説明

インクジェットプリンタ用インクとそれを用いたインクジェット記録方法

【課題】本発明の目的は低い濡れ張力を有するポリエチレンやポリプロピレン等ポリオレフィン系素材の記録媒体対して記録面に着弾した後のインク濡れ性に優れ、ベタ部分がハジキやムラのない均一な塗布状態となり、且つ細線部分、パターンのエッジ部分においてドット形状が無く滑らかで更に滲みのない高品質の画像を短時間で得るができる光硬化型インクジェット用インク組成物とこれを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【解決手段】一般式[I]で示される構造式からなるフッ素を含む(メタ)アクリレートであり、該重合性化合物を3〜12%含有してなることを特徴とするインクジェットプリンタ用インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、200〜500nmの波長域の光の照射により、重合反応を起こし硬化する光硬化型のインクジェットプリンタ用インク (以下、単にインクという)に関し、特にポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン素材の表面張力が低い記録媒体に対して印字を行っても均一でハジキやムラのない画像を得ることが可能なインクとそれを用いて均一でハジキやムラのない画像を得るためのインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ記録装置による印刷は、ノズルよりインクを吐出し、記録媒体に付着せしめる方式であり、該ノズルと記録媒体が非接触状態にあるため、曲面や凹凸のある不規則な形状を有する表面に対しても、良好な印刷を行うことが出来る。このため、産業用途で広範囲にわたる利用分野が期待されている印刷方式である。

【0003】
近年、樹脂、金属、ガラス等の非吸収材料へのインクジェットプリンタ記録において乾燥速度、印刷画像の付着性、耐摩耗性、耐水性、耐光性などの要求から、主溶剤として水を用いる水性インクまたは、主溶剤として揮発性の有機溶剤を用いる溶剤性インクの代替として、着色剤に顔料を使用し、ビヒクル成分として重合性モノマーや重合性オリゴマー等の重合性化合物の混合物を使用し、また重合開始剤として光開始剤を配合した、可視光線および紫外線などの光線で硬化、乾燥する光硬化型インクが提案されている。
【0004】
インクジェットプリンタによるインク像形成は、記録ヘッドから吐出したインク滴のドットで行うため、表面エネルギーが低い材質上では、上記ドットは表面張力のためにまとまる性質がある。更に、光硬化型インクの構成成分である重合性モノマーならびに重合性オリゴマーは概してその表面張力が30mN/m以上あるため、重合性モノマー、重合性オリゴマーよりも低い25mN/m以下の表面張力を示すポリエチレンやポリプロピレン等ポリオレフィン素材が記録媒体である場合、インク着弾後のインクの記録媒体への濡れ性が不十分になり、記録媒体上で、複数のドットが集合して大きなドットとなってしまう。この結果、ドットを形すべき位置から変位した位置にドットが形成されたり、ドットの集合体で形成されるインク像が変形する、ハジキやムラの現象が生じる。ハジキやムラの発生により、ベタ部分が均一で細線部が鮮明な高品質の画像を得ることができない。
【0005】
そこで、従来はこれらのフィルムにはコロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理を行い、インク濡れ性向上が図られている。しかしながら、上記の組成を持つインクではベタ部分の均一な塗布状態や、細線部の再現性は十分なものが得られていない。また、記録媒体上で、複数のドットが集合して大きなドットとなることを避けるために、ドット同士が接触しないようにインク着弾の解像度を粗くする、またはインク液滴の液滴量を小さくする手段が講じられている。この場合、所定の濃度またはインク密度の画像を得るため、インク着弾後の光照射を行ってから、ドット着弾位置を微妙にずらし、再度重ね印字を行わなければいけない。こうした方法をとる場合、目的とする画像を得るまで数分から数十分の長い時間を要し、生産性が劣るため連続且つ高速度で生産するインラインの使用が求められる工業用途には適さない。さらに、上記の方法のより印字された画像では細線部やパターンのエッジ部分ではドット形状が残りやすく、滑らかな線の表現ができない欠点もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低い濡れ張力を有するポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系素材の記録媒体対して記録面に着弾した後のインク濡れ性に優れ、ベタ部分がハジキやムラのない均一な塗布状態となり、且つ細線部分およびパターンのエッジ部分においてドット形状が無く滑らかで更に滲みのない高品質の画像を短時間で得ることができる光硬化型のインクジェット用インクとこれを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0008】
1.顔料、重合性化合物の混合物、光重合開始剤、で構成される光硬化型のインクジェットプリンタ用インクであって、重合性化合物の混合物の一成分として一般式[I]で示される構造式からなる重合性化合物を3〜12%含有してなることを特徴とする光硬化型インクジェットプリンタ用インク。

【0009】
2. 前項記載のインクジェットプリンタ用インクをドロップオンデマンド方式のインクジェットヘッドにより記録媒体へ噴射し、次いで光照射により着弾した該インク組成物を重合、硬化させるインクジェット記録方法において、記録媒体がインクジェットヘッドの下を一回通過する毎に噴射されるインク液滴の着弾のピッチは125μm以下であり、且つインク組成物の液滴量は6〜50plであることを特徴とするインクジェット記録方法。
【0010】
3. 前々項記載のインクジェットプリンタ用インクをドロップオンデマンド方式のインクジェットヘッドにより、記録媒体へ噴射し、次いで光照射により着弾した該インク組成物を重合、硬化させるインクジェット記録方法において、前項記載のインクジェット記録方法により前々項記載インクを記録媒体に着弾させてから3〜15秒後に光照射を行い該インクを重合、硬化させること特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、低い濡れ張力を有するポリエチレンやポリプロピレン等ポリオレフィン系素材の記録媒体対して記録面に着弾した後のインク濡れ性に優れ、ベタ部分がハジキやムラのない均一な塗布状態となり、且つ細線部分、パターンのエッジ部分においてドット形状が無く滑らかで更に滲みのない高品質の画像を短時間で得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明の光硬化型インクジェットプリンタ用インク組成物について説明する。
【0013】
本発明のフッ素を含む(メタ)アクリレートは一般式[I]で示される構造式で示される重合性化合物である。

【0014】
式中においてR1は水素原子またはメチル基であり、nはメチレン基の繰り返し数で1以上4以下である。nが5以上の場合、反応性が低下し好ましくない。mはフッ化メチレン基の繰り返し数であり2以上10以下が望ましい。mが1の場合、化合物の沸点は低くなりノズルからの吐出安定性を低下させるため好ましくない。また10以上の場合、アクリレートの表面張力の低下により他の重合性化合物への相溶性が低下するため、ノズルからの吐出安定性を低下させる傾向があるため好ましくない。Xはフッ素原子または水素原子である。上記の条件を満たす化合物では例えば、1H、1H、5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H、1H、5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート、パーフロロオクチルエチルアクリレート、パーフロロオクチルエチルメタアクリレート等の市販品を用いることができる。
【0015】
前項記載の該重合性化合物は該重合性化合物の混合物中に3〜12重量%で含有され、更に好ましくは5〜10重量%で含有される。該重合性化合物の混合により、低い表面張力の記録媒体においても、該重合性化合物の表面張力の効果により、インクは記録媒体表面に濡れ、且つインクドット間でのレベリングが働き、ベタ部分にハジキやムラがなく均一な塗布状態となり、細線部やパターンのエッジ部分においても、ドット形状が残らずエッジ部分が滑らかな再現性の良い画像を得ることができる。3重量%より低い含有量では添加の効果は低く、12%より高い含有量ではインクの表面張力の低下とレベリングの速度が極端に上昇し、ノズルからの吐出安定性が低下し、印字部分のエッジの滲みが速くなり、細線部の再現性が低下する、インクの密着強度が低下する等、好ましい結果は得られない。
【0016】
顔料は、カラー画像形成を行う上で、従来インクジェットに使用されている着色剤を使用することが出来る。例えば、アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、アンスラキノン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、チオインジゴ顔料、ジオキサジン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などの有機顔料、酸化チタン、酸化鉄系及びカーボンブラック系などの無機顔料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これら顔料はインク総量の1〜20質量%の範囲で用いることが好ましい。

【0017】
重合性化合物には、その反応機構によりラジカル重合型とカチオン重合型がある。硬化乾燥速度の速いインクを得るためには、重合性化合物としてラジカル重合型材料である(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。

【0018】
本発明に使用できる単官能(メタ)アクリレートとして例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチルなどの置換基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。

【0019】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては例えば、1.3−ブチレングリコール、1.4−ブタンジオール、1.5−ペンタンジオール、3−メチル−1.5−ペンタンジオール、1.6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1.8−オクタンジオール、1.9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレートなどが挙げられる。

【0020】
また、本発明のインク組成物に優れた硬化性を付与するため、多官能(メタ)アクリレートとして、上記の例の他、末端に(メタ)アクリレート基を持ち、骨格構造中に特定の構造を繰り返し単位として1以上有していて、分子量500〜50000の範囲の比較的高い分子量を持つアクリレートオリゴマーを含むことができる。アクリレートオリゴマーの例として、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、等があげられる。
【0021】
これら(メタ)アクリレートオリゴマーは、本発明のインクジェットインク組成物の粘度、硬化性の点から、紫外線硬化性化合物の総量に対して、3〜10%の範囲で用いることが好ましい。

【0022】
本発明に使用する光重合開始剤は、用いる紫外線硬化性化合物を硬化できる公知慣用のものがいずれも使用できるが、特に好適に使用することができる開始剤として、分子開裂型または水素引き抜き型の光重合開始剤がある。

【0023】
本発明に使用する光重合開始剤として、ベンゾインイソブチルエーテル、2.4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2.4.6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2.4.4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2.4.6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが好適に用いられ、さらにこれら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどを併用しても良いし、更に水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィドなども併用できる。

【0024】
また上記光重合開始剤に対し、増感剤として例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N.N−ジメチルベンジルアミンおよび4.4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの、前述重合性成分と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光重合開始剤や増感剤は、紫外線硬化性化合物あるいはこれらよりなる組成物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。

【0025】
光重合開始剤と増感剤は紫外線硬化性化合物総量に対して0.1〜20重量%、好ましくは、5〜15重量%の範囲で用いる。操作では、インクは、インクジェットプリンタから射出され、そしてプリントヘッドから印刷されるべき基体への着弾後選択された照射に曝される。一般にいって、発射する距離即ちプリントヘッドから基体への距離が短ければ短いほど、印刷の品質は良くなる。しかし、好ましい発射距離は、0.5〜3.0mmの範囲である。硬化は、好ましくは、200〜500nmの周波数範囲の光を照射して行われる。

【0026】
本発明のインクには、粘度の調整を目的として有機溶剤を用いることもできる。有機溶剤としては、本発明にある吐出安定性、被記録材料面に着弾した際の優れたインク濡れ性(はじき防止)を低下させないものを選択しなければならない。有機溶剤としては、ケトン、エステル、エーテル、アルコール、脂肪族及び芳香族炭化水素系などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらの有機溶剤は単独、2種類以上の併用も可能である。

【0027】
有機溶剤はインク総量の20質量%まで用いることができるが、もちろん無溶剤でも使用可能である。寧ろ、硬化被膜や硬化速度の観点からは、希釈用有機溶剤を実質的に含まない方が好ましい。

【0028】
次に、本発明のインクジェット記録方法について以下説明する。
【0029】
請求項2に係るインクジェット記録方法においては、記録媒体がインクジェットヘッドの下を一回通過する度に噴射されるインク液滴の着弾のピッチは125μm以下であり更に好ましくは100μm以下であることが特徴である。またインク噴射時に噴射されるインクの液滴量は6〜50plであり、更に好ましくは14〜40plであることが特徴である。6〜50plの液滴量を持つインクを125μm以下の着弾ピッチで着弾させることにより、ドット同士が十分に重なり、請求項1記載のインクの効果によりドット間が速やかに所定時間内にレベリングを起こすことにより、印字のベタ部分が均一な塗膜を形成することができる。また細線部においも、エッジ部分にドット形状残ったような状態にならず、滑らかなエッジとすることができる。液滴量は25〜50plの範囲であっても、着弾のピッチが125μmより大きい場合、ドット間のレベリングと均一化が十分に進まず、ムラのある画像になってしまう。また、着弾のピッチが125μmより小さい場合でも液滴量が25plより少ない場合、ドット間のレベリングと均一化が十分に進まず、ムラのある画像になってしまう。更に着弾のピッチが125μmより小さく、且つ液滴量が50plより多い場合では、液滴量が多すぎるため、画像のエッジ部分が滲み易くなり、また細線部の太りが著しくなるため好ましくない。
【0030】
所定の着弾のピッチを得るためにには、インクが吐出されるノズルの間隔を125μm以下にして加工された、インクジェットヘッドを使用してもよく。125μm以上の間隔で加工されたインクジェットヘッドを複数個組み合わせて一つのユニットとし、このユニットのノズルの間隔が125μm以下となるように組み合わせたものを使用してもよい。
【0031】
請求項3に係るインクジェット記録方法においては、請求項1記載の該インクを該記録媒体に着弾させてから3〜15秒後に光照射を行いインクを重合、硬化させることが特徴である。前項記載の記録方法により記録媒体に着弾した請求項1記載の該インクのインク液滴は着弾から光照射までの時間間隔を3〜15秒とした場合、ドット間のレベリングと均一化によりベタ部分は均一な膜となり、細線部はドット形状を残さず、滑らかなエッジとするとことができる。該インク液滴は着弾から光照射までの時間間隔が3秒未満の場合、ドット間のレベリングは十分に進行せず、ベタ部分はムラになり易く、パターンのエッジ部分や細線部ではドット形状が残ってしまう。また、該インク液滴は着弾から光照射までの時間間隔が15秒より大きい場合、ベタ部分の均一化が進むが、パターンのエッジ部分や細線部では滲みが生じ易くなる傾向になる。
【0032】
インクとそれを用いた記録方法により画像が形成される記録媒体には、吸収性及び非吸収性の両者の広い範囲の媒体に印刷するために使用でき、紙、ガラス、樹脂及び金属例えば鋼、銅及びアルミニウムを含むが、特に好適には、樹脂素材の印刷に使用されて、特にもし印刷されるべき表面が例えば表面のエネルギーを上昇させるための炎、プラズマエッチング又はコロナ処理により予備処理されるならば、更に良好な品質の画像を提供する。本発明のインクがうまく印刷される樹脂素材の例は、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン、ポリアセタール、ABS及び発泡プラスティック例えば発泡ポリスチレンである。

【実施例】
【0033】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はかかる実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例中、部は質量部を表す。
【0034】
(ベースインクの作成)以下に示す配合でベースインクを作成した。顔料分散は公知の方法のより行った。数値は重量%である。

【0035】
(実施例1〜3、比較例1〜6)ベースインク第1〜4表に示した化合物とベースインクを同表に示された配合比率により配合し、1.0μフィルターにて濾過、精製し光硬化型インクジェット組成物を調整した。フッ素を含む(メタ)アクリレートとして、1H、1H、5H−オクタフルオロペンチルアクリレート(大阪有機V-8F)、パーフロロオクチルエチルアクリレート(共栄社化学FA-108)を使用した。数値は重量%である。得られたインク組成物を第1〜4表の実施例1〜3及び比較例1〜6に示した条件で未処理のポリプロピレンフィルム上に印字を行い、画像品質の比較を行った。
【0036】
硬化は、出力140w/cmで長さ85mm「Aバルブ」を有するインテグレーションテクノロジー社 UVランプによって行った。200〜500nmの領域の積算エネルギーが1000mJ/cm2となるように露光した。
【0037】
画像の品質については下記基準で評価した。ベタ部分の均一性・・・A:ハジキ、ムラが無く均一に塗布されている。C:ハジキ、ムラが現れている。エッジ・細線部の再現性・・・A:パターン部分のエッジ、1ドット幅のラインにおいてにドット形状が残っておらず、滑らかである。且つラインに太りがない。B:ベタ部分のエッジ、1ドット幅のラインにおいてドット形状が残っておらず、滑らかであるが、ラインに滲み、太りがある。C:ベタ部分のエッジ、1ドット幅のラインにおいてラインにドット形状が残っており、ハジキ、ムラが現れている。
【0038】
実施例及び比較例





【0039】
表1では、重合性化合物の混合物の一成分として、フッ素を含む(メタ)アクリレートが3〜12重量%の範囲内で含有しており、且つ着弾のピッチは125μm以下であり、且つインク組成物の液滴量は25〜50plであり、且つインク着弾後3〜15後に光照射を行いインクを重合、硬化させた実施例1〜3と、重合性化合物の混合物の一成分としてフッ素を含む(メタ)アクリレートを3重量%未満配合し、他の条件は実施例と同一とした比較例1および、重合性化合物の混合物の一成分としてフッ素を含む(メタ)アクリレートを12重量%より多く配合し他の条件は実施例と同一とした比較例2を示している。
【0040】
表2では、上記の実施例1〜3と、該インクの液滴量は6 pl未満として他の条件は実施例と同一とした比較例3と、該インクの液滴量を50plより大きくして他の条件は実施例と同一とした比較例4を示している。
【0041】
表3では、上記の実施例1〜3と、インク着弾のピッチが125μm以上である以外は他の条件は実施例と同一とした比較例5を示している。
【0042】
表4では、上記の実施例1〜3と、インク着弾後3秒未満の時間間隔で光照射を行いインクを重合、硬化させた以外は他の条件は実施例と同一とした比較例6と、インク着弾後15秒以上の時間間隔で光照射を行いインクを重合、硬化させた以外は他の条件は実施例と同一とした比較例7を示している。
【0043】
表5に示された結果によると本発明におけるフッ素を含む(メタ)アクリレートを含有し、且つ着弾のピッチは125μm以下であり、且つインク組成物の液滴量は6〜50plとして、インク着弾後、3〜15秒後に光照射を行いインクを重合、硬化させた実施例1〜3では良好な結果を得ることができたせた。
【0044】
表5に示された結果によると本発明におけるフッ素を含む(メタ)アクリレートを含有せず、他の条件は実施例と同一とした比較例1では、ベタ部分にムラやハジキが残り、細線部では細線部はドット形状が残り、部分的にはドットの集合によるムラが現れた。また、本発明におけるフッ素を含む(メタ)アクリレートを12重量%以上含有した比較例2では、ベタ部分が均一になるが、パターンのエッジや細線部ににじみが生じた。
【0045】
表5に示された結果によるとインク組成物の液滴量は6〜50plの範囲外で他の条件は実施例と同一とした比較例3では液滴量が少ないため、ベタ部分にムラやハジキが残り、また細線部では細線部はドット形状が残り、部分的にはドットの集合によるムラが現れた。また比較例4では液滴量が多いため、ベタ部分が均一になるが、パターンのエッジや細線部ににじみが生じた。
【0046】
表5に示された結果によると着弾のピッチが125μm以上である以外は他の条件は実施例と同一とした比較例5では、ドットのピッチが粗いためベタ部分にムラやハジキが残り、細線部では細線部はドット形状が残り、部分的にはドットの集合によるムラが現れた。
【0047】
表5に示された結果によるとインク着弾後、3秒未満または15秒以上の時間間隔で光照射を行いインクを重合、硬化させたこと以外は他の条件は実施例と同一とした比較例6では、照射までの間隔が短いためベタ部分にムラが残り、細線部では細線部はドット形状が現れた。また比較例7では、照射までの時間が長いため、ベタ部分が均一になるが、パターンのエッジや細線部ににじみが生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化型のインクジェットプリンタ用インクであって顔料、重合性化合物の混合物、光重合開始剤で構成され、該重合性化合物の混合物の一成分として、一般式[I]で示される構造式からなるフッ素を含む(メタ)アクリレートを3〜12重量%含有することを特徴とする光硬化型インクジェットプリンタ用インク。

(式中R1は水素原子または、メチル基である。nはメチレン基の繰返し数であり、mはフッ化メチレン基の繰り返し数である。Xはフッ素原子または水素原子である。)
【請求項2】
請求項1記載のインクジェットプリンタ用インクをドロップオンデマンド方式のインクジェットヘッドにより、記録媒体へ噴射し、次いで光照射により着弾した該インク組成物を重合、硬化させるインクジェット記録方法において、該記録媒体がインクジェットヘッドの下を一回通過する度に噴射されるインク液滴の着弾のピッチは125μm以下であり、且つインク組成物の液滴量は6〜50plであることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項3】
請求項1記載のインクジェットプリンタ用インクをドロップオンデマンド方式のインクジェットヘッドにより記録媒体へ噴射し、次いで光照射により着弾した該光硬化型インクジェットプリンタ用インク組成物を重合、硬化させ画像を形成するインクジェット記録方法において、該インクを該記録媒体に着弾させてから3〜15秒後に光照射を行いインクを重合、硬化させること特徴とする請求項2記載のインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2006−56958(P2006−56958A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239058(P2004−239058)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(594003274)株式会社アフィット (11)
【Fターム(参考)】