタ(1次ハイパスフィルタ)の時定数Tの設定方法について説明する。この1次ハイパスフィルタの伝達関数G(s)、G(jω)、ゲインGainは以下のように求まる。
【0056】
【数4】
【0057】
この場合は、インク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数が所定値より多く、図23に実線で示すゲインの周波数特性が二点鎖線で示すように減少してしまっているので、所定の周波数f0でのゲインが所定値、この場合は0になるように1次ハイパスフィルタのゲインGainを設定し、それを解いて時定数Tが求まる。所定周波数f0は、その周波数以上の領域では駆動波形信号のパワースペクトルがないか又は殆どない(平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタは基本的にローパスフィルタなので)という狙い目の周波数を設定する。この平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの所定周波数f0でのゲインをG0、ω0=2πf0とすると、
【0058】
【数5】
となる。
【0059】
次に、この逆フィルタにおける低域通過型又は高域減衰型のフィルタ(1次ローパスフィルタ)の時定数Tの設定方法について説明する。この1次ローパスフィルタの伝達関数G(s)、G(jω)、ゲインGainは以下のように求まる。
【0060】
【数6】
【0061】
この場合は、インク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数が所定値より少なく、図24に実線で示すゲインの周波数特性が二点鎖線で示すように増加してしまっているので、所定の周波数f0でのゲインが所定値、この場合は0になるように1次ローパスフィルタのゲインGainを設定し、それを解いて時定数Tが求まる。平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの所定周波数f0でのゲインをG0、ω0=2πf0とすると、
【0062】
【数7】
となる。
【0063】
この低域通過型又は高域減衰型のフィルタについては、図25に示すような2次のローパスフィルタを用いることもできる。2次のローパスフィルタを用いれば、図26に示すように、2つの所定の周波数f1、f2のゲインを調整することが可能となる。例えば、このうちの一方の所定周波数f1を前述の1次ローパスフィルタの所定周波数f0と同じような狙い目の周波数とすると、他方の所定周波数f2には、もう一つの狙い目の周波数や、一方の所定周波数f1のゲインを調整したときにゲインが変化してしまう周波数を設定することができる。この2次ローパスフィルタの伝達関数G(s)、G(jω)、ゲインGainは以下のように求まる。
【0064】
【数8】
【0065】
この場合も、インク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数が所定値より少なく、図26に実線で示すゲインの周波数特性が二点鎖線で示すように増加してしまっているので、前記二つの所定周波数f1、f2でのゲインが所定値、この場合は0になるように2次ローパスフィルタのゲインGainを設定し、それを解いて時定数T1、T2が求まる。平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの所定周波数f1、f2での夫々のゲインをG1、G2、ω1=2πf1、ω2=2πf2とすると、
【0066】
【数9】
となり、この連立方程式を解いて時定数T1、T2が得られる。
【0067】
なお、前記実施形態ではラインヘッド型インクジェットプリンタを対象として本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を適用した例についてのみ詳述したが、本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、マルチパス型プリンタを始めとして、あらゆるタイプのインクジェットプリンタを対象として適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1は印刷媒体、2は第1インクジェットヘッド、3は第2インクジェットヘッド、4は第1搬送部、5は第2搬送部、6は第1搬送ベルト、7は第2搬送ベルト、8R,8Lは駆動ローラ、9R,9Lは第1従動ローラ、10R,10Lは第2従動ローラ、11R,11Lは電動モータ、22はアクチュエータ、23は逆フィルタ、24は変調回路、25はデジタル電力増幅器、26は平滑フィルタ、31は比較器、32は三角波発振器、33はハーフブリッジドライバ段、34はゲートドライブ回路、41はメモリコントロール部、42はメモリ部、43は数値発生部、44は比較部、70は駆動波形信号発生回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数色の液体インクの微小なインク滴を複数のノズルから吐出してその微粒子(インクドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像を描画するようにしたインクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなインクジェットプリンタは、一般に安価で且つ高品質のカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このようなインクジェットプリンタは、一般に、インクカートリッジと印字ヘッドとが一体的に備えられたキャリッジなどと称される移動体が印刷媒体上をその搬送方向と交差する方向に往復しながらその印字ヘッドのノズルから液体インク滴を吐出(噴射)して印刷媒体上に微小なインクドットを形成することで、当該印刷媒体上に所定の文字や画像を描画して所望の印刷物を作成するようになっている。そして、このキャリッジに黒色(ブラック)を含めた4色(イエロー、マゼンタ、シアン)のインクカートリッジと各色毎の印字ヘッドを備えることで、モノクロ印刷のみならず、各色を組み合わせたフルカラー印刷も容易に行えるようになっている(更に、これらの各色に、ライトシアンやライトマゼンタなどを加えた6色や7色、或いは8色のものも実用化されている)。
【0003】
また、このようにキャリッジ上のインクジェットヘッドを印刷媒体の搬送方向と交差する方向に往復させながら印刷を実行するようにしたタイプのインクジェットプリンタでは、1頁全体をきれいに印刷するためにインクジェットヘッドを10回程度から数十回以上も往復運動させる必要があるため、他の方式の印刷装置、例えば電子写真技術を用いたレーザプリンタ、複写機などに比べて印刷時間がかかるといった欠点がある。
これに対し、印刷媒体の幅と同じ寸法の長尺のインクジェットヘッド(一体である必要はない)を配置してキャリッジを使用しないタイプのインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドを印刷媒体の幅方向に移動させる必要がなく、1パスでの印刷が可能となるため、レーザプリンタと同様な高速な印刷が可能となる。なお、前者方式のインクジェットプリンタを一般に「マルチパス(シリアル)型インクジェットプリンタ」、後者方式のインクジェットプリンタを一般に「ラインヘッド型インクジェットプリンタ」と呼んでいる。
【0004】
ところで、この種のインクジェットプリンタでは、より一層高い階調が要求されている。階調とは、インクドットで表される画素に含まれる各色の濃度の状態であり、各画素の色の濃度に応じたインクドットの大きさを階調度といい、インクドットで表現できる階調度の数を階調数と呼ぶ。高い階調とは、階調数が大きいことを意味する。階調度を変えるには、インクジェットヘッドに設けられたアクチュエータへの駆動パルスを変える必要がある。例えば、アクチュエータが圧電素子である場合には、圧電素子に印加される電圧値が大きくなると圧電素子(正確には振動板)の変位量(歪み)が大きくなるので、これを用いてインクドットの階調度を変えることができる。
【0005】
そこで、以下に挙げる特許文献1では、電圧波高値が異なる複数の駆動パルスを組み合わせて連結して駆動信号を生成し、これをインクジェットヘッドに設けられた同じ色のノズルの圧電素子に共通して出力しておき、この駆動信号から、形成すべきインクドットの階調度に応じた駆動パルスをノズル毎に選択し、その選択された駆動パルスを該当するノズルの圧電素子に供給してインク滴を吐出するようにすることで、要求されるインクドットの階調度を達成するようにしている。
【0006】
駆動信号(或いは駆動パルス)の生成方法は、下記特許文献2の図2に記載されている。即ち、駆動信号のデータが記憶されているメモリからデータを読出し、それをD/A変換器でアナログデータに変換し、電流増幅器を通してインクジェットヘッドに駆動信号を供給する。電流増幅器の回路構成は、同図3に示すように、プッシュプル接続されたトランジスタで構成され、リニア駆動によって駆動信号を増幅している。しかしながら、このような構成の電流増幅器では、トランジスタのリニア駆動そのものが低効率であり、トランジスタ自体の発熱対策として大型トランジスタを使用する必要がある上、トランジスタの冷却用放熱板が必要となるなど、回路規模が大きくなるという欠点があり、特に冷却用放熱板の大きさは、レイアウト上、大きな障害となる。
この欠点を克服するため、下記特許文献3に記載されるインクジェットプリンタでは、DC/DCコンバータのリファレンス電圧を制御して駆動信号を生成している。この場合、効率のよいDC/DCコンバータを使用しているので、冷却のための放熱手段が必要なく、またPWM信号を用いているので、D/A変換器も簡単なローパスフィルタで構成でき、これらにより回路規模を小型化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−81013号公報
【特許文献2】特開2004−306434号公報
【特許文献3】特開2005−35062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、DC/DCコンバータは、本来、定電圧を発生するために設計されたものであるから、このDC/DCコンバータを用いた前記特許文献3のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置では、インクジェットヘッドから良好にインク滴を吐出するのに必要な駆動信号の波形、例えば早い立ち上がりや立ち下がりを得ることができないという問題がある。勿論、プッシュプル接続されたトランジスタでアクチュエータ駆動信号の電流を増幅する前記特許文献2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置では、冷却用放熱板が大きすぎて、特にノズル数、つまりアクチュエータ数が多いラインヘッド型インクジェットプリンタでは実質的にレイアウトできないという問題がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、アクチュエータへの駆動信号の早い立ち上がり、立ち下がりを可能としながら冷却用放熱板などの冷却手段を必要とせず、合わせて駆動信号の歪みを抑制防止可能なインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[発明1]上記課題を解決するために、発明1のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、インクジェットヘッドに設けられた液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルに対応して設けられたアクチュエータと、前記アクチュエータに駆動信号を印加する駆動手段とを有し、前記駆動手段は、前記アクチュエータの駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号を生成する駆動波形信号発生手段と、前記駆動波形信号発生手段で生成された駆動波形信号をパルス変調する変調手段と、前記変調手段でパルス変調された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅器と、前記デジタル電力増幅器で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して前記アクチュエータに駆動信号として供給する平滑フィルタと、前記駆動波形信号発生手段の後段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所定の周波数特性にする逆フィルタとを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
この発明1に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、駆動波形信号発生手段でアクチュエータの駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号を生成し、この生成された駆動波形信号を変調手段でパルス変調し、このパルス変調された変調信号をデジタル電力増幅器で電力増幅し、この電力増幅された電力増幅変調信号を平滑フィルタで平滑化してアクチュエータに駆動信号として供給する構成としたため、平滑フィルタのフィルタ特性を電力増幅変調信号成分のみ十分に平滑化できるものとすることでアクチュエータへの駆動信号の早い立ち上がり、立ち下がりを可能としながら、電力増幅効率に優れたデジタル電力増幅器によって駆動信号を効率よく電力増幅できるので、冷却用放熱板などの冷却手段が不要となる。
また、少なくとも平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所定の周波数特性にする逆フィルタを駆動波形信号発生手段の後段に設けたことにより、駆動波形信号成分の中で、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタで変化する成分を強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータに印加される駆動信号の歪みを抑制防止することが可能となる。
【0011】
[発明2]発明2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記発明1のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記アクチュエータの数に応じて前記逆フィルタの周波数特性を設定することを特徴とするものである。
この発明2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、アクチュエータの数に応じて逆フィルタの周波数特性を設定する構成としたため、接続されるアクチュエータの数に応じて異なる変化成分を正確に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータに印加される駆動信号の歪みをより一層抑制防止することが可能となる。
【0012】
[発明3]発明3のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記発明2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記アクチュエータの数が所定値より多い場合には高域強調型のフィルタを用い、前記アクチュエータの数が所定値より少ない場合には低域通過型又は高域減衰型のフィルタを用いることを特徴とするものである。
この発明3のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、アクチュエータの数が所定値より多い場合には高域強調型のフィルタを用い、アクチュエータの数が所定値より少ない場合には低域通過型又は高域減衰型のフィルタを用いる構成としたため、駆動波形信号成分の中で、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタで変化する成分をより一層適切に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータに印加される駆動信号の歪みを適切に抑制防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を適用したラインヘッド型インクジェットプリンタの第1実施形態を示す概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタの制御装置のブロック構成図である。
【図3】図2の駆動波形信号発生回路のブロック構成図である。
【図4】図3の波形メモリの説明図である。
【図5】駆動波形信号生成の説明図である。
【図6】時系列的に連結された駆動波形信号又は駆動信号の説明図である。
【図7】駆動信号出力回路のブロック構成図である。
【図8】駆動信号をアクチュエータに接続する選択部のブロック図である。
【図9】図7の駆動信号出力回路の変調回路、デジタル電力増幅器、平滑フィルタの詳細を示すブロック図である。
【図10】図9の変調回路の作用の説明図である。
【図11】図9のデジタル電力増幅器の作用の説明図である。
【図12】接続されるアクチュエータによって構成されるローパスフィルタの説明図である。
【図13】図7の逆フィルタのブロック図である。
【図14】印字データからインク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数を求め、そのアクチュエータ数に応じて逆フィルタの時定数を設定する概念図である。
【図15】本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の他の実施形態を示すものであり、駆動波形信号発生手段及び変調手段のブロック図である。
【図16】接続されるアクチュエータ数の変化に伴って出力回路のゲインが減少する場合の説明図である。
【図17】図16の場合の逆フィルタの周波数特性の説明図である。
【図18】図17の逆フィルタから出力される駆動パルスの説明図である。
【図19】接続されるアクチュエータ数の変化に伴って出力回路のゲインが増加する場合の説明図である。
【図20】図19の場合の逆フィルタの周波数特性の説明図である。
【図21】図20の逆フィルタから出力される駆動パルスの説明図である。
【図22】本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の第2実施形態を示す逆フィルタのブロック図である。
【図23】図22の逆フィルタ中の1次ハイパスフィルタによるゲイン調整の説明図である。
【図24】図22の逆フィルタ中の1次ローパスフィルタによるゲイン調整の説明図である。
【図25】本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の他の実施形態を示す逆フィルタのブロック図である。
【図26】図25の逆フィルタ中の2次ローパスフィルタによるゲイン調整の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明のインクジェットプリンタの第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの概略構成図であり、図1aは、その平面図、図1bは正面図である。図1において、印刷媒体1は、図の右から左に向けて図の矢印方向に搬送され、その搬送途中の印字領域で印字される、ラインヘッド型インクジェットプリンタである。但し、本実施形態のインクジェットヘッドは一カ所だけでなく、二カ所に分けて配設されている。
図中の符号2は、印刷媒体1の搬送方向上流側に設けられた第1インクジェットヘッド、符号3は、同じく下流側に設けられた第2インクジェットヘッドであり、第1インクジェットヘッド2の下方には印刷媒体1を搬送するための第1搬送部4が設けられ、第2インクジェットヘッド3の下方には第2搬送部5が設けられている。第1搬送部4は、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向(以下、ノズル列方向とも称す)に所定の間隔をあけて配設された4本の第1搬送ベルト6で構成され、第2搬送部5は、同じく印刷媒体1の搬送方向と交差する方向(ノズル列方向)に所定の間隔をあけて配設された4本の第2搬送ベルト7で構成される。
【0015】
4本の第1搬送ベルト6と同じく4本の第2搬送ベルト7とは、互いに交互に隣り合うように配設されている。本実施形態では、これらの搬送ベルト6,7のうち、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7と、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7とを区分する。即ち、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7の重合部に右側駆動ローラ8Rが配設され、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7の重合部に左側駆動ローラ8Lが配設され、それより上流側に右側第1従動ローラ9R及び左側第1従動ローラ9Lが配設され、下流側に右側第2従動ローラ10R及び左側第2従動ローラ10Lが配設されている。これらのローラは、一連のように見られるが、実質的には図1aの中央部分で分断されている。そして、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6は右側駆動ローラ8R及び右側第1従動ローラ9Rに巻回され、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6は左側駆動ローラ8L及び左側第1従動ローラ9Lに巻回され、ノズル列方向右側2本の第2搬送ベルト7は右側駆動ローラ8R及び右側第2従動ローラ10Rに巻回され、ノズル列方向左側2本の第2搬送ベルト7は左側駆動ローラ8L及び左側第2従動ローラ10Lに巻回されており、右側駆動ローラ8Rには右側電動モータ11Rが接続され、左側駆動ローラ8Lには左側電動モータ11Lが接続されている。従って、右側電動モータ11Rによって右側駆動ローラ8Rを回転駆動すると、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6で構成される第1搬送部4及び同じくノズル列方向右側2本の第2搬送ベルト7で構成される第2搬送部5は、互いに同期し且つ同じ速度で移動し、左側電動モータ11Lによって左側駆動ローラ8Lを回転駆動すると、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6で構成される第1搬送部4及び同じくノズル列方向左側2本の第2搬送ベルト7で構成される第2搬送部5は、互いに同期し且つ同じ速度で移動する。但し、右側電動モータ11Rと左側電動モータ11Lの回転速度を異なるものとすると、ノズル列方向左右の搬送速度を変えることができ、具体的には右側電動モータ11Rの回転速度を左側電動モータ11Lの回転速度よりも大きくすると、ノズル列方向右側の搬送速度を左側よりも大きくすることができ、左側電動モータ11Lの回転速度を右側電動モータ11Rの回転速度よりも大きくすると、ノズル列方向左側の搬送速度を右側よりも大きくすることができる。
【0016】
第1インクジェットヘッド2及び第2インクジェットヘッド3は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の各色毎に、印刷媒体1の搬送方向にずらして配設されている。各インクジェットヘッド2,3には、図示しない各色のインクタンクからインク供給チューブを介してインクが供給される。各インクジェットヘッド2,3には、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向に、複数のノズルが形成されており(即ちノズル列方向)、それらのノズルから同時に必要箇所に必要量のインク滴を吐出することにより、印刷媒体1上に微小なインクドットを形成出力する。これを各色毎に行うことにより、第1搬送部4及び第2搬送部5で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、1パスによる印刷を行うことができる。即ち、これらのインクジェットヘッド2,3の配設領域が印字領域に相当する。
【0017】
インクジェットヘッドの各ノズルからインクを吐出出力する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰インクジェット方式などがある。静電方式は、アクチュエータである静電ギャップに駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。ピエゾ方式は、アクチュエータであるピエゾ素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。膜沸騰インクジェット方式は、キャビティ内に微小ヒータがあり、瞬間的に300℃以上に加熱されてインクが膜沸騰状態となって気泡が生成し、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。本発明は、何れのインク滴の吐出方法も適用可能であるが、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することでインク滴の吐出量を調整可能なピエゾ素子に特に好適である。
【0018】
第1インクジェットヘッド2のインク滴吐出用ノズルは第1搬送部4の4本の第1搬送ベルト6の間にだけ形成されており、第2インクジェットヘッド3のインク滴吐出用ノズルは第2搬送部5の4本の第2搬送ベルト7の間にだけ形成されている。これは、後述するクリーニング部によって各インクジェットヘッド2,3をクリーニングするためであるが、このようにすると、どちらか一方のインクジェットヘッドだけでは、ワンパスによる全面印刷を行うことができない。そのため、互いに印字できない部分を補うために第1インクジェットヘッド2と第2インクジェットヘッド3とを印刷媒体1の搬送方向にずらして配設しているのである。
【0019】
第1インクジェットヘッド2の下方に配設されているのが当該第1インクジェットヘッド2をクリーニングする第1クリーニングキャップ12、第2インクジェットヘッド3の下方に配設されているのが当該第2インクジェットヘッド3をクリーニングする第2クリーニングキャップ13である。各クリーニングキャップ12,13は、何れも第1搬送部4の4本の第1搬送ベルト6の間、及び第2搬送部5の4本の第2搬送ベルト7の間を通過できる大きさに形成してある。これらのクリーニングキャップ12,13は、インクジェットヘッド2,3の下面、即ちノズル面に形成されているノズルを覆い且つ当該ノズル面に密着可能な方形有底のキャップ体と、その底部に配設されたインク吸収体と、キャップ体の底部に接続されたチューブポンプと、キャップ体を昇降する昇降装置とで構成されている。そこで、昇降装置によってキャップ体を上昇してインクジェットヘッド2,3のノズル面に密着する。その状態で、チューブポンプによってキャップ体内を負圧にすると、インクジェットヘッド2,3のノズル面に開設されているノズルからインク滴や気泡が吸い出され、インクジェットヘッド2,3をクリーニングすることができる。クリーニングが終了したら、クリーニングキャップ12,13を下降する。
【0020】
第1従動ローラ9R,9Lの上流側には、給紙部15から供給される印刷媒体1の給紙タイミングを調整すると共に当該印刷媒体1のスキューを補正する、二個一対のゲートローラ14が設けられている。スキューとは、搬送方向に対する印刷媒体1の捻れである。また、給紙部15の上方には、印刷媒体1を供給するためのピックアップローラ16が設けられている。なお、図中の符号17は、ゲートローラ14を駆動するゲートローラモータである。
【0021】
駆動ローラ8R,8Lの下方にはベルト帯電装置19が配設されている。このベルト帯電装置19は、駆動ローラ8R,8Lを挟んで第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7に当接する帯電ローラ20と、帯電ローラ20を第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7に押し付けるスプリング21と、帯電ローラ20に電荷を付与する電源18とで構成されており、帯電ローラ20から第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7に電荷を付与してそれらを帯電する。一般に、これらのベルト類は、中・高抵抗体又は絶縁体で構成されているので、ベルト帯電装置19によって帯電すると、その表面に印加された電荷が、同じく高抵抗体又は絶縁体で構成される印刷媒体1に誘電分極を生じせしめ、その誘電分極によって発生する電荷とベルト表面の電荷との間に生じる静電気力でベルトに印刷媒体1を吸着することができる。なお、ベルト帯電装置19としては、電荷を降らせるコロトロンなどでもよい。
【0022】
従って、このインクジェットプリンタによれば、ベルト帯電装置19で第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7の表面を帯電し、その状態でゲートローラ14から印刷媒体1を給紙し、図示しない拍車やローラで構成される紙押えローラで印刷媒体1を第1搬送ベルト6に押し付けると、前述した誘電分極の作用によって印刷媒体1は第1搬送ベルト6の表面に吸着される。この状態で、電動モータ11R,11Lによって駆動ローラ8R,8Lを回転駆動すると、その回転駆動力が第1搬送ベルト6を介して第1従動ローラ9R,9Lに伝達される。
このようにして印刷媒体1を吸着した状態で第1搬送ベルト6を搬送方向下流側に移動し、印刷媒体1を第1インクジェットヘッド2の下方に移動し、当該第1インクジェットヘッド2に形成されているノズルからインク滴を吐出して印字を行う。この第1インクジェットヘッド2による印字が終了したら、印刷媒体1を搬送方向下流側に移動して第2搬送部5の第2搬送ベルト7に乗り移らせる。前述したように、第2搬送ベルト7もベルト帯電装置19によって表面が帯電しているので、前述した誘電分極の作用によって印刷媒体1は第2搬送ベルト7の表面に吸着される。
【0023】
この状態で、第2搬送ベルト7を搬送方向下流側に移動し、印刷媒体1を第2インクジェットヘッド3の下方に移動し、当該第2インクジェットヘッドに形成されているノズルからインク滴を吐出して印字を行う。この第2インクジェットヘッドによる印字が終了したら、印刷媒体1を更に搬送方向下流側に移動し、図示しない分離装置で印刷媒体1を第2搬送ベルト7の表面から分離しながら排紙部に排紙する。
また、第1及び第2インクジェットヘッド2,3のクリーニングが必要なときには、前述したように第1及び第2クリーニングキャップ12,13を上昇して第1及び第2インクジェットヘッド2,3のノズル面にキャップ体を密着し、その状態でキャップ体内を負圧にすることで第1及び第2インクジェットヘッド2,3のノズルからインク滴や気泡を吸い出してクリーニングし、然る後、第1及び第2クリーニングキャップ12,13を下降する。
【0024】
前記インクジェットプリンタ内には、自身を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、図2に示すように、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行うものである。そして、ホストコンピュータ60から入力された印刷データを受取る入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理を実行するマイクロコンピュータで構成される制御部62と、ゲートローラモータ17を駆動制御するゲートローラモータドライバ63と、ピックアップローラ16を駆動するためのピックアップローラモータ51を駆動制御するピックアップローラモータドライバ64と、インクジェットヘッド2、3を駆動制御するヘッドドライバ65と、右側電動モータ11Rを駆動制御する右側電動モータドライバ66Rと、左側電動モータ11Lを駆動制御する左側電動モータドライバ66Lと、各ドライバ63〜65、66R、66Lの出力信号を外部のゲートローラモータ17、ピックアップローラモータ51、インクジェットヘッド2、3、右側電動モータ11R、左側電動モータ11Lで使用する駆動信号に変換して出力するインタフェース67とを備えて構成される。
【0025】
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のアプリケーションプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れのノズルからインク滴を吐出するか或いはどの程度のインク滴を吐出するかという印字データ(駆動パルス選択データSI&SP)を出力し、この印字データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63〜65、66R、66Lに制御信号を出力する。各ドライバ63〜65、66R、66Lから制御信号が出力されると、これらがインタフェース67で駆動信号に変換されてインクジェットヘッドの複数のノズルに対応するアクチュエータ、ゲートローラモータ17、ピックアップローラモータ51、右側電動モータ11R、左側電動モータ11Lが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送、印刷媒体1の姿勢制御、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0026】
また、制御部62は、後述する駆動信号を形成するための波形形成用データDATAを後述する波形メモリ701に書込むために、書込みイネーブル信号DENと、書込みクロック信号WCLKと、書込みアドレスデータA0〜A3とを出力して、16ビットの波形形成用データDATAを波形メモリ701に書込むと共に、この波形メモリ701に記憶された波形形成用データDATAを読出すための読出しアドレスデータA0〜A3、波形メモリ701から読出した波形形成用データDATAをラッチするタイミングを設定する第1のクロック信号ACLK、ラッチした波形データを加算するためのタイミングを設定する第2のクロック信号BCLK及びラッチデータをクリアするクリア信号CLERをヘッドドライバ65に出力する。
【0027】
ヘッドドライバ65は、駆動波形信号WCOMを形成する駆動波形信号発生回路70と、クロック信号SCKを出力する発振回路71とを備えている。駆動波形信号発生回路70は、図3に示すように、制御部62から入力される駆動波形信号生成のための波形形成用データDATAを所定のアドレスに対応する記憶素子に記憶する波形メモリ701と、この波形メモリ701から読出された波形形成用データDATAを前述した第1のクロック信号ACLKによってラッチするラッチ回路702と、ラッチ回路702の出力と後述するラッチ回路704から出力される波形生成データWDATAとを加算する加算器703と、この加算器703の加算出力を前述した第2のクロック信号BCLKによってラッチするラッチ回路704と、このラッチ回路704から出力される波形生成データWDATAをアナログ信号に変換するD/A変換器705とを備えている。ここで、ラッチ回路702、704には制御部62から出力されるクリア信号CLERが入力され、このクリア信号CLERがオフ状態となったときに、ラッチデータがクリアされる。
【0028】
波形メモリ701は、図4に示すように、指示したアドレスに夫々数ビットずつのメモリ素子が配列され、アドレスA0〜A3と共に波形データDATAが記憶される。具体的には、制御部62から指示したアドレスA0〜A3に対して、クロック信号WCLKと共に波形データDATAが入力され、書込みイネーブル信号DENの入力のよってメモリ素子に波形データDATAが記憶される。
次に、この駆動波形信号発生回路70による駆動波形信号生成の原理について説明する。まず、前述したアドレスA0には単位時間当たりの電圧変化量として0となる波形データが書込まれている。同様に、アドレスA1には+ΔV1、アドレスA2には−ΔV2、アドレスA3には+ΔV3の波形データが書込まれている。また、クリア信号CLERによってラッチ回路702、704の保存データがクリアされる。また、駆動波形信号WCOMは、波形データによって中間電位(オフセット)まで立ち上げられている。
【0029】
この状態から、図5に示すようにアドレスA1の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に+ΔV1のデジタルデータが保存される。保存された+ΔV1のデジタルデータは加算器703を経てラッチ回路704に入力され、このラッチ回路704では、第2クロック信号BCLKの立ち上がりに同期して加算器703の出力を保存する。加算器703には、ラッチ回路704の出力も入力されるので、ラッチ回路704の出力、即ち駆動信号COMは、第2クロック信号BCLKの立ち上がりのタイミングで+ΔV1ずつ加算される。この例では、時間幅T1の間、アドレスA1の波形データが読込まれ、その結果、+ΔV1のデジタルデータが3倍になるまで加算されている。
【0030】
次いで、アドレスA0の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に保存されるデジタルデータは0に切替わる。この0のデジタルデータは、前述と同様に、加算器703を経て、第2クロック信号BCLKの立ち上がりのタイミングで加算されるが、デジタルデータが0であるので、実質的には、それ以前の値が保持される。この例では、時間幅T0の間、駆動信号COMが一定値に保持されている。
次いで、アドレスA2の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に保存されるデジタルデータは−ΔV2に切替わる。この−ΔV2のデジタルデータは、前述と同様に、加算器703を経て、第2クロック信号BCLKの立ち上がりのタイミングで加算されるが、デジタルデータが−ΔV2であるので、実質的には第2クロック信号に合わせて駆動信号COMは−ΔV2ずつ減算される。この例では、時間幅T2の間、−ΔV2のデジタルデータが6倍になるまで減算されている。
【0031】
このようにして生成されたデジタル信号をD/A変換器705でアナログ変換すると、図6に示すような駆動波形信号WCOMが得られる。これを図7に示す駆動信号出力回路で電力増幅してインクジェットヘッド2、3に駆動信号COMとして供給することで、各ノズルに設けられているピエゾ素子などのアクチュエータを駆動することが可能となり、各ノズルからインク滴を吐出することができる。この駆動信号出力回路は、駆動波形信号発生回路70で生成された駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路24と、変調回路24でパルス変調された変調(PWM)信号を電力増幅するデジタル電力増幅器25と、デジタル電力増幅器25で電力増幅された変調(PWM)信号を平滑化する平滑フィルタ26と、駆動波形信号発生回路70と変調回路24との間に介装された逆フィルタ23とを備えて構成される。
【0032】
この駆動信号COMの立ち上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大してインクを引込む(インクの吐出面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動信号COMの立ち下がり部分がキャビティの容積を縮小してインクを押出す(インクの吐出面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、インクを押出した結果、インク滴がノズルから吐出される。ちなみに、駆動信号COM又は駆動波形信号WCOMの波形は、前述からも容易に推察されるように、アドレスA0〜A3に書込まれる波形データ0、+ΔV1、−ΔV2、+ΔV3、第1クロック信号ACLK、第2クロック信号BCLKによって調整可能である。
【0033】
この電圧台形波からなる駆動信号COMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、インクの引込量や引込速度、インクの押出量や押出速度を変化させることができ、これによりインク滴の吐出量を変化させて異なるインクドットの大きさを得ることができる。従って、図6に示すように、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結させて駆動信号COMを生成し、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してピエゾ素子などのアクチュエータ22に供給し、インク滴を吐出したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してピエゾ素子などのアクチュエータ22に供給し、インク滴を複数回吐出したりすることで種々のインクドットの大きさを得ることができる。即ち、インクが乾かないうちに複数のインク滴を同じ位置に着弾すると、実質的に大きなインク滴を吐出するのと同じことになり、インクドットの大きさを大きくすることできるのである。このような技術の組み合わせによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図6の左端の駆動パルスPCOM1は、インクを引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、インク滴を吐出せずに、ノズルの乾燥を抑制防止したりするのに用いられる。
【0034】
これらの結果、インクジェットヘッド2、3には、駆動信号出力回路で生成された駆動信号COM、印刷データに基づいて吐出するノズルを選択すると共にピエゾ素子などのアクチュエータの駆動信号COMへの接続タイミングを決定する駆動パルス選択データSI&SP、全ノズルにノズル選択データが入力された後、駆動パルス選択データSI&SPに基づいて駆動信号COMとインクジェットヘッド2、3のアクチュエータとを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、駆動パルスデータSI&SPをシリアル信号としてインクジェットヘッド2、3に送信するためのクロック信号SCKが入力されている。
【0035】
次に、前記駆動信号出力回路から出力される駆動信号COMとピエゾ素子などのアクチュエータとを接続する構成について説明する。図8は、駆動信号COMとピエゾ素子などのアクチュエータとを接続する選択部のブロック図である。この選択部は、インク滴を吐出させるべきノズルに対応したピエゾ素子などのアクチュエータを指定するための駆動パルス選択データSI&SPを保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換するレベルシフタ213と、レベルシフタの出力に応じて駆動信号COMをピエゾ素子などのアクチュエータ22に接続する選択スイッチ201によって構成されている。
【0036】
シフトレジスタ211には、駆動パルス選択データSI&SPが順次入力されると共に、クロック信号SCKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の駆動パルス選択データSI&SPがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COMが、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられるピエゾ素子などのアクチュエータは駆動パルス選択データSI&SPの接続タイミングで駆動信号COMに接続される。また、シフトレジスタ211の駆動パルス選択データSI&SPがラッチ回路212に保存された後、次の印字情報をシフトレジスタ211に入力し、インク滴の吐出タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、ピエゾ素子などのアクチュエータのグランド端である。また、この選択スイッチ201によれば、ピエゾ素子などのアクチュエータを駆動信号COMから切り離した後も、当該アクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。
【0037】
図9には、前述した駆動信号出力回路の変調回路24から平滑フィルタ26までの具体的な構成を示す。駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路24には、一般的なパルス幅変調(PWM)回路を用いた。このパルス幅変調回路24は、周知の三角波発振器32と、この三角波発振器32から出力される三角波と駆動波形信号WCOMとを比較する比較器31とで構成される。このパルス幅変調回路24によれば、図10に示すように、駆動波形信号WCOMが三角波以上であるときにHi、駆動波形信号WCOMが三角波未満であるときにLoとなる変調(PWM)信号が出力される。なお、本実施形態では、パルス変調回路にパルス幅変調回路を用いたが、これに代えてパルス密度変調(PDM)回路を用いてもよい。
【0038】
デジタル電力増幅器25は、実質的に電力を増幅するための二つのMOSFETTrP、TrNからなるハーフブリッジドライバ段33と、パルス幅変調回路24からの変調(PWM)信号に基づいて、それらのMOSFETTrP、TrNのゲート−ソース間信号GP、GNを調整するためのゲートドライブ回路34とを備えて構成され、ハーフブリッジドライバ段33は、ハイサイド側MOSFETTrPとローサイド側MOSFETTrNをプッシュプル型に組み合わせたものである。このうち、ハイサイド側MOSFETTrPのゲート−ソース間信号をGP、ローサイド側MOSFETTrNのゲート−ソース間信号をGN、ハーフブリッジドライバ段33の出力をVaとしたとき、それらが変調(PWM)信号に応じてどのように変化するかを図11に示す。なお、各MOSFETTrP、TrNのゲート−ソース間信号GP、GNの電圧値Vgsは、それらのMOSFETTrP、TrNをONするのに十分な電圧値とする。
【0039】
変調(PWM)信号がHiレベルであるとき、ハイサイド側MOSFETTrPのゲート−ソース間信号GPはHiレベルとなり、ローサイド側MOSFETTrNのゲート−ソース間信号GNはLoレベルとなるので、ハイサイド側MOSFETTrPはON状態となり、ローサイド側MOSFETTrNはOFF状態となり、その結果、ハーフブリッジドライバ段33の出力Vaは、供給電力VDDとなる。一方、変調(PWM)信号がLoレベルであるとき、ハイサイド側MOSFETTrPのゲート−ソース間信号GPはLoレベルとなり、ローサイド側MOSFETTrNのゲート−ソース間信号GNはHiレベルとなるので、ハイサイド側MOSFETTrPはOFF状態となり、ローサイド側MOSFETTrNはON状態となり、その結果、ハーフブリッジドライバ段33の出力Vaは0となる。
【0040】
このデジタル電力増幅回路25のハーフブリッジドライバ段33の出力Vaが平滑フィルタ26を介して選択スイッチ201に駆動信号COMとして供給される。平滑フィルタ26は、一つの抵抗Rと一つのコンデンサCの組み合わせからなる一次RCローパス(低域通過)フィルタで構成される。このローパスフィルタからなる平滑フィルタ26は、デジタル電力増幅回路25のハーフブリッジドライバ段33の出力Vaの高周波成分、即ち電力増幅変調(PWM)のキャリア信号成分を十分に減衰し且つ駆動信号成分COM(若しくは駆動波形成分WCOM)を減衰しないように設計される。
【0041】
前述のようにデジタル電力増幅器25のMOSFETTrP、TrNが、デジタル駆動される場合には、MOSFETがスイッチ素子として作用するため、ON状態のMOSFETに電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、電力損失は殆ど発生しない。また、OFF状態のMOSFETには電流が流れないので電力損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅器25の電力損失は極めて小さく、小型のMOSFETを使用することができ、冷却用放熱板などの冷却手段も不要である。ちなみに、トランジスタをリニア駆動するときの効率が30%程度であるのに対し、デジタル電力増幅器の効率は90%以上である。また、トランジスタの冷却用放熱板は、トランジスタ一つに対して60mm角程度の大きさが必要になるので、こうした冷却用放熱板が不要になると、実際のレイアウト面で圧倒的に有利である。
【0042】
次に、図7の駆動信号出力回路に設けられた逆フィルタ23について説明する。前述したように平滑フィルタは電力増幅変調(PWM)信号のキャリア信号成分を十分減衰し、且つ駆動信号成分COM(若しくは駆動波形成分WCOM)を減衰しないように設計されるが、アクチュエータ22には静電容量Cnがあるため駆動すべきアクチュエータ数が変化すると、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタ遮断周波数が変化する。図12aに示す一次RCローパスフィルタからなる平滑フィルタ23の伝達関数G0(s)は下記1式で表される。
【0043】
【数1】
【0044】
この平滑フィルタ23に対して、ピエゾ素子などのアクチュエータ22が接続されるたびに、図12b、cのように静電容量Cnが次々に並列に接続され、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタの遮断周波数が変化する。例えば、選択スイッチ201が閉じられるピエゾ素子などのアクチュエータ22の数をNとしたとき、駆動回路全体の伝達関数Gt(s)は下記2式で表される。
【0045】
【数2】
【0046】
接続されるアクチュエータ22の数Nが1、つまり平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタの遮断周波数が最も高くなる場合でも電力増幅変調(PWM)信号のキャリア信号成分を十分減衰でき、また接続されるアクチュエータ22の数Nが最大、つまり平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタの遮断周波数が最も低くなる場合でも、駆動信号成分COM(若しくは駆動波形成分WCOM)が減衰しないようにすれば接続されるアクチュエータ22の数が変化しても駆動信号COMに歪みは生じない。しかしそのためにはPWMキャリア周波数を非常に高く設定する、若しくは平滑フィルタを高次にして減衰特性を急峻にする必要があるが、PWM周波数を高くした場合にはデジタル電力増幅器の発熱が増加し、平滑フィルタを高次にした場合には平滑フィルタが複雑化し、ヘッド駆動装置が大型化してしまう。
【0047】
そこで、本実施形態では、前述した図7に示すように駆動波形信号発生回路70の後段に、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタで減衰される成分を強調するための逆フィルタ23を介装する。即ち、逆フィルタ23を通過した駆動波形信号WCOMは、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で減衰される成分が強調されており、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で信号成分が減衰しても、各ピエゾ素子などのアクチュエータ22には本来の駆動信号COM又は駆動パルスPCOMが印加される。この逆フィルタ23の伝達関数GIF(s)は下記3式で表され、そのブロック図は図13のように示される。なお、式中のTは時定数に相当する。
【0048】
【数3】
【0049】
具体的には、逆フィルタ23をデジタルフィルタで構成する。ピエゾ素子などの個々のアクチュエータ22の静電容量Cnは予め分かっているので、駆動信号COMに接続されるピエゾ素子などのアクチュエータ22の数が分かれば、3式中或いは図13中の時定数Tが分かる。時定数Tが分かれば、デジタルフィルタの時定数成分を変更するだけで、駆動回路の周波数特性と逆の周波数特性が得られる。図14は、駆動パルス選択データSI&SPからインク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数を求め、そのアクチュエータ数に応じて逆フィルタ23の時定数を設定する概念図である。駆動パルス選択データSI&SPは、実際に駆動信号COMの駆動パルスPCOMを選択する1サイクル(第1駆動パルスPCOM1〜第4駆動パルスPCOM4による駆動信号COM)前に読込まれる。そこで、次のサイクルの駆動パルス選択データSI(1)&SP(1)を読込んだ時点でメモリに時定数T1(1)〜T4(1)を書込み、次のサイクルの第1〜第4駆動パルスPCOM1〜PCOM4が出力される直前に時定数T1(1)〜T4(1)をデジタルフィルタからなる逆フィルタ23に出力する。このようにすれば、逆フィルタ23の周波数特性を遅滞なく且つ確実に適切なものとして、各ノズルのピエゾ素子などのアクチュエータ22に本来の駆動信号COM又は駆動パルスPCOMを印加することができる。
【0050】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、駆動波形信号発生回路70で圧電素子などのアクチュエータの駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成し、この生成された駆動波形信号WCOMをパルス幅変調回路などの変調回路24でパルス変調し、このパルス変調された変調信号をデジタル電力増幅器25で電力増幅し、この電力増幅された電力増幅変調信号を平滑フィルタ26で平滑化してアクチュエータに駆動信号として供給することとしたため、平滑フィルタ26のフィルタ特性を電力増幅変調信号成分のみ十分に平滑化できるものとすることでアクチュエータへの駆動信号の早い立ち上がり、立ち下がりを可能としながら、電力増幅効率に優れたデジタル電力増幅器25によって駆動信号を効率よく電力増幅できるので、冷却用放熱板などの冷却手段が不要となる。
【0051】
また、少なくとも平滑フィルタ26及びアクチュエータ22の静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタの周波数特性と逆の周波数特性の逆フィルタ23を駆動波形信号発生回路70の後段に設けたことにより、駆動波形信号WCOM成分の中で平滑フィルタ26及びアクチュエータ22の静電容量で構成される低域通過(ローパス)フィルタで減衰される成分を強調することができ、これにより実際にアクチュエータ22に印加される駆動信号COMの歪みを抑制防止することが可能となる。
また、インク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ22数に応じて逆フィルタ23の周波数特性を設定することにより、接続されるアクチュエータ数に応じて異なる低域通過(ローパス)フィルタ減衰成分を正確に強調することができ、これにより実際にアクチュエータ22に印加される駆動信号COMの歪みをより一層抑制防止することが可能となる。
【0052】
図15には、本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の駆動波形信号発生手段及び変調手段の他の実施形態を示す。図3の駆動波形信号発生回路70では、デジタル合成された駆動波形信号をD/A変換器705でアナログ変換して出力した。これに対し、図15では、メモリコントロール部41がメモリ部42からデジタル波形データを読出し、この読出されたデジタル波形データと三角波に相当する数値発生部43の数値とを比較部44で比較して変調(PWM)信号のHi、Loを決定し、それを変調(PWM)信号として出力する。この場合、変調(PWM)信号の出力までが全てデジタルで行われるので、メモリコントロール部41、メモリ部42、数値発生部43、比較部44をCPUやゲートアレイ内に組込むことができる。この場合、メモリコントロール部41、メモリ部42が本発明の駆動波形信号発生手段に相当し、数値発生部43、比較部44が変調手段を構成する。
【0053】
次に、本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の第2実施形態について説明する。前記第1実施形態で述べたように、インク滴を吐出すべきノズル数が増加すると、アクチュエータ22数に応じた静電容量が付加されるので、平滑フィルタ26を含む出力回路の周波数特性は、図16に二点鎖線で示す目標値に対して、実線のようにゲインが減少する。このような場合には、図17に示すような高域通過(ハイパス)型の逆フィルタ23が必要である。しかしながら、このような高域通過(ハイパス)型の逆フィルタ23を介して出力回路に供給される駆動パルスは、図18に二点鎖線で示す目標値に対して、実線で示すようにオーバシュートするような波形となるため、広いダイナミックレンジの電源が必要となる。
【0054】
そこで、全ノズル数の半分のアクチュエータを駆動する場合を想定し、その状態で出力回路のゲインが目標値に一致するように平滑フィルタ26を設定すると、インク滴を吐出すべきノズル数が想定駆動アクチュエータ数より減少したとき、出力回路の周波数特性は、図19に二点鎖線で示す目標値に対して、実線のようにゲインが増加する。このような場合には、図20に示すような低域通過(ローパス)型の逆フィルタ23が必要となる。そして、このような低域通過(ローパス)型の逆フィルタ23を介して出力回路に供給される駆動パルスは、図21に二点鎖線で示す目標値に対して、実線で示すようにアンダーシュート気味な波形となるので、電源のダイナミックレンジは狭くてよい。
そのため、本実施形態では、図22に示すように、前述の高域強調型のフィルタと1次の低域通過型或いは高域減衰型のフィルタとを並列に配設して逆フィルタ23を構成し、出力回路のゲインが減少する場合、即ちインク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数が所定値より多い場合には高域強調型のフィルタを、出力回路のゲインが増加する場合、即ちインク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数が所定値より少ない場合には低域通過型又は高域減衰型のフィルタを、夫々スイッチで選択して駆動パルスを出力する。
【0055】
このようにすれば、駆動波形信号成分の中で、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタで変化する成分を適切に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータに印加される駆動信号の歪みを抑制防止することが可能となる。また、インク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数に応じて逆フィルタの周波数特性を設定するようにすれば、接続されるアクチュエータ数に応じて異なる変化成分を正確に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータに印加される駆動信号の歪みをより一層抑制防止することが可能となる。
この逆フィルタにおける高域強調型のフィルタ(1次ハイパスフィルタ)の時定数Tの設定方法について説明する。この1次ハイパスフィルタの伝達関数G(s)、G(jω)、ゲインGainは以下のように求まる。
【0056】
【数4】
【0057】
この場合は、インク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数が所定値より多く、図23に実線で示すゲインの周波数特性が二点鎖線で示すように減少してしまっているので、所定の周波数f0でのゲインが所定値、この場合は0になるように1次ハイパスフィルタのゲインGainを設定し、それを解いて時定数Tが求まる。所定周波数f0は、その周波数以上の領域では駆動波形信号のパワースペクトルがないか又は殆どない(平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタは基本的にローパスフィルタなので)という狙い目の周波数を設定する。この平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの所定周波数f0でのゲインをG0、ω0=2πf0とすると、
【0058】
【数5】
となる。
【0059】
次に、この逆フィルタにおける低域通過型又は高域減衰型のフィルタ(1次ローパスフィルタ)の時定数Tの設定方法について説明する。この1次ローパスフィルタの伝達関数G(s)、G(jω)、ゲインGainは以下のように求まる。
【0060】
【数6】
【0061】
この場合は、インク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数が所定値より少なく、図24に実線で示すゲインの周波数特性が二点鎖線で示すように増加してしまっているので、所定の周波数f0でのゲインが所定値、この場合は0になるように1次ローパスフィルタのゲインGainを設定し、それを解いて時定数Tが求まる。平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの所定周波数f0でのゲインをG0、ω0=2πf0とすると、
【0062】
【数7】
となる。
【0063】
この低域通過型又は高域減衰型のフィルタについては、図25に示すような2次のローパスフィルタを用いることもできる。2次のローパスフィルタを用いれば、図26に示すように、2つの所定の周波数f1、f2のゲインを調整することが可能となる。例えば、このうちの一方の所定周波数f1を前述の1次ローパスフィルタの所定周波数f0と同じような狙い目の周波数とすると、他方の所定周波数f2には、もう一つの狙い目の周波数や、一方の所定周波数f1のゲインを調整したときにゲインが変化してしまう周波数を設定することができる。この2次ローパスフィルタの伝達関数G(s)、G(jω)、ゲインGainは以下のように求まる。
【0064】
【数8】
【0065】
この場合も、インク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータ数が所定値より少なく、図26に実線で示すゲインの周波数特性が二点鎖線で示すように増加してしまっているので、前記二つの所定周波数f1、f2でのゲインが所定値、この場合は0になるように2次ローパスフィルタのゲインGainを設定し、それを解いて時定数T1、T2が求まる。平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの所定周波数f1、f2での夫々のゲインをG1、G2、ω1=2πf1、ω2=2πf2とすると、
【0066】
【数9】
となり、この連立方程式を解いて時定数T1、T2が得られる。
【0067】
なお、前記実施形態ではラインヘッド型インクジェットプリンタを対象として本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を適用した例についてのみ詳述したが、本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、マルチパス型プリンタを始めとして、あらゆるタイプのインクジェットプリンタを対象として適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1は印刷媒体、2は第1インクジェットヘッド、3は第2インクジェットヘッド、4は第1搬送部、5は第2搬送部、6は第1搬送ベルト、7は第2搬送ベルト、8R,8Lは駆動ローラ、9R,9Lは第1従動ローラ、10R,10Lは第2従動ローラ、11R,11Lは電動モータ、22はアクチュエータ、23は逆フィルタ、24は変調回路、25はデジタル電力増幅器、26は平滑フィルタ、31は比較器、32は三角波発振器、33はハーフブリッジドライバ段、34はゲートドライブ回路、41はメモリコントロール部、42はメモリ部、43は数値発生部、44は比較部、70は駆動波形信号発生回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドに設けられた液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルに対応して設けられたアクチュエータと、前記アクチュエータに駆動信号を印加する駆動手段とを有し、
前記駆動手段は、前記アクチュエータの駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号を生成する駆動波形信号発生手段と、
前記駆動波形信号発生手段で生成された駆動波形信号をパルス変調する変調手段と、
前記変調手段でパルス変調された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅器と、
前記デジタル電力増幅器で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して前記アクチュエータに駆動信号として供給する平滑フィルタと、
前記駆動波形信号発生手段の後段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所定の周波数特性にする逆フィルタと
を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
【請求項2】
前記アクチュエータの数に応じて前記逆フィルタの周波数特性を設定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
【請求項3】
前記アクチュエータの数が所定値より多い場合には高域強調型のフィルタを用い、前記アクチュエータの数が所定値より少ない場合には低域通過型又は高域減衰型のフィルタを用いることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至3の何れか一項のヘッド駆動装置を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項1】
インクジェットヘッドに設けられた液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルに対応して設けられたアクチュエータと、前記アクチュエータに駆動信号を印加する駆動手段とを有し、
前記駆動手段は、前記アクチュエータの駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号を生成する駆動波形信号発生手段と、
前記駆動波形信号発生手段で生成された駆動波形信号をパルス変調する変調手段と、
前記変調手段でパルス変調された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅器と、
前記デジタル電力増幅器で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して前記アクチュエータに駆動信号として供給する平滑フィルタと、
前記駆動波形信号発生手段の後段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所定の周波数特性にする逆フィルタと
を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
【請求項2】
前記アクチュエータの数に応じて前記逆フィルタの周波数特性を設定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
【請求項3】
前記アクチュエータの数が所定値より多い場合には高域強調型のフィルタを用い、前記アクチュエータの数が所定値より少ない場合には低域通過型又は高域減衰型のフィルタを用いることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至3の何れか一項のヘッド駆動装置を備えるインクジェットプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−11782(P2012−11782A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177064(P2011−177064)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2007−554924(P2007−554924)の分割
【原出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2007−554924(P2007−554924)の分割
【原出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]