説明

インクジェットプリンタ

【課題】記録ヘッド全体の構成を大型化することなく、ノズルの乾燥を安定的に抑制することができるインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】給紙部3から送給される記録用紙Pを搬送する搬送手段2と、該搬送手段で搬送される記録用紙Pに所定のギャップ領域Gを介して近接配置されたインク液滴の吐出によって記録紙Pに画像を形成するヘッドユニット1と、前記ギャップ領域Gの上流側に配設された前記ヘッドユニットでのインク液滴の乾燥を抑制する気体を当該ギャップ領域Gに供給する気体供給部6とを備え、ヘッドユニット1は搬送手段2との間に記録用紙Pの搬送方向に連続したギャップ領域Gを形成して気体供給部6から供給される気体を案内する気体案内部1bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙部から送給される記録媒体を搬送手段でヘッドユニットに搬送して、このヘッドユニットから記録媒体に対してインク液滴を吐出することによって画像を形成してから搬出するようにしたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタで高速印刷を行うには、複数のインクジェットヘッドを配列したインクジェットプリンタやライン型インクジェットプリンタが提案されている。
例えば、ライン型インクジェットプリンタでは、A3サイズ(420×297mm)の記録用紙に記録するためには、記録解像度を720dpi(dot per inch)とすれば、1色あたり297÷25.4×720=8,419ノズル必要になる。更に、記録する色が4色の場合は、8,419×4=33,676ノズル必要になる。インクジェットヘッドは、インク液滴を吐出する頻度が低いノズルからインクの溶媒(水、溶剤など)が蒸発・乾燥してノズルが詰まってしまいインク液滴が吐出されなくなる事がある。従って、大量のノズルを有するライン型インクジェットプリンタでは、インク液滴の不吐出・飛行曲がりなどによる画像欠陥を発生させないために、全てのノズルの何れか1ノズルでも詰まることの無いように維持する事が極めて重要となる。
【0003】
このため、従来、インクジェットヘッドの全てのノズルを良好な状態に維持し紙粉や粉塵などがノズル面に付着することを防止するために、複数のノズルを備えたノズルプレートを囲むように設けられたエアーダクトをノズルプレートに対して移動できるようにし、記録時及び記録待機時にはエアーダクトをノズルプレートのノズル形成面より突出させて加湿エアーを噴射するインクジェット式記録ヘッドが提案されている。(例えば、特許文献1参照)
また、記録媒体を給送する給送手段から給送された記録媒体に画像形成手段でインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、前記給送手段と前記画像形成手段の間に、蒸気を発生する蒸気発生手段を配置したインクジェット記録装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003‐165230号(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2000−255053号(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来例にあっては、少なくとも、記録時にエアーダクトをノズルの下側に突出させて加湿エアーを噴射するようにしているので、ノズル面と記録媒体との間のギャップ領域を狭くするには限界があり、ライン型インクジェットプリンタが高速で高精度に記録するために必要なギャップ寸法(例えば0.5〜2.0mm)を満足させることはできないという未解決の問題がある。しかも、上記特許文献1のエアー噴出穴領域では、加湿エアーの流速とインク液滴の吐出速度とに差が生じてインク液滴の飛行が乱れる可能性があると共に、記録ヘッド全体の構成が大型化するという未解決の課題もある。
【0005】
また、上記特許文献2に記載された従来例にあっては、記録媒体を給送する給送手段と画像形成手段の間に蒸気を発生する蒸気発生手段を配置したので、画像形成手段のノズル面と記録媒体との間のギャップ領域を狭くすることはできるが、画像形成手段を構成する複数4つの記録ヘッドが独立して配置されていることから、蒸気発生手段で発生させた蒸気は画像形成手段を囲むケース体内に拡散してしまい、ケース体内の湿度が記録ヘッドのインク吐出部の乾燥を抑制する湿度となって初めて記録ヘッドのノズル面の湿度を適正値とすることができるので、蒸気発生手段で発生させた蒸気を効果的に記録ヘッドのノズル面に供給することができないと共に、蒸気発生手段を作動状態としてから記録ヘッドのインク吐出部が適正湿度となるまでに時間がかかり、さらに多くの蒸気量が必要となり、水の消費量も多くなるという未解決の課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、記録ヘッドのノズル面の乾燥を抑制する気体の供給を効率良く行うと共に、記録ヘッドのインク吐出部を短時間で適正湿度に調整することができ、さらに使用する溶液量を減少必要最小限とすることができるインクジェットプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、給紙部から送給される記録媒体を搬送する搬送手段と、該搬送手段で搬送される記録媒体に所定のギャップ領域を介して近接配置されたインク液滴の吐出によって当該記録媒体に画像を形成するヘッドユニットと、前記ギャップ領域の上流側に配設された前記ヘッドユニットでのインク液滴の乾燥を抑制する気体を当該ギャップ領域に供給する気体供給部とを備え、前記ヘッドユニットは前記搬送手段との間に前記記録媒体の搬送方向に連続した前記ギャップ領域を形成して前記気体供給部から供給される気体を案内する気体案内部が形成されていることを特徴としている。
【0008】
この第1の発明では、前記ギャップ領域の上流側からインク液滴の乾燥を抑制する気体を当該ギャップ領域に供給することで、ヘッドユニットに形成した気体案内部で気体が案内されて記録ヘッドのインク吐出部に短時間で効率良く供給することができると共に、インク液滴の乾燥を抑制する気体を形成するための溶液の使用量を減少させることができ、ヘッドユニットでのインク液滴の乾燥を安定的に抑制できると共に、ギャップ領域におけるギャップ寸法をライン型インクジェットプリンタが高速で高精度に記録するために必要な狭いギャップ寸法に確保することができる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記気体供給部は、前記記録媒体の移動速度をU、前記ギャップ領域のギャップ長をG、空気の動粘性係数をνとしたとき、R=UG/νで表されるレイノルズ数Rを、前記気体が前記ギャップ領域に吸い込み可能な範囲の値にしたことを特徴としている。
この第2の発明では、レイノルズ数Rを前記気体が前記ギャップ領域に吸い込み可能な範囲の値にすることで、気体がヘッドユニット以外に拡散することなく効率的にヘッドユニットのインク吐出部に供給することができ、ヘッドユニットでのインク液滴の乾燥を安定的に抑制できる。
【0010】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記気体供給部は、前記ヘッドユニットのインク液滴の乾燥を抑制する溶液を蒸発させる溶液蒸発手段と、該溶液蒸発手段で蒸発された前記溶液と搬送気体とを混合して前記ギャップ領域に送給する気体送給手段とを備えていることを特徴としている。
この第3の発明では、インク液滴の乾燥を抑制する溶液を溶液蒸発手段で蒸発させ、該溶液蒸発手段で蒸発された前記溶液と搬送気体とを混合して、気体送給手段により当該ギャップ領域に送給することで、ヘッドユニットへのインク液滴の乾燥を抑制する気体の供給を安定して行うことができる。
【0011】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記溶液は、水、インク液滴に含まれる溶剤及び油の何れか1つで形成されていることを特徴としている。
この第4の発明では、前記溶液を、水、インク液滴に含まれる溶剤及び油の何れか1つで形成することで、ヘッドユニットでのインク液滴の乾燥を確実に抑制できる。
また、第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記溶液蒸発手段は、超音波振動子、発熱体及び蒸発フィルタの何れか1つを備えていることを特徴としている。
【0012】
この第5の発明では、溶液蒸発手段は、超音波振動子、発熱体及び蒸発フィルタの何れか1つを備えることで、溶液の蒸発を定量的に行うことが可能となる。
また、第6の発明は、第3乃至第5の何れか1つの発明において、前記溶液蒸発手段は、前記溶液を収容する容器と、該容器中の前記溶液の液面を計測する液面計測手段と、該液面計測手段で検出した液面計測値が設定値以下となったときに、警告を発する警告手段とを備えていることを特徴としている。
【0013】
この第6の発明では、溶液を収容する容器中の該溶液の液面が設定値以下になったときに警告を発することで、該溶液の補充を促して溶液不足によるインク液滴の乾燥を抑制する機能の低下を防止することができる。
また、第7の発明は、第1又は第2の発明において、前記気体供給部は、前記ヘッドユニットのインク液滴の乾燥を防止する水蒸気を発生させる水蒸気発生手段と、該水蒸気発生手段で発生した水蒸気と搬送気体とを混合して前記ギャップ領域に送給する気体送給手段と、該気体送給手段の混合気体の相対湿度を検出する相対湿度検出手段と、該相対湿度検出手段で検出した相対湿度がインク液滴の乾燥を抑制する所定の範囲となるように前記水蒸気発生手段の水蒸気発生量を制御する水蒸気制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0014】
この第7の発明では、水蒸気発生手段で発生した水蒸気と搬送気体との混合気体の相対湿度を相対湿度検出手段で検出して、該相対湿度検出手段で検出した相対湿度がインク液滴の乾燥を抑制する所定の範囲となるように前期水蒸気発生手段の水蒸気発生量を制御することで、インク液滴の乾燥抑制に必要な最低限の湿度に管理することができ、記録ヘッド周囲に水滴等が形成されることを防止することができる。
【0015】
また、第8の発明は、第3乃至第7の何れか1つの発明において、前記気体供給部は、前記ギャップ領域の下流側に配設された気体回収部と、該気体回収部で回収した気体を前記気体送給手段に循環させる循環路とを備えていることを特徴としている。
この第8の発明では、ギャップ領域の下流側に気体回収部を設け、該気体回収部で回収した気体を気体送給手段に循環路を通じて循環させることで、用済みの気体を回収してヘッド周囲の環境を悪化させることを確実に防止することができる。また、溶液の使用量も低減することができる。
【0016】
また、第9の発明は、第1乃至第8の何れか1つの発明において、前記搬送手段は、前記記録媒体を搬送する無端搬送ベルトで構成されていることを特徴としている。
この第9の発明では、搬送手段は、無端搬送ベルトで構成することで、記録媒体を平坦面に保って安定搬送することができる。
また、第10の発明は、第1乃至第8の何れか1つの発明において、前記搬送手段は、前記記録媒体を吸着搬送する搬送ドラムで構成されていることを特徴としている。
【0017】
この第10の発明では、搬送手段を、搬送ドラムで構成することで、搬送手段の長さを短くすることができる。
さらに、第11の発明は、第1乃至第10の何れか1つの発明において、前記搬送手段は、前記記録媒体を吸着保持する空気吸引機構を備えていることを特徴としている。
この第11の発明では、搬送手段は、空気吸引機構を備えることで、記録媒体を確実に吸着保持して安定搬送することができる。
【0018】
さらにまた、第12の発明は、第1乃至第10の何れか1つの発明において、前記搬送手段は、前記記録媒体を静電吸着する静電吸着機構を備えていることを特徴としている。
この第12の発明では、搬送手段は、静電吸着機構を備えることで、記録媒体を確実に静電吸着保持して安定搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明を適用し得るライン型インクジェットプリンタの第1の実施形態を示す平面図であり、図2は図1の側面図である。
図中、3は給紙部であって、記録媒体としての記録用紙Pを多数枚収納しており、収納された記録用紙Pを1枚ずつ給紙する給紙ローラ31と、この給紙ローラ31によって給紙された記録用紙Pに対してスキュー補正を行ってから送り出すゲートローラ32とを有し、ゲートローラ32から送り出されるスキュー補正された記録用紙Pが紙搬送ユニット2に受け渡される。
【0020】
この紙搬送ユニット2は、所定間隔を保って互い並行に配設された駆動ローラ22及び従動ローラ23と、これら駆動ローラ22及び従動ローラ23間に張設された幅広帯状の無端搬送ベルト21とで構成されている。ここで、駆動ローラ22は記録用紙Pの排出側に配設され、従動ローラ23は記録用紙Pの給紙側即ちゲートローラ32側に配設されている。また、駆動ローラ22は駆動モータ22Mによって回転駆動される。なお、無端搬送ベルト21はその張力がテンションローラ24によって調整されている。
【0021】
また、紙搬送ユニット2は、無端搬送ベルト21の従動ローラ23側近傍にあって無端搬送ベルト21の外表面に接触して配設された帯電機構27と、この帯電機構27で帯電された無端搬送ベルト21を駆動ローラ22の下側で除電する除電機構29とを備えている。この帯電機構27は、無端搬送ベルト21に高電圧を印加する高圧電源28を有し、この高圧電源28で発生させた高電圧を無端搬送ベルト21に印加し、無端搬送ベルト21を静電帯電させ、無端搬送ベルト21上に載置された記録用紙Pを無端搬送ベルト21の上面に静電吸着保持して搬送する。
【0022】
一方、紙搬送ユニット2の無端搬送ベルト21で静電吸着保持されて搬送される記録用紙Pに狭いギャップ(例えばギャップ寸法L:1mm前後)のギャップ領域Gを形成するように対向して記録用紙Pに画像を形成するヘッドユニット1が配設されている。このヘッドユニット1は、図1に示すように、無端搬送ベルト21と平行に配設された支持部材1aに、黒、シアン、マゼンタ、イエローのインク液滴を吐出する4つのライン型のヘッドユニット1K、1C、1M、1Yが記録用紙Pの搬送方向に所定間隔を保って順次保持されている。この支持部材1aの無端搬送ベルト21との対向面にギャップ領域Gを連続的に形成する無端搬送ベルト21と平行な平坦面となる気体案内部1bが形成されている。
【0023】
各ヘッドユニット1K〜1Yの夫々は、図3に示すように、インク液滴を吐出する多数のノズルを形成したインク液滴吐出面を有する例えばn=6個の分割ヘッドを記録用紙Pの搬送方向に2列に千鳥状に配列させたヘッド列を有し、各該ヘッド列の前記多数のノズルは記録用紙Pの幅方向に連接して一列のインク液滴の吐出になるように後述する制御部840で制御されている。
【0024】
また、ヘッドユニット1は、ヘッドユニット1K〜1Yの各々のインク色に対応したフレキシブルチューブで構成されるインク供給チューブ12K〜12Yを介してインクを供給するためのインクカートリッジ13K〜13Yと各々連通している。インクカートリッジ13K〜13Yには、各色のインクが貯蔵され、必要に応じてヘッドユニット1にインクを供給する。インク供給チューブ12K〜12Yは、ヘッドユニット1が後述するクリーニング部5へ移動できるように、チューブの長さには余裕が設けられている。
【0025】
そして、無端搬送ベルト21の上面に静電吸着保持されている記録用紙Pは、無端搬送ベルト21とヘッドユニット1のインク吐出面との間のギャップ領域Gを給紙側即ちゲートローラ32側から排出側即ち駆動ローラ22側へ駆動ローラ22によって一定の紙搬送速度Uで搬送され、ヘッドユニット1から画像形成に必要な各色のインク液滴が記録用紙P上に順次吐出され画像が形成される。そして、記録用紙Pは駆動ローラ22を越えた位置で記録用紙Pの腰によって無端搬送ベルト21から離間して排紙部4に収納される。
【0026】
一方、無端搬送ベルト21は、駆動ローラ22の下側で、除電機構29により除電され、帯電機構27との間で塵埃等を吸着することを防止する。
なお、ヘッドユニット1からインク液滴が適正に吐出するためには、ヘッドユニット1を構成している全てのノズルの何れか1ノズルでも詰まることの無いように維持する必要があり、そのためにクリーニング部5が紙搬送ユニット2の後方側に設けられている。ヘッドユニット1は、図には記載されていないヘッドユニット移動機構で、必要に応じて記録用紙Pに記録を行うギャップ領域Gから図1に示すクリーニング部5へ移動可能に構成されている。クリーニング部5は、ヘッドユニット1のノズル近傍に紙粉やゴミなどが付着した時、或いはヘッドのキャビティ内に気泡が発生した時などにこれらの不良状態を解消するための吸引ポンプを備えている。更にヘッドのノズル面を清掃しノズル付近のインクメニスカスを整えるためのワイパ、ノズル詰まりを解消するためにフラッシング(予備吐出)して出されたインク滴を受けるキャップ(受容部)、そして排出されたインクを蓄える廃インクタンクを備えている。
【0027】
また、ヘッドユニット1の上流側には、図2に示すように、各記録ヘッド1K〜1Yのインク液滴を吐出するノズルのインク液滴吐出面にインク液滴の乾燥を抑制する気体を供給する気体供給部6が設けられている。
この気体供給部6は、図4に拡大図示するように、例えば給紙ユニット3の上方に所定距離を保って固定配置され、上面を開放して溶液としての水Wを収容する容器64と、この容器64の底部に配設された水蒸気発生手段としての超音波振動子641と、容器64の上面に連通し、ヘッドユニット1の気体案内部1b及び搬送ベルト21間のギャップ領域Gに記録用紙Pの搬送方向における上流側から水蒸気を含む混合気体を送給する送給ダクト61と、この送給ダクト61の容器64よりギャップ領域Gとは反対側に配設された気体送給手段としてのブロア66と、このブロア66の外側に設けた塵埃の侵入を阻止するフィルタ67と、送給ダクト61のギャップ領域Gの近傍位置に配設された相対湿度hを検出する相対湿度検出手段としての湿度センサ601と、容器64の液面を計測する液面計測手段としての水位検出器63と、超音波振動子641を制御して水蒸気発生量を制御する気体供給制御部69とを少なくとも備えている。そして、送給ダクト61の容器64に対向する上面に容器64に水Wを補給する開閉蓋65が配設されている。
【0028】
ここで、水位検出器63は、容器64の内壁に沿って上下方向に延長して支持された案内軸63aに磁石を内蔵した円環状のフロート63bと、案内軸63aの上端側及び下端側に夫々配設されたフロート63bの磁石に応動する磁気感応式のリードスイッチで構成される上限水位検出部63c及び下限水位検出部63dとを備えており、上限水位検出部63c及び下限水位検出部63dで検出した上限水位検出信号及び下限水位検出信号が気体供給制御部69に出力されている。
【0029】
また、気体供給制御部69は、湿度センサ601で検出した相対湿度h、水位検出器63で検出した上限水位検出信号及び下限水位検出信号が入力され、入力された相対湿度hと予め設定した許容湿度範囲とを比較して、相対湿度が許容湿度範囲内であるときに現在の超音波振動子641に対する駆動信号を継続して出力するが、相対湿度hが許容湿度範囲より下回ったときには超音波振動子641に対する駆動信号を水蒸気発生量が増加する方向に変化させ、逆に相対湿度hが許容湿度範囲を上回ったときには超音波振動子641に対する駆動信号を水蒸気発生量が減少する方向に変化させる湿度制御処理を実行する。
【0030】
なお、許容湿度範囲としては、ヘッドユニット1を構成している全てのノズルの何れか1ノズルでもインク液滴が乾燥して詰まること無くインク液滴吐出面からインク液滴が安定して吐出されるためには、前記混合気体は送給ダクト61における吹き出し口62近傍の相対湿度を少なくとも70%〜99%の範囲に設定することが好ましい。すなわち、前記混合気体の相対湿度が70%未満の場合はインク液滴の乾燥を完全には防止できないという問題がある。また、前記混合気体の相対湿度が99%を超えると前記混合気体中の微細な水滴は凝結して送給ダクト61やインク液滴吐出面に結露・付着して、記録用紙Pに水滴が垂れることにより、記録用紙Pに吐出されるインク液滴が滲んだり、インク液滴の飛行を乱し、インク液滴を安定して吐出することができなくなるという問題がある。
【0031】
さらに、気体供給制御部69は、水位検出器63で検出した下限水位検出信号がオン状態となったときに容器64内の水Wが不足することを表す水不足警報信号を警報回路69aに出力して音及び/又は表示によって水不足を報知すると共に、容器64内に水Wを補給することによって、上限水位検出信号がオン状態となったときに容器64内の水Wが満タンとなったことを表す水満タン警報信号を警報回路69aに出力して音及び/又は表示によって満タン状態を報知する水管理処理を実行する。
【0032】
そして、気体供給制御部69から送られてくる所定の周波数の駆動信号により超音波振動子641が共振・超音波振動すると、容器64に収容されている水Wは超音波振動して微細な水滴の水蒸気となって送給ダクト61内に飛散し、送給ダクト61内で微細な水滴とブロア66から送給される搬送気体とからなる混合気体が生成される。
このとき、混合気体の相対湿度hが湿度センサ601で検出され、これが気体供給制御部69に入力されるので、気体供給制御部69は相対湿度hに基づき超音波振動子641とブロア66とを制御して、前記混合気体の相対湿度はインク液滴の乾燥を抑制・防止する適切な範囲に保たれている。
【0033】
次に、前記混合気体が拡散することなくギャップ領域Gに効率的に吸い込まれるために必要な、吹き出し口62付近における前記混合気体の適切な風量を流体力学的な考察により求める。まず、ヘッドユニット1と記録用紙Pの間のギャップに流れる空気についてレイノルズ(Reynolds)数Rを計算する。
前提条件
1)ヘッドユニット1は固定式で、ヘッドユニット1と記録用紙Pとはギャップ寸法Lを保って平行に対向している。
【0034】
2)記録用紙Pのサイズと搬送方向:A3(横297x縦420mm)サイズの記録用紙Pを縦方向に搬送する。
3)記録用紙Pの搬送速度U:200〜500mm/s
4)ヘッドユニット1と記録用紙Pとのギャップ寸法L:0.5〜2.0mm
5)混合気体の動粘性係数ν:25℃の空気の動粘性係数ν=15.4×10-6(m2/s)を代表して用いる。
レイノルズ数Rは、搬送速度をU、ギャップ領域Gのギャップ寸法をL、空気の動粘性係数をνとすれば、R=UL/νである。
【0035】
R=UL/ν …………(1)
次に、上記(1)式によりレイノルズ数Rを計算する。なお、参考のために前提条件の範囲内であるギャップ寸法Lと搬送速度Uとを用いて、レイノルズ数Rが100になる計算例を付記してある。計算例Eにはギャップ寸法が3.1mmの場合を、計算例Fには速度Uが0.77m/sの場合をそれぞれ示す。
【0036】
【表1】

【0037】
この表1から明らかなように、ヘッドユニット1と記録用紙Pとを対向させた狭いギャップ領域Gで記録用紙Pが移動する場合のレイノズル数Rは概ねR≦100である。一般に、レイノルズ数Rが100以下になると空気の粘性が増大するといわれている。即ち表1の計算例では、レイノルズ数Rは搬送速度Uとギャップ寸法Lとの乗算値から成る分子の慣性項に比較して、空気の動粘性係数νから成る分母の粘性項の依存性が大きい事を意味している。
【0038】
つまり、ヘッドユニット1の気体案内部1bと記録用紙Pとが対向する狭いギャップ領域Gに前記混合気体を記録用紙Pの給紙側から送給する場合は、前記混合気体の粘性を積極的に活用して前記混合気体を送給することができる。すなわち、前記混合気体が送給ダクト61によってギャップ領域Gの直近の上流側に送給されると、前記混合気体は給紙側から排紙側に紙搬送速度Uで移動する記録用紙Pに引きずられるように気体案内部1bと記録用紙Pとで形成されるギャップ領域Gへ送給されることになり、ヘッドユニット1の外部へ拡散することなく効率良くギャップ領域Gに供給することができる共に、ブロア66による風圧は小さくても良いことになる。このように、ブロア66による風圧を小さく抑えることができるため、前記混合気体をインク液滴の飛行を乱すことなくギャップ領域Gへ安定的に供給できる。
【0039】
一方、ヘッドユニット1を構成している全てのノズルからインク液滴を安定に吐出するためには、インク液滴の乾燥を抑制・防止するために必要且つ十分な前記混合気体をギャップ領域Gへ供給する必要がある。次に、ヘッドユニット1と記録用紙Pとのギャップ領域Gに、記録用紙Pの搬送速度Uと同じ速度で前記混合気体を送給する場合の風量を計算する。記録用紙Pの幅を約300mm(A3サイズ)、ギャップ寸法L=0.5〜2.0mm、記録用紙Pの搬送速度U=200〜500mm/s、ヘッドユニット表面の空気の速度は記録用紙Pの速度より減少するが、ここでは同じと考え最大の必要空気量を求める。
必要気体量=搬送速度U×ギャップ寸法L×記録用紙Pの幅W …………(2)
【0040】
【表2】

【0041】
この表2の計算結果から、吹き出し口62からギャップ領域Gへ供給するヘッドユニット1の各ノズルから吐出されるインク滴の飛行を妨げない気体量であって且つインク液滴の乾燥を抑制・防止に必要な必要気体量を上記(2)式に基づいて算出し、算出した必要気体量に応じてブロア66の風量を気体供給制御部69で制御すればよい。
【0042】
ここで、気体供給制御部69を動作させる制御信号は、図5に示すようにインクジェットプリンタの全体を統括制御する制御部840から出力されている。この制御部840は少なくとも気体供給制御部69の作動開始と動作停止とを指示する指令信号を気体供給制御部69に出力する。また、制御部840は気体供給制御部69に対する指令信号を出力する他にヘッドユニット1でのノズルからのインク液滴の吐出を制御するヘッドドライバ850、給紙部3の給紙ローラ31の駆動を制御する給紙ドライバ860、紙搬送ユニット2の駆動モータ22Mの駆動を制御する紙送りドライバ870、クリーニング部5の吸引ポンプモータ881を駆動制御するポンプドライバ880、クリーニング部5のワイパモータ891を駆動制御するワイパドライバ890などに対して制御信号を出力している。
【0043】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、電源が投入されると、まず、ヘッドユニット1がクリーニング部5に送られて、このクリーニング部5で、フラッシング、ポンピング、ワイピング等の所定のクリーニングが行われる。その後、ヘッドユニット1が紙搬送ユニット2上に戻され、これと同時に又はその前後に搬送ベルト21が搬送駆動されると共に、気体供給部6が作動開始され、この気体供給部6から相対湿度hが所定の範囲に制御された混合気体が送給ダクト61を通じてヘッドユニット1の気体案内部1bと紙搬送ベルト21との間のギャップ領域Gにその直近の上流側から供給される。
【0044】
この時、混合気体が送給ダクト61によってギャップ領域Gの直近の上流側まで送られ、しかも前述したようにレイノルズ数R混合気体をギャップ領域Gに吸込み可能な範囲の値に設定されているので、前記混合気体は送給ダクト61の吹き出し口62からヘッドユニット1の外側に拡散させることなく巻き込むように気体案内部1bと紙搬送ベルト21との間のギャップ領域Gへ導入される。そして、ギャップ領域Gに導入された混合気体は、ヘッドユニット1の記録ヘッド1Y〜1Kのインク吐出面を含んで無端搬送ベルト21と平行な平坦面に形成された気体案内部1bに案内されて上流側から下流側に層流状態で外部に拡散することなく流れ、記録ヘッド1Y〜1Kのインク吐出面の湿度を適正湿度に維持する。
【0045】
一方、記録用紙Pが給紙部3から給紙ローラ31によって一枚ずつ給紙され、引き続きゲートローラ32によってスキュー補正されて紙搬送ユニット2に受け渡されると、記録用紙Pは帯電機構27によって静電帯電された無端搬送ベルト21上面に静電吸着保持されて、無端搬送ベルト21と記録紙Pに画像を形成するヘッドユニット1とが対向するギャップ領域Gへ搬送される。
【0046】
記録用紙Pは、ギャップ領域Gを一定の紙搬送速度Uで搬送されながら前記ノズルからのインク液滴の吐出により画像が形成され、除電機構29によって除電された無端搬送ベルト21上面から離間されて排紙部4へ排紙される。そして、画像情報がなくなるまで上記印刷動作が繰り返される。本発明のライン型インクジェットプリンタは、少なくとも印刷プロセスの作動中、前記混合気体を吹き出し口62からギャップ領域Gへ供給し続けると共に搬送ベルト21の駆動を継続する。
【0047】
このように、気体供給部6から常時、前記混合気体をギャップ領域Gへ供給することによって、ヘッドユニット1のノズルのインク液滴吐出部でインク液滴が乾燥することを確実に抑制することができ、クリーニング部5でのクリーニング頻度を下げることができ、これにより印刷のスループットを上げることができる。このとき、ヘッドユニット1に連続的なギャップ領域を形成する気体案内部1bが形成されているので、この気体案内部1bによって混合気体が外部に拡散することなく安定して流れることにより、ヘッドユニットのノズルのインク液滴吐出部を短時間で適正湿度に維持することができる。
【0048】
そして、気体供給部6から混合気体の供給を継続することにより、容器64内の水位が減少して、フロート63bが下限水位検出部63dに近接する状態となると、フロート63b内の磁石によって下限水位検出部63dの磁気感応式リードスイッチがオン状態となって下限水位検出信号が気体供給制御部69に供給される。こため、気体供給制御部69では、警報回路69aに対して、給水を促す警報信号を出力して、この警報回路69aから給水を促す音及び/又は表示による警報が発生される。
【0049】
この警報をユーザーが認識して、気体供給部6の開閉蓋65を開けて、容器64内に水Wを補給すると、これによりフロート63bが上昇し、下限水位検出部63dのリードスイッチがオフ状態となることにより、気体供給制御部69から警報回路69aに対する警報信号を出力が停止され、警報回路69aによる警報が停止される。
この容器64への水補給の際に、水位が上限水位検出部63cに近づくと、前述したと同様にフロート63b内の磁石によって上限水位検出部63cを構成するリードスイッチがオン状態となり、上限水位検出信号が気体供給制御部69に供給されることにより、警報回路69aに満杯を表す警報信号が出力され、警報回路69aから満杯を表す音及び/又は表示による警報が発せられる。
【0050】
このため、ユーザーが容器64への水Wの補給を停止して開閉蓋65を閉めることにより、通常の気体発生状態に復帰する。
なお、上記第1の実施形態においては、紙搬送ユニット2を、無端搬送ベルト21、高圧電源28及び帯電機構27で構成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図6に示すように、幅広帯状で多数の透孔を有する無端搬送ベルトAと別の空気吸引機構Bとを用いて、駆動ローラ22及び従動ローラ間で無端搬送ベルトAの内側位置に空気を吸引する空気吸引機構Bがその空気吸引面を無端搬送ベルトAの内表面に接触するように配設され、空気吸引機構Bでその上方側の無端搬送ベルトAの透孔を通じて空気を吸引することにより、無端搬送ベルトA上に載置された記録用紙Pを無端搬送ベルトAの上面に吸着保持して搬送してもよい。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態について図7を用いて説明する。
この第2の実施形態は、上述した第1の実施形態におけるベルト式の紙搬送ユニット2に代えてドラム式の紙搬送ユニットを適用したものである。
すなわち、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態における図2の構成において、紙搬送ユニット2が搬送ベルト式構成からドラム式構成に変更したことを除いては図2と同様の構成を有し、図2との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0052】
紙搬送ユニット2は、図7に示すように、記録用紙Pを静電吸着保持して搬送する円筒状の搬送ドラム26を有し、この搬送ドラム26は、少なくとも外表面は静電気が帯電可能な材料で構成されている。
搬送ドラム26は、その下部位置で接触する第1の実施形態と同様の構成を有する帯電機構27により外表面が静電帯電され、搬送ドラム26の下側に配設した給紙ユニット3の給紙ローラ31から給紙される記録用紙Pがガイドローラ34で垂直方向に方向転換された後、搬送ローラ33を介してゲートローラ32に送られ、このゲートローラ32でスキュー補正されて搬送ドラム26の左側位置で接線方向から供給されることにより、この記録用紙Pを搬送ドラム26外表面上に静電吸着保持する。この搬送ドラム26は駆動モータ26aによって図7で時計方向に前述した第1の実施形態における搬送ベルト21の搬送速度Uと等しい周速度uで回転駆動される。
【0053】
そして、搬送ドラム26の上面側にギャップ領域Gを介して搬送ドラム26と同心円上に記録ヘッド1Y〜1Kを有するヘッドユニット1が配設されている。この、ヘッドユニット1は、搬送ドラム26の上方に配設された、搬送ドラム26の円筒面に所定長のギャップ領域Gを介して対向する搬送ドラム26と同心円状の円筒内面及び円筒外面を有する半円筒状の支持部材1aを備えており、この支持部材1aに第1の実施形態と同様にマルチヘッド構成を有する記録ヘッド1Y〜1Kが円周方向に所定間隔を保ち且つインク液滴を吐出するノズルのインク液滴吐出方向が搬送ドラム26の円筒面に対して法線方向となるように配設されている。そして、この支持部材1aの搬送ドラム26との対向面にギャップ領域Gを連続的に形成する気体案内部1bが形成されている。
【0054】
また、支持部材1aと搬送ドラム26との間のギャップ領域Gの上流側即ち記録ヘッド1Yの下側に前述した第1の実施形態と同様の構成を有する気体供給部6が配設され、この気体供給部6の送給ダクト61の先端が気体案内部1bの近傍に開口されて、記録ヘッド1Y〜1Kの乾燥を抑制する混合気体が気体案内部1bと搬送ドラム26で搬送される記録用紙Pとの間のギャップ領域Gに導入される。
【0055】
そして、搬送ドラム26は、搬送ドラム26の排紙部4側近傍にあって搬送ドラム26の外表面に接触して配設された除電機構29により除電されて、記録用紙Pは搬送ドラム26の外表面から離間されて排紙部4に排紙されて一連の印刷プロセスが終了する。
次に、上記第2の実施形態の動作を説明する。
今、記録用紙Pが給紙部3から給紙ローラ31によって一枚ずつ給紙され、ガイドローラ34によって搬送ローラ33の方向に垂直に方向転換され、引き続き搬送ローラ33を介してゲートローラ32によってスキュー補正されて、搬送ドラム26にその左側で接線方向から受け渡される。記録用紙Pは帯電機構27によって静電帯電された搬送ドラム26の円筒面に静電吸着保持されて、搬送ドラム26と記録用紙Pに画像を形成するヘッドユニット1の支持部材1aとが円弧状に対向するギャップ領域Gへ搬送される。
【0056】
記録用紙Pは、ギャップ領域Gを一定の紙搬送速度Uに相等する周速度uで時計方向に回転搬送されながら記録ヘッド1Y〜1Kのノズルからのインク液滴の吐出により画像が形成され、その後、回転ドラム26が約半周した右側位置で記録用紙Pが除電機構29によって除電された搬送ドラム26の上面から離間されて排紙部4へ排紙される。そして、この一連の印刷動作が画像情報がなくなるまで繰り返される。
【0057】
この印刷動作において、搬送ドラム2が時計方向に回転駆動されることにより、気体案内部1bの上流側に配設された気体供給部6の送給ダクト61から排出される水蒸気を含む混合気体が供給されることにより、この混合気体が搬送ドラム26とこれに対向する半円筒面状の気体案内部1bとで形成される半円筒帯状のギャップ領域Gに前述した第1の実施形態と同様に外部に拡散することなく効率良く導入され、この混合気体が記録ヘッド1Y〜1Kのインク液滴を吐出するノズルに供給されるので、これらノズルのインク液滴吐出面でのインク液滴の乾燥を確実に防止することができる。
【0058】
しかも、第2の実施形態では、ドラム式の紙搬送ユニットを適用する事によって紙搬送手段の全長を短くすることができる。
なお、上記第2の実施形態においては、回転ドラム26を帯電させることにより、記録用紙Pを静電吸着保持する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図8に示すように、搬送ドラム26を中空ドラムに形成すると共に、その記録用紙Pを保持する円筒面に多数の透孔を穿設した構成とし、この搬送ドラム26は駆動モータ26aで駆動されるドラム駆動ローラ26bによって図8で時計方向に前述した第1の実施形態における搬送ベルト21の搬送速度Uと等しい周速度uで回転駆動させ、この搬送ドラム26の内周面における上側半周部に対向して空気吸引機構71を固定配置することにより、空気吸引機構71で搬送ドラム26の透孔を介して空気を吸引することにより、記録用紙Pを吸着保持するようにしてもよい。
【0059】
次に、本発明の第3の実施形態について図9を用いて説明する。
この第3の実施形態は、前述した第1の実施形態において、気体案内部1bの下流側から気体供給部6に前記混合気体を戻す気体循環部68を設けたことを除いては前述した第1の実施形態と同様の構成を有し、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0060】
この気体循環部68は、図9に示すように筒状のダクトで構成され、一方の端部を扁平筒状の気体導入部68aに形成して、この気体導入部68aを気体案内部1bの下流側にあって無端搬送ベルト21で搬送される記録用紙Pの上面に近接して配設し、他の端部を気体供給部6におけるブロア66の前記搬送気体の取り入れ口に連通させている。気体案内部1bによって案内されてギャップ領域Gを上流側から下流側に流動した用済みの混合気体はブロア66の吸引により気体循環部68内を循環して、搬送気体として再利用される。なお、気体循環部68は、必要に応じて外気を取り入れる外気取り入れ口681がブロア66の近傍に形成されている。
【0061】
次に、上記第3の実施形態の動作を説明する。
この第3の実施形態では、前述した第1の実施形態と同様に、気体供給部6で発生される水蒸気を含む混合気体は送給ダクト61によってヘッドユニット1の気体案内部1b及び搬送ベルト21との間に形成されるギャップ領域Gに導入され、この混合気体が搬送ベルト21の搬送に伴って順次記録ヘッド1K〜1Yを巡ることにより、各記録ヘッド1K〜1Yのインク液滴を吐出するノズルのインク液滴吐出面の乾燥を確実に防止することができるものであるが、最後の記録ヘッド1Yを巡った後の混合気体はギャップ領域Gの下流側から導出されることなる。このギャップ領域Gの下流には、気体循環部68の気体導入部68aが配設されており、この気体循環部68の他端が気体供給部6のブロア66に連通しているので、この気体循環部68の内部が負圧となり、気体導入部68aから用済みの混合気体を回収して気体供給部6に戻すことができる。
【0062】
このように、第3の実施形態によれば、記録ヘッド1K〜1Yを巡ってギャップ領域G の下流側から排出される用済みの混合気体が気体導入部68aで吸引されて気体循環部68を介して気体供給部6に戻されるので、湿度の高い混合気体が外部に漏れる漏れ量を極めて少なくすることができ、外部に漏れた混合気体による水滴の発生を確実に防止することができると共に、周辺機器の防水構造を簡略化することができる。また、回収した混合気体を気体供給部6に戻して再利用することにより、水蒸気を発生させるための水Wの使用量をより抑制することができ、水Wの補給頻度を低減させることができる。
【0063】
次に、本発明の第4の実施形態について図10を用いて説明する。
この第4の実施形態は、前述した第2の実施形態において、気体案内部1bの下流側から気体供給部6に前記混合気体を戻す気体循環部68を設けたものである。
すなわち、第4の実施形態では、前述した第2の実施形態における図7の構成において、ヘッドユニット1の気体案内部1bと回転ドラム26とで形成されるギャップ領域Gの下流側即ち排紙部4の近傍から気体供給部6に前記混合気体を戻す気体循環部68設けた構成を除いては前述した第2の実施形態と同様の構成を有し、第2の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0064】
この気体循環部68は、図10に示すように筒状のダクトで構成され、一方の端部を扁平筒状の気体導入部68aに形成して、この気体導入部68aをヘッドユニット1における気体案内部1bの下流側にあって搬送ドラム26で搬送される記録用紙Pの上面に近接して配設し、他の端部を気体供給部6におけるブロア66の前記搬送気体の取り入れ口に連通させている。ヘッドユニット1の気体案内部1bによってギャップ領域Gを上流側から下流側に流動した用済みの混合気体はブロア66の吸引により気体循環部68内を循環して、搬送気体として再利用される。なお、気体循環部68は、必要に応じて外気を取り入れる外気取り入れ口681がブロア66の近傍に形成されている。
【0065】
この第4の実施形態によると、支持部材1a及び搬送ドラム26で形成されギャップ領域Gの上流側から気体供給部6の送給ダクト61によって供給される混合気体が気体案内部1bと搬送ドラム26との間のギャップ領域Gに導入されて、記録ヘッド1Y〜1Kのインク液滴を吐出するノズルのインク液滴吐出面を巡って、ノズルのインク液滴吐出面の乾燥を抑制し、用済みの混合気体がギャップ領域Gの下流側から排出されると、この下流側に配設された気体導入部68aで吸引されて気体循環部68を介して気体供給部6に戻される。
【0066】
したがって、この第4の実施形態においても、前述した第3の実施形態と同様に、用済みの混合気体を回収して気体供給部6に戻すので、湿度の高い混合気体が外部に漏れる漏れ量を極めて少なくすることができ、外部に漏れた混合気体による水滴の発生を確実に防止することができると共に、周辺機器の防水構造を簡略化することができる。また、回収した混合気体を気体供給部6に戻して再利用することにより、水蒸気を発生させるための水Wの使用量を抑制することができ、水Wの補給頻度を低減させることができる。
【0067】
なお、上記第1〜第4の実施形態においては、ヘッドユニット1をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の記録ヘッドで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、インク色及び配列順序、ならびにヘッドユニットの配設数は任意に設定することができる。
また、上記第1〜第4の実施形態においては、水蒸気発生手段として超音波振動子641を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、抵抗体に電流を流しジュール熱を発生させる電熱ヒータ又はリッツ線を巻いたコイルと導電性の発熱体からなる誘導式加熱器などの発熱体を用いて構成し、気体供給部69から送られてくる発熱体駆動信号により前記発熱体を発熱させ、水Wを水蒸気にして送給ダクト61内に飛散させてもよい。
【0068】
さらには、図11に示すように、超音波振動子641を省略し、これに代えて容器64内の水Wを毛細管現象で吸い上げて蒸発させる蒸発フィルタ642を適用し、この蒸発フィルタ642を容器64の上部の送給ダクト61にブロア66に対向させて配設するようにしてもよい。この場合は、ブロア66の風量を調節することにより、送給ダクト61の出口近傍の湿度を許容範囲内に制御すればよい。このように蒸発フィルタ642を用いることにより安価な水蒸気発生手段が構成できる。
【0069】
なおさらに、上記第1〜第4の実施形態においては、記録ヘッドのノズルのインク液滴吐出面の乾燥を抑制する気体として水蒸気を含む混合気体を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、インク液滴と親和性がありインク液滴の乾燥を抑制することができるインク液滴に含まれる溶剤や油を乾燥抑制用溶液として適用し、この溶液を超音波振動子641により超音波振動させて微細な液滴にして前記搬送気体中に飛散させ、該液滴と前記搬送気体とから成る混合気体を生成するようにしてもよい。
【0070】
また、上記第1〜第4の実施形態においては、搬送ベルト21の搬送速度又は搬送ドラム26の周速度によって形成される搬送気流を利用してギャップ領域Gにインク吐出面の乾燥を抑制する気体を導入する場合について説明したが、記録情報が入力されていないときに、節電や騒音の発生を抑制するため、搬送ベルト21又は搬送ドラム26を停止させる場合には、ギャップ領域Gへの前記混合気体の導入量が減少するので、気体供給制御部69によってブロア66の風量を上げて前記混合気体を積極的にギャップ領域Gに送給して、各記録ヘッド1Y〜1Kにおけるインク液滴を吐出するノズルのインク液滴吐出面の乾燥を抑制することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す概略平面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1におけるヘッドユニットを示す拡大底面図である。
【図4】気体供給部の概略構造を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の制御部の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における紙搬送ユニットの変形例を示す側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す概略側面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態における紙搬送ユニットの変形例を示す側面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態を示す概略側面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態を示す概略側面図である。
【図11】気体供給部の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1:ヘッドユニット、1K:黒ヘッドユニット、1M:マゼンタヘッドユニット、1C:シアンヘッドユニット、1Y:イエローヘッドユニット、12:インク供給チューブ、13:インクカートリッジ、13K:黒インクカートリッジ、13M:マゼンタインクカートリッジ、13C:シアンインクカートリッジ、13Y:イエローインクカートリッジ、2:紙搬送ユニット、21:無端搬送ベルト、22:駆動ローラ、23:従動ローラ、24:テンションローラ、25:バックアップローラ、26:搬送ドラム、27:静電吸着機構、28:高圧電源、29:除電機構、3:給紙部、31:給紙ローラ、32:ゲートローラ、33:搬送ローラ、34:ガイドローラ、4:排紙部、6:気体供給部、601:湿度センサ、61:送給ダクト、62:吹き出し口、63:水位検出器、63a:案内軸、63b:フロート、63c:上限水位検出器、63d:下限水位検出器、64:容器、641:超音波振動子、642:蒸発フィルタ、65:開閉蓋、66:ブロア、67:フィルタ、68:気体循環部、69:気体供給制御部、P:記録用紙、W:水、G:ギャップ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙部から送給される記録媒体を搬送する搬送手段と、該搬送手段で搬送される記録媒体に所定のギャップ領域を介して近接配置されたインク液滴の吐出によって当該記録媒体に画像を形成するヘッドユニットと、前記ギャップ領域の上流側に配設された前記ヘッドユニットでのインク液滴の乾燥を抑制する気体を当該ギャップ領域に供給する気体供給部とを備え、前記ヘッドユニットは前記搬送手段との間に前記記録媒体の搬送方向に連続した前記ギャップ領域を形成して前記気体供給部から供給される気体を案内する気体案内部が形成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記気体供給部は、前記記録媒体の搬送速度をU、前記ギャップ領域のギャップ長をG、空気の動粘性係数をνとしたとき、R=UG/νで表されるレイノルズ数Rを、前記気体が前記ギャップ領域に吸込み可能な範囲の値に設定したことを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記気体供給部は、前記ヘッドユニットのインク液滴の乾燥を抑制する溶液を蒸発させる溶液蒸発手段と、該溶液蒸発手段で蒸発された前記溶液と搬送気体とを混合して前記ギャップ領域に送給する気体送給手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記溶液は、水、インク液滴に含まれる溶剤及び油の何れか1つで形成されていることを特徴とする請求項3記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記溶液蒸発手段は、超音波振動子、発熱体及び蒸発フィルタの何れか1つを備えていることを特徴とする請求項3または4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記溶液蒸発手段は、前記溶液を収容する容器と、該容器中の前記溶液の液面を計測する液面計測手段と、該液面計測手段で検出した液面計測値が設定値以下となったときに、警告を発する警告手段とを備えていることを特徴とする請求項3乃至5の何れか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記気体供給部は、前記ヘッドユニットのインク液滴の乾燥を防止する水蒸気を発生させる水蒸気発生手段と、該水蒸気発生手段で発生した水蒸気と搬送気体とを混合して前記ギャップ領域に送給する気体送給手段と、該気体供給手段の混合気体の相対湿度を検出する相対湿度検出手段と、該相対湿度検出手段で検出した相対湿度がインク液滴の乾燥を抑制する所定の範囲となるように前記水蒸気発生手段の水蒸気発生量を制御する水蒸気制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記気体供給部は、前記ギャップ領域の下流側に配設された気体回収部と、該気体回収部で回収した気体を前記気体送給手段に循環させる循環路とを備えていることを特徴とする請求項3乃至7の何れか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記搬送手段は、前記記録媒体を搬送する無端搬送ベルトで構成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記搬送手段は、前記記録媒体を吸着搬送する搬送ドラムで構成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記搬送手段は、前記記録媒体を吸着保持する空気吸引機構を備えていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記搬送手段は、前記記録媒体を静電吸着する静電吸着機構を備えていることを特徴と
する請求項1乃至10の何れか1つに記載のインクジェットプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−44021(P2006−44021A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227558(P2004−227558)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】