説明

インクジェットプリンタ

【課題】搬送経路に設けられるプラテンと、プラテン上を搬送される記録紙に対してインクを吐出して画像を印刷するインクヘッドと、プラテンに対して記録紙搬送方向の上流側及び下流側に設けられる上流側及び下流側搬送ローラ対とを備えたインクジェットプリンタにおいて、印刷時におけるプリントヘッドと記録紙との距離を常に設定値に維持するとともに、筋ムラの原因となる共振振動の発生を防止することで、記録紙の印刷品質を向上させる。
【解決手段】プラテンを支持するためのプラテン支持部150と各搬送ローラ対を支持するためのローラ支持部151とヘッド駆動機構を支持するためのヘッド駆動機構支持部152とを有するフレーム部材100を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙の搬送経路に設けられ、該記録紙を支持するプラテンと、該プラテンに対向して配設され、該プラテン上を搬送される記録紙に対して該記録紙搬送方向に直行する主走査方向に往復移動しながらインクを吐出して画像を印刷するプリントヘッドとを備えたインクジェットプリンタに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のインクジェットプリンタは、プラテンを挟んでその記録紙搬送方向上流側及び下流側にそれぞれ設けられる第1及び第2搬送ローラ対と、プリントヘッドを支持して主走査方向に往復駆動するヘッド駆動機構とを備えており、ヘッド駆動機構は、インクヘッドと共に移動するキャリッジと、キャリッジを主走査方向に往復移動可能に案内支持するガイドシャフトとで構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述のようなインクジェットプリンタとしては、装置本体を構成するシャーシにプラテン及び両搬送ローラ対を取付固定し、該プラテン上に取付固定した板金製の支持部材によりガイドシャフト(ヘッド駆動機構)の両端を支持するようにしたものがある。
【特許文献1】特開2005−169849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した、プリントヘッドより記録紙にインクを吐出して画像を印刷するインクジェットプリンタでは、記録紙の印刷品質(印刷画像の画像品質)を向上させるために、印刷時における記録紙とプリントヘッドとの距離を予め設定した設定値にする必要がある。そのためには、プラテンとプリントヘッドとの相対位置(特に高さ方向の相対位置)は勿論のこと、これらと、記録紙搬送用の搬送ローラ対との相対位置を、常に、設定位置に維持する必要がある。
【0005】
しかし、上述のプラテン上に支持部材を取付固定するようにしたインクジェットプリンタでは、プリンタ組立時やメンテナンス時における支持部材の組付け誤差により、前記各部材(プラテン、プリントヘッド、及び搬送ローラ対)の相対位置が、設定位置に対してずれてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、プラテン、プリントヘッド、及び搬送ローラ対の各部材の相対位置関係を調整する調整機構(例えばネジ機構等)を設けることが考えられる。
【0007】
しかしながら、プラテン上に支持部材を取付けたインクジェットプリンタでは、調整機構を設けて前記各部材間の相対位置を調整したとしても、プリンタを使用していくうちに、印刷時におけるプリントヘッドの往復移動に伴う慣性力によって、支持部材とプラテンとの取付け部にガタや変形が生じて、該相対位置が初期設定位置から変化してまうという問題がある。また、支持部材により支持されたヘッド駆動機構を含むヘッド駆動系と、搬送ローラ対やプラテンを含む記録紙搬送系とがそれぞれ、別々の異なる固有振動数(振動モード)を有するため、印刷時に共振振動が発生し易くなり、この結果、記録紙の印刷画像にその搬送方向に延びる筋ムラが発生するという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送経路に設けられるプラテンと、プラテン上を搬送される記録紙に対してインクを吐出して画像を印刷するインクヘッドと、プラテンに対して記録紙搬送方向の上流側及び下流側に設けられる第1及び第2搬送ローラ対とを備えたインクジェットプリンタに対して、その構成に工夫を凝らすことで、印刷時におけるプリントヘッドと記録紙との距離を常に設定値に維持するとともに、筋状ムラの原因となる共振振動の発生を防止することで、記録紙の印刷品質を向上させようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、この発明では、プラテンに対向して配設されるプリントヘッドと、該プリントヘッドを駆動支持するヘッド駆動機構と、プラテンに対して記録紙搬送方向の上流側及び下流側に設けられる記録紙搬送用の第1及び第2搬送ローラ対とを備えたインクジェットプリンタにおいて、プラテンを支持するためのプラテン支持部と各搬送ローラ対を支持するためのローラ支持部とヘッド駆動機構を支持するためのヘッド駆動機構支持部とを有するフレーム部材を設けるようにした。
【0010】
具体的には、請求項1の発明では、記録紙の搬送経路に設けられ、該記録紙を支持するプラテンと、該プラテンに対向して配設され、該プラテン上を搬送される記録紙に対して該記録紙搬送方向に直行する主走査方向に往復移動しながらインクを吐出して画像を印刷するプリントヘッドと、該プリントヘッドを、該主走査方向に往復移動可能に支持して駆動するヘッド駆動機構と、前記プラテンを挟んで前記記録紙搬送方向上流側と下流側とにそれぞれ設けられる、記録紙搬送用の第1搬送ローラ対及び第2搬送ローラ対と、を備えたインクジェットプリンタを対象とする。
【0011】
そして、前記プラテンを支持するためのプラテン支持部と前記各搬送ローラ対を支持するためのローラ支持部と前記ヘッド駆動機構を支持するためのヘッド駆動機構支持部とを有するフレーム部材を備えているものとする。
【0012】
この構成によれば、フレーム部材のプラテン支持部にプラテンを取付け、ローラ支持部に前記各搬送ローラ対を取付け、前記ヘッド駆動機構支持部にヘッド駆動機構を取付ることで、プラテンと各搬送ローラ対とを含む記録紙搬送系と、ヘッド駆動機構と該ヘッド駆動機構により支持されるヘッドとを含むヘッド駆動系とを、該フレーム部材を介して一体化(ユニット化)することができる。
【0013】
したがって、固有振動数が互いに異なる記録紙搬送系及びヘッド駆動系の2つの系を一まとめにして、装置全体が有する共振モードの数を減らすことができ、これによって、共振振動を回避するための振動設計が容易になり、延いては、共振振動に起因する印刷画像の筋ムラの発生を確実に防止することができる。
【0014】
また、プラテン支持部とヘッド駆動機構支持部とローラ支持部とをそれぞれ別部材に設けるようにした場合には、プリンタを使用するうちに、各部材の取付部にガタや変形が生じて各部材同士の相対位置が変化することとなるが、本発明では、該各支持部を一つのフレーム部材に設けるようにしたことで、この経時位置変化を確実に抑制することができる。したがって、印刷時におけるプリントヘッドと記録紙との距離を、プリンタの使用期間に拘わらず、常に一定(設定値)に維持することができて、記録紙の印刷品質を向上させることができる。
【0015】
またさらに、プリンタの組立やメンテナンスに際しては、前記プラテンと各搬送ローラ対とヘッド駆動機構とを、フレーム部材に取り付けてユニット化した状態で、プリンタ本体部の筐体フレーム等に組み付けることができるため、組立性やメンテナンス性を損なうこともない。
【0016】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記第1及び第2搬送ローラ対を駆動する駆動アクチュエータを備え、前記フレーム部材は、前記駆動アクチュエータを支持するためのアクチュエータ支持部をさらに有しているものとする。
【0017】
この構成によれば、フレーム部材のアクチュエータ支持部に、駆動アクチュエータを取付けることで、該駆動アクチュエータを含む搬送ローラ駆動系を、前記ヘッド駆動系及び記録紙搬送系と共に一体化することができる。これにより、装置全体が有する共振モードの数をさらに減らすことができて、共振振動に起因する印刷画像の筋ムラの発生をより一層確実に防止することができる。
【0018】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、前記フレーム部材は、一体成形品からなるものとする。
【0019】
このように、フレームを、一体成形品で構成するようにしたことで板金部材等で構成した場合に比べてその剛性を向上させることができ、これによって、前記プラテン支持部、ヘッド駆動機構支持部、及びローラ支持部の経時位置変化を可及的に抑制することができる。よって、請求項1の発明と同様の作用効果をより一層確実に得ることができる。
【0020】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、前記フレーム部材は、アルミ鋳造品からなるものとする。
【0021】
この構成によれば、フレーム部材として、振動吸収性に優れ且つ軽量なアルミ鋳造品を採用するようにしたことで、装置全体の軽量化を図ることができるとともに、フレーム部材に取付けられる、ヘッド駆動機構(延いてはプリントヘッド)、両搬送ローラ対、及びプラテンの各部材(フレーム部材にアクチュエータ支持部を設けた場合には駆動アクチュエータを含む)に発生する印刷時の振動を、該フレーム部材により確実に吸収することができて、記録紙の印刷品質を可及的に向上させることができる。
【0022】
請求項5の発明では、請求項3の発明において、前記フレーム部材は、鋳鉄鋳造品からなるものとする。
【0023】
この構成によれば、フレーム部材として、アルミ鋳造品よりもさらに振動吸収性に優れた鋳鉄鋳造品を採用するようにしたことで、前記フレーム部材に取付けられる各部材に発生する印刷時の振動を、より一層確実に吸収することができる。よって、記録紙の印刷品質を可及的に向上させることができる。
【0024】
請求項6の発明では、前記プラテン、前記プリントヘッド、前記ヘッド駆動機構、及び前記第1及び第2搬送ローラ対は、前記フレーム部材を介してユニット化されて印刷ユニットを構成しているものとする。
【0025】
この構成によれば、印刷ユニットを、記録紙供給部等が設けられるプリンタ本体部とは別ユニット化することができ、このことで、プリンタの組立て性やメンテナンス性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明のインクジェットプリンタによると、プラテンを支持するためのプラテン支持部と各搬送ローラ対を支持するためのローラ支持部とヘッド駆動機構を支持するためのヘッド駆動機構支持部とを有するフレーム部材を設けるようにしたことで、各支持部同士の相対位置が、プリンタの使用期間の増加にしたがって初期設定位置からずれる経時位置変化を防止することができるとともに、装置全体の共振モードの数を低減して振動設計の容易化を図ることができ、延いては、振動による筋ムラの発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタAの外観を示し、図2は、インクジェットプリンタAの内部の構成を概略的に示す。このインクジェットプリンタAは、写真プリントシステムに用いられるものであって、例えば、画像データを取得して必要な補正処理等を行う受付ブロックから通信ケーブルを介して伝送される画像データに基づいて記録紙P(図3、図6等参照)に印刷を行うものである。この記録紙Pは、所定の大きさの単票紙であり、この大きさとしては複数種類の大きさが予め設定されている(記録紙Pの大きさに応じて記録紙Pの長さ及び幅が決まっている)。
【0029】
前記インクジェットプリンタAは、下面にキャスター3が設けられた筐体2を有するプリンタ本体部1と、このプリンタ本体部1の筐体2の一側面の上部に着脱自在に取り付けられかつ複数枚の記録紙Pをその厚み方向に重ねた状態で収容可能なカセット5と、前記筐体2の上面に着脱自在に取り付けられた両面印刷ユニット7とを備えている。尚、本実施形態では、前記カセット5が取り付けられる側(図2の左側)をプリンタ前側といい、その反対側(図2の右側)をプリンタ後側という。また、図2の紙面と垂直な方向は、プリンタ左右方向であって、前記カセット5に収容されかつプリンタ本体部1及び両面印刷ユニット7において搬送される記録紙Pの幅方向と一致しており、紙面手前側をプリンタ右側といい、その反対側をプリンタ左側という。
【0030】
図2に示すように前記両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられた状態で、後に詳細に説明するように記録紙Pの表裏両面に印刷することが可能になる。一方、記録紙Pの片面のみに印刷し、両面印刷が必要でない場合には、通常、両面印刷ユニット7をプリンタ本体部1から外しておく(図13参照)。但し、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられた状態であっても、記録紙Pの片面のみに印刷することは可能である。両面印刷した記録紙Pを複数枚束ねることで、フォトアルバムないしフォトブックを作製することができる。
【0031】
前記カセット5は、記録紙Pの大きさ毎に異なるものであり、オペレータは、カセット5をプリンタ本体部1に取り付けたときに、そのカセット5に対応した記録紙Pの大きさ(長さ及び幅)を、不図示の操作スイッチにより入力する。また、不図示の操作部材の操作によって、後述の補正機構81の幅規制部材84,85(図10参照)を、記録紙Pの幅に対応した位置への位置合わせを行う。尚、カセット5に例えばICチップを設けて、このICチップに記録紙Pの大きさ等を記憶するようにしておき、カセット5が取り付けられたときに、プリンタ本体部1が該ICチップの記憶内容を読み取るようにしてもよい。こうすれば、オペレータの前記入力作業は不要になる。また、オペレータの操作スイッチによる前記入力結果、又はICチップの記憶内容の読み取り結果に応じて、補正機構81の幅規制部材84,85の位置合わせをモータにより自動で行うようにしてもよい。
【0032】
図3に詳細に示すように、前記カセット5内には、記録紙Pをその厚み方向に重ねた状態でセットするためのセットトレイ11が配設されている。このセットトレイ11は、カセット5内において、該セットトレイ11のプリンタ前後方向の略中央にてプリンタ左右方向に延びる軸11a回りに回動可能に支持されている。セットトレイ11は、そのプリンタ後側端が上昇する側に回動するようにバネで付勢されている。これにより、セットトレイ11上にセットされた複数枚の記録紙Pのうち最上部の記録紙Pが、カセット5内のプリンタ後側端部の上部に配設された送出しローラ14に当接することになる。
【0033】
前記送出しローラ14は、プリンタ本体部1の側に配設された不図示のモータにより図3で反時計回り方向に駆動されるようになっており、このモータにより送出しローラ14が回転駆動されると、最上部の記録紙Pが1枚だけプリンタ後側へ移動してカセット5の外側へ送り出される。このとき、最上部の記録紙Pの下側に位置する記録紙Pが最上部の記録紙Pに引き摺られて複数枚の記録紙Pがカセット5の外側へ同時に送り出されないようにするために、送出しローラ14が所定量だけ回転すると、トレイ押下げ機構16によって、セットトレイ11のプリンタ後側端が下降するようになされている。
【0034】
前記トレイ押下げ機構16は、前記プリンタ本体部1に、プリンタ左右方向に延びる軸17a回りに回動可能に支持されたトレイ押下げレバー17と、このトレイ押下げレバーを前記軸17a回りに回動させるためのレバー回動カム18とを有している。このレバー回動カム18は、不図示のモータにより軸18a回りに回動するようになされている。また、トレイ押下げレバー17の一端部は、カセット5をプリンタ本体部1に取り付けたときに、カセット5内に、セットトレイ11のプリンタ後側端部の上側に位置するように進入する。一方、トレイ押下げレバー17の他端部は、レバー回動カム18のカム面に当接している。この当接状態を常に維持するためにトレイ押下げレバー17は、前記他端部がレバー回動カム18の側へ移動するように(つまり一端部が上側に移動するように)バネで付勢されている。
【0035】
そして、送出しローラ14が所定量だけ回転したときに、レバー回動カム18が回転し、これにより、トレイ押下げレバー17の前記一端部がセットトレイ11のプリンタ後側端部に当接してこれを押し下げる。これにより、最上部の記録紙Pの下側に位置する記録紙Pが最上部の記録紙Pに引き摺られるのが防止され、複数枚の記録紙Pがカセット5の外側へ同時に送り出されなくなる。尚、レバー回動カム18が半回転すると、トレイ押下げレバー17の前記一端部が上昇し始め、これに伴って、セットトレイ11のプリンタ後側端が前記バネにより上昇して、次に最上部となる記録紙Pが送出しローラ14に当接する。レバー回動カム18が1回転したとき、レバー回動カム18の回転が停止し、トレイ押下げレバー17は初期の状態に戻る。
【0036】
前記送出しローラ14によりカセット5の外側に送り出された記録紙Pは、プリンタ本体部1における後述の印刷部21へ供給されるようになっている。このことで、カセット5の送出しローラ14は、印刷部21へ記録紙Pを供給する記録紙供給部を構成する。
【0037】
前記プリンタ本体部1の筐体2内の上部における前記カセット5の取付部近傍には、前記画像データに基づいて印刷を行う印刷部21が設けられている。
【0038】
この印刷部21は、図4及び図5に詳細に示すように、記録紙Pの片側面(上側面)に印刷するプリントヘッドHと、前記送出しローラ14より供給された記録紙Pを、該記録紙Pへの印刷時に該送出しローラ14とは反対側(プリンタ後側)へ搬送する印刷搬送部22と、この印刷搬送部22より搬送される記録紙Pを支持するプラテン23とを備えている。これらプリントヘッドH、印刷部21、及び印刷搬送部22は、詳細は後述するようにフレーム部材100を介して一体ユニット化されてプリントユニット90(図2参照)を構成している。
【0039】
前記印刷搬送部22の上流側端部(プリンタ前側端部)には圧着型の上流側ローラ対24(第1搬送ローラ対に相当)が、また印刷搬送部22の下流側端部(プリンタ後側端部)には圧着型の下流側ローラ対25(第2搬送ローラ対に相当)がそれぞれ配設されている。これら上流側ローラ対24及び下流側ローラ対25の下側に位置する駆動ローラ24a,25aがそれぞれ、フレーム部材100に取り付けられたモータ58,59(図14及び図15参照)により駆動されるようになっている。
【0040】
また、上流側ローラ対24及び下流側ローラ対25の上側に位置する従動ローラ24b,25bは、その対応する下側の駆動ローラ24a,25aに対して圧着された圧着状態と該圧着が解除された圧着解除状態とを切り換えることが可能になっている。すなわち、従動ローラ24b,25bは、アーム部材42(図4参照)の先端部に回動可能に支持されていて、該アーム部材42がその基端部に取付固定された従動ローラ支持軸29を中心に揺動することで、前記圧着状態と圧着解除状態とに切り換え可能になっている。従動ローラ支持軸29は、従動ローラ24b,25bに対して平行に延びて、両端部がフレーム部材100に回動可能に支持されるとともに、不図示のモータ(フレーム部材100に取り付けられる)により回転駆動されてアーム部材42を揺動させる。尚、駆動ローラ24a,25a、従動ローラ24b,25b、送出しローラ14は、プリンタ左右方向に延びる棒状を呈しており、それぞれのローラ長さ(ローラ軸方向長さ)は、印刷可能な記録紙Pの最大幅よりも長く設定されている。
【0041】
前記上流側ローラ対24を挟んでその上流側及び下流側には、記録紙Pを検出する第1及び第2センサ27,28(共に投光部と受光部とからなる)がそれぞれ配設されている。第1センサ27は、前記カセット5又は両面印刷ユニット7より記録紙Pの先端がプリンタ本体部1の筐体2内に入ったことを検出するものであり、この検出により、前記上流側ローラ対24の駆動ローラ24aを駆動する。第2センサ28は、上流側ローラ対24より送り出された記録紙Pの先端を検出するものであり、この第2センサ28による記録紙P先端の検出から、記録紙Pの印刷開始部分がプリントヘッドHの下側位置に達するような量だけ上流側ローラ対24により記録紙Pを搬送したときに、当該記録紙Pへの印刷を開始する。また、第2センサ28による記録紙Pの先端の検出から、記録紙Pの先端が下流側ローラ対25のところに達するような量だけ上流側ローラ対24により記録紙Pを搬送したときに、上流側ローラ対24を圧着状態から圧着解除状態にしかつ下流側ローラ対25を圧着解除状態から圧着状態にして、今度は下流側ローラ対25で記録紙Pを搬送する。
【0042】
前記プリントヘッドHは、記録紙Pの上側位置において記録紙Pの幅方向(プリンタ左右方向)と一致する主走査方向X(図5参照)に延びる2本のガイドレール31(図4参照)に沿って移動可能に支持されている。プリントヘッドH(プリントヘッドHのキャリッジ)は、主走査方向Xに延びる駆動ベルト33に取付固定されている。この駆動ベルト33は、その両端部にそれぞれ配設されかつ前記フレーム部材100に対してプーリ支持軸39を介して回転自在に支持された2つのプーリ37(図14では1つのみ示す)に巻き掛けられており、一方のプーリ37は、電動モータ60により回転駆動される。プリントヘッドHは、該プーリ37の回転駆動により、駆動ベルト33を介して主走査方向の駆動力を受けて、前記ガイドレール31に案内されながら、主走査方向に往復移動する。このことで、前記ガイドレール31、駆動ベルト33、プーリ37、及びプーリ支持軸39が、該プリントヘッドHを、主走査方向Xに往復移動可能に支持して駆動するヘッド駆動機構95を構成することとなる。
【0043】
また、プリントヘッドHは、主走査方向Xと垂直であって記録紙Pの移動方向(プリンタ前後方向)と一致する副走査方向Y(図5参照)に並ぶ2つのヘッドユニット32を有しており、これら2つのヘッドユニット32の下面に設けられている多数のインク吐出ノズル(図示省略)から複数色のインクを下側へ向けて吐出することで、記録紙Pの上側面に対して所定の画像を印刷できるようになっている。本実施形態では、ヘッドユニット32が副走査方向Yに2段に並んで配設されているが、ヘッドユニット32は2段である必要はなく、1段や3段以上であってもよい。
【0044】
前記両ヘッドユニット32は同一構成であり、各々、主走査方向Xに配設された、各色のインクを吐出するための複数のノズルアレイを有している。この各ノズルアレイにおいて、前記インク吐出ノズルが副走査方向Yに列状に配設されている。これにより、各ヘッドユニット32は、単体でカラー画像を形成可能な構成とされている。そして、記録紙Pは、前記上流側ローラ対24又は下流側ローラ対25により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向Yに搬送され、この間欠搬送時における記録紙Pの各停止時に、プリントヘッドHが主走査方向Xに一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向Xの各位置で、各ヘッドユニット32の各色のインク吐出ノズルからインクが記録紙Pの上側面に対して同時に吐出される。つまり、プリントヘッドHの一走査後に、記録紙Pが単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッドHが一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像が印刷されることになる。
【0045】
ここで、本実施形態におけるプリントヘッドHのインク吐出のための構成としては、インクが充填された圧力室内の容積がピエゾ素子によって変化することで、圧力室に連通するインク吐出ノズルからインクを吐出する一般的なピエゾ方式のものを採用している。
【0046】
前記プラテン23は板状の部材からなり、その上面が記録紙Pを支持する支持面23aとされている。このプラテン23には、厚み方向(上下方向)に貫通して支持面23aに開口する多数の吸引用孔23b(図5参照)が設けられている。プラテン23の下側には、該プラテン23と共に空間を形成するケース体35が配設され、このケース体35の下側に、ファン等を含む吸引装置36が配設されている。そして、前記吸引用孔23bは、前記ケース体35内の空間と連通し、この空間は、吸引装置36の吸込み口と連通しており、吸引装置36の作動により吸引用孔23bを介してプラテン23の支持面23a側に負圧が生じ、このことで、記録紙Pがプラテン23の支持面23a上に吸着保持されることになる。これにより、印刷時の記録紙Pの平面性を確保して印刷品質を向上させることが可能になる。
【0047】
また、プラテン23の支持面23aには、インク吸収材38を収容するための、副走査方向Yに延びる凹部23c(図5参照)が形成されている。このインク吸収材38は、記録紙P全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、プリントヘッドH(ヘッドユニット32)より吐出したインクの一部が前記支持面23a上の記録紙Pの幅方向の端縁から外側に外れてはみ出したとしても、その外側に外れたインクによりプラテン23の支持面23aが汚れるのを防止するために設けられたものである。このため、前記凹部23cは、支持面23aにおいて該支持面23a上の記録紙Pの幅方向の端縁に対応する位置でかつ副走査方向YにおけるプリントヘッドHに対応する位置において、該端縁に沿って延びる(つまり副走査方向Yに延びる)ように形成されている。図5の例では、5種類の幅の記録紙Pに対応可能にするべく、片側5個ずつの合計10個の凹部23cが設けられている。前記インク吸収材38は、インク吸収性に優れた、例えばスポンジ状のものが好ましい。
【0048】
ここで、前記縁なし印刷を行う場合、記録紙Pの幅方向については端縁ぎりぎりにインクを吐出し、その端縁からはみ出したインクを前記インク吸収材38により吸収するようにしているが、記録紙Pの先端及び後端ぎりぎりにはインクを吐出せず、所定量(例えば2mm)だけ余白をあけて印刷を行う。そして、この余白を後述のカッター40により切断することで、縁なしに仕上げる。このようにするのは、記録紙Pの先端又は後端に向けてインクを吐出すると、そのインクが前記吸引用孔23bによる吸い込み作用により吸引用孔23bへ引き込まれて印刷品質が低下するとともに、支持面23aがインクで汚れるからである。
【0049】
前記フレーム部材100は、アルミ鋳造による一体成形品からなるものであって、略矩形枠状の枠状本体部101(図14乃至図17参照)を有している。フレーム部材100は、枠状本体部101の長手方向がプリンタ左右方向に一致(長手方向に直交する方向がプリンタ前後方向に一致)する状態で前記筐体フレームにボルトで固定される。尚、以下の説明では、フレーム部材100が、筐体フレームに固定された状態にあるものとして説明を行う。
【0050】
枠状本体部101は、プリンタ前側及び後側の枠部をそれぞれ構成する前側壁101a,後側壁101bと、プリンタ左側及び右側の枠部をそれぞれ構成する左側壁101c,右側壁101dとで構成されている。
【0051】
前側壁101a及び後側壁101bの下端部におけるプリンタ左右方向の中間部にはそれぞれ、コ字状の切欠部101fが形成されており、記録紙Pは、前側壁101aの切欠部101fを通過してプラテン23上に進入した後に、後側壁101bの切欠部101fを通過して下流側へと排出される。
【0052】
前側壁101a及び後側壁101b間には、両者に跨って延びかつプリンタ左右方向に互いに所定間隔を隔てて並ぶ、一対の連結縦壁部102(図17参照)が設けられている。
【0053】
前記一対の連結縦壁部102はそれぞれ、そのプリンタ前後方向中間部に位置しかつプラテン23を支持するプラテン支持壁103と、プリンタ前側端部(上流側端部)に位置しかつ上流側ローラ対24を支持する上流側搬送支持壁104と、プリンタ後側端部(下流側端部)に位置かつ下流側ローラ対25を支持する下流側搬送支持壁105とを備えている。そして、両連結縦壁部102は、それぞれの下端部において、プリンタ左右方向に延び且つプラテン支持壁103を挟んでその前後に並ぶ一対の補強梁部106により連結されている。
【0054】
前記プラテン支持壁103は、プリンタ左右方向から見て、プリンタ前後方向に延びる矩形状(図17参照)をなしており、該プラテン支持壁103の上面におけるプラテン23の四隅に対応する部分には、プラテン23の下面に当接してこれを支持する支持面103fが形成されている。各支持面103fには、プラテン23を固定するための螺子孔103gが形成されている。そして、この支持面103f、及び螺子孔103gが、プラテン23を支持するためのプラテン支持部150を構成することとなる。
【0055】
前記上流側搬送支持壁104は、プリンタ左右方向から見て、そのプリンタ前側端縁の上下寸法がプリンタ後側端縁の上下寸法よりも大きい台形状をなしており(図17参照)、該プリンタ前側端縁が前側壁101aに接続され、該プリンタ後側端縁がプラテン支持壁103に接続されている。同様に、下流側搬送支持壁105は、プリンタ左右方向から見て、そのプリンタ後側端縁の上下寸法がプリンタ前側端縁の上下寸法よりも大きい台形状をなしており(図16参照)、該プリンタ後側端縁が後側壁101bに接続され、該プリンタ前側端縁がプラテン支持壁103に接続されている。このように構成された、両搬送支持壁104,105は、プラテン支持壁103を枠状本体部101に支持する支持部材としての機能と、該枠状本体部101の剛性を高めるリブ(補強部材)としての機能とを併せ持つこととなる。
【0056】
上流側搬送支持壁104におけるプラテン支持壁103との接続部付近には、上流側ローラ対24の駆動ローラ24aを回動支持する駆動ローラ支持孔104h(図17参照)が形成されており、駆動ローラ24aは、その軸方向の両端部をそれぞれ、前記一対の連結縦壁部102の駆動ローラ支持孔104hに嵌入して回動支持される。また、上流側搬送支持壁104における駆動ローラ支持孔104hのプリンタ前側(上流側)斜め上方には、上流側の従動ローラ支持軸29を回動支持する従動ローラ支持孔104jが形成されており、該従動ローラ支持軸29は、その軸方向の両端部をそれぞれ、前記一対の連結縦壁部102の従動ローラ支持孔104jに嵌入して回動支持される。
【0057】
同様に、下流側搬送支持壁105におけるプラテン支持壁103との接続部付近には、下流側ローラ対25の駆動ローラ25aを回動支持する駆動ローラ支持孔105h(図16参照)が形成され、該駆動ローラ支持孔105hのプリンタ後側(下流側)斜め上方には、下流側の従動ローラ支持軸29を回動支持する従動ローラ支持孔105jが形成されている。そして、前記駆動ローラ支持孔104h,105h、従動ローラ支持孔104j,105jが、前記第1搬送ローラ対(上流側搬送ローラ対24)及び第2搬送ローラ対(下流側搬送ローラ対25)を支持するためのローラ支持部151を構成することとなる。
【0058】
前記左側壁101c及び右側壁101dにはそれぞれ、前記上流側のガイドレール31の軸端部を回動支持する上流側レール支持孔101gと、下流側のガイドレール31の軸端部を回動支持する下流側レール支持孔101hとが、プリンタ前後方向に互いに所定間隔(両ガイドレール間の間隔に等しい)を隔てて形成されている。そして、上流側のガイドレール31は、その軸方向の両端部をそれぞれ、左側及び右側壁101c,101dの上流側レール支持孔101gに嵌入して回動支持され、下流側のガイドレール31は、その軸方向の両端部をそれぞれ、左側及び右側壁101c,101dの下流側レール支持孔101hに嵌入して回動支持される。前記連結縦壁部102の上流側搬送支持壁104及び下流側搬送支持壁105には、ガイドレール31との干渉を避けるべく、上縁部分に欠損部108が形成されている。
【0059】
左側及び右側壁101c,101dにおけるフレーム外側面(左側壁101cにおけるプリンタ左側面であって、右側壁101dにおけるプリンタ右側面)にはそれぞれ、前記下流側レール支持孔101hを挟んでその前後に配設され、フレーム外側に突出する一対のプーリ支持ブラケット部107が設けられている。左側壁101cに設けられる一対のプーリ支持ブラケット部107には、プリンタ前後方向に貫通して、プーリ支持軸39の両端部をそれぞれ回動支持するプーリ支持孔107aが形成されており、右側壁101dに設けられる一対のブラケット部107には、プリンタ右側に開放するコ字状をなし、プーリ支持軸39の両端部をそれぞれ回動支持するプーリ支持溝107bが形成されている。このように、プーリ支持溝107bをコ字状に形成することで、該プーリ支持溝107bに支持されるプーリ支持軸39のプリンタ左右方向の位置調整が可能になって、駆動ベルト33のテンション調整を容易に行うことができる。そして、前記プーリ支持孔107a及びプーリ支持溝107b、並びに、前記上流側レール支持孔101g及び下流側レール支持孔101hが、ヘッド駆動機構95を支持するためのヘッド駆動機構支持部152を構成することとなる。
【0060】
また、前記右側の連結縦壁部102の下側の端縁部には、該端縁部からさらに下側に延びるアクチュエータ取付け用壁部110が設けられている。
【0061】
このアクチュエータ取付け用壁部110には、前記駆動ローラ24a,25aを駆動するモータ58,59(駆動アクチュエータに相当)がそれぞれ、モータブラケット111(図14及び図15参照)を介して取り付けられる。そのために、アクチュエータ取付け用壁部110のプリンタ右側面には、各モータブラケット111を取り付けるための座面112が形成されており、この座面にはブラケット固定用の螺子孔113が形成されている。このことで、この座面112及び螺子孔113が、前記各モータ58,59を取り付けるためのアクチュエータ支持部153を構成することとなる。尚、図14及び15中、符号114,115は、駆動ローラ24a,25aの回転速度(回転角度)を検出するためのエンコーダである。
【0062】
このように本実施形態では、一つのフレーム部材100に、プラテン23を支持するためのプラテン支持部150と上流側及び下流側搬送ローラ対24,25を支持するためのローラ支持部151と前記ヘッド駆動機構95を支持するためのヘッド駆動機構支持部152とを備えるようにしたことで、プラテン23と搬送ローラ対24,25とを含む記録紙搬送系と、ヘッド駆動機構95と該ヘッド駆動機構95により支持されるプリントヘッドHとを含むヘッド駆動系とを、該フレーム部材100を介して一体化(ユニット化)することができる。したがって、固有振動数が互いに異なる記録紙搬送系とヘッド駆動系との2つの系を一まとめにして、装置全体(プリンタA全体)が有する共振モードの数を減らすことができ、これによって、共振振動を回避するための振動設計が容易になり、延いては、共振振動に起因する印刷画像の筋ムラの発生を確実に防止することができる。
【0063】
また、プラテン支持部150とヘッド駆動機構支持部152とローラ支持部151とを別部材で構成した場合に、プリンタAの使用期間が増加するにしたがって生じる該各支持部150乃至152間のガタや変形に起因する位置ずれ(以下、経時位置変化という)を防止することができる。具体的には、例えばプラテン23を支持する支持面103fに対する、上流側レール支持孔101g(又は下流側のガイドレール31の軸端部を回動支持する下流側レール支持孔101h)の高さ位置や上流側ローラ対24(又は下流側ローラ対25)の記録紙Pの挟持高さ位置が設定位置からずれるのを防止することができる。したがって、印刷時におけるプリントヘッドHと記録紙Pとの距離を、プリンタAの使用期間(使用頻度)に拘わらず、常に一定(設定値)に維持することができて、記録紙の印刷品質を向上させることができる。
【0064】
またさらに、プリンタAの組立やメンテナンスに際しては、プラテン23と搬送ローラ対24,25とヘッド駆動機構95とフレーム部材100とからなるプリントユニット90ごと、プリンタ本体部1の筐体フレーム(図示省略)に組み付けることができるため、組立性やメンテナンス性を損なうこともない。
【0065】
また、本実施形態では、前記フレーム部材100に、各搬送ローラ対24,25(駆動ローラ24a,25a)を駆動するモータ58,59を支持するアクチュエータ支持部153をさらに設けるようにしたことで、該モータ58,59を含む搬送ローラ駆動系を、前記ヘッド駆動系及び記録紙搬送系と共に一体化することができる。これにより、プリンタA全体が有する共振モードの数をさらに減らすことができて、共振振動に起因する印刷画像の筋ムラの発生をより一層確実に防止することができる。
【0066】
また、本実施形態では、前記フレーム部材100を、一体成形品としたことで、板金部材等で構成した場合に比べてその剛性を向上させることができ、これによって、前記経時位置変化を可及的に抑制することができ、記録紙の印刷品質を可及的に向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、前記フレーム部材100をアルミ鋳造品としてことで、プリントユニット90の軽量化を図ってそのメンテナンス性及び組み付け性を向上させることができるとともに、印刷時に生じる振動(プリントヘッドHの往復動作やインク吐出動作、及び、モータ類の回転等により発生する振動)を該フレーム部材100により確実に吸収することができて、記録紙の印刷品質を可及的に向上させることができる。
【0068】
前記プリンタ本体部1の筐体2内の上部における前記印刷搬送部22の下流側には、印刷搬送部22の下流側端部(下流側ローラ対25)より送り出された記録紙Pを、表裏反転しかつ搬送の向きが逆向きになるようにUターンさせるUターン部45が設けられている。
【0069】
前記Uターン部45と印刷搬送部22との間には、前記縁なし印刷を行う場合において記録紙Pの先端及び後端における前記余白を切断するカッター40が配設されている。このカッター40は、記録紙Pの搬送経路の上側に配置された固定刃40aと、記録紙Pの搬送経路の下側に配置され、不図示のモータにより該固定刃40aに対して上下方向に移動する可動刃40bとで構成され、可動刃40bが記録紙Pの下側から上側に移動することで記録紙Pを切断する。この切断による切り屑は、筐体2の下部に配設された屑箱41(図2参照)に落下して収容される。尚、記録紙Pの両面に印刷を行う場合には、両面に印刷を行った後にカッター40により前記余白を切断する。
【0070】
前記Uターン部45には、該Uターン部45の上流側部分に配設されかつ印刷搬送部22からの記録紙Pを挟持して更にプリンタ後側へ搬送する圧着型の2組の搬送ローラ対46と、該搬送ローラ対46により搬送されてきた記録紙Pの搬送の向きを上側へ変更する第1向き変更部材47と、この第1向き変更部材47の下流側に配設されかつ記録紙Pを挟持して上側へ搬送する圧着型の2組の搬送ローラ対48と、該搬送ローラ対48により搬送されてきた記録紙Pの搬送の向きをプリンタ前側へ変更する第2向き変更部材49と、Uターン部45の下流側端部に配設され、記録紙Pを挟持してUターン部45から排出する圧着型の搬送ローラ対50と、この搬送ローラ対50の近傍位置に配設されかつ記録紙Pが当該位置にあることを検出する第3センサ51(投光部と受光部とからなる)とが設けられている。尚、前記2組の搬送ローラ対48の間には、下側の搬送ローラ対48から送り出された記録紙Pの先端を上側の搬送ローラ対48へと導く一対のガイド板52が、搬送路を挟むように配設されている。
【0071】
Uターン部45の上流側部分における2組の搬送ローラ対46の間には、前記印刷部21において記録紙Pの上側面に付着したインクを乾燥させるための乾燥風Wを該記録紙Pの上側面に吹き付ける乾燥装置53が設けられている。この乾燥装置53は、該乾燥装置53内に空気を取り込むための吸入ファン54と、この吸入ファン54で取り込んだ空気を加熱する加熱ヒータ55と、乾燥装置53の下端部に開口して、加熱ヒータ55で加熱された空気を乾燥風Wとして記録紙Pの上側面に吹き付ける排気ノズル部56と、乾燥装置53内の温度を検出して加熱ヒータ55を緊急停止させる安全サーモ57とを備えている。
【0072】
前記Uターン部45の全搬送ローラ対46,48,50において、記録紙Pにおける前記印刷部21による印刷面とは反対側の面に接触するローラ(上流側部分における2組の搬送ローラ対46では下側のローラであり、その下流側の2組の搬送ローラ対48ではプリンタ後側のローラであり、搬送ローラ対50では、上側のローラである)は、それぞれ駆動ローラ46a,48a,50aとされ、前記印刷面に接触するローラ(搬送ローラ対46では上側のローラであり、搬送ローラ対48ではプリンタ前側のローラであり、搬送ローラ対50では、下側のローラである)は、それぞれ従動ローラ46b,48b,50bとされている。これら従動ローラ46b,48b,50bは、駆動ローラ46a,48a,50aよりも軟質な材料で構成されている。例えば、駆動ローラ46a,48a,50aはポリプロピレンからなり、従動ローラ46b,48b,50bは発泡ウレタンからなる。このように前記印刷面に接触する従動ローラ46b,48b,50bを軟質にすることで、記録紙Pの搬送速度の許容速度を高めることが可能になる。また、前記印刷面とは反対側の面に接触する駆動ローラ46a,48a,50aを硬質にすることで、記録紙Pの搬送精度を確保して、蛇行等を生じ難くすることができる。
【0073】
前記全ての駆動ローラ46a,48a,50aは同じモータ(図示せず)により駆動される。そして、この駆動ローラ46a,48a,50aの回転速度、つまり搬送ローラ対46,48,50による記録紙Pの搬送速度は可変に構成されている。すなわち、前記乾燥装置53による前記インクの乾燥度合いは、インクジェットプリンタAが設置された環境条件(温度や湿度等)に応じて変化するため、これに応じて搬送速度を変更する。また、前記両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている場合には、記録紙Pが両面印刷ユニット7により搬送されている間に前記インクが乾燥すればよいので、乾燥装置53により前記インクが完全には乾燥しないような比較的速い速度に設定する。一方、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合(図13参照)には、Uターン部45から搬送ローラ対50により排出された記録紙Pは、そのまま筐体2の外側に排出されて筐体2の上面に重ねて載置されるようになっており、このため、乾燥装置53により前記インクがほぼ完全に乾燥するような遅めの速度に設定する。
【0074】
前記第3センサ51は、記録紙Pの後端を検出して、該記録紙PのUターン部45からの排出を検出するものである。前記両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合には、記録紙Pの筐体2外側への排出を検出することになる。一方、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている場合には、記録紙Pの後端の検出から、該後端が搬送ローラ対50から外れる量だけ記録紙Pが搬送されたときに、両面印刷ユニット7での記録紙Pの搬送速度を変更(アップ)する。
【0075】
前記両面印刷ユニット7は、筐体2の上面を覆う第1ユニット8と、前記カセット5の上方に位置する第2ユニット9との2分割構造になっている。そして、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている状態で、第1ユニット8のみを筐体2から取り外すことが可能になっている。この第1ユニット8が取り外された状態で、筐体2の上面に設けたメンテナンス開口(通常時は蓋で塞がれる)を介して印刷部21(特にプリントヘッドH等)のメンテナンス作業を行うことができる。したがって、両面印刷ユニット7をプリンタ本体部1に取り付けた後においても、印刷部21のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0076】
前記両面印刷ユニット7の第1ユニット8内には、前記Uターン部45から送り出された記録紙Pを、前記印刷部21を超えて前記カセット5の側(印刷部21に対してプリンタ前側)へ搬送するリバース搬送部61が設けられている。このリバース搬送部61には、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する圧着型の3組の搬送ローラ対62と、リバース搬送部61の下流側端部(第1ユニット8のプリンタ前側端部)の位置に配設されかつ記録紙Pが当該位置にあることを検出する第4センサ63(投光部と受光部とからなる)とが設けられている。
【0077】
前記リバース搬送部61における搬送路は、プリンタ前側へ向かって下側に僅かに傾斜する直線路とされている。この傾斜の理由は以下の通りである。すなわち、前記Uターン部45の搬送ローラ対50の高さ位置は、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合に記録紙Pが載置される筐体2上面に、十分な枚数の記録紙Pが載置可能な高さ位置にする必要がある。一方、第2ユニット9内における後述のスイッチバック部66では、スイッチバックした記録紙Pを印刷搬送部22の上流側端部へ供給する後述の供給ローラ対69の数を、記録紙Pの最小長さとの関係を考慮して出来る限り減らすことが望ましく、このためにはスイッチバック部66は印刷搬送部22に近い高さ位置にする必要がある。このことから、Uターン部45とスイッチバック部66とを接続するリバース搬送部61における搬送路を前記の如く傾斜させている。
【0078】
前記リバース搬送部61の全搬送ローラ対62において、記録紙Pにおける前記印刷部21による印刷面とは反対側の面に接触するローラ(上側のローラ)は、駆動ローラ62aとされ、前記印刷面に接触するローラ(下側のローラ)は、従動ローラ62bとされている。前記Uターン部45の搬送ローラ対46,48,50と同様に、従動ローラ62bは、駆動ローラ62aよりも軟質な材料で構成されている。
【0079】
前記全ての駆動ローラ62aは同じモータ(図示せず)により駆動される。そして、この駆動ローラ62aの回転速度、つまり搬送ローラ対62による記録紙Pの搬送速度は、前記Uターン部45の搬送ローラ対46,48,50の駆動ローラ46a,48a,50aと同様に、可変に構成されている。前述の如く、第3センサ51による記録紙Pの後端の検出から、該後端が搬送ローラ対50から外れる量だけ記録紙Pが搬送されたときに、搬送速度をアップする。すなわち、Uターン部45では搬送経路が曲線であるため、印刷面を傷付けることなく安定して搬送できる速度にする必要があり、また、記録紙Pの後端が搬送ローラ対50よりも上流側に位置する状態では、搬送ローラ対62による記録紙Pの搬送速度をUターン部45での搬送速度と同じにする必要があるが、記録紙Pの後端が搬送ローラ対50から外れれば、記録紙Pを直線の搬送経路で搬送するので、許容速度が上昇し、搬送速度をアップする。但し、下流側に存在する記録紙Pの状況(存在枚数や存在位置)によって、搬送速度を調整する。
【0080】
前記第2ユニット9内には、前記リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを、スイッチバックさせて該記録紙Pの後端側から前記印刷搬送部22の上流側端部へ供給するスイッチバック部66が設けられている。このスイッチバック部66には、下側の駆動ローラ67aと上側の従動ローラ67bとからなる圧着型のスイッチバックローラ対67と、このスイッチバックローラ対67の上流側において搬送路を挟むように設けられ、前記リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックローラ対67へ導く一対の第1ガイド部材68と、スイッチバックした記録紙Pを印刷搬送部22の上流側端部へ供給する圧着型の供給ローラ対69と、スイッチバックローラ対67と供給ローラ対69との間において搬送路を挟むように設けられ、スイッチバックした記録紙Pを供給ローラ対69へ導く一対の第2ガイド部材70とが設けられている。
【0081】
前記スイッチバックローラ対67の駆動ローラ67aは、不図示のモータにより、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する正回転と、記録紙Pを挟持してプリンタ後側へ搬送する逆回転とが可能に構成されている。
【0082】
前記スイッチバックローラ対67及び第1ガイド部材68は、不図示のモータにより、スイッチバックローラ対67の駆動ローラ67aの回転軸回りに一体的に回動可能になっており、これにより、スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが、駆動ローラ67aに対してほぼ真上に位置する第1の位置(図6参照)と、駆動ローラ67aに対してプリンタ後側に位置する第2の位置(図7参照)とに切り換えられるようになっている。また、第1ガイド部材68は、従動ローラ67bが第1の位置にあるときには、リバース搬送部61における搬送路の延長上に位置し(図6参照)、従動ローラ67bが第2の位置にあるときには、前記第2ガイド部材70の延長上に位置する(図7参照)。
【0083】
ここで、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックさせる方法を説明する。スイッチバックローラ対67が、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを受け取る際には、駆動ローラ67aは正回転しており、従動ローラ67bは第1の位置にある。そして、前記第4センサ63が記録紙Pの後端を検出してから、当該後端が第1ガイド部材68に位置するような量だけスイッチバックローラ対67により記録紙Pをプリンタ前側へ搬送したところで(図6参照)、駆動ローラ67aの正回転を停止する。このとき、記録紙Pの少なくとも先端部は、後述の載置トレイ74上に位置する。
【0084】
続いて、スイッチバックローラ対67及び第1ガイド部材68を図6で時計回り方向に回動させて従動ローラ67bを第1の位置から第2の位置へ切り換える。これにより、記録紙Pの先端側(プリンタ前側)が持ち上げられて、スイッチバックローラ対67に対して上側でかつプリンタ前側に配設された2つの補助ローラ72に当接した状態で湾曲する(図7参照)。
【0085】
その後、駆動ローラ67aを逆回転させて、記録紙Pをその後端側から供給ローラ対69の側へ向けて搬送する。このとき、記録紙Pの搬送に伴って補助ローラ72が回転し、これにより、スイッチバックする記録紙Pの後端側部分(駆動ローラ67aの正回転時の先端側部分に相当)がスムーズに移動するとともに、第2ユニット9の内壁面等に擦れて傷が付くようなこともない。スイッチバックローラ対67によりスイッチバックする記録紙Pは、第1ガイド部材68及び第2ガイド部材70を通って、供給ローラ対69のところに達する(図8参照)。
【0086】
前記供給ローラ対69は、不図示のモータにより駆動される駆動ローラ69aと、この駆動ローラ69aに対して圧着される従動ローラ69bとからなる。この従動ローラ69bの駆動ローラ69aに対する圧着状態は、後述の如く解除することが可能になっている(スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bも同様)。
【0087】
前記供給ローラ対69の下側には、プリンタ本体部1の筐体2におけるプリンタ前側面の上部に設けられた一対の第3ガイド部材73が、搬送路を挟むように配設されており、この第3ガイド部材73を介して記録紙Pが印刷搬送部22の上流側端部へ供給されることになる。このように両面印刷ユニット7を介して印刷搬送部22に供給された記録紙Pの上側面は、当該記録紙Pに対して印刷部21にて最初に印刷された面(以下、表側面という)とは反対側の面(以下、裏側面という)であり、未だ印刷されていない面である。そして、最初の印刷時と同様に裏側面に印刷することで、当該記録紙Pの両面に印刷されることになる。
【0088】
前記スイッチバックローラ対67は、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを、スイッチバックさせないで第2ユニット9の外側へ排出する役目もしている。すなわち、スイッチバックローラ対67は、記録紙Pを第2ユニット9の外側へ排出する際には、駆動ローラ67aの正回転を途中で停止しないで回転し続ける。そして、第2ユニット9の外壁のプリンタ前側面には、スイッチバックローラ対67により送り出された記録紙Pを受け止めて載置する載置トレイ74が設けられている。前記のように両面に印刷された記録紙Pや、表側面のみの印刷で済ませる記録紙Pは、スイッチバックローラ対67によって第2ユニット9の外側へ排出されて載置トレイ74上に載置されることになる。
【0089】
前記第2ユニット9の外壁のプリンタ前側面における前記載置トレイ74の上側には、載置トレイ74に載置された記録紙Pに埃等が付着するのを防止するカバー部材75が、載置トレイ74の上側を覆うように片持ち状に支持されている。このカバー部材75は、その基端部(プリンタ後側端部)にてプリンタ左右方向に延びる軸75a回りに回動可能に支持されており、カバー部材75を前記軸75a回りに回動させて基端部から上側へ延びるように立てた状態にすることも可能である。
【0090】
前記第2ユニット9の外壁の上面における前記スイッチバックローラ対67の近傍には、記録紙Pを手差し挿入することが可能な手差し挿入用開口部77が形成されている。この手差し挿入用開口部77には、一対の手差し用ガイド部材78が、手差し挿入される記録紙Pを厚み方向に挟むように配設され、この手差し用ガイド部材78により、手差し挿入された記録紙Pの先端をスイッチバックローラ対67の側へ導く。また、手差し挿入用開口部77は、蓋部材79(図1参照)により覆われており、オペレータは、記録紙Pを手差し挿入する際には、この蓋部材79を開けるとともに、不図示のモードスイッチを操作して、手差しモードに切り換える。これにより、図9に示すように、スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが第2の位置に切り換えられるとともに、駆動ローラ67aが逆回転する。そして、オペレータが記録紙Pを手差し挿入用開口部77から挿入する。このとき、前記カバー部材75を立てた状態にしておけば、カバー部材75が記録紙Pを支持する受け皿の役目を果たし、記録紙Pの挿入が容易になる。こうして記録紙Pを手差し挿入用開口部77から挿入すると、その記録紙Pがスイッチバックローラ対67によって供給ローラ対69の側へ向けて搬送され、スイッチバックして搬送される記録紙Pと同様に、供給ローラ対69によって、印刷搬送部22(印刷部21)へ供給される。
【0091】
前記スイッチバック部66における第2ガイド部材70のプリンタ左右両側には、図10に示すように、印刷搬送部22へ供給される記録紙Pの幅方向の位置を補正する補正機構81が設けられている。この補正機構81は、前記スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bを圧着解除状態にする左右一対の上側解除レバー82と、前記供給ローラ対69の従動ローラ69bを圧着解除状態にする左右一対の下側解除レバー83と、前記記録紙Pの幅方向両側端に当接する左右一対の幅規制部材84,85とを有している。
【0092】
図11に示すように、前記各上側解除レバー82及び各下側解除レバー83は、プリンタ左右方向に延びる軸82a,83a回りにそれぞれ回動可能になっている。各上側解除レバー82の一端部は、前記スイッチバックローラ対67における第2の位置にある圧着状態の従動ローラ67bの軸端部の近傍に位置する一方、各上側解除レバー82の他端部は、プリンタ左右方向に延びる軸86aに支持された解除カム86のカム面に当接している。また、各下側解除レバー83の一端部は、前記供給ローラ対69の従動ローラ69bの軸端部に連結されている一方、各下側解除レバー83の他端部は、前記解除カム86のカム面に当接している。
【0093】
前記解除カム86はその軸86aと共に不図示のモータにより回転するようになっており、この解除カム86が90°回転することにより、図12に示すように、各上側解除レバー82が軸82a回りに同図で時計回り方向に回動してスイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが圧着解除状態とされるとともに、各下側解除レバー83が軸83a回りに同図で反時計回り方向に回動して供給ローラ対69の従動ローラ69bが圧着解除状態とされる。そして、解除カム86が更に90°回転すると、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の従動ローラ67b,69bが圧着状態とされる。したがって、上側解除レバー82、下側解除レバー83及び解除カム86は、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の圧着状態及び圧着解除状態を切り換える切換え機構を構成する。
【0094】
前記幅規制部材84,85は、前述したようにオペレータの操作によって、印刷処理する記録紙Pの幅に対応した位置に位置している。すなわち、幅規制部材84,85は、印刷処理する記録紙Pの幅方向両側端にそれぞれ当接する位置に位置している。これら幅規制部材84,85は、互いの対向面に開口する矩形の溝部が形成されるように折り曲げられてなり、これらの溝部の底面が記録紙Pの幅方向両側端にそれぞれ当接する。尚、前記溝部の底面の上流側部分は、記録紙Pが溝部内に導かれるように、上流側に向かって搬送路の幅方向外側に傾斜している。
【0095】
そして、一方(図10で左側)の幅規制部材84は、オペレータの操作によって位置付けられた位置を挟んで所定量だけ記録紙Pの幅方向に移動可能に構成されていて、他方(図10で右側)の幅規制部材85に対して近付くようにバネで付勢されている。また、前記幅規制部材85は、オペレータの操作によって位置付けられた位置に固定されている。前記幅規制部材84の付勢により記録紙Pが幅規制部材85の側に押されて、記録紙Pの幅規制部材85側の端が幅規制部材85に当接する。このときの記録紙Pの位置が搬送路の幅方向の基準位置となるように幅規制部材85が配置されている。
【0096】
しかし、前記幅規制部材84の付勢力は比較的弱く、このため、記録紙Pがスイッチバックローラ対67、又は、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69により搬送されている際には、前記幅規制部材84は、該ローラ対67,69による搬送力に負けて、記録紙Pを幅規制部材85の側に押すことはできない。すなわち、幅規制部材84の付勢力は、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の従動ローラ67b,69bを前記切換え機構により圧着解除状態に切り換えたときに、記録紙Pをその幅方向に移動させることが可能な値に設定されている。このため、幅規制部材84は、記録紙Pの搬送中は、記録紙Pの幅方向の位置を補正することはできず、記録紙Pの蛇行に伴って記録紙Pの幅方向に移動する。この結果、記録紙Pは、前記基準位置から図10で左側にずれる傾向にある。
【0097】
そこで、補正機構81は、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の従動ローラ67b,69bを圧着解除状態に切り換えることで、幅規制部材84の付勢により記録紙Pを幅規制部材85の側へ移動させることによって、搬送路に対する記録紙Pの幅方向の位置を補正する。具体的には、記録紙Pの先端が所定位置(例えば供給ローラ対69の少し下流側)に達したときに、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69による記録紙Pの搬送を停止し、その後、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の従動ローラ67b,69bを前記切換え機構により圧着解除状態にする。これにより、記録紙Pはフリー状態になるため、前記幅規制部材84の付勢によって幅規制部材85の側へ移動し、記録紙Pが搬送路の幅方向の基準位置に正確に合わせられる。このようにして搬送路に対する記録紙Pの幅方向の位置が補正されるとともに、搬送路に対する記録紙Pの姿勢(傾き)も正規の姿勢に補正される。そして、前記圧着解除から所定時間(記録紙Pが幅規制部材84の付勢によって移動して補正が完了するまでの時間)が経過したとき、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69の従動ローラ67b,69bを前記切換え機構により圧着状態にして、スイッチバックローラ対67及び供給ローラ対69による記録紙Pの搬送を再開する。
【0098】
前記補正動作は、同じ記録紙Pに対して1回又は複数回実行されるものであり、複数回実行される場合には、前記搬送の再開から記録紙Pが所定量だけ搬送されたときに、搬送を再度停止して、前記と同様の動作を繰り返す。前記補正動作の実行回数は、記録紙Pの特性(長さ、厚み等の寸法特性や、硬さ、面質(光沢やマット)等の材料特性)に応じて決定される。例えば、記録紙Pの長さ(前述の如くオペレータによって入力される記録紙Pの大きさ)が長くなるほど前記実行回数を多くして、記録紙Pの長さ方向全体に亘って幅方向の位置の補正を行う。また、記録紙Pの厚みや硬さ(オペレータが入力するか、又はICチップに記憶しておいて、それを読み取る)等によって、記録紙Pが幅方向に移動し難くなるので、その分だけ前記実行回数を多くする。この実行回数に応じて、補正動作の実行に際して記録紙Pを停止させる位置(つまり前記所定位置及び所定量)を変更することが好ましい。
【0099】
こうして記録紙Pは、搬送路の幅方向の基準位置に正確に合わされた状態で印刷搬送部22(印刷部21)に供給され、このことで、印刷部21にて記録紙Pの適切な位置に安定的に印刷が行われ、印刷品質が向上する。
【0100】
前記Uターン部45、リバース搬送部61及びスイッチバック部66は、前記印刷搬送部22の下流側端部と上流側端部とを接続して該印刷搬送部22と共にプリントヘッドHを囲むような周回搬送路を形成しかつ該印刷搬送部22の下流側端部より送り出された、表側面に印刷された記録紙Pを、表裏反転させて該印刷搬送部22の上流側端部へ供給する記録紙再供給部88を構成する。この記録紙再供給部88により、表側面に印刷された記録紙Pを、表裏反転させて印刷部21へ再供給することができ、この記録紙Pの裏側面にも印刷することで、記録紙Pの両面に印刷を行うことができる。
【0101】
前記裏側面に印刷された記録紙Pは、Uターン部45及びリバース搬送部61により、表側面に印刷された後の搬送時(当該記録紙Pの1回目の搬送時)と同様に、スイッチバック部66へと搬送される。このとき、スイッチバック部66のスイッチバックローラ対67は正回転し続けて、記録紙Pを載置トレイ74上に排出する。尚、裏側面に印刷された記録紙PがUターン部45及びリバース搬送部61により搬送される際、搬送ローラ対46,48,50,62の駆動ローラ46a,48a,50a,62aが記録紙Pの表側面に接触することになるが、この時点では、表側面に付着したインクは既に完全に乾燥しているので、記録紙Pを1回目の搬送時と同じ速度で搬送しても問題はない。但し、より一層印刷品質を向上させるべく、2回目の搬送時の搬送速度を1回目の搬送時よりも遅くすることも可能である。
【0102】
前記記録紙再供給部88は、前記印刷部21にて1枚の記録紙Pへの印刷中に、当該記録紙Pよりも前に印刷した少なくとも1枚の記録紙Pを保持可能な搬送経路長さに設定されている。これにより、1枚の記録紙Pの表側面に印刷してから裏側面に印刷するまでの期間を、後続の少なくとも1枚の記録紙Pの印刷に利用することができる。
【0103】
例えば、前記複数種類の大きさのうち最も小さい記録紙Pに対して両面印刷を行う場合、1枚目から4枚目までの記録紙Pを連続してカセット5から印刷部21へ供給して、印刷部21にてそれら記録紙Pの表側面に連続して印刷を行う。4枚目の記録紙Pに対して印刷を行っているときに、先に印刷された3枚の記録紙Pは、記録紙再供給部88のいずれかの部分に位置している(通常、1枚目の記録紙Pはスイッチバック部66に、2枚目の記録紙Pはリバース搬送部61に、3枚目の記録紙PはUターン部45にそれぞれ位置している)。そして、4枚目の記録紙Pへの印刷が終了すると、今度は、表側面に印刷した前記1枚目の記録紙Pを印刷部21へ供給して該1枚目の記録紙Pの裏側面に印刷を行い、続けて前記2枚目から4枚目までの記録紙Pの裏側面に連続して印刷を行う。この4枚目の記録紙Pの裏側面に印刷を行っているときに、1枚目の記録紙Pはスイッチバックローラ対67によって載置トレイ74上に排出され、2枚目及び3枚目の記録紙Pはリバース搬送部61及びUターン部45にそれぞれ位置する。
【0104】
前記4枚目の記録紙Pの裏側面への印刷が終了すると、今度は5枚目から8枚目までの記録紙Pを連続してカセット5から印刷部21へ供給し、印刷部21にてそれら記録紙Pの表側面に連続して印刷を行う。こうして4枚の記録紙Pを1組として記録紙Pの表側面及び裏側面に印刷を順次行っていく。尚、両面印刷を行う2組の間に、片面印刷を行う組を介在させることも可能である。
【0105】
したがって、本実施形態では、1枚の記録紙Pのみに対して両面印刷を行う場合には、表側面に印刷された記録紙Pが記録紙再供給部88の長い搬送経路を通った後に該記録紙Pの裏側面に印刷されるので、処理時間が長くなるが、業務用途等の所定枚数以上の記録紙に対して両面印刷を行う場合には、記録紙再供給部88により少なくとも1枚の記録紙Pを搬送中に他の記録紙Pに対して印刷を行うことができ、印刷処理能力を向上させることができる。また、印刷部21にて記録紙Pの表側面に付着したインクを、裏側面に印刷を行うまでの間に十分に乾燥させることができ、この乾燥状態で裏側面に印刷することで、記録紙Pの両面がインクで同時に濡れるようなことはなくなり、インクの染み込みによる裏写り等が生じるのを確実に防止することができる。また、記録紙Pにカールや波打現象が生じ難くなる。よって、記録紙Pの印刷品質が低下するのを防止することができる。
【0106】
(他の実施形態)
本発明の構成は、前記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、前記実施形態では、フレーム部材100は、アルミ鋳造品とされているが、これに限ったものではなく、例えば鋳鉄鋳造品からなるものであってもよい。これによれば、アルミ鋳造品に比べて振動吸収性に優れた鋳鉄鋳造品の特性を利用して、印刷時に発生する振動を該フレーム部材100により確実に吸収することができて、記録紙の印刷品質を可及的に向上させることができる。
【0107】
また、前記実施形態では、両搬送ローラ対24,25を駆動するためのモータ58,59をフレーム部材100に取り付けるためのアクチュエータ支持部153をフレーム部材100に設けるようにしているが、例えばプリンタ本体部1の筐体フレームに取付けられた別部材に設けるようにしてもよい。
【0108】
また、前記実施形態では、上流側ローラ対24及び下流側ローラ対25をそれぞれ、別のモータ58.59で駆動するようにしているが、同じモータで駆動するようにしてもよい。
【0109】
また、前記実施形態では、インクジェットプリンタAは、記録紙再供給部88を備えることで記録紙Pの両面に印刷可能に構成されているが、片面印刷のみを行うものであってもよいことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、記録紙の搬送経路に設けられ、該記録紙を支持するプラテンと、該プラテンに対向して配設され、プラテンを挟んでその上流側及び下流側にそれぞれ配設される第1及び第2搬送ローラ対と、該プラテン上を搬送される記録紙に対して主走査方向に往復移動しながらインクを吐出して画像を印刷するプリントヘッドと、該プリントヘッドを駆動支持するヘッド駆動機構と、を備えたインクジェットプリンタに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの内部の構成を示す、側方から見た概略図である。
【図3】カセットの内部の詳細を示す断面図である。
【図4】印刷部及びUターン部の詳細を示す側面図である。
【図5】印刷部の詳細を示す平面図である。
【図6】スイッチバック部のスイッチバックローラ対が、リバース搬送部より搬送されてきた記録紙を受け取っている状態を示す概略図である。
【図7】スイッチバックローラ対の従動ローラが第2の位置に切り換えられた状態を示す図6相当図である。
【図8】スイッチバックローラ対が記録紙を供給ローラ対のところまでスイッチバックさせた状態を示す図6相当図である。
【図9】記録紙が手差し挿入用開口部より手差し挿入されている状態を示す図6相当図である。
【図10】スイッチバック部の詳細を示す斜視図である。
【図11】図10のC方向矢示図である。
【図12】スイッチバックローラ対及び供給ローラ対の従動ローラを圧着解除状態にしている状態を示す図11相当図である。
【図13】両面印刷ユニットをプリンタ本体部から外した状態を示す図2相当図である。
【図14】プリントユニットを示す、プリンタ前方斜め右側の上方から見た斜視図である。
【図15】プリントユニットのプリントヘッドを取り外した状態を示す、プリンタ前方斜め右側の上方から見た斜視図である。
【図16】フレーム部材を示す、プリンタ前方斜め右側の上方から見た斜視図である。
【図17】フレーム部材を示す、プリンタ後方斜め右側の上方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0112】
A インクジェットプリンタ
H プリントヘッド
P 記録紙
21 印刷部
22 印刷搬送部
23 プラテン
24 上流側ローラ対(第1搬送ローラ対)
25 下流側ローラ対(第2搬送ローラ対)
58 モータ(駆動アクチュエータ)
59 モータ(駆動アクチュエータ)
90 プリントユニット(印刷ユニット)
100 フレーム部材
150 プラテン支持部
151 ローラ支持部
152 ヘッド駆動機構支持部
153 アクチュエータ支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙の搬送経路に設けられ、該記録紙を支持するプラテンと、該プラテンに対向して配設され、該プラテン上を搬送される記録紙に対して該記録紙搬送方向に直行する主走査方向に往復移動しながらインクを吐出して画像を印刷するプリントヘッドと、該プリントヘッドを、該主走査方向に往復移動可能に支持して駆動するヘッド駆動機構と、前記プラテンを挟んで前記記録紙搬送方向上流側と下流側とにそれぞれ設けられる、記録紙搬送用の第1搬送ローラ対及び第2搬送ローラ対と、を備えたインクジェットプリンタであって、
前記プラテンを支持するためのプラテン支持部と前記各搬送ローラ対を支持するためのローラ支持部と前記ヘッド駆動機構を支持するためのヘッド駆動機構支持部とを有するフレーム部材を備えていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記第1及び第2搬送ローラ対を駆動する駆動アクチュエータを備え、
前記フレーム部材は、前記駆動アクチュエータを支持するためのアクチュエータ支持部をさらに有していることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記フレーム部材は、一体成形品からなることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項3記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記フレーム部材は、アルミ鋳造品からなることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項3記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記フレーム部材は、鋳鉄鋳造品からなることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記プラテン、前記プリントヘッド、前記ヘッド駆動機構、及び前記第1及び第2搬送ローラ対は、前記フレーム部材を介してユニット化されて印刷ユニットを構成していることを特徴とするインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−69765(P2010−69765A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240796(P2008−240796)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】