説明

インクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの製造方法

【課題】 接着剤の漏れによるノズルの目詰まりを防止することができるインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】 インクが吐出されるノズル(4a)を備えたノズルプレート(4)と、ノズルプレートとともにインクの収容スペースを形成して、屈曲変形により収容スペース内のインクをノズルから吐出させる複数の隔壁部(3a)を備えた圧電部材(3)と、隔壁部の端面およびノズルプレートを固定させるための、複数のフィラー(62)を含む接着剤(60,61)と、を有する。複数のフィラーは、端面およびノズルプレートに接触した状態で、端面に沿って並んで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクをノズルから吐出して画像を形成するインクジェットヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェットヘッドとしては、例えば、特許文献1に記載されているように、圧電部材を屈曲変形させることにより、インクを吐出させるものがある。ここで、インクは、ノズルプレートに形成されたノズルから吐出され、ノズルプレートは、圧電部材に対して接着剤によって固定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したインクジェットヘッドでは、ノズルの近傍において、ノズルプレートおよび圧電部材が接着剤によって固定される。このため、ノズルプレートおよび圧電部材を互いに接着する領域から接着剤がはみ出してしまうと、ノズルにおけるインクの吐出性能に悪影響を与えてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、対象物に対してインクを吐出するインクジェットヘッドであって、インクが吐出されるノズルを備えたノズルプレートと、ノズルプレートとともにインクの収容スペースを形成して、屈曲変形により収容スペース内のインクをノズルから吐出させる複数の隔壁部を備えた圧電部材と、隔壁部の端面およびノズルプレートを固定させるための、複数のフィラーを含む接着剤と、を有する。複数のフィラーは、端面およびノズルプレートに接触した状態で、端面に沿って並んで配置されている。
【0005】
また、本発明の一態様は、インクが吐出されるノズルを備えたノズルプレートと、ノズルプレートとともにインクの収容スペースを形成して、屈曲変形により収容スペース内のインクをノズルから吐出させる複数の隔壁部を備えた圧電部材と、を有するインクジェットヘッドの製造方法であって、ノズルプレートおよび隔壁部の端面のうち少なくとも一方に対して、複数のフィラーを含む接着剤を塗布し、接着剤が塗布された状態において、フィラーがノズルプレートおよび隔壁部の端面に接触するように、ノズルプレートおよび隔壁部を互いに近づく方向に相対的に移動させる。ここで、フィラーを含む接着剤の塗布量は、フィラーによってノズルプレートおよび隔壁部の端面の間に形成されるスペースの体積よりも小さくなっている。ことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
以上に詳述したように、本発明によれば、接着剤に含まれるフィラーを、隔壁部の端面およびノズルプレートに接触させることにより、隔壁部およびノズルプレートの間に、フィラーの平均粒径に応じた隙間を物理的に発生させることができる。この状態であれば、隔壁部およびノズルプレートの間に接着剤の収容スペースを確保することができ、隔壁部およびノズルプレートの間から接着剤が漏れてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態であるインクジェットヘッドにおけるX−Z平面の断面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図(Y−Z断面)である。
【図3】本実施形態であるインクジェットヘッドの平面図である。
【図4】本実施形態であるインクジェットヘッドの一部を示す断面図である。
【図5】本実施形態におけるインク供給装置の構成を示す図である。
【図6】本実施形態において、インクジェットヘッド内におけるインクの循環流路を示す図である。
【図7】本実施形態において、圧電部材の隔壁部にフィラー含有接着剤を塗布した状態を示す図である。
【図8】本実施形態において、圧電部材の隔壁部にノズルプレートを押し付けた状態を示す図である。
【図9】本実施形態の変形例において、フィラー含有接着剤に含まれる2種類のフィラーの状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態であるインクジェットヘッドの構造について、図1から図4を用いて説明する。図1は、インクジェットヘッドの所定面(X−Z平面)内における断面図であり、図2は、図1のA−A断面図である。図3は、インクジェットヘッドの平面図である。図4は、インクジェットヘッドの一部を拡大した断面図である。図1〜図4において、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸である。
【0009】
インクジェットヘッド1は、基板2と、基板2の表面に固定された複数の圧電部材3と、圧電部材3上に配置されたノズルプレート4と、ノズルプレート4および基板2の間に配置された枠部材5とを有している。本実施形態では、2つの圧電部材3がX方向に並んで配置されている。
【0010】
基板2は、例えば、アルミナ(Al)、窒化珪素(Si)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成することができる。圧電部材3は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成することができる。ノズルプレート4は、例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステルで形成することができる。
【0011】
X方向で隣り合う圧電部材3の間には、インク供給路6が設けられており、インク供給路6は、基板2と、2つの圧電部材3と、ノズルプレート4とによって形成されている。インク供給路6には、基板2に形成されたインク供給口2aからインクが供給される。また、インク供給路6は、圧力室7に接続されており、インク供給路6のインクが圧力室7に導かれる。
【0012】
図2に示すように、圧電部材3は、Y方向に並んで配置された複数の隔壁部3aを有しており、Y方向で隣り合う2つの隔壁部3aによって、1つの圧力室7が形成されている。隔壁部3aは、圧電部材3のベース3bから突出しており、矢印P1の方向に分極処理された圧電領域3a1と、矢印P2の方向に分極処理された圧電領域3a2とを有している。矢印P1の分極方向および矢印P2の分極方向は、逆方向(互いに向かい合う方向)となっている。
【0013】
本実施形態において、圧電部材3は、圧電領域3a1を有する部材と、圧電領域3a2を有する部材とを積層することによって構成されている。また、隔壁部3aの圧電領域3a2とベース3bは、一体的に形成されている。
【0014】
圧電部材3のうち、圧力室7を形成する面、具体的には、Y方向で向かい合う2つの側面(隔壁部3aの側面)と底面には、電極層8が形成されている。電極層8は、ニッケル(Ni)で形成された層と金(Au)で形成された層が重なった2層構造となっている。電極層8は、例えば、メッキ法、スパッタ法、蒸着法といった乾式成膜方法によって形成することができ、略均一(製造誤差を含む)の厚さに成膜されている。
【0015】
なお、電極層8は、上述した構成に限るものではない。例えば、電極層8を、銅(Cu)とニッケル(Ni)の2層構造、銅(Cu)とニッケル(Ni)と金(Au)の3層構造、銅(Cu)とニッケル(Ni)とプラチナ(Pt)と金(Au)の4層構造とすることができる。
【0016】
各隔壁部3aに設けられた2つの電極層8に電圧を印加すると、隔壁部3aをせん断変形させることができる。具体的には、Y方向で隣り合う2つの隔壁部3aを、互いに近づく方向に変形させたり、互いに離れる方向に変形させたりすることができる。Y方向で隣り合う2つの隔壁部3aを互いに近づく方向に変形させれば、圧力室7の容積を減少させて、圧力室7内のインクを押し出すことができる。また、Y方向で隣り合う2つの隔壁部3aを互いに離れる方向に変形させれば、圧力室7の容積を増加させることができる。
【0017】
各電極層8には、図3に示すように、配線電極21の一端部が接続されており、配線電極21は、基板2に固定されている。配線電極21の他端部は、フレキシブルケーブル22に接続されており、フレキシブルケーブル22は、駆動回路23に接続されている。図3では、ノズルプレート4を省略しているが、ノズルプレート4に形成される複数のノズル4aについては、位置関係が分かるように示している。
【0018】
駆動回路23で生成された駆動信号は、フレキシブルケーブル22および配線電極21を介して、電極層8に入力される。これにより、圧電部材3の隔壁部3aを、上述したように変形させることができる。
【0019】
ノズルプレート4のうち、各圧力室7に対応した位置には、ノズル4aが形成されている。ノズル4aは、例えば、ドライエッチング又はウェットエッチングによって形成したり、エキシマレーザを用いて形成したりすることができる。ここで、ノズル4aの形成方法は、ノズルプレート9の材料やノズル4aのサイズ等に応じて、適宜選択することができる。
【0020】
ノズル4aは、テーパ面で構成されており、一端側から他端側に向かって径が連続的に変化している。ここで、Y−Z平面において、ノズル4aのテーパ面に沿った直線L1と、ノズルプレート4の表面と直交する直線L2との間の角度θ1(図2参照)は、0度よりも大きく、90度よりも小さくなっている。角度θ1は、ノズル4aからインクを吐出させる性能等を考慮して適宜設定することができる。
【0021】
また、図4に示すように、ノズル4aのうち、圧力室7側の端部における径R1は最も大きくなっており、圧力室7側とは反対側の端部における径R2は最も小さくなっている。
【0022】
圧力室7では、図4の矢印X1で示す方向にインクが移動する。圧力室7内に位置するインクは、上述したように隔壁部3aが変形することに応じて、ノズル4aからインクジェットヘッド1の外部に吐出される。
【0023】
圧力室7は、インク供給路6側とは反対側において、インク排出路9と接続されており、圧力室7内のインクは、インク排出路9に導かれる。インク排出路9は、基板2と、圧電部材3と、ノズルプレート4と、枠部材5とによって構成されている。インク排出路9に導かれたインクは、基板2に形成されたインク排出口2bから、インクジェットヘッド1の外部に排出される。
【0024】
本実施形態では、図1に示すように、2つの圧電部材3の間にインク供給路6を設け、各圧電部材3に対してインク供給路6側とは反対側にインク排出路9を設けているが、これに限るものではない。例えば、2つの圧電部材3の間にインク排出路を設け、各圧電部材3に対してインク排出路側とは反対側にインク供給路を設けることができる。また、Y方向(又はX方向)に並んで配置される圧電部材3の数は、適宜設定することができる。
【0025】
次に、インクジェットヘッド1にインクを供給するインク供給装置30について、図5を用いて説明する。
【0026】
インクジェットヘッド1のインク供給口2aには、チューブ31aを介して第1インクタンク32が接続されている。第1インクタンク32には、インク40が収容されており、第1圧力調整ポンプ33の動作によって、第1インクタンク32内のインク40がチューブ31aを介してインク供給口2aに供給される。
【0027】
ここで、第1圧力調整ポンプ33は、チューブ31bを介して第1インクタンク32と接続されている。第1インクタンク32内の気圧は、第1圧力調整ポンプ33により調整されており、大気圧よりも高い状態に保たれている。これにより、第1インクタンク32内のインク40を、チューブ31aを介してインクジェットヘッド1に供給することができる。第1圧力調整ポンプ33に付した矢印は、第1圧力調整ポンプ33の動作による空気の移動方向を示している。
【0028】
インクジェットヘッド1のインク排出口2bには、チューブ31cを介して第2インクタンク34が接続されており、インク排出口2bから排出されたインクが第2インクタンク34に収容される。第2インクタンク34内のインク40は、輸送ポンプ35の動作によって、チューブ31dを通過して第1インクタンク32に導かれる。すなわち、インク40は、第1インクタンク32、インクジェットヘッド1および第2インクタンク34の経路で循環している。輸送ポンプ35に付した矢印は、輸送ポンプ35の動作に伴うインク40の移動方向を示している。
【0029】
ここで、第2インクタンク34には、チューブ31eを介して第2圧力調整ポンプ36が接続されている。第2圧力調整ポンプ36は、第2インクタンク34内の気圧を大気圧よりも低い状態に保つように調整している。第2圧力調整ポンプ36に付した矢印は、第2圧力調整ポンプ36の動作による空気の移動方向を示している。
【0030】
インクジェットヘッド1が印字動作を長時間行っていると、図6に示すように、大気中の空気がノズル4a内に進入して気泡50が発生するおそれがある。そして、気泡50によって、ノズル4aからインク40を吐出させる性能が低下してしまうおそれがある。
【0031】
本実施形態では、上述したようにインク供給装置30を用いて、インク40を循環させているため、ノズル4aから気泡50が発生したとしても、インク40の流れによって気泡50をインク排出路9から排出させることができる。ここで、図6の点線で示す矢印は、圧力室7内におけるインクの主な移動経路を示している。
【0032】
次に、本実施形態の特徴部分について説明する。具体的には、ノズルプレート4と圧電部材3の隔壁部3aとを固定(接着)する構造について説明する。
【0033】
図7は、ノズルプレート4を隔壁部3aに接着する前の状態を示しており、隔壁部3aの先端面3cには、フィラー含有接着剤60が塗布されている。図7では、1つの隔壁部3aにおける先端部分の拡大図を示している。
【0034】
フィラー含有接着剤60は、接着剤61と、接着剤61に含まれる平均粒径Dのフィラー62とで構成されている。接着剤61の材質としては、ノズルプレート4および圧電部材3(隔壁部3a)を固定することができるものであればよい。例えば、接着剤61として、エポキシ接着剤、レゾルシノール系接着剤、フェノール系接着剤といった熱硬化型接着剤を用いることができる。
【0035】
フィラー62としては、例えば、ガラスやセラミックスを用いることができる。また、フィラー62は、絶縁性材料で形成されていることが好ましい。フィラー62の形状は、適宜設定することができるが、球体とすることが好ましい。
【0036】
フィラー含有接着剤60を隔壁部3aの先端面3cに塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷やバーコータを用いることができる。より具体的には、それらの装置で接着剤をPETフィルム等に薄く塗布した後、ワークへ接着剤を転写する。なお、塗布方法は、フィラー含有接着剤60の塗布量を調節することができる方法であればよい。
【0037】
図7に示す状態において、フィラー62は、隔壁部3aの先端面3cに接触しており、接着剤61の最大高さHは、フィラー62の平均粒径Dよりも大きい。高さHは、隔壁部3aの先端面3cから接着剤61の頂点までの最大距離である。フィラー含有接着剤60を先端面3cに塗布すると、接着剤61の表面張力によって、接着剤61の上面は、上方(重力が作用する方向とは逆方向)に向かって凸となる曲面で構成される。
【0038】
フィラー62の含有量(体積%)は、上述したように、高さHが平均粒径Dよりも大きくなる条件を満たす範囲内で、適宜設定することができる。
【0039】
一方、接着剤61の材料や量(体積)を決定しておけば、接着剤61の最大高さHを概ね特定することができる。最大高さHを特定できれば、最大高さHよりも小さい平均粒径Dを有するフィラー62を用いればよい。
【0040】
隔壁部3aにフィラー含有接着剤60を塗布した後は、図8に示すように、隔壁部3aに対して、ノズルプレート4を矢印Fの方向で押し付ける。この後は、フィラー含有接着剤60に熱を与えて硬化させることにより、ノズルプレート4および隔壁部3aを固定することができる。
【0041】
ここで、接着剤61の高さHは、フィラー62の平均粒径Dよりも大きくなっているため、ノズルプレート4には、フィラー62よりも先に、接着剤61が接触することになる。これにより、接着剤61をノズルプレート4に接触させやすくなり、隔壁部3aの先端面3cに対するノズルプレート4の接着不良を防止することができる。
【0042】
一方、ノズルプレート4を矢印Fの方向に押し付けることにより、接着剤61に含まれるフィラー62を、隔壁部3aの先端面3cに沿って並んで配置させることができる。そして、各フィラー62を、ノズルプレート4および隔壁部3aの先端面3cに接触させることができる。これにより、ノズルプレート4と隔壁部3aの先端面3cとの間隔を、フィラー62の平均粒径Dと略等しくすることができる。
【0043】
ここで、本実施形態では、ノズルプレート4を隔壁部3aに近づけているが、これに限るものではない。すなわち、ノズルプレート4および隔壁部3a(圧電部材3)を互いに近づけるようにすればよく、例えば、ノズルプレート4に対して隔壁部3aを近づけることもできるし、ノズルプレート4および隔壁部3aを互いに近づけることもできる。
【0044】
ここで、フィラー62を球体としておけば、ノズルプレート4および隔壁部3aの間隔を一定に保ちやすくすることができる。また、フィラー含有接着剤60を隔壁部3aの先端面3cに塗布した後に、接着剤61およびフィラー62の比重差を利用して、フィラー62を沈降させることにより、フィラー62を先端面3cに沿って並んで位置させることができる。
【0045】
図8において、フィラー含有接着剤60で形成された層の断面積CSは、下記式(1)の条件を満たしている。断面積CSは、Y−Z平面におけるフィラー含有接着剤60の面積である。
【0046】
CS≦W×D ・・・(1)
ここで、Wは、隔壁部3aの厚さ(Y方向の長さ)であり、Dは、フィラー62の平均粒径Dである。
【0047】
断面積CSを「W×D」の値以下とすることにより、隔壁部3aの先端面3cとノズルプレート4との間に形成されたスペース内に、フィラー含有接着剤60を位置させることができる。
【0048】
フィラー62の平均粒径Dおよび隔壁部3aの厚さWを決めれば、断面積CSの上限値を設定することができる。そして、断面積CSが上限値(「W×D」の値)以下となるように、フィラー含有接着剤60の塗布量を決定すればよい。フィラー含有接着剤60の塗布量(体積)は、接着剤61の体積とフィラー62の体積との和になる。
【0049】
本実施形態では、フィラー62を用いることにより、隔壁部3aの先端面3cと、ノズルプレート4との間に、物理的に隙間を設けることができる。このため、上述したように接着剤61の塗布量を調整しておけば、隔壁部3aの先端面3cとノズルプレート4との間に形成されるスペース内に、接着剤61を収めておくことができる。これにより、隔壁部3aおよびノズルプレート4の間のスペースから接着剤61がはみ出してしまうのを防止することができる。そして、接着剤61のはみ出しを防止することにより、接着剤61がノズルプレート4のノズル4aに移動して、ノズル4aの目詰まりが発生してしまうのを防止することができる。
【0050】
ここで、フィラー62を含まない接着剤を用いると、隔壁部3aの先端面3cに対するノズルプレート4の押し付け力によっては、先端面3cから接着剤がはみ出してしまう。また、先端面3cからはみ出さないように、ノズルプレート4の押し付け力を調整することは困難である。
【0051】
なお、本実施形態では、所定の平均粒径Dを有するフィラー62を接着剤61に含ませているが、これに限るものではない。例えば、平均粒径が互いに異なる複数のフィラーを接着剤61に含ませることができる。
【0052】
図9には、平均粒径がD1である第1フィラー62aと、平均粒径がD1よりも小さいD2である第2フィラー62bとを、接着剤61に含ませた状態を示している。図9では、第1フィラー62aおよび第2フィラー62bの位置関係だけを示している。
【0053】
第1フィラー62aは、図7および図8を用いて説明したように、隔壁部3aの先端面3cおよびノズルプレート4に接触し、これらの間隔を確保するためのフィラーである。第2フィラー62bは、複数の第1フィラー62aで囲まれたスペース内に位置している。
【0054】
図9に示す構成では、第2フィラー62bを接着剤61に含ませることにより、接着剤61の流動を抑制することができる。言い換えれば、第2フィラー62bを用いることにより、接着剤61の流動を制限することができる。これにより、隔壁部3aの先端面3cおよびノズルプレート4の間のスペースから、接着剤61がはみ出してしまうのを防止することができる。
【0055】
なお、図9に示す例では、平均粒径が互いに異なる2種類のフィラー62a,62bを用いているが、これに限るものではなく、平均粒径が互いに異なる3種類以上のフィラーを用いることもできる。
【0056】
また、本実施形態では、隔壁部3aの先端面3cにフィラー含有接着剤60を塗布しているが、これに限るものではない。例えば、ノズルプレート4のうち、隔壁部3aの先端面3cと対向する領域に対して、フィラー含有接着剤60を塗布することができる。この場合には、ノズルプレート4のうち、フィラー含有接着剤60を塗布しない領域をマスクで覆っておけば、フィラー含有接着剤60を所定領域に正確に塗布することができる。また、ノズルプレート4および隔壁部3aの先端面3cに対して、フィラー含有接着剤60を塗布することもできる。
【0057】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0058】
1:インクジェットヘッド、2:基板、3:圧電部材、3a:隔壁部、
3a1,3a2:圧電領域、3b:ベース、3c:先端面、4:ノズルプレート、
4a:ノズル、5:枠部材、6:インク供給路、7:圧力室、8:電極層、
9:インク排出路、21:配線電極、22:フレキシブルケーブル、23:駆動回路、
30:インク供給装置、31a〜31e:チューブ、32:第1インクタンク、
33:第1圧力調整ポンプ、34:第2インクタンク、35:輸送ポンプ、
36:第2圧力調整ポンプ、40:インク、50:気泡、60:フィラー含有接着剤、
61:接着剤、62:フィラー、62a:第1フィラー、62b:第2フィラー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2001−270115号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対してインクを吐出するインクジェットヘッドであって、
インクが吐出されるノズルを備えたノズルプレートと、
前記ノズルプレートとともにインクの収容スペースを形成して、屈曲変形により前記収容スペース内のインクを前記ノズルから吐出させる複数の隔壁部を備えた圧電部材と、
前記隔壁部の端面および前記ノズルプレートを固定させるための、複数のフィラーを含む接着剤と、を有し、
前記複数のフィラーは、前記端面および前記ノズルプレートに接触した状態で、前記端面に沿って並んで配置されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記フィラーが球体であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記端面および前記ノズルプレートの間隔が、前記フィラーの平均粒径と略等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記接着剤は、前記フィラーの平均粒径よりも小さい平均粒径を有するフィラーを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記複数の隔壁部の配列方向に延び、前記ノズルプレートと直交する平面内において、前記フィラーを含む前記接着剤の面積は、前記端面および前記ノズルプレートの間に形成される領域の面積以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
インクが吐出されるノズルを備えたノズルプレートと、前記ノズルプレートとともにインクの収容スペースを形成して、屈曲変形により前記収容スペース内のインクを前記ノズルから吐出させる複数の隔壁部を備えた圧電部材と、を有するインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記ノズルプレートおよび前記隔壁部の端面のうち少なくとも一方に対して、複数のフィラーを含む接着剤を塗布し、
前記接着剤が塗布された状態において、前記フィラーが前記ノズルプレートおよび前記隔壁部の端面に接触するように、前記ノズルプレートおよび前記隔壁部を互いに近づく方向に相対的に移動させ、
前記フィラーを含む前記接着剤の塗布量は、前記フィラーによって前記ノズルプレートおよび前記隔壁部の端面の間に形成されるスペースの体積よりも小さいことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記隔壁部の端面又は前記ノズルプレートに前記接着剤を塗布した状態において、前記接着剤の最大高さが前記フィラーの平均粒径よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記接着剤は、前記フィラーの平均粒径よりも小さい平均粒径を有するフィラーを含むことを特徴とする請求項6又は7に記載のインクジェットヘッドの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−62868(P2011−62868A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214131(P2009−214131)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】