説明

インクジェットプリンタ

【課題】任意のサイズおよび厚さの印刷媒体に印刷可能なインクジェットプリンタを提案すること。
【解決手段】インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド8が昇降機構7によって支持され、昇降機構7が第2スライダ6によって水平方向に往復移動可能に支持され、第2スライダ6が第1スライダ5によって直交する水平方向に往復移動可能に支持されている。ヘッドメンテナンスユニット4は定位置あるいは移動可能な状態で設置されている。制御部9によって、スライダ5、6および昇降機構7を駆動することにより、インクジェットヘッド8を三次元的に位置決めできるので、任意の大きさの印刷媒体における凹凸のある任意の表面部分に印刷を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種サイズの印刷媒体における任意の位置に印刷を行うことのできるインクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタとしては、自走式のプリンタなどのように、各種サイズの印刷媒体の表面に印刷を行うことのできるものが提案されている(特許文献1、2)。これらの自走式プリンタは、手動により、あるいは無線操作によって目標とする印字位置に移動させ、そこにおいて印字を行うようになっている。
【0003】
また、定型サイズ以外の印刷媒体に印刷を行うためのインクジェットプリンタとしては、XYプロッタと同様に、インクジェットヘッドをX方向およびY方向に移動可能に支持したものが提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2003−291420号公報
【特許文献2】特開2001−301235号公報
【特許文献3】特開平7−266625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなインクジェットプリンタを用いれば、大型の印刷媒体の表面に印刷を行うことが可能である。しかしながら、これらの従来型のインクジェットプリンタは、印刷媒体が平面であることを前提としており、階段状あるいは凹凸のある表面に印刷しようとすると、ヘッドギャップが広くなり過ぎて、印刷することが不可能である。
【0005】
また、インクジェットヘッドの場合には、ノズル内に残っているインクの増粘などによって目詰まりが発生するので、このような劣化したインクを排除して目詰まりを防止するインク吸引動作、不使用中においてノズル内のインクが乾燥しないようにキャッピングを行うなど、ヘッドメンテナンスが必要である。このために、ヘッドメンテナンスユニットが取り付けられている。大きな印刷媒体に印刷を行う場合には、ヘッドメンテナンスユニットが障害となる場合が多い。
【0006】
本発明の課題は、このような問題点を解消可能なインクジェットプリンタを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のインクジェットプリンタは、
インクジェットヘッドと、
このインクジェットヘッドを支持し、当該インクジェットヘッドを第1方向に移動させるための第1移動機構と、
前記第1移動機構を支持し、当該第1移動機構を前記第1方向とは異なる第2方向に移動させるための第2移動機構と、
前記第2移動機構を支持し、当該第2移動機構を前記第1および第2方向とは異なる第3方向に移動させるための第3移動機構と、
前記インクジェットヘッドのノズル詰まりなどを解消するためのヘッドメンテナンスユニットと、
前記第1、第2および第3移動機構を駆動制御して、ホームポジションに位置しているインクジェットヘッドを印字位置に移動させる位置決め制御、前記インクジェットヘッドを駆動制御して前記印字位置に印字を行わせる印字制御、印字終了後に前記インクジェットヘッドを前記ホームポジションに戻す戻し制御、および、前記インクジェットヘッドを前記ヘッドメンテナンスユニットによるヘッドメンテナンス位置に位置決めして所定のメンテナンスを行うメンテナンス制御を行う制御部とを有し、
前記ヘッドメンテナンス位置は前記ホームポジションと同一あるいは異なる位置であることを特徴としている。
【0008】
本発明のインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドを、互いに異なる第1、2および3方向に移動させることができる。したがって、インクジェットヘッドを同一平面上だけでなく、平面に直交する方向にも移動させることができる。よって、様々なサイズの印刷媒体の表面に印刷を行うことができるだけでなく、凹凸のある表面、階段状の表面、凹部の底面部分など、任意の形状の面に印刷を行うことができる。
【0009】
次に、本発明のインクジェットプリンタは、前記メンテナンスユニットを支持し、当該ユニットを移動するユニット移動機構を有し、前記ヘッドメンテナンス位置が変更可能であることを特徴としている。印刷媒体の形状によっては、定まった位置にヘッドメンテナンスユニットが配置されていると、当該ヘッドメンテナンスユニットが印刷の障害となる可能性がある。ヘッドメンテナンスユニットを移動式としておけば、このような障害を解消できる。
【0010】
ここで、一般的には、前記第1ないし第3方向のうちの二つの方向を、同一の平面上における異なる方向とし、残りの一つの方向を前記平面に対して所定の角度の方向とすればよい。
【0011】
典型的な構成では、前記第1ないし第3方向のうちの二つの方向を、水平面上における互いに直交する方向とし、残りの一つの方向を垂直方向とすればよい。
【0012】
また、インクジェットヘッドの位置決めのための基準面を規定するために、一般的には、印刷媒体を載せるための媒体載置面が設定される。この場合には、前記第1ないし第3方向のうちの二つの方向を、前記媒体載置面と平行な平面上における互いに直交する方向とし、残りの一つの方向を前記媒体載置面に垂直な方向とすればよい。また、前記媒体載置面の側方の位置に前記ヘッドメンテナンスユニットを位置させればよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドを三次元的に移動して目標とする印刷位置に位置決め可能である。したがって、任意のサイズの印刷媒体の表面に印刷を行うことができ、また、高低差のある表面に対しても適切なヘッドギャップで印刷を行うことができる。
【0014】
さらに、ヘッドメンテナンスユニットをインクジェットヘッドの移動範囲から外れた位置に配置することにより、また、ヘッドメンテナンスユニットを移動可能にすることにより、大型サイズの印刷媒体の印刷時にヘッドメンテナンスユニットが障害となって印刷できないという弊害も発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したインクジェットプリンタの実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本例の自在移動式インクジェットプリンタを示す概略構成図である。インクジェットプリンタ1は、水平な矩形の媒体載置面2を上面に備えた媒体載置台3を備えており、この媒体載置台3の短辺方向の側方に外れた位置に、ヘッドメンテナンスユニット4が配置されている。また、媒体載置台3の短辺方向の側方に外れた位置には、当該媒体載置台3の長辺に沿って第1スライダ5が水平に配置されている。この第1スライダ5は、これとは直交する方向に水平に延びている第2スライダ6を支持しており、当該第2スライダ6を媒体載置台3の長辺方向(第3方向Y)に往復移動させるためのものである。
【0017】
第2スライダ6は媒体載置台3の上方をその短辺方向に延びており、昇降機構7を支持し、当該昇降機構7を媒体載置台3の短辺方向(第2方向X)に往復移動させるためのものである。昇降機構7はインクジェットヘッド8を支持しており、当該インクジェットヘッド8を媒体載置面2に直交する方向、すなわち、垂直方向(第1方向Z)に往復移動させるためのものである。
【0018】
スライダは、タミングベルト・プーリ、ボールスクリュー、リニアモータなどを用いて構成することができる。また、昇降機構7も同様な構成とすることができる。
【0019】
これらのスライダ5および6、昇降機構7の駆動制御はプリンタ制御部9によって行われる。プリンタ制御部9は、入力された目標位置にインクジェットヘッド8を位置決めし、入力された印刷データに基づきインクジェットヘッド8を駆動して当該印刷位置に印刷を行う。印刷終了後は、インクジェットヘッド8をヘッドメンテナンスユニット4のヘッドメンテナンス位置(ホームポジション)に戻し、そこで次の印刷まで待機する。
【0020】
印刷に用いるインクとしては、ソルベントインク、ライトソルベントインク、水性インクなど、インクジェットプリンタに用いることのできる各種のものを用いることができる。
【0021】
このように構成した本例のインクジェットプリンタ1を用いれば、各種の大きさ、および厚さの印刷媒体10の表面における任意の部位に印刷を行うことができる。例えば、名前、ロゴマーク、バーコード、その他のマーキングを施すことができる。
【0022】
また、本例のインクジェットプリンタ1を用いれば、従来においては不可能であった図2(a)に示すような周囲に所定高さの周壁11が形成されている印刷媒体12の底面13における任意の位置14に印刷を行うことができる。また、図2(b)に示すような表面15が階段状の印刷媒体16にも適切なヘッドキャップで印刷を行うことができる。
【0023】
なお、本例のインクジェトプリンタ1は媒体載置台3を備えているが、これを省略することも可能である。また、ヘッドメンテナンスユニット4が定まった位置に配置されているが、これをスライド機構などを用いて前後、左右、あるいは上下に移動可能にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用したインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】印刷媒体および印刷面の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 インクジェットプリンタ
2 媒体載置面
3 媒体載置台
4 ヘッドメンテナンスユニット
5 第1スライダ
6 第2スライダ
7 昇降機構
8 インクジェットヘッド
9 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドと、
このインクジェットヘッドを支持し、当該インクジェットヘッドを第1方向に移動させるための第1移動機構と、
前記第1移動機構を支持し、当該第1移動機構を前記第1方向とは異なる第2方向に移動させるための第2移動機構と、
前記第2移動機構を支持し、当該第2移動機構を前記第1および第2方向とは異なる第3方向に移動させるための第3移動機構と、
前記インクジェットヘッドのノズル詰まりなどを解消するためのヘッドメンテナスユニットと、
前記第1、第2および第3移動機構を駆動制御して、ホームポジションに位置しているインクジェットヘッドを印字位置に移動させる位置決め制御、前記インクジェットヘッドを駆動制御して前記印字位置に印字を行わせる印字制御、印字終了後に前記インクジェットヘッドを前記ホームポジションに戻す戻し制御、および、前記インクジェットヘッドを前記ヘッドメンテナンスユニットによるヘッドメンテナンス位置に位置決めして所定のメンテナンスを行うメンテナンス制御を行う制御部とを有し、
前記ヘッドメンテナンス位置は前記ホームポジションと同一あるいは異なる位置であることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記メンテナンスユニットを支持し、当該ユニットを移動するユニット移動機構を有し、
前記ヘッドメンテナンス位置が変更可能であることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1ないし第3方向のうちの二つの方向は、同一の平面上における異なる方向であり、残りの一つの方向は前記平面に対して所定の角度の方向であることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1ないし第3方向のうちの二つの方向は、水平面上における互いに直交する方向であり、残りの一つの方向は垂直方向であることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項1において、
印刷媒体を載せるための媒体載置面を有し、
前記第1ないし第3方向のうちの二つの方向は、前記媒体載置面と平行な平面上における互いに直交する方向であり、残りの一つの方向は前記媒体載置面に垂直な方向であることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項5において、
前記媒体載置面の側方の位置に前記ヘッドメンテナンスユニットが位置していることを特徴とするインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−315367(P2006−315367A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142568(P2005−142568)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(594106911)株式会社マスターマインド (12)
【Fターム(参考)】