説明

インクジェットヘッドのメンテナンス装置、インクジェット記録ユニット、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドのメンテナンス方法

【課題】効率よく、短時間で、確実にかつ吐出口基板の損傷させることなく、インクジェットヘッドの保守を行うことができるインクジェットヘッドのメンテナンス装置を提供すること。
【解決手段】インクジェットヘッドのヘッド基板の吐出口が形成されている面に対向して配置され、吐出口の配列方向と平行な方向に開口された少なくとも1つの吸引口をもつ吸引部材、吸引口を吐出口の配列方向と直交する方向に移動させる移動機構、及び、吸引部材の吸引口が形成されている側に、吸引口の端部に沿って、配列方向と直交する方向に延設され、ヘッド基板の吐出口が形成された面との間に吐出口から排出されたインクの流路を形成するインクの流路形成部材を備える除去ユニットと、吸引部材内の空気を吸引する吸引ポンプとを有することで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを液滴として吐出するインクジェットヘッドのメンテナンス装置に関し、より詳しくは、インク液滴を吐出する吐出部が複数形成されたインクジェットヘッドのメンテナンス装置、メンテナンス装置を有するインクジェット記録ユニット、メンテナンス装置を有するインクジェット記録装置及びインクジェットヘッドのメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被記録媒体に画像を記録する方法として、インク液滴を吐出させる吐出口を有するインクジェットヘッドを用い、画像信号に応じて吐出口からインク液滴を吐出させる記録方法がある。
【0003】
このように吐出口からインク液滴を吐出させるインクジェットヘッドでは、吐出口(ノズル)が形成されているノズルプレート(ヘッド基板)の表面にインク液滴が付着することがある。このようにインク液滴がノズルプレートの特に吐出口周りに付着すると、インクの吐出方向が不安定になり、高画質な画像を形成することができないという問題がある。
【0004】
このノズルプレートの表面に付着するインク液滴、汚れを除去する方法としては、柔軟な材質を用いた板状のブレードで表面を擦って除去したり、インク液滴、汚れ等の吸収性を有する部材をノズルプレートに接触させて吸収する方法がある。
しかしながら、ヘッド製造時のノズル孔製作精度向上のためにノズルプレート材質にあまり硬質ではない、つまり硬度の低い材料を用いる場合や、ノズルプレート表面に撥液処理が施されている場合は、上述のようなブレードや吸収体を用い、物理的な接触を伴う方法は、ノズルの縁部構造を破壊したり、撥液処理面を傷つけたりしてしまう可能性がある。
ノズルの縁部構造が破壊されたり、撥液処理面が傷つけられたりすると、インク液滴の吐出に乱れが生じ、高画質な画像形成することができない。
ここで、吐出口基板の表面に付着したインク液滴を除去する装置として、例えば、特許文献1及び2に示すメンテナンス装置がある。
【0005】
特許文献1には、ヘッド本体内に多数のノズルが配列形成されてヘッド本体端部が平面状に形成されたインクジェットヘッドのメンテナンス装置であって、大気圧より低い負圧を生成する負圧生成手段と、この負圧生成手段に連通接続され、吸引用開口が一若しくは数個単位のノズル領域に面した大きさに形成される局所吸引手段と、この局所吸引手段の吸引用開口をノズルの配列方向に向かって相対的に移動させる吸引用開口移動手段と、少なくとも上記局所吸引手段及びヘッド本体端面のノズル面近傍の間を非接触状態に保持するギャップ保持手段とを備えるインクジェットヘッドのメンテナンス装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、ノズルプレートにインクが付着するなど、メンテナンスが必要な場合に、キャップが移動され、キャップゴムとヘッド前面のノズルプレート面との距離Lが所定距離となる位置まで離し、この状態でポンプを駆動することにより、ノズルプレート面上のインクを、キャップ内に吸引するインク噴射装置が記載されている。
また、このインク噴射装置は、ノズルプレート状の撥水性膜が劣化することなくインクの除去を行うことができると記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平05−201028号公報
【特許文献2】特開平08−58103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2に記載されているように、吐出口基板から一定距離離間した位置から吸引することにより、メンテナンス時に吐出口基板表面を傷つけることを防止できる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置は、吸引用開口移動手段により、局所吸引手段の吸引口をノズル(吐出口)の配列方向に向かって相対的に移動する必要があるため、処理に時間がかかり、かつ装置が複雑になるという問題点がある。ヘッド基板上に多数の吐出口が形成されているインクジェットヘッドの場合は、この問題が顕著になる。
【0010】
また、特許文献2に記載のインク噴射装置では、ノズル(吐出口)を複数形成した場合については、何ら記載されていない。
ここで、例えば、複数のノズルに対して1つのキャップを配置した場合は、隣接するノズル間のインクがノズルプレート(吐出口基板)上に残ってしまうことがあるという問題がある。また、ポンプとして大型のポンプが必要となるという問題もある。
また、例えば、複数のノズル毎にキャップを設けた場合は、装置構成が複雑になるという問題がある。特にノズルを微細な間隔で配置したインクジェットヘッドでは、キャップを形成することが困難であるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、効率よく、短時間で、確実にかつ吐出口基板の損傷させることなく、インクジェットヘッドの保守を行うことができるインクジェットヘッドのメンテナンス装置、インクジェット記録ユニット、インクジェット記録装置、及び、インクジェットヘッドのメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、インク液滴を吐出する複数の吐出口がヘッド基板に列状に形成されたインクジェットヘッドのメンテナンス装置であって、
前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に対向し、かつ、前記ヘッド基板に接触しない位置に配置され、前記吐出口の配列方向と平行な方向に開口する、少なくとも1つの吸引口をもつ吸引部材、前記吐出口の配列方向と直交する方向に前記吸引口を移動させる移動機構、及び、前記吸引部材の前記吸引口側に、前記吸引口の端部から前記吐出口の配列方向と直交する方向に延設され、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成された面との間に、前記吐出口から排出されたインクの流路を形成するインクの流路形成部材を備える除去ユニットと、
前記吸引部材内の空気を吸引する吸引ポンプとを有し、
前記移動機構は、前記吸引ポンプにより空気及びインクの少なくとも一方を吸引している前記吸引口を移動させることを特徴とするインクジェットヘッドのメンテナンス装置を提供するものである。
【0013】
ここで、本発明の第1の態様において、前記流路形成部材は、前記吸引口の、前記吐出口の配列方向と直交する方向の2つの端部のうちの、一方の端部の全長に亘って、前記吐出口の配列方向と直交する方向に突出する板状部材であることが好ましい。
【0014】
また、前記移動機構は、前記吸引口を、少なくとも、前記吐出口の配列方向と直交する方向における前記吐出口の大きさよりも長い距離移動させることが好ましい。
また、前記移動機構は、前記吸引口を前記吐出口の配列方向と直交する方向に往復移動させることが好ましい。
また、前記移動機構は、前記吸引口を、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に平行に移動させることが好ましい。
または、前記移動機構は、前記吸引口を、前記吐出口の配列方向と平行な方向を軸として回動させることも好ましい。
【0015】
さらに、前記除去ユニットを前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に直交する方向に移動させる除去ユニットの離接機構を有することが好ましい。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の第2の態様は、インク液滴を吐出する複数の吐出口がヘッド基板に列状に形成されたインクジェットヘッドと、
前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に対向して、かつ、前記ヘッド基板と接触しない位置に配置され、前記吐出口の配列方向と平行な方向に開口する、少なくとも1つの吸引口をもつ吸引部材、前記吐出口の配列方向と直交する方向に前記吸引口を移動させる移動機構、及び、前記吸引部材の前記吸引口側に、前記吸引口の端部から前記吐出口の配列方向と直交する方向に延設され、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成された面との間に、前記吐出口から排出されたインクの流路を形成するインクの流路形成部材を備える除去ユニットと、
前記吸引部材内の空気を吸引する吸引ポンプとを有し、
前記移動機構は、前記吸引ポンプにより空気及びインクの少なくとも一方を吸引している前記吸引口を移動させることを特徴とするインクジェット記録ユニットを提供するものである。
【0017】
ここで、本発明の第2の態様において、前記流路形成部材は、前記吸引口の、前記吐出口の配列方向と直交する方向の2つの端部のうちの、一方の端部の全長に亘って、前記吐出口の配列方向と直交する方向に突出する板状部材であることが好ましい。
【0018】
また、前記移動機構は、前記吸引口を、少なくとも前記吐出口の配列方向と直交する方向における前記吐出口の大きさよりも長い距離移動させることが好ましい。
また、前記移動機構は、前記吸引口を前記吐出口の配列方向と直交する方向に往復移動させることが好ましい。
また、前記移動機構は、前記吸引口を、前記吐出口が形成されている面に平行に移動させることが好ましい。
または、前記移動機構は、前記吸引口を、前記吐出口の配列方向と平行な方向を軸として回動させることも好ましい。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の第3の態様は、インク液滴を吐出する複数の吐出口がヘッド基板に列状に形成されたインクジェットヘッドと、
前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に対向し、かつ、前記ヘッド基板に接触しない位置に配置され、前記吐出口の配列方向と平行な方向に開口する、少なくとも1つの吸引口をもつ吸引部材、前記吐出口の配列方向と直交する方向に前記吸引口を移動させる移動機構、及び、前記吸引部材の前記吸引口側に、前記吸引口の端部から前記吐出口の配列方向と直交する方向に延設され、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成された面との間に、前記吐出口から排出されたインクの流路を形成するインクの流路形成部材を備える除去ユニットと、
前記吸引部材内の空気を吸引する吸引ポンプとを有し、
前記移動機構は、前記吸引ポンプにより空気及びインクの少なくとも一方を吸引している前記吸引口を移動させることを特徴とするインクジェット記録装置を提供するものである。
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の第4の態様は、インク液滴を吐出する複数の吐出口がヘッド基板に列状に形成されたインクジェットヘッドのメンテナンス方法であって、
前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に対向し、かつ、前記ヘッド基板に接触しない位置に配置され、前記吐出口の配列方向と平行な方向に開口する、少なくとも1つの吸引口をもつ吸引部材の、前記吸引口の端部から前記吐出口の配列方向と直交する方向に延設され、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成された面との間にインクの流路を形成するインクの流路形成部材を、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面と対向し、かつ、前記ヘッド基板に接触しない位置に配置して、前記吐出口からインクを排出し、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面を前記インクで濡らし、
次いで、前記吸引口を前記ヘッド基板の前記吐出口に接触しない位置に配置して、前記吸引口から空気及びインクの少なくとも一方を吸引しつつ、前記吐出口の配列方向と直交する方向に移動させるインクジェットヘッドのメンテナンス方法を提供するものである。
【0021】
本発明の第4の態様において、前記吸引部材の内部を負圧とし、前記吸引口から空気及びインクの少なくとも一方を吸引しつつ、前記吸引口を前記吐出口の配列方向と直交する方向に往復移動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ヘッド基板とインク流路形成部材との間にインク流路を形成することができ、これにより、吐出口からインクを吐出してヘッド基板の吐出口が形成されている面をインクで濡らす際に使用するインクの量を低減して、ヘッド基板の吐出口が形成されている面を効率よく濡らすことができ、効率よくインクジェットヘッドのメンテナンスを行うことができる。
また、ヘッド基板の吐出口が形成されている面の吐出口周りのインク液滴、固着物等の汚れの吸引時に、吸引口を移動させる距離を短くすることができる。これにより、短時間でかつ効率よくインクジェットヘッドのメンテナンスを行うことができる。
また、吸引口の移動距離を短くすることができ、移動機構の構成を簡単にすることができ、さらに、装置を安価にすることができる。
【0023】
また、吸引口を往復移動させることで、吐出口周りのインク液滴、固着物等の汚れをより確実に吸引し、除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の第1の態様に係るインクジェットヘッドのメンテナンス装置、第2の態様に係るインクジェット記録ユニット、第3の態様に係るインクジェット記録装置及び第4の態様に係るインクジェットヘッドのメンテナンス方法について、添付の図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
まず、本発明の第1の態様に係るインクジェットヘッドのメンテナンス装置を備える本発明の第3の態様に係るインクジェット記録装置を用いるデジタルラベル印刷装置の一実施形態を説明する。
図1は、デジタルラベル印刷装置100の一例を示す概略構成図であり、図2は、図1に示すデジタルラベル印刷装置100に用いるラベル印刷用被記録媒体の縦断面図であり、図3は、図1に示したデジタルラベル印刷装置100の描画部112を拡大して示す概略斜視図である。
【0026】
本実施形態のデジタルラベル印刷装置100は、活性エネルギー線(活性光線)硬化型インクである紫外線硬化型インクを用いた紫外線硬化型インクジェットデジタルラベル印刷装置であり、箔押し部を有し、箔押し印刷可能なラベル印刷装置である。
ここで、箔押し印刷とは、書籍の表紙や背表紙などに金色箔、銀色箔、色箔などの箔を、加熱した凸版により相手部材に押圧して箔を加熱圧着(箔押し)させるもので、ホットスタンプとも言う。
【0027】
図1に示すように、デジタルラベル印刷装置100は、基本的に搬送部110と、下塗部111と、描画部112と、メンテナンス部114と、平滑化部116と、箔押し部118と、ラベル抜き部120と、制御部121とを有する。制御部121は、搬送部110、下塗部111、描画部112、メンテナンス部114、平滑化部116、箔押し部118、ラベル抜き部120の各種動作を制御する。
【0028】
ここで、搬送部110は、連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P(以下「被記録媒体P」という。)を、一定方向(図1中左から右方向)に搬送するものであり、下塗部111、描画部112、平滑化部116、箔押し部118、ラベル抜き部120は、被記録媒体Pの搬送方向順、つまり上流から下流方向に、下塗部111、描画部112、平滑化部116、箔押し部118、ラベル抜き部120の順に配置されている。また、描画部112の被記録媒体Pを介して対向する位置には、メンテナンス部114が配置されている。
ここで、本実施形態の被記録媒体Pは、図2に示すように、裏面に粘着剤180aが塗布された粘着シート180を、台紙である剥離紙182上に重ね合わせた2枚構造である。
【0029】
搬送部110は、供給ロール122と、搬送ローラ対124、126、128、130、132と、製品巻取部134とを有する。
供給ロール122には、連続紙状のラベル印刷用被記録媒体P(以下「被記録媒体P」という。)がロール状に巻き取られている。搬送ローラ対124、126、128、130、132は、図示しない搬送モータにより回転駆動され、被記録媒体Pを供給ロール122から繰り出して、描画部112、平滑化部116、箔押し部118、ラベル抜き部120へと順次搬送する。
製品巻取部134は、被記録媒体Pの搬送方向の最下流に配置され、搬送ローラ対124、126、128、130、132により搬送され、描画部112、平滑化部116、箔押し部118、ラベル抜き部120を通過した被記録媒体Pを巻き取る。
【0030】
下塗部111は、被記録媒体Pに下塗り液を塗布する塗布ロール202と、塗布ロール202を回転させる駆動部204と、塗布ロール202に付着する下塗り液の量を調整するブレード206と、塗布ロール202に対して被記録媒体Pが所定位置となるように被記録媒体Pを支持する位置決め部210と、下塗り液が塗布され、下塗り層が形成された被記録媒体Pに紫外線を照射し下塗り液(下塗り層)を半硬化状態とする下塗り液半硬化部216とを有する。
【0031】
塗布ロール202は、被記録媒体Pの搬送経路において供給ロール122の下流側に、被記録媒体Pの画像が形成される側の面に当接して配置されている。
塗布ロール202は、被記録媒体Pの幅よりも長いロールであり、その表面(外周面)に一定間隔毎に、つまり、均等に凹部が形成されている、いわゆるグラビアローラである。
ここで、塗布ロール202に形成する凹部の形状は特に限定されず、丸、矩形、多角形、星型等の種々の形状とすることができる。また、凹部は、塗布ロールの全周に溝状に形成してもよい。
【0032】
駆動部204は、塗布ロール202と接続されており、塗布ロール202を被記録媒体Pの搬送方向とは、逆の方向に回転させる。(図1中時計周り)
駆動部204による駆動方法は特に限定されず、ギア駆動、プーリー駆動、ベルト駆動、ダイレクト駆動等の種々の塗布ロール202を回転させる方法を用いることができる。
【0033】
ブレード206は、被記録媒体Pの搬送方向の下流側の塗布ロール202の表面に当接して配置されている。
また、塗布ロール202とブレード206との当接部(接触部)の上部に形成される空間(以下「貯留部208」という。)には、下塗り液が貯留されている。また、貯留部208には、必要に応じて図示しない供給タンクから下塗り液が供給される。
これにより、塗布ロール202は、貯留部208に下塗り液に浸漬された後、かつ、被記録媒体Pと接触する。
ブレード206は、塗布ロール202が貯留部208に浸漬することで、付着した下塗り液のうち必要以上に付着した下塗り液を掻き落とし、塗布ロール202に付着した下塗り液の付着量を一定量にする。具体的には、ブレード206は、塗布ロール202の表面に形成されている凹部に保持された下塗り液を除いて、塗布ロール202の他の部分に付着した下塗り液を掻き落とす。
これにより、塗布ロール202の被記録媒体Pと接触する部分に保持されている下塗り液は、凹部に保持されている下塗り液のみとすることができる。つまり、被記録媒体Pと接触する下塗り液の量を一定にすることができる。
【0034】
位置決め部210は、位置決めロール212及び214を有し、塗布ロール202と接触する位置の被記録媒体Pが所定の位置となるように被記録媒体Pを支持する。つまり、位置決め部210は、塗布ロール202と被記録媒体Pとが接触する位置における被記録媒体Pの搬送経路を所定の位置とする。
位置決めロール212は、被記録媒体Pの画像が形成される面(下塗り液が塗布される面)とは反対側の面側で、かつ、被記録媒体Pの搬送方向において、搬送ローラ対124と塗布ロール202との間に配置されている。
位置決めロール214は、被記録媒体Pの画像が形成される面とは反対側の面側で、かつ、被記録媒体Pの搬送方向において、塗布ロール202と後述する下塗り液半硬化部216との間に配置されている。
つまり、位置決めロール212及び214は、それぞれ被記録媒体Pを介して塗布ロール202とは反対側に、被記録媒体Pの搬送方向において塗布ロール202を挟むように、つまり、塗布ロール202の上流側と下流側にそれぞれ配置されている。
この位置決めロール212及び214は、被記録媒体Pの画像が形成される面とは反対側の面から被記録媒体Pを支持する。
【0035】
下塗部111は、以上のような構成であり、駆動部204が、塗布ロール202を被記録媒体Pの搬送方向とは逆方向に回転させる。回転している塗布ロール202の表面は、貯留部208に貯留された下塗り液に浸漬された後、ブレード206と当接し、表面に保持された下塗り液の量を一定量とされた後、被記録媒体Pと接触し、被記録媒体P上に下塗り液を塗布する。このように、塗布ロール202を被記録媒体Pの搬送方向とは逆回転させて、被記録媒体Pに下塗り液を塗布することで、平滑化され、かつ、ムラのない良好な塗布面状の下塗り液の層(以下「下塗り層」ともいう。)を被記録媒体P上に形成することができる。
被記録媒体Pと接触した塗布ロール202は、さらに回転し、再び貯留部208の下塗り液に浸漬される。
このようにして、下塗部111は、塗布ロール202を回転させて、被記録媒体Pの表面に下塗り液を塗布することで、被記録媒体Pの表面に下塗り層を形成する。
【0036】
ここで、塗布ロール202を被記録媒体Pの搬送方向とは逆方向に回転させることで、被記録媒体P上に面状が改善された下塗り層Uを形成することができる。つまり、被記録媒体P上に表面粗さが小さい下塗り層を形成することができ、これにより高画質な画像を形成することができる。
【0037】
下塗り液半硬化部216は、UVランプを有し、被記録媒体Pの搬送経路に対向して配置されている。ここで、UVランプは、紫外線を射出する光源であり、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等、種々の紫外線光源を用いることができる。
下塗り液半硬化部216は、対向する位置を通過する被記録媒体Pの幅方向の全域に紫外線を照射する。
【0038】
下塗り液半硬化部216は、対向する位置を通過する、表面に下塗り液が塗布された被記録媒体Pに紫外線を照射し、被記録媒体Pの表面に塗布された下塗り液を半硬化状態にする。つまり、下塗り液半硬化部14は、被記録媒体P上に塗布された下塗り液を、半硬化した状態とする。下塗り液が半硬化された状態については、後ほど詳細に説明する。
【0039】
描画部112は、記録ヘッドユニット135と、インク貯蔵/装填部137と、紫外線照射部138とを有する。
記録ヘッドユニット135は、記録ヘッド(以下「インクジェットヘッド」ともいう。)136Y,136C,136M,136Kを有し、被記録媒体Pの搬送経路に対向する位置、つまり、インク液滴を吐出する吐出部先端が被記録媒体Pに対向して配置されている。
【0040】
記録ヘッド136Y,136M,136C,136Kは、それぞれ、吐出部からイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)色のインクを吐出するインクジェットヘッドであり、被記録媒体Pの搬送方向の上流から下流に向かって、記録ヘッド136Y,記録ヘッド136C,記録ヘッド136M,記録ヘッド136Kの順に配置されている。また、記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kは、インク貯蔵/装填部137及び制御部121に接続されている。
記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kは、図3に示すように、被記録媒体Pの搬送方向に直交する方向の幅が、搬送する被記録媒体Pの最大幅を越える領域に複数の吐出部(ノズル)が列状に配置されているフルライン型のインクジェットヘッドである。記録ヘッドの構造は、後ほど詳細に説明する。
【0041】
本実施形態のように、記録ヘッドをフルライン型とすることで、被記録媒体Pと描画部112を記録ヘッドの吐出部の延在方向(配列方向)と直交する方向(副走査方向)に相対的に1度、移動させることで(すなわち1回の走査で)、被記録媒体Pの全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
また、被記録媒体Pを搬送しつつ、各記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kからそれぞれ色インクを吐出することにより被記録媒体P上にカラー画像を形成することができる。
【0042】
インク貯蔵/装填部137は、各記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kに対応する色のインクを貯蔵するインク供給タンクを有する。
インク供給タンクとしては、例えば、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示せず)からタンク内にインクを補充する方式や、タンクごと交換するカートリッジ方式を用いることができる。
インク貯蔵/装填部137の各インク供給タンクは、図示しない管路を介して各記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kと連通されており、各記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kにインクを供給する。
【0043】
紫外線照射部138は、活性エネルギー線照射光源であり、各記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kに対応して、それぞれの記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kの下流側に配置されている。紫外線照射部138としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、UVLED等の種々の紫外線光源を用いることができる。
紫外線照射部138は、各記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kを対向する位置を通過し、画像が形成された被記録媒体Pに紫外線を照射する。つまり、紫外線照射部138は、記録ヘッドから吐出され被記録媒体P上に乗ったインクが直後に硬化するエネルギーを被記録媒体上のインクに与え、被記録媒体P上のインクを半硬化、または硬化させる。
【0044】
ここで、紫外線照射部138は、射出した紫外線が被記録媒体Pに乗ったインクに照射され、かつ、記録ヘッド136Y、136C、136M、136Kのインクの吐出口には照射されない位置または構成とすることが好ましい。このように、インクの吐出口に紫外線が照射されるのを防止することで、吐出口でインクが硬化することを防止できる。
また、紫外線照射部138近傍の各部には、光反射防止の処置(例えば、つや消しの黒色処理)を施すのが好ましい。
【0045】
メンテナンス部114は、被記録媒体Pの搬送経路を介して記録ヘッドユニット135に対向する位置に配置されている。メンテナンス部114は、複数(図示例では4個)のメンテナンス装置30を有する。
メンテナンス装置30は、記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kのそれぞれに対向する位置に配置されている。図1では、メンテナンス装置30が、被記録媒体Pの画像が形成されない面側(裏面側)の、記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kによる画像記録や、被記録媒体の搬送を妨げない位置である待機位置に配置されている。
【0046】
次に、平滑化部116は、被記録媒体Pの搬送方向において、描画部112の下流側に配置され、被記録媒体P表面に、透明な、活性エネルギー線(本実施形態では紫外線)硬化型液(以下「活性エネルギー線硬化型透明液」または、単に「透明液」ともいう。)を供給する透明液供給手段であるニスコーター142と、被記録媒体Pの後述する箔供与範囲を押圧して平滑にする平面加圧部材146と、透明液に活性エネルギー線を照射して硬化させる活性エネルギー線照射手段である紫外線照射部148とを有する。
【0047】
ニスコーター142は、一対の塗布ロール144,145を有する。
塗布ロール144,145は、表面に透明液が付着して(含浸されて)おり、搬送手段110により搬送される被記録媒体Pを挟持する位置に配置されている。塗布ロール144,145は、被記録媒体Pを挟持しつつ、被記録媒体Pの移動に対応して(同期して)回転することで、描画部112を通過し画像が形成された被記録媒体Pの表面(画像が形成されている面)に透明液を塗布する。
【0048】
ここで、ニスコーター142によって塗布される透明液は、紫外線照射により硬化可能な活性エネルギー線硬化型透明液であり、主成分として、少なくとも重合性化合物と光開始剤を含む、例えば、カチオン重合系組成物、ラジカル重合系組成物、水性組成物などである。
【0049】
平面加圧部材146は、被記録媒体Pの搬送方向において、ニスコーター142の下流側に、平滑な表面146aを被記録媒体Pに向けて、上下方向(図に示す矢印方向)に移動可能な状態で配置されている。
平面加圧部材146は、上下方向に移動し、被記録媒体Pと接触して、平滑な表面146aで少なくとも被記録媒体Pの箔供与範囲の表面(画像面)を押圧し、被記録媒体Pの表面に吐出され、画像を形成するインクを平滑にする。
なお、平滑な表面146aは、少なくとも箔供与範囲より大きな面積を有する。
【0050】
紫外線照射部148は、被記録媒体Pの搬送方向において、平面加圧部材146の下流側に配置されている。紫外線照射部148は、活性エネルギー線(本実施形態では、紫外線)を被記録媒体Pに照射して、被記録媒体Pの表面に塗布され且つ平滑化された透明液を硬化させる。紫外線照射部148としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、UV―LEDなどを用いることができる。
【0051】
なお、ニスコーター142および紫外線照射部148は、被記録媒体Pの箔供与範囲を平滑にするための必須装置ではないが、透明液を塗布した方が、良好な平滑面が得られるため設置することが好ましい。
【0052】
箔押し部118は、箔供給ロール150と、箔巻取ロール152と、ローラ154,156と、箔158と、ホットスタンプ版160とを有し、被記録媒体Pの搬送方向において、平滑化部116の下流側に配置されている。
箔供給ロール150と箔巻取ロール152とは、所定間隔離間して配置されている。また、ローラ154とローラ156とは、所定間隔離間して、ローラ154とローラ156を結んだ面が被記録媒体Pの表面と平行となり、かつ、箔供給ロール150と箔巻取ロール152よりも被記録媒体Pに近接した位置に配置されている。また、ローラ154及びローラ156は、被記録媒体Pに非常に近い位置に配置されている。
箔158は、箔供給ロール150から供給され、ローラ154及びローラ156に巻き掛けられた後、箔巻取ロール152に巻き取られるように張架されている。ここで、ローラ154とローラ156との間の箔158は、被記録媒体Pと平行となる。
【0053】
ホットスタンプ版(凸版)160は、ローラ154とローラ156との間で、箔158を介して被記録媒体Pと対向する位置に配置されている。ホットスタンプ版160は、被記録媒体P側の面に箔158と接触し、箔押しする凸版部160aを備え、亜鉛、真鍮等で形成されている。さらに、ホットスタンプ版160は、凸版部160aを加熱する加熱装置(図示せず)と、ホットスタンプ版160を被記録媒体Pに接近または離間する方向に移動させる移動機構とを有する。
ホットスタンプ版160は、加熱した状態の凸版部160aを箔158を介して被記録媒体Pと接触させ、押圧することにより、凸版部160aの形状に従って、箔158を被記録媒体P上に加熱圧着する。
【0054】
ここで、本実施形態では、平滑化部116と箔押し部118との間に、搬送バッファが設けられている。
搬送バッファを設けることで、平滑化部116と箔押し部118との搬送速度の差によって生じる連続紙状の被記録媒体Pの弛みを吸収することができ、効率よくラベルを製造することができる。
【0055】
ラベル抜き部120は、被記録媒体Pの搬送方向において、紫外線照射部164の下流側に配置されており、活性エネルギー線硬化型透明液(本実施形態では、紫外線硬化型透明液)を画像面に塗布して光沢を改善するためのニスコーター162及び紫外線照射部164と、連続紙状の被記録媒体Pにラベル形状の切れ目を入れるダイカッタ166と、不要部剥離部であるカス取り部172とを有する。
【0056】
ニスコーター162は、被記録媒体Pの搬送方向において、箔押し手段118の下流側に配置されている。
ニスコーター162は、その表面に紫外線硬化型透明液が付着した(含浸された)一対の塗布ロールを有し、被記録媒体Pを挟持しつつ、被記録媒体Pの移動に対応して(同期して)回転することで、箔押しされた被記録媒体Pの表面(画像が形成されている面)に紫外線硬化型透明液を塗布する。
紫外線照射部164は、被記録媒体Pの搬送方向において、ニスコーター162の下流側に配置されている。紫外線照射部164は、活性エネルギー線(本実施形態では、紫外線)を被記録媒体Pに照射して、被記録媒体Pの表面に塗布された紫外線硬化型透明液を硬化させる。
被記録媒体Pの表面に紫外線硬化型透明液を塗布し、硬化することで、被記録媒体Pの画像面に光沢を付与することができ、画像品質を向上することができる。
【0057】
ダイカッタ166は、図2に示すように、印刷された連続紙状の被記録媒体Pの粘着シート180のみに、所望のラベル形状の切れ目180bを入れるものであり、被記録媒体Pの搬送方向において、紫外線照射部164の下流側に配置され、被記録媒体Pの画像面側に配置されたシリンダカッタ168と、被記録媒体Pを挟んでシリンダカッタ168の反対側に配置された受けローラ170とを有する。
シリンダカッタ168は、円筒形状のシリンダ168aと、シリンダ168aの円筒面上に巻き付けられ、ラベル状に形成された複数の切抜き刃168bとで構成される。
【0058】
ダイカッタ166は、シリンダカッタ168と受けローラ170とで被記録媒体Pを挟持しつつ、被記録媒体Pの搬送速度に同期して間欠的に揺動回転することにより、切抜き刃168bが被記録媒体Pの粘着シート180のみにラベル形状の切れ目を入れる。
【0059】
ここで、ダイカッタ166が間欠的に揺動回転するのは、シリンダ168aの円筒面の円周方向長さと、必要とされる切抜き刃168bの長さとの不一致により生じる問題を解消するためである。即ち、ダイカッタ166を連続回転させてラベル形状の切れ目180bを入れると、シリンダカッタ168の切抜き刃168bがない部分に対応する被記録媒体Pも空送りされて、被記録媒体Pが無駄になる。しかし、ダイカッタ166を揺動回転させることにより、切れ目180bを連続して形成させることができ、被記録媒体Pの無駄をなくすことができる。
【0060】
カス取り部172は、ラベル(製品)Lとならない粘着シート180の不要部分(ラベルLの周辺部)を、剥離紙182から剥離させて巻き取る。
不要部分が巻き取られた被記録媒体P、つまり、ラベルLのみが剥離紙182に貼付された状態の被記録媒体Pは、製品巻取り部134に巻き取られて製品とされる。
【0061】
以下、描画部112の記録ヘッドユニット135及びメンテナンス部114について詳細に説明する。
まず、記録ヘッドユニット135の記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kの構造について詳細に説明する。ここで、記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kは、吐出するインクの色を除いて、構成は同一であるので、以下、代表して記録ヘッド136Kについて説明する。
【0062】
図4(A)は、記録ヘッド136Kの概略構成を示す側面図であり、図4(B)は、記録ヘッド136Kの吐出部12の配置パターンを示す底面図であり、図4(C)は、図4(A)の記録ヘッド136Kの吐出部の概略構成を示すC−C線断面図である。
【0063】
記録ヘッド136Kは、図4(A)及び(B)に示すように、インク液滴を吐出させる複数の吐出部12が、ヘッド基板13に一定間隔で列状に形成されている。
ここで、ヘッド基板13は、複数の吐出部12に共通の板状部材である。ヘッド基板13としては、樹脂材料、高分子材料、シリコン等の種々の材料を用いることができる。
【0064】
以下、1つの吐出部12について説明する。
吐出部12は、図4(C)に示すように、ヘッド基板13に形成されたインク室ユニット14と、アクチュエータ24とを有する。
【0065】
インク室ユニット14は、ノズル16と、圧力室18と、供給口20とを有し、ヘッド基板13の内部に形成されている。
ノズル16は、インク液滴を吐出する管状部材であり、一方の開口がヘッド基板13の表面に形成され、被記録媒体Pと対向しており、他方の開口が圧力室18に接続している。このノズル16のヘッド基板13の表面に形成された開口が吐出口16aとなる。
ノズル16は、吐出口16a側の一部が、吐出口16aに向かうに従って径が小さくなる形状である。
圧力室18は、インク液滴を吐出する方向に垂直な面の平面形状が概略正方形の直方体形状であり、対角線上の両隅部がノズル16と供給口20とに接続されている。
供給口20は、一端が圧力室18と接続し、他端が共通流路22と連通している。
共通流路22は、図4(A)に示すように、ヘッド基板13の内部に形成され、複数の吐出部12のインク室ユニット14と接続し、さらに、供給配管61を介してインクタンク60とも接続している。
【0066】
次に、アクチュエータ24は、圧力室18のノズル16および供給口20との接続面とは反対側の面(天面)に配置され、加圧板26と、個別電極28とを有する。
このアクチュエータ24は、個別電極28に駆動電圧を印加することで、加圧板26が変形する。
【0067】
ここで、供給配管61を介して共通流路22と接続されているインクタンク60は、上述したインク貯蔵/装填部137の一部であり、記録ヘッド136Kにインクを供給する。
また、インクタンク60と記録ヘッド136Kとを接続している供給配管61には、フィルタ62と、メンテナンス部114のインク加圧機構64及び電磁弁66とが配置されている。
フィルタ62は、インクタンク60から記録ヘッド136Kに供給されるインクに混入している異物や気泡を除去する。フィルタ62としては、メッシュサイズを、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一例としては、20μm以下)とすることが好ましい。
インク加圧機構64及び電磁弁66については、後ほど説明する。
【0068】
吐出部12のインク吐出方法について説明する。
まず、インクタンク60からインクが供給される。
インクタンク60から供給されたインクは、共通流路22、共通口20を通過し、圧力室18及びノズル16に充填される。つまり、圧力室18及びノズル16は、インクに満たされた状態となる。
圧力室18及びノズル16にインクが満ちている状態で、個別電極28に駆動電圧が印加されると、加圧板26が変形し、圧力室18が加圧されて、ノズル16の吐出口16aからインクが吐出される。つまり、アクチュエータ24を駆動させることでノズル16の吐出口16aからインク液滴が吐出される。
また、ノズル16からインク液滴が吐出されると、共通流路22から供給口20を通って新しいインクが圧力室18に供給される。
このように、描画部112は、ノズル16の吐出口16aからインク液滴を吐出することにより被記録媒体P上に画像を形成する。
【0069】
次に、メンテナンス部114について詳細に説明する。
メンテナンス部114は、上述したように複数、本実施形態では4つのメンテナンス装置30と、供給配管61に配置されたインク加圧機構64及び電磁弁66を有する。
4つのメンテナンス装置30は、それぞれ記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kに対応して配置されている。
各メンテナンス装置30は、同一の機能、形状であるので、代表して記録ヘッド136Kに対向する位置に配置されているメンテナンス装置30について説明する。
【0070】
図5は、記録ヘッド136Kと、図1に示すメンテナンス部114のメンテナンス装置30との概略構成を示す側面図であり、図6は、図5に示したメンテナンス装置30の概略構成を示すVI−VI線部分断面図であり、図7は、図6に示した吸引部材の形状を示す概略斜視図である。
【0071】
メンテナンス装置30は、図5に示すように、記録ヘッド136Kのヘッド基板13の吐出口16aが形成されている面(以下「ヘッド基板13の吐出面」ともいう。)に対向して配置されている。つまり、メンテナンス装置30は、記録ヘッド136Kの被記録媒体Pの搬送経路側に配置されている。
また、メンテナンス装置30は、ヘッド基板13に形成されている複数の吐出口16aが配列されている方向(以下「配列方向」ともいう。)、つまり、一列に形成されている複数の吐出口16aを結んだ線と平行な方向の長さが、ヘッド基板13の長さとほぼ同じ長さ、または、ヘッド基板13の長さよりも長い形状である。つまり、メンテナンス装置30は、記録ヘッド136Kの全ての吐出部12に対応する長さで形成されている。
なお、メンテナンス装置30は、少なくとも、吐出口16aの配列方向において吐出口16aが形成されている範囲を覆う長さであればよい。
【0072】
メンテナンス装置30は、図6に示すように、除去機構32と、除去機構移動手段34とを有する。
除去機構32は、吸引部材36と、支持体42と、吸引部材移動機構44と、インクトラップ46と吸引ポンプ48と、液流ガイド70とを有する。
【0073】
ここで、吸引部材36は、記録ヘッド136Kの吐出部12に対向し、かつ、ヘッド基板とは接触しない(非接触となる)位置に配置され、吐出部12側の一部が吐出部12側に向かうに従って幅が小さくなる中空の箱型形状である。
また、吸引部材36は、吐出部12側の先端にスリット38が形成されており、スリット38が形成されている面とは反対側の面(対向する面)の一部に接続管39が設けられている。
また、吐出口16aの配列方向に垂直な断面において、吸引部材36の側面、つまり、スリット38が形成されている面と接続管39が形成されている面とで挟まれている面のうち一方の面には、取手40が設けられ、他方の面には、取手41が設けられている。
また、吸引部材36は、図7に示すように、記録ヘッド136Kの長手方向、つまり吐出口16aの配列方向の任意の位置における断面形状が、一部に吸引ポンプ48との接続部が形成されている点を除いて略同一形状である。
【0074】
チューブ45は、接続管39と接続し、吸引ポンプ48とも接続している。つまり、チューブ45は、吸引部材36と吸引ポンプ48とを連通させる。
【0075】
吸引ポンプ48は、真空ポンプ、エアーポンプ等の空気を吸引するポンプであり、チューブ45を介して、吸引部材36内の空気を吸引し、吸引部材36内を負圧にする。
【0076】
液流ガイド70は、図6及び図7に示すように、吸引部材36のスリット38が形成されている側、すなわち、吐出部12と対向する面側に、スリット38の長手方向の端部から、これに直交する方向に沿って延設される板状部材である。
この液流ガイド70は、スリット38の長手方向と直交する方向の端部のうちの一方の端部、本実施形態では取手40が設けられた側の端部に沿って設けられ、吐出部12と対向する面と同一面内で、スリット38の長手方向と直交する方向に突出している。
また、液流ガイド70は、吸引部材36のスリット38が形成されている側の面の長辺に亘って形成されている。すなわち、液流ガイド70は、スリット38の長手方向の長さと略同等の長さである。
【0077】
除去機構32は、このような構成により、スリット38からスリット38の周囲の空気を吸引部材36内部に吸引することで、スリット38に対向する位置のヘッド基板13に付着したインク液滴、固着物等の汚れを吸引する。この点については、後ほど詳細に説明する。
また、除去機構32は、液流ガイド70が、吐出口16aに近接する位置で、吐出部12のヘッド基板13(ヘッド基板13の吐出口16aが形成された吐出面)と対向することで、ヘッド基板13との間に間隙を形成する。この間隙にインクが満たされて、この間隙が、吐出口16aから吐出されたインクの流路となる。この点についても後ほど詳細に説明する。
【0078】
インクトラップ46は、吸引部材36と吸引ポンプ48との間のチューブ45に配置されている。インクトラップ46は、吸引ポンプ48により吸引され、チューブ45内を通過する空気に混入している異物、例えば、インク、ゴミ等を除去し、吸引ポンプ48に異物が付着、混入することを防止する。
【0079】
支持体42は、1面が開放された箱型形状であり、内部に吸引部材36を移動自在に支持している。より具体的には、支持体42は、吸引部材36のスリット38が形成されている面を除く面を所定間隔離間して覆う形状であり、吸引部材36の取手40、41を摺動可能な状態で支持している。また、支持体42は、接続管39に対応した部分にも開口が形成されている。
【0080】
吸引部材移動機構44は、支持体42の吸引部材36の取手40が形成されている側の外壁に配置されている。つまり、吸引部材移動機構44は、支持体42を挟んで吸引部材36と対向して配置されている。
吸引部材移動機構44は、吸引部材36の取手40と連結しており、吸引部材36をヘッド基板13の吐出面に平行で、かつ、吐出口16aの配列方向に直交する方向(図6中矢印X方向)に移動させる。
ここで、吸引部材移動機構44は、吸引部材36のスリット38を、吐出口16aの配列方向に直交する方向において、吐出口16aの中心を基準として、吐出口16aの一方の端部よりも離れた部分に対向する位置から、吐出口16aの他方の端部よりも離れた部分に対向する位置まで移動させる。つまり、吐出口16aの中心を通過するように吐出口16aの近傍(吐出口16a周り)を移動させる。言い換えれば、吐出口16aの近傍を吐出口16aの径よりも長い距離移動させる。
なお、吸引部材移動機構44が吸引部材36を移動させる方法は、特に限定されず、カムを用いる方法、エアシリンダを用いる方法、リニア駆動を用いる方法等の種々の方法を用いることができる。
【0081】
次に、除去機構移動手段34は、支持台50と、ドライブスクリュ52と、ガイドレール54と連結体56とを有し、吸引部材36の吸引口38からの吸引していない時(吸引ポンプ46の停止時)に、吸引部材36及び支持体42をヘッド基板13の吐出面に対して直交する方向(図6中矢印Y方向)に移動させる。
【0082】
支持台50は、図示しない筐体等の所定位置に固定されている。
ドライブスクリュ52は、連結体56に形成された雌ねじ部(図示せず)と螺合する雄ねじ部を持つボールねじ(図示せず)等からなり、ヘッド基板13の吐出面に対して直交する方向が軸方向となる向きで、支持台50に回転自在に支持されている。ドライブスクリュ52は、支持台50の内部に配置された駆動部により、回転される。
ガイドレール54は、ドライブスクリュ52に隣接して、かつ、ドライブスクリュ52と平行に支持台50に配置されている。
連結体56は、ボルトネジ等の固定部材、または接着剤等により支持体42と接合している。この連結体56には、ドライブスクリュ52が螺合され、ガイドレール54が貫通されている。
連結体56は、ドライブスクリュ52が回転することで、吐出面に対して直交する方向に移動される。また、連結体56は、ガイドレール54が貫通されているため、向きを変えることなく移動される。
【0083】
除去機構移動手段34は、ドライブスクリュ52を回転させることで、連結体56をヘッド基板13の吐出面に対して直交する方向に移動させる。このように連結体を移動させることで、支持体42及び支持体42により支持されている吸引部材36もヘッド基板13の吐出面に対して直交する方向に移動される。
除去機構移動手段34は、このようにして、吸引部材36を、吐出部12の吐出面に対して接離させることができる。つまり、吸引部材36のスリット38と、吐出部12の吐出口16a(吐出面)との距離を調整することができる。
このように吸引部材36を移動させることで、メンテナンス装置30の使用時は、吸引部材36を記録ヘッド136Kに近接させ、使用しない時は、吸引部材36を記録ヘッド136から離すことで、具体的には、吸引部材36を被記録媒体Pの搬送経路よりも記録ヘッド136Kから離すことで、例えば、メンテナンス装置30を上述の待機位置に配置して、ラベル作成時にメンテナンス装置30が被記録媒体Pの搬送及び被記録媒体Pへの画像描画に影響を与えること、つまり、被記録媒体Pの搬送及び被記録媒体Pへの画像描画の障害となることを防止できる。
【0084】
次に、インク加圧機構64は、圧縮ポンプ等の加圧手段であり、記録ヘッド136Kの各吐出部12にインクを供給する供給配管61に配置されている。
インク加圧機構64は、供給配管61内のインクを加圧することで、記録ヘッド136Kの各吐出部12の吐出口16aからインクを排出させる。
【0085】
電磁弁66は、供給配管61のインク加圧機構64よりもインク流れ方向に上流側に配置されている。つまり、電磁弁66は、インクタンク60とインク加圧機構64との間の供給配管61に配置されている。
このように供給配管61に電磁弁66を設け、インク加圧機構64による供給配管61内のインクの加圧時に供給配管61を封止することで、供給配管61内のインクがインクタンク60に逆流することを防止できる。
これにより、吐出口16aから所望の量のインク液滴を排出させることができる。
なお、電磁弁は、本実施形態に限定されない。例えば、電磁弁を三方弁とし、供給配管61とインク加圧機構64との連結部に設け、必要に応じて、記録ヘッド136Kとインク加圧機構64とが連通している状態と、記録へッド136Kとインクタンク60とが連通している状態とを切り換えるようにしてもよい。
デジタルラベル印刷装置100は、基本的に以上のような構成である。
【0086】
次に、デジタルラベル印刷装置100によりラベルを作成する方法を説明する。
ここで、図8(A)〜(C)は、それぞれ下塗り液の表面にインク液滴を打滴した状態を示す断面図であり、図9(A)は、画像面に凹凸がある被記録媒体の要部を示す断面図であり、図9(B)は、平滑化せずに箔押しされた被記録媒体の要部を示す断面図であり、図9(C)は、平滑化部により凹凸を平滑化して箔押した被記録媒体の要部を示す断面図である。
図1に示すように、ロール状に巻かれた供給ロール122から送り出された被記録媒体Pは、搬送部110(搬送ローラ対124,126)により、下塗部111に搬送される。
【0087】
搬送部110により下塗部111に搬送された被記録媒体Pは、下塗部111の塗布ロール202と接触し、表面に下塗り液が塗布され、下塗り層Uが形成される。
ここで、塗布ロール202は、駆動部204により被記録媒体Pの搬送方向と逆方向に回転させられている。すなわち、駆動部204は、塗布ロール202を、塗布ロール202と被記録媒体Pとの接触位置における、塗布ロール202表面の移動方向と、被記録媒体Pの移動方向とが逆方向となる方向に回転させている。
【0088】
下塗り液が塗布され、下塗り層Uが形成された被記録媒体Pは、搬送部110の搬送ロール対124、126によりさらに搬送され、下塗り液半硬化部216に対向する位置を通過する。
下塗り液半硬化部216は、対向する位置を通過する下塗り液が塗布された被記録媒体Pに紫外線を照射し、被記録媒体P上の下塗り層Uを半硬化させる。
【0089】
ここで、本発明における下塗り液および/またはインク液滴が半硬化した状態(以下「半硬化状態」ともいう。)とは、下塗り液および/またはインク液の内部が完全に又は部分的に硬化し、かつ表面の硬化度が内部の硬化度よりも低い状態をいう。
この半硬化状態は、被記録媒体P上に塗布された下塗り液および/またはインク液滴の半硬化過程の終了後(活性エネルギー線の照射後や加熱後、つまり、本実施形態では、下塗り液半硬化部216および/または紫外線照射部138により紫外線を照射した後)かつ次工程のインク液滴の打滴前に、普通紙などの浸透媒体を押し当てて、浸透媒体に下塗り液および/またはインク液滴の表面(一部)が転写したかどうかによって判断することができる。
すなわち、押し当てた浸透媒体に下塗り液および/またはインク液が全く転写しない場合を全硬化したものとし、被記録媒体上に硬化した下塗り液および/またはインク液が残ると共に、浸透媒体に下塗り液および/またはインク液の一部が転写した場合を、半硬化状態、つまり、少なくとも最表面が流動性を持ち内部硬化した状態にあるものとする。
【0090】
また、下塗り液および/またはインク液滴の半硬化状態を活性エネルギー線の照射や加熱によって開始する重合性化合物の重合反応によって実現する場合は、半硬化状態を、赤外分光測定によって判断することがより好ましい。具体的には、下塗り液および/またはインク液滴の重合過程の終了前後(例えば、活性エネルギー線の照射前後や加熱前後)の赤外吸収スペクトルの比較から、重合率を測定して判断することが好ましい。
ここで、重合率は、赤外吸収スペクトルによって検出される重合性基による赤外吸収ピーク強度の比、具体的には、A(重合後)/A(重合前)で定義する。A(重合後)とは、重合反応後の重合性基による赤外吸収ピークの吸収光度であり、A(重合前)とは、重合反応前の重合性基による赤外吸収ピークの吸収光度である。
【0091】
このA(重合後)/A(重合前)が、0.05以上0.99以下であれば、半硬化状態であると判断できる。
ここで、画像の彩度を高くする観点から、A(重合後)/A(重合前)は、0.10以上0.98以下であることが好ましく、0.15以上0.97以下であることがより好ましく、0.20以上0.96以下であることが特に好ましい。
【0092】
例えば、下塗り液および/またはインク液滴の含有する重合性化合物がアクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマーである場合は、810cm−1付近に重合性基(アクリレート基、メタクリレート基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸収光度で、重合率を定義することが好ましい。また、重合性化合物がオキセタン化合物である場合は、986cm−1付近に重合性基(オキセタン環)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸収光度で、重合率を定義することが好ましい。重合性化合物がエポキシ化合物である場合は、750cm−1付近に重合性基(エポキシ基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸収光度で、重合率を定義することが好ましい。
また、赤外吸収スペクトルを測定する手段としては、市販の赤外分光光度計を用いることができ、透過型および反射型のいずれでも良く、サンプルの形態で適宜選択することが好ましい。例えば、BIO−RODO社製赤外分光光度計FTS−6000を用いて測定することができる。
【0093】
また、好ましい下塗り液および/またはインク液滴の半硬化状態は、被記録媒体P上に塗布された下塗り液および/または打滴されたインク液滴の半硬化過程の終了後に、下塗り液および/またはインク液滴上に打滴したインク液滴の断面を観察することによっても判断することできる。
具体的には、半硬化状態の下塗り液および/またはインク液滴は、断面において、打滴したインク液滴の一部が下塗り液および/またはインク液滴の液面よりも記録媒体側にある形状となることが好ましい。
ここで、本発明においては、インク液滴の断面を、被記録媒体の表面に対して垂直な方向に切断して得られる液滴の断面において、該断面の面積Sが最大になる断面と定義する。
また、本発明に下塗り液および/またはインク液滴の液面とは、インク液滴が打滴される前の液面である。
なお、断面観察の方法は、特に限定されるものではないが、例えば市販のミクロトームと市販の光学顕微鏡を用いて観察することができる。
【0094】
以下、下塗り液の表面にインク液滴を打滴した場合について詳細に説明する。
ここで、図9(A)〜(C)は、それぞれ下塗り液(下塗り層)Uの表面にインク液滴を打滴した状態を示す断面図である。
図9(A)は、半硬化させた下塗り液の表面にインク液滴を吐出した一例の断面形状を示す断面図である。図9(A)に示すように、半硬化させた下塗り液U上にインク液滴を吐出すると、吐出されたインク液滴dは、その全体が下塗り液面α(図中点線)よりも下にある状態となる。すなわち、インク液滴dの全体が下塗り液Uに潜り込んだ状態である。図9(A)に示すように、インク液滴の全体が下塗り液Uの液面αに潜り込んだ状態は、好ましい「半硬化状態」の一形態である。
インク液滴の全体が下塗り液Uの液面αに潜り込むように下塗り液を硬化することにより、インク液滴同士が干渉することを防止でき、かつ彩度の高い画像を形成することができる。
【0095】
一方、図9(B)は、下塗り液の硬化が過度に進んだとき、つまり、下塗り液を過度に硬化させたときの断面形状を示す断面図である。図9(B)に示すように、下塗り液Uを過度に硬化させた場合は、下塗り液U上に打滴されたインク液滴dの全体が下塗り液Uの液面αよりも上にある。すなわち、インク液滴dの全体下塗り液面上に存在し、この場合は、打滴干渉を招く可能性が高くなる。
【0096】
次に、図9(C)は、下塗り液の硬化が適正なとき、つまり、下塗り液が好適な半硬化状態のときの他の一例の断面形状を示す断面図である。図9(C)に示すように、下塗り液U上に打滴されたインク液滴dは、下塗り液面αの上と下の両方にある。すなわち、インク液滴の一部が下塗り液に潜り込んだ状態である。つまり、インク液滴は、一部が下塗り液面αよりも下塗り液U(図示しない被記録媒体P)側にあり、このような状態も、好ましい「半硬化状態」の一形態である。このように、吐出したインク液滴の一部が潜り込むように下塗り液を硬化することにより、インク液滴同士が干渉することを防止でき、かつ彩度の高い画像を形成することができる。
【0097】
ここで、断面観察時に、半硬化状態にした下塗り液および/またはインク液上に打滴するインク液滴のサイズは、1ピコリットル以上100ピコリットル以下とすることが好ましく、実際に画像記録時に打滴するインク液滴サイズと等しい形状とすることがより好ましい。
また、断面観察時には半硬化膜、つまり、半硬化状態の下塗り液および/またはインク液を何らかの方法で固化させておくことが好ましい。固化させる方法としては特に限定されるものではないが、冷凍や重合による硬化などを用いることができる。
【0098】
打滴干渉の回避と彩度の高い画像形成を両立させる観点から、図8(C)に示すように、断面における、下塗り液の液面よりも上にあるインク液滴dの面積をS(S(液面上))とし、下塗り液の液面よりも下のインク液滴dの面積をSとすると、液面よりS/Sで定義される値は、95/5から0/100の範囲にあることが好ましく、75/25から10/90の範囲にあることがより好ましく、50/50から30/70の範囲にあることが特に好ましい。なお、図8(C)に示すように、半硬化状態の下塗り液上に打滴したインク液滴dの全断面積をS(S(液滴))とすると、SとSとSとの関係は、S−S1=S2となる。
なお、断面積は、市販の画像解析ソフト、例えばアドビ社製フォトショップを用いて画素数をカウントすることで計測することができる。
【0099】
下塗り層が形成された被記録媒体Pは、搬送部110の搬送ローラ対124、126により描画部112に搬送される。
【0100】
記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kは、制御部121による制御に基づいて、対向する位置を通過する被記録媒体Pに紫外線硬化型インクのインク液滴を吐出する。インクが吐出された被記録媒体Pは、さらに搬送され、紫外線照射部138に対向する位置を通過し、紫外線が照射され、インクが硬化される。
つまり、被記録媒体Pは、記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kに対向する位置の通過時に、記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kから被記録媒体Pに向けてインク液滴が吐出され、その後、紫外線照射部138から紫外線が照射され、被記録媒体P上に着弾した各インクが半硬化される。さらに、被記録媒体Pは、記録ヘッド136Kと対向する位置を通過する時に、記録ヘッド136Kから被記録媒体Pに向けてインク液滴が吐出される。その後、紫外線照射部138から紫外線が照射され、被記録媒体P上に着弾した全てのインク及び下塗り液が硬化される。
これにより、被記録媒体Pの表面に画像が形成される。
【0101】
画像記録された被記録媒体Pは、平滑化部116に搬送され、ニスコーター142により、図9(A)に示すように、被記録媒体P上に形成された画像184の全体を覆うように厚さ5〜30μm程度(乾燥膜厚)の透明液186が塗布される。
【0102】
透明液186が塗布された被記録媒体Pは、平面加圧部材146に対向する位置に搬送される。平面加圧部材146は、被記録媒体Pに近づく方向に移動し、平滑な表面146aにより被記録媒体Pを押圧する。平滑な表面146aで被記録媒体Pを押圧することで、被記録媒体P上のインクは押し潰される。これにより、被記録媒体P上のインク(画像)は、平滑になる。ここで、平面加圧部材146の平滑な表面146aの面積は、箔供与範囲よりも大きい。
【0103】
画像が平滑化された被記録媒体Pは、搬送バッファを経由し、箔押し部118に搬送される。箔押し部118に搬送された被記録媒体Pは、箔158を介してホットスタンプ版160により押圧される。ホットスタンプ版160により押圧された被記録媒体Pには、その表面上にホットスタンプ版160の凸版部160aの形状に従って箔158が加熱圧着される。
【0104】
箔158が加熱圧着された、つまり箔押しされた被記録媒体Pは、ラベル抜き部120に搬送されて、ニスコーター162により紫外線硬化型透明液が塗布され、その後、紫外線照射部164により紫外線が照射されて塗布された紫外線硬化型透明液が硬化される。
【0105】
紫外線硬化型透明液が硬化された被記録媒体Pは、ダイカッタ166に搬送され、シリンダカッタ168と、受けローラ170によって粘着シート180にのみラベルLの形状に切れ目180bが入れられる。
このとき、ダイカッタ166は、上述したように、間欠的に揺動しながらラベルLの形状の切れ目180bを入れるので、切れ目180bを連続して形成することができ、被記録媒体Pに無駄になる部分が発生することはない。
その後、被記録媒体Pの粘着シート180のラベルL以外の不要部分は、剥離紙182から剥離されてカス取り部172によって巻き取られる。ラベルLのみが剥離紙182上に貼付された状態の被記録媒体Pは、製品巻取部134に巻き取られて製品となる。
以上のようにして、ラベルが作成される。
【0106】
ここで、図9(A)に示すように、被記録媒体Pの画像面は、硬化した複数色のインク184が重なり合って盛り上り、立体的になっている。インクの盛上り高さは、被記録媒体Pのインク吸収性によっても異なるが(吸収性が低いほど高くなる)、一色あたり略10μm程度であり、一箇所の多色のインクが使用された場合には、略40μmとなる場合もある。そして、被記録媒体Pの画像面は、凹凸となっている。この凹凸は、被記録媒体Pの画像面に箔押しするとき、箔158と被記録媒体P(より詳細には、被記録媒体P上のインク184)との密着性に大きな影響を与える。
【0107】
つまり、図9(B)に示すように、箔供与範囲が平滑化されていない画像面(換言すれば、描画部112において紫外線硬化型インクが吐出、硬化されたままの状態)に箔押しすると、箔158は凹凸の山部分にのみ加熱圧着され、谷部分には圧着されていない状態となる。即ち、箔158と被記録媒体Pとの密着度は低く、剥がれやすい。
【0108】
これに対して、本実施形態は、平面加圧部材146によって予め箔供与範囲を平滑化した後に、被記録媒体Pに箔押しする。これにより、図9(C)に示すように、箔158を広い面積の平滑な面に加熱圧着することができ、被記録媒体Pと箔158との密着度が高く剥がれ難い箔押しを行うことができる。
【0109】
つまり、本実施形態のデジタルラベル印刷装置100によれば、箔押し部118の上流に被記録媒体P上の少なくとも箔供与範囲のインク184、透明液186を平面加圧部材146により平滑にする平滑化部116を配置することで、平滑化部116により平滑にされた範囲に箔158を供与して箔押しすることができる。
これにより、被記録媒体Pと箔158との密着度を向上させて良好な箔押し印刷を行うことができる。また、平面加圧部材146により平滑にするので、短時間で平滑化することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0110】
また、平滑化部116に、被記録媒体P上の画像面に透明な活性エネルギー線硬化型液を供給する透明液供給手段(ニスコーター)142と、供給後の活性エネルギー線硬化型液(透明液)に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射手段(紫外線照射部)148とを設け、画像面表面を透明な活性エネルギー線硬化型液で覆って平滑化することで、画像面が大きな凹凸を有していても、平面度の良好な箔供与範囲を形成することができる。
【0111】
更に、透明液供給手段としてニスコーターを用いることで、簡単且つ安価な機構で、凹凸のある画像が形成された被記録媒体Pの表面に安定して透明液186を塗布することができる。
【0112】
ここで、ニスコーター162および紫外線照射部164による紫外線硬化型透明液の膜の形成は、画像面に光沢を付与して高画質の画像とするのが目的であるので必ずしも必要ではなく、光沢付与が不要の場合、紫外線硬化型透明液の膜の形成を行わないように設定することもできる。
【0113】
また、被記録媒体上に下塗り層を形成することで、被記録媒体上に着弾したインク液滴が被記録媒体にしみ込み、画像ににじみが生じることを防止でき、高画質な画像を形成することが可能となる。また、インク液滴との密着性が低い、つまり、着弾したインク液滴をはじいてしまう被記録媒体も用いることが可能となる。言い換えれば、種々の被記録媒体への画像記録が可能となる。
【0114】
また、本実施形態のように、下塗り液半硬化部により下塗り層を半硬化させることで、インク液滴が互いに重なり部分を有して被記録媒体上に着弾しても、下塗り液とインク液滴の相互作用により、これら隣接したインク液滴間の合一を抑えることができる。
つまり、被記録媒体上に内部硬化した下塗り液の層を形成することにより、記録ヘッドから吐出されたインク液滴が被記録媒体上に近接して着弾した場合、例えば、単一色のインク液滴が重なり部分を有して被記録媒体上に着弾した場合や、色違いのインク液滴が重なり部分を有して被記録媒体上に着弾した場合もインク液滴が移動することを防止できる。
これにより、画像の滲み、画像中の細線などの線幅の不均一及び着色面の色ムラの発生を効果的に防止することができ、均一幅で先鋭なライン形成が可能であり、反転文字など打滴密度の高いインクジェット画像の記録を細線等の微細像を再現よく行なうことができる。つまり、被記録媒体により高画質な画像を形成することが可能となる。
【0115】
ここで、半硬化した下塗り層および/またはインク液滴の内部層の粘度(25℃)は、5000mPa・s以上とすることが好ましい。
また、半硬化した下塗り層および/またはインク液滴の表面層の粘度(25℃)は、100mPa・s以上5000mPa・s以下とすることが好ましい。
また、半硬化した下塗り層および/またはインク液滴の内部層の粘度(25℃)は、半硬化したおよび/またはインク液滴の表面層の粘度(25℃)の1.5倍以上とすることが好ましく、2倍以上とすることがより好ましく、3倍以上とすることがさらに好ましい。
上記範囲とすることで、下塗り層および/またはインク液滴を好適に半硬化させることができる。
【0116】
また、内部硬化した下塗り液(下塗り層)および/またはインク液滴の表面における重合性化合物の重合度は、1%以上70%以下とすることが好ましく、5%以上60%以下とすることがより好ましく、10%以上50%以下とすることが特に好ましい。ここで、重合度はIRなどによって測定できる。
上記範囲とすることで、下塗り層を好適に半硬化させることができる。
【0117】
また、塗布ロール202を用い、さらに塗布ロール202を被記録媒体Pの搬送方向とは逆方向に回転させて、被記録媒体P上に下塗り液を塗布することで、被記録媒体P上に面状が改善された下塗り層Uを形成することができる。つまり、塗布ロール202を被記録媒体Pの搬送方向とは逆方向に回転させることで、塗布ロール202が被記録媒体Pに下塗り液を塗布した後、塗布ロール202が被記録媒体Pと離れるときに被記録媒体P上に塗布した下塗り液の表面を乱すことを防止でき、被記録媒体P上に表面が滑らかな、つまり、表面粗さが小さい下塗り層Uを形成することができる。
【0118】
次に、記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kのそれぞれのヘッド基板13の吐出面、特に吐出口16aの周りに付着した液滴、固着物等の汚れを除去する本発明の第4の態様のインクジェットヘッドのメンテナンス方法について説明する。
なお、インクジェットヘッド(記録ヘッド)のメンテナンス方法は、記録ヘッド136Y,136C,136M,136Kのいずれにおいても同様の方法であるので、代表して記録ヘッド136Kの場合について説明する。
図10(A)〜(C)はメンテナンス装置30による記録ヘッドのメンテナンスを行う様子を示す断面図であり、図11(A)〜(E)は、メンテナンス装置30による記録ヘッドのメンテナンス方法を説明するための工程図である。
【0119】
まず、記録ヘッド136Kにより画像が記録されている、つまり、ラベルが作製されている間、吸引部材36(及び支持部材等の除去機構32)は、図10(A)に示すように、記録ヘッドと離れた位置に待機している、具体的には、被記録媒体Pの搬送の障害とならない位置、すなわち、上述の待機位置に待機している。
【0120】
ラベル印刷装置100によるラベルの作製が終了し、記録ヘッド136Kのメンテナンスを行う場合、すなわち、メンテナンス開始時は、図11(A)に示すように、記録ヘッド136Kのヘッド基板13の吐出面の吐出口16a周りにインク液滴等が付着している。
【0121】
まず、メンテナンス装置30は、図10(B)に示すように、除去機構移動手段34により、吐出部12の吐出面方向に除去機構32を移動させる、つまり吸引部材36及び液流ガイド70を記録ヘッド136K側に移動させる。さらに、吸引部材移動機構44により、液流ガイド70(及び吸引部材36)をヘッド基板13の吐出口16aに向けて移動させ、液流ガイド70を吐出面の吐出口16aに対向する位置(図10(B)では吐出口16aの下方)で吐出部12の吐出面に接触しない位置(非接触となる位置)まで移動させる。
このように、ヘッド基板13の吐出面と液流ガイド70とが対向することにより、ヘッド基板13と液流ガイド70との間に隙間が形成される。
【0122】
このように、ヘッド基板13と液流ガイド70とが対抗する位置で近接した状態で、まず、インク加圧機構64(図5参照)を用いて供給配管61内のインクを加圧し、図10(B)及び図11(B)に示すように、記録ヘッド136Kの全ての吐出口16aからインク液滴を排出させる。排出されたインクは、ヘッド基板13の吐出面と液流ガイド70により形成された隙間を通り、吐出口16aの配列方向及びこの配列方向と直交する方向に広がる。すなわち、ヘッド基板13の吐出面と液流ガイド70との間に形成された隙間は、インク流路となる。
【0123】
このように、吐出面と液流ガイド70とを対向させることにより、ヘッド基板13の吐出面と液流ガイド70との間にインク流路を形成する。このインク流路により、吐出面にそってインクの流れができ、吐出口16aの周辺を含む吐出面を確実かつ簡単に濡らすことができる。また、吐出面に沿って流れるインクの液流によりヘッド基板13の吐出面に付着した固形物等の汚れを洗い流すこともでき、吐出面、特に、吐出口周辺に付着した固形物を確実に除去することができる。
なお、この際、電磁弁66の弁を閉めて供給配管61を封止する。これにより、インク加圧機構64により供給配管61内のインクを加圧した場合に、供給配管61内部のインクが、インクタンク60に逆流することを防止する。
【0124】
ここで、記録ヘッドのメンテナンスのために排出するインクの量は、図10(B)及び図11(B)に示すように、吐出面と液流ガイド70とにより形成されるインク流路をインクで満たし、さらにインクをインク流路から流出させることができる量とすることにより、吐出面及び吐出口16a周辺に付着した固形物を洗い流すことができる。
【0125】
ここで、インク流路から流出するインクの一部は、吸引口38から吸引部材36の内部に流れ込むが、一部は、吐出面と液流ガイド70との間(インク流路)から、吸引部材36の側方に流出する場合がある。
従って、本発明において、メンテナンス時のインクの排出量をインク流路から流出する場合、インク流路から流出したインクが装置内部に漏出することを防止する漏出防止機構を設けることが好ましい。
インクの漏出防止機構としては、スポンジ状の樹脂部材や、不織布等のインクを吸収する部材を吸引部材36の周囲や、吸引部材36と支持体42との間に配置して構成されるインク受けが例示される。このようなインクの漏出防止機構を設けて、インク流路から吸引部材36の側面に流出したインクを吸収して、インクの装置内部への漏出を防止することにより、装置内部にインクが漏れて、装置内部が汚れることを防止できる。
【0126】
次に、吐出口16aからのインクの排出を停止すると、図11(C)に示すように、ヘッド基板13の吐出面の全体にインクが付着した状態になる。つまり、吐出面がインクに濡れた(インクで濡らされた)状態になる。
【0127】
次に、メンテナンス装置30は、吸引ポンプ48により、吸引部材36の内部の空気を吸引し負圧にすることでスリット38の周りの空気および/またはインクを吸引しつつ、吸引部材移動機構44により、吸引部材36のスリット38をヘッド基板13の吐出面に平行で、配列方向に直交する方向に吸引部材36(スリット38)を移動させる。
具体的には、メンテナンス装置30は、スリット38をヘッド基板13の吐出面に近接させた状態でスリット38から空気および/またはインクを吸引させつつ、吸引部材36を、図10(B)に示す実線の位置から点線の位置に移動させる。つまり、吸引部材36のスリットは、吐出口16aの両端部を通過する。
【0128】
このように、空気および/またはインク(本実施形態では、空気およびインク)を吸引する状態のスリット38をヘッド基板13の吐出面に接触しない位置、言いかえれば、スリット38aを吐出口16a側に吐出口16aと接触しない位置に配置して、吐出口16a周りを移動させることで、図11(D)に示すように、ヘッド基板13の吐出面の吐出口周りに付着しているインク液滴、固着物等の汚れを吸引し、除去することができる。
【0129】
メンテナンス装置30により、ヘッド基板13の吐出面に付着したインク液滴、固着物等の汚れを吸引することで、図11(E)に示すように、ヘッド基板13の吐出面にインク液滴、固着物等の汚れが付着していない状態となる。
【0130】
このように吐出口16a周りのインク液滴、固着物等の汚れを吸引し、除去することで、吐出口16aから吐出されるインク液滴の吐出方向を一定方向とすることができる。つまり、インク液滴の着弾位置にずれが生じることを防止できる。
これにより、被記録媒体上に高画質な画像を安定して形成することができる。
【0131】
また、吸引部材のスリットを吐出口の配列方向に長い形状とし、1つの吸引部材のスリットにより、ヘッド基板上に列状に形成された複数の吐出口周りに付着しているインク液滴、固着物等の汚れを同時に吸引し、除去することができ、短時間で記録ヘッドをメンテナンスすることができる。
特に、本実施形態のように、吸引部材の配列方向の長さを、ヘッド基板の長さと同じ長さとすることで、つまり、本実施形態では吸引部材のスリットの配列方向の長さを列状に配置された全ての吐出口を覆う長さとすることで、1つの吸引部材でヘッド基板に列状に形成された全ての吐出口を同時にメンテナンスすることができ、さらに、吸引部材を吐出口の配列方向に移動させることなく、記録ヘッドをメンテナンスすることができる。
【0132】
また、ヘッド基板の吐出面と接触することなく、ヘッド基板の吐出面の吐出口周りに付着しているインク液滴、固形物等の汚れを除去することができるため、ヘッド基板の吐出面を損傷させることを防止できる。
【0133】
また、吐出口の配列方向に直交する方向において、吸引部材のスリットを移動させる距離も1つの吐出口周りのみと短いため、駆動機構を簡単にすることができる。
また、吸引部材のスリットを移動させつつ、吸引することにより、スリットの開口径を小さくすることができる。つまり、開口径の小さいスリットでも、吐出口周りの全域を走査させ、吐出口周りのインク液滴、固着物等の汚れを除去することができる。
このように、スリットの開口径を小さくすることで、安価なポンプを用いることができる。吸引力が小さいポンプを用いた場合でも、スリットの開口径を小さくすることで、スリットから吸引する空気の吸引力は、高くすることができる。さらに、スリットから吸引する吸引力を高くすることで、吐出口周りのインク液滴、固着物等の汚れをより確実に吸引することができる。
【0134】
また、スリットを移動させ、インク液滴、固着物等の汚れを吸引する位置を変化させることで、ヘッド基板上に付着しているインク液滴、固着物等の汚れに作用する吸引力を変化させることができ、より吸引しやすくすることができる。
【0135】
また、インク加圧機構により、吐出口からインク液滴を排出し、ヘッド基板13の吐出面をインクで濡らすことで、インク液滴を吸引しやすい状態とすることができる。
また、ヘッド基板13の吐出面の吐出口周りに付着した固着物等の汚れを、吐出口からのインクの排出と共に除去することができ、また固着物等の汚れをインクで濡らすことにより吸引しやすい状態とすることができる。
このように、ヘッド基板13の吐出面に付着したインク液滴、固着物等の汚れをより吸引しやすい状態にすることができ、ヘッド基板13の吐出面に付着したインク液滴、固着物等の汚れをより確実に除去することができる。
【0136】
ここで、ヘッド基板13の吐出口16aが形成された吐出面と液流ガイド70を対向させて、ヘッド基板13の吐出面と液流ガイドとの間に、吐出口から排出されたインクの流路を形成することにより、ヘッド基板13の吐出面を、より簡単に、かつ、少量のインクであっても確実に濡らすことが可能となる。
また、ヘッド基板13の吐出口16aが形成された吐出面と液流ガイド70との間に形成された流路を流れるインクの液流によりヘッド基板13の吐出面に付着した固形物を洗い流すことができ、より確実に吐出面に付着した固形物を除去することができる。
【0137】
また、液流ガイド70を吸引部材36と一体に、吸引部材36のスリット38が形成されている側に、吐出部12の吐出口16aが形成されている面と対向して延設することにより、液流ガイド70の移動機構を別途設ける必要がなく、あるいは、移動機構を含む液流ガイドを別途設ける必要がなく、装置構成を簡単にすることができる。
【0138】
このように、本実施形態によれば、短時間で効率よく吐出口周りのインク液滴、固着物等の汚れを吸引、除去することができ、さらに、装置構成を簡単にすることができ、装置を安価にすることができる。
【0139】
ここで、吸引部材移動機構は、吸引部材(のスリット)をヘッド基板13の吐出面に平行で、配列方向に直交する方向に往復移動させることが好ましい。
スリットを吐出口に対して往復移動させることで、吐出口周りのインク液滴、固着物等の汚れをより確実に吸引し、除去することができる。
また、配列方向に直交する方向においてスリットを往復移動させる領域は、1つの吐出部の周りのみであるため、短時間でかつ簡単な装置構成で吸引部材(スリット)を往復移動させることができる。
【0140】
また、吸引部材移動機構は、吐出口の開口径をR[mm]、吐出口の配列方向に直交する方向の吸引口の大きさをL[mm]、とすると、吸引部材を配列方向に直交する方向に(L+R+2)[mm]以上移動させることが好ましい。つまり、吸引部材移動機構は、スリットを配列方向に直交する方向に(L+R+2)[mm]以上移動させることが好ましい。
吸引部材の移動距離を上記範囲とすることで、ヘッド基板の吐出面の吐出口周りのインク液滴、固着物等の汚れをより短時間でかつ確実に除去することができる。
【0141】
また、吐出口の配列方向に直交する方向におけるスリット(後述する吸引口)の大きさは、0.5mm以上〜2.0mm以下とすることが好ましく、0.5mm以上1.0mm以下とすることがより好ましい。
スリットの大きさが上記範囲を満足する形状とすることで、上述した効果をより好適にえることができる。
【0142】
また、液流ガイドの長手方向に直交する方向の大きさ、すなわちスリット配列方向に直交する方向の大きさは、吐出口の開口径をR、吐出口の配列方向に直交する方向の吸引口の大きさをL、とすると、(L+R+2mm)以上とすることが好ましい。
液流ガイドの長手方向と直交する方向の幅が上記範囲を満足する形状とすることで、より少量のインクで吐出面を濡らすことが可能となる。
また、インク流路を流れるインク流により、吐出面に付着した固着物等の汚れを確実に洗い流すことができる。
【0143】
ここで、本発明では、液流ガイドを設け、吐出面と液流ガイドとの間にインク流路を形成することができる。これにより、インクの排出量は、少ないインクの排出量であっても確実に吐出面及び吐出口の周辺をインクで濡らすことができる。
特に、本実施形態では、メンテナンス時のインクの排出量は、図示例のようにインク流路から流出する量とした。これにより、確実に、吐出口周りに付着した固着物等の汚れを流すことができる、すなわち、洗浄することができる。
なお、本発明において、メンテナンス時のインクの排出量は、図示例のようにインクがインク流路から流出する量に限定されず、少なくともインクがインク流路を満たし、かつ、インク流路から流出しない量でもよい。これにより、少ないインクの排出量で、吐出口の周辺をインクで濡らすことができる。
【0144】
また、本実施形態では、インク加圧機構64により供給配管61内のインクを加圧することで吐出口16aからインクを排出させたが、ヘッド基板13の吐出面にインクを付着させる方法は、これに限定されず、通常の記録動作と同様の方法で全ての吐出部12のアクチュエータ24を駆動させて連続的にインク液滴を吐出させてもよく、また、加圧手段によりインクタンクから各吐出部にインクを供給し、各吐出口から排出させてもよい。
【0145】
なお、本実施形態では、液流ガイド70は、スリット38の長手方向と直交する方向の端部のうち取手40が設けられた側の端部に沿って設けるとしたが、取手41が設けれた側の端部に沿って設けてもよいし、あるいは、両方の側に設けてもよい。
【0146】
次に、図12は、本発明のメンテナンス装置の他の一例を示す概略構成図である。
なお、図12に示すメンテナンス装置80は、除去機構82の構成を除いて他の部分は、図6に示したメンテナンス装置30と同様の構成であるので、同一の部分には、同一の符号を付して、その説明は省略し、以下、メンテナンス装置80に特有の点を重点的に説明する。
【0147】
メンテナンス装置80は、除去機構82と、除去機構移動手段34とを有する。
除去機構82は、吸引部材84と、支持体42と、吸引部材移動機構44と、インクトラップ機構46と、吸引ポンプ48とを有する。支持体42と、吸引部材移動機構44と、インクトラップ機構46と、吸引ポンプ48とは、上述したメンテナンス装置30と同様の構成であるのでその詳細な説明は省略する。
【0148】
吸引部材84は、記録ヘッド136Kの吐出部12に対向して配置され、吐出部12側に向かうに従って幅が小さくなる中空の箱型形状である。
また、吸引部材84は、吐出部12側の先端にスリット38が形成されており、スリット38が形成されている面の一部に接続管39が形成されている。
さらに、吸引部材36の側面、つまり、吐出口16aの配列方向に垂直な断面において、スリット38が形成されている面と接続管39が形成されている面とで挟まれている一方の面には、1つの取手86が設けられ、他方の面には、1つの取手88が設けられている。
さらに、吸引部材84は、中心よりも接続管39側に軸90が配置されている。
軸90は、棒状の部材であり、吐出口16aの配列方向と平行に配置され、両端が支持体42に回転自在に支持されている。
つまり、吸引部材84は、軸90を回転軸として、回転自在な状態で支持されている。
【0149】
また、吸引部材84の取手86及び取手88は、支持部材42に移動可能な状態で支持されている。さらに取手86は、吸引部材移動機構44に連結されている。
【0150】
吸引部材移動機構44が取手86を吸引部材移動機構44側に引くと、吸引部材84は、軸90を中心としてスリット38が吸引部材移動機構44側に回転される。他方、吸引部材移動機構44が取手86を除去機構移動手段34側に押すと、吸引部材84は、軸90を中心としてスリット38が除去機構移動手段34側に回転される。
【0151】
また、液流ガイド70は、吸引部材84のスリット38が形成されている側、すなわち、吐出部12と対向する面側に、スリット38の長手方向の端部から、これに直交する方向に沿って延設されている。液流ガイド70は、本実施形態では取手86が設けられた側の端部に沿って設けられる。
また、液流ガイド70は、好ましい形態として、スリット38と直交する方向に、スリット38側からその反対側に向かって曲面形状となっている。これにより、吸引部材84を吐出部12に近接させた状態で、軸90を中心に回転させたときに、液流ガイド70が吐出部12に接触することを防止できる。
また、液流ガイド70は、吸引部材84のスリット38が形成されている側の面の長辺に亘って形成されている。すなわち、液流ガイド70の長手方向の長さは、スリット38の長手方向の長さと略同等である。
【0152】
このように、軸90を軸として、吸引部材84を回転させ、スリット38を移動させる構成としても、ヘッド基板13の吐出面の吐出口16a周りに付着したインク液滴、固着物等の汚れを吸引し、除去することができる。
【0153】
また、軸90を軸として、吸引部材84を回転させ、液流ガイド70を移動させる構成としても、ヘッド基板の吐出面と液流ガイド70を対向させ、吐出面と液流ガイド70とでインク流路を形成することができる。
【0154】
また、吸引部材84は、軸90を軸として回動させる、つまり、両方向に回転させることが好ましい。
吸引部材84を回動させることで、ヘッド基板13の吐出面の吐出口16a周りに付着したインク液滴、固着物等の汚れを吸引し、除去することができる。
【0155】
なお、本実施形態において、液流ガイド70は、上述の形状のものに限定されない。例えば、液流ガイドは、吸引部材との接続部側からその反対の端部に向かって、吐出部から離れる方向に所定の角度をもって延設してもよく、これにより、吸引部材84の回動に応じて、液流ガイド70と吐出部12の吐出面とにより形成されるインク流路を好適な形状とすることができ、本発明の効果をより好適に得ることができる。
【0156】
ここで、上記実施形態では、いずれも、吸引口から吸引しない時において、除去機構移動手段により、メンテナンス装置の吸引部材(除去機構)を、上述の待機位置からヘッド基板の吐出面に直交する方向に移動させることで、ヘッド基板の吐出面近傍にスリットを配したが、これに替えて、もしくは、さらに、メンテナンス装置をヘッド基板の吐出面に平行で、かつ吐出口の配列方向に平行に移動させてもよい。
つまり、図13(A)及び(B)に示すように、除去機構の待機位置を、ヘッド基板の吐出面に対向する位置から、吐出口の配列方向と平行な方向に所定距離離間した位置、具体的には、被記録媒体Pの搬送経路の幅方向よりも外側とし、除去機構移動機構が除去機構を待機位置(図13(A)中実線)からヘッド基板に対向する位置(図13(A)中点線)まで移動させるようにしてもよい。
ここで、図13(A)及び(B)では、図示を省略したが、除去機構を吐出口の配列方向と平行な方向に移動させる移動機構は特に限定されず、例えば、吸引部材(除去機構)をヘッド基板の吐出面に直交する方向に移動させる方法と同様にボールネジを用いた方法、リニア駆動、ベルト搬送等種々の移動手段を用いることができる。
このように、除去機構の待機位置を被記録媒体の搬送経路よりも外側とし、メンテナンス装置をヘッド基板の吐出面に平行で、かつ吐出口の配列方向に平行に移動させることでも、移動装置が大型化し、装置全体としても大きくなるが、画像記録時にメンテナンス装置が被記録媒体Pの搬送の障害になることを防止できる。
【0157】
ここで、図13(A)及び(B)に示すように、除去機構の待機位置を被記録媒体Pの搬送経路よりも外側とした場合は、画像記録時は、除去機構を待機位置に保持し、メンテナンス開始時に、除去機構移動機構により、除去機構を待機位置(図13(A)中実線)からヘッド基板に対向する位置(図13(A)中点線)まで移動させる。その後の動作は、上述したメンテナンス方法と同様である。
【0158】
また、上記実施形態では、いずれも描画部の記録ヘッドを吐出口(吐出部)が1列にライン状に配置されたフルラインヘッド型としたが、単列配置に限定されず、図12に示すように、記録ヘッド640を、複数列の吐出口(吐出部)を一定ピッチずつずらして千鳥状に配置した構成としてもよい。このように吐出口(吐出部12)を千鳥状に配置し、1列の打滴点を複数列の吐出部で形成することで、より高い解像度の画像を形成することが可能となる。
【0159】
ここで、図14に示すように、記録ヘッドの吐出部を2次元配置、つまりマトリックス配置する場合は、メンテナンス装置を記録ヘッドの吐出部の列毎に設けてもよく、メンテナンス装置を吐出口(吐出部)の配列方向に直交する方向、つまり、行方向に移動させる移動機構を設け、1つのメンテナンス装置を行方向に移動させて複数列の吐出部を有する記録ヘッドのヘッド基板の吐出面の吐出口周りのインク液滴、固着物等の汚れを吸引し、除去するようにしてもよい。
【0160】
また、上記実施形態では、短時間にメンテナンスを行えるため、メンテナンス装置を記録ヘッド毎に配置したが、本発明はこれに限定されず、メンテナンス装置に各記録ヘッド間を移動する移動機構を設け、1つのメンテナンス装置により、複数の記録ヘッドのメンテナンス、つまり、ヘッド基板の吐出面の吐出口周りに付着したインク液滴、固着物等の汚れの除去を行ってもよい。このようにメンテナンス装置を1つとすることで、装置構成を簡単にすることができ、装置を安価にすることができる。
【0161】
また、上記実施形態では、吸引部材の吸引口として、列状に配置された全吐出口に対応する1つのスリットを形成したが、本発明はこれに限定されず、スリットを複数に分割して設けてもよい。例えば、列状に配置されている各吐出口毎に吸引口を設け、ヘッド基板の吐出面のそれぞれの吐出部周りに付着したインク液滴、固着物等の汚れを吸引するようにしてもよい。
【0162】
吸引部材の吸引口は、吐出部の配列方向と直交する方向に分割することが好ましい。つまり、吸引部材の吸引口に、吐出部の配列方向と直交する方向に吸引口を仕切る仕切り板を配置することが好ましい。
このように、吸引口を吐出部の配列方向と直交する方向に分割することで、吸引時に吸引口の一部がインク液滴、固着物等の汚れにより詰まった場合でも他の吸引口から、インク液滴、固着物等の汚れを吸引することができる。これにより、より確実に吐出口周りのインク液滴、固着物等の汚れを除去することができる。
【0163】
次に、デジタルラベル印刷装置の他の一例を図15に基づいて説明する。
図15に示すデジタルラベル印刷装置101は、バッファの位置を除いて他の構成は、図1に示すデジタルラベル印刷装置100と同じ構成のものである。従って、両者で同一の構成要素には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、以下に、デジタルラベル印刷装置101に特有の点を重点的に説明する。
図13に示すデジタルラベル印刷装置101は、描画部112と平滑化部116との間バッファが配置されている。このように、搬送バッファの位置は特に限定されず、種々の位置とすることができる。
【0164】
また、本実施形態では、インクとして活性エネルギー線硬化型インクを用い、記録ヘッドから活性エネルギー線硬化型インクを吐出させ、被記録媒体P上に活性エネルギー線硬化型インクの画像を形成し、その後、活性光光線を照射し、画像を硬化させて、被記録媒体上に画像を定着させるデジタルラベル印刷装置として説明したが、本発明はこれに限定されず、後ほど具体例とともに詳細に説明するが、例えば、被記録媒体P上に記録した画像を加熱・加圧することで、被記録媒体P上に画像を定着させるインクジェット記録装置も用いることができる。
【0165】
なお、記録ヘッドの構成は、上述した実施形態に限定されず、種々の構造とすることができる。例えば、いわゆるサイドシュート方式を用いる記録ヘッドとしても、他のトップシュータ方式の記録ヘッドとしてもよい。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータの変形によってインク滴を飛ばす方式としたが、本発明はこれに限定されず、ピエゾ方式に代えて、ヒーターなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種のインクを吐出させる方式を用いた記録ヘッドを用いることができる。
【0166】
また、上述した実施形態では、いずれもデジタルラベル印刷装置にメンテナンス装置(装置)を配置した構成としたが、メンテナンス装置をインクジェットヘッドに対して着脱可能な独立した装置としてもよい。
また、メンテナンス装置をインクジェットヘッドとを1つのユニットすること、つまり、メンテナンス装置を有するインクジェットヘッドとすることもできる。
さらに、本実施形態のデジタルラベル印刷装置のように、少なくともインクジェットヘッドとメンテナンス装置を有するインクジェット記録装置とすることもできる。
【0167】
また、上記実施形態では、本発明をデジタルラベル印刷装置に用いた場合として説明したが、本発明はこれに限定されず、普通紙、金属、樹脂材料等、種々の記録媒体にインクジェット記録方式で画像を記録する装置、例えば、プリンター、製版装置等のメンテナンス装置、メンテナンス方法として用いることができる。
【0168】
なお、本実施形態では、より高画質な画像を形成できる等の効果を得ることができるため、下塗部を設け、描画部により画像を形成する前に、被記録媒体上に下塗り液を塗布し下塗り層を形成したが、下塗部は、必ずしも設ける必要はなく、被記録媒体上に下塗り層を形成することなく、描画部に画像を形成してもよい。
また、下塗り液は、より均一に塗布することができるため、本実施形態のように塗布ロールを逆回転させて塗布することが好ましいが、下塗り液の塗布方法も特に限定されず、スプレー塗布、インクジェット記録方式を用いた塗布等種々の方法を用いることができる。
【0169】
以下、本発明のインクジェット記録装置に好適に用いることができる被記録媒体、下塗り液及びインク、特に半硬化させる場合に好適に用いることができる下塗り液及びインクについて説明する。
【0170】
(インク及び下塗り液の物性)
ここで、被記録媒体上に吐出されるインク(液滴)の物性としては、装置により異なるが一般には25℃での粘度が、5〜100mPa・sであることが好ましく、10〜80mPa・sであることがより好ましい。また、下塗り液の内部硬化前の粘度(25℃)は、10〜500mPa・sであることが好ましく、50〜300mPa・s以内であることがより好ましい。
【0171】
本発明においては、被記録媒体上に目的の大きさのドットを形成する観点から、下塗り液は、界面活性剤を含有することが好ましく、下記の条件(A)、(B)及び(C)の全てを満たすことがさらに好ましい。
(A)下塗り液の表面張力は、被記録媒体上に吐出されるいずれかのインクの表面張力よりも小さい。
(B)下塗り液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m)
の関係を満たす。
(C)下塗り液の表面張力は、
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2
の関係を満たす。
【0172】
ここで、γsは、下塗り液の表面張力の値である。γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)最大は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0173】
〈条件(A)〉
本発明において、前述の通り、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、下塗り液の表面張力γsを、いずれかのインクの表面張力γkよりも小さくすることが好ましい。
さらに、着滴から露光までの間のインクドットの拡大をより効果的に防ぐ観点から、γs<γk−3(mN/m)であることがより好ましく、γs<γk−5(mN/m)であることが特に好ましい。
また、フルカラーの画像を形成(印字、描画)する場合は、画像の鮮鋭性を向上させる観点から、下塗り液の表面張力γsは、少なくとも視感度の高い着色剤を含有するインクの表面張力よりも小さくすることが好ましく、全てのインクの表面張力より小さくすることがより好ましい。なお、視感度の高い着色剤としては、マゼンタ、ブラック及びシアンの色を呈する着色剤が挙げられる。
また、吐出適正の観点から、インクの表面張力γkと下塗り液の表面張力γsとは、インクの表面張力γkと下塗り液の表面張力γsの値が上記の関係を満たし、かつ、それぞれ15mN/m以上50mN/m以下の範囲内であることが好ましく、18mN/m以上40mN/m以下の範囲内であることがより好ましく、20mN/m以上38mN/m以下の範囲内であることが特に好ましい。
両者の値を15mN/m以上とすることで、インクジェットヘッドによる打滴時に液滴を好適に形成することができ、不吐出が生じることを防止できる。つまり、インク液滴を好適に吐出させることができる。また、50mN/m以下とすることで、インクジェットヘッドとの濡れ性を高くすることができ、インク液滴を好適に吐出させることができる。つまり、液滴の不吐出が生じることを防止できる。両者の値を、18mN/m以上40mN/m以下の範囲内、さらには、20mN/m以上38mN/m以下の範囲内とすることで、上記効果をより好適に得ることができ、インク液滴を確実に吐出させることができる。
ここで、本実施形態において、表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温20℃、60%RHにて測定した値である。
【0174】
〈条件(B)と条件(C)〉
本発明において、下塗り液は、少なくとも1種類以上の界面活性剤を含有することが好ましい。下塗り液に少なくとも一種類以上の界面活性剤を含有させることで、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットをより確実に形成させることができる。なお、この場合は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、下記の条件(B)を満たすことが好ましい。
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m) …条件(B)
さらに、下塗り液の表面張力は、下記の条件(C)の関係を満たすことが好ましい。
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2 …条件(C)
【0175】
既述のように、γsは、下塗り液の表面張力の値である。また、γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)最大は、下塗り液に含有する界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0176】
なお、前記γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値を測定することによって得られる。また、前記γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の含有濃度を0.01質量%ずつ増加させた場合に、界面活性剤濃度の変化に対する表面張力の変化量が0.01mN/m以下になったときの該液の表面張力を測定することによって得られる。
【0177】
以下、前記γs(0)、γs(飽和)、γs(飽和)最大について具体的に説明する。
例えば、下塗り液(例1)を構成する成分が、高沸点溶媒(フタル酸ジエチル、和光純薬工業(株)製)、重合性材料(ジプロピレングリコールジアクリレート、Akcros社製)、重合開始剤(TPO、下記の開始剤−1)、フッ素系界面活性剤(メガファックF475、大日本インキ化学工業(株)製)、炭化水素系界面活性剤(スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム)とした場合、γs(0)、γs(飽和)(フッ素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)(炭化水素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)、及び、γs(飽和)最大は、下記の通りとなる。
【0178】
【化1】

【0179】
即ち、γs(0)は、下塗り液のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値であり、36.7mN/mとなる。また、該液に前記フッ素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)としたとき、その値は20.2mN/mとなる。さらに、同様に該液に前記炭化水素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)としたとき、その値は30.5mN/mとなる。
【0180】
前記下塗り液(例1)は、前記条件(B)を満たす界面活性剤を2種類含有するため、γs(飽和)は、フッ素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和))と炭化水素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和))の2つの値をとり得る。ここでγs(飽和)最大は、前記γs(飽和)及びγs(飽和)のうちの最大値であることから、γs(飽和)の値となる。
以上より、それらを纏めると下記のようになる。
γs(0)=36.7mN/m
γs(飽和)=20.2mN/m(フッ素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)=30.5mN/m(炭化水素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)最大=30.5mN/m
【0181】
以上の結果から、上記具体例の場合下塗り液の表面張力γsは、
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2=33.6mN/m
の関係を満たすことが好ましい。
なお、前記条件(C)については、着滴から露光までの間のインク滴の拡大をより効果的に防ぐ観点から、下塗り液の表面張力としては、
γs<γs(0)−3×{γs(0)−γs(飽和)最大}/4
の関係を満たすことがより好ましく、
γs≦γs(飽和)最大
の関係を満たすことが特に好ましい。
【0182】
インク及び下塗り液は、所望の表面張力が得られるように組成を選択すればよいが、これらの液体は界面活性剤を含有することが好ましい。既述のように、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、下塗り液は少なくとも1種の界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤について以下に説明する。
【0183】
(界面活性剤)
本発明において界面活性剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、p−キシレン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、シクロヘキサノン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール、メタノール、水、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質、好ましくは、ヘキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、さらに好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質、特に好ましくは、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質を用いることが好ましい。
【0184】
上記に列挙した溶媒に対して、ある化合物が強い表面活性を有する物質か否かは、下記の手順によって判断することができる。
(手順)
上記に列挙した溶媒から1種類の溶媒を選択し、該溶媒の表面張力γ溶媒(0)を測定する。前記γ溶媒(0)を求めた溶媒と同じ液に該化合物を添加し、該化合物の濃度を0.01質量%ずつ増加させ、該化合物濃度の変化に対する表面張力の変化が0.01mN/m以下になったときの溶液の表面張力γ溶媒(飽和)を測定する。前記γ溶媒(0)と前記γ溶媒(飽和)の関係が、
γ溶媒(0) − γ溶媒(飽和) > 1 (mN/m)
であれば、該化合物は該溶媒に対して強い表面活性を有する物質であると判断することができる。
【0185】
下塗り液に含有する界面活性剤の具体例としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。その他、界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0186】
(インク及び下塗り液の硬化感度)
本発明において、インクの硬化感度は、下塗り液の硬化感度と同等又はそれ以上とすることが好ましい。また、インクの硬化感度は、下塗り液の硬化感度以上かつ下塗り液の硬化感度の4倍以下とすることがより好ましく、下塗り液の硬化感度以上かつ下塗り液の硬化感度の2倍以下とすることが更に好ましい。
ここで硬化感度とは、水銀灯(超高圧、高圧、中圧等、好ましくは超高圧水銀灯)を使用してインク及び/又は下塗り液を硬化する場合において、完全に硬化するために必要なエネルギー量をいい、エネルギー量が小さいほど高感度である。したがって硬化感度が2倍であるとは、完全に硬化するために必要なエネルギー量が1/2であることを意味する。
また、硬化感度が同等であるとは、比較する両者の硬化感度の差が2倍以下であり、より好ましくは1.5倍以下であることをいう。
【0187】
(被記録媒体)
本実施形態のインクジェット記録装置においては、被記録媒体として、浸透性の被記録媒体、非浸透性の被記録媒体、及び緩浸透性の被記録媒体のいずれも使用することができる。中でも、被記録媒体として、非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体を用いた場合は、本発明の効果をより顕著に得ることができる。ここで、浸透性の被記録媒体とは、例えば、10pL(ピコリットル)の液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ms以下である被記録媒体をいう。また、非浸透性の被記録媒体とは、実質的に液滴が浸透しない被記録媒体をいう。「実質的に浸透しない」とは、例えば、1分後の液滴の浸透率が5%以下であることをいう。また、緩浸透性の被記録媒体とは、10pLの液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ms以上である被記録媒体をいう。
【0188】
浸透性の被記録媒体としては、例えば、普通紙、多孔質紙及びその他液を吸収できる被記録媒体が挙げられる。
非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体としては、例えば、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器及び木材等が挙げられる。また本発明においては、機能付加の目的で、これら材質を複数組み合わせて複合化した被記録媒体も使用できる。
【0189】
合成樹脂の被記録媒体としては、いかなる合成樹脂も使用可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、セルロイド等が挙げられる。合成樹脂を用いた場合の被記録媒体の厚みや形状としては、特に限定されるものではなく、フィルム状、カード状、ブロック状のいずれの形状でもよく、また透明又は不透明のいずれであってもよい。
【0190】
この合成樹脂の被記録媒体としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状の各種非吸収性のプラスチックス及びそのフィルムを用いることも好ましい。プラスチックスフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、PNyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム、PPフィルム等が挙げられる。その他プラスチックスとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などを使用できる。
【0191】
樹脂コート紙の被記録媒体としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム及び紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体等が挙げられる。特に紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体を用いることが好ましい。
【0192】
金属の被記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、シリコン、鉛、亜鉛等及びステンレス等、並びにこれらの複合材料を好適に用いることができる。
【0193】
また更に、被記録媒体としては、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスク等を用いることも可能である。この場合は、いわゆるレーベル面側に画像を記録することが好ましい。
【0194】
(インク及び下塗り液)
以下、本発明に好適に用いることができるインク及び下塗り液について詳細に説明する。
【0195】
インクは、少なくとも画像を形成するための組成となる構成であり、重合性又は架橋性材料を少なくとも1種含み、必要に応じて重合開始剤、親油性溶剤、着色剤及び他の成分を用いて構成される。
下塗り液は、重合性又は架橋性材料を少なくとも1種含み、必要に応じて重合開始剤、親油性溶剤、着色剤及び他の成分を用いて構成されることが好ましい。また、下塗り液は、インクと組成が異なるように構成することが好ましい。
【0196】
重合開始剤は、活性エネルギー線によって重合反応又は架橋反応を開始させ得るものであることが好ましい。これにより、被記録媒体に付与された下塗り液を活性エネルギー線の照射によって硬化させることができる。
また、下塗り液は、ラジカル重合性組成物を含むことが好ましい。本発明において、ラジカル重合性組成物とは、少なくとも1種のラジカル重合性材料と少なくとも1種のラジカル重合開始剤とを含む組成物である。下塗り液がラジカル重合性組成物を含むことで、下塗り液の硬化反応を高感度に短時間で行うことができる。
また、インクは、着色剤を含有するものであることが好ましい。また、このインクと組合わせて用いられる下塗り液は、着色剤を含有しないもしくは着色剤の含有量が1質量%未満の構成、又は、下塗り液が着色剤として白色顔料を含む構成のいずれかであることが好ましい。
以下、インク及び/又は下塗り液を構成する各成分について詳述する。
【0197】
(重合性又は架橋性材料)
重合性又は架橋性材料は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合又は架橋反応を生起し、これらを含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
【0198】
重合性又は架橋性材料としては、ラジカル重合反応、二量化反応など公知の重合又は架橋反応を生起する重合性又は架橋性材料を適用することができる。例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物、マレイミド基を側鎖に有する高分子化合物、芳香核に隣接した光二量化可能な不飽和二重結合を有するシンナミル基、シンナミリデン基やカルコン基等を側鎖に有する高分子化合物などが挙げられる。中でも、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物がより好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する化合物(単官能又は多官能化合物)から選択されるものであることが特に好ましい。具体的には、本発明に係る産業分野において広く知られるものの中から適宜選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(すなわち2量体、3量体及びオリゴマー)及びそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものが含まれる。
重合性又は架橋性材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0199】
本発明における重合性又は架橋性材料としては、特に、ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を起こさせる各種公知のラジカル重合性のモノマーを用いることが好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、ビニルエーテル類及び内部二重結合を有する化合物(マレイン酸など)等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかをさし、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかをさす。
【0200】
(メタ)アクリレート類としては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能の(メタ)アクリレート類の具体例としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
【0201】
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0202】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0203】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0204】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0205】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0206】
六官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0207】
また、(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0208】
芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3―オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0209】
ビニルエーテル類の具体例としては、単官能ビニルエーテルの例として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0210】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
なお、ビニルエーテル化合物としては、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点からジ又はトリビニルエーテル化合物を用いることが好ましく、特にジビニルエーテル化合物を用いることがより好ましい。
【0211】
また、上記以外に、ラジカル重合性モノマーとしては、更に、ビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]などが挙げられる。
【0212】
上記のうち、ラジカル重合性モノマーとしては、硬化速度の点から、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類を用いることが好ましく、特に硬化速度の点から、4官能以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。更には、インク組成物の粘度の観点から、多官能(メタ)アクリレートと、単官能もしくは2官能の(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドとを併用することが好ましい。
【0213】
重合性又は架橋性材料のインク及び下塗り液中における含有量としては、各液滴の全固形分(質量)に対して、50〜99.6質量%の範囲とすることが好ましく、70〜99.0質量%の範囲とすることがより好ましく、80〜99.0質量%の範囲とすることがさらに好ましい。
また、液滴中における含有量としては、各液滴の全質量に対して、20〜98質量%の範囲とすることが好ましく、40〜95質量%の範囲がより好ましく、50〜90質量%の範囲とすることが特に好ましい。
【0214】
(重合開始剤)
また、少なくとも下塗り液、または、インク及び下塗り液は、少なくとも1種の重合開始剤をを含有することが好ましい。この重合開始剤は、活性光、熱、あるいはその両方のエネルギーの付与によりラジカルなどの開始種を発生し、既述の重合性又は架橋性材料の重合又は架橋反応を開始、促進させ、硬化する化合物である。
【0215】
重合性の態様において、ラジカル重合を起こさせる重合開始剤を含有することが好ましく、さらに、光重合開始剤であることが特に好ましい。
光重合開始剤は、光の作用、増感色素の電子励起状態との相互作用によって化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という簡便な手段で重合開始させることができるという観点から光ラジカル発生剤であることが好ましい。
【0216】
本発明における光重合開始剤としては、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0217】
具体的な光重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用できる。例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier“Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載の、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も使用することができる。
【0218】
好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、等が挙げられる。
【0219】
前記(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等が挙げられる。
【0220】
ここで、(b)芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、及び同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、及び同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、及び特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、及び同52−14279号各公報記載の化合物を好適に使用することができる。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0221】
また、(c)「有機過酸化物」としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、例えば、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラキス(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系を用いることが好ましい。
【0222】
また、(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0223】
また、(e)ケトオキシムエステルとしては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0224】
また、(f)ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
また、(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、並びに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群が挙げられる。
【0225】
また、(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報記載の鉄−アレーン錯体が挙げられる。
【0226】
チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等が挙げられる。
【0227】
また、(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、及び同0388343号各明細書、米国特許3901710号、及び同4181531号各明細書、特開昭60−198538号、及び特開昭53−133022号各公報に記載されるニトロベンジルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、及び同0101122号各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、及び同4431774号各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、及び特開平4−365048号各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、及び特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0228】
また、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等が挙げられる。
【0229】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等も挙げられる。さらに、ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等も挙げられる。
【0230】
本発明における光重合開始剤としては、例えば、以下に例示する化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0231】
【化2】

【0232】
【化3】

【0233】
【化4】

【0234】
【化5】

【0235】
【化6】

【0236】
【化7】

【0237】
【化8】

【0238】
【化9】

【0239】
なお、重合開始剤としては、感度に優れるものが好ましいが、保存安定性の観点から、80℃までの温度では熱分解を起こさない重合開始剤を用いることが好ましい。
【0240】
重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、感度向上の目的で公知の増感剤を併用することもできる。
【0241】
重合開始剤の下塗り液中における含有量としては、経時安定性と硬化性及び硬化速度との観点から、下塗り液中の重合性材料に対して0.5〜20質量%の範囲内とすることが好ましく、1〜15質量%とすることがさらに好ましく、3〜10質量%とすることが特に好ましい。含有量を上記範囲内とすることで、経時による析出や分離が生じたり、硬化後のインクの強度や擦り耐性などの性能が悪化したりすることを抑制できる。
【0242】
なお、重合開始剤を下塗り液に含有すると共にインクに含有させてもよく、この場合には、インクの保存安定性を所望の程度に保持できる範囲で適宜選択して含有することができる。この場合は、インク液滴中の含有量は、インク中の重合性又は架橋性化合物に対して、0.5〜20質量%とすることが好ましく、1〜15質量%とすることがより好ましい。
【0243】
(増感色素)
また、インク及び/または下塗り液には、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加することが好ましい。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げられる。
【0244】
具体的には、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)が挙げられる。
【0245】
また、より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0246】
【化10】

【0247】
式(IX)中、A1は硫黄原子又は−NR50−を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
式(XI)中、Aは硫黄原子又は−NR59−を表し、Lは隣接するA及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0248】
式(XII)中、A、Aはそれぞれ独立に−S−又は−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L、Lはそれぞれ独立に、隣接するA、A及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、Aは酸素原子、硫黄原子又は−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0249】
また、一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
【0250】
【化11】

【0251】
【化12】

【0252】
(共増感剤)
さらに、インク及び/または下塗り液には、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えることが好ましい。
共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0253】
別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0254】
(着色剤)
少なくともインク、もしくは、インク及び下塗り液は、少なくとも一種の着色剤を含有する。なお、着色剤はインク以外に下塗り液やその他の液体に含有してもよい。
【0255】
着色剤としては、特に制限はなく、公知の水溶性染料、油溶性染料、及び顔料等から適宜選択して用いることができる。中でも、本発明の効果を好適に得ることができる非水溶性の有機溶剤系でインク及び下塗り液を構成する場合は、着色剤としては、非水溶性媒体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料、顔料を用いることが好ましい。
【0256】
着色剤は、インク中の含有量を1〜30質量%とすることが好ましく、1.5〜25質量%とすることがさらに好ましく、2〜15質量%とすることが特に好ましい。また、着色剤として下塗り液に白色顔料を含有させる場合には、下塗り液中の着色剤の含有量を2〜45質量%とすることが好ましく、4〜35質量%とすることがより好ましい。
【0257】
以下、本発明に好適な顔料を中心に説明する。
〈顔料〉
着色剤として、顔料を用いる態様が好ましい。
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できるが、黒色顔料としては、カーボンブラック顔料等が好ましく挙げられる。また、一般には黒色、並びにシアン、マゼンタ、及びイエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相、例えば、赤、緑、青、茶、白等の色相を有する顔料や金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
【0258】
有機顔料としては、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロン、イソビオラントロン系顔料及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0259】
更に詳しくは、例えば、C.I.ピグメント・レッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメント・レッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメント・バイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメント・オレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメント・レッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメント・バイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメント・バイオレット42、C.I.ピグメント・レッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメント・レッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメント・レッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメント・レッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメント・オレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメント・レッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメント・ブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメント・バイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメント・イエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメント・イエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメント・オレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメント・レッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメント・イエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメント・イエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメント・イエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメント・イエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメント・オレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメント・オレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメント・オレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメント・レッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメント・レッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメント・レッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメント・レッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメント・レッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメント・レッド248M.I.ピグメント・レッド262、もしくはC.I.ピグメント・ブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、
【0260】
C.I.ピグメント・イエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメント・イエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメント・イエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメント・レッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメント・レッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメント・イエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメント・イエロー150(C.I.番号48545)、C.I.ピグメント・レッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメント・レッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメント・オレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメント・レッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメント・ブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメント・グリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメント・グリーン36(C.I.番号74265)、ピグメント・グリーン37(C.I.番号74255)、ピグメント・ブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメント・ブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメント・ブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメント・ブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメント・バイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメント・バイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメント・レッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメント・レッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメント・レッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメント・レッド264、C.I.ピグメント・レッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメント・オレンジ71、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメント・レッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメント・イエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメント・オレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノ
ン系顔料、C.I.ピグメント・オレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメント・レッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、又はC.I.ピグメント・バイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料が挙げられる。
また着色剤としては、2種類以上の有機顔料又は有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。
【0261】
また、シリカ、アルミナ、樹脂などの粒子を芯材とし、表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することができる。さらに、樹脂被覆された顔料も使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販品が入手可能である。
【0262】
液中に含有される顔料粒子の体積平均粒子径は、光学濃度と保存安定性とのバランスといった観点からは、10〜250nmの範囲であることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。ここで、顔料粒子の体積平均粒子径は、例えば、LB−500(HORIBA(株)製)などの粒径分布測定装置により測定することができる。
【0263】
着色剤は、1種単独のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、打滴する液滴及び液体ごとに異なる着色剤を用いてもよいし、同一の着色剤を用いてもよい。
【0264】
(その他成分)
また、インク及び/または下塗り液には、上記した成分以外に、公知の添加剤などを目的に応じて併用することができる。
【0265】
〈貯蔵安定剤〉
インク及び下塗り液(特にインク)には、保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することが好ましい。貯蔵安定剤は、重合性又は架橋性材料と共存させて用いることが好ましく、また、含有する液滴又は液体あるいは共存の他成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
【0266】
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシルアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられ、具体的にはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシルアミン、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、クエン酸、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、ナフテン酸銅などが挙げられる。
【0267】
貯蔵安定剤の添加量は、重合開始剤の活性や重合性又は架橋性材料の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と硬化性とのバランスの点で、液中における固形分換算を、0.005〜1質量%とすることが好ましく、0.01〜0.5質量%とすることがより好ましく、0.01〜0.2質量%とすることがさらに好ましい。
【0268】
〈導電性塩類〉
導電性塩類は、導電性を向上させる固体の化合物である。本発明においては、保存時に析出する懸念が大きいために実質的に使用しないことが好ましいが、導電性塩類の溶解性を上げたり、液体成分に溶解性の高いものを用いたりすることで溶解性がよい場合には、適当量添加してもよい。
前記導電性塩類の例としては、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0269】
〈溶剤〉
本発明においては、必要に応じて公知の溶剤を用いることができる。溶剤としては、液(インク)の極性や粘度、表面張力、着色材料の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、及び印字性能の調整などの目的で使用できる。
なお、溶剤は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことが、速乾性及び線幅の均一な高画質画像を記録する点で好ましいことから、高沸点有機溶媒を用いた構成とするのが望ましい。
高沸点有機溶媒としては、構成素材、特にモノマーとの相溶性に優れる性質を有するものが好ましい。
具体的には、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルを用いることが好ましい。
【0270】
公知の溶剤としては、100℃以下の有機溶剤である低沸点有機溶媒も挙げられるが、硬化性に影響を与える懸念があり、また、低沸点有機溶媒は環境汚染を考慮すると使用しないことが望ましい。使用する場合には、安全性の高いものを用いることが好ましく、安全性が高い溶媒とは、管理濃度(作業環境評価基準で示される指標)が高い溶媒であり、100ppm以上のものが好ましく、200ppm以上が更に好ましい。具体的には、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素などが挙げられ、具体的には、メタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0271】
溶剤は、1種単独で用いる以外に複数組み合わせて使用することができるが、水及び/又は低沸点有機溶媒を用いる場合には、両者の使用量を各液中0〜20質量%とすることが好ましく、0〜10質量%とすることが更に好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。本発明に係るインク及び下塗り液に水を実質的に含まないことで、経時による不均一化、染料の析出等に起因する液体の濁りが生じる等の経時安定性を向上させ、非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いたときの乾燥性も高くすることができる。なお、実質的に含まないとは、不可避不純物の存在を容認することを意味する。
【0272】
〈その他添加剤〉
さらに、ポリマー、表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤等の公知の添加剤を併用することができる。
表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には例えば、特開2001−181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる。
【0273】
また、上記のほか、混合により反応して凝集物を生成するか、増粘する1組の化合物をそれぞれ、本発明に係るインクと下塗り液とに分けて含有することができる。前記1組の化合物は、凝集体を急速に形成させるか、あるいは液を急速に増粘させる特徴を有するものであり、これにより互いに隣接する液滴間の合一をより効果的に抑制することができる。
ここで、1組の化合物の反応例としては、酸/塩基反応、カルボン酸/アミド基含有化合物による水素結合反応、ボロン酸/ジオールに代表される架橋反応、カチオン/アニオンによる静電的相互作用による反応等が挙げられる。
【0274】
以上、本発明に係るインクジェット記録装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【0275】
例えば、上述したように、被記録媒体上に形成する画像をより高画質にできるため、下塗り液を半硬化することが好ましいが、本発明はこれに限定されず、被記録媒体上に塗布した下塗り液を完全に硬化させた後、インク液滴を被記録媒体上(正確には下塗り層上)に吐出させ、画像を形成してもよく、または、被記録媒体上に塗布した下塗り液を硬化させずに、インク液滴を被記録媒体上(正確には下塗り層上)に吐出させ、画像を形成し、その後、活性光線を照射し、被記録媒体上の画像部と下塗り層を同時に硬化させてもよい。
【0276】
また、下塗り液(下塗り層)及び/またはインクを半硬化させる方法も上記方法に限定されず、酸性ポリマーに対して、塩基性化合物を付与する、又は塩基性ポリマーに対して、酸性化合物、金属化合物を付与するなど、いわゆる凝集現象を用いる方法、下塗り液(インク)を予め高粘度に調製し、これに低沸点有機溶媒を添加することによって低粘化しておき、低沸点有機溶媒を蒸発させて元の高粘度に戻す方法、高粘度に調製した下塗り液(インク)を加熱しておき、冷却することによって元の高粘度に戻す方法、下塗り液(インク)に熱を与えて硬化反応を起こさせる方法など、既知の増粘方法が挙げられる。
なお、下塗り液及びインクを半硬化させる方法としては、熱を与えるまたは、上述した活性エネルギー線を照射することにより硬化反応を起こさせる方法を用いることが好ましい。
【0277】
また、本実施形態では、下塗り液及びインクとして、活性光硬化型の下塗り液及びインクを用い、下塗り液及びインクに活性光線を照射させることで硬化させたが、本発明はこれに限定されず、活性光線硬化型以外の下塗り液及びインクを用いてもよい。例えば、熱硬化型のインクを用い、従来公知の手段で画像を形成してもよい。また、下塗り液として熱硬化型の液体を用いてもよい。
【0278】
以上、本発明に係るインクジェットヘッドのメンテナンス装置、インクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドのメンテナンス方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】本発明のメンテナンス装置を用いることができるデジタルラベル印刷装置の一例の概略構成を示す正面図である。
【図2】被記録媒体の層構成を示す縦断面図である。
【図3】図1に示したデジタルラベル印刷装置の描画部を拡大して示す概略斜視図である。
【図4】(A)は、記録ヘッドの概略構成を示す側面図であり、(B)は、記録ヘッドの吐出部の配置パターンを示す底面図であり、(C)は、図4(A)の記録ヘッドの概略構成を示すC−C線断面図である。
【図5】図1に示したデジタルラベル印刷装置の記録ヘッド及びメンテナンス装置の概略構成を示す側面図である。
【図6】図5に示したメンテナンス装置の概略構成を示すVI−VI線部分断面図である。
【図7】図6に示した吸引部材の形状を示す概略斜視図である。
【図8】(A)〜(C)は、それぞれ下塗り液の表面にインク液滴を打滴した状態を示す断面図である。
【図9】箔押し状態を示し、(A)は画像面に大きな凹凸がある被記録媒体の要部断面図、(B)は平滑化せずに箔押しされた被記録媒体の要部断面図、(C)は平滑化手段により凹凸を平滑化して箔押した被記録媒体の要部断面図である。
【図10】(A)〜(C)は、それぞれ記録ヘッドのメンテナンス方法を説明するための部分断面図である。
【図11】(A)〜(E)は、それぞれ記録ヘッドのメンテナンス方法を説明するための工程図である。
【図12】メンテナンス部の他の一例の概略構成を示す断面図である。
【図13】(A)は、デジタルラベル印刷装置の描画部の他の実施形態を拡大して示す上面図であり、(B)は、その正面図である。
【図14】記録ヘッドの吐出部の配置パターンの他の一例を示す底面図である。
【図15】本発明のメンテナンス装置を用いるデジタルラベル印刷装置の他の一例の概略構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0280】
12 吐出部
13 ヘッド基板
14 インク室ユニット
16 ノズル
16a 吐出口
18 圧力室
20 供給口
22 共通流路
24 アクチュエータ
26 加圧板
28 個別電極
30、80 メンテナンス装置
32、82 除去機構
34 除去機構移動手段
36、84 吸引部材
38 スリット
40、41、86、88 取手
42 支持体
44 吸引部材移動機構
45 チューブ
46 インクトラップ
48 吸引ポンプ
50 支持台
52 ドライブスクリュ
54 ガイドレール
56 連結体
60 インクタンク
61 供給配管
62 フィルタ
64 インク加圧機構
66 電磁弁
70 液流ガイド
90 軸
100 デジタルラベル印刷装置
110 搬送部
111 下塗り部
112 描画部
114 メンテナンス部
116 平滑化部
118 箔押し部
120 ラベル抜き部
121 制御部
122 供給ロール
124、126、128、130、132 搬送ローラ対
134 製品巻取部
135 記録ヘッドユニット
136Y、136C、136M、136K 記録ヘッド(インクジェットヘッド)
137 インク貯蔵/装填部
138 紫外線照射部
142 ニスコーター
144、145 塗布ロール
146 平面加圧部材
148 紫外線照射部
150 箔供給ロール
152 箔巻取ロール
154、156 ローラ
158 箔
160 ホットスタンプ版
162 ニスコーター
164 紫外線照射部
166 ダイカッタ
168 シリンダカッタ
170 受けローラ
172 カス取り部
202 塗布ロール
204 駆動部
206 ブレード
208 貯留部
210 位置決め部
212、214 位置決めローラ
216 下塗液半硬化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク液滴を吐出する複数の吐出口がヘッド基板に列状に形成されたインクジェットヘッドのメンテナンス装置であって、
前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に対向し、かつ、前記ヘッド基板に接触しない位置に配置され、前記吐出口の配列方向と平行な方向に開口する、少なくとも1つの吸引口をもつ吸引部材、前記吐出口の配列方向と直交する方向に前記吸引口を移動させる移動機構、及び、前記吸引部材の前記吸引口側に、前記吸引口の端部から前記吐出口の配列方向と直交する方向に延設され、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成された面との間に、前記吐出口から排出されたインクの流路を形成するインクの流路形成部材を備える除去ユニットと、
前記吸引部材内の空気を吸引する吸引ポンプとを有し、
前記移動機構は、前記吸引ポンプにより空気及びインクの少なくとも一方を吸引している前記吸引口を移動させることを特徴とするインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項2】
前記流路形成部材は、前記吸引口の、前記吐出口の配列方向と直交する方向の2つの端部のうちの、一方の端部の全長に亘って、前記吐出口の配列方向と直交する方向に突出する板状部材である請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記吸引口を、少なくとも、前記吐出口の配列方向と直交する方向における前記吐出口の大きさよりも長い距離移動させる請求項1または2に記載のインクジェットメンテナンス装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記吸引口を前記吐出口の配列方向と直交する方向に往復移動させる請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記吸引口を、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に平行に移動させる請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項6】
前記移動機構は、前記吸引口を、前記吐出口の配列方向と平行な方向を軸として回動させる請求項1〜4にいずれかに記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項7】
さらに、前記除去ユニットを前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に直交する方向に移動させる除去ユニットの離接機構を有する請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項8】
インク液滴を吐出する複数の吐出口がヘッド基板に列状に形成されたインクジェットヘッドと、
前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に対向して、かつ、前記ヘッド基板と接触しない位置に配置され、前記吐出口の配列方向と平行な方向に開口する、少なくとも1つの吸引口をもつ吸引部材、前記吐出口の配列方向と直交する方向に前記吸引口を移動させる移動機構、及び、前記吸引部材の前記吸引口側に、前記吸引口の端部から前記吐出口の配列方向と直交する方向に延設され、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成された面との間に、前記吐出口から排出されたインクの流路を形成するインクの流路形成部材を備える除去ユニットと、
前記吸引部材内の空気を吸引する吸引ポンプとを有し、
前記移動機構は、前記吸引ポンプにより空気及びインクの少なくとも一方を吸引している前記吸引口を移動させることを特徴とするインクジェット記録ユニット。
【請求項9】
前記流路形成部材は、前記吸引口の、前記吐出口の配列方向と直交する方向の2つの端部のうちの、一方の端部の全長に亘って、前記吐出口の配列方向と直交する方向に突出する板状部材である請求項8に記載のインクジェット記録ユニット。
【請求項10】
前記移動機構は、前記吸引口を、少なくとも前記吐出口の配列方向と直交する方向における前記吐出口の大きさよりも長い距離移動させる請求項8または9に記載のインクジェット記録ユニット。
【請求項11】
前記移動機構は、前記吸引口を前記吐出口の配列方向と直交する方向に往復移動させる請求項8〜10のいずれかに記載のインクジェット記録ユニット。
【請求項12】
前記移動機構は、前記吸引口を、前記吐出口が形成されている面に平行に移動させる請求項8〜11に記載のインクジェット記録ユニット。
【請求項13】
前記移動機構は、前記吸引口を、前記吐出口の配列方向と平行な方向を軸として回動させる請求項8〜11に記載のインクジェット記録ユニット。
【請求項14】
インク液滴を吐出する複数の吐出口がヘッド基板に列状に形成されたインクジェットヘッドと、
前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に対向し、かつ、前記ヘッド基板に接触しない位置に配置され、前記吐出口の配列方向と平行な方向に開口する、少なくとも1つの吸引口をもつ吸引部材、前記吐出口の配列方向と直交する方向に前記吸引口を移動させる移動機構、及び、前記吸引部材の前記吸引口側に、前記吸引口の端部から前記吐出口の配列方向と直交する方向に延設され、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成された面との間に、前記吐出口から排出されたインクの流路を形成するインクの流路形成部材を備える除去ユニットと、
前記吸引部材内の空気を吸引する吸引ポンプとを有し、
前記移動機構は、前記吸引ポンプにより空気及びインクの少なくとも一方を吸引している前記吸引口を移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項15】
インク液滴を吐出する複数の吐出口がヘッド基板に列状に形成されたインクジェットヘッドのメンテナンス方法であって、
前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面に対向し、かつ、前記ヘッド基板に接触しない位置に配置され、前記吐出口の配列方向と平行な方向に開口する、少なくとも1つの吸引口をもつ吸引部材の、前記吸引口の端部から前記吐出口の配列方向と直交する方向に延設され、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成された面との間にインクの流路を形成するインクの流路形成部材を、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面と対向し、かつ、前記ヘッド基板に接触しない位置に配置して、前記吐出口からインクを排出し、前記ヘッド基板の前記吐出口が形成されている面を前記インクで濡らし、
次いで、前記吸引口を前記ヘッド基板の前記吐出口に接触しない位置に配置して、前記吸引口から空気及びインクの少なくとも一方を吸引しつつ、前記吐出口の配列方向と直交する方向に移動させるインクジェットヘッドのメンテナンス方法。
【請求項16】
前記吸引部材の内部を負圧とし、前記吸引口から空気及びインクの少なくとも一方を吸引しつつ、前記吸引口を前記吐出口の配列方向と直交する方向に往復移動させる請求項15に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−194834(P2008−194834A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29192(P2007−29192)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】